(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】ドライサンプを備える冷却潤滑システム
(51)【国際特許分類】
F01M 1/02 20060101AFI20220721BHJP
F01M 5/00 20060101ALI20220721BHJP
F01M 11/00 20060101ALI20220721BHJP
F04C 14/02 20060101ALI20220721BHJP
F04C 2/344 20060101ALI20220721BHJP
F04C 2/10 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
F01M1/02 E
F01M5/00 E
F01M11/00 S
F04C14/02
F04C2/344 331J
F04C2/344 341C
F04C2/344 331M
F04C2/10 341E
F04C2/10 341H
(21)【出願番号】P 2020022537
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2020-02-13
(31)【優先権主張番号】10 2019 201 864.5
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519336539
【氏名又は名称】ハンオン システムズ バート ホンブルク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンバー アブ ムスタファ
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065493(JP,A)
【文献】実開昭62-165415(JP,U)
【文献】特開昭58-093911(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01990508(EP,A1)
【文献】特開2018-048621(JP,A)
【文献】特開2017-198144(JP,A)
【文献】米国特許第05887562(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104806518(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/02
F01M 1/12
F01M 5/00
F01M 11/00
F04C 14/02
F04C 2/344
F04C 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライサンプ(3)及びオイルタンク(6)を備え、ポンプシステム(2)がオイルを前記ドライサンプ(3)から前記オイルタンク(6)内に送出するオイル回路を作動させる冷却潤滑システムであって、
前記ポンプシステム(2)は、1つのシャフト(5)上に1つのベーンポンプ(P1)及び2つのジェローターポンプ(P2、P3)を備え、
前記2つのジェローターポンプ(P2、P3)の中のいずれか1つは、圧力出口側(15P2)で、前記ベーンポンプ(P1)内の下部ベーン溝に連結されることを特徴とするドライサンプを備える冷却潤滑システム。
【請求項2】
前記ベーンポンプ(P1)は、2つの流路を有し、前記ドライサンプ(3)内に互いに独立した2つの吸入地点(S)を有することを特徴とする請求項1に記載のドライサンプを備える冷却潤滑システム。
【請求項3】
前記2つの流路を有するベーンポンプ(P1)は、共通圧力出口(12P1)を有することを特徴とする請求
項2に記載の
ドライサンプを備える冷却潤滑システム。
【請求項4】
前記2つのジェローターポンプ(P2、P3)の中のいずれか1つは、圧力側で変速機供給部(7)に連結され、他の一つは、電気機械用冷却部(8)に連結されることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のドライサンプを備える冷却潤滑システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドライサンプ及びオイルタンクを備える冷却潤滑システムに係り、より詳しくは、ポンプシステムがオイルをドライサンプからオイルタンク内に送出するドライサンプ及びオイルタンクを備える冷却潤滑システムに関する。
【背景技術】
【0002】
4輪車両において、ドライサンプ潤滑は、スポーツカーまたは競走用車及び極端な地形用の車両にのみ提供されていたが、それが現在は変化している。ドライサンプ潤滑の場合、潤滑油をオイルタンク内に流入させて圧力ポンプにより潤滑地点に送出する必要がある。圧力循環潤滑とは異なって、ドライサンプ潤滑は、部分的に発泡した潤滑油が、潤滑点から流下され、更にポンプによりオイルサンプ及び多様な収集地点から吸入される。その後、空気が分離されてオイルはオイルタンクに送り返される。
【0003】
ドライサンプ潤滑ポンプの一般的な長所は、設置高さの減少である。オイルパンが低い構成によってエンジンを車両に低く設置することができる。それにより、車両の重心が低くなり、走行安全性が高くなる。また、循環しているオイルの量が多いため、エンジンをより容易に冷却できる。
【0004】
ドライサンプ潤滑のためには、少なくとも1つの第2オイルポンプ及び圧力循環潤滑のための容器が必要である。
したがって、ドライサンプを備える冷却潤滑システムを実施するためには、ポンプの使用方法を最適化する必要がある。
【0005】
特許文献1には、駆動シャフトにより駆動されるローターを備えたベーンポンプが開示されている。上記ローターは、リフティングリングの内部で2つの側面プレートの間に回転可能に配置され、その円周面内に実質的に半径方向に延長されたスロットが形成される。流体を吸入領域から圧力領域に移送するために、上記スロット内に、ベーンが半径方向に変位可能に装着される。この場合、吸入領域は、少なくとも1つの吸入キドニー(kidney)に、そして圧力領域は、少なくとも1つの圧力キドニーに連結される。これらのキドニーは、側面プレートのうちの1方のプレートに形成され、上記側面プレート内で下部ベーン溝が吸入キドニーと圧力キドニーとの間の領域内に半径方向に形成され、上記下部ベーン溝は上記スロット内に提供された下部ベーンチャンバーに連結されて、上記圧力キドニー領域内に配置された下部ベーン溝は圧力キドニーに連結される。
【0006】
従来のベーンポンプにおいては、全ての下部ベーン溝に高圧が提供されていたので、ベーンの拡張移動が確実に行われ、ベーンヘッドとリフティングリングの内部面との接触が維持された。
【0007】
特許文献1によれば、圧力領域に配置される下部ベーン溝は、圧力キドニーに連結され、それにより高圧のオイルの供給を受ける。吸入領域に配置された下部ベーン溝は、圧力キドニーの代りに追加の移送装置の圧力チャンバーに連結される。追加の移送装置は、連結された下部ベーン溝内に十分な圧力を維持するが、上記圧力はベーン機械の圧力領域内の圧力よりも遥かに低くなるように設計されている。
【0008】
このような、統合された移送装置は、オイルをタンクから圧力連結チャンネル内に、そして最終的に下部ベーン溝内に送出するジェローター(gerotor)ポンプである。
また、2流路ベーンポンプが、例えば特許文献2に開示されており、各々の流路は独立して使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】DE1024518(A1)
【文献】DE112011104423(A5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、最適化されたポンプを有するドライサンプを備える冷却潤滑システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであって、ドライサンプ及びオイルタンクを備え、ポンプシステムは、オイルポンプがオイルをドライサンプからオイルタンク(6)内に送出するオイル回路を作動させる冷却潤滑システムであって、ポンプシステムは1つのシャフト上に1つのベーンポンプ及び2つのジェローターポンプを備えることを特徴とする。
【0012】
前記ベーンポンプが2つの流路を有し、乾燥式サンプ内に互いに独立した2つの吸入地点を有することが好ましい。
【0013】
2つのジェローターポンプの中のいずれか1つは、圧力出口側(12P1)で、ベーンポンプ(P1)内の下部ベーン溝に連結されることを特徴とする。
前記ジェローターポンプ(P2、P3)は、圧力側で変速機供給部(7)及び電気機械用冷却部(8)に連結されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポンプシステムは、1つの共通シャフト上に1つのベーンポンプ(P1)及び2つのジェローターポンプ(P2、P3)を備えることにより、非常に小さく設計することができるという特徴を有する。
【0015】
また、ドライサンプ内に互いに独立した2つの吸入地点を有することにより、1つのポンプにより、ドライサンプが多様な地点でポンピングする必要があるという問題が解決され、多数のオイルポンプを使わなくて済むという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ドライサンプ及びオイルタンクを備える冷却潤滑システムの本発明による実施例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、ドライサンプ及びオイルタンクを備える冷却潤滑システムの本発明による実施例を図示する。
図1に示すように、ポンプシステム(2)は潤滑剤を循環させる。ポンプシステム(2)は共通のシャフト(5)上で共通の電気機械(EM)により駆動される3つのポンプ(4)からなる。
【0018】
ポンプ(P1)は、2つの吸入連結部(10P1及び11P1)を有する。ポンプ(P1)は、2つの地点でドライサンプ(3)からオイルを吸入し、圧力出口(12P1)及びオイルタンク入口(6a)を通じてオイルをオイルタンク(6)内に送出する。
【0019】
ドライサンプ(3)内の2つの吸入地点(S)は、互いに独立してドライサンプからオイルを吸入するので、2つの吸入地点(S)の中の他の1つが空気または空気-オイル混合物を吸入していても、2つの吸入地点(S)の中の1つは相変らずオイルを送出することができる。
【0020】
ポンプ(P1)は、2つの流路で設計されたベーンポンプであり、2つの流路は別途に設計される。それにより、ドライサンプ(3)内の1つの吸入地点(S)にそれぞれ連結される2つの独立した移送回路が形成される。2つの移送回路は圧力側が互いに連結されており、圧力出口(12P1)を形成する。
【0021】
ベーンポンプ(P1)に隣接して、第1ジェローターポンプ(P2)が同一のシャフト(5)上に配置される。第1ジェローターポンプ(P2)は、オイルをオイルタンク(6)から連結部(6b)及びポンプ入口(14P2)を通じて、例えば、変速機供給部(7)に送出する。
【0022】
第1ジェローターポンプ(P2)に隣接して第2ジェローターポンプ(P3)が配置される。第2ジェローターポンプ(P3)は、オイルを、オイルタンク(6)から連結部(6c)、ポンプ入口(16P3)、及び圧力出口(17P3)を経由して、例えば、電気機械の冷却部(8)に送出する。
【0023】
追加の他の部材での使用も可能であって、使用部材、変速機、及び電気機械への供給は例示的である。
ポンプシステム(2)において、第1ジェローターポンプ(P2)も、送出機能に加えて、ベーンポンプ(P1)を予圧する圧力を供給するために用いられる。
【0024】
ベーンポンプには、起動時にベーンポンプのベーンがリフティングリング上に位置していないためにポンプの効率が落ちるという問題がある。それを防止するために、少なくとも1つの下部ベーン溝を有するベーンポンプが用いられ、上記下部ベーン溝にオイルが特定圧力で供給されることによって、ベーンがリフティングリング位置に移動される。
【0025】
したがって、第1ジェローターポンプ(P2)は、ポンプ出口に分岐(15P2)を有し、上記分岐から、加圧されたオイルがベーンポンプ(P1)の下部ベーン溝の入口(13P1)に提供される。
【0026】
それにより、従来技術により提案されたようなベーンポンプ内の複雑な統合型ジェローターポンプを改良することができる。変速機供給のために提供されるポンプは2つの機能のために用いられる。ポンプシステム(2)は小さな構造に形成することができコストが削減できる。
【0027】
図2はポンプ(P1及びP2)が互いにどのように連結されるかを概略的に図示する。出口側で、第1ジェローターポンプ(P2)は分岐(15P2)を通じてベーンポンプ(P1)の下部ベーン領域への入口に連結される。第1ジェローターポンプ(P2)はオイルを分岐(15P2)から変速機供給部(7)に供給する。
【符号の説明】
【0028】
1 冷却潤滑システム
2 ポンプシステム
3 ドライサンプ
5 シャフト
6 オイルタンク
7 変速機供給部
8 電気機械用冷却部
S 吸入地点
12P1 共通圧力出口
15P2 分岐
P1 ベーンポンプ
P2、P3 ジェローターポンプ