IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社マジックディメンジョンスタジオの特許一覧

特許7108263取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システム
<>
  • 特許-取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システム 図1
  • 特許-取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システム 図2
  • 特許-取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システム 図3
  • 特許-取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システム 図4
  • 特許-取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システム 図5
  • 特許-取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20220721BHJP
【FI】
G06Q40/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022506369
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2021036439
【審査請求日】2022-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522039946
【氏名又は名称】株式会社マジックディメンジョンスタジオ
(74)【代理人】
【識別番号】100180758
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 利之
(72)【発明者】
【氏名】浅見 幸宏
【審査官】萩島 豪
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532986(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0086268(US,A1)
【文献】水田 孝信 他1名,人工市場シミュレーションを用いたバッチオークションの分析,人工知能学 金融情報学研究会(SIG-FIN) 第18回研究会 [online],日本,人工知能学会,2017年03月10日,[検索日:2021.12.06], インターネット<URL:http://sigfin.org/?plugin=attach&refer=SIG-FIN-018-01&openfile=SIG-FIN-018-01.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバであって、それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、
予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定し、一又は複数の地域において次の注文に影響する情報が到達しないことを検知した場合、又は到達しても到達してから注文までの時間に格差が生じることを検知した場合、当該一又は複数の地域以外の地域の前記予め定めた期間の締切時刻を当該一又は複数の地域の締切時刻に対して早める裁定手段として機能させる取引管理プログラム。
【請求項2】
同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバであって、それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、
予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定するとともに、当該裁定結果を取引結果情報として出力し、前記取引結果情報を参照し、不正又は不正の試みを検知した場合、当該不正又は不正の試みを行ったクライアントの前記予め定めた期間の締切時刻を他のクライアントの締切時刻に対して早める裁定手段として機能させる取引管理プログラム。
【請求項3】
前記複数の取引サーバは、それぞれ同時刻となるように校正された時計モジュールを有し、当該時計モジュールにより前記申込時刻が前記注文情報に記載される請求項1又は2に記載の取引管理プログラム。
【請求項4】
前記時計モジュールは、秘密鍵を有し、当該秘密鍵からトークンを作成して前記申込時刻とともに前記注文情報に付随する請求項に記載の取引管理プログラム。
【請求項5】
前記トークンを用いて前記注文情報を検証する検証手段としてさらに機能させる請求項に記載の取引管理プログラム。
【請求項6】
前記裁定手段の裁定結果を取引結果情報として出力する請求項1、3~5のいずれか1項に記載の取引管理プログラム。
【請求項7】
同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバであって、それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、
予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定し、一又は複数の地域において次の注文に影響する情報が到達しないことを検知した場合、又は到達しても到達してから注文までの時間に格差が生じることを検知した場合、当該一又は複数の地域以外の地域の前記予め定めた期間の締切時刻を当該一又は複数の地域の締切時刻に対して早める裁定手段とを有する取引集約サーバ。
【請求項8】
同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバであって、それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、
予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定するとともに、当該裁定結果を取引結果情報として出力し、前記取引結果情報を参照し、不正又は不正の試みを検知した場合、当該不正又は不正の試みを行ったクライアントの前記予め定めた期間の締切時刻を他のクライアントの締切時刻に対して早める裁定手段とを有する取引集約サーバ。
【請求項9】
同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバと、
それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定し、一又は複数の地域において次の注文に影響する情報が到達しないことを検知した場合、又は到達しても到達してから注文までの時間に格差が生じることを検知した場合、当該一又は複数の地域以外の地域の前記予め定めた期間の締切時刻を当該一又は複数の地域の締切時刻に対して早める裁定手段とを有する取引集約サーバとを備える取引管理システム。
【請求項10】
同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバと、
それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定するとともに、当該裁定結果を取引結果情報として出力し、前記取引結果情報を参照し、不正又は不正の試みを検知した場合、当該不正又は不正の試みを行ったクライアントの前記予め定めた期間の締切時刻を他のクライアントの締切時刻に対して早める裁定手段とを有する取引集約サーバとを備える取引管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、複数の取引所において時間同期取引を実行する取引管理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された取引管理システムは、取引サーバと、複数の金融取引所と、各々が取引所と結びつき、取引所と同じ位置に配置され、そして、高精度クロックを備える複数サーバとを含む。取引サーバは、大規模取引オーダーを、複数のより小規模な取引オーダーに分割し、各々のより小規模な取引オーダーを、取引実行時刻と結合する。取引サーバは、各々の結合された、より小規模な取引オーダー、および、取引実行時刻に基づいて、同じ位置に配置される各々サーバに金融取引命令を送信する。各々のサーバの高精度クロックが取引実行時刻に到達するとき、すべてのサーバは、それらのより小さな取引命令を、それぞれの金融取引所に、実質的に同時に、提出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-166905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の取引管理システムによれば、大規模取引オーダーを小規模取引オーダーに分割し、かつ複数の取引所に対して同時刻に小規模取引オーダーを提出するものの、1つの取引所に対する複数の地域からの取引オーダーを扱う場合について記載されていない。1つの取引所に対する複数の地域からの取引オーダーを扱う場合、当該取引所と各地域の地理的な距離に応じて通信のタイムラグが生じ、取引所から遠い地域からの取引オーダーは近い地域からの取引オーダーに対してタイムラグだけ古い情報を参照したものとなる、という問題がある。特に、当該タイムラグ、つまり通信格差を狙った高頻度トレーダーからの攻撃が問題となる。
【0006】
従って、本発明の目的は、通信格差のある取引オーダーを平等に扱う取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システムを提供する。
【0008】
[1]同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバであって、それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、
予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定し、一又は複数の地域において次の注文に影響する情報が到達しないことを検知した場合、又は到達しても到達してから注文までの時間に格差が生じることを検知した場合、当該一又は複数の地域以外の地域の前記予め定めた期間の締切時刻を当該一又は複数の地域の締切時刻に対して早める裁定手段として機能させる取引管理プログラム。
[2]同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバであって、それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、
予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定するとともに、当該裁定結果を取引結果情報として出力し、前記取引結果情報を参照し、不正又は不正の試みを検知した場合、当該不正又は不正の試みを行ったクライアントの前記予め定めた期間の締切時刻を他のクライアントの締切時刻に対して早める裁定手段として機能させる取引管理プログラム。

前記複数の取引サーバは、それぞれ同時刻となるように校正された時計モジュールを有し、当該時計モジュールにより前記申込時刻が前記注文情報に記載される前記[1又は2に記載の取引管理プログラム。

前記時計モジュールは、秘密鍵を有し、当該秘密鍵からトークンを作成して前記申込時刻とともに前記注文情報に付随する前記[3]に記載の取引管理プログラム。

前記トークンを用いて前記注文情報を検証する検証手段としてさらに機能させる前記[4]に記載の取引管理プログラム。

前記裁定手段の裁定結果を取引結果情報として出力する前記[1]、[3]~[5]のいずれかに記載の取引管理プログラム。

同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバであって、それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、
予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定し、一又は複数の地域において次の注文に影響する情報が到達しないことを検知した場合、又は到達しても到達してから注文までの時間に格差が生じることを検知した場合、当該一又は複数の地域以外の地域の前記予め定めた期間の締切時刻を当該一又は複数の地域の締切時刻に対して早める裁定手段とを有する取引集約サーバ。

同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバであって、それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、
予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定するとともに、当該裁定結果を取引結果情報として出力し、前記取引結果情報を参照し、不正又は不正の試みを検知した場合、当該不正又は不正の試みを行ったクライアントの前記予め定めた期間の締切時刻を他のクライアントの締切時刻に対して早める裁定手段とを有する取引集約サーバ。

同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバと、
それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定し、一又は複数の地域において次の注文に影響する情報が到達しないことを検知した場合、又は到達しても到達してから注文までの時間に格差が生じることを検知した場合、当該一又は複数の地域以外の地域の前記予め定めた期間の締切時刻を当該一又は複数の地域の締切時刻に対して早める裁定手段とを有する取引集約サーバとを備える取引管理システム。
10
同地域に設置されたクライアントから注文を受け付ける取引サーバと、
それぞれ異なる地域に設置された複数の前記取引サーバから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、予め定めた期間毎に前記注文情報について裁定するとともに、当該裁定結果を取引結果情報として出力し、前記取引結果情報を参照し、不正又は不正の試みを検知した場合、当該不正又は不正の試みを行ったクライアントの前記予め定めた期間の締切時刻を他のクライアントの締切時刻に対して早める裁定手段とを有する取引集約サーバとを備える取引管理システム。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、8、9に係る発明によれば、通信格差のある取引オーダーを平等に扱うことができる。
請求項2に係る発明によれば、複数の取引サーバは、それぞれ同時刻となるように校正された時計モジュールを有し、当該時計モジュールにより申込時刻を注文情報に付随することができる。
請求項3に係る発明によれば、時計モジュールは、秘密鍵を有し、当該秘密鍵からトークンを作成して申込時刻とともに注文情報に付随することができる。
請求項4に係る発明によれば、トークンを用いて注文情報を検証することができる。
請求項5に係る発明によれば、裁定手段の裁定結果を取引結果情報として出力することができる。
請求項6に係る発明によれば、一又は複数の地域において次の注文に影響する情報が到達しないことを検知した場合、又は到達しても到達してから注文までの時間に格差が生じることを検知した場合、当該一又は複数の地域以外の地域の予め定めた期間の締切時刻を当該一又は複数の地域の締切時刻に対して早めることができる。
請求項7に係る発明によれば、取引結果情報を参照し、不正又は不正の試みを検知した場合、当該不正又は不正の試みを行ったクライアントの前記予め定めた期間の締切時刻を他のクライアントの締切時刻に対して早めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る取引管理システムの構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、実施の形態に係る取引集約サーバの構成例を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態に係る取引サーバの構成例を示すブロック図である。
図4図4は、注文情報の構成例を示す概略図である。
図5図5は、取引結果情報の構成例を示す概略図である。
図6図6は、取引管理システムの全体動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
(取引管理システムの構成)
図1は、実施の形態に係る取引管理システムの構成の一例を示す概略図である。
【0012】
この取引管理システムは、取引集約サーバ1と、取引サーバ2a、2b、2c…と、記録保管サーバ3と、クライアント4a、4a、4b、4b、4c、4c…とをネットワーク5a、5b、5c、5dによって互いに通信可能に接続することで構成される。ここで、クライアント4a、4a、4b、4b、4c、4c…は、それぞれ取引を行う利用者によって操作される。なお、取引サーバ2a及びクライアント4a、4aは地域Aに設置され、取引サーバ2b及びクライアント4b、4bは地域Bに設置され、取引集約サーバ1、取引サーバ2c、記録保管サーバ3及びクライアント4c、4cは地域Cに設置されており、地域A、地域B、地域Cはそれぞれ遠隔地であるものとする。ここで、遠隔地とは、例えば、地域Cの取引集約サーバ1を基準とした場合、地域Cの取引サーバ2cと取引集約サーバ1との通信に要する時間に比べて、地域Aの取引サーバ2aと取引集約サーバ1との通信に要する時間(又は地域Bの取引サーバ2bと取引集約サーバ1との通信に要する時間)に少なくとも差が生じるだけ地域間の距離が離れていることをいい、具体的には、情報を通知及び取得できるまでの時間に格差(通信格差)が生じるだけ地域間の距離が離れていることをいう。また、取引集約サーバ1、記録保管サーバ3は、地域Cに設置した例を示したが、地域A、地域Bに設置されていてもよいし、地域A、地域B、地域C以外の地域に設置されるものであってもよい。また、地域内の通信に要する時間に比べて地域間の通信に要する時間が大きいものとする。
【0013】
取引集約サーバ1は、各地域の取引サーバ2a、2b、2c…からの注文を集約するサーバ型の情報処理装置であり、本体内に情報を処理するための機能を有するCPU(Central Processing Unit)や不揮発性及び揮発性のメモリ等の電子部品を備える。
【0014】
取引サーバ2a(2b、2c)は、それぞれの地域のクライアント4a、4a(4b、4b、4c、4c)からの注文を受け付けるサーバ型の情報処理装置であり、本体内に情報を処理するための機能を有するCPUや不揮発性及び揮発性のメモリ等の電子部品に加え、原子時計等の精密時計モジュールを備える。
【0015】
クライアント4a、4a、4b、4b、4c、4c…は、PC(Personal Computer)等の情報処理装置であって、本体内に情報を処理するための機能を有するCPUや不揮発性及び揮発性のメモリ等の電子部品を備える。
【0016】
ネットワーク5a、5b、5c、5dは、高速通信が可能な通信ネットワークであり、例えば、インターネット、イントラネットやLAN(Local Area Network)等の有線又は無線の通信網である。
【0017】
校正用時計サーバ6は、原子時計等の高精度の時計を持ち、取引サーバ2a、2b、2cと、例えば、シリアルケーブルでそれぞれ接続され、時計モジュールの時刻の校正を定期的に行う。具体的には、校正用時計サーバ6が校正用の情報を定期的に取引サーバ2a、2b、2cに送信することで行う。取引サーバ2a、2b、2cの時刻モジュールの時刻は、校正用時計サーバ6が配置された地域のうち、例えば、取引集約サーバ1が配置された地域Cの時刻に統一されるものとするが、統一された時刻であればいずれの地域の時刻であってもよい。なお、図1では校正用時計サーバ6は、地域A、B、Cのそれぞれに設置されている構成を示しているが、地域A、B、Cのいずれかに設置してそれぞれ取引サーバ2a、2b、2cの時計モジュールの時刻の校正を行ってもよいものの、校正用時計サーバ6が設置されていない地域の取引サーバ2a、2b、2cとはネットワークを介して校正を行うこととなるため、ネットワークのレイテンシを推測して校正を行うこととなり誤差が生じうるため、地域A、B、Cのそれぞれに校正用時計サーバ6が配置されている方が精度の観点でより好ましい。サーバ形式だけでなく、定期的に校正用の装置を取引サーバ2a、2b、2cに運んで接続し、校正を行ってもよい。また、その他に、GPSの時刻情報を用いる方法、電波時計の方式を用いる方法等を採用してもよい。
【0018】
上記構成において、取引集約サーバ1は、一例として、クライアント4a、4aから取引サーバ2aが受け付けた注文、クライアント4b、4bから取引サーバ2bが受け付けた注文、クライアント4c、4cから取引サーバ2aが受け付けた注文を集約し、注文を検証して、予め定めた期間(例えば、1秒~60秒)毎に注文を締め切り、期間内の注文を裁定して取引を成立又は不成立させるものである。また、取引集約サーバ1は、取引の記録を記録保管サーバ3に記録し、記録保管サーバ3は取引の結果を取引サーバ2a、2b、2cに通知する。これらの動作は、上記した予め定めた期間で繰り返し行われる。なお、予め定めた期間は、前回の取引において、成功したか否かがわからないと今回の取引ができないため、実装の際は1秒程度が望ましいと考えられる。クライアント数が少ないうちは60秒又は60秒以上の期間を設定しても金融商品の流動性を確保できると考えられる。また、当該予め定めた期間は、大きく設定することで前回の取引結果(板情報)を用いた今回の取引の情報格差を少なくすることができ、小さく設定することでより高い頻度での取引が可能となる。以降、さらに詳細な構成について以下説明し、詳細な動作について後述する。
【0019】
(取引集約サーバの構成)
図2は、実施の形態に係る取引集約サーバ1の構成例を示すブロック図である。
【0020】
取引集約サーバ1は、CPU等から構成され、各部を制御するとともに、各種のプログラムを実行する制御部10と、不揮発性のメモリ等の記憶媒体から構成され情報を記憶する記憶部11と、ネットワーク5cを介して外部と通信する通信部12とを備える。また、取引集約サーバ1は、図示しない揮発性メモリをさらに備える。
【0021】
制御部10は、後述する取引管理プログラム110を実行することで、注文受付手段100、注文検証手段101、裁定手段102、取引結果出力手段103等として機能する。
【0022】
注文受付手段100は、取引サーバ2a、2b、2cから送信される検証トークンを含む注文情報を受け付けて注文情報111として記憶部11に格納する。
【0023】
注文検証手段101は、注文情報111に記載された申込時刻が予め定めた期間内(前回の締切時刻から今回の締切時刻まで)に申し込まれた注文か否か確認し、検証トークンを用いて注文情報111を検証する。検証の方法は後述する。
【0024】
裁定手段102は、注文検証手段101により検証された注文情報111を、裁定の条件が定められた裁定条件情報112を参照して裁定して裁定価格、売手、買手を決定して当該裁定結果を取引結果情報113として記憶部11に格納する。
【0025】
取引結果出力手段103は、取引結果情報113を記録保管サーバ3に出力する。
【0026】
記憶部11は、制御部10を上述した各手段100-103として動作させる取引管理プログラム110、注文情報111、裁定条件情報112、取引結果情報113等を記憶する。
【0027】
(情報処理装置の構成)
図3は、実施の形態に係る取引サーバ2aの構成例を示すブロック図である。なお、取引サーバ2b、2cは、取引サーバ2aと共通の構成を有するため説明を省略する。
【0028】
取引サーバ2aは、CPU等から構成され、各部を制御するとともに、各種のプログラムを実行する制御部20と、不揮発性のメモリ等の記憶媒体から構成され情報を記憶する記憶部21と、ネットワークを介して外部と通信する通信部22と、原子時計等を用いた高精度な時計モジュール23を備える。また、取引サーバ2aは、図示しない揮発性メモリをさらに備える。
【0029】
制御部20は、後述する取引管理プログラム210を実行することで、注文受付手段200、検証トークン生成手段201、注文要求手段202等として機能する。
【0030】
注文受付手段200は、クライアント4a、4aから注文を受け付けて記憶部21に注文内容が記載された注文情報211として格納する。
【0031】
検証トークン生成手段201は、時計モジュール23に問い合わせを行うことで、注文受付手段200が注文を受け付けたタイミングの時刻情報及び後述するトークンを取得し、注文情報211に時刻情報を記載するとともに、当該トークンを記憶部21に検証トークン情報212として格納する。
【0032】
注文要求手段202は、注文情報211及び検証トークン情報212を連結したトークン(つまり、署名済みの注文情報211)とともに注文要求を取引集約サーバ1に送信する。
【0033】
記憶部21は、制御部20を上述した各手段200-202として動作させる取引管理プログラム210、注文情報211、検証トークン情報212等を記憶する。
【0034】
時計モジュール12は、問い合わせに応じて時刻情報を返すとともに、内部に備えた記憶部に秘密鍵を記憶しており、検証トークン生成手段201の問い合わせに応じて当該秘密鍵を用いてトークンを生成し、時刻情報と当該トークンとを検証トークン生成手段201に出力する。
【0035】
図4は、注文情報111の構成例を示す概略図である。
【0036】
注文情報111は、注文を識別するための注文IDと、注文を行った利用者を識別するための利用者IDと、注文の種類を示す注文種類と、注文の対象と、価格と、数量と、申込時刻(時刻情報)である時刻とを有する。注文情報111は、さらに図示しないトークンを有するものとする。
【0037】
図5は、取引結果情報113の構成例を示す概略図である。
【0038】
取引結果情報113は、取引結果を識別するための結果IDと、当該取引の期間の終了時刻を示す締切時刻と、注文IDと、利用者IDと、注文種類と、対象と、価格と、数量と、申込時刻である時刻と、注文が成立したか否かを示す成否とを有する。
【0039】
(情報処理装置の動作)
次に、本実施の形態の作用を、(1)全体動作、(2)裁定動作に分けて説明する。
【0040】
(1)全体動作
図6は、取引管理システムの全体動作を説明するためのフローチャートである。
【0041】
地域Aの取引を所望する利用者らは、それぞれクライアント4a、4a(以降、地域Bのクライアント4b、4b、地域Cのクライアント4c、4c…についても同様である。)を操作して所望の証券について買い又は売りの注文を実行する。クライアント4a、4aは、注文操作に応じて取引サーバ2aに注文を送信する(S40)。ここで、地域Bのクライアント4b、4bであれば取引サーバ2bに、地域Cのクライアント4c、4cであれば取引サーバ2cに、といったように地域内の(最も距離が近い)取引サーバに注文を送信するものとする。
【0042】
取引サーバ2aの注文受付手段200は、クライアント4a、4aから注文を受け付けて記憶部21に注文情報211として格納する(S20)。
【0043】
次に、取引サーバ2aの検証トークン生成手段201は、時計モジュール23に問い合わせを行うことで、注文受付手段200が注文を受け付けたタイミングの時刻情報及びトークンを取得し、注文情報211に時刻情報を記載するとともに、当該トークンを記憶部21に検証トークン情報212として格納する(S21)。
【0044】
次に、取引サーバ2aの注文要求手段202は、注文情報211及び検証トークン情報212を連結したトークンとともに注文要求を予め定めた締切時刻毎(例えば、数秒毎、数分毎等)に取引集約サーバ1に送信する。なお、注文要求送信のタイミングは、注文情報211及び検証トークン情報212の生成完了次第即時でもよいし、予め定めた間隔で送信してもよい。取引サーバ2aの注文要求手段202は、締切時刻経過後速やかに注文要求を送信することが好ましいが、取引集約サーバ1の裁定開始時刻を遅らせることができる場合は、裁定開始時刻までに取引集約サーバ1に到達するように注文要求を送信するようにしてもよい。
【0045】
次に、取引集約サーバ1の注文受付手段100は、取引サーバ2a、2b、2cからそれぞれ送信される注文情報及び検証トークンを受け付けて注文情報111として記憶部11に格納する(S10)。
【0046】
次に、取引集約サーバ1の注文検証手段101は、注文情報111の検証トークンを検証する(S11)。具体的には、取引サーバ2a、2b、2cの公開鍵を用いて署名である検証トークンを検証する。
【0047】
次に、取引集約サーバ1の裁定手段102は、注文検証手段101により検証された注文情報111を、予め定めた期間(前回の締切時刻から今回の締切時刻の間)毎に、予め定めた期間に含まれる注文情報111について、裁定の条件が定められた裁定条件情報112を参照して裁定して裁定価格、売手、買手を決定して取引結果情報113として記憶部11に格納する(S12)。具体的な裁定動作は、「(3)裁定動作」において説明する。
【0048】
次に、取引集約サーバ1の取引結果出力手段103は、当該期間の裁定結果を取引結果情報113として記録保管サーバ3に出力する(S13)。
【0049】
記録保管サーバ3は、取引集約サーバ1から取引結果情報113を受け付けて記録し(S30)、取引結果情報113の全てまたは一部をクライアント4a、4aに送信する(S31)。
【0050】
クライアント4a、4aは、取引結果情報113を受信し(S41)、取引結果を板情報として表示部に表示する。利用者は、クライアント4a、4aの表示部に表示された取引結果を確認する。確認のタイミングは、取引毎であってもよいし、必要に応じてクライアント4a、4aが参照したタイミングであってもよい。
【0051】
(2)裁定動作
取引集約サーバ1の裁定手段102は、裁定条件情報112に記載された条件の一例として、以下の方法によって裁定を行う。
(2-1)
取引集約サーバ1の裁定手段102は、予め定めた期間に含まれる注文情報111のうち、最高値の買い注文と、最安値の売り注文を順次マッチングし、売り買いそれぞれの注文の指値の中間の値をもって裁定価格とする。裁定手段102は、中間の値として、例えば、平均を(最高値+最安値)/2で計算してもよいし、((最高値の平方根+最安値の平方根)/2)^2で計算してもよいし、その他一般的に用いられる平均値算出方法によって算出してもよい。
(2-2)
また、他の裁定動作として、取引集約サーバ1の裁定手段102は、予め定めた期間に含まれる注文情報111のうち、最高値の買い注文と、最安値の売り注文を順次マッチングし、最後にマッチした売り買いそれぞれの注文の指値の中間の値を持って、裁定価格とする。
(2-3)
また、さらに他の裁定動作として、取引集約サーバ1の裁定手段102は、市況に関する情報と、前回の売り買い注文の情報等から、裁定価格を前もって提示して、買い注文、売り注文の入札を受け付けて裁定する。売り買いどちらかが不足している場合には、抽選もしくは前もって定められた優先順位の高い方から順に裁定していく。なお、十分に売り買い注文がない場合には、他の市場の価格情報によって決定してもよい。取引集約サーバ1の裁定手段102は、前もって提示する裁定価格を以下のように決定する。例えば、十分に売り買い注文がある場合には、前回の入札実績の情報をもとに、最高値の買い注文と最安値の売り注文をマッチングさせていき、最後にマッチングした売値と買値の中間の値をもって、次回に提示する価格情報とする。
【0052】
(実施の形態の効果)
上記した実施の形態によれば、複数の地域A、B、Cで統一された時刻を示す時計モジュールを備えた取引サーバ2a、2b、2cで各地域内のクライアント4a、4a、4b、4b、4c、4cからの注文を受け付け、注文受付の時刻を取引サーバ2a、2b、2cの時計モジュールの時刻とし、取引サーバ2a、2b、2cからの注文を集約し、予め定めた期間毎に裁定をするようにしたため、通信格差のある取引オーダーを平等に扱うことができる。なお、地理的距離が異なる場合だけでなく、通信回線の性能が異なる場合であっても平等に扱うことができる。
【0053】
また、注文情報や取引の裁定プロセスを含む取引結果情報を記録保管サーバ3に記録し、開示するようにしたため、事後的に容易にアクセスでき、過去の取引を検証することができる。特にこの効果により、市場参加者や政府の規制当局が監査を行うことができ、不正が発見できるほか、不正が発見されやすいという、本発明によるシステム固有の特性により、信頼できる取引環境を提供できる。一方、従来の取引システム(現在運用されている金融取引システム)は、データベース内に取引情報が収められており、これを事後的に分析するためには、別途データウェアハウスなどのシステムが必要であり、市場参加者もしくは政府当局者による監査は限定的なものとなり、限定を解除できたとしても時間や費用を要した。
【0054】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。
【0055】
例えば、取引集約サーバ1は、取引サーバ2a、2b、2cと別の装置として示したが、取引サーバ2a、2b、2cのいずれかと一体として構成してもよい。また、記録保管サーバ3は、取引集約サーバ1と一体として構成してもよい。また、取引サーバ2a、2b、2cの時計モジュールの時刻が統一されれば、校正用時計サーバ6を用いずに取引サーバ2a、2b、2cが互いに校正し合う構成であってもよい。また、クライアント4a、4a、4b、4b、4c、4c毎に時計モジュールを備えられるようであれば取引サーバ2a、2b、2cの機能をクライアント4a、4a、4b、4b、4c、4cに備えさせ、クライアント4a、4a、4b、4b、4c、4cから取引集約サーバ1に直接注文情報を送信できるようにしてもよい。
【0056】
また、取引集約サーバ1、取引サーバ2a、2b、2c、記録保管サーバ3、校正用時計サーバ6は、サーバ装置の構成をもって説明したが、複数のサーバ装置から構成されるブロックチェーン上にこれらの装置が保持する情報及びこれらの装置の機能を構成してもよい。
【0057】
また、裁定手段102は、特定の取引参加者、取引のジャンル又は取引銘柄ごとに、締切時刻を予め定めた締切時刻に対して早めるようにしてペナルティを課してもよい。締切時刻を早める要件としては、例えば、相場全体に大きな影響を与える情報が生まれる場所から取引参加者までの距離が離れている場合であってもよいし、特定の取引参加者が直前に行った不正な取引又は不正な取引の試みが検出された場合であってもよい。具体的には、例えば、アメリカのシカゴで主たる取引が行われている国際商品先物市場があり、日本の取引参加者と、シカゴで参加している参加者が、同一時刻で締め切る高頻度バッチの取引を行なった場合、シカゴの取引参加者だけが、常に最新の情報に基づいて取引できることとなる。例えば、取引締め切り時間の直前にシカゴの商品先物市場に大きな買い注文が出た場合、その情報は通信時間の関係でシカゴ市場の近郊のサーバー以外には伝達されない状態で取引が締め切られる(締切時刻の後に東京に伝達される。)。この状態で、シカゴの市場参加者が市場に買い注文を出し、取引が成立した場合、その商品先物を市場価格より割安で手に入れることができてしまう(高頻度取引における攻撃。)。この高速取引を抑制するために、裁定手段102は、シカゴの参加者に次の注文に影響を与える最新の情報が知られうると検知した場合(日本の参加者に情報の伝達に要する時刻が次の締切時刻に間に合わないことを検知した場合、又は伝達するとしてもシカゴの参加者に対して伝達してから注文までの時間に大きな格差を検知した場合)、シカゴの参加者には基準より早い締め切り時間を課し、情報の発信地からの距離に応じて締め切り時間を調整する方法と、通信格差を利用した攻撃を利用規約等で禁止しておき、これを試みた市場参加者により早い取引締め切り時間を与えるペナルティーを課す方法とを実行することとなる。なお、高頻度取引による攻撃は、通信時間の格差に基づく注文を大量に出すことにより行われるため、記録保管サーバ3の取引履歴を確認することで、攻撃か否かの判断が可能となる。記録保管サーバ3の取引履歴は、市場参加者に公開されるものであるため、実際にペナルティを課さなくとも、市場参加者からの監視の目、そして攻撃に対してはペナルティーが課されるというルールにより、攻撃に対する抑止力が働くこととなる。
【0058】
また、不正な取引又は不正な取引の試みの検出方法として、以下の方法が考えられる。例えば、クライアントが注文の意思決定をした時間、すなわち取引サーバーが注文を受け取った時間を記録しておき、この時間が締め切りの直前に極端に偏っている場合には、レイテンシーの差異に基づく情報格差をもとにした取引を試みていることを容易に推察できる。
【0059】
上記実施の形態では制御部10の各手段100~103、200~202の機能をプログラムで実現したが、各手段の全て又は一部をASIC等のハードウエアによって実現してもよい。また、上記実施の形態で用いたプログラムをCD-ROM等の記録媒体に記憶して提供することもできる。また、上記実施の形態で説明した上記ステップの入れ替え、削除、追加等は本発明の要旨を変更しない範囲内で可能である。
【産業上の利用の可能性】
【0060】
通信格差のある取引オーダーを平等に扱う取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システムを提供する。
【符号の説明】
【0061】
1 :取引集約サーバ
2a、2b、2c:取引サーバ
3 :記録保管サーバ
4a、4a、4b、4b、4c、4c:クライアント
5a、5b、5c、5d:ネットワーク
6 :校正用時計サーバ
10 :制御部
11 :記憶部
12 :通信部
20 :制御部
21 :記憶部
22 :通信部
23 :時計モジュール
100 :注文受付手段
101 :注文検証手段
102 :裁定手段
103 :取引結果出力手段
110 :取引管理プログラム
111 :注文情報
112 :裁定条件情報
113 :取引結果情報
200 :注文受付手段
201 :検証トークン生成手段
202 :注文要求手段
210 :取引管理プログラム
211 :注文情報
212 :検証トークン情報

【要約】
【課題】通信格差のある取引オーダーを平等に扱う取引管理プログラム、情報処理装置及び取引管理システムを提供する。
【解決手段】取引管理システムは、同地域A、地域B、地域Cに設置されたクライアント4a、4a、4b、4b、4c、4cからそれぞれ注文を受け付ける取引サーバ2a、2b、2cと、それぞれ異なる地域に設置された複数の取引サーバ2a、2b、2cから注文の申込時刻が付随された注文情報を受け付ける受付手段と、予め定めた締切時刻で設定された期間内の前記注文情報について裁定する裁定手段とを有する取引集約サーバ1とを備える。

図1
図2
図3
図4
図5
図6