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  • 特許-帽子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】帽子
(51)【国際特許分類】
   A42B 1/04 20210101AFI20220721BHJP
   A42B 1/0182 20210101ALI20220721BHJP
   A42C 1/06 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A42B1/04 J
A42B1/0182
A42C1/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018013077
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019119978
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】301015967
【氏名又は名称】株式会社コカジ
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【弁理士】
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】古鍛治 正嘉
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-084422(JP,U)
【文献】特表2013-544981(JP,A)
【文献】実開昭55-091836(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0231033(US,A1)
【文献】特開2019-039104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/0182
A42B 1/04
A42C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部装着部とヒサシ部とを含む帽子であって、前記ヒサシ部は、板状の芯材と、この芯材を上下に挟む上布および下布とを含み、
前記上布および前記下布を有する袋状の袋状体の内部に前記芯材は挿入されて配置されており、
前記芯材には閉空間として形成される開口が形成されており、
前記芯材および前記袋状体を一体化する一体化部を更に備え、
前記一体化部は、前記開口の内周縁に沿って、その全周にわたった領域にのみ形成されており、前記 開口に対向する位置にある前記上布と前記下布を、互いに接触させた状態で一体化していることを特徴とする帽子。
【請求項2】
請求項1に記載の帽子において、前記頭部装着部は頭部の全体を覆う袋状であることを特徴とする帽子。
【請求項3】
請求項1に記載の帽子において、前記頭部装着部はカチユーシャ様の弧状片であることを特徴とする帽子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の帽子において、前記上布と前記下布の一体化は、縫製による縫着によりなされていることを特徴とする帽子。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の帽子において、前記上布と前記下布の一体化は両布の溶融接着によりなされていることを特徴とする帽子。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の帽子において、前記上布と前記下布の一体化は両面粘着テープによる接着によりなされていることを特徴とする帽子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の帽子において、前記芯材は、非透気性の材料によりなり、前記上布と下布とは共に透気性を有していることを特徴とする帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部装着部とヒサシ部とを含む帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より帽子のヒサシ部は、特許文献1に示すように芯材に開口が形成され、その重量をできるだけ軽減する工夫がなされていた。また、このような開口は、帽子が風により飛ばされないようにするための風抜きなどにも用いられていた。
また、特許文献2に示すように、一般的にヒサシ部は、上布、芯材および下布を縫製して一体化されている。特許文献1のように芯材に開口があると、上布、芯材及び下布を縫製して一体化することが困難であった。また、芯材に開口を有するヒサシ部において、上布、芯材及び下布の三者を縫製一体化した場合は、開口近くに形成された針穴が応力集中点となり芯材の破損原因にもなっていた。特に型崩れを防止するために、塑性変形しにくい素材を用いた場合は、このような破損が生じやすかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案全文公開昭和53-84422号公報
【文献】特開2004-218120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような実情に鑑み、芯材に開口を有しながらも、当該芯材に針穴などの応力集中要因を形成することなく、上布、芯材、下布の三者を一体化できた帽子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る帽子は、頭部装着部とヒサシ部とを含む帽子であって、前記ヒサシ部は、板状の芯材と、この芯材を上下に挟む上布および下布とを含み、前記上布および前記下布を有する袋状の袋状体の内部に前記芯材は挿入されて配置されており、前記芯材には閉空間として形成される開口が形成されており、前記芯材および前記袋状体を一体化する一体化部を更に備え、前記一体化部は、前記開口の内周縁に沿って、その全周にわたった領域にのみ形成されており、前記開口に対向する位置にある前記上布と前記下布を、互いに接触させた状態で一体化していることを特徴とする。
請求項2に係る帽子は、請求項1に係る帽子において、前記頭部装着部は頭部の全体を覆う袋状であることを特徴とする。
請求項3に係る帽子は、請求項1に係るの帽子において、前記頭部装着部はカチユーシャ様の弧状片であることを特徴とする。
請求項4に係るの帽子は、請求項1~3のいずれかの帽子において、前記上布と前記下布の一体化は、縫製による縫着によりなされていることを特徴とする。
請求項5に係る帽子は、請求項1~3のいずれかの帽子において、前記上布と前記下布の一体化は両布の溶融接着によりなされていることを特徴とする。
請求項6に係る帽子は、請求項1~3のいずれかの帽子において、前記上布と前記下布の一体化は両面粘着テープによる接着によりなされていることを特徴とする。
請求項7に係る帽子は、請求項1~6のいずれかの帽子において、前記芯材は、非透気性の材料によりなり、前記上布と下布とは共に透気性を有していることを特徴とする
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、上布と下布とを直接一体化することにより、上下の布同士の相対移動を阻止するのみならず、上下布の挟持力により、上下布と芯材との相対移動を阻止することができる。
開口を利用して上布と下布とを一体化させるので、芯材に針穴を設ける必要がなく、そのため、応力集中による芯材の破損を抑制または防止できる。
【0007】
請求項2または3のように、頭部を覆う帽子にも、サンバイザーのような、頭部を覆わない帽子にも適用可能である。
【0008】
さらに請求項4~6のように、上下布の一体化は、縫製、溶着、粘着などの手段がとれることから、芯材の材質に影響されることなく上下布の性質に対応した適切な手段で上下布を一体化できる。
【0009】
また、請求項7によれば、芯材の開口を風抜け用の開口として利用することができ、風による不測な帽子の飛散を低減することができる。
【0010】
本発明において、上下布の伸縮性が上下布と芯材との一体性に及ぼす影響を考慮した場合、上下布による芯材の挟持力と、芯材の面方向における上下布のすべり許容性を考慮する必要がある。
前記挟持力については、開口の周縁の角と上下布の一体化位置との間隔が短くなるほど僅かな弾性歪みでも強く上下布を前記周縁に押し付けることができ、強い挟持力を発現させることができる。また、前記すべり許容性を考慮した場合、上下布の一体化位置が開口周縁に近づくほど、芯材と上下布との相対移動の許容範囲を小さくすることができる。この結果、請求項8のようにすることで、芯材と上下布との相対移動を最も小さい一体化の面積或いは長さにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例の要部を示す平面図である。
図2図1のA‐A断面の要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る帽子の要部を示す平面図である。
図2図1A‐A断面の要部を示す縦断面図である。図2では開口6cに関する断面図を示すが開口6a,6bについては開口6cと同等の断面形状を有するので、図示を省略する。
帽子は頭部装着部1とヒサシ部2とを含む。頭部装着部1は、図示するような頭部を覆う袋状のものであってもよいし、またカチユーシャのようなUの字状のものであって、頭部の両側部を挟み込むようなものであってもよい。
そのヒサシ部2は、図示するような前面に張り出すようなものでも、頭部周囲全体に張り出すものであってもよい。
ヒサシ部2は、従来周知な手段で頭部装着部1と一体化されている。
【0013】
ヒサシ部2は、板状の芯材6と、芯材6を上下に挟む上布2aおよび下布2bと、芯材6の外周縁を覆う縁布2cとを含む。
芯材6は、無発泡プラスチックシートからなり平面視三日月状をなしている。上下布2a,2bの外周縁を縫合線3a,3bにより縫合することにより、上布2a、下布2bおよび縁布2cが袋状に構成されている。
芯材6には、左右と中央部にそれぞれ開口6a,6b,6cが形成されている。
この開口6a,6b,6cは、芯材の重量をできるだけ軽減するためのものであるが、当該開口6a,6b,6cを以下のように利用して、上下布2a,2bを芯材6に一体化してある。
開口6a,6b,6cの内周縁において、上布2aと下布2bとの互いに対向する領域を縫合線4a,4b,4cにより直接縫合して一体化している。
このようにして、上下布2a,2bにより開口6a,6b,6cの周縁を強く挟むことができ、これにより、上下布2a,2bと芯材6との一体化を実現している。
この実施形態によれば、上布2aと下布2bとを直接一体化することができ、上下の布2a,2b同士の相対移動を阻止するのみならず、上下布2a,2bの挟持力により、上下布2a,2bと芯材6との相対移動を阻止することができる。
そして、芯材6に針穴を設ける必要がなく、これにより、応力集中による芯材6の破損を抑制または防止できる。
また、芯材6の開口6a,6b,6cを風抜け用の開口として利用することができ、風による不測な帽子の飛散を低減することができる。
また、開口6a,6b,6cの周縁の角を上下布2a,2bの一体化位置との間隔が短くなるほど僅かな弾性歪みでも強く上下布2a,2bを前記周縁に押し付けることができ、強い挟持力を発現させることができる。
上下布2a,2bの一体化位置が開口6a,6b,6cの周縁に近づくほど、芯材6と上下布2a,2bとの相対移動の許容範囲を小さくすることができ、最も小さい一体化の面積或いは長さにすることができる。
【0014】
なお、上下布2a,2bの伸縮性は、縫合線3a,3b,4a,4b,4cの開口6a,6b,6c内における位置に関係し、上下布2a,2bの伸縮性が少ないものほど、開口6a,6b,6c周縁から離れた位置で縫合しても芯材6と上下布2a,2bに一体化は得られる。
また、芯材6の硬さが硬いほど、開口6a,6b,6c周縁から離れた位置で縫合しても芯材6と上下布2a,2bに一体化は得られる。
【0015】
上下布2a,2bの一体化やこれらと縁布2cとの一体化に縫合を用いたが、これに代わり、布同士の溶融接着或は粘着層を介在した粘着などの手段を用いてもよい。
どの手段によるかはデザイン上最適なものを選択することが可能である。
また、粘着などの他の手段に比べ接着力の弱いものの場合は、接着部分に幅を持たせた帯状としてもよい。
【0016】
開口6a,6b,6c内での布2a,2b同士の一体化については、いずれの一体化手段においても、図示のように開口6a,6b,6cの全周にわたって一体化する必要はなく、例えば、角部のみ、あるいは直線状や弧状の部分のみなど、一体化が行いやすい部分のみを一体化してもよい。
また、線状に限らず、複数の島状に一体化部分を形成したり、開口6a,6b,6c中央部に芯材との一体化とは別にデザイン上の要求により一体化部分を設けてもよい。
【0017】
また、上下布2a,2bに透気性を有するメッシユ布などを用いることで、開口6a,6b,6cを風抜き用の穴として利用してもよい。
なお、この場合は、接着面積が広くなる粘着などを用いることは相応しくない。
【0018】
開口6a,6b,6cの位置や形状は図示したものに限らず、デザイン性やその他の機能(風通し等)などに適合したものとするのに何らの制限もない。
また、開口6a,6b,6cは図示のような閉空間に限らず、頭部装着部1側の一部が開放されていたり、複数の開口6a,6b,6cが互いに連通したような空間にするのに何らの制限はない。
【0019】
芯材6の材質は、無発泡プラスチックシートだけでなく、発泡プラスチックシートも使用できる。
さらに、段ボールのような厚紙や合成繊維からなる不織布なども使用可能で、本発明の実施形態は、いずれのものも適用可能である。
芯材6に開口が複数設けれられている場合を例に挙げて説明したが、芯材6に開口が1つのみ設けられた態様であってもよい。
なお、芯材6の材質が応力集中に弱い材質であればあるほど本発明の効果は際立つこととなる。
【符号の説明】
【0020】
1 頭部装着部
2 ヒサシ部
2a,2b 上下布
2c 縁布
3a,3b,4a,4b,4c 縫合線
6 芯材
6a,6b,6c 開口
図1
図2