(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】薬剤分包装置
(51)【国際特許分類】
B65B 1/30 20060101AFI20220721BHJP
B65B 1/04 20060101ALI20220721BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
B65B1/30 B
B65B1/04
A61J3/00 310E
(21)【出願番号】P 2018098673
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】大村 司郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 繁幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓
(72)【発明者】
【氏名】深津 邦夫
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-041512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 1/30
B65B 1/04
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を1包分ずつ供給する薬剤供給部と、
前記薬剤供給部から供給された薬剤を上方から受け入れる上開口部
を有する上ホッパと、前記上ホッパの下に設けられ、下方から薬剤を払出す下開口部
を有する下ホッパとを有し、全体として上下動可能な落下ホッパと、
前記落下ホッパの下開口部から分包用紙間に薬剤を受け入れて包装する薬剤包装部と、
前記上ホッパの上方から前記落下ホッパの内面に高圧空気を吹付けることにより前記落下ホッパの内面に付着した残薬を落下させる高圧空気吹き付け機構と、
前記落下ホッパの下開口部に選択的に接続され、
前記圧縮空気により落下された前記落下ホッパ内部に付着した残薬を
前記下開口部から除去する空気吸引装置
とを有する落下ホッパ洗浄装置と、
を具備したことを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項2】
薬剤を1包分ずつ供給する薬剤供給部と、
前記薬剤供給部から供給された薬剤を上方から受け入れる上開口部と、下方から薬剤を払出す下開口部とを有する落下ホッパと、
前記落下ホッパの下開口部から分包用紙間に薬剤を受け入れて包装する薬剤包装部と、
前記落下ホッパの下開口部に選択的に接続され、前記落下ホッパ内部に上方から下方への空気流を形成することにより前記落下ホッパ内部に付着した残薬を除去する空気吸引装置を有する落下ホッパ洗浄装置と、を有し、
前記落下ホッパの下開口部は、落下ホッパの洗浄時に、その一部が前記薬剤分包部の分包用紙間に挿入された突部と、分包用紙間から露出した凹部とを有し、
前記空気吸引装置は、前記落下ホッパの突部を分包用紙間に挿入した状態で前記分包用紙を介して前記落下ホッパの凹部に接続して空気を吸引する、
ことを特徴とする薬剤分包装置。
【請求項3】
前記落下ホッパの下開口部は、楔状の形状であり、
前記空気吸引装置は、楔の一方の側から前記分包用紙を介して塞ぎ、他方の側から空気を吸引する、
ことを特徴とする請求項2記載の薬剤分包装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を1個包分ずつ供給して分包する薬剤分包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤調剤業務の自動化のために長く活用されている散薬自動分包機において、要請される最も重要なポイントは、1個包された内容量が処方で指定された量であること、及びその1個包の中に処方外の物質が混入しないことである。1個包された内容量が減少してしまうのは、薬剤経路の途中から飛び出して飛散してしまうのと、その薬剤経路面に付着残留してしまうためである。
【0003】
そして、この経路に付着した残薬が、次の処方で異なる薬剤を分包する場合において、その新たな薬剤が通過するときに、一緒に混じりあってしまうと、処方外物質の混入という事態になってしまう。
【0004】
特に、分包機のV字折りされた分包用紙に、その先端が挿入され、上方からの落下散薬を導入するための落下ホッパの内面は、その形状が奥まっているので薬剤が付着しやすい上に、機械的な洗浄が困難で、洗浄が大きな課題となっていた。機械的叩き振動や超音波振動による付着除去も一定の効果があるが、さらに積極的な方法として特許文献1記載のように、空気による吸引方式も供用されている。
【0005】
また、近年散薬分包機の全自動化へのニーズが高まり、特許文献2記載のように、処方のたびに、係員が薬剤を投入する必要のないロボット型散薬全自動分包機が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4568082号公報
【文献】特開平7-80043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の装置では、落下ホッパの内面に下から上への空気の流れを作って吸引するので、下の出口から新たな外気を吸い込むことで、空間中の異物をホッパ内に取り込む可能性がある。また、散薬自体は重力に従って、上から下に落下するものであり、これを上向きに吸引するのは効率が低くなるものである。さらに、このような残薬の除去を行っても完全ではなく、一定の頻度で落下ホッパを取外して水洗い洗浄を行う必要があった。
【0008】
また、特許文献2記載の装置は、落下ホッパの内面洗浄を行う際に、落下ホッパを取り外して人手で洗浄を行う必要があり、人手を介することは、全自動化の大きな長所を犠牲にすることとなり、付着残薬除去を自動的に行うことのできる装置の実現が求められてきた。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、薬剤供給部から薬剤を受け入れる落下ホッパに付着した残薬を除去することにより、処方外の物質の混入を防止した薬剤分包装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の薬剤分包装置は、薬剤を1包分ずつ供給する薬剤供給部と、前記薬剤供給部から供給された薬剤を上方から受け入れる上開口部を有する上ホッパと、前記上ホッパの下に設けられ、下方から薬剤を払出す下開口部を有する下ホッパとを有し、全体として上下動可能な落下ホッパと、前記落下ホッパの下開口部から分包用紙間に薬剤を受け入れて包装する薬剤包装部と、前記上ホッパの上方から前記落下ホッパの内面に高圧空気を吹付けることにより前記落下ホッパの内面に付着した残薬を落下させる高圧空気吹き付け機構と、前記落下ホッパの下開口部に選択的に接続され、前記圧縮空気により落下された前記落下ホッパ内部に付着した残薬を前記下開口部から除去する空気吸引装置とを有する落下ホッパ洗浄装置と、を具備したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の散薬自動分包機の円盤配分部の平面の断面図。
【
図2】実施形態の散薬自動分包機の落下ホッパの上昇位置を示す正面の断面図。
【
図4】実施形態の散薬自動分包機の落下ホッパの下降位置を示す正面の断面図。
【
図5】実施形態の散薬自動分包機の印刷包装機部の平面の断面図。
【
図6】実施形態の落下ホッパ洗浄装置の落下ホッパ部を取外した状態を示す斜視図。
【
図7】実施形態の落下ホッパ洗浄装置の落下ホッパ部を取付けた状態を示す斜視図。
【
図8】実施形態の落下ホッパ洗浄装置の落下ホッパの上下移動機構を取外した状態を示す斜視図。
【
図9】実施形態の落下ホッパが上昇位置にあるときの側断面図。
【
図10】実施形態の落下ホッパが下降位置にあるときの側断面図。
【
図11】実施形態の落下ホッパ洗浄装置が洗浄動作位置にあるときの斜視図。
【
図12】実施形態の落下ホッパ洗浄装置が洗浄動作位置にあるときの側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る散薬自動分包機を、図面を用いて説明する。
以下の説明では散薬自動分包機を例にとって説明するが、本発明は散薬自動分包機に限定されるものではなく、錠剤自動分包機にも適用可能なことは勿論である。散薬は飛散や付着が錠剤よりも顕著であるので効果が高いが、錠剤自動分包機でも処方外の物質の混入を防止するという効果は同等に得られるものである。
【0013】
図1は本実施形態の散薬自動分包機の平面図、
図2は散薬自動分包機の正面図である。筐体10の中間台11の上部には薬剤供給部である円盤配分部100、中間台11の下部には、薬剤包装部である印刷包装機200が配置されている。また300は落下ホッパであって、円盤配分部100から放出される散薬をこの落下ホッパ300の内面側を通して、印刷包装機200側に導入する働きをなすものである。この落下ホッパ300の内面に付着して残留する残薬を除去することが、本発明の目的である。
【0014】
円盤配分部100には2組の配分部が設けられている。円盤配分部100において、101は着脱自在な散薬カセットで、事前に別の場所で、当該処方に必要な分量の散薬が装填され、図示しないロボットアーム等の自動装置によって、別の棚から振動台102に載置される。振動台102は、図示しない電磁石などによって振動を発生させ、この振動力を散薬カセット101に伝達させることで、散薬カセット101内の散薬を振動輸送し、矢印103の方向に散薬を少量ずつ落下させるものである。
【0015】
104は水平に配置された配分円盤で、大きな円輪がステッピング・モータ105によって、歯車106を介して矢印104a方向に回転させられるようになっている。さらに配分円盤104の外周方向の上面には円弧状凹面107を形成していている。ここで、ステッピング・モータ105を連続的に回転しながら、振動台102を駆動すると、散薬が配分円盤104の円弧状凹面107に少量ずつ落下して、ドーナツ状の散薬の山P1を形成することができる。この動作を「円周撒き動作」と呼ぶこととする。
【0016】
また、108は掻き出しディスク部で、レバー108aが軸109を中心にして上下に回動できる。このレバー108aの先端にはシリコンゴム製のディスク110が取り付けられ、モータ111で矢印110a方向に回転可能である。このディスク110は2枚の円板の間に羽根が設けられた水車状の形状である。なお、このディスク110の円板の直径は、円弧状凹面107の凹面の直径と同一である。
【0017】
先の「円周撒き動作」の場合は、このディスク110は上方に待避していて、ドーナツ状の散薬の山P1の形成を妨げない。次に「1包分配分動作」時は、掻き出しディスク部108のディスク110が下方に回動して、ディスク110が、円弧状凹面107に隙間なく密着する。この状態で、モータ111を駆動するとディスク110の円板に設けられた羽根によって円弧状凹面107の上の散薬が落下ホッパ300に掻き落とされる。そして、ステッピング・モータ105を所定角度Rだけ回転させると、その角度分の散薬の量が、落下ホッパ300側に払出される。ここで、先の所定角度Rとは、別に処方箋から指定される1個包に包装すべき用量分の角度である。
【0018】
例えば、処方箋で、ある散薬を1個包あたり1gで36個包作成する場合にあっては、事前に散薬カセット101に36gの散薬を装填しておき、これを「円周撒き動作」で、全量をドーナツ状に均一に撒く。次に「1包分配分動作」で、ディスク110を回転させながら、ステッピング・モータ105を10度回転させると、正しく1個包分の1gの散薬が落下ホッパ300に払出させることができるものである。
【0019】
円盤配分部100には、左右に対称形に、2組の円盤部112aと112bが配置しているが、これは、一方の円盤部112aで「円周撒き動作」しているときは、他方の円盤部112bが「1包分配分動作」を出来るようにして、複数の連続する処方において無駄時間がなく、連続的に分包できるようにするためのものである。
【0020】
図3は落下ホッパ300の形状と動作の概要を示すものである。落下ホッパ300は上ホッパ301と下ホッパ302の二重構造となっており、上ホッパの下開放部303を開閉自在なシャッタ304で閉鎖している。上ホッパの301の上端は、円盤配分部100からの散薬を受け入れる上開口部300aが形成されている。下ホッパ302の下端部は
図3(a)(b)に示すように楔状に形成され、両端に突部である爪部305a、305bが形成され、その間に散薬を払出す凹部(下開口部)305cが形成されている。この落下ホッパ300は全体として上下移動できるようになっている。そして、「1包分配分動作」で、円盤配分部100から散薬を払出すタイミングでは、
図3(a)(b)の上位置に位置する。この時、シャッタ304は
図3(b)の側面図に示すように閉鎖しているので、落下した散薬は一旦このシャッタ304上に保持される。
【0021】
このとき落下ホッパ300の下端の左右の爪部305aと305bは、搬送される谷折り状に二つ折された分包用紙Bの開放端B1にその先端を入れ込んでいる。
【0022】
散薬の放出時は
図3(c)のように、落下ホッパ300全体を下方に移動するが、左右の爪部305a、305bと楔状の形状が、落下ホッパ300が分包用紙B間に進入するときのガイドの働きをしている。この状態でシャッタを304aのように開くと、散薬は分包用紙Bの内部に収納されるものである。その後、落下ホッパ300は
図3(b)の位置まで上昇する。
【0023】
次に、
図4と
図5を用いて印刷包装機200の構成と動作を説明する。
図4は散薬分封機の正面の断面図であって、
図2で上方に位置していた落下ホッパ300は、下方に移動した状態を示している。
図5は印刷包装機200の上面の断面図である。201は分包用紙ロールであって、熱接着性を持つ二つ折りした用紙が谷折側を下にして、リールに巻き上げたものである。リールの外周側の用紙先端から、引き出されて、一点鎖線B2からB3のような経路で搬送されるようになっている。202は印刷部で、インクリボン203、感熱印刷ヘッド204、プラテンローラ205等によって構成され、分包用紙Bの表面に、1包分ずつの処方情報を印字するものである。
【0024】
206は縦シール機構で、分包用紙Bを前後(
図5では上下)から熱板によって圧接することで、207aのように縦方向のシールが行われる。1包分移動した位置でのシールを207bに示すが、分包用紙Bの上開放端208はシールしないようになっている。これは、
図3(a)のように、落下ホッパ300の爪部305a、305bが、分包用紙B間に挿入した状態で、分包用紙Bを搬送できるようにするためである。次に配置される落下ホッパ300の奥側には落下ホッパ洗浄装置310が取り付けられている。この落下ホッパ洗浄装置310については、後に詳述する。
【0025】
次の209は横シール機構で、分包用紙Bを前後から熱板によって圧接することで、210のように横方向と縦方向の未シール部とのシールが行われる。先の縦シール207と横シール210とによって、分包用紙Bは1個包としてシールされるものである。
【0026】
211は駆動ローラであって、印刷部202のプラテンローラ205と同期駆動され、分包用紙Bの1個包分ピッチB4の距離を、1工程として駆動される。出口にはカッタ212が設けられ、1処方分の連続個包が完成した時点で、分包用紙Bをカットするものである。
【0027】
また、後に詳述する落下ホッパ洗浄装置310の補機として、集塵ブロア401と、圧縮空気発生コンプレッサ402が、筐体後方に配置されて、それぞれ、落下ホッパ洗浄装置310の空気源として利用される。
【0028】
以下、
図6~
図12を用いて落下ホッパ洗浄装置310の構造と動作について説明する。
図6は落下ホッパ洗浄装置310の斜視図であり、落下ホッパ部300を取り外した状態を示している。また、
図7は落下ホッパ300を取付けた状態を示している。さらに、
図8は落下ホッパ300の上下移動機構を取り外した状態を示している。
【0029】
図9は、落下ホッパ300が上位置にあるときの側面の断面図、
図10は、落下ホッパ300が下位置にあるときの側面の断面図である。また、
図11は、洗浄動作位置を示す斜視図、
図12は、洗浄動作位置を示す、側面の断面図である。なお、図では判り易くする為に一部省略して記載されている。
【0030】
ベース311の上に各機構が取り付けられるが、それぞれ各アクチュエータによって、以下の働きを成すように構成されている。
【0031】
(1)落下ホッパの上下移動機構
図6及び
図9において、軸312に取り付けられた図示しない第1のモータが駆動源であり、その軸312に第1のカム313と第2のカム314が取り付けられる。315は落下ホッパ取付け台であって、この落下ホッパ取付け台315の下部には軸317が取付けられている。また、軸317は直動軸受316に内挿されており、軸317の軸方向に落下ホッパ取り付台315が上下動作できるようになっている。
【0032】
すなわち図示しない第1のモータが所定角度回転すると、第1のカム313が、カムフォロア318を押し上げることにより、カムフォロア318の上昇によってアーム319が、軸320を中心に時計方向に回動することで、落下ホッパ取付け台315を上方に移動させる。その位置が
図9の状態である。また第1のモータを逆回転することで、落下ホッパ取付け台315は
図10の位置に移動するようになっている。これらは先に
図3で概略を説明した、
図3(b)と、
図3(c)とに対応するものである。
【0033】
(2)落下ホッパのシャッタの第1の開閉機構
図6及び
図7において、落下ホッパ300内のシャッタ304は、第1の開閉機構によって、落下ホッパ300が上位置では閉位置、下位置では開位置になるように開閉駆動できるように構成されている。まず、落下ホッパ300が上位置の状態から、図示しない第1のモータが回転して落下ホッパ300を下側に移動する。第1のモータの回転にともなって軸312に取付けられている第2のカム314も回転して、軸321を中心に回動するアーム322の下端に取付けられているカムフォロア322aを第2のカム314が押す。この押圧によって、アーム322は反時計方向に回動する。この回動によってアーム322の先端322bが、シャッタ304に取り付けられているレバー323を押すことで、シャッタを304aの位置(
図10)に開くことができる。
【0034】
(1)及び(2)で説明したように、落下ホッパ300の上下動作と、シャッタ304の開閉は軸312の第1のカム313と第2のカム314とによって同期動作し、落下ホッパ300が上位置では、シャッタ304は「閉」、落下ホッパ300が下位置では、シャッタ304は「開」となる。
【0035】
(3)ホッパ叩き機構
図6に示す324は図示しないソレノイドで回動駆動される第1の加振装置である叩き機構であって、落下ホッパ300の側面を叩くことで、落下ホッパ300に振動を与え、落下ホッパ300の内側に付着した残薬を落下させる機能を有する。
【0036】
「1包分配分動作」時に、円盤配分部100側から1個包分の散薬が落下ホッパ300に投入されるときは、落下ホッパ300は上位置で、閉じたシャッタ304上に散薬が保持される。1個包分の散薬が落下し終わったら、第1のモータを駆動して落下ホッパ300を下側に移動させると、落下ホッパ300の凹部305cは分包用紙B間に進入し、さらにシャッタ304が、開くことで、散薬が分包用紙B間に収納される。またシャッタ304が開くタイミングで、ホッパ叩き機構324を複数回動作させて、落下ホッパ300に付着した残薬も分包用紙B側に落とすことで1包分の散薬が全て包装用紙B間に収納されるようになっている。
【0037】
散薬を分包用紙Bに収納すると、第1のモータを逆転して落下ホッパ300を上の位置に移動させる。その後、駆動ローラ211及びプラテンローラ205による分包用紙Bの搬送、印刷部202による印刷、縦シール機構206及び横シール機構209によるシールが行われ、1個包分の処理が完了する。落下ホッパ300は、上の位置に移動しても落下ホッパ300の爪部305a、305bが、分包用紙B間に挿入された状態であるが、分包用紙Bの上部は縦シール機構206によるシールは行われていないので、分包用紙Bの移動には支障がない。
【0038】
そして落下ホッパ300を上側に移動して、次の1個包分の散薬の落下を待つ。この一連の動作を繰返すことで、1処方分、複数の個包が完成するものである。
【0039】
次に落下ホッパ300の洗浄のために、落下ホッパ洗浄装置310として以下の機構を具備している。
【0040】
(4)空気吸引機構
図9に示すように、落下ホッパ300が上位置にあるときに、落下ホッパ300の下部に形成された楔状の凹部305cに対向して、この凹部305cを両面から挟んで密閉した空気流路を形成するために、楔の一方の面側に開口部を塞ぐ圧迫子328が設けられている。また、楔の他方の面側には開口部から空気を吸引する吸着子329が設けられている。この圧迫子328と吸着子329とで吸引機構を形成している。非吸引状態では、圧迫子328と吸着子329は、
図9に示すように、328aと329aのように開いた状態である。
【0041】
吸引のために、
図11に示す第2のモータ331が回転するとモータ331の軸に取付けられたカム332が回転し、カムフォロアを兼ねているリンク333を上方に移動させる。このリンク333の移動に伴って、圧迫子328は軸334を中心に
図9に示すように矢印335のように時計方向に回動する。そして、328bのように、分包用紙Bを介して、落下ホッパ300の凹部305cが形成された楔の一方の側を覆うことで下開口部の一方の側を塞ぐ。
【0042】
また、リンク333の上方への移動に伴って、図示しない移動機構によって吸着子329は矢印336の方向に前進して、329aから329bの位置に移動する。これで吸着子329は分包用紙Bを介して、落下ホッパ300の凹部305cが形成された楔の他方の側に圧接する。吸着子329の内側は空気を通す導管337が形成され、配管338を介して、集塵ブロア401に接続されている。
【0043】
図11、
図12に示すように、圧迫子328と吸着子329が、328bと329bの状態にして落下ホッパ300の凹部305cを塞いだ状態で集塵ブロアを駆動すると、落下ホッパ300内の空気は集塵ブロア側に流入することができる。なお、このとき落下ホッパ300の下端の突部である爪部305a、305bは分包用紙B間に挿入された状態であるが、落下ホッパ300の凹部305cは分包用紙Bよりも上方にあるのでこの凹部305cを介して空気を吸引することができる。これらよって、落下ホッパ300内に上方から下方への空気流を形成して、落下ホッパ300内に付着した残薬を除去できる。このように洗浄のために落下ホッパ300の一部を分包用紙B間に挿入したまま洗浄できるので、次の処方作業を連続して行うことができる。
【0044】
(5)圧縮空気吹き付け機構
図6及び
図8のように、
図5に示すコンプレッサ(高圧空気発生装置)402に接続された空気導管325は、分岐部326から、4本の空気吹き出し口327まで連続している。これにより、コンブレッサ402で生成された高圧空気を上位置にある落下ホッパ300の4角の内面に吹き付けることにより、落下ホッパ300内に付着した残薬を落下させることができる。
【0045】
(6)落下ホッパのシャッタの第2の開閉機構
(2)で説明したシャッタの第1の開閉機構は、落下ホッパ300の上下移動に同期して開閉するようになっている。このシャッタ304の第2の開閉機構は、落下ホッパ300が上位置で開閉動作させることによって、落下ホッパ300に振動を加える第2の加振装置を構成している。
図8に示すように、第3のモータ339の軸339aにはカム340が取付けられている。第3のモータ339を駆動することで、カム340を回転させ、これがアーム341を横移動させると、アーム341の先端が、シャッタ304に取り付けられているレバー323を押すことで、シャッタを304aの位置(
図12)に開くことができる。さらに第3のモータ339を複数回回転させることにより、シャッタ304の開閉を繰返すことで落下ホッパ300に振動を加えることができる。
【0046】
(2)で説明したシャッタ304の第1の開閉機構は、落下ホッパ300が上下移動しないと動作できないのに対して、第2の開閉機構は落下ホッパ300が上位置で静止した状態で開閉ができる。この開閉を複数回行うとシャッタ304が、上ホッパ301の下端及び下ホッパの内面を叩くことになり、落下ホッパ300に振動を加えることできる。上ホッパ301や、下ホッパ302及びシャッタ304に付着している残薬を落とすことができる。従って、落下ホッパ洗浄装置310による落下ホッパ300の下方からの吸引と同時に振動を加えることで付着した残薬の洗浄が確実になるものである。
【0047】
以上説明した(3)、(4)、(5)、(6)の機構による落下ホッパの洗浄は、1処方分の複数の個包が、すべて封入された時点、すなわち「1包分配分動作」がすべて終わり、円盤104の散薬の山がなくなり、最後の1包分が、落下ホッパ300の位置から、横シール部209に移動して、シールされた状態としておく。
【0048】
この状態で、
図12のように、落下ホッパ300を上位置、圧迫子328と吸着子329を閉じた状態として、集塵ブロア401を駆動して、落下ホッパ300の内部に上から下への気流を作る。この状態でコンプレッサ402を駆動して、空気吹き出し口327から圧縮空気を上ホッパ301の内壁に吹き付けて、該当部に付着した残薬を吹き飛ばす。この圧縮空気の流れは、上から下に向かっているので、散薬が浮遊する空気は吸着子329を介して集塵ブロア401に導出される。
【0049】
このときに、(3)のホッパ叩きと、(6)のシャッタ開閉を複数回行うことで、落下ホッパ300に強い振動力が加えられ、付着した残薬を内面から剥離させるので、この剥離された残薬も吸着子329を介して集塵ブロア401に導出される。
【0050】
このように付着した残薬は質量を持っているので、自由落下する方向に移動しやすい。それを上から下への重力方向の空気の流れを作ることで、効率よく付着した残薬の除去・清掃を行い、落下ホッパ300の洗浄を行うことができるものである。
【0051】
なお、コンプレッサによる圧縮空気の吹付けは必ずしも必要はないが、圧縮空気を吹き付けたほうがより確実に付着した残薬を除去できる。
【0052】
さらに、円盤配分部の円盤部を2組設けたが1組であっても良いものである。
【0053】
また、散薬に限らず、錠剤の分包装置にも適用できることは前述したとおりである。
【0054】
以上、詳述したように本実施の形態によれば、落下ホッパ部分に上から下への重力方向の空気の流れを作ることと、効果的な振動の付加の相乗効果で、効率よく付着した残薬の除去・清掃が成しうるものである。
【0055】
そして、薬剤分包装置にこの落下ホッパ洗浄機構を搭載することで実用的には、手洗浄なしに1日程度の連続稼動ができるようになる。さらに、全自動の薬剤分包装置にあっては、1日一回の手洗浄に替わって、薬剤カセットに重曹を入れた「洗いカセット」を用意し、この重曹を円盤から供給することで、円盤から、落下ホッパまでの一連の薬剤経路を洗浄できるので、全自動薬剤分包装置の長時間無人運用が実現しうるものである。
【0056】
以上詳述したように本発明によれば薬剤供給部から薬剤を受け入れて薬剤包装部へ払出す落下ホッパに付着した残薬を除去することにより、処方外の物質の混入を防止した薬剤分包装置を提供することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態、変形例を説明したが、これらの実施形態、変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態、変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
100・・・円盤配分部(薬剤供給部)
200・・・印刷包装機(薬剤包装部)
300・・・落下ホッパ
300a・・・上開口部
300b・・・下開口部
304・・・シャッタ
305a、305b・・・爪部(突部)
305c・・・凹部
310・・・落下ホッパ洗浄装置
323・・・レバー
324・・・叩き機構(第1の加振装置)
327・・・空気吹き出し口
328・・・圧迫子
329・・・吸着子
340・・・カム
341・・・レバー
401・・・集塵ブロア(空は吸引装置)
402・・・コンプレッサ(高圧空気発生装置)
B ・・・分包用紙