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特許7108288タッチセンサのコントローラ、タッチセンサユニットおよび操作入力方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】タッチセンサのコントローラ、タッチセンサユニットおよび操作入力方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/02 20060101AFI20220721BHJP
   G06F 3/0362 20130101ALI20220721BHJP
【FI】
G06F3/02 510
G06F3/02 530
G06F3/0362 464
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018106887
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019211954
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】508236240
【氏名又は名称】公立大学法人公立はこだて未来大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】安井 重哉
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164737(JP,A)
【文献】特開2000-347760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/02
G06F 3/0362
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のタッチセンサ面における接触と、第2のタッチセンサ面における接触とを検知する検知部と、
前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第2のタッチセンサ面における接触が検知された場合、所定の操作入力を受け付け、前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れる前に前記第2のタッチセンサ面における接触が検知された場合、前記所定の操作入力をキャンセルする操作入力部と、
を備え
前記所定の操作入力は、操作入力量を増加または減少させる操作入力であり、
前記検知部は、第3のタッチセンサ面における接触を検知し、
前記操作入力部は、前記第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから前記第3のタッチセンサ面における接触が検知された場合、操作入力量を増加または減少させ、前記第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れる前に前記第3のタッチセンサ面における接触が検知された場合、操作入力量の増加または減少をキャンセルすることを特徴とするタッチセンサのコントローラ。
【請求項2】
前記操作入力部は、前記第1のタッチセンサ面における接触が検知されてから所定時間内、または、前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから所定時間内に前記第2のタッチセンサ面における接触が未検知の場合、前記所定の操作入力をキャンセルすることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンサのコントローラ。
【請求項3】
第1のタッチセンサ面と、
第2のタッチセンサ面と、
前記第1のタッチセンサ面における接触と、前記第2のタッチセンサ面における接触とを検知する検知部と、
前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第2のタッチセンサ面における接触が検知された場合、所定の操作入力を受け付け、前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れる前に前記第2のタッチセンサ面における接触が検知された場合、前記所定の操作入力をキャンセルする操作入力部と、
前記第1のタッチセンサ面と前記第2のタッチセンサ面との間に設けられた操作面と、
第3のタッチセンサ面と、
第4のタッチセンサ面と、
を備え
前記第1のタッチセンサ面と前記第2のタッチセンサ面は、前記操作面上の第1の方向に並び、前記第3のタッチセンサ面と前記第4のタッチセンサ面は、前記第1の方向に交差する前記操作面上の第2の方向に沿って並び、
前記所定の操作入力は、スイッチをオンさせる操作入力であり、
前記検知部は、前記第3のタッチセンサ面における接触と、前記第4のタッチセンサ面における接触とを検知し、
前記操作入力部は、前記第3のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第4のタッチセンサ面における接触が検知された場合、前記スイッチをオフさせる操作入力を受け付けることを特徴とするタッチセンサユニット。
【請求項4】
第1のタッチセンサ面における接触を検知するステップと、
前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第2のタッチセンサ面における接触を検知した場合、操作入力量を増加または減少させ、前記第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れる前に前記第2のタッチセンサ面における接触を検知した場合、操作入力量の増加または減少をキャンセルするステップと、
前記第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第3のタッチセンサ面における接触を検知した場合、操作入力量を増加または減少させ、前記第2のタッチセンサ面における接触の検知が途切れる前に前記第3のタッチセンサ面における接触を検知した場合、操作入力量の増加または減少をキャンセルするステップと、
を含むことを特徴とする操作入力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサのコントローラ、タッチセンサユニットおよび操作入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
操作スイッチにタッチセンサを用いて、ユーザが指先で触れることにより、スイッチ操作を可能にする技術が利用されている。機械的なスイッチは、スイッチ操作によってスイッチ部分が摩耗したり、破損することで故障する原因となるが、タッチセンサスイッチではそのような機械的な故障が起きないという利点がある。
【0003】
一般的に、触れる操作に対するタッチセンサの感度は、機械的なスイッチよりも高い。そのため、意図せず触れた場合にタッチセンサは機械的なスイッチよりも誤動作しやすい。特許文献1には、誤動作を抑制するために、カメラの筐体に2つのタッチセンサを設け、2つのタッチセンサに順に触れた場合にスイッチ操作を行い画像を取り込む技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-232770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、意図せずに1つの指で一方のタッチセンサに触れた状態で、別の指で他方のタッチセンサに触れた場合にも、誤ってスイッチ操作が行われる可能性がある。そのため、誤動作の抑制には改善の余地がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、より高い精度で誤動作を抑制できるタッチセンサのコントローラ、タッチセンサユニットおよび操作入力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のタッチセンサのコントローラは、第1のタッチセンサ面における接触と、第2のタッチセンサ面における接触とを検知する検知部と、第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第2のタッチセンサ面における接触が検知された場合、所定の操作入力を受け付け、第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れる前に第2のタッチセンサ面における接触が検知された場合、所定の操作入力をキャンセルする操作入力部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、タッチセンサユニットである。このタッチセンサユニットは、第1のタッチセンサ面と、第2のタッチセンサ面と、第1のタッチセンサ面における接触と、第2のタッチセンサ面における接触とを検知する検知部と、第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第2のタッチセンサ面における接触が検知された場合、所定の操作入力を受け付け、第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れる前に第2のタッチセンサ面における接触が検知された場合、所定の操作入力をキャンセルする操作入力部と、を備える。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、操作入力方法である。この方法は、第1のタッチセンサ面における接触を検知するステップと、第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れてから第2のタッチセンサ面における接触を検知した場合、所定の操作入力を受け付け、第1のタッチセンサ面における接触の検知が途切れる前に第2のタッチセンサ面における接触を検知した場合、所定の操作入力をキャンセルするステップと、を含む。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タッチセンサにおいてより高い精度で誤動作を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るタッチセンサユニットの構成図である。
図2図1のタッチセンサにおけるスライド操作を説明する図である。
図3】タッチセンサの別の構成例を説明する断面図である。
図4】タッチセンサのさらに別の構成例を説明する断面図である。
図5】タッチセンサのさらに別の構成例を説明する平面図である。
図6】タッチセンサのさらに別の構成例を説明する平面図である。
図7】タッチセンサのさらに別の構成例を説明する平面図である。
図8】タッチセンサのさらに別の構成例を説明する平面図である。
図9図9(a)および図9(b)は、タッチセンサのさらに別の構成例を説明する図である。
図10】タッチセンサのさらに別の構成例を説明する平面図である。
図11図11(a)および図11(b)は、タッチセンサのさらに別の構成例を説明する斜視図である。
図12図12(a)および図12(b)は、タッチセンサのさらに別の構成例を説明する平面図である。
図13】タッチセンサのさらに別の構成例を説明する平面図である。
図14】タッチセンサのさらに別の構成例を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施の形態に係るタッチセンサユニット100の構成図である。タッチセンサユニット100は、タッチセンサスイッチとして機能する。タッチセンサユニット100は、タッチセンサ110と、コントローラ120とを含む。
【0014】
タッチセンサ110は、各種方式で、指などによる接触点と、その接触点における接触状態を示す静電容量や電気抵抗量などの状態量を検出する入力装置である。タッチセンサ110は、一例として、静電容量方式、抵抗膜方式または赤外線方式のタッチセンサである。あるいはタッチセンサ110は、複数の圧電素子から構成される超音波表面弾性波方式のタッチセンサであってもよい。タッチセンサ110は一例として、壁に埋め込まれてもよく、特定の装置に設けられてもよい。
【0015】
タッチセンサ110は、第1のタッチセンサ面(A面とも呼ぶ)10aと、第2のタッチセンサ面(B面とも呼ぶ)10bと、操作面20とを含む。第1および第2のタッチセンサ面10a,10bをまとめてタッチセンサ面10とも呼ぶ。タッチセンサ110は、A面10aとB面10bの各面においてその面への接触があったかどうかをセンシングする。A面10aとB面10bとの間隔は、たとえばユーザの指の幅以上である。操作面20は、A面10aとB面10bとの間に設けられる。
【0016】
図2は、図1のタッチセンサ110におけるスライド操作を説明する図である。ユーザの指先などにより、A面10aから操作面20を介するB面10bへのスライド操作、または、B面10bから操作面20を介するA面10aへのスライド操作が行われる。指先などで一方のタッチセンサ面10に触れた後、一方のタッチセンサ面10から指を離し、操作面20をスライドさせず、続いて他方のタッチセンサ面10に触れるタッチ操作が行われてもよい。
【0017】
図1に戻る。コントローラ120は、タッチセンサ110に接続され、タッチセンサ110上の接触点と状態量を検知し、検知された信号について所定の信号処理を行う。コントローラ120は、タッチセンサ110に対してユーザの指先などにより所定のタッチ操作がなされたか否かを判定し、所定のタッチ操作があった場合に所定の操作入力を受け付けてその操作を実行に移す。所定の操作入力は、たとえば、照明の点灯やエレベータの停止階指定などに用いられるスイッチをオンまたはオフさせる操作であったり、音量などのボリュームを増減させる操作である。
【0018】
コントローラ120は、検知部40と、判定部50と、操作入力部60とを含む。これらの機能構成は、ハードウェア、ソフトウェアまたはその組み合わせによって実装することができる。
【0019】
検知部40は、タッチセンサ110における指先などによる接触の有無を検知する。検知部40は、A面10aにおける接触とB面10bにおける接触とを検知する。
【0020】
判定部50は、検知部40により検知された接触の有無にもとづいて、A面10aにおける接触の検知が途切れてから所定時間内にB面10bにおける接触が検知された場合、第1のタッチ操作がなされたと判定する。また判定部50は、B面10bにおける接触の検知が途切れてから所定時間内にA面10aにおける接触が検知された場合、第2のタッチ操作がなされたと判定する。所定時間は、特に限定されないが、たとえば1秒以下であってもよく、その最適値は実験によって適宜定めることができる。
【0021】
判定部50によりタッチ操作がなされたと判定された場合、操作入力部60は、当該タッチ操作に対応する所定の操作入力を受け付け、実行に移す。たとえば、操作入力部60は、第1のタッチ操作に対応してスイッチをオンさせたり音量を上げるなどの操作入力を受け付け、第2のタッチ操作に対応してスイッチをオフさせたり音量を下げるなどの操作入力を受け付け、当該操作が実行されるように制御する。
【0022】
判定部50は、A面10aにおける接触の検知が途切れてから所定時間内にB面10bにおける接触が未検知の場合、タッチ操作が未完了であると判定する。操作入力部60は、判定部50によりタッチ操作が未完了であると判定された場合、操作入力の受け付けをキャンセルする。
【0023】
このように複数のタッチセンサ面10に順に触れなければ操作入力を受け付けないので、1つのタッチセンサ面10に意図せず触れた場合にスイッチが誤動作することを抑制できる。誤って一方のタッチセンサ面10だけに触れて、所定時間経過後に他方のタッチセンサ面10に触れた場合にも誤動作を抑制できる。
【0024】
また、操作時に、複数のタッチセンサ面10に順次触れるという、ユーザが注意を払わなければならない能動的な動作が必要となるため、1ヶ所に触れるだけで操作できてしまう従来のタッチスイッチよりも、操作入力をしたことがユーザにはっきりと認識される。
【0025】
また判定部50は、A面10aにおける接触の検知が途切れる前にB面10bにおける接触が検知された場合、または、B面10bにおける接触の検知が途切れる前にA面10aにおける接触が検知された場合にもタッチ操作が未完了であると判定する。つまり、A面およびB面10bの両方で同時に接触が検知された場合、タッチ操作が未完了であると判定する。
【0026】
A面10aとB面10bとの間隔が指の幅より大きいため、スイッチ操作を意図したスライド操作では、A面10aとB面10bの両方に同時に接触することはほとんどないことが想定される。一方、スライド操作ではなく、意図せずに一つの指により一方のタッチセンサ面10に触れながら、別の指で他方のタッチセンサ面10に触れた場合に、操作入力が誤って行われるという誤動作を抑制できる。したがって、より高精度に誤動作を抑制できる。
【0027】
ところで、タッチセンサスイッチの場合、機械的なスイッチ動作がないために、スイッチ動作が指先に触感として伝わらず、スイッチを入れたかどうかがわかり難い可能性がある。そのため、従来、タッチセンサの場合でも機械的な振動を指先に伝えて操作感を与えるようにする方法が取られている。しかし、タッチセンサにおいて何らかの機械的な振動を与える方法では、タッチセンサに振動機構を設ける必要があり、部品数が増え、小型化の妨げになり、また製造コストもかかってしまう。
【0028】
そこで、簡素な構成で触覚による操作感を与えることができるタッチセンサ110の様々な構成例を以下に説明する。以下では、コントローラ120の基本的な動作は以上の説明と同様である。
【0029】
図3は、タッチセンサ110の別の構成例を説明する断面図である。図3は、スライド操作の操作方向に沿った縦断面である。
【0030】
この構成例では、操作面20は、A面10aから操作面20を介するB面10bへのスライド操作の際、および、その反対方向へのスライド操作の際に、触感に変化がもたらされるように構成される。具体的には、操作面20には傾斜面22が設けられる。傾斜面22は、A面10aからB面10bに近づくにしたがい上昇する。ここで、指先がA面10aに接触している状態から指先を動かして傾斜面22を登り、指先がB面10bに接触している状態に遷移したとする。このとき、指先には傾斜面22を登ったという感触が伝わる。
【0031】
また、B面10bからA面10aへのスライド操作により、指先には傾斜面22を降りたという感触が伝わる。つまり、A面10aから操作面20を介するB面10bへのスライド操作の際の触感の変化は、B面10bから操作面20を介するA面10aへのスライド操作の際の触感の変化とは異なる。
【0032】
ユーザには傾斜面22を登った、または、傾斜面22を降りたという指の感触がフィードバックされるので、操作入力を行ったという操作感が与えられる。そのため、手元を見ることなく、操作結果を予測したり、操作方向を確認したりしながら操作できる。手元を見なくてもよいため、暗い場所での操作にも適している。
【0033】
たとえば、所定の操作入力がエアコンの温度を上げる操作である場合には、操作を行ってから温度が上がったことを体感するまでに時間差が生じる可能性がある。この場合、傾斜面22を登ったという指の感触により操作結果を予測できるので、操作結果を体感する前であっても、正しい操作を行ったという安心感をユーザに与えることもできる。
【0034】
図4は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する断面図である。この構成例では、操作面20には凸部24が設けられる。A面10aからB面10bへのスライド操作により、指先には凸部24を乗り越えたという感触が伝わる。ユーザには凸部24を乗り越えたという指の感触がフィードバックされるので、操作入力を行ったという操作感が与えられる。
【0035】
凸部24の形状は任意であり、ユーザが指をスライドさせたときに何らかの感触が与えられる形状であればよい。たとえば、凸部24は、鋭角の凸部24であってもよく、曲率のある凸部24であってもよい。スライド操作の方向に関する凸部24のサイズは、指の幅より小さくてもよい。操作面20には、凸部24に代えて図示しない凹部が設けられてもよい。
【0036】
凸部24は、たとえばB面10b寄りに設けられてもよい。これはB面10b側がオンに相当することをユーザに知覚させるためである。凸部24があることで2つのタッチセンサ面10のどちらの面がオン側であるかを触知覚することができるため、ユーザが誤った方向にスライド操作することを抑制できる。
【0037】
図5は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する平面図である。タッチセンサ110は、図1の構成に加え、凸部26と、第3のタッチセンサ面(C面とも呼ぶ)10cと、第4のタッチセンサ面(D面とも呼ぶ)10dと、別の操作面20bと、凸部28とを備える。
【0038】
凸部26は、操作面20aに設けられる。A面10aとB面10bの組は、C面10cとD面10dの組に並列に配置される。A面10aとB面10bとの間の距離は、C面10cとD面10dとの間の距離と略等しい。
【0039】
別の操作面20bは、C面10cとD面10dとの間に設けられる。別の操作面20bは、C面10cから別の操作面20bを介するD面10dへのスライド操作の際に触感に変化がもたらされるように構成される。凸部28は、別の操作面20bに設けられる。
【0040】
操作面20aと別の操作面20bとにおいて同一方向のスライド操作の際の触感の変化が異なる。この構成例では、凸部26は、B面10b寄りに設けられる。凸部28は、C面10c寄りに設けられる。
【0041】
C面10cとD面10dに関するコントローラ120の処理は、受け付ける操作入力が異なることを除き、A面10aとB面10bに関する処理と同様である。検知部40は、C面10cにおける接触とD面10dにおける接触とを検知する。操作入力部60は、C面10cにおける接触の検知が途切れてからD面10dにおける接触が検知された場合、所定の操作入力とは異なる操作入力を受け付ける。この場合、たとえば、所定の操作入力によりオンさせるスイッチとは異なるスイッチをオンさせる。
【0042】
A面10aからB面10bへのスライド操作と比較して、C面10cからD面10dへのスライド操作では、スライド方向は同じであるが、凸部28を乗り越えたという感触が指先に伝わるタイミングが早い。そのため、異なる操作入力に対応する複数組のタッチセンサ面10が並んでいる場合にも、触覚の違いにより、操作しているタッチセンサ面10が何のスイッチであるかユーザに容易に認識させることができる。
【0043】
図6は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する平面図である。この構成例では、操作面20の凸部30は、A面10aからB面10bに向かう方向に延び、凸部30の幅は、A面10aからの距離に応じて変化する。具体的には、凸部30の幅は、A面10aから離れるほど広がる。操作面20には、凸部30に代えて凹部が設けられてもよい。
【0044】
A面10aからB面10bへのスライド操作により、指先には凸部30の幅が徐々に広がるという感触が伝わる。反対方向のスライド操作により、指先には凸部30の幅が徐々に狭まるという感触が伝わる。そのため、操作入力を行ったという操作感が与えられ、手元を見ることなく、操作結果を予測したり、操作方向を確認したりしながら操作できる。
【0045】
図7は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する平面図である。操作面20には、スライド操作の操作方向に並ぶ複数の凸部32が設けられる。平面視において、凸部32は、操作方向に直交する操作面20内の軸に対して非対称であり、一例としてA面10a側に頂点が位置する三日月形状を有する。
【0046】
この構成例では、A面10aからB面10bへのスライド操作と比較して、反対方向のスライド操作では、凸部32により指先に伝わる抵抗が大きく、ユーザは指をスライドさせ難く感じうる。そのため、手元を見ることなく、操作結果を予測したり、操作方向を確認したりしながら操作できる。
【0047】
このようにタッチセンサ110の操作面20に物理的な凸部、凹部または傾斜面を設けることで、スライド操作をした場合に操作感が指先に感触として伝わるため、操作入力をしたことがユーザにはっきりと認識されるという作用効果を奏する。タッチセンサ110に凸部、凹部または傾斜面を設けるだけでよいため、振動素子などで機械的な振動などを与える場合に比べて部品数が少なく安価で製造することができ、構造的にも簡単であるから故障することも少ない。
【0048】
図8は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する平面図である。この構成例では、操作面20には物理的な隆起などは設けられておらず、A面10aおよびB面10bと、操作面20とで表面加工が異なる。一例として、A面10aおよびB面10bは平らで滑らかな面であるが、操作面20にはざらざらした表面加工が施されている。そのため、指先をA面10aからB面10bにスライドさせたときに指先に質感の違いが伝わる。スライド操作を行ったユーザには触感が変化したという指の感触がフィードバックされるので、操作入力を行ったという操作感が与えられる。操作面20の表面加工は、A面10aからの距離に応じて変化してもよいし、操作面20の一部だけで異なってもよい。
【0049】
図9(a)および図9(b)は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する図である。図9(a)はタッチセンサ110の斜視図であり、図9(b)は図9(a)のX-X’断面図である。
【0050】
この構成例では、A面10aおよびB面10bと、操作面20とにおいて触れた際の質感が異なる。具体的には、操作面20の材質は、A面10aおよびB面10bの材質とは異なる。たとえば、操作面20の材質は木材であり、A面10aおよびB面10bの材質はプラスチック、ガラスなどである。スライド操作を行ったユーザには触感が変化したという指の感触がフィードバックされるので、操作入力を行ったという操作感が与えられる。また、スライド操作の際に、ユーザに木材の触り心地を楽しませることもできる。
【0051】
また、タッチセンサ110の表面は凹んでおり、凹んだ領域に操作面20、タッチセンサ面10が設けられている。そのため、ユーザは、凹んだ領域に沿ってスライド操作を行いやすい。
【0052】
このようにスライド動作をした場合に指先で知覚される質感が変わるように構成することで、操作面20に物理的な隆起などを設けなくてもユーザに操作感をフィードバックすることができる。
【0053】
他の構成例として、A面10aおよびB面10bと、操作面20とで表面温度を異ならせることもできる。表面温度の違いは実際の温度の違いであってもよいが、実際の温度差ではなく、体感される温度の違いであってもよい。
【0054】
操作面20の温度は、A面10aからの距離に応じて変化してもよい。たとえば、タッチセンサ110が暖房のスイッチの場合、オン側のB面10b寄りをオフ側のA面10a寄りに比べて表面温度が高くなるように電熱線などで温めてもよい。
【0055】
図10は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する平面図である。この構成例では、平面視において、B面10bは、円形のA面10aの周囲を囲う円環形状である。A面10aとB面10bの間には、円環形状の操作面20が設けられる。A面10aからB面10bへのスライド操作、および、その反対方向のスライド操作の際、面内における上下左右、斜めなどの任意の方向へのスライド操作を検知できる。そのため、スライド操作の方向の自由度を高くできる。
【0056】
図11(a)および図11(b)は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する斜視図である。図11(a)では、タッチセンサ110は、円錐台形状に形成された凸部を有する。A面10aは、凸部の上面に設けられる。B面10bは、凸部の側面に環状に設けられる。A面10aとB面10bの間の凸部の側面には、操作面20が環状に設けられる。
【0057】
図11(b)では、タッチセンサ110は、円錐台形状に形成された凹部を有する。A面10aは、凹部の底面に設けられる。B面10bは、凹部の側面に環状に設けられる。A面10aとB面10bの間の凹部の側面には、操作面20が環状に設けられる。
【0058】
これらの構成例では、図10の同一の平面に2つのタッチセンサ面10を設ける構成例とは異なる操作感をユーザに与えることができる。なお、凸部または凹部は、円錐台形状に代えて、角錐台形状などであってもよい。
【0059】
図12(a)および図12(b)は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する平面図である。このタッチセンサ110は、たとえば音量などを段階的に増減するボリュームコントロールとして用いられる。
【0060】
図12(a)の構成例では、タッチセンサ110は、一列に並んだ4つのタッチセンサ面10、すなわちA面10a、B面10b、C面10c、D面10dを有する。隣り合う2つのタッチセンサ面10の間には操作面20が設けられる。
【0061】
操作入力部60は、A面10aにおける接触の検知が途切れてから所定時間内にB面10bにおける接触が検知された場合、操作入力量を増加させ、B面10bにおける接触の検知が途切れてから所定時間内にC面10cにおける接触が検知された場合、操作入力量を増加させる。操作入力部60は、C面10cにおける接触の検知が途切れてから所定時間内にD面10dにおける接触が検知された場合、操作入力量を増加させる。
【0062】
指先をA面10aからB面10b、C面10c、D面10dへとスライドさせることにより、たとえば音量を増加させるなどのボリューム調整のコマンドが実行される。指先を逆方向へスライドさせることにより、たとえば音量を減少させるなどのボリューム調整のコマンドが実行される。接触するタッチセンサ面10の数に応じて、操作入力量が変化する。
【0063】
図12(b)の構成例では、タッチセンサ110は、円状に配置されたA面10a、B面10b、C面10c、D面10d、E面10e、F面10fを有し、スライド操作が円状になされる。たとえば、A面10a、B面10b、C面10c、D面10d、E面10e、F面10fの順にスライド操作した後、続けてA面10a、B面10b等にスライド操作することで、複数のタッチセンサ面10が一列に並べられる場合と比較して、連続的により広い調整幅でボリューム調整を実行できる。
【0064】
これらの構成例では、A面10aからB面10bなど、隣り合う任意の2つのタッチセンサ面10のみでスライド操作した場合にも、ボリューム調整がなされうる。操作入力部60は、1つのタッチセンサ面10における接触の検知が途切れる前に、当該タッチセンサ面10に隣り合うタッチセンサ面10における接触が検知された場合、操作入力量の増加または減少をキャンセルする。これにより、隣り合う任意の2つのタッチセンサ面10に意図せず触れてしまった場合などにボリューム調整されてしまうことを抑制できる。
【0065】
図13は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する平面図である。このタッチセンサは、ロック解除などに利用される。9個のタッチセンサ面10、すなわちA面10a、B面10b、C面10c、D面10d、E面10e、F面10f、G面10g、H面10h、I面10iは、マトリクス状に配置されている。
【0066】
検知部40は、複数のタッチセンサ面10のそれぞれにおける接触を検知する。操作入力部60は、1つのタッチセンサ面10における接触の検知が途切れてから所定時間内に当該1つのタッチセンサ面10に隣り合う他のタッチセンサ面10における接触が検知された場合、当該接触動作に対応する所定の操作入力を受け付ける。操作入力部60は、1つのタッチセンサ面10における接触の検知が途切れる前に他のタッチセンサ面10における接触が検知された場合、所定の操作入力をキャンセルしてもよい。操作入力部60は、所定数の操作入力を所定の順番で受け付けた場合、ロック解除などの所定の操作を実行する。
【0067】
コントローラ120には、複数のタッチセンサ面10の接触の順番が予め登録される。たとえば、予め登録されたH面10h、G面10g、D面10d、E面10e、F面10f、B面10b、E面10e、H面10h、I面10i、H面10hの順にスライド操作することで、ロック解除を実行できる。
【0068】
図14は、タッチセンサ110のさらに別の構成例を説明する平面図である。この構成例では、タッチセンサ110は、建物のドア200の隣の壁面210に設けられ、たとえば照明のスイッチをオンまたはオフさせる。
【0069】
A面10aとB面10bは、操作面20上の横方向(第1の方向)d1に並ぶ。C面10cとD面10dは、第1の方向に交差する操作面20上の縦方向(第2の方向)d2に並ぶ。
【0070】
横方向d1にA面10aまで延びる線220と、横方向d1にB面10bまで延びる線222とが設けられている。これらの線220,222は、ユーザが認識可能であれば立体構造であってもよいし、塗料などを塗布して形成されてもよい。A面10aとB面10bとの間には、線220,222が設けられていない。C面10cとD面10dとの間には、縦方向d2に延びる点線224が設けられている。この点線224も、立体構造であってもよいし、塗料などで形成されてもよい。
【0071】
操作入力部60は、A面10aにおける接触の検知が途切れてから所定時間内にB面10bにおける接触が検知された場合、または、B面10bにおける接触の検知が途切れてから所定時間内にA面10aにおける接触が検知された場合、スイッチをオンさせる。
【0072】
操作入力部60は、C面10cにおける接触の検知が途切れてから所定時間内にD面10dにおける接触が検知された場合、または、D面10dにおける接触の検知が途切れてから所定時間内にC面10cにおける接触が検知された場合、スイッチをオフさせる。
【0073】
つまりA面10aからB面10bへのスライド操作、または、その反対方向へのスライド操作により、スイッチがオンされる。このスライド操作は、2つの線220と線222をつなげるイメージをユーザに想起させる。一方、C面10cからD面10dへのスライド操作、または、その反対方向へのスライド操作により、スイッチがオフされる。このスライド操作は、スイッチをオンさせるためのスライド操作の方向に交差するので、つないだ線220と線222を断ち切るイメージをユーザに想起させる。よって、より高精度に誤操作を抑制できる。
【0074】
以上のタッチセンサユニット100による他の作用効果を説明する。
【0075】
(1)故障しにくい
本実施の形態のタッチセンサ110には、通常のボタンやスイッチなどの可動機構が存在しないため、それに起因する装置の変形もしくは破損などが発生せず、また、故障もしにくい。
【0076】
(2)安価に製造できる
本実施の形態のタッチセンサ110は、スイッチとしての形状をあらわす構成部材とタッチセンサという、いずれも既存の安価な部材で構成される。また、複雑な機械的機構を必要としないため、加工にかかる手間は一般的なスイッチを製造するより少ない。これらの特徴により、タッチセンサユニット100を安価に製造することが可能になる。
【0077】
(3)適用環境を拡張しやすい
本実施の形態のタッチセンサ110は、構造が比較的単純であるため、大きさや形状の制限を受けにくい。その結果、大きさや形状の自由度が高まるため、狭い場所や曲面上などにも設置可能であり、多様な環境や場面に適用することができる。
また一般に、ある装置に可動式のスイッチ部材が存在すると、スイッチを可動させるために必要な隙間部分から水や埃が侵入するため、防塵性や防水性を確保することが困難になる。本実施の形態のタッチセンサユニット100には可動機構が存在しないため、単純なコーティングによってスイッチの密閉性を確保でき、防塵や防水などの保護等級を上げることが容易である。なお、防水性を考慮する場合は、操作面のタッチセンサのセンシング方式は静電容量ではなく、抵抗膜などのように水濡れの影響を受けにくいものにする必要がある。
【0078】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0079】
操作入力部60は、A面10aにおける接触の検知から所定時間内に、A面10aにおける接触の検知が途切れてからB面10bにおける接触が検知された場合、所定の操作入力を受け付けてもよい。この場合、操作入力部60は、A面10aにおける接触が検知されてから所定時間内にB面10bにおける接触が未検知の場合、所定の操作入力をキャンセルする。この変形例によれば、コントローラ120の構成の自由度を向上できる。
【0080】
所定の操作入力が、誤操作をより高精度に抑制する必要のある緊急停止スイッチなどをオンさせる操作である場合、操作面20には、スライド操作を妨げる高さの障壁が設けられてもよい。この場合、スライド操作ではなく、A面10aに触れた後で指を離し、所定時間内に障壁をよけてB面10bに触れるタッチ操作を行うことで、操作入力を実行できる。この変形例によれば、より高精度に誤操作を抑制できる。
【0081】
図10~14の構成例においても、操作面20は、スライド操作の際に触感に変化がもたらされるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10…タッチセンサ面、20…操作面、22…傾斜面、24,26,28,30,32…凸部、40…検知部、50…判定部、60…操作入力部、100…タッチセンサユニット、110…タッチセンサ、120…コントローラ。
図1
図2
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