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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】バレル
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/20 20060101AFI20220721BHJP
   B24B 31/02 20060101ALI20220721BHJP
   B65D 45/02 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C25D17/20 F
B24B31/02 Z
B65D45/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018114423
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019218575
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592190486
【氏名又は名称】木田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】木田 潔
(72)【発明者】
【氏名】木田 賀文
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-057960(JP,U)
【文献】特開2004-149855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D17/18-17/20
B24B31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離反して設けられる一対の端壁とこれら一対の端壁間の周囲を取り囲む状態で設けられる透水性の筒壁とを有したバレルにおいて、
前記筒壁における周方向の一部に被処理品出し入れ用の開口部が形成されたバレル本体と前記バレル本体の前記開口部を閉鎖する大きさに形成されたバレル蓋とに結合離脱自在とされており、
前記バレル蓋には、
当該バレル蓋が前記バレル本体に結合された状態でバレル外から操作可能な配置で設けられた開閉操作部と、
前記開閉操作部に付与する回転操作又は揺動操作を直線動作に変換する動作変換部と、
前記動作変換部により取り出される直線動作によって前記バレル本体に設けられた被係合部と係合離脱自在となる係合動作部と、
が設けられて おり、
前記係合動作部は、前記バレル本体における前記筒壁に設定される筒軸に直交する方向で前記開口部の対向二辺に各別に対応して一対設けられており、
前記バレル本体の前記開口部の対向二辺にはそれぞれ前記被係合部が設けられており、
前記動作変換部は、前記開閉操作部の操作時には前記開口部の対向二辺ごとに対応する個々の前記係合動作部同士を相互離反又は相互近接となる向きへスライドさせる対称配置構造で一対設けられて いることを特徴とするバレル。
【請求項2】
前記開閉操作部は、1/3回転を超えない回転角を有して設けられていることを特徴とする請求項1記載のバレル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっきなどに用いられるバレルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気めっき等の表面処理(色づけや研磨等を含めるものとする)に用いるバレルとして、処理槽内で揺りかご状に揺動させたり、水平な軸心まわりで回転させたりしながら使用するものは周知である。この種のバレルは、基本的には、互いに離反して設けられる一対の端壁とこれら一対の端壁間の周囲を取り囲む状態で設けられる透水性の筒壁とを有している。
【0003】
ところで、筒壁における周方向の一部(筒壁が正六角形の筒であるときには隣接二斜面を含んだ山形部分とする等)を結合離脱自在にすることにより、離脱側のバレル蓋と、受け側のバレル本体と、を有する構成とされたものが知られている(特許文献1等参照)。この場合、バレル蓋を外すことでバレル本体に生じる開放部位が、被処理品を出し入れするための開口部とされる。
【0004】
この種のバレルでは、バレル本体の開口部をバレル蓋で閉じたときに、バレルの揺動や回転時に生じる振動や遠心力はもとより被処理品による負荷等でもバレル蓋が外れないようにするために、バレル蓋に閉鎖状態を保持させるためのロック機構を採用したものがある。
例えば特許文献1では、バレル蓋に対し、その二斜面に沿うように山形に屈曲された締め付け部材(「く」字状に曲げた棒材)が3箇所設けられており、これら締め付け部材の両端をバレル本体のフック部へ噛み込ませた後、締め付け部材の中央(バレル蓋における二斜面の頂上位置に対応)に設けたネジ式のダイヤルを回転させることで、締め付け部材をバレル蓋から浮き上がらせ、その両端によるフックへの当接力(この当接力に対する反発でバレル蓋をバレル本体へ押し付ける作用)を生じさせる構造となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-49696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バレルを用いた表面処理では、1サイクルの処理を終えるたびにバレル内の被処理品を入れ替えることになる。この被処理品の入れ替え作業は、表面処理全体の流れ(サイクルタイム)を大きく左右することになるので高効率で行うことが希求されるところである。
しかしながら、この種のバレルでは、特許文献1に例示されているようにネジ式のダイヤルを何回転も回転させる等の手間をかけなければ、バレル本体からバレル蓋を外すことができない。当然ながら、バレル本体をバレル蓋で閉鎖する場合にも、ネジ式ダイヤルを何回転もさせる等の手間が必要になる。すなわち、ダイヤルの回転操作等といった手間は、バレルに対する1サイクルの処理当たり少なくとも2回必要になっている。
【0007】
それ故、このようなバレル蓋の開閉作業が表面処理のサイクルタイムを短縮化するうえで大きなネックになっていた。なお、前記したように、今日の表面処理では処理効率の高能率化が希求されていることから、処理工程もライン化され、多数のバレルを一斉に使用する傾向となっていきているため、バレル蓋の開閉作業はサイクルタイムの問題もさることながら、作業者にとって大きな労働負担ともなっている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、めっき等の表面処理に用いるバレルにおいて、バレル本体に対するバレル蓋の結合離脱(開閉)作業を迅速且つ簡単に行えるようにして、被処理品の入れ替え作業の高効率化を図り、もって表面処理全体のサイクルタイムの短縮化が図れるようにするバレルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係るバレルは、互いに離反して設けられる一対の端壁とこれら一対の端
壁間の周囲を取り囲む状態で設けられる透水性の筒壁とを有したバレルにおいて、前記筒壁における周方向の一部に被処理品出し入れ用の開口部が形成されたバレル本体と前記バレル本体の前記開口部を閉鎖する大きさに形成されたバレル蓋とに結合離脱自在とされており、前記バレル蓋には、当該バレル蓋が前記バレル本体に結合された状態でバレル外から操作可能な配置で設けられた開閉操作部と、前記開閉操作部に付与する回転操作又は揺動操作を直線動作に変換する動作変換部と、前記動作変換部により取り出される直線動作によって前記バレル本体に設けられた被係合部と係合離脱自在となる係合動作部と、が設けられていることを特徴とする。
【0010】
前記開閉操作部は、1/3回転を超えない回転角、好ましくは1/4回転相当の回転角を有して設けられたものとするのが好適である。
前記係合動作部は前記バレル本体における前記一対の端壁に対して各別に対応して一対設けられていると共に、前記バレル本体の前記一対の端壁にはそれぞれ前記被係合部が設けられており、前記動作変換部は、前記開閉操作部の操作時には前記端壁ごとに対応する個々の前記係合動作部同士を相互離反又は相互近接となる向きへスライドさせる対称配置構造で一対設けられているものとすることができる。
【0011】
又は、前記係合動作部は、前記バレル本体における前記筒壁に設定される筒軸に直交する方向で前記開口部の対向二辺に各別に対応して一対設けられており、前記バレル本体の前記開口部の対向二辺にはそれぞれ前記被係合部が設けられており、前記動作変換部は、前記開閉操作部の操作時には前記開口部の対向二辺ごとに対応する個々の前記係合動作部同士を相互離反又は相互近接となる向きへスライドさせる対称配置構造で一対設けられているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るバレルは、バレル本体に対するバレル蓋の結合離脱(開閉)作業を迅速且つ簡単に行えるようにして、被処理品の入れ替え作業の高効率化が図られ、もって表面処理全体のサイクルタイムの短縮化が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るバレルの第1実施形態についてバレル本体とバレル蓋とに分離した状態を示した斜視図である。
図2】本発明に係るバレルの第1実施形態について組み立て状態を示した斜視図である。
図3】開閉操作部を示した平面図であって(a)はアンロック状態であり(b)はロック状態である。
図4】本発明に係るバレルの第1実施形態における使用状態を示した側面図である。
図5】本発明に係るバレルの第2実施形態についてバレル本体とバレル蓋とに分離した状態を示した斜視図である。
図6】蓋止め機構の別例を示した機構説明図である。
図7】蓋止め機構の更に別例を示した機構説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図4はバレル1の第1実施形態を示している。このバレル1は、互いに離反して設けられる一対の端壁3と、これら一対の端壁3間の周囲を取り囲む状態で設けられる透水性の筒壁4とを有して、内部が空洞に形成されて成る。この内部の空洞が、被処理品と処理液とを接触させるための被処理品収容部5として使用される。端壁3や筒壁4は、例えば塩化ビニル系樹脂等の絶縁材料により形成されている。
【0015】
筒壁4(場合によっては端壁3を含む)には、被処理品は通過不能とするが処理液の流通は妨げない多くの小孔やスリット、網目等(いずれも図示略)が形成されており、これらによってバレル内外での透水性が確保されている。また端壁3には、筒軸が通る位置(揺動又は回転の軸心位置)に、陰極用の電極(図示略)を差し込むための電極孔7が形成されている。
【0016】
このバレル1では、筒壁4における周方向の一部であり、且つ一対の端壁3間にわたる部位をその他の部位に対して結合離脱自在にしてある。ここにおいて離脱される側がバレル蓋10とされる。また、離脱されたバレル蓋10を元に戻して結合させる側(受け側となるもの)がバレル本体11とされる。
すなわち、このバレル1は、バレル本体11とバレル蓋10とを有して構成されたものであり、バレル本体11に対してバレル蓋10が開閉自在となっている。
【0017】
なお、端壁3については、その全てがバレル本体11のみに設けられる場合と、分割されてバレル蓋10及びバレル本体11の両方に振り分けられる場合とがある。本第1実施形態は後者(振り分けの例)である。
本第1実施形態において、筒壁4は正六角形の筒形に形成されたものを示しており、この筒壁4における六面壁のうち、隣り合って山形を呈する一組の二斜面を含んで形成されるものをバレル蓋10として離脱できるようにしてある。
【0018】
このようなバレル蓋10に対し、バレル本体11は、当然の如く筒壁4においてバレル蓋10を除いた部分である。そして、バレル本体11においてバレル蓋10を離脱した位置に生じる長方形状の開放部位が、バレル1に対して被処理品を投入したり排出したりする際に使用する開口部12とされる。
言うまでもなく、バレル蓋10は、バレル本体11の開口部12を閉鎖する大きさを有している。
【0019】
このようなバレル本体11に設けられた開口部12は、筒壁4における周方向の一部であって且つ一対の端壁3間にわたる大きさで形成されたものである。そして、開口周部を形成する四辺の立壁(長辺壁及び短辺壁)が、開口平面(開口縁部で囲まれる仮想上面)に対して直交する垂直壁となるように形成してある。すなわち、開口部12は、対向する長辺壁の相互間距離、及び対向する短辺壁の相互間距離が、開口側(開口平面)で最大幅になっている、と言うことができる。
【0020】
そのため、バレル蓋10を離脱させた状態のバレル本体11につき、開口部12が真下を向くような姿勢とさせた場合には、バレル本体11内に形成される被処理品収容部5の内周面全てが鉛直方向に沿った姿勢となり、この被処理品収容部5に収容された被処理品は何ら引っ掛かりを受けることなく、残らず真下へ落下することになる。
バレル本体11には一対の端壁3にそれぞれ重ねあわされるようにして、筒壁4の径方向外方へ円形板状に張り出す一対のフランジ部15が設けられている。これらフランジ部15の張り出し量は、バレル蓋10をバレル本体11に結合させたときに、フランジ部15の外周部がこのバレル蓋10を超える高さとなるようにしてある。
【0021】
またこのバレル本体11には、バレル蓋10を被せた際における両者の相対的な位置決めをするために、開口部12を挟んで互いに対向する筒軸方向(長辺側)の開口縁部に、一対(2本)の嵌合突堤20が設けられている。これら一対の嵌合突堤20により、バレル蓋10の両サイドを嵌合状態にして位置決めできるようになっている。
このようなバレル1には、バレル本体11に対するバレル蓋10の結合状態をロック又はアンロックするための蓋止め機構21が設けられている。
【0022】
この蓋止め機構21は、バレル蓋10に対して設けられた開閉操作部23と動作変換部24と係合動作部25とを有している。また、バレル本体11には、係合動作部25が係合するための被係合部26が設けられている。
開閉操作部23、動作変換部24、係合動作部25は、いずれも、バレル蓋10に対して少なくとも1個、設けられたものであればよい。しかし、本第1実施形態では、ロック作用の確実化及び安定化を図るために、開閉操作部23はバレル蓋10が有する2斜面に各1個(計2個)設けられ、動作変換部24は1個の開閉操作部23に対して、それぞれ一対(2個)設けられたものとしている。すなわち、動作変換部24は、1つのバレル蓋10として合計4個が設けられていることになる。
【0023】
また、係合動作部25は動作変換部24と1対1対応になるため、1つのバレル蓋10として合計4個が設けられていることになる(係合動作部25は1個の開閉操作部23に一対設けられている)。これら各係合動作部25は、バレル本体11の個々の斜面ごとで
、一対の端壁3に対応させるように割り振られている。
そして、この係合動作部25が係合するための被係合部26は、バレル本体11のフランジ部15に対して、フランジ厚を貫通する長孔状の貫通孔によって形成されたものとしてある。
【0024】
開閉操作部23は、バレル蓋10がバレル本体11に結合された状態でバレル外から操作可能な配置、すなわち、バレル蓋10の斜面外側に設けられている。筒壁4に設定される筒軸方向において、バレル蓋10とバレル本体11との結合向きは特に限定されないため、使用上の汎用性を持たせるうえで、開閉操作部23は、各斜面における筒軸方向の中央位置に配置するのが好適となる。
【0025】
図3に示すように、この開閉操作部23は、回転軸30を中心として回転自在に保持された例えば円盤形等のダイヤルとされている。
動作変換部24は、開閉操作部23に回転操作が付与されたときに、この回転力を直線動作に変換して取り出すためのものである。本第1実施形態ではロック用のカム機構24aとアンロック用のカム機構24bとの二種を有したものを例示してある。
【0026】
具体的には、ロック用のカム機構24aは、開閉操作部23の裏面で回転軸30から径方向に突出して、開閉操作部23と一体回転可能に設けられた押し出しカム31と、この押し出しカム31に対向する係合動作部25の端面によって形成された従動カム32と、の組み合わせによって構成されている。
押し出しカム31は、回転軸30に対して相反する2位置(180°離れた2位置)にそれぞれ設けられている(2個ある)ので、この押し出しカム31を形成している素材は全体として長方形状を呈している。
【0027】
このような構造であるため、ロック用のカム機構24aは、開閉操作部23を図3(a)の状態から時計回りに回転させた場合に、押し出しカム31の回転角が変位するほどに、押し出しカム31と従動カム32との接点位置が回転軸30から離れるようになり、その結果、係合動作部25が押し出されるようになる(図3(b)参照)。
なお、押し出しカム31は長方形を呈した素材の一組の対角部にアール面取りを施すことで形成されており、従動カム32を押し出す際の回転では従動カム32との当接が小抵抗で円滑に行われるようになっている。そのため、係合動作部25の押し出しが軽快に行えるようになっている。
【0028】
なお、図3(b)に示した係合動作部25の押し出し状態では、押し出しカム31に隣接する隅角部37が従動カム32に当接しているが、この隅角部37は略直角に形成されている。そのため、係合動作部25に対して押し返し方向の外力が作用したとしても、隅角部37が従動カム33に高面圧接触することになって回転軸30の反時計回り方向への自発的な回転を阻止するようになる。すなわち、開閉操作部23を意欲的に反時計回りへ回転させない限り、一旦、押し出された係合動作部25が引き込んでしまうことはないように対策されている。
【0029】
一方、アンロック用のカム機構24bは、係合動作部25の一端部上面に凹設された円弧カーブを有する引き込みカム35と、開閉操作部23の裏面で引き込みカム35に噛み合うように円弧カーブを有して形成された従動カム36との組み合わせによって構成されている。
引き込みカム35の円弧カーブと従動カム36の円弧カーブとは、いずれも開閉操作部23の回転軸30から偏心した同一位置を中心に形成されたものとなっており、引き込みカム35と従動カム36とが噛み合った時には、図3(a)に示すように両者が馴染んで面接触するようになっている。
【0030】
このような構造であるため、アンロック用のカム機構24bは、開閉操作部23を図3(b)の状態から反時計回りに回転させた場合に、開閉操作部23の回転角が変位するほどに、引き込みカム35と従動カム36との接点位置が回転軸30に近接するようになり、その結果、係合動作部25が引き込まれるようになる。
このとき、ロック用のカム機構24aは、押し出しカム31が回転軸30と一体回転することになるので、押し出しカム31と従動カム32との接点位置についても回転軸30
に近接するようになり、係合動作部25の引き込み動作を阻害することはない。
【0031】
係合動作部25は、図1及び図2に示すように、バレル蓋10の外面を、筒壁4に設定された筒軸と平行な方向でスライド自在に設けられている。
スライド動作部25がスライドするストロークの制限及びバレル蓋10に対するスライド動作部25の摺接状態は、係合動作部25に形成された長孔38と、この長孔38を貫通してバレル蓋10に固定されるガイドボルト39とにより保持する構造としてある。
【0032】
係合動作部25の先端は、図1から明らかなように、バレル蓋10をバレル本体11から外した状況下(蓋止め機構21のアンロック状態時)では、バレル蓋10から突出しないようになっており、バレル蓋10をバレル本体11に結合して蓋止め機構21をロック状態にすることで、バレル蓋10から突出するようになっている。
すなわち、開閉操作部23の操作時にはバレル蓋10における一対の端壁3(フランジ部15)に対し、それぞれに対応させた個々の係合動作部25同士を相互離反させる向きへスライドさせたり、反対に相互近接させる向きへスライドさせたりする。
【0033】
そのため、蓋止め機構21のロック状態下では、係合動作部25の先端がバレル本体11のフランジ部15に設けられた被係合部26と係合して、バレル蓋10の離脱が防止されるものである。
要するに、このような蓋止め機構21は、開閉操作部23を回転操作することにより、バレル本体11に結合させたバレル蓋10をロック状態にしたり、係合を解除してバレル本体11に結合させたバレル蓋10をアンロック状態にしたり切り換えることができる。
【0034】
この際、開閉操作部23に許容された回転角は、1/3回転を超えない範囲(本第1実施形態では1/4回転相当)としてある。
このようなことから、バレル本体11に対するバレル蓋10の結合離脱(開閉)作業を迅速且つ簡単に行えるようになり、被処理品の入れ替え作業の高効率化が図られ、もって表面処理全体のサイクルタイムの短縮化が図れるようになる。
【0035】
なお、開閉操作部23の回転角において「1/3回転」としたのは厳密に120°を限定したものではなく、同様に「1/4回転」についても厳密に90°を限定したものではない。いずれも、ある程度の数値幅を許容するものであり、要は、開閉操作部23への操作が、持ち直しが不要な「ひねり操作」で済むようになっていればよい。
ところで、図4は、処理槽40でのめっき処理を行う場合の搬送の一例を示しているが、この図4では、複数(図例では2つ)のバレル1を筒壁4の筒軸方向(図4の左右方向)に連結した状態で例示してある。
【0036】
このような場合、個々のバレル1は、それぞれ一対の端壁3(フランジ部15)を有したものとなる。しかし、両バレル1相互間の連結部分を構成する端壁3については、両バレル1間に一つだけ設けて共用したり、或いは省略したりする(連結ではなく横長一体形にする)ことが可能である。
すなわち、図4に示すような連結タイプとする場合にあって、連結部分の端壁3は仕切り壁として機能するものであり、本来、「一対の端壁3」と呼べるものは、連結によって長くなる方向(筒壁4の筒軸方向に同じ)の両端側(図4の左端側と右端側)に配置される端壁3となる。
【0037】
図5は、本発明に係るバレル1の第2実施形態を示している。本第2実施形態が第1実施形態(図1及び図2参照)と異なるところは、蓋止め機構21の係合動作部25を、バ筒壁4の筒軸に対して直交する方向でスライドさせるようにしてある点にある。
係合動作部25は、筒軸方向に沿って長い板状に形成されており、その長手方向の中央部に対して、開閉操作部23及び動作変換部24が設けられている。
【0038】
これら開閉操作部23や動作変換部24の細部構造及び作用効果については、第1実施形態で説明したものと略同様であり、同一作用を奏するものに同一符号を付することでここでの詳説は省略する。
なお、本第2実施形態において係合動作部25のスライド方向が筒軸に直交した方向である、としたのは、バレル本体11の開口部12において、筒軸に平行する開口縁部(筒軸方向に直交して対向する二辺)に対して各別に被係合部26が設けられているためであ
る。この被係合部26は、開口部12における筒軸方向の開口縁部に対して、その全長にわたり横向きに開放する溝状に形成されたものとしてある。
【0039】
このような本第2実施形態は、バレル蓋10が平板状に形成される場合、すなわち、筒壁4が正八角形の筒形に形成される場合等に適合するのが好適であり、また筒壁4における筒軸方向の寸法が短く形成される場合に適合するのが好適と言える。
図6は蓋止め機構21の別例を示している。図6に示した蓋止め機構21は、動作変換部24として平行リンクを利用したものである。
【0040】
すなわち、両サイド(図6の上下)に配置される一対の長リンク50はその一端部に係合動作部25が形成されたものであり、これら一対の長リンク50が、3本の短リンク51によってリンク結合されたものとしてある。これら3本の短リンク51は、それらの長手方向中央部に揺動支点52が設けられ、バレル蓋10に取り付けられている。
そして、中央配置の短リンク51に対して、その揺動支点52と同心で開閉操作部23が設けられている。
【0041】
このような構成の蓋止め機構21では、開閉操作部23を回転操作することで3本の短リンク51が個々の揺動支点52を支点として一斉に揺動し、長リンク50を相対逆方向へ移動させるようになる。そのため、これによりバレル蓋10における一対の端壁3(フランジ部15の被係合部26)に対し、それぞれに対応させた個々の係合動作部25同士を相互離反させる向きへスライドさせたり、反対に相互近接させる向きへスライドさせたりする。
【0042】
図7は、蓋止め機構21の更に別例を示している。図7に示した蓋止め機構21は、動作変換部24としてラック歯55とピニオンギヤ56との組み合わせを利用したものである。
すなわち、ピニオンギヤ56における外周の対向位置に一対のラック歯55が噛合されており、これらラック歯55には、延長ロッド57を介して揺動自在に保持させた係合動作部25がリンク接合されたものとなっている。
【0043】
そして、ピニオンギヤ56の回転軸と同心で開閉操作部23が設けられている。
このような構成の蓋止め機構21では、開閉操作部23を回転操作することでピニオンギヤ56がラック歯55を相対逆方向へ移動させるようになるので、これにより、バレル蓋10における一対の端壁3(フランジ部15の被係合部26)に対し、それぞれに対応させた個々の係合動作部25同士を相互離反させる向きへ揺動させたり、反対に相互近接させる向きへ揺動させたりする。
【0044】
ところで、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、バレル1において、筒壁4は正多角形以外の多角形による筒形としたり円筒形としたりすることも可能である。なお、端壁3の形状は、筒壁4の端部を閉塞できるものであれば何ら限定されないものであり、またフランジ部15の有無も限定されない。
【0045】
表面処理がめっきである場合において、めっきの種類、被処理品の材質や形状などは何ら限定されるものではない。
開閉操作部23は、回転操作するものであると説明したが、その回転角は1/3回転未満とするのが好適である旨をも説明している通り、回転角が小さければ小さいほど、その操作に要する作業者の負担は軽減される。このような小さな回転角を採用する場合では、開閉操作部23をレバー形に形成することも可能であり、この場合、開閉操作部23の操作を「揺動操作」と表現することも許容される。
【0046】
開閉操作部23の操作は、人為作業によるものとすればよいが、処理槽40などに付設した装置などによって機械化(自動化)することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 バレル
3 端壁
4 筒壁
5 被処理品収容部
7 電極孔
10 バレル蓋
11 バレル本体
12 開口部
15 フランジ部
20 嵌合突堤
21 蓋止め機構
23 開閉操作部
24 動作変換部
24a ロック用のカム機構
24b アンロック用のカム機構
25 係合動作部
26 被係合部
30 回転軸
31 押し出しカム
32 従動カム
33 従動カム
35 引き込みカム
36 従動カム
37 隅角部
38 長孔
39 ガイドボルト
40 処理槽
50 長リンク
51 短リンク
52 揺動支点
55 ラック歯
56 ピニオンギヤ
57 延長ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7