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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】消毒装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/00 20060101AFI20220721BHJP
   A01K 13/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A01K1/00 Z
A01K13/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018130294
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020005574
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-02-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 説明した場所:帯広市役所 帯広市西5条南7丁目1番地、説明した日:平成30年6月4日。
(73)【特許権者】
【識別番号】506310050
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】内海 洋
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-534824(JP,A)
【文献】特開2014-073403(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02737794(EP,A1)
【文献】特開2008-079611(JP,A)
【文献】実開昭48-015973(JP,U)
【文献】国際公開第2015/157499(WO,A1)
【文献】特開2018-050483(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0074672(US,A1)
【文献】特表2001-522611(JP,A)
【文献】実開昭52-075681(JP,U)
【文献】実開昭60-125856(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/00 - 3/00
A01K 11/00 - 37/00
A01K 41/00 - 45/00
A61D 1/00 - 99/00
A61L 2/00 - 2/28
A61L 11/00 - 12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物が立つ床に設置されるとともに、前記動物の搾乳装置の外側、かつ前記搾乳装置の入口ゲートの前にあり、床面より高い位置かつ前記動物の後足の蹄の後ろ側に対応する位置に、少なくとも水平方向に開いた開口があるカバーと、
前記カバーに覆われ、前記搾乳装置の内側にいる前記動物の後足の蹄の後ろ側に向けて前記開口を介して消毒液を噴霧する第1ノズルと、
を備える消毒装置。
【請求項2】
請求項1に記載の消毒装置において、
前記搾乳装置の出口ゲートが開くことを検出するセンサと、
前記出口ゲートが開くことを前記センサが検出すると、前記搾乳装置の内側にいる前記動物の後足の蹄の後ろ側に向けて前記第1ノズルから消毒液を噴霧する制御部と、
を備える消毒装置。
【請求項3】
請求項2に記載の消毒装置において、
設定圧力以上の際にのみ開く第1バルブを介して前記第1ノズルが取り付けられる環状経路と、
前記環状経路内で消毒液を循環させる循環ポンプと、
前記環状経路に高圧をかけるための噴霧ポンプと、
前記噴霧ポンプを前記環状経路に接続する圧力付加経路であって、前記噴霧ポンプから前記環状経路へ向かう消毒液の流れのみを許可する第2バルブが設けられた圧力付加経路と、を備え、
前記制御部は、消毒液を噴霧しない通常時は、前記循環ポンプにより前記環状経路の圧力を前記設定圧力以下として前記環状経路内に消毒液を循環させ、消毒液を噴霧する際には、前記噴霧ポンプにより前記環状経路の圧力を前記設定圧力よりも大きくすることで、前記第1ノズルから消毒液を噴霧させる消毒装置。
【請求項4】
動物の通過領域を挟む位置に立つパイプであって、前記通過領域に向き少なくとも水平方向に開いた開口が床側にあり、前記動物の搾乳装置の外側、かつ前記搾乳装置の入口ゲートの前にあるパイプと、
前記パイプ内にあり、前記通過領域を通過して前記搾乳装置の内側に入った前記動物の後足の蹄の後ろ側に向けて前記開口を介して消毒液を噴霧する第2ノズルと、
前記搾乳装置の出口ゲートが開くことを検出するセンサと、
前記出口ゲートが開くことを前記センサが検出すると、前記搾乳装置の内側にいる前記動物の後足の蹄の後ろ側に向けて前記第2ノズルから消毒液を噴霧する制御部と、
を備える消毒装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1つに記載の消毒装置において、
前記消毒液は、無塩型次亜塩素酸水である消毒装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1つに記載の消毒装置において、
前記動物は、牛などの偶蹄目である消毒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に記載の実施形態は、蹄の消毒技術に関する。
【背景技術】
【0002】
蹄病予防のため、消毒液により蹄を消毒する技術が知られる(例えば特許文献1,2)。特許文献1には、消毒液を貯めた槽を乳牛に通過させ、乳牛に足浴を行わせることで蹄を消毒することが記載される。特許文献2には、洗浄通路に乳牛を通過させる間、通路側壁の噴霧ノズルから下方に消毒液を噴霧し、蹄を消毒することが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-514022号
【文献】特表2003-534824号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、乳牛の足に付着する汚物が槽内に持ち込まれると、消毒液の効果が汚物によって低下する。そのため、特許文献1では、一定数の乳牛が槽内を通過する毎に槽内の消毒液を取り換える必要があり、連続して多頭の乳牛を消毒できない。
【0005】
特許文献2では、通路側壁の噴霧ノズルから通路を通過中の動物の蹄に対して下方に向けて消毒液を噴霧する。そのため、消毒液が直接蹄壁にはかかるが、蹄病が生じやすい蹄底や趾間には消毒液がかかりづらい。
【0006】
この明細書は、連続して多頭の乳牛を消毒することが可能であり、かつ蹄において蹄病が生じやすい部位を消毒可能な消毒技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の消毒装置は、動物が立つ床に設置され、床面より高い位置かつ前記動物の後足の蹄の後ろ側に対応する位置に、少なくとも水平方向に開いた開口があるカバーと、前記カバーに覆われ、前記動物の後足の蹄の後ろ側に向けて前記開口を介して消毒液を噴霧する第1ノズルと、を備える。
【0008】
実施形態の消毒装置では、前記カバーは、搾乳装置の入口ゲートの前にあり、前記搾乳装置の出口ゲートが開くことを検出するセンサと、前前記出口ゲートが開くことを前記センサが検出すると、前記第1ノズルから消毒液を噴霧する制御部と、を備える。実施形態の消毒装置では、前記カバーは、搾乳装置の出口の前にあり、前記搾乳装置から搾乳終了を示す信号を受信することにより、前記第1ノズルから消毒液を噴霧し、前記動物が前記搾乳装置から退出したことを示す信号を前記搾乳装置から受信することにより、前記第1ノズルからの消毒液の噴霧を停止する制御部と、を備える。
【0009】
実施形態の消毒装置では、設定圧力以上の際にのみ開く第1バルブを介して前記第1ノズルが取り付けられる環状経路と、前記環状経路内で消毒液を循環させる循環ポンプと、前記環状経路に高圧をかけるための噴霧ポンプと、前記噴霧ポンプを前記環状経路に接続する圧力付加経路であって、前記噴霧ポンプから前記環状経路へ向かう消毒液の流れのみを許可する第2バルブが設けられた圧力付加経路と、を備え、前記制御部は、消毒液を噴霧しない通常時は、前記循環ポンプにより前記環状経路の圧力を前記設定圧力以下として前記環状経路内に消毒液を循環させ、消毒液を噴霧する際には、前記噴霧ポンプにより前記環状経路の圧力を前記設定圧力よりも大きくすることで、前記第1ノズルから消毒液を噴霧させる。
【0010】
実施形態の消毒装置は、動物の通過領域を挟む位置に立つパイプであって、前記通過領域に向き少なくとも水平方向に開いた開口が床側にあるパイプと、前記パイプ内にあり、前記通過領域を通過する前記動物の蹄の後ろ側に向けて前記開口を介して消毒液を噴霧する第2ノズルと、を備える。
【0011】
実施形態の消毒装置では、前記パイプは、搾乳装置の入口ゲートの前にあり、前記搾乳装置の出口ゲートが開くことを検出するセンサと、前記出口ゲートが開くことを前記センサが検出すると、前記第1ノズルから消毒液を噴霧する制御部と、を備える。
【0012】
実施形態の消毒装置は、開口があり、動物が通過する床材と、前記動物の蹄底に消毒液を噴霧するための蹄底用ノズルであって、前記床材の下方にあり、前記開口を介して前記床の上方に向けて消毒液を噴霧する蹄底用ノズルとを備える。
【0013】
実施形態の消毒装置では、搾乳装置の出口に繋がる消毒通路があり、前記消毒通路の床に設けられ、排水を行う凹状の消毒側ピットと、床上の消毒液及び汚物を前記消毒側ピットに落下させるためのピット開口が複数あり、前記消毒側ピットを覆うピットカバーと、前記ピットカバー上に置かれるマットであって、前記ピット開口のいずれかに繋がり前記いずれかのピット開口と共に前記開口を形成するマット開口と、前記マット開口につながり、前記ピット開口を介して消毒液および汚物を前記消毒側ピットに落下させるためのスリットと、があるマットと、を備え、前記ピットカバーおよび前記マットは前記床材を構成する。
【0014】
実施形態の消毒装置では、前記消毒側ピットは、前記搾乳装置の床下に設けられた搾乳側ピットと繋がり、かつ、前記搾乳側ピットよりも浅く、前記消毒側ピット内の消毒液は、前記搾乳側ピットに流れる。実施形態の消毒装置では、前記蹄底用ノズルは、前記動物の左右の後足毎にあり、前記動物の左右の後足の副蹄を消毒するために左右の副蹄毎にある副蹄用ノズルは、噴霧口が床の上方、かつ前記蹄底用ノズルに対して前記消毒装置内の前記動物の進行方向と交差する方向における外側に位置し、前記消毒液を、前記動物の進行方向の前方、かつ、上方に噴霧する。
【0015】
実施形態の消毒装置は、動物が通過する床にあり消毒液を収容するタンクと、前記タンクに基準位置から下方に没入可能に設けられるとともに、基準位置への復元力を付与される蹄底用ノズルであって、前記動物に踏まれて下方に没入すると前記消毒液が床上に向かって噴出する蹄底用ノズルとを備える。
【0016】
実施形態の消毒装置では、前記消毒液は、無塩型次亜塩素酸水であり、前記動物は、牛などの偶蹄目である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の消毒装置および搾乳装置を示す平面図である。
図2】消毒装置の断面図である。
図3】消毒液の経路の構成例を示す図である。
図4】第2実施形態の消毒装置を示す図である。
図5】第3実施形態の消毒装置を示す図である。
図6】消毒液の経路の構成例を示す図である。
図7】第4実施形態の搾乳装置および消毒装置の床の構成を示す図である。
図8】ピットカバーおよびマットの斜視図である。
図9】マットが撓む様子を示す断面図である。
図10】マット開口の他の例を示す断面図である。
図11】蹄底用ノズルの位置を示す平面図である。
図12】ノズルの位置や向きを示す側面図である。
図13】後足のノズルへ消毒液を供給する経路において、消毒側ピット周りの構成例を示す図である。
図14】第4実施形態の消毒装置が組み込まれた搾乳装置の床の構成を示す図である。
図15】蹄壁用ノズルおよび副蹄用ノズルの構成を示す模式図である。
図16】第5実施形態の消毒装置の断面図である。
図17】消毒側ピットへ通じる隙間を示す平面図である。
図18】蹄底用ノズルの作動原理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1は、消毒装置1および搾乳装置9を示す平面図である。
消毒装置1は、牛舎内の搾乳装置9の入口ゲート93前にある。消毒装置1については後述する。
【0019】
搾乳装置9は、濃厚飼料を呼び餌とし、乳牛を自発的に装置9内に進入させ、自動的に搾乳する。搾乳装置9は、対向するフレーム91,92により形成される搾乳通路90を備える。フレーム91は、それぞれが水平方向に延びて上下に隙間を開けて設けられた複数のポールを備える。フレーム92は、入口ゲート93側の支柱と、出口ゲート98側の支柱と、下端が乳牛の胴体の高さのあたりに位置するように両支柱間に亘って設けられた板状の壁部と、を備える。搾乳装置9は、飼槽94およびロボットアーム95を、壁部と床との間を通して搾乳通路90の内外へ移動させる。フレーム92には、搾乳通路90の上方を覆う屋根部が取り付けられる。
【0020】
搾乳通路90は、乳牛を一頭収容可能な長さおよび幅を有する。搾乳装置9は、入口ゲート93前の領域の赤外線の変化を感知するセンサにより、入口ゲート93前の領域における乳牛の有無を検出する。搾乳装置9は、乳牛にとりつけられた無線タグから乳牛の識別情報をリーダを用いて読み取る。搾乳装置9は、装置9内へ乳牛を受け入れる場合、入口ゲート93を開く。入口、出口ゲート93、98は、それぞれが水平方向に延びて上下に隙間を開けて設けられた複数のポールを備える。入口、出口ゲート93、98において、下端のポールは、乳牛の胴体の高さあたりにある。
【0021】
搾乳装置9は、搾乳通路90における乳牛の進行方向前方に飼槽94を出すとともに、飼槽94に濃厚飼料を給飼する。乳牛は搾乳通路90の前方に進み、濃厚飼料を食べる。搾乳装置9は、屋根部に設置されるカメラにより、乳牛が搾乳通路90内に入りきったことを検出すると、入口ゲート93を閉じる。
【0022】
搾乳装置9は、可動式のロボットアーム95を搾乳通路90内に出し、センサにより乳頭の位置を検出して乳頭を洗浄した後、乳頭にティートカップを装着する。搾乳装置9は、搾乳し、ミルクをタンクに送るとともに、ミルクに係る成分や温度等をセンサにて検出する。搾乳通路90の床には凹状のピットが設けられており、該ピットを閉塞するように重量計96が設けられている。乳牛は、濃厚飼料を食べている間、重量計96に乗っている。搾乳装置9は、重量計96により乳牛の重量を測る。ミルクに係る情報および乳牛の重量は、搾乳装置9の制御装置97(制御部)が取得する。制御装置97は、後述の制御装置2と同様、プロセッサ、メモリ、ディスプレイ、入力部を備える。
【0023】
重量計96には、汚物や乳頭の洗浄剤をピットに落下させるための排水口961が設けられている。排水口961には、蹄の落下を防止する複数のバーが隙間を開けて設けられている。ピットに落下する汚物等は、ピット内に設けられた排出口を介してピット外に排出される。ユーザは、制御装置97を操作し、制御装置97のディスプレイにてミルクに係る情報および乳牛の重量を確認できる。制御装置97は、入口、出口ゲート93,98の開閉等、搾乳装置9の各種の制御を行う。ユーザは、ディスプレイに表示される設定画面にて、搾乳装置9の操作および各種の設定を行うことができる。
【0024】
搾乳装置9は、搾乳後、ロボットアーム95および飼槽94を搾乳通路90外へ移動させた後、出口ゲート98を開く。乳牛は、出口ゲート98を通って搾乳装置9から退出する。搾乳装置9は、屋根部にあるカメラにより、搾乳通路90内から乳牛が退出したことを検出すると、出口ゲート98を閉める。
【0025】
消毒装置1は、搾乳装置9内の乳牛の後足の蹄に消毒液を噴霧する。消毒装置1は、カバー11、趾間用ノズル12、センサ13、および制御装置2を備える。
【0026】
カバー11は、動物が立つ床に設置され、上方を乳牛が通過する。カバー11は、例えばステンレス製である。カバー11は、乳牛の進行方向(図1中左右方向)に直交する直交方向(図1中上下方向)に延びる。カバー11には、乳牛の左右の後足の蹄の後ろ側に対応する各位置に開口111がある。開口111は、搾乳通路90内における乳牛の進行方向を向く。カバー11下の空間において、開口111に対応する箇所に趾間用ノズル12(第1ノズル)がある。趾間用ノズル12は、開口111を介して消毒液を噴霧する。趾間用ノズル12は、消毒液を円錐状に広げて噴霧する。趾間用ノズル12による消毒液の噴霧は、制御装置2の制御により行われる。センサ13は、出口ゲート98の開閉を検出し、出口ゲート98の開閉を示す信号を制御装置2に出力する。センサ13としては、例えば、出口ゲート98の開閉に伴って、出口ゲート98に取り付けられた磁石が適宜の位置にあるリードスイッチの接点を開閉させるものを使用できる。
【0027】
制御装置2は、プロセッサ21、メモリ22、ディスプレイ23、入力部24を備える。プロセッサ21は、メモリ22内のプログラムを読み込むことにより、消毒液の噴霧処理等の消毒装置1の各種の処理を実行する。ディスプレイ23は、消毒装置1が取得する情報や、消毒装置1の設定画面等を表示する。入力部24は、ユーザの入力を受け付けるものであり、キーやタッチパネルである。
【0028】
図2は、消毒装置1の断面図である。
カバー11は、上方に膨出し湾曲した本体部112と、本体部112における乳牛の進行方向(図2中左右方向)両端に接続する平板部113とを備える。カバー11は、平板部113を利用してボルト等により床に固定される。床がコンクリートであってもよく、カバー11は、開口111を有する部位が上方に露出するようにして他の部位がコンクリートに埋め込まれていてもよい。開口111は、床面より高い位置にあり、少なくとも水平方向に開いている。本体部112の下方の空間に、消毒液が流通する配管14が通される。配管14に趾間用ノズル12が取り付けられる。趾間用ノズル12は、カバー11に覆われ、先端等が開口111から外部に出ないように設置される。配管14内には、配管14を保温するための熱線141が入れられる。熱線141は手動でONされてもよいし、サーモスタットにより自動で環境温度が低下するとONされるようになっていてもよい。
【0029】
制御装置2は、搾乳装置9が搾乳後に出口ゲート98を開けると、出口ゲート98が開くことをセンサ13にて検出し、趾間用ノズル12により消毒液を噴霧する。趾間用ノズル12は、開口111を介して消毒液を、床と平行な成分を含むように円錐状に噴霧する。趾間用ノズル12の位置や角度、噴霧される消毒液の拡がり方(霧密度)は、消毒液が、床と入口ゲート93の間を通って、搾乳装置9内において図1にも示される待機位置の乳牛の後足の蹄の後ろ側から副蹄を含む範囲に噴霧されるように設定される。
【0030】
乳牛の蹄は、乳牛の幅方向内側(図2中の拡大図上側)にある内蹄と、幅方向外側にある外蹄(図2中の拡大図下側)とに別れている。内蹄と外蹄の間には趾間が形成されている。趾間用ノズル12から噴霧される消毒液の一部は、趾間を通って蹄の後方から前方に抜け、蹄の趾間および蹄底に直接あたって該部分を消毒する。制御装置2は、搾乳装置9が出口ゲート98を閉じると、出口ゲート98が閉まることをセンサ13にて検出し、消毒液の噴霧を終了する。
【0031】
図3は、消毒液の経路の構成例を示す図である。
趾間用ノズル12が取り付けられる配管14は、循環ポンプ153を通る環状経路143を構成している。循環ポンプ153は、タンク151から消毒液を送り出すとともに、環状経路143内で消毒液を循環させる。消毒液は、無塩型次亜塩素酸水を用いるものとするが、適宜のものを使用可能である。タンク151内の消毒液は、ヒータ152により36℃~40℃に温度が保たれている。趾間用ノズル12は、設定圧力以上の圧力がかかると開くチェックバルブ121を介して環状経路143(配管14)に接続する。チェックバルブ121は、趾間用ノズル12内に組み込まれていてもよい。通常時は、制御装置2は、循環ポンプ153により環状経路143内の消毒液を、チェックバルブ121の設定圧力以下の低圧で循環させる。
【0032】
環状経路143における趾間用ノズル12と循環ポンプ153の間には、噴霧ポンプ154を環状経路143に接続する圧力付加経路144が接続する。噴霧ポンプ154は、環状経路143に高圧をかけるためのものであり、タンク151からの消毒液をチェックバルブ155を介して循環経路へ高圧で送る。チェックバルブ155は、噴霧ポンプ154から環状経路143へ向かう一方向の消毒液の流れのみを許可する。制御装置2は、消毒液の噴霧時には、噴霧ポンプ154により消毒液を高圧で送り、環状経路143の圧力を、チェックバルブ121の設定圧力より大きい高圧とする。これにより、各趾間用ノズル12のチェックバルブ121は同時に開き、各趾間用ノズル12が同時に消毒液を噴霧する。このように、制御装置2は、ポンプ153,154の出力を制御することで、消毒する時のみ趾間用ノズル12を開いて消毒液を噴霧できる。
【0033】
(第1実施形態の効果)
消毒装置1は、蹄の消毒を消毒液の噴霧により行うので、足浴で行う場合に必要となる槽内の消毒液の交換が不要である。そのため、消毒装置1は、連続して多頭の乳牛を消毒できる。消毒装置1は、床に沿って乳牛の後足の蹄の後ろ側に向けて消毒液を噴霧する。一部の消毒液は、趾間の後方から前方へと抜ける。これにより、消毒装置1は、乳牛の後足の蹄の蹄壁や蹄底、趾間を消毒できる。蹄病の90パーセントは後足に生じるところ、消毒装置1は、乳牛の後足の蹄のみを消毒の対象とした装置構成とされることで、簡素な構成で乳牛の蹄病予防に十分な効果を奏することができる。
【0034】
消毒装置1のカバー11および趾間用ノズル12は、搾乳装置9の入口ゲート93前にある。そのため、搾乳装置9によって位置が規定される乳牛の後足に対して消毒液を噴霧できる。従って、消毒装置1は、消毒液を乳牛の後足に蹄に確実に噴霧できる。
【0035】
搾乳中に乳牛を消毒すると、乳牛が不快に感じて搾乳量が落ちるおそれがある。消毒装置1は、出口ゲート98が開くことを検出してから消毒液を噴霧するので、搾乳後に消毒でき、搾乳量の低下をもたらさない。消毒装置1は、出口ゲート98が開くことを検出してから消毒液を噴霧するので、乳牛の搾乳装置9からの退出を促すことができ、搾乳装置9の稼働率の向上につながる。
【0036】
酪農は寒冷地で行われることが多いため、消毒液や消毒液を噴霧するノズルの凍結防止が課題となる。消毒装置1では、趾間用ノズル12が、先端が開口111から出ず全体がカバー11に覆われている。そのため、趾間用ノズル12をカバー11により保温でき、趾間用ノズル12の凍結を抑制できる。消毒装置1では、通常時には配管14内の消毒液を循環ポンプ153により低圧で循環させ、消毒液の噴霧時には、噴霧ポンプ154により、趾間用ノズル12が取り付けられた配管14の前段へ高圧で消毒液を送り出す。そのため、趾間用ノズル12から同時に消毒液を噴霧でき、また、通常時は消毒液の凍結を抑制できる。さらに、補助的に、熱線141をカバー11内に設置しているので、これによっても配管14内の消毒液の凍結防止を図ることができる。これにより、環境温度が-30℃でも配管14内の消毒液の凍結を防止できる。
【0037】
消毒装置1は、消毒液として無塩型次亜塩素酸水を利用するので、消毒液としてホルムアルデヒドや硫酸銅を含有するものを利用する場合に比べ、環境への負荷を抑制できる。無塩型次亜塩素酸水は匂いが無いので、乳牛にとって違和感がない。
【0038】
(第1実施形態の変形例)
趾間用ノズル12を、適宜の駆動機構により、水平方向において乳牛に対して左右に往復して回動させることで、消毒液の噴霧範囲を拡げてもよい。
【0039】
消毒装置1の制御装置2は、搾乳装置9の制御装置97から搾乳の終了を示す信号または出口ゲート98を開くことを示す信号を受信することで、消毒液の噴霧を開始してもよい。消毒装置1の制御装置2は、搾乳装置9の制御装置97から出口ゲート98を閉める信号を受信することで、消毒液の噴霧を終了してもよい。搾乳装置9では、出口ゲート98を無くし、飼槽94を搾乳通路90へ出すことで乳牛の退室を不許可とし、飼槽94を搾乳通路90外へ移動させることで乳牛の退室を許可とする構成のものもある。消毒装置1の制御装置2は、搾乳装置9の制御装置97から乳牛が搾乳通路90から退室したことを示す信号を受信することで、消毒液の噴霧を終了してもよい。
【0040】
消毒装置1(カバー11および趾間用ノズル12)は、設定位置に留まる乳牛に対して設けられると、後足の蹄への後方からの消毒液の噴霧が効果的に行える。従って、消毒装置1は、例えば、ロータリーパーラやパラレルパーラにおける個別のパーラへの入口の前や、フィードステーションにおける各個別の柵内への入り口前に設置できる。消毒装置1は、乳牛が一方向に通過する通路内に設置されてもよく、乳牛の後方から乳牛の後足の蹄に向けて消毒液を噴霧できればよい。
【0041】
消毒装置1による消毒液の噴霧対象の動物は、乳牛でなくてもよく、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジなどの蹄を有する動物であってもよい。趾間の消毒という観点からは、消毒装置1による消毒液の噴霧対象の動物が、牛等の偶蹄目であると消毒装置1の効果をより発揮できる。
【0042】
(第2実施形態)
以下の各実施形態の説明では、前述の実施形態と同様の構成の説明は省略するか、簡略に説明する。
図4は、消毒装置1Eを示す図である。
消毒装置1Eは、搾乳装置9の搾乳通路90の出口の前にある。消毒装置1Eは、搾乳装置9から搾乳終了を示す信号を受信することにより、趾間用ノズル12から消毒液を噴霧する。搾乳装置9から退出した乳牛は、消毒装置1Eのカバー11を越えて歩いていくところ、各後足の蹄の後方に消毒装置1Eから消毒液がかけられる。一部の消毒液は、趾間の後方から前方へ抜けていき、趾間を消毒する。消毒装置1Eは、搾乳装置9から乳牛が搾乳装置9から退出したことを示す信号を受信することにより、趾間用ノズル12からの消毒液の噴霧を停止する。
【0043】
(第2実施形態の効果)
消毒装置1Eは、第1実施形態と同様、乳牛の後足の蹄の趾間等を消毒できる。
【0044】
(第3実施形態)
図5は、消毒装置1Aを示す図である。
消毒装置1Aは、2つのパイプ11Aを備える。2つのパイプ11Aは、搾乳装置9の入口ゲート93に向かう乳牛の通過領域PAを挟む位置に立つ。パイプ11Aには、床側に開口111Aがある。開口111Aは、通過領域PAおよび搾乳装置9側に向き、かつ、少なくとも水平方向に開いている。パイプ11A内には配管14Aが通る。配管14Aにおいて、開口111Aに対応する位置に趾間用ノズル12A(第2ノズル)が接続する。趾間用ノズル12Aは、パイプ11Aに覆われ、先端等が開口111Aから外部に出ないように設置される。配管14A内には、不図示の熱線が設置される。
【0045】
趾間用ノズル12Aは、開口111Aを介して消毒液を床と平行な成分を含むように円錐状に噴霧する。趾間用ノズル12Aの位置や角度、噴霧される消毒液の拡がり方等は、第1実施形態と同様、搾乳装置9内の乳牛の後足の蹄の後ろ側から副蹄を含む範囲に消毒液が噴霧されるように設定される。消毒装置1Aは、センサ13により搾乳装置9の出口ゲート98が開くことを検出することにより、または搾乳装置9から搾乳終了を示す信号を受信することにより、搾乳装置9内の乳牛の後足の蹄に向かって、趾間用ノズル12Aから消毒液を噴霧させる。消毒装置1Aは、搾乳装置9の出口ゲート98が閉まることを検出することにより、または搾乳装置9から乳牛の退出を示す信号を受信することにより、消毒液の噴霧を終了する。
【0046】
図6は、消毒液の経路の構成例を示す図である。
消毒装置1Aでは、循環ポンプ153は無く、配管14Aへは噴霧ポンプ154によりタンク151から消毒液が送られる。噴霧ポンプ154は、配管14Aへの圧力の開放非開放を切り替える電磁弁を備えており、制御装置2Aにより消毒液の噴霧の指示を受けた際に、迅速に配管14Aへの圧力を増大させることができる。消毒装置1Aでは、通常時から配管14Aへ高圧力をかけておく。消毒装置1Aは、消毒液を噴霧する際に、噴霧ポンプ154を駆動させることにより、瞬時に配管14A内に圧力をかけることができ、これにより、各趾間用ノズル12Aのチェックバルブ121が瞬時に開放し、各趾間用ノズル12Aから消毒液が同時に噴霧される。
【0047】
(第3実施形態の効果)
消毒装置1Aは、趾間用ノズル12Aにより、搾乳装置9内の乳牛の後足の蹄に対し、斜め後ろ側から消毒液を噴霧する。一部の消毒液は、趾間の後方から前方へと抜ける。これにより、消毒装置1Aは、乳牛の後足の蹄の蹄壁や蹄底、趾間を消毒できる。
【0048】
消毒装置1Aでは、趾間用ノズル12Aがパイプ11Aに覆われ保温されているので、趾間用ノズル12Aの凍結の防止を図ることができる。消毒装置1Aでは、配管14A内を熱線によって加熱するので、配管14A内の消毒液の凍結の防止を図ることができる。
【0049】
(変形例)
消毒装置1Aは、趾間用ノズル12Aにより、搾乳装置9に入っていく乳牛の後足の蹄に対し、斜め後ろ側から消毒液を噴霧するようになっていてもよい。
【0050】
(第4実施形態)
図7は、搾乳装置9および消毒装置1Bの床の構成を示す図であり、図7(A)は平面図、図7(B)は断面図である。
消毒装置1Bは、搾乳装置9の出口に設けられる。消毒装置1Bについては後述する。
搾乳装置9の床には、乳牛の進行方向に沿って延びる凹状の搾乳側ピット81が形成されている。搾乳側ピット81は、排水口811を介して外部に汚物や乳頭等の洗浄に用いられる洗浄剤等を排水するためのものである。搾乳側ピット81は、ピットカバー82により閉塞される。ピットカバー82は、例えば搾乳側ピット81に固定されたブラケット812に支持される。ピットカバー82上には複数のマット83が敷かれる。
【0051】
図8は、ピットカバー82およびマット83の斜視図である。
ピットカバー82は、例えばFRP (Fiber Reinforced Plastics)製であり、格子状である。ピットカバー82には、床上の汚物等を搾乳側ピット81に落下させるための矩形のピット開口821が複数ある。ピット開口821の大きさは、乳牛の蹄底よりも小さい。ピットカバー82は、乳牛を支持でき、床上の汚物等を搾乳側ピット81に落下させることができれば、その素材や、ピット開口821の数、位置は適宜でよい。ピットカバー82は、例えば厚み50mmのものを用いることができる。
【0052】
マット83は、例えばゴム製の矩形のシートであり、ピットカバー82上に接着やビス等の適宜の手段により固定される。マット83は、ピットカバー82におけるピット開口821の周囲の縁部分により支持される。マット83は、例えば厚み20mmのものを用いることができる。マット83には、マット開口831とスリット832が形成されている。マット開口831は、マット83の中央部に形成され、円状である。マット開口831は、ピット開口821に上下方向において繋がる。スリット832は、マット開口831に繋がっており、複数が、マット開口831を中心に放射状に形成されている。
【0053】
図9は、マット83が撓む様子を示す断面図であり、図9(A)は撓む前を示し、図(B)は、撓んだ状態を示す。
乳牛がマット83上を歩いた際に、マット83には、乳牛から下方への荷重がかかる。この際、スリット832が開くことでよりマット83が下に撓みやすくなる。そのため、マット83上のゴミや消毒液、汚物等がマット開口831やスリット832を介してピット開口821に落下しやすくなる。なお、マット開口831は、鉛直でなくてもよく、図10に示すように、下方へ向かって拡がるようにテーパが付いていてもよい。各スリット832の長さは適宜に設定できる。例えば、垂直に交わるある2方向(図8における上下左右方向)のスリット832の長さよりも、前記ある2方向から45度ずれた2方向のスリット832の長さが短くなっていてもよい。
【0054】
図7に戻り、消毒装置1Bは、対向するフレーム171,172により形成される消毒通路10を備える。消毒通路10は、搾乳通路90と接続し、一方向に乳牛を進行させる。消毒通路10は、乳牛を一頭収容可能な長さおよび幅を有する。消毒通路10において、乳牛の進行方向先端には出口ゲート173がある。消毒装置1Bは、消毒通路10内への乳牛の進入、退室を検出できるセンサ174を備える。センサ174は、人感センサのような赤外線を利用したものでもよいし、消毒通路10内を監視する撮像装置であってもよい。
【0055】
図7に示すように、消毒装置1は、消毒側ピット84、ピットカバー82A、および複数のマット83を備える。消毒側ピット84は、消毒液および汚物を排水するためのものであり、消毒通路10の床に設けられている。消毒側ピット84は、凹状であり、乳牛の進行方向に延びる。消毒側ピット84は、搾乳側ピット81よりも浅くなっており、連通口85を介して搾乳側ピット81と繋がる。消毒側ピット84内の消毒液および汚物は、連通口85を介して搾乳側ピット81に流れる。
【0056】
ピットカバー82Aは、ピットカバー82と同様、FRP製の格子状であり、ピット開口821が複数ある。ピットカバー82Aは、消毒側ピット84の開口を閉塞するように設けられる。ピットカバー82Aは、例えば消毒側ピット84に固定されたブラケット841に支持される。ピットカバー82Aは、乳牛を支持でき、床上の汚物等を消毒側ピット84に落下させることができれば、その素材や、ピット開口821の数、位置は適宜でよい。
【0057】
ピットカバー82A上には、搾乳装置9で使用されているマット83と同じマット83が、ピット開口821毎に設置され固定される。マット83には、マット開口831およびスリット832が形成されている。ピットカバー82Aおよびマット83は、動物が通過する消毒通路10の床材を構成する。ピット開口821およびマット開口831は、上下に繋がっている。
【0058】
消毒側ピット84内には、消毒液が流通する配管14が通されている。配管14には、蹄底用ノズル31が接続されている。蹄底用ノズル31は、ピット開口821およびマット開口831を介して床上に向かって消毒液を噴霧する。蹄底用ノズル31の噴霧口は、ピット開口821中にあってもよい。蹄底用ノズル31は、対応するマット開口831に乳牛の蹄底がある際に、蹄底に消毒液を直接噴霧できる。
【0059】
図11は、蹄底用ノズル31の位置を示す平面図である。
搾乳装置9から出てきた乳牛は、消毒通路10内の先頭で出口ゲート173が開くまで待機する。蹄底用ノズル31は、乳牛の待機位置における左右の後足の蹄が接地すると想定される領域に複数ある。本実施形態では、蹄底用ノズル31は、乳牛の各後足に対して、乳牛の進行方向に5つ並ぶ列が、進行方向に直交する直交方向において3つ設置される。すなわち、蹄底用ノズル31は、乳牛の各後足に対して15個ずつ設置される。
【0060】
消毒装置1Bは、蹄の消毒用のノズルとして、蹄底用ノズル31の他、蹄壁用ノズル32および副蹄用ノズル33を備える。蹄壁用ノズル32は、乳牛の各足毎に一つあり、蹄底用ノズル31および消毒側ピット84から直交方向の両外側(図11中上側および下側)にずれた位置、かつ、待機位置の乳牛の各足の蹄に対して進行方向前方にある。副蹄用ノズル33は、乳牛の各足毎に一つあり、蹄底用ノズル31および消毒側ピット84から直交方向の両外側(図11中上側および下側)にずれた位置、かつ、待機位置の乳牛の各足の蹄に対して進行方向後方にある。各ノズル32,33は、配管14に接続されて消毒液が供給される。
【0061】
図12は、ノズル31~33の位置や向きを示す側面図である。
蹄壁用ノズル32は、噴霧口が乳牛の蹄壁よりも高い位置となるように、かつ乳牛の進行方向後方に向けて斜め下方に消毒液を噴霧するように設置される。副蹄用ノズル33は、噴霧口が、床の上方、かつ副蹄よりも低い位置にあるように、かつ乳牛の進行方向前方に向けて斜め上方に消毒液を噴霧するように設置される。
【0062】
図13は、後足のノズル31~33へ消毒液を供給する経路において、消毒側ピット84周りの構成例を示す図である。
ノズル31~33への消毒液の供給は、第1実施形態と同様、循環ポンプ153および噴霧ポンプ154を用いて行われる。例えば後足のノズル31~33は配管14に接続される。タンク15から供給された配管14内の消毒液は、通常時は循環ポンプ153により低圧で循環され、噴霧時は噴霧ポンプ154により高圧とされることにより、ノズル31~33に取り付けられたチェックバルブが開き、各ノズル31~33から同時に消毒液が噴霧される。配管14は、消毒側ピット84内では蛇行して設けられ、折り返される直線状の部位にそれぞれ蹄底用ノズル31の列が接続される。蹄壁用ノズル32は、配管14の床面上に配置される部位において上方にU字状にされた部位に設けられ、床面から上方に設けられる。副蹄用ノズル33は、配管14の床面上に配置される部位に設けられ、床面から上方に設けられる。前足のノズル32、33への消毒液の供給経路も同様の構成にて実現できる。
【0063】
乳牛は、搾乳装置9から退出して消毒装置1B内に入り、出口ゲート173まで進み、待機する。消毒装置1B(の制御装置2B)は、センサ174により、消毒通路10内への乳牛の進入を検出すると、各ノズル31~33から消毒液を噴霧する。乳牛が待機位置で待機することにより、乳牛の後足は設定領域に位置することとなる。これにより、各ノズル31~33から乳牛の後足の蹄の蹄底、蹄壁、副蹄へ消毒液が噴霧される。消毒装置1Bは、設定時間経つと、消毒液の噴霧を終了し、出口ゲート173を開く。消毒装置1Bは、センサ174により乳牛が消毒通路10から退出したことを検出すると、出口ゲート173を閉じる。消毒液の噴霧開始及び終了のタイミングは適宜に設定できる。例えば消毒装置1Bは、センサにより搾乳装置9の出口ゲート98が開くことを検出すると、消毒液の噴霧を開始し、センサにより搾乳装置9の出口ゲート98が閉まることを検出すると、消毒液の噴霧を終了してもよい。
【0064】
(第4実施形態の効果)
乳牛の副蹄は、床が牛舎内等で比較的硬い場合には床に接触しないが、床が地面等で柔らかい場合、蹄底とともに床に接触し、汚れる。蹄壁は、乳牛の進行方向前方および側方に向くとともに上向きであるところ、副蹄は、乳牛の進行方向に対して後方に向くとともに、下向きである。そのため、通路側壁にある噴霧ノズルから下方に消毒液を噴霧する従来の消毒装置では、副蹄への消毒液の噴霧が不十分である。
【0065】
消毒装置1Bは、副蹄用ノズル33により、消毒液を上方かつ乳牛の進行方向前方に噴霧するので、副蹄に対して正面から消毒液を噴霧できる。さらに、消毒装置1Bは、蹄壁用ノズル32により蹄壁に消毒液を噴霧できるので、蹄全体を消毒できる。
【0066】
消毒装置1Bは、ピットカバー82Aおよびマット83の下方にある蹄底用ノズル31からピット開口821およびマット開口831を介して乳牛の蹄底に直接消毒液を噴霧できるので、蹄を効果的に消毒できる。
【0067】
消毒装置1Bのマット83は、搾乳装置9のマット83と同じものを使用するので、乳牛が消毒装置1Bの床に違和感を覚えにくい。
【0068】
(第4実施形態の変形例)
蹄底用ノズル31の列は乳牛の各後足に対して一列でもよいし、乳牛の各後足に対して蹄底用ノズル31が一つしかなくてもよい。ピットカバー82Aには、蹄底用ノズル31が噴霧する消毒液をマット83上に通すことができる開口があればよく、開口の大きさおよび形状は適宜に設定できる。ノズル31~33へ接続する配管14の構成は適宜に設定できる。消毒通路10は、直線状でなくてもよく、レイアウトは自由であり、消毒通路10は途中で折れ曲がっていてもよい。乳牛の前足に対して、蹄底用ノズル31が設置されていてもよい。蹄底用ノズル31の噴霧口の高さ位置は、ピットカバー82Aより下にあってもよいし、マット開口831内にあってもよいし、床面にあってもよい。
【0069】
消毒装置1Bは、センサ174により乳牛が設定位置にいるか否かを判定するので、搾乳装置9の出口ゲート98に接続していなくても噴霧処理を開始できる。従って、消毒装置1Bは、搾乳装置9の搾乳通路90に接続していなくてもよく、ユーザの所望の位置に設置できる。
【0070】
(第5実施形態)
図14は、消毒装置1Cが組み込まれた搾乳装置9の床の構成を示す図であり、図14(A)は平面図、図14(B)は断面図である。
消毒装置1Cは、搾乳装置9に組み込まれている。搾乳装置9の床にピット81が設けられ、ピット81を閉塞するようにピットカバー82が設けられている。ピットカバー82上にマット83が設置されている。ピット開口821およびマット開口831は、上下に繋がっている。ピット81内において、搾乳時の乳牛の左右の後足が位置する各領域に蹄底用ノズル31が設けられる。蹄底用ノズル31は、消毒液が循環する配管14に接続される。蹄底用ノズル31は、ピット開口821およびマット開口831を介して床の上方に向かって消毒液を噴霧する。
【0071】
図15は、蹄壁用ノズル32および副蹄用ノズル33の構成を示す模式図である。
消毒装置1Cは、搾乳装置9のフレーム92(図14)と床の隙間を通して、搾乳通路90の内外へセンサ191、蹄壁用ノズル32、および副蹄用ノズル33を、それぞれロボットアーム192~194により移動可能である。搾乳装置9のフレーム92と床の隙間を通してセンサやある要素を搾乳通路90の内外へ出し入れして三次元に動かす技術は、前述した搾乳用のセンサやティートカップを搾乳通路90の内外へ出し入れして三次元に動かす既存のロボットアーム95の技術を適用できる。
【0072】
ロボットアーム193は、蹄壁用ノズル32が乳牛の進行方向における後方、かつ下方に向いた姿勢で、蹄壁用ノズル32を移動させることができる。ロボットアーム194は、副蹄用ノズル33が乳牛の進行方向における前方、かつ上方に向いた姿勢で、副蹄用ノズル3を移動させることができる。ロボットアーム193、194は、ノズル32,33に接続する配管14を保持する。
【0073】
センサ191は、設定範囲にある乳牛の後足の前側の趾間および副蹄を検出するものであり、設定範囲内の蹄を三次元に走査する反射型光学センサや、設定範囲内の蹄を三次元で撮像する三次元画像センサを利用できる。センサ191は、趾間検出用と副蹄検出用のセンサを含んでいてもよい。
【0074】
消毒装置1C(の制御装置2C)は、搾乳装置9の制御装置97から、搾乳が終了することを示す信号を受信すると、センサ191により、乳牛の後足の蹄における前側の趾間および副蹄の三次元座標領域を判定する。消毒装置1Cは、ロボットアーム193を駆動して、乳牛の後足の前側の趾間に蹄壁用ノズル32を用いて消毒液を噴霧する。消毒装置1Cは、ロボットアーム194を駆動して、乳牛の後足の副蹄に副蹄用ノズル33を用いて消毒液を噴霧する。消毒装置1Cは、不図示のセンサにより、乳牛が搾乳装置9から退出したことを検出すると、ノズル31~33による噴霧を終了する。
【0075】
(第5実施形態の効果)
消毒装置1Cは、乳牛の後足における前側の趾間に対し、消毒液を直接噴霧するので、趾間への消毒効果が良好である。
【0076】
(第6実施形態)
図16は、消毒装置1Dの断面図である。
消毒装置1Dでは、消毒側ピット84は、上端部が平面視で外側に拡開しており、該部分が段差部842となる。消毒側ピット84を覆う例えばステンレス製のタンク41がある。タンク41は、動物が通過する床にあり消毒液を収容する。タンク41は、消毒液を、該消毒液に圧力が加えられた状態で収容する。タンク41において、乳牛の進行方向(図16中左右方向)の両端部が段差部842に支持される。タンク41には、蹄底用ノズル31Dが平面視でマトリクス状に配置される。タンク41上には複数のマット83が設置される。段差部142の深さは、内部にタンク41およびマット83を収容可能な深さである。消毒側ピット84は、搾乳側ピット81と繋がっていなくてもよく、消毒側ピット84内の消毒液は、消毒側ピット84内の排出口843を介して外部へ排出されてもよい。
【0077】
図17は、消毒側ピット84へ通じる隙間Sを示す平面図である。
段差部842は、平面視で環状である。タンク41は、平面視で矩形である。乳牛の進行方向の直交方向(図17中上下方向)における消毒側ピット84の幅は、タンク41の幅よりも大きい。そのため、消毒側ピット84の上部開口には、タンク41によって覆われない隙間Sが形成される。各蹄底用ノズル31Dから噴霧されてマット83上に落下する消毒液は、マット開口831やスリット832、隙間Sを通って消毒側ピット84内へ落下する。
【0078】
図18は、蹄底用ノズル31Dの作動原理を説明するための模式図である。
タンク41には、蹄底用ノズル31Dが貫通する孔410がある.蹄底用ノズル31Dは、タンク41に基準位置から下方に没入可能に設けられるとともに、基準位置への復元力を付与される。蹄底用ノズル31Dが乳牛に踏まれて下方に没入すると消毒液が床上に向かって噴出する。
【0079】
タンク41上に設置されるマット83のマット開口831は、孔410と同経であり、上下に繋がる。蹄底用ノズル31Dは、本体311、ヘッド312、バネ313を備える。本体311は、柱状であり、タンク41内に立った状態で固定される。ヘッド312の外径は、孔410よりも小さい。ヘッド312は、本体311の先端に挿入され、本体311に対して垂直にスライド移動可能であり、基準位置から最大、設定幅まで下方にスライド移動することができる。ヘッド312は、プラスチックやステンレス製であってもよい。ヘッド312の下部には、孔410よりも径方向に大きい鍔部314がある。
【0080】
バネ313は、本体311に通され、タンク41の内壁とヘッド312の鍔部314との間で圧縮した状態で設置される。通常時は、ヘッド312は、孔410およびマット開口831を通って床上に先端が出た状態となる。通常時は、ヘッド312の鍔部314は、バネ313により孔410の周縁部に押し付けられ、孔410を閉塞する。なお、鍔部314上にはヘッド312が挿通する環状のゴムリング315が設置され、鍔部314と孔410の周縁部との密着度を高めている。
【0081】
乳牛の蹄がヘッド312を踏み下方に押し下げると、鍔部314による孔410の閉塞が解除され、ヘッド312と孔410の隙間から、タンク41内の高圧の消毒液が上方に噴出する。これにより、乳牛の蹄に消毒液が直接かけられる。
【0082】
(第6実施形態の効果)
消毒装置1Dでは、電力を利用せずに乳牛の重量を利用して乳牛の蹄底へ消毒液を直接かけることができる。また、乳牛が床を踏むことで自動的に消毒液を噴出するので、乳牛を検出するためのセンサや、搾乳装置9から消毒液の噴出開始終了のためのトリガを受信することや、制御装置が不要となる。そのため、消毒装置1Dは、簡素な構成にできるとともに、適宜の場所に設置でき、汎用性がある。
【0083】
本発明の特徴は、その特徴から逸脱することなく、いくつかの実施形態で実施できる。前述の実施形態、変形例、および効果は単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。前述の実施形態および変形例は、特に言及しない限り、前述の実施形態および変形例のいずれかによって限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲で広く解釈されるべきである。前述の実施形態および変形例の特徴、構造、方法は、追加でき、また代替の構成を得るために様々な方法で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0084】
1~1E…消毒装置、2~2C…制御装置(制御部)、9…搾乳装置、10…消毒通路、11…カバー、11A…パイプ、12…趾間用ノズル(第1ノズル)、12A…趾間用ノズル(第2ノズル)、13…出口ゲートが開くことを検出するセンサ、13A…入口ゲートが閉まることを検出するセンサ、31~31D…蹄底用ノズル、33…副蹄用ノズル、82~82D…ピットカバー、84…消毒側ピット、93…搾乳装置の入口ゲート、98…出口ゲート、111…開口、111A…パイプの開口、121…チェックバルブ(第1バルブ)、143…環状経路、144…圧力付加経路、153…循環ポンプ、154…噴霧ポンプ、155…チェックバルブ(第2バルブ)、314…噴霧口、821…ピット開口、831~831D…マット開口、832…スリット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
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図18