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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】検体採取キット
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N1/10 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018155931
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2020030115
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】519035160
【氏名又は名称】合同会社ジーンメトリックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村主 弘和
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3169659(JP,U)
【文献】特開2004-194539(JP,A)
【文献】特開2007-040777(JP,A)
【文献】特開2018-031602(JP,A)
【文献】米国特許第05543115(US,A)
【文献】特開2017-026554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と、前記開口部の外周面に形成された雄ネジとを有する容器と、
円筒部と、前記円筒部の内周面に形成された雌ネジとを有するキャップと、
スティックと、前記スティックの一端に設けられた検体取得部とを有する採取具と、を備え、
前記雄ネジと前記雌ネジとの螺合によって前記キャップが前記開口部に装着される、
検体採取キットであって、
前記検体取得部とは反対側において前記採取具に設けられる係止具をさらに備え、
前記係止具は、前記採取具が前記開口部を通じて前記容器に挿入されるとき、前記開口部の開口端に係止されかつ前記開口端から前記容器の外方に突出する複数の係止端を備え、
前記複数の係止端が前記開口端に係止されかつ前記開口端から前記容器の外方に突出した状態で前記キャップが回されて前記開口部に装着される際に、前記複数の係止端は、前記雌ネジの溝に沿って相対的に移動して前記キャップ内に入り込み、その後、前記キャップが前記開口部から取り外されると、前記係止具が前記雌ネジよって係止される、
ことを特徴とする検体採取キット。
【請求項2】
前記スティックは、円筒形状を有し、
前記係止具は、
長手方向を有し、前記スティックに圧入されるバーと、
前記バーの一端から前記バーの径方向にのびる複数の係止片と、を備え、
前記係止端は、前記係止片の先端によって形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の検体採取キット。
【請求項3】
前記キャップは、
前記円筒部の一端に設けられ、前記円筒部の当該一端を閉じる頂面部と、
前記頂面部の内面に設けられ、前記キャップが前記開口部に装着されるとき前記開口端に密着するリング状のゴムパッキンと、を備える、
請求項1または請求項2に記載の検体採取キット。
【請求項4】
前記検体取得部は、ブラシ、綿球、または、スポンジである、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の検体採取キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を採取するために用いられる検体採取キットに関する。
【背景技術】
【0002】
検体採取キットは、特許文献1‐3等に開示されているように、様々なものが開発されている。例えば、検体採取キットは、採取具と、開口部を有する容器と、開口部に着脱可能に装着されるキャップと、を備える。採取具は、スティックと、スティックの一端に取り付けられた検体取得部とを備える。検体取得部は、ブラシ、綿球、スポンジなどである。
【0003】
被検者は採取具のスティックを把持し、検体を検体取得部に採取する。次いで、被検者は、採取具を容器に入れ、キャップを開口部に装着して容器を閉じる。その後、被検者は、検体採取キットを検査技師へ郵送などの形式で送る。検査技師は、検体採取キットを受け取る。
【0004】
検査技師は、キャップを容器の開口部から取り外し、採取具を容器から取り出し、その後、検体の検査作業に取り掛かる。このとき、採取具が容器に入り込んでいるので、ピンセットなどで採取具を摘んで容器から取り出さないといけない煩わしさがある。
【0005】
この煩わしさを解消するために、キャップ(栓体)と採取具とが一体化された検体採取キットが提案されている。この構成によれば、キャップを開口部から取り外して持ち上げれば、採取具がキャップと共に持ち上げられ、容器から取り出される。
【0006】
ところで、検体採取キットは、検体抽出液、緩衝液などの液体を容器に収容しているものがある。被検者は、検体を採取具の検体取得部に採取した後に、採取具を容器に入れて検体取得部を容器内の液体に漬けると、検体が当該液体へ抽出または溶出する。
【0007】
当然ながら、液体が容器から漏れないように、キャップが開口部に装着された状態で被検者に提供されなければならない。また、採取具の検体取得部(ブラシ、綿球、スポンジ等)は、滅菌状態で被検者に提供されることが通常であり、検体採取前に容器内の液体に漬けないようにする必要がある。この場合、キャップと採取具とを一体化させた構成では、これらを両立させることができない。
【0008】
このように、キャップと採取具とを一体化させることが好ましくないことがある。こういった事情がある場合、依然として、検体採取後に、採取具を、ピンセット等を用いて容器内から取り出さなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】登録実用新案第3169659号公報
【文献】特開2017-026554号公報
【文献】特開平07-260778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、検体採取キットにおいて、キャップと採取具との新規な形式の保持を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、検体採取キットであって、
開口部と、前記開口部の外周面に形成された雄ネジとを有する容器と、
円筒部と、前記円筒部の内周面に形成された雌ネジとを有するキャップと、
スティックと、前記スティックの一端に設けられた検体取得部とを有する採取具と、を備え、
前記雄ネジと前記雌ネジとの螺合によって前記キャップが前記開口部に装着される。
前記検体採取キットは、
前記検体取得部とは反対側において前記採取具に設けられる係止具をさらに備え、
前記係止具は、前記採取具が前記開口部を通じて前記容器に挿入されるとき、前記開口部の開口端に係止されかつ前記開口端から前記容器の外方に突出する複数の係止端を備え、
前記複数の係止端が前記開口端に係止されかつ前記開口端から前記容器の外方に突出した状態で前記キャップが回されて前記開口部に装着される際に、前記複数の係止端は、前記雌ネジの溝に沿って相対的に移動して前記キャップ内に入り込み、その後、前記キャップが前記開口部から取り外されると、前記係止具が前記雌ネジよって係止される、
ことを特徴とする。
【0012】
前記スティックは、円筒形状を有し、
前記係止具は、
長手方向を有し、前記スティックに圧入されるバーと、
前記バーの一端から前記バーの径方向にのびる複数の係止片と、を備え、
前記係止端は、前記係止片の先端によって形成されてよい。
【0013】
前記キャップは、
前記円筒部の一端に設けられ、前記円筒部の当該一端を閉じる頂面部と、
前記頂面部の内面に設けられ、前記キャップが前記開口部に装着されるとき前記開口端に密着するリング状のゴムパッキンと、を備えてよい。
【0014】
前記検体取得部は、例えば、ブラシ、綿球、または、スポンジである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る検体採取キットは、キャップと採取具との新規な形式の保持を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aは、容器を示し、図1Bは、容器の縦断面を示す。
図2図2Aは、キャップを示し、図2Bは、キャップの内側を示し、図2Cは、キャップの拡大縦端面を示し、図2Dは、容器に装着されたキャップを示す。
図3図3Aは、採取具を示し、図3Bは、係止具が装着された採取具を示し、図3Cおよび図3Dは、係止具を詳細に示す。
図4】検体採取キットの使用を説明する図である。
図5】検体採取キットの使用を説明する図である。
図6】検体採取キットの使用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る検体採取キットが説明される。検体採取キットは、唾液、尿、汗、涙、大便などの検体を採取するために用いられる。
【0018】
図1A図1Bを参照して、検体採取キットは、容器1を備える。容器1は、細長い形状を有する。容器1はその一端が開口し、その他端が閉口している。したがって、容器1は、その一端に開口部10を備える。開口部10は、円筒形状を有する。開口部10は、開口端11を有する。
【0019】
さらに、容器1は、開口部10の外周面に形成された雄ネジ12を備える。1条の雄ネジ12が開口部10の外周面を少なくとも1周以上(実施形態では2周以上)するように螺旋状に形成されている。
【0020】
容器1は、その内部に収容空間を規定する本体部13をさらに備える。本実施形態では、液体L(緩衝液)が容器1内に収容されている。
【0021】
図2Aを参照して、検体採取キットは、キャップ2をさらに備える。キャップ2は、円筒形状を有する円筒部20と、円筒部20の一端に設けられ、円筒部20の一端を閉じる頂面部21とを備える。
【0022】
図2Bの通り、キャップ2は、円筒部20の内周面に形成された雌ネジ22を備える。1条の雌ネジ22が、容器1の開口部10の雄ネジ12と螺合するように、かつ、円筒部20の内周面を少なくとも1周以上(実施形態では2周以上)するように、螺旋状に形成されている。また、キャップ2は、頂面部21の内面に設けられたリング状のゴムパッキン23をさらに備える。ゴムパッキン23は、容器1の開口端11と同じ直径である。
【0023】
キャップ2は、その雌ネジ22を容器1の雄ネジ12に螺合させながら回締められることで開口部10に装着され、それによって、図2Dの通り、容器1がキャップ2によって閉じられる。このとき、ゴムパッキン23が開口端11に密着することにより、容器1がキャップ2によって密閉される。
【0024】
図3Aの通り、検体採取キットは、採取具3をさらに備える。採取具3は、検体を採取するために被検者によって用いられる。採取具3は、スティック30と、スティック30の一端に設けられ、検体を取得して保持する検体取得部31と、を備える。
【0025】
実施形態では、スティック30は、円筒形状を有する。検体取得部31は、ブラシであり、その基端がスティック30に挿入されることでスティック30に取り付けられている。検体取得部31は、ブラシに代えて、例えば、綿球、スポンジなどでもよい。
【0026】
図3Bの通り、検体採取キットは、検体取得部31とは反対側において採取具3に設けられた係止具4をさらに備える。実施形態では、係止具4は、スティック30の他端に取り付けられている。係止具4の用途は、後に詳述される。
【0027】
図3C図3Dの通り、係止具4は、長手方向を有するバー40と、バー40の一端から少なくともバー40の径方向にのびる複数の係止片41と、を備える。
【0028】
バー40が図3Bの通りスティック30に圧入されることにより、係止具4が採取具3に取り付けられる。この構成によって、既存の採取具3に係止具4を取り付けることができる。これに代えて、係止具4は、採取具3に一体形成されてもよい。
【0029】
係止片41は、実施形態では2つ設けられている。係止片41は、等角度間隔で設けられることが好ましく、実施形態では、2つの係止片41が互いに反対の方向にのびている。係止片41は、バー40の一端から、バー40の径方向に、かつ、バー40の軸方向のうちバー40から離れる方向にのびている。したがって、実施形態の係止具4は、略Y字形状を有する。
【0030】
係止具4は、複数の係止端42をさらに備える。各係止端42は、各係止片41の先端によって形成されている。係止片41の先端は、その厚みが他の部分より薄くなるように形成されおり、それによって、係止端42は爪状に形成されている。
【0031】
係止具4の材料は、例えばABS樹脂であるが、係止具4の材料はこれに限定されない。例えば係止具4は、その係止端42が有る程度の硬度を有するような材料で形成されることが好ましい。
【0032】
係止具4の中心線(すなわち、これが装着されるスティック30の軸線)から係止端42の先までの距離d4(図3C)は、容器1の開口端11における外半径d1(図1B)より大きい。また、距離d4は、キャップ2の雌ネジ22の山における半径d2(図2C)より大きく、キャップ2の雌ネジ22の溝における半径d2’(図2C)より小さい。
【0033】
以下で、検体採取キットの使用例が説明される。
図2Dのようにキャップ2が装着された状態で容器1が提供される。容器1内には、液体L(緩衝液)が収容されている。採取具3は、容器1に収容されず滅菌された状態で被検者に提供される。係止具4は、採取具3に予め取り付けられた状態で提供されてもよいし、採取具3から分離された状態で提供されてもよい。
【0034】
被検者は採取具3を用いて検体を採取する。すなわち、被検者は、スティック30を把持して、検体を検体取得部31に採取し保持させる。例えば、検体採取キットが歯周病の検査用であり、検体取得部31がブラシであるとき、被検者は、ブラシを自身の口に入れて、歯肉溝をブラシで拭って、検体をブラシに保持させる。
【0035】
その後、採取具3は、係止具4が図3Bの通り取り付けられた状態で被検者によって開口部10を通じて容器1に挿入され、検体取得部(ブラシ)31が液体(緩衝液)Lに漬かって、検体が液体Lに溶出する。図4の通り、採取具3が容器1に対して同心状に挿入されると、各係止端42は、容器1の開口端11によって係止され、かつ、開口端11から容器1の外方に向けてわずかに突出する。これは、d4>d1に基づく。このように係止具4がその係止端42において開口端11に係止されることで、採取具3は、容器1内に位置する。
【0036】
次いで、キャップ2が、回されて、雄ネジ12と雌ネジ22との螺合によって開口部10に装着される。この際に、係止端42は、キャップ2によって開口端11へ押圧されるので、開口端11の定位置で留まる。そして、係止端42は、開口端11から突出しており、雌ネジ22の溝内を当該溝に沿って滑りながら相対的に移動し(実際に動いているのはキャップ2である)、キャップ2内に入り込む。これは、d2<d4<d2’に基づく。
【0037】
キャップ2が図5のように完全に開口部10に装着されると、係止端42がキャップ2内の奥で雌ネジ22と頂面部21との間に位置する。
【0038】
このとき、図5の拡大図に最も良く示される通り、係止端42が開口端11とゴムパッキン23とによって挟まれる。実施形態では、係止端42が肉薄に形成されていることおよびゴムパッキン23の弾性によって、開口端11とゴムパッキン23との間のシール性が十分に保障される。
【0039】
そして、検体採取キットは、被検者によって、図5の状態で郵送などの形式で検査技師に送られる。
【0040】
その後、検査技師によって、キャップ2が回されて開口部10から取り外され、図6のように持ち上げられる。この際、係止端42は、キャップ2によって開口端11へ押圧されないので、キャップ2が回されても、キャップ2内に残る。その結果、係止具4が雌ネジ22(その山)によって係止され、キャップ2から落下せず、採取具3は、係止具4を介してキャップ2に保持される。したがって、採取具3がキャップ2と共に持ち上げられ、容器1から取り出される。
【0041】
こうして、検体が溶出した液体Lだけを含む容器1が得られる。その後、検査技師が検体の検査作業に取り掛かる。
【0042】
この検体採取キットは、以上の通り、キャップ2と採取具3の新規な保持を提供することができる。すなわち、検体採取前には、採取具3はキャップ2に保持されていない。しかしながら、係止具4が取り付けられた採取具3が容器1に挿入された状態でキャップ2が開口部10に装着されれば、キャップ2が開口部10から取り外されたとき、採取具3が係止具4を介してキャップ2に保持される。
【0043】
検体採取前において、液体Lが容器1から漏れないようにキャップ2が開口部10に装着された状態で、かつ、採取具3の検体取得部31が緩衝液などの液体Lに漬さずに滅菌された状態で検体採取キットを被検者に提供することができる。検体採取後において、検査技師は、キャップ2を開口部10から取り外し持ち上げれば、採取具3を容器1から取り出すことができる。故に、ピンセット等を用いて採取具3を容器1から取り出すような煩わしさはない。
【0044】
以上、本発明の好ましい一実施形態について説明されたが、本発明は、上記実施形態に当然ながら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 容器
10 開口部
11 開口端
12 雄ネジ
2 キャップ
20 円筒部
21 頂面部
22 雌ネジ
23 ゴムパッキン
3 採取具
30 スティック
31 検体取得部
4 係止具
40 バー
41 係止片
42 係止端
L 液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6