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  • 特許-製麹装置の手入部の走行機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】製麹装置の手入部の走行機構
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/16 20060101AFI20220721BHJP
   F16H 1/14 20060101ALI20220721BHJP
   F16H 55/30 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C12M1/16 104
F16H1/14
F16H55/30 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018230705
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020092607
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000223931
【氏名又は名称】株式会社フジワラテクノアート
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大賀 直行
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-308553(JP,A)
【文献】特公昭41-020051(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第107165450(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/16
F16H 1/14
F16H 55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製麹室内に設置された無端コンベアのベルト上に製麹原料を載置し、手入機を前記無端コンベアの長手方向へ走行させながら前記製麹原料を撹拌して手入れを行う製麹装置の手入部の走行機構であって、
前記ベルトの幅方向の両端に設け、回転軸の回転により前記手入機を走行させる走行駆動部と、
前記ベルトの一端側の前記走行駆動部の前記回転軸の回転を、前記ベルトの他端側の前記走行駆動部の前記回転軸に伝達する回転伝達軸を備え
前記走行駆動部の前記回転軸は上方及び下方に延出し、上方には上方回転軸が延出し、下方には下方回転軸が延出し、前記上方回転軸と前記回転伝達軸との間で回転が伝達され、前記下方回転軸はスプロケットが軸支され、前記スプロケットと走行用チェーンとの噛合いによって前記手入部が走行し、
前記一端側の前記走行駆動部には前記回転軸を回転させるモータを備え、前記他端側の前記走行駆動部には前記回転軸を回転させるモータを備えていない ことを特徴とする製麹装置の手入部の走行機構。
【請求項2】
前記走行駆動部の前記回転軸に軸支された傘歯車と前記回転伝達軸に軸支された傘歯車との噛合いによって、前記回転軸と前記回転伝達軸との間で回転が伝達される請求項1に記載の製麹装置の手入部の走行機構。
【請求項3】
前記走行用チェーンは、前記ベルトの前記麹の載置面より下方に設置されている請求項に記載の製麹装置の手入部の走行機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製麹室内に設置された無端コンベアのベルト上に製麹原料を載置し、手入機を無端コンベアの長手方向へ走行させながら製麹原料を撹拌して手入れを行う製麹装置の手入部の走行機構に関する。
【背景技術】
【0002】
機械製麹法に用いる製麹装置として、薄層により高品質の麹を生産する製麹装置や、布等の隔離材で製麹原料周辺を覆い、伝統的な麹造りに近い無通風による製麹を行う製麹装置が用いられている。後者の製麹装置として、特許文献1の図3に開示されている製麹装置は、製麹室(培養室)に製麹原料を堆積させた無端コンベア(ネットコンベア)を収納したものであり、無端コンベアは、周囲を隔離材により包まれて、製麹原料雰囲気と製麹室内雰囲気とが隔離されている。
【0003】
この製麹装置では、空気調和装置から製麹室へと送り込む空気により、隔離材内外に水蒸気分圧差を設け、製麹原料雰囲気から隔離材を通って製麹室内へ蒸発する水蒸気量を加減することで、製麹原料から蒸発する水蒸気量を制御して製麹原料の品温を調整するようにしている。そして、製麹原料の発熱時には、製麹室の温湿度を調整しつつ、除熱のため及び締まった製麹原料をほぐすため、手入機が無端コンベアの長手方向に走行しながら製麹原料を撹拌して手入れを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-271380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手入機の走行機構としては、構造の簡素化に加え、安定した走行のために直進性が求められる。また、走行機構には潤滑部が不可欠であることから、メンテナンス性の良さも求められる。この点、特許文献1には、無端コンベア上に手入機が図示された最小限の構成の開示があるに留まり、手入機の課題や具体的構造については開示がされていなかった。
【0006】
本発明は、前記のような手入機の課題に鑑み、構造の簡素化を実現するとともに、直進性に優れ、あわせてメンテナンス性を向上させた製麹装置の手入部の走行機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の製麹装置の手入部の走行機構は、製麹室内に設置された無端コンベアのベルト上に製麹原料を載置し、手入機を前記無端コンベアの長手方向へ走行させながら前記製麹原料を撹拌して手入れを行う製麹装置の手入部の走行機構であって、前記ベルトの幅方向の両端に設け、回転軸の回転により前記手入機を走行させる走行駆動部と、前記ベルトの一端側の前記走行駆動部の前記回転軸の回転を、前記ベルトの他端側の前記走行駆動部の前記回転軸に伝達する回転伝達軸を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記本発明の製麹装置の手入部の走行機構によれば、ベルトの一端側の走行駆動部の回転軸の回転が回転伝達軸を介してベルトの他端側の走行駆動部に伝達されるので、手入機は傾くことなくベルトの長手方向に安定して直進でき、直進性の向上を図ることができる。そして、この安定した直進性は、回転伝達軸及びその付属部品で実現でき、複雑な制御機構を用いることなく、簡素な構造で実現することができる。
【0009】
前記本発明の製麹装置の手入部の走行機構においては、以下の各構成とすることが好ましい。前記走行駆動部の前記回転軸に軸支された傘歯車と前記回転伝達軸に軸支された傘歯車との噛合いによって、前記回転軸と前記回転伝達軸との間で回転が伝達されることが好ましい。この構成によれば、回転伝達軸の回転のための歯車の数を削減でき、構造の簡素化に加え、低コストかつメンテナンス性を向上させることができる。
【0010】
前記走行駆動部の前記回転軸は上方及び下方に延出し、上方には上方回転軸が延出し、下方には下方回転軸が延出し、前記上方回転軸と前記回転伝達軸との間で回転が伝達され、前記下方回転軸はスプロケットが軸支され、前記スプロケットと走行用チェーンとの噛合いによって前記手入部が走行することが好ましい。この構成によれば、同軸上にある上方回転軸と下方回転軸とによって、回転伝達軸を駆動させる回転機構と手入機を走行させる走行機構の両方を実現できるので、省スペース及び部品点数の削減により、構造の簡素化を図ることができる。
【0011】
前記走行用チェーンは、前記ベルトの前記麹の載置面より下方に設置されていることが好ましい。この構成によれば、製麹原料によって走行用チェーンが汚れにくくなることに加えて、走行用チェーンに付着したグリース等が製麹原料に混入しにくくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果は前記のとおりであり、本発明によれば、ベルトの一端側の走行駆動部の回転軸の回転が回転伝達軸を介してベルトの他端側の走行駆動部に伝達されるので、手入機は傾くことなくベルトの長手方向に安定して直進でき、直進性の向上を図ることができる。そして、この安定した直進性は、回転伝達軸及びその付属部品で実現でき、複雑な制御機構を用いることなく、簡素な構造で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る製麹装置の構成図。
図2】本発明の一実施形態に係る手入機の斜視図。
図3】本発明の一実施形態に係る製麹装置の平面図。
図4図3のB矢視図。
図5図3のC矢視図。
図6図3のAA線における断面図。
図7図6のD部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。最初に図1図2を参照しながら製麹装置1の概略構成を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る製麹装置1の構成図である。図2は手入機11を示す斜視図である。図1において、製麹装置1は、床6、壁37及び天井38で囲まれた製麹室8内に設置されている。無端コンベア2は筐体4の壁面で囲まれている。図示の便宜のため、図1は製麹室8の内部を示し、同様に筐体4の内部を示している。筐体4には脚5が取り付けられており、製麹装置1は床6上に設置されている。
【0015】
無端コンベア2はベルト3を備えており、ベルト3上に製麹原料が載置される。筐体4は上下が開放しており、この上下の開放部が機能性を有する布状隔離材7で覆われて隔離空間を形成している。製麹装置1は無通風製麹装置であり、製麹室8内の温湿度を調整して、隔離空間内にある製麹原料の水分蒸発量を制御して製麹が行われる。
【0016】
製麹原料の発熱時には、製麹室8の温湿度を調整しつつ、除熱及び締まった製麹原料をほぐすため、手入部10がベルト3の長手方向に走行しながら麹製麹原料を撹拌して手入れを行う。手入部10の詳細は後に説明するが、手入部10は製麹原料を撹拌する手入機11を備えている。図2は手入機11単体の斜視図を示している。手入機11は、回転軸12に攪拌棒13を設けたものであり、攪拌棒13の先端には切込片14を設けている。回転軸12の回転に伴い、攪拌棒13と一体に切込片14が回転して製麹原料が撹拌される。
【0017】
図3は、製麹装置1の平面図を示している。ベルト3上に手入部10が配置されている。手入部10を構成する機構は、手入機11の回転機構15(以下、単に「回転機構15」という。)と手入部10の走行機構16(以下、単に「走行機構16」という。)とに大別される。回転機構15は手入機11と、これを駆動する回転駆動部17を備えている。回転駆動部17は、モータ18と出力軸19等の付属部品で構成されている。モータ18が駆動されると、これと一体に出力軸19が回転し、出力軸19に接続された回転軸12が回転して支持体30、35に支持された手入機11が回転駆動される。
【0018】
走行機構16は、手入部10全体を走行させるための走行駆動部20a、走行駆動部20bと、回転伝達軸21とを備えている。図3において、走行駆動部20a、走行駆動部20bはベルト3の幅方向の両端に設けられている。詳細は後に説明するとおり、走行機構16の駆動により、手入部10全体はベルト3の長手方向に沿って直進する(矢印a)。本実施形態では、手入部10の走行という表現を用いるが、手入部10の走行に伴って構成要素である手入機11も走行するので、手入部10の走行の意味は、手入機11の走行の意味でもある。
【0019】
図4図3のB矢視図であり、図5図3のC矢視図であり、いずれも手入部10の側面図である。図4及び図5においては、歯車部分を覆うカバー(図7のカバー48)の図示は省略している。図4において、支持体30に回転駆動部17及び走行駆動部20aとローラ31が取り付けられている。ローラ31は製麹装置1の一部であるガイドフレーム32上にある。これらの構造は、図3の走行駆動部20b側においても同様であり、図5において、支持体35に走行駆動部20b及びローラ36が取り付けられており、ローラ36はガイドフレーム32上にある。
【0020】
図3において、支持体30と支持体35との間には、連結棒40、41が取り付けられており、支持体30と支持体35とが連結棒40、41を介して一体になっている。この構成によれば、ローラ31、36(図4、5)がガイドフレーム32上を転がることにより、支持体30及び支持体35が一体に走行し、これに伴って、支持体30に取り付けられた回転駆動部17及び走行駆動部20a、支持体35に取り付けられた回転駆動部20b、支持体30、35に支持された手入機11も走行し、手入部10全体が走行する。
【0021】
以下、図6及び図7を参照しながら、手入部10についてより具体的に説明する。図6図3のAA線における断面図である。本図は図示の便宜のため、図3の連結棒41の図示は省略している。図7図6のD部の拡大図である。図6に示したように、手入機11はベルト3上に配置されている。手入機11の回転により、ベルト3上の製麹原料(図示せず)が撹拌される。
【0022】
図6に示したギアボックス23は、図3に示したようにモータ22と一体になっている。モータ22内の軸回転がギアボックス23内の回転軸に伝達される。図7において、ギアボックス23内の回転軸は上方及び下方に延出し、上方には上方回転軸28が延出し、下方には下方回転軸29が延出している。上方回転軸28には傘歯車25が軸支されており、回転伝達軸21に軸支された傘歯車26と噛み合っている。下方回転軸29にはスプロケット24が軸支されている。傘歯車25及び傘歯車26は、カバー48で覆われており、衣服や異物の巻き込みを防止している。
【0023】
図7は、走行駆動部20a側(図6のD部)の構造の拡大図であるが、走行駆動部20b側(図6のE部)の構造も同様である。すなわち、走行駆動部20b側の側面図である図5において、ギアボックス42内の回転軸は上方及び下方に延出し、上方には上方回転軸43が延出し、下方には下方回転軸44が延出している。上方回転軸43には傘歯車46が軸支されており、下方回転軸44にはスプロケット45が軸支されている。
【0024】
図3において走行駆動部20aのモータ22が駆動されると、図7においてギアボックス23から延出した上方回転軸28及び下方回転軸29が一体に回転する。下方回転軸29の回転により、スプロケット24が回転する。スプロケット24はフレーム33に固定された走行用チェーン27と噛み合っている。このため、図4に示したように、スプロケット24が回転すると、スプロケット24は走行用チェーン27(固定状態を維持)に沿って移動する(矢印a)。
【0025】
一方、図7において上方回転軸28の回転により傘歯車25が回転し、これと噛み合った傘歯車26が回転し回転伝達軸21が回転する。図6において、回転伝達軸21が回転すると、回転伝達軸21に軸支された傘歯車47が回転し、回転伝達軸21の回転が走行駆動部20b側に伝達される。具体的には、図5において、傘歯車47が回転すると、これと噛み合った傘歯車46が回転して上方回転軸43が回転し、これと一体に下方回転軸44が回転し、スプロケット45が回転する。スプロケット45が回転すると、スプロケット45は走行用チェーン27(固定状態を維持)に沿って移動する(矢印a)。
【0026】
以上によれば、図4において走行駆動部20aのモータ22が駆動されると、走行駆動部20a側のスプロケット24が走行用チェーン27に沿って移動するとともに、図5において走行駆動部20b側のスプロケット45が走行用チェーン27に沿って移動する。この移動と一体に、走行駆動部20aを取り付けた支持体30及び走行駆動部20bを取り付けた支持体35も移動し、手入部10全体が走行する。
【0027】
この場合、前記のとおり、図3においてベルト3の一端側の走行駆動部20aの回転軸の回転が回転伝達軸21を介してベルト3の他端側の走行駆動部20bに伝達されるので、手入部10は傾くことなくベルト3の長手方向に安定して直進でき、直進性の向上を図ることができる。そして、この安定した直進性は、回転伝達軸21及びその付属部品で実現しており、複雑な制御機構を用いることなく、簡素な構造で実現することができる。
【0028】
これに加えて、本実施形態では図4及び図5に示したように、ギアボックス23、42から上方回転軸28、43及び下方回転軸29、44が延出し、上方回転軸28、43と回転伝達軸21との間で回転が伝達され、下方回転軸29、44はスプロケット24、45が軸支され、プロケット24、45と走行用チェーン27との噛合いによって手入部10が走行する。この構成によれば、同軸上にある上方回転軸28及び下方回転軸29と、上方回転軸43及び下方回転軸44とによって、回転伝達軸21を駆動させる回転機構と手入部10全体を走行させる走行機構の両方を実現できるので、省スペース及び部品点数の削減により、構造の簡素化を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態では、回転伝達軸21の回転は、上方回転軸28、43(図4、5参照)に軸支された傘歯車25、46(図4、5参照)と回転伝達軸21に軸支された傘歯車26、47(図4、5参照)との噛合いによって、上方回転軸28、43と回転伝達軸21との間で回転が伝達されるので、回転伝達軸21の回転のための歯車の数を削減でき、構造の簡素化に加え、低コストかつメンテナンス性を向上させることができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、図4及び図5に示したように、走行用チェーン27は、ベルト3の製麹原料の載置面(2点鎖線部)より下方に設置されているので、製麹原料によって走行用チェーン27が汚れにくくなることに加えて、走行用チェーン27に付着したグリース等が製麹原料に混入しにくくなる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限るものではなく、適宜変更したものであってもよい。例えば、前記実施形態では、走行部10を移動させるために、ローラ31、36(図4、5参照)を用いているが、これに限るものではなくレールを用いたスライド機構等であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 製麹装置
2 無端コンベア
3 ベルト
8 製麹室
10 手入部
11 手入機
16 走行機構
20a,20b 走行駆動部
21 回転伝達軸
28,43 上方回転軸
29,44 下方回転軸
25,26、46、47 傘歯車
27 走行用チェーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7