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特許7108320片頭痛の症状を管理するためのグリセリル3-ヒドロキシブチラート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】片頭痛の症状を管理するためのグリセリル3-ヒドロキシブチラート
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/22 20060101AFI20220721BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A61K31/22
A61P25/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019534701
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017063832
(87)【国際公開番号】W WO2018118369
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】15/389,828
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519222058
【氏名又は名称】ニューロエナジー ベンチャーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハシム、サミ
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/005818(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0065571(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0058416(US,A1)
【文献】HASHIM, Sami A. and VANITALLIE, Theodore B.,Ketone body therapy: from the ketogenic diet to the oral administration of ketone ester,Journal of Lipid Research,2014年,Vo. 55,pp. 1818-1826
【文献】LORENZO, C. Di et al.,Migraine improvement during short lasting ketogenesis: a proof-of-concept study,European Journal of Neurology,2014年,Vol. 22, No. 1,pp. 170-177
【文献】KOSSOFF, Eric C. and HARTMAN, Adam L.,Ketogenic Diets: New Advances for Metabolism-Based Therapies,Current Opinion in Neurology,2012年,Vo. 25, No. 2,pp. 173-178
【文献】LORENZO, Cherubino Di et al.,Diet transiently improves migraine in two twin sisters: possible role of ketogenesis?,Functional Neurology,2013年,Vol. 28, No. 4,pp. 305-308
【文献】MCCLEARY, Larry,Migraine Headaches - Rethinking an Old Maladay,https://www.brainblogger.com/2008/01/28/rethinking-an-old-malady/ Brain Blogger 2008/01/28,2008年,pp. 1-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を特徴とする、グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)エステルの使用:
該使用は、ある量のグリセリル(3-ヒドロキシブチラート)エステルの経口投与による片頭痛症状の処置、管理又は予防のための、経口組成物の製造における使用であって、加水分解の際に、グリセロール部分及び3-ヒドロキシブチラート部分を、以下において生じさせる:
(a)少なくとも1つの片頭痛症状を呈している対象、又は
(b)片頭痛症状が発症する、以前に特定されたパターンから、前記少なくとも1つの症状の発症を予防するべき対象、
ただし、上記の、該対象(a)及び該対象(b)のそれぞれに投与されるグリセリル(3-ヒドロキシブチラート)エステルの前記量は、前記少なくとも1つの症状を排除、抑制、限定又は軽減するのに十分である量であり、
投与される前記グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)化合物の前記量は、前記グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)化合物を投与された前記対象のケトン体の血漿レベルとして、対象の3-ヒドロキシブチラートの血漿レベル及びアセトアセタートの血漿レベルを合わせたものにより測定されるものを、6mM、6.5mM、7mM及び約7.5mMから選択される下限値及び上限値を有する前記範囲から選択されるレベルに、グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)エステル化合物の投与の最初の24時間以内に送達するのに十分な量であり、前記範囲の上限値は前記範囲の下限値より大きい。
【請求項2】
グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)が、グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)、グリセリルビス(3-ヒドロキシブチラート)、グリセリルモノ(3-ヒドロキシブチラート)又はそれらの混合物であり、各3-ヒドロキシブチラート基はそのD型及びL型から独立して選択され、該化合物の投与は1回分の投与量として少なくとも0.5g/kg体重/日で行われる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)が、(a)グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)又は(b)バルクグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)(バルクトリスエステル)であり、
各3-ヒドロキシブチラート基は独立してD型又はL型であり、
前記バルクトリスエステルは主にグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)がグリセロールの追加の3-ヒドロキシブチラートエステルを伴うものであり、バルクトリスエステルの加水分解の際に平均して3つの3-ヒドロキシブチラート部分がバルクトリスエステルの各グリセロール部分にある、
請求項1に記載の使用。
【請求項4】
グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)が、グリセリルトリス(D-3-ヒドロキシブチラート)、グリセリルトリス(L-3-ヒドロキシブチラート)、グリセリルトリス(DL-3-ヒドロキシブチラート)、及びそれらの混合物からなる群から選択され、「DL」という表示が、ヒドロキシブチラート基のバルク全体を指し、任意の特定の分子を非限定的に包含する、ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)が、グリセリルトリス(DL-3-ヒドロキシブチラート)である、ことを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
単回投与量又は分割投与量とした場合、化合物の前記量が、グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)に基づいて、約0.5g/kg(体重)/日~約2.0g/kg(体重)/日の経口量、及び前記エステルが完全に加水分解されたと仮定して、グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)以外のグリセリル3-ヒドロキシブチラートエステルの該経口量に基づいて化学量論的等量の3-ヒドロキシブチロイル基を提供する量、にさらに限定されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
投与が、(a)一時的な片頭痛を呈する対象については2~4日間、又は(b)慢性反復性片頭痛の病歴を呈している対象については前記対象の病歴から決定される病歴に基づく慢性反復周期を少なくとも2~4日超えた期間、若しくはこのような病歴が不明であるか又は信頼できない場合は約1か月間、継続されるように組成物が製剤されていることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
全ケトン体の血漿中濃度が、前記グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)化合物の投与の最初の6時間以内に達成されることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項9】
全ケトン体の血漿中濃度が、前記グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)化合物の投与の最初の2時間以内に達成されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
全ケトン体の血漿中濃度が、前記グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)化合物の投与の最初の1時間以内に達成されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
片頭痛の1つ以上の前駆症状の発現により投与が開始されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
頭痛の発現時に投与が開始されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
以下を特徴とする、グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)エステルバルク化合物の使用:
該使用は片頭痛症状の処置、管理又は予防のための組成物の製造における使用であって、前記バルク化合物は加水分解の際に、グリセロール部分及び3-ヒドロキシブチラート部分を1のグリセロール部分:3の3-ヒドロキシブチラート部分の比で、ある量の前記グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)エステルバルク化合物の以下の投与において生じさせる、
(a)少なくとも1つの片頭痛症状を呈している対象への投与、又は
(b)以前に確立された片頭痛症状の発症のパターンから、前記症状の少なくとも1つの発症を予防するべき対象、
ただし、上記の、該対象(a)及び該対象(b)のそれぞれに投与される前記グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)エステルの前記量は、前記少なくとも1つの症状の排除、抑制、制限、又は軽減のために十分な量であり、
前記グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)エステルバルク化合物の各3-ヒドロキシブチラート基は、独立してD型及びL型ならびにそれらの混合物から選択され、
投与される前記化合物の量は、グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)化合物を投与された対象のケトン体の血漿レベルとして、対象の3-ヒドロキシブチラートの血漿レベル及びアセトアセタートの血漿レベルを合わせたものにより測定されるものを、6mM、6.5mM、7mM及び約7.5mMから選択される下限値及び上限値を有する前記範囲から選択されるレベルに、グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)エステルバルク化合物の投与の最初の24時間以内に上昇させるのに十分な量であり、前記範囲の上限値は前記範囲の下限値より大きい。
【請求項14】
以下を特徴とする、グリセリル(3-ヒドロキシブチラート)エステル化合物の使用:
該使用は片頭痛症状の処置、管理又は予防のための組成物の製造における使用であって、前記化合物は、バルクにおいて、完全な加水分解の際にグリセロール部分及び3-ヒドロキシブチラート部分のみを、1のグリセロール:3の3-ヒドロキシブチラートの比で、ある量の前記化合物の以下の対象への投与によって生じさせる、
(a)少なくとも1つの片頭痛症状を呈している対象又は
(b)以前に確立された片頭痛症状の発症のパターンから、前記症状の少なくとも1つの発症を予防するべき対象、
前記化合物の各3-ヒドロキシブチラート基は、独立してD型及びL型ならびにそれらの混合物から選択され、
ただし、上記の、該対象(a)及び該対象(b)のそれぞれに投与されるグリセリル(3-ヒドロキシブチラート)エステルの前記量は、前記少なくとも1つの症状を排除、抑制、限定又は軽減するのに十分である量であり、
投与される前記化合物の量は、グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)化合物を投与された対象のケトン体の血漿レベルとして、対象の3-ヒドロキシブチラートの血漿レベル及びアセトアセタートの血漿レベルを合わせたものにより測定されるものを、6mM、6.5mM、7mM及び約7.5mMから選択される下限値及び上限値を有する前記範囲から選択されるレベルに、グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)エステルバルク化合物の投与の最初の24時間以内に上昇させるのに十分な量であり、前記範囲の上限値は前記範囲の下限値より大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
該当なし
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する声明
該当なし
【0003】
発明の分野
本発明は、片頭痛の分野及びその症状の管理に関する。本発明は更に、ケトン体の分野、更に3-ヒドロキシブチラートグリセリドの形態のケトン体に関する。
【0004】
片頭痛は、最も一般的な頭痛関連障害のうちの1つである。それは人口の5%にまで影響を及ぼし、男性よりも女性に、より一般的である。片頭痛の病態生理学の進歩にもかかわらず、一般的に利用可能な予防策は、部分的にのみ有効であり、幾つかの深刻な有害な副作用を伴う。特にこの点では、麦角アルカロイドとその類似体に注意すべきである。近年、片頭痛の予防及び治療における食事療法の役割に関心が高まっている。RaineroらのInsulin sensitivity is impaired in patients with migraine,Cephalagia 25:593-597,2005には、ケトン生成食事療法の間に、高頻度の片頭痛が改善した双子について報告されている。著者らは、片頭痛の病因を脳内でのインスリン感受性の低下のためであるとして、エネルギー源としてのグルコースの利用が低下したと結論付けている。Raineroは、「我々のデータは、片頭痛ではインスリン感受性が損なわれることを示し、片頭痛と血管疾患との併存症におけるインスリン抵抗性の役割を示唆している。」と述べている。
【0005】
ケトン生成食事療法には、炭水化物の厳しい制限が伴い、高比率の脂肪が含まれる。最初のケトン生成食事療法は、当時利用可能な薬理学的療法に耐性のある癲癇を患う小児の治療に関して、Wilderによって1921年に公開された(The effects of ketonemia on the course of epilepsy,Mayo Bull 2:307-308,1921)。エネルギー分布の点では、元のケトン生成食事療法は、脂肪90%、タンパク質8%、及び炭水化物2%であった。
【0006】
ケトン生成食事療法は、完全な飢餓の代謝状態に似ている。両方共も、略同程度の高ケトン血症をもたらし、血漿中ケトン体濃度は2~7mMである(Cahill,President’s address:Starvation;Trans Am Clin Climatol Assoc,94:1-21,1983)。この程度の高ケトン血症は、血液循環により完全に緩衝されるので、アシドーシスは誘発されず、「生理的」又は「治療的」ケトーシスと呼ばれてきたことを強調することは重要である(Hashimら;Ketone body therapy:from the ketogenic diet to the oral administration of ketone ester;J Lipid Res 44:1818-1826,2014)。
【0007】
より近時では、ケトン生成食事療法は、25人の慢性反復性片頭痛患者の治療に使用された(DiLorenzoら;Cortical function correlates of responsiveness to short-lasting preventive intervention with ketogenic diet in migraine:a multimodal evoked potential study,J Headache Pain 17:58-67,2016)。(一般的に4~72時間継続する最初の片頭痛の発作を発現した後の慢性反復性片頭痛患者はまた、先行する発作の開始の後4日経たないうちに追加的な発作を発現し、多くは、1月当り15回以上もの発作が起こる。「一時的な片頭痛」は、72時間を超えて離れて明らかに別の片頭痛として表れる。)更に、ケトン生成食事療法が片頭痛に予防効果を有するかどうかを調べるために、著者らは初めて、一時的な片頭痛の患者のグループにおいて、視覚及び体性感覚皮質誘発電位の馴化に関する1か月間にわたる食事療法の影響を評価した。1か月の食事療法の後、片頭痛の平均発作頻度と持続期間は有意に減少した。著者らは、ケトン生成食事療法は、神経可塑性の誘導と脳エネルギー代謝の増強を通して、皮質レベルで刺激と抑制の間のバランスの調整に作用すると結論付けている。しかしながら、示された作用のメカニズムについての明確な理解は示されていない。
【0008】
ケトン生成食事療法は、最も好ましい食事療法ではない。実践するのはかなり困難であり、実践する場合は、LDLコレステロール、尿酸、及び遊離脂肪酸が増加する可能性がある。時折、ケトン生成食事療法は、腎結石症及び他の深刻な合併症の発生率を高める恐れがある(Van Itallieら;Ketone metabolism’s ugly duckling;Nutr Rev.61:327-341,2003)。これらの悪影響の幾つかは、適切な水分補給(hydration)を確実にすることによって予防することができ、また、高脂肪血症は、食事中の多価不飽和脂肪及び一価不飽和脂肪の割合を高めることによって回避することができる(FuehrleinらDifferential metabolic effects of saturated versus polyunsaturated fats in ketogenic diets;J Clin Endocrinol Metab 89:1641-1645,2004)。更に、中鎖トリグリセリド(脂肪酸基中に典型的には8個及び/又は10個の炭素を有する脂肪酸のグリセロールエステル)をケトン生成食に含めることによって、ケトン生成食の耐容性を改善することができる(Huttenlocherら;Medium-Chain triglycerides as a therapy for intractable childhood epilepsy,Neurology,Vol11,Nov1971,pp1097-1103;Wuら,Medium-Chain Triglycerides in Infant Formulas and their Relation to Plasma Ketone Body Concentrations,Pediatric Research,Vol20,No.4,pp338-341,1986;Baliettiら,Ketogenic diets:An historical antiepileptic therapy with promising potentialities for the aging brain,Aging Research and Reviews 9(2010)273-279。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の目的
本発明の目的は、麦角アルカロイド等の現在の薬物療法を必要とすることなく、必要性のある対象における片頭痛の症状の1つ以上を管理する方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、片頭痛に対する他の治療的処置による治療の補助として、必要性のある対象における片頭痛の症状の1つ以上を管理する方法を提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、ケトン生成食事療法に頼ることを必要とせず、必要性のある対象における片頭痛の症状の1つ以上を管理する方法を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、麦角アルカロイド等の現在の薬物療法を必要とすることなく、必要性のある対象における片頭痛の症状の1つ以上を治療する方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、片頭痛に対する他の治療的処置による治療の補助として、必要性のある対象における片頭痛の症状の1つ以上を治療する方法を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、ケトン生成食事療法に頼ることを必要とせず、必要性のある対象における片頭痛の症状の1つ以上を治療する方法を提供することである。
【0015】
本発明の目的は、麦角アルカロイド等の現在の薬物療法を必要とすることなく、必要性のある対象における片頭痛の症状の1つ以上を予防する方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、片頭痛に対する他の治療的処置による治療の補助として、必要性のある対象における片頭痛の症状の1つ以上を予防する方法を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、ケトン生成食事療法に頼ることを必要とせず、必要性のある対象における片頭痛の1つ以上の症状を予防する方法を提供することである。
【0018】
本発明の目的は、麦角アルカロイド等の現在の薬物療法を必要とすることなく、一時的な片頭痛の病歴を有する対象における片頭痛の症状の1つ以上を予防する方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、片頭痛に対する他の治療的処置による治療の補助として、一時的な片頭痛の病歴を有する対象における片頭痛の症状の1つ以上を管理する方法を提供することである。
【0020】
本発明の更なる目的は、ケトン生成食事療法に頼ることを必要とせず、一時的な片頭痛の病歴を有する対象における片頭痛の症状の1つ以上を管理する方法を提供することである。
【0021】
本発明の目的は、麦角アルカロイド等の現在の薬物療法を必要とすることなく、慢性反復性片頭痛の病歴を有する対象における片頭痛の症状の1つ以上を予防する方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、片頭痛に対する他の治療的処置による処置の補助として、慢性反復性片頭痛の病歴を有する対象における片頭痛の症状の1つ以上を管理する方法を提供することである。
【0023】
本発明の更なる目的は、ケトン生成食事療法に頼ることを必要とせず、慢性反復性片頭痛の病歴を有する対象における片頭痛の症状の1つ以上を管理する方法を提供することである。
【0024】
本発明の更に別の目的は、3-ヒドロキシブチラート-グリセリドエステルを、その3-ヒドロキシブチロイル
【化1】

の含量が、1日当り約0.5g/kg~2.0g/kg(体重)のグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)
【化2】

の経口投与に相当する量で、投与することによって上記の目的を達成することである。
【0025】
本発明の更なる目的は、約2~約7.5mMの全ケトン体血漿中濃度をもたらすような量で、3-ヒドロキシブチロイル-グリセリドエステルを投与することによって上記の目的を達成することである。
【0026】
本発明の更に別の目的は、グリセリル-(3-ヒドロキシブチラート)エステル(1種又は複数種)を、一時的な片頭痛を患う患者対して少なくとも3日間、2~3×/日で、及び慢性症状の持続期間の患者の病歴に基づいて決定される期間に追加的な4日をプラスしたより長い期間、2~3回/日の投与計画で投与することによって上記の目的を達成することである。
【0027】
本発明の更なる目的は、本出願の利益を得た後、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0028】
発明の簡単な概要
要するに、本発明の上記目的、その他は、片頭痛を患っているか若しくは最近患った対象、又は片頭痛になる傾向を有する対象に、グリセリル-(3-ヒドロキシブチラート)エステルを投与することによって得ることができる。エステルがグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)である場合、それは典型的には、1日当たり0.5g/kg~2.0g/kg(体重)の範囲の量で、2~3回に分割した投与量で投与され、投与量は、60kgの女性の場合、約10~40g/回(serving)で1日3回~約15~60g/回で1日2回であり、また70kgの男性の場合、約12~47g/回で1日3回~約17.5~70g/回で1日2回である。これらの投与量及び1回分の投与量は、これらの化合物が投与される平均的典型的対象において、全ケトン体血中濃度(3-ヒドロキシブチラート及びアセトアセタートの合計で)が2~7.5mMの血漿中濃度になるように設計される。当業者には、前記投与量が正しい範囲の血中濃度をもたらさないような、非典型的な分布及び/又は代謝を示す対象について、これらの投与量を調整する方法がわかる。エステルが以下でより十分に議論される他のエステルのうちの1つである場合、投与量は、上記のように投与されるグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)によって最終的に送達される量に匹敵する量の3-ヒドロキシブチロイル部分が送達されるように計算される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
該当なし
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、片頭痛に関連する症状の1つ以上の管理、治療、又は予防、及び/又は症状の根底にある神経学的根拠の管理、治療、又は予防において、グリセロール基にエステル化した3-ヒドロキシブチロイル基
【化3】

を有する化合物の使用に関する。本発明の目的のために、治療とは、投与が片頭痛症状の発作の間になされることを意味することを意図し、予防とは、片頭痛を有することが分かっており、且つ片頭痛を起こす傾向を有し、特に複数回の発作(先行する発作の兆候の発症から約72時間以内に1回程度、そして1か月以内に15回以上の頻度の発作を起こす可能性がある)を起こす傾向を有する対象へのエステルの投与を意味することを意図し、そして更に、「傾向がある」とは、非限定的に、既知の又は被疑的な誘発性事象の後に起こる片頭痛の病歴を有する対象を含むことを意図し、この場合、既知の又は被疑的な誘発性事象と症状の発現との間の時間差は、個々の対象自身の病歴又は当業界で一般に認められている関連性から決定される。エステルは、3-ヒドロキシブチロイル基
【化4】

が、単一のグリセロール分子中の1、2、又は3つ全てのヒドロキシ基をエステル化しているものであり得る。3つ全てに満たないグリセロールヒドロキシ基が、3-ヒドロキシブチロイル基によってエステル化されている場合、残りのグリセロールヒドロキシ基は、エステル化されないまま残り、オメガ-3-脂肪酸、オメガ-6-脂肪酸、オメガ-3,6-脂肪酸、中鎖脂肪酸又はそれらの混合物によってエステル化され得る。(中鎖脂肪酸は、一般的に8個及び/又は10個の炭素の炭素鎖を有する脂肪酸であり、例えば精製された形態のそのような中鎖脂肪酸の1つはカプリル酸である。)各分子中の各3-ヒドロキシブチロイル基は、独立して、D又はL型のいずれかであり、投与されるバルク化合物は、いずれかの混合物又は全て同じものであり得る(即ち、(a)全ての基がD型の化合物の混合物、(b)全ての基がL型の化合物の混合物、(c)一部がD型で一部がL型の化合物の混合物、並びに(d)(1)a及びb、(2)a及びc、そして(3)a、b、及びc、から選択される化合物の混合物)。3-ヒドロキシブチロイル基のD型及びL型の両方が活性であるが、L型はよりゆっくりと利用されるので、3-ヒドロキシブチロイル基は実質的に全てD型であることが好ましい。特に好ましい態様では、約90%~98%、より好ましくは約96%の3-ヒドロキシブチロイル基がD型である。それにもかかわらず、他の量のD対L型の利用についても本発明の範囲内であり、D型100%~L型100%まで、及びD及びL型が任意の割合の混合物から選択することができる。加えて、(a)他にはエステル化されていない、又は(b)オメガ脂肪酸(3-オメガ、6-オメガ、若しくは3,6-オメガ、又はそれらの混合物のいずれか)で更にエステル化されている、又は(c)1種の中鎖脂肪酸又は異なる中鎖脂肪酸の混合物で更にエステル化されている、又は(d)オメガ脂肪酸と中鎖脂肪酸の両方で更にエステル化されている、1つ、2つ又は3つの(3-ヒドロキシブチロイル(3-hydroxybutyryl))基を有するエステルの混合物もまた、本発明における使用のための化合物の範囲内であると考えられる。非常に好ましい態様は、本発明に利用される化合物がグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)であるものであり、更により非常に好ましい化合物はグリセリルトリス(DL 3-ヒドロキシブチラート)であり、DLはバルク化合物を指し、必ずしも特定の分子の混合物ではなく、更により非常に好ましい態様は、グリセリルトリス(D96%/L4% 3-ヒドロキシブチラート)の使用であり、D96%/L4%はバルク化合物を指し、必ずしも特定の分子の混合物ではない。これらの化合物及びその製造方法は、米国特許第7,807,718号に更に十分に記載されており、その内容を、化合物及びそれらの製造の説明に関して本明細書に援用する。
【0031】
要するに、本発明の上記目的及びその他は、片頭痛を患っているか若しくは最近患った対象に、又は片頭痛になる傾向を有する対象に、グリセリル-(3-ヒドロキシブチラート)エステルを投与することによって得ることができる。エステルがグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)である場合、それは、典型的に1日当たり0.5g/kg~2.0g/kg(体重)の範囲内の量(より具体的には、0.5g/kg、0.55g/kg、0.6g/kg、0.65g/kg、0.7g/kg、0.75g/kg、0.8g/kg、0.85g/kg、0.9g/kg、0.95g/kg、1g/kg、1.1g/kg、1.2g/kg、1.3g/kg、1.4g/kg、1.5g/kg、1.6g/kg、1.7g/kg、1.8g/kg、1.9g/kg、又は2g/kg、及び、これらの具体的に記載した量のいずれかの間の中間の量)で、2~3回に分割した投与量で一般的に経口投与され、投与量は、60kgの女性の場合、約10~40g/回(より具体的には、10g/回、12.5g/回、15g/回、17.5g/回、20g/回、22.5g/回、25g/回、30g/回、35g/回、40g/回、及びこれらの具体的に記載した量のいずれかの間の中間の量)で1日3回(約8時間毎)~約15~60g/回(より具体的には、15g/回、17.5g/回、20g/回、22.5g/回、25g/回、27.5g/回、30g/回、35g/回、40g/回、45g/回、50g/回、55g/回、又は60g/回、及びこれらの具体的に記載した量のいずれかの間の中間の量)で1日2回(約12時間毎)であり、また70kgの男性の場合、約12~47g/回(より具体的には、12g/回、15g/回、17.5g/回、20g/回、22.5g/回、25g/回、30g/回、35g/回、40g/回、45g/回、47g/回、及びこれらの具体的に記載した量のいずれかの間の中間の量)で、1日3回(約8時間毎)~約17.5~70g/回(より具体的には17.5g/回、20g/回、22.5g/回、25g/回、27.5g/回、30g/回、35g/回、40g/回、45g/回、50g/回、55g/回、60g/回、65g/回、70g/回、及びこれらの具体的に記載した量のいずれかの間の中間の量)で、1日2回(約12時間毎)である。これらの投与量及び1回分の投与量は、これらの化合物が投与される平均的な典型的な対象において、全ケトン体血漿中濃度(3-ヒドロキシブチラートとアセトアセタートとの合計で)が2~7.5mM(より具体的には、2mM、2.25mM、2.5mM、2.75mM、3mM、3.25mM、3.5mM、4mM、4.25mM、4.5mM、4.6mM、4.7mM、4.8mM、4.9mM、5.0mM、5.1mM、5.2mM、5.3mM、5.4mM、5.5mM、5.6mM、5.7mM、5.8mM、5.9mM、6.0mM、6.1mM、6.2mM、6.3mM、6.4mM、6.5mM、6.6mM、6.7mM、6.8mM、6.9mM、7.0mM、7.1mM、7.2mM、7.3mM、7.4mM、7.5mM、及びこれらの具体的に記載した濃度のいずれかであって、範囲の上限値がその範囲の下限値よりも大きいという条件で、その範囲の下限値又はその範囲の上限値として役立ち得るこれらのいずれかの間の中間の濃度)の血中濃度となることを意図している。(アセトアセタートは、3-ヒドロキシ基が3-オキソ基によって置換されている3-ヒドロキシブチラートの酸化型である。
【化5】

本発明で使用するエステルを経口摂取すると、エステルは主に膵臓リパーゼによって腸管内で加水分解され、吸収される3-ヒドロキシブチラート部分を放出し、身体は、3-ヒドロキシブチラートをアセトアセタートに転化することによって3-ヒドロキシブチラートを利用し、順に、実際に細胞で使用される。)当業者には、前記の投与量が正しい範囲の血中濃度をもたらさないような非典型的な分布及び/又は代謝を示す対象において、これらの投与量を調整する方法がわかる。エステルが以下でより十分に議論される他のエステルのうちの1つであるとき、投与量は、グリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)によって最終的に送達される量に匹敵する量の3-ヒドロキシブチロイル部分が送達されるように計算される。
【0032】
本明細書では、特定のパラメータの値について範囲が与えられ、そのような範囲内の値がより具体的に記載されている場合はいつでも、下限値が実際に上限値よりも小さい限り、各々の具体的な値が新しい範囲限界の根拠となり得る。例として、前記の段落では、投与量範囲は、“0.5g/kg~2.0g/kg”として与えられており、より具体的な記載としては“0.5g/kg、0.55g/kg、0.6g/kg、0.65g/kg、0.7g/kg、0.75g/kg、0.8g/kg、0.85g/kg、0.9g/kg、0.95g/kg、1g/kg、1.1g/kg、1.2g/kg、1.3g/kg、1.4g/kg、1.5g/kg、1.6g/kg、1.7g/kg、1.8g/kg、1.9g/kg、又は2g/kg”である。それに基づいて、より具体的に記載された量のいずれもが、新しい範囲の下限値であり得、任意のより大きな具体的に記載された量が、その新しい範囲の上限値であり得、各々のそのような構築範囲が本明細書に具体的に記載されていると看做される。したがって、0.5~0.6、0.55~1.9、0.75~1.7、1.8~1.9等が全て本明細書に記載されていると看做される。同じことが、体重、1回分の投与量等に基づく投与に関する他のパラメータについても当てはまる。
【0033】
片頭痛に典型的に関連する一群の症状は、一過性の視覚障害及び/又は胃腸障害を含む。頭痛の前には、点滅しながら点が動き、又は線が揺らめく部分的に不明瞭な視覚、不連続な部分で喪失した視覚、ぼやけた視覚、及び/又は羞明の視覚的前兆(「前駆症状障害」)がしばしば起こる。これらの前駆症状障害は5~30分続き、その後、頭痛(通常は片側)が4~72時間続くことがある。本発明は、それの発現が分かっている対象、又は既知の又は被疑的な誘発性事象の後、片頭痛が以前に発現した対象において、頭痛を完全に除去すること、その発現頻度及び/又はその発現強度での頭痛の発現の低減、及びその発現の予防を目的とする。一般的に、患者自身の病歴及び片頭痛の発症と事象又は刺激の患者自身の関連付けは、片頭痛患者の集団全体に十分な特徴付けがなされていないため、「被疑的な誘発性事象」の特定に依存している。1つ以上の前駆症状(本明細書中の他の箇所で更に言及される)の発現は、一般的に、3-ヒドロキシブチラートエステル療法を開始するための合図と考えられるが、これらは「誘発性事象」ではなく「関連」症状である。「治療」、「予防」、「頻度の減少」、及び/又は「強度の低減」は、頭痛自体、及び/又は胃腸障害、及び/又は視覚的影響、及び/又は頭痛に伴い得る羞明症状のうちの少なくとも1つについてであり、一般的に、少なくとも頭痛、好ましくは頭痛及びこれらの関連症状のうちの1つ以上に、より具体的に適用可能である。通常、頭痛に先行する前駆症状の治療、頻度の減少、又は強度の低減が同時に達成され得るが、それらは本発明の一部としては必要とされない。しかしながら、グリセリル-(3-ヒドロキシブチラート)エステルの投与ラウンドを開始する他のいずれかの理由の認識がない場合、1つ以上の前駆症状の発現をそのような投与を開始する又、既に投与を開始している場合はおそらくは投与量を増やす合図として使用することができる。
【0034】
本発明において使用するためのエステル化合物は、0.5/kg~2.0/kg(体重)のグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)が経口投与される場合と同じ量の3-ヒドロキシブチロイル部分が送達される量で投与される。再度、焦点は、2mMと7mMの間、好ましくは4.5mMと7mMの間、より好ましくは5mMと7mMの間の血漿中での適切なケトン体(3-ヒドロキシブチロイル濃度+アセトアセタート濃度)を達成することである。この量における実際の体積又は重量を単回の投与とするのには負担が大き過ぎるか又は望ましくない場合、1日当り複数回にする場合は望ましい量の複数に分割した投与量に、又は単回の投与(即ち、互いが所望の短時間内)にする場合は複数の投与単位に、投与を分割することができる。好ましくは、投与は、24時間に亘って略等しい間隔で2~3回の分割投与に分割し、その結果、1日に2回の投与は約12時間毎になり、1日に3回の投与は約8時間毎になる。例として、50gの投与が望ましい場合、それは単一剤形又は食品若しくは飲料中に分配させて50gの単回投与として投与することができ、又は1日に2回、そのような量の1/2で投与することができ、又は互いに短時間内(好ましくは実質的に単回投与が望まれる場合には互いに数秒以内)の場合は2つの投与単位で1/2の投与量の剤形で投与することができる。1日当たり複数の投与が望まれる場合、又は単回投与で1日当たり複数の投与単位が望まれる場合、当業者には他の分割した投与量及び複数の投与単位が分かり、非限定的に、1日3回投与する又は実質的に同時に3単位投与する上記の量の1/3の投与量;1日に4回投与する又は実質的に同時に4単位を投与する又は2単位を1日2回投与する上記の量の1/4の投与量が含まれる。その意図及び目的は、ケトン生成食事療法又は飢餓によって達成されるものに匹敵する2mM~7.5mM(例えば、4.5mM、5.0mM、5.5mM、6.0mM、6.5mM、7.0mM又は7.5mM、及びこれらの明示的に記載された量のうちの任意の特定のものの間の全てのmM濃度もまた、明示的に開示されているものと看做される)の3-ヒドロキシブチロイル基
【化6】

血漿中濃度を特徴とする治療的高ケトン血症を誘導することである。当業者は、このテーマに関する他の変形を理解するであろう。
【0035】
一般的に、経口投与では、必要な血中ケトン体濃度は、24時間以内、より通常では12時間以内、更により典型的には6時間以内、更により典型的には2時間以内に、更によりあり得る可能性としては1時間以内に達成され得る。経口投与では、ケトン体血中濃度は急速に上昇し、約30分又は45分~1時間でピークに達する。(a)片頭痛の発現、又は(b)一群の片頭痛症状の発現、(c)1つ以上の片頭痛の前駆症状の発現、又は(d)片頭痛誘発性事象発生の認識又は片頭痛の被疑的な誘発性事象発生の認識のために、投与が開始されると、一時的な片頭痛の対象であるとわかっている又はそのように考えられる対象の場合、又は特定の群における最後の反復性片頭痛の後1か月以上にわたって慢性反復性片頭痛を有することがわかっている対象の場合、投与は2、3、又は4日間、1日基準で継続されるべきである。慢性反復性片頭痛対象の場合、反復性片頭痛の発作の継続期間(即ち、非限定的に、2週間、3週間、4週間等)に関する患者の病歴を、投与を継続すべき期間の指針として使用でき、一連の片頭痛のうち予想される最後の片頭痛を少なくとも4日間超えるようにすべきるである。例えば、非限定的に、1日目に始まり、2、3日持続し、約4日で繰り返し、2週間に亘って繰返すことが継続するので、予想される最後の片頭痛が15日目に開始する慢性反復性片頭痛の病歴を有する対象には、投与は少なくとも19日まで、おそらく1日か2日長く継続しなければならない。対象が特定の事象の後に片頭痛が発現するという病歴を有する状況では、投与は、症状の発症に関連する既知の事象の発生後できるだけ早くから、その事象に関連する片頭痛の症状の通常の発現後少なくとも4日以上まで行うべきである。対象が先行する片頭痛の後に略規則的な間隔で略規則的に次の片頭痛が発現する病歴を有する状況では、投与は、反復片頭痛が始まると予想される前の時点から開始して、このように予想される次の片頭痛の予想される日よりも少なくとも4日後まで行なうべきである。本発明では、片頭痛症状を予防するためのグリセリル(3-ヒドロキシブチラート)エステルの防止的(予防的)使用は、一般的にこれら最後の2つの状況に関する。対象が片頭痛の前駆症状を発現する状況では、投与は、できるだけ早く開始し、上記のように一時的な片頭痛の対象又は慢性反復性片頭痛の対象に対しては上記のように継続するが、前駆症状の発現と頭痛の発症の間の期間は短いので、前駆症状が開始した後は、投与は治療であり、予防ではないと看做される。
【0036】
前記のように、上記投与量範囲のグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)によって、2mM~7mMの全ケトン体(3-ヒドロキシブチロイル基
【化7】

及びアセトアセタート)血漿中濃度がもたらされると予想される。
【実施例
【0037】
以下の実施例は、非限定的に本発明を例示する。
【0038】
例1
【0039】
60kgの女性は、一時的な片頭痛の発現を示すが、このような頭痛が1回発現すると、その次は、数ヶ月間は再び現れることはない。事象毎に、頭痛が開始する直前に、対象は片頭痛に典型的な視覚障害が起こる。対象には、次回、この種の視覚障害の発現に気づいたとき、15グラムのグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)を自己投与し、これを、1日3回、4日間継続することが要求される。対象は、そのような症状に気付き、その症状に気付いてから数分以内に、15gのグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)を摂取する。すると、続いて起こる頭痛は、過去の発作よりも、持続期間が短く、且つ強度が低い。
【0040】
例2
【0041】
70kgの男性は、慢性反復性片頭痛を示すが、過去の病歴によると、一旦、反復性の発作が開始すると、対象には、平均24時間続く最初の片頭痛があり、別の片頭痛が2~3日で発現し、このパターンが約30日間継続し、その後、片頭痛は、1~2か月間は治まり、このサイクルが再び繰り返される。これらの事象のきっかけになる既知の又は被疑的な事象は存在しない。対象は、片頭痛の発症時に20gのグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)を自己投与し、この投与量で1日3回、35日間、自己投与し続けることを指示される。通常の最初の片頭痛は、過去の病歴の発現のときよりも、重症度が低く、且つ持続期間が短い。更に、反復性片頭痛は、過去の病歴から示唆されるよりも、頻度及び強度が低減する。
【0042】
例3
【0043】
例2の対象の場合、35日後に投与を中止し、2か月間は片頭痛が起こらず、更なる発作が起こると、再び例2に従う。35日目に投与を中止した後を除いて、この第2の片頭痛の開始を1日目としてカウントし、対象は90日目(この対象の病歴に基づいて、更なる片頭痛の発症が予想されるよりも約5~6日前)に再び投与を開始し、更に40日間(即ち、90日目~130日目に当る)投与を続ける。片頭痛が約94~95日目又はその前後に起こると予想されるが、そのような片頭痛はその後又は130日目に終わる投与期間中は現れない。
【0044】
例4
【0045】
60kgの女性は、例2及び3の男性対象に類似した反復性パターンを有する慢性反復性片頭痛を発現する。彼女は、片頭痛の発症時に、15gのグリセリルトリス(3-ヒドロキシブチラート)を自己投与するように指示される。これは、例2及び3におけるような20gではないが、それ以外は例2及び3における投与計画に従う。例2及び3で示された効果と同様の軽減が得られる。