(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】測定装置、および測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20220721BHJP
【FI】
G01N21/3504
(21)【出願番号】P 2020547562
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2018034955
(87)【国際公開番号】W WO2020059100
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 修一
(72)【発明者】
【氏名】中野 将徳
(72)【発明者】
【氏名】辻尾 亮介
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-098629(JP,A)
【文献】国際公開第2007/088885(WO,A1)
【文献】特表2007-510131(JP,A)
【文献】特開2003-232732(JP,A)
【文献】特開2017-173162(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0124918(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01508794(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
G01N 33/497
A61B 5/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
12
CO
2
および
13
CO
2
である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、前記セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、前記セル内の被測定ガスの前記2種類の成分ガスの濃度を測定する測定装置であって、
被測定ガスとして収集した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの成分ガスの濃度を測定する第1測定部と、
前記第1測定部で測定した前記第1被測定ガスの成分ガスの濃度と前記第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整する濃度調整部と、
前記濃度調整部による調整を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスに対して、収容した前記セル内で予め定められた力で加圧する加圧部と、
前記第1測定部で測定した前記第1被測定ガスと前記第2被測定ガスとの成分ガスの濃度差
である差分値に基づいて、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の前記加圧部での圧力を補正する圧力補正部と、
前記圧力補正部による補正を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスそれぞれに対して、前記2種類の成分ガスの濃度比を測定する第2測定部とを備える測定装置。
【請求項2】
12
CO
2
および
13
CO
2
である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、前記セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、前記セル内の被測定ガスの前記2種類の成分ガスの濃度を測定する測定装置であって、
被測定ガスとして収集した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの成分ガスの濃度を測定する第1測定部と、
前記第1測定部で測定した前記第1被測定ガスの成分ガスの濃度と前記第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整する濃度調整部と、
前記濃度調整部による調整を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスに対して、収容した前記セル内で予め定められた力で加圧する加圧部と、
前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも成分ガスの濃度が高い方の被測定ガスの圧力値を測定する圧力測定部と、
前記圧力測定部で測定した前記第1被測定ガスと前記第2被測定ガスとの圧力差
である差分値に基づいて、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の前記加圧部での圧力を補正する圧力補正部と、
前記圧力補正部による補正を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスそれぞれに対して、前記2種類の成分ガスの濃度比を測定する第2測定部とを備える測定装置。
【請求項3】
前記測定装置は、
被測定ガスを収容するシリンダと、
前記シリンダに挿入されているピストンと、
バルブとを有し、
前記バルブが開放されている状態で、前記ピストンが駆動されると、前記シリンダに収容されている被測定ガスは外部に排出され、
前記圧力補正部は、
前記差分値に対応する前記ピストンの第1移動量を取得し、
前記バルブが開放された状態において、前記第1移動量で前記ピストンを駆動することにより、前記加圧部での圧力を補正する、請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記圧力補正部は、前記加圧部で加圧した前記セル内での前記第1被測定ガスの圧力値と前記第2被測定ガスの圧力値とのうち高い方の圧力値が、低い方の圧力値となるように前記加圧部での圧力を補正する、請求項1
~請求項3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記濃度調整部は、前記第1測定部で測定した前記第1被測定ガスの成分ガスの濃度と前記第2被測定ガスの成分ガスの濃度とのうち高い方の濃度が、低い方の濃度となるように、高い方の濃度の被測定ガスを外気で希釈する、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記圧力補正部は、前記濃度調整部において外気で希釈した前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのいずれか一方に対して前記加圧部での圧力を補正する、
請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記加圧部は
、被測定ガスを収容した前記セル内の圧力値が成分ガスの濃度を測定する場合の圧力値となるように、予め定められた
第2移動量で前記ピストンを駆動
し、
前記第1移動量は、前記第2移動量の一部であり、
前記加圧部は、前記圧力補正部による補正対象の被測定ガスについては、前記第1移動量で前記ピストンを駆動した以降に、前記バルブを閉塞するとともに継続して前記ピストンを駆動することにより、該被測定ガスを加圧する、請求項3に記載の測定装置。
【請求項8】
前記第1被測定ガスについての前記第2移動量と、前記第2被測定ガスについての前記第2移動量とは同一である、請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記圧力補正部は、前記加圧部で加圧した前記セル内での圧力値が高くなる方の前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスの一方に対して前記ピストンの移動量を調整する、請求項7に記載の測定装置。
【請求項10】
12
CO
2
および
13
CO
2
である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、前記セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、前記セル内の被測定ガスの前記2種類の成分ガスの濃度を測定する測定方法であって、
被測定ガスとして収集した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの成分ガスの濃度を測定するステップと、
測定した前記第1被測定ガスの成分ガスの濃度と前記第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整するステップと、
調整を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスに対して、収容した前記セル内で予め定められた力で加圧するステップと、
測定した前記第1被測定ガスと前記第2被測定ガスとの成分ガスの濃度差に基づいて、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の前記セル内での圧力を補正するステップと、
補正を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスそれぞれに対して、前記2種類の成分ガスの濃度比を測定するステップとを有する測定方法。
【請求項11】
12
CO
2
および
13
CO
2
である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、前記セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、前記セル内の被測定ガスの前記2種類の成分ガスの濃度を測定する測定方法であって、
被測定ガスとして収集した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの成分ガスの濃度を測定するステップと、
測定した前記第1被測定ガスの成分ガスの濃度と前記第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整するステップと、
調整を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスに対して、収容した前記セル内で予め定められた力で加圧するステップと、
前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスそれぞれの圧力値を測定するステップと、
測定した前記第1被測定ガスと前記第2被測定ガスとの圧力差に基づいて、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の前記セル内での圧力を補正す
るステップと、
補正を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスそれぞれに対して、前記2種類の成分ガスの濃度比を測定するステップとを備える測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの2種類の成分ガスの濃度比を測定する測定装置、および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療の分野において、赤外線検出器を病気の診断に利用する測定装置が開発されている。測定装置は、生体(被検者)からの被測定ガス(被検者の呼気)に含まれる2種類の成分ガスの濃度比に基づいて、病気等を診断する。2種類の成分ガスはお互いに同位体の関係である。
【0003】
測定装置は、典型的には、薬物を生体に投与する前の第1被測定ガスに含まれる2種類の成分ガスの濃度比と、該薬物を生体に投与した後の第2被測定ガスに含まれる2種類の成分ガスの濃度比とを測定する。測定装置は、第1被測定ガスをセルに収容させるとともに、第2被測定ガスをセルに収容させる。測定装置は、セル内に収容された第1被測定ガスに含まれる2種類の成分ガスの濃度比と、セル内に収容された第2被測定ガスに含まれる2種類の成分ガスの濃度比とに基づいて、病気等の診断を行う。
【0004】
例えば、特許文献1では、測定装置が、セル内に被測定ガスを圧送し、成分ガスの濃度比の測定の精度を向上させるために、セル内の被測定ガスを加圧する技術が提案されている。また、特許文献2では、測定装置が、成分ガスの濃度比の測定の精度を向上させるために、セル内の第1被測定ガスと、第2被測定ガスとで成分ガスの濃度を同一にするように、成分ガスの濃度が高い方の被測定ガスを外気で希釈することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-98629号公報
【文献】特開平10-197444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、成分ガスの濃度比の測定の精度を向上させる測定装置が提案されているが、医療機器の技術が進歩した昨今、成分ガスの濃度比の測定の精度をさらに向上させることが望まれている。
【0007】
本技術は、成分ガスの濃度比の測定の精度を向上させる測定装置、および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面に従う測定装置は、互いに同位体の関係である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、セル内の被測定ガスの2種類の成分ガスの濃度を測定する測定装置であって、被測定ガスとして収集した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの成分ガスの濃度を測定する第1測定部と、第1測定部で測定した第1被測定ガスの成分ガスの濃度と第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整する濃度調整部と、濃度調整部による調整を経た第1被測定ガスおよび第2被測定ガスに対して、収容したセル内で予め定められた力で加圧する加圧部と、第1測定部で測定した第1被測定ガスと第2被測定ガスとの成分ガスの濃度差に基づいて、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の加圧部での圧力を補正する圧力補正部と、圧力補正部による補正を経た第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれに対して、2種類の成分ガスの濃度比を測定する第2測定部とを備える。
【0009】
本発明の異なる局面に従う測定装置は、互いに同位体の関係である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、セル内の被測定ガスの2種類の成分ガスの濃度を測定する測定装置であって、被測定ガスとして収集した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの成分ガスの濃度を測定する第1測定部と、第1測定部で測定した第1被測定ガスの成分ガスの濃度と第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整する濃度調整部と、濃度調整部による調整を経た第1被測定ガスおよび第2被測定ガスに対して、収容したセル内で予め定められた力で加圧する加圧部と、加圧部で加圧したセル内での第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも成分ガスの濃度が高い方の被測定ガスの圧力値を測定する圧力測定部と、圧力測定部で測定した第1被測定ガスと第2被測定ガスとの圧力差に基づいて、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の加圧部での圧力を補正する圧力補正部と、圧力補正部による補正を経た第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれに対して、2種類の成分ガスの濃度比を測定する第2測定部とを備える。
【0010】
圧力補正部は、加圧部で加圧したセル内での第1被測定ガスの圧力値と第2被測定ガスの圧力値とのうち高い方の圧力値が、低い方の圧力値となるように加圧部での圧力を補正する。
【0011】
濃度調整部は、第1測定部で測定した第1被測定ガスの成分ガスの濃度と第2被測定ガスの成分ガスの濃度とのうち高い方の濃度が、低い方の濃度となるように、高い方の濃度の被測定ガスを外気で希釈する。
【0012】
圧力補正部は、濃度調整部において外気で希釈した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのいずれか一方に対して加圧部での圧力を補正する。
【0013】
加圧部は、被測定ガスをセルに圧送するシリンダと、シリンダに挿入されているピストンと、ピストンを駆動する駆動部とをさらに有し、駆動部は、被測定ガスを収容したセル内の圧力値が成分ガスの濃度を測定する場合の圧力値となるように、予め定められた力でピストンを駆動する。
【0014】
圧力補正部は、シリンダからセル内に圧送される被測定ガスの圧送量により加圧部での圧力を補正する。
【0015】
圧力補正部は、加圧部で加圧したセル内での圧力値が高くなる方の第1被測定ガスおよび第2被測定ガスの一方をシリンダからセル内に圧送する圧送量を低減する。
【0016】
圧力補正部は、加圧部がセル内に圧送する予め定められた圧送量の被測定ガスをシリンダに収容する処理において、圧送量を低減する。
【0017】
2種類の成分ガスは、12CO2および13CO2である。
本発明のある局面に従う測定方法は、互いに同位体の関係である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、セル内の被測定ガスの2種類の成分ガスの濃度を測定する測定方法であって、被測定ガスとして収集した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの成分ガスの濃度を測定するステップと、測定した第1被測定ガスの成分ガスの濃度と第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整するステップと、調整を経た第1被測定ガスおよび第2被測定ガスに対して、収容したセル内で予め定められた力で加圧するステップと、測定した第1被測定ガスと第2被測定ガスとの成分ガスの濃度差に基づいて、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の加圧部での圧力を補正するステップと、補正を経た第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれに対して、2種類の成分ガスの濃度比を測定するステップとを有する。
【0018】
本発明の異なる局面に従う測定方法は、互いに同位体の関係である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、セル内の被測定ガスの2種類の成分ガスの濃度を測定する測定方法であって、被測定ガスとして収集した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの成分ガスの濃度を測定するステップと、測定した第1被測定ガスの成分ガスの濃度と第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整するステップと、調整を経た第1被測定ガスおよび第2被測定ガスに対して、収容したセル内で予め定められた力で加圧するステップと、加圧したセル内での第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの圧力値を測定するステップと、測定した第1被測定ガスと第2被測定ガスとの圧力差に基づいて、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の加圧部での圧力を補正するステップと、補正を経た第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれに対して、2種類の成分ガスの濃度比を測定するステップとを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明のある実施の形態によれば、成分ガスの濃度比の測定の精度を向上させる測定装置、および測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る測定装置の構成を説明するための概略図である。
【
図2】本実施形態に係る演算回路の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】本実施形態に係るガス注入器の構成を説明するための概略図である。
【
図4】本実施形態に係る演算回路の機能構成例を説明するためのブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る測定装置のフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る測定装置でのCO
2の推移などを説明するための図である。
【
図7】第1対応テーブルを説明するための図である。
【
図8】第2対応テーブルを説明するための図である。
【
図9】本実施形態に係る測定装置の主な処理を説明するための図である。
【
図10】第3対応テーブルを説明するための図である。
【
図11】別の実施の形態に係るピストンの駆動などを説明するための図である。
【
図12】別の実施の形態に係る測定装置の主な処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
(適用例)
本実施形態に係る測定装置は、同位体の入った薬物を生体に投与した後、同位体の光吸収特性により同位体の濃度比の変化を測定して、生体の代謝率を求めて病気の診断に利用する装置を例に説明する。具体的に、胃潰瘍、胃炎の原因であると言われているヘリコバクタピロリー(HP)が被検者の胃の中に存在するか否かの診断に利用する測定装置について説明する。
【0023】
被検者にHPが存在するか否かを診断する方法としては、様々な方法が提案されている。本実施形態に係る測定装置では、HPが持つ強いウレアーゼ活性により尿素を二酸化炭素とアンモニアとに分解する性質を利用して、被検者に投与した同位体13Cでマーキングした尿素が分解されて得られる13CO2の濃度比の変化から、HPの有無の診断を行っている。
【0024】
ここで、炭素には、質量数が12のものの他、質量数が13や14の同位体が存在するが、これらの同位体の中で質量数が13の同位体13Cは、放射性がなく、安定して存在するため取り扱い易い。そのため、被検者に投与する尿素は、同位体13Cでマーキングされ、被検者の胃の中にHPが存在する場合、当該HPにより13CO2とアンモニアとに分解される。分解された13CO2は、被検者の呼気に含まれて排出されるため、被検者の呼気に含まれる13CO2の濃度比を測定することで、HPが被検者の胃の中に存在するか否かの診断が可能となる。
【0025】
空気中に含まれる13CO2と12CO2との濃度比は、1:100である。そのため、本実施形態に係る測定装置は、13CO2と12CO2との濃度比を精度よく測定することが求められる。なお、本実施形態に係る測定装置においては、13CO2と12CO2との濃度比を求める方法として赤外分光を用いており、一方のセルでの13CO2の吸収と、他方のセルでの12CO2の吸収とが等しくなる長短2本のセルを備えている。測定装置では、各セルに、それぞれの分析に適した波長の赤外光を当てて、透過光の光量(透過光量)を測定し、空気中の濃度比に対して被検者の呼気に含まれる濃度比の変化を求めている。なお、13CO2と12CO2との濃度比を求める方法については、特公昭61-42219号公報や、特公昭61-42220号公報などに開示されている。
【0026】
以下、同位体13Cでマーキングしたウレア診断薬を被検者に投与した後、呼気中の13CO2の濃度比を分光測定する場合について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、ウレア診断薬を投与する前の被検者の呼気を第1被測定ガス(ベースガスともいう。)として呼気バッグに採集する。その後、被検者にウレア診断薬を経口投与し、約20分後、被検者の呼気を第2被測定ガス(サンプルガスともいう。)として呼気バッグに採集する。
【0027】
第1被測定ガスの呼気バッグと、第2被測定ガスの呼気バッグとをそれぞれ測定装置の所定のノズルにセットし、13CO2と12CO2との濃度比を測定する。
【0028】
(測定装置)
図1は、第1実施形態に係る測定装置100の構成を説明するための概略図である。測定装置100では、第1被測定ガスの呼気バッグBと第2被測定ガスの呼気バッグSとを、それぞれノズルN1,N2にセットする。ノズルN1は、パイプ(例えば、金属パイプ)を通してフィルタF1およびバルブ(例えば、電磁バルブ)V2につながっている。なお、フィルタF1は、呼気バッグBに含まれる第1被測定ガス以外の異物を除去するためのフィルタである。ノズルN2は、パイプを通してフィルタF2およびバルブV3につながっている。バルブV2およびバルブV3は、1本のパイプを通してガス注入器21につながっている。なお、フィルタF2は、呼気バッグSに含まれる第1被測定ガス以外の異物を除去するためのフィルタである。
【0029】
ガス注入器21につながるパイプには、バルブV1,V4,V5がそれぞれつながっている。バルブV1は、パイプを通してフィルタF5、およびリファレンスガス供給部30につながっている。リファレンスガス供給部30には、例えばソーダライム(水酸化ナトリウムと水酸化カルシウムとを混合したもの)を炭酸ガス吸収剤として用いる炭酸ガス吸収部を含んでいる。そのため、リファレンスガス供給部30は、外部から取り込んだ空気から二酸化炭素を吸収したリファレンスガスをガス注入器21に供給することができる。なお、フィルタF5は、ガス注入器21に供給するリファレンスガスから異物を取り除く防塵フィルタである。
【0030】
バルブV4は、パイプを通してフィルタF4、およびセル11につながっている。バルブV5は、パイプを通してフィルタF3につながっている。フィルタF3は、外部から空気を取り込み口に設けられており、取り込んだ空気から異物を取り除くフィルタである。フィルタF4は、ガス注入器21に供給するリファレンスガス、第2被測定ガス、および第2被測定ガスから水分を取り除くドライフィルタである。
【0031】
バルブV4の他方は、12CO2の吸収を測定するための第1サンプルセル11aにつながっている。第1サンプルセル11aは、セル11の1つのセルで12CO2の吸収を測定するため短いセルである。セル11には、他に13CO2の吸収を測定するための長い第2サンプルセル11bおよび補助セル11cが含まれている。第1サンプルセル11aと第2サンプルセル11bとは連通しており、第1サンプルセル11aに導かれたガスは、そのまま第2サンプルセル11bに入り、バルブV6を通して排気される。補助セル11cには赤外線の吸収のないリファレンスガスが充填され、密閉されている。なお、補助セル11cは、リファレンスガスを充填して密閉するのではなく、リファレンスガス供給部30からリファレンスガスを導いて、一定の流速で常時流してもよい。
【0032】
第1サンプルセル11aの容量は約0.1ml、第2サンプルセル11bの容量は約3.7mlである。セル11の端面には、赤外線を透過させるサファイヤ透過窓が設けられている。また、セル11は、パイプを通して圧力計31とつながっている。圧力計31は、ガス注入器21によってセル11内に導入されたガスの圧力を測定することができる。また、後述するシリンダ21bは、圧力計33とつながっている。圧力計33は、シリンダ21b内に導入されたガスの圧力を測定することができる。
【0033】
セル11の一方の端面側には、赤外光を発する光源装置L1,L2が設けられている。光源装置L1,L2には、赤外線を照射するための2つの導波管(図示せず)を備えている。光源装置L1,L2による赤外光の発生方式は、任意のものでよく、例えばセラミックスヒータ(表面温度450℃)等が使用可能である。また、光源装置L1,L2とセル11との間には、赤外光を一定周期で遮断して通過させる光チョッパ22が設けられている。光チョッパ22は、モータ22aで回転させることで、セル11に一定の周期(例えば、600Hz)で赤外光を出射させることができる。つまり、光チョッパ22は、光源装置L1,L2から出射した赤外光の強度を正弦波状に変調させる光変調器である。
【0034】
光源装置L1から出射された赤外光は、第2サンプルセル11bを通り、第1検出素子25aで光量が検出される。第2サンプルセル11bと第1検出素子25aとの間には、波長フィルタ24aが設けられている。光源装置L2から出射された赤外光は、第1サンプルセル11aおよび補助セル11cを通り、第2検出素子25bで光量が検出される。第1サンプルセル11aおよび補助セル11cと第2検出素子25bとの間には、波長フィルタ24bが設けられている。
【0035】
波長フィルタ24aは、13CO2の吸収を測定するため約4412nmの波長の赤外光を通し、波長フィルタ24bは、12CO2の吸収を測定するため約4280nmの波長の赤外線を通すように設計されている。第1検出素子25a,および第2検出素子25bは赤外光の光量を検出する素子である。
【0036】
第1検出素子25a,および第2検出素子25bの全体は、ヒータおよびペルチェ素子27により一定温度に保たれている。また、測定装置100内部の空気を換気するファン28,29が設けられている。さらに、測定装置100は、バルブV1~バルブV6、およびガス注入器21などを駆動する駆動回路50を備える。
【0037】
バルブV1は、リファレンスガスをシリンダ21b内に取り込む場合に開放されるバルブである。バルブV2は、第1被測定ガスの呼気バッグBから、第1被測定ガスをシリンダ21b内に取り込む場合に開放されるバルブである。バルブV3は、第2被測定ガスの呼気バッグSから、第2被測定ガスをシリンダ21b内に取り込む場合に開放されるバルブである。バルブV4は、シリンダ21b内のガス(被測定ガス、リファレンスガス)をセル11に圧送する場合に開放されるバルブである。バルブV5は、セル11に被測定ガスを圧送する前(セル11に被測定ガスを収容する前)に、該被測定ガスを外部に排出させる場合に、開放されるバルブである。バルブV6は、セル11に被測定ガスを圧送したときに、該被測定ガス(セル11を通過した被測定ガス)を外部に排出させる場合に、開放されるバルブである。
【0038】
(駆動回路)
図2は、第1実施形態に係る駆動回路50の構成を説明するためのブロック図である。
図2を参照して、駆動回路50は、マイクロプロセッサ51と、チップセット52と、メインメモリ54と、不揮発性メモリ56と、システムタイマ58と、表示コントローラ60と、I/Oコントローラ70とを含む。チップセット52と他のコンポーネントとの間は、各種のバスを介してそれぞれ結合されている。
【0039】
マイクロプロセッサ51およびチップセット52は、典型的には、汎用的なコンピュータアーキテクチャに準じて構成される。すなわち、マイクロプロセッサ51は、チップセット52から内部クロックに従って順次供給される命令コードを解釈して実行する。チップセット52は、接続されている各種コンポーネントとの間で内部的なデータを遣り取りするとともに、マイクロプロセッサ51に必要な命令コードを生成する。さらに、チップセット52は、マイクロプロセッサ51での演算処理の実行の結果得られたデータなどをキャッシュする機能を有する。
【0040】
駆動回路50は、記憶手段として、メインメモリ54および不揮発性メモリ56を有する。
【0041】
メインメモリ54は、揮発性の記憶領域(RAM)であり、駆動回路50への電源投入後にマイクロプロセッサ51で実行されるべき各種プログラムを保持する。また、メインメモリ54は、マイクロプロセッサ51による各種プログラムの実行時の作業用メモリとしても使用される。このようなメインメモリ54としては、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)といったデバイスが用いられる。
【0042】
一方、不揮発性メモリ56は、リアルタイムOS(Operating System)、測定装置100のシステムプログラム、ユーザプログラム、演算プログラム、設定パラメータといったデータを不揮発的に保持する。これらのプログラムやデータは、必要に応じて、マイクロプロセッサ51がアクセスできるようにメインメモリ54にコピーされる。このような不揮発性メモリ56としては、フラッシュメモリのような半導体メモリを用いることができる。あるいは、ハードディスクドライブのような磁気記録媒体や、DVD-RAM(Digital Versatile Disk Random Access Memory)のような光学記録媒体などを用いることもできる。
【0043】
システムタイマ58は、一定周期ごとに割り込み信号を発生してマイクロプロセッサ51に提供する。典型的には、ハードウェアの仕様によって、複数の異なる周期でそれぞれ割り込み信号を発生するように構成されるが、OS(Operating System)やBIOS(Basic Input Output System)などによって、任意の周期で割り込み信号を発生するように設定することもできる。
【0044】
表示コントローラ60は、接続部68を介して測定装置100に設けた表示部と接続され、当該表示部を制御している。表示コントローラ60は、メモリ演算回路62、表示演算回路64、およびバッファメモリ66を備えている。
【0045】
バッファメモリ66は、表示コントローラ60を介して表示部へ出力される表示データの送信バッファ、および、表示部(例えば、タッチパネルなど)から入力される入力データの受信バッファとして機能する。
【0046】
メモリ演算回路62は、メインメモリ54からバッファメモリ66への出力データの転送、および、バッファメモリ66からメインメモリ54への入力データの転送を行う。
【0047】
表示演算回路64は、接続される表示部との間で、バッファメモリ66の表示データを送信する処理および入力データを受信してバッファメモリ66に格納する処理を行う。
【0048】
I/Oコントローラ70は、接続部78を介して測定装置100に設けたバルブV1~V6やパルスモータ21fなど制御装置と接続され、バルブV1~V6やパルスモータ21fなどへの制御信号の出力、圧力計31からのデジタル信号の入力などを制御している。I/Oコントローラ70は、メモリ演算回路72、信号演算回路74、およびバッファメモリ76を備えている。
【0049】
バッファメモリ76は、I/Oコントローラ70を介してバルブV1~V6やパルスモータ21fなどへ出力される制御信号の送信バッファ、および、圧力計31から入力されるデジタル信号の受信バッファとして機能する。
【0050】
メモリ演算回路72は、メインメモリ54からバッファメモリ76への制御信号の転送、および、バッファメモリ76からメインメモリ54へのデジタル信号の転送を行なう。
【0051】
信号演算回路74は、I/Oコントローラ70に接続されるバルブV1~V6やパルスモータ21fなど制御装置との間で、バッファメモリ76の制御信号を送信する処理およびデジタル信号を受信してバッファメモリ76に格納する処理を行う。
【0052】
(ガス注入器について)
図3は、被測定ガスを定量的に圧送するためのガス注入器21を示す図である。
図3(A)は、ガス注入器21の平面図であり、
図3(B)は、ガス注入器21の正面図であるガス注入器21において、基台21aと、シリンダ21bと、ピストン21cとを含む。ピストン21cは、シリンダ21bの内部に挿入されている。また、シリンダ21bは基台21aの上に配置される。
【0053】
さらに、ガス注入器21は、ナット21dと、ネジ21eと、パルスモータ21fとを含む。ナット21dと、ネジ21eと、パルスモータ21fとは、基台21aの下部に配置されている。ナット21dは、ピストン21cと連結しており、かつX1方向またはX2方向に移動可能である。ネジ21eは、ナット21dと噛み合っている。また、パルスモータ21fは、送りネジ21eを回転させる。
【0054】
パルスモータ21fは、駆動回路50(
図4参照)により正転駆動、または逆転駆動される。パルスモータ21fの回転によってネジ21eが回転すると、回転方向に応じてナット21dとピストン21cが一体的に、X1方向またはX2方向に移動する。このように、駆動回路50は、ピストン21cを駆動する。駆動回路50は、ピストン21cの駆動、および各バルブV1~V6の開閉に応じて、シリンダ21b内に被測定ガスを第1サンプルセル11aおよび第2サンプルセル11bに対して圧送する処理、シリンダ21b内に被測定ガスを導入する処理などを実行できる。
【0055】
また、後述の
図11に示すように、ピストン21cの初期の位置を「初期位置H」という。また、X2方向において最大量、ピストン21cが駆動されることにより移動する位置を、「最大位置M」という。測定装置100は、被測定ガスのセルへの圧送処理などを実行する場合には、ピストン21cを初期位置Hに戻す。また、X2方向を「圧送方向」ともいう。
【0056】
駆動回路50は、ピストン21cを用いた処理が終了すると、ピストン21cを初期位置Hに戻す。本実施形態では、駆動回路50がピストン21cを初期位置Hに戻す場合において、ピストン21cが、初期位置HよりもX2方向側に位置している場合には、初期位置HよりもX1方向側のバック位置Bに、一旦移動させる(
図11(A)参照)。その後、駆動回路50は、ピストン21cをX2方向側に戻して、ピストン21cの位置を初期位置Hに戻す。
【0057】
例えば、ネジ21eとナット21dなどの機械要素において、
図3に示すAの箇所でバックラッシュが生じている場合がある。仮に、駆動回路50が、「バック位置Bに、一旦移動させる処理」を実行しないと、バックラッシュが生じたままとなる。バックラッシュが生じたままの状態で、駆動回路50が、ピストン21cを、初期位置HよりもX2側に移動させようとすると、生じていたバックラッシュにより、ピストン21cの駆動量が吸収されてしまう。そうすると、測定装置100の設計時に、開発者等が意図していたピストン21cの駆動量とは異なる駆動量となってしまう。
【0058】
そこで、本実施形態では、ピストン21cの位置を初期位置Hに戻す際には、バック位置Bに、一旦移動させる処理(
図11(A)に示す処理)を実行した後に、ピストン21cをX2方向側に戻す処理(
図11(B)に示す処理)を実行する。これにより、測定装置100は、生じていたバックラッシュを解消しつつ、ピストン21cを初期位置Hに戻すことができる。このような処理を「バックラッシュ解消処理」という。なお、測定装置100は、他の工程であっても、ピストン21cを初期位置Hに戻す場合には、バックラッシュ解消処理を共通して実行する。
図11のその他の箇所については後述する。
【0059】
また、初期位置H、バック位置B、および最大位置Mは予め定められた位置である。これらの位置の少なくとも1つは、ユーザなどにより変更可能である。また、ピストン21cの移動速度も予め定められており、この移動速度もユーザなどにより変更可能である。
【0060】
(測定装置の主な処理について)
図4は、駆動回路50の主な機能を示した図である。駆動回路50は、第1測定部502と、濃度調整部504と、加圧制御部506と、圧力補正部508と、第2測定部510と、圧力測定部512との機能を含む。第1測定部502は、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスの事前測定により、第1被測定ガスのCO
2の濃度および第1被測定ガスのCO
2の濃度を測定する。濃度調整部504は、第1測定部502で測定した第1被測定ガスのCO
2の濃度と、第1測定部502で測定した第2被測定ガスのCO
2の濃度とが同じになるように、外気を取り込む。加圧制御部506は、セル11内のガス(被測定ガス、リファレンスガス)に対して、該ガスの圧力を基準圧力とするように加圧する。圧力補正部508は、圧力測定部512で測定した第1被測定ガスと第2被測定ガスとの圧力差に基づいて、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の加圧制御部506での圧力(セル11内のガスの圧力)を補正する。
【0061】
図5は、駆動回路50の主な処理を示したフローチャートである。
図5を大略して説明すると、駆動回路50は、事前測定と、該事前測定の実行後に本測定とを実行する。駆動回路50は、リファレンスガス測定(
図5のステップS1)、第1被測定ガスの事前測定(ステップS2)、リファレンスガス測定(ステップS3)、第2被測定ガスの事前測定(ステップS4)という順序で各測定を事前測定として実行する。
【0062】
駆動回路50は、事前測定の終了後、ステップS6~ステップS28の処理を本測定として実行する。
【0063】
まず、ステップS1において、駆動回路50は、リファレンス測定を実行する。ここで、リファレンスガス測定について説明する。駆動回路50は、ガス流路及びセル11に、清浄なリファレンスガスを流してガス流路及びセル11の洗浄をするとともに、リファレンス光量を測定する。典型的には、駆動回路50は、バルブV1を開放するとともに、他のバルブを閉塞して、ピストン21cをX1方向に移動させる。これにより、駆動回路50は、リファレンスガスをシリンダ21b内に取り込む。この後、駆動回路50は、バルブV4を開放するとともに、その他のバルブを閉塞して、ピストン21cをX2方向に移動させることにより、シリンダ21b内のリファレンスガスをセル11に圧送する。このリファレンスガスが、第1サンプルセル11aと第2サンプルセル11bを洗浄する。
【0064】
なお、本実施形態では、このステップS1のリファレンス測定の処理(ピストン21cの動作など)は、後述のステップS3、ステップS7、およびステップS13それぞれのリファレンス測定と同一である。また、ステップS8、ステップS9、およびステップS10の処理(ピストン21cの動作など)は、ステップS18、ステップS19、およびステップS20の処理と同一である。
【0065】
次に、ステップS2において、第1測定部502は、第1被測定ガスの事前測定により、第1被測定ガスの成分ガスの濃度を測定する。本実施形態では、事前測定では、第1被測定ガスの成分ガスとして、12CO2の濃度を測定する。
【0066】
典型的には、第1測定部502は、バルブV2を開放するとともに、他のバルブを閉塞して、ピストン21cをX1方向に移動させることにより、ガス注入器21で第1被測定ガスをシリンダ21b内に取り込む。この後、第1測定部502は、バルブV4を開放するとともに、その他のバルブを閉塞して、ピストン21cをX2方向に移動させることにより、シリンダ21bの第1被測定ガスをセル11に圧送する。第1測定部502は、第1検出素子25aにより、セル11に収容された第1被測定ガスの光量を測定し、その吸光度により検量線(後述する)を用いてCO2濃度を測定する。第1測定部502は、ステップS2で測定された第1被測定ガスのCO2の濃度を、所定の記憶領域(例えば、メインメモリ54のRAM)に記憶する。
【0067】
なお、駆動回路50は、各リファレンス測定においては、検量線を用いずに、リファレンスガスの光量を測定する。なお、変形例として、駆動回路50は、各リファレンス測定においても、検量線を用いて、リファレンスガスの光量を測定するようにしてもよい。
【0068】
次に、ステップS3において、駆動回路50は、第1被測定ガスを排出すると共に、リファレンス測定を実行する。次に、ステップS4において、第1測定部502は、第2被測定ガスの事前測定により、第2被測定ガスの成分ガスの濃度を測定する。
【0069】
典型的には、第1測定部502は、バルブV3を開放するとともに、他のバルブを閉塞して、ピストン21cをX1方向に移動させることにより、ガス注入器21で第2被測定ガスをシリンダ21b内に取り込む。この後、第1測定部502は、バルブV4を開放するとともに、その他のバルブを閉塞して、ピストン21cをX2方向に移動させることにより、シリンダ21bの第2被測定ガスをセル11に圧送する。第1測定部502は、第1検出素子25aにより、セル11に収容された第2被測定ガスの光量を測定し、その吸光度により検量線を用いてCO2濃度を測定する。駆動回路50は、ステップS4で測定された第2被測定ガスのCO2の濃度を、所定の記憶領域に記憶する。
【0070】
次に、ステップS6において、駆動回路50は、第1被測定ガスの
12CO
2の濃度と、第2被測定ガスの
12CO
2の濃度とを比較する。
図5の例では、駆動回路50は、第2被測定ガスの
12CO
2の濃度の方が、第1被測定ガスの
12CO
2の濃度よりも高いと判断したとする。
【0071】
以下で説明するステップS7~ステップS12は、12CO2の濃度が低いと判断された第1被測定ガスについての処理である。ステップS13~ステップS24は、12CO2の濃度が高いと判断された第2被測定ガスについての処理である。
【0072】
ステップS7において、駆動回路50は、第2被測定ガスを排出させるとともに、リファレンス測定を実行する。駆動回路50は、リファレンスガスが、セル11に収容されている状態で、それぞれの検出素子25a,25bにより、光量測定をする。駆動回路50は、第1検出素子25aで得られた光量12R1、第2検出素子25bで得られた光量13R1とを、所定の記憶領域に記憶させる。
【0073】
次に、ステップS8において、駆動回路50は、第1被測定ガスの圧送処理を実行する。典型的には、駆動回路50は、ピストン21cをX1方向に移動させることにより、呼気バッグBからの第1被測定ガスをシリンダ21b内に取り込む。第1被測定ガスの取込量は、予め定められた量であり、本実施形態では、Vm3であるとする。また、ステップS8においては、圧力測定部512は、シリンダ21b内の第1被測定ガスの圧力P1を測定する。典型的には、圧力測定部512は、圧力計33が測定した圧力値P1を取得する。該測定された第1被測定ガスの圧力は、予め定められた領域に記憶される。
【0074】
その後、駆動回路50は、シリンダ21b内の第1被測定ガスをセル11内に圧送する。駆動回路50は、典型的には、バルブV4と、バルブV6とを開放し、他のバルブを閉塞した状態で、ピストン21cをX2方向に移動させることにより、セル11内の第1被測定ガスを圧送する。
【0075】
次に、ステップS9において、加圧制御部506は、収容したセル11内で第1被測定ガスを予め定められた力で加圧する。ここで、「予め定められた力」とは、典型的には、検量線に対応した圧力である。この力を「基準圧力」ともいう。換言すると、「予め定められた力」とは、典型的には、被測定ガスを収容したセル11内の圧力値が成分ガスの濃度を測定する場合の圧力値となるような力である。基準圧力は、例えば、0.2メガパスカル(Mpa)である。
【0076】
典型的には、加圧制御部506は、バルブV4を開放し、バルブV6を含む他のバルブを閉塞した状態で、ピストン21cをX2方向に移動させることにより、セル11内の第1被測定ガスを加圧する。
【0077】
ところで、測定装置100の測定場所によっては、外気の圧力が異なる場合がある。例えば、測定装置100の測定場所が低地である場合と、測定装置100の測定場所が高地である場合とでは、外気の圧力が異なる。このように、外気の圧力が異なる場合であっても、本実施形態の加圧制御部506は、セル11内の圧力を基準圧力とすることができる基準圧力手段を有する。セル11内の圧力を基準圧力に調整する方法として、外気の圧力に応じてピストン21cの駆動量を変更する方法や、ピストン21cの移動させる位置をそのままで、外気の圧力に応じてバルブV6から排出するガス量を変更する方法などがある。以下、ピストン21cの駆動量を変更する方法について説明する。
【0078】
圧力計33は、シリンダ21b内の圧力を測定し、所定の換算式を用いて、シリンダ21b内の圧力から外気圧を推定する。
図7は、第1対応テーブルの一例を示した図である。
図7の例では、推定された外気圧OP1と、第1駆動距離L1とが対応付けられており、外気圧OP2と、第1駆動距離L2とが対応付けられている。なお、
図7では、3点リーダが示されており、この3点リーダは、他の外気圧と第1駆動距離との対応付けを省略していることを示している。なお、変形例として、
図7の対応テーブルではなく、加圧制御部506は、第1対応式を用いるようにしてもよい。この第1対応式は、外気圧OPが入力されると、第1駆動距離Tが算出される式である。
【0079】
加圧制御部506は、
図7に示す対応テーブルを参照して、推定された外気圧に対応する第1駆動距離を取得する。加圧制御部506は、ピストン21cが初期位置Hの時点でバルブV4とバルブV6とを開放し他のバルブを閉塞して、ピストン21cの移動を開始する。加圧制御部506は、ピストン21cの移動の開始時点から、第1駆動距離が経過したと判断した時にバルブV4の開放を維持したまま、バルブV6を閉塞する。その後も、加圧制御部506は、ピストン21cを最大位置Mまで駆動する。
【0080】
このように、ステップS9では、加圧制御部506は、セル11内の第1被測定ガスが基準圧力値となるように、該セル11内の第1被測定ガスを加圧する。加圧の手法をこれに限らず、他の手法を用いてもよい。この加圧の手法の詳細については、例えば、「特開2002-98629号公報」などに開示されている。
【0081】
次に、ステップS12において、第2測定部510は、第1被測定ガスの光量を測定する。第2測定部510は、ステップS9での加圧状態で、それぞれの検出素子25a,25bにより、光量測定をする。第2測定部510は、第1検出素子25aで得られた光量12B、第2検出素子25bで得られた光量13Bとを、所定の記憶領域に記憶させる。
【0082】
次に、ステップS13において、駆動回路50は、第1被測定ガスを排出させるとともに、リファレンス測定を実行する。駆動回路50は、リファレンスガスが、セル11に収容されている状態で、それぞれの検出素子25a,25bにより、光量測定をする。駆動回路50は、第1検出素子25aで得られた光量12R2、第2検出素子25bで得られた光量13R2とを、所定の記憶領域に記憶させる。
【0083】
次に、ステップS14において、濃度調整部504は、ステップS2で測定した第1被測定ガスのCO2の濃度と、ステップS4で測定した第2被測定ガスのCO2の濃度とが同じになるように、外気を取り込む。ここで、外気は、「測定装置100の外部の空気であって、リファレンスガス供給部30を経由した空気」をいう。つまり、「外気」は、CO2(成分ガス)を含まない気体である。
【0084】
本実施形態では、第2被測定ガスの方が、第1被測定ガスよりもCO2の濃度は高い。したがって、濃度調整部504は、第2被測定ガスについて外気を取込む。一方、濃度調整部504は、第1被測定ガスについては外気を取込まない。
【0085】
例えば、後述の
図6に示すように、ステップS2でのCO
2の濃度が4%であり、ステップS4でのCO
2の濃度が2%である場合には、加圧制御部506は、V/2m
3の第2被測定ガス(CO
2の濃度が高いガス)を呼気バッグSからセル11内に取り込み、その後、V/2m
3の外気を、リファレンスガス供給部30からシリンダ21b内に取り込む。なお、Vは、前述のように、第1被測定ガスの取込量である。
【0086】
次に、ステップS16において、駆動回路50は、全てのバルブを閉めた状態において、ピストン21cをX1方向およびX2方向への往復駆動を実行する。これにより、濃度調整部504は、シリンダ21b内において、V/2m3の第2被測定ガスと、V/2m3の外気とを混合させることができる。また、ステップS16において、駆動回路50は、全てのバルブを閉めた状態におけるこの往復運動により、混合された第2被測定ガスを加圧する。
【0087】
濃度調整部504は、第1測定部502で測定した第1被測定ガスの成分ガスの濃度と第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整する。さらに、本実施形態では、濃度調整部504は、第1測定部502で測定した第1被測定ガスの成分ガスの濃度と第2被測定ガスの成分ガスの濃度とのうち高い方(
図5の例では、第2被測定ガス)の濃度が、低い方(
図5の例では、第1被測定ガス)の濃度となるように、高い方の濃度の被測定ガスを外気で希釈する。この希釈する手法の詳細については、例えば、「特開平10-197444号公報」などに開示されている。
【0088】
仮に、第1被測定ガスのCO2の濃度と、第2被測定ガスのCO2の濃度とが異なると、13CO2と12CO2との濃度比の測定結果に誤差が生じることが実験により判明している。測定装置100は、第1被測定ガスと、第2被測定ガスとのCO2の濃度を同じにすることで、このような誤差を解消できる。
【0089】
次に、ステップS17において、圧力測定部512は、第2被測定ガスの圧力値P2を測定する。典型的には、圧力測定部512は、圧力計33が測定した圧力値P2を取得する。該測定された第2被測定ガスの圧力値P2は、予め定められた領域に記憶される。なお、圧力値P2>圧力値P1となる。
【0090】
また、ステップS17では、圧力補正部508は第2被測定ガスの圧力を補正する。圧力補正部508は、シリンダ21b内の第1被測定ガスの圧力値P1(ステップS8の説明参照)と、シリンダ21b内の第2被測定ガスの圧力値P2との圧力差に基づいて、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の加圧制御部506での圧力(本実施形態では、圧力値が高い第2被測定ガスの加圧制御部506での圧力)を補正する。典型的には、圧力補正部508は、第2被測定ガスの圧力値を低下させるように補正する。典型的には、圧力補正部508は、シリンダ21b内に第2被測定ガスが収容されている状態で、バルブV4とバルブV6とを開放し他のバルブを閉塞した状態で、ピストン21cをX2方向に駆動する。そうすると、圧力補正部508は、シリンダ21b内の第2被測定ガスを、バルブV4、セル11、バルブV6という順路で外部に排出できる。これにより、圧力値P1と圧力値P2とに基づいた値に応じて、圧力補正部508は、第2被測定ガスの圧力値を低下させるように補正する。このステップS17の圧力補正処理については、
図6で後述する。
【0091】
次に、ステップS18において、加圧制御部506は、希釈後の第2被測定ガスの圧送処理を実行する。次に、ステップS19において、加圧制御部506は、収容したセル11内で第2被測定ガスを予め定められた力で加圧する。なお、本実施形態では、ステップS16での希釈処理と、ステップS19での加圧処理とで2回加圧することになる。ステップS18の処理およびステップS19の処理(加圧率と、ピストン21cの駆動量など)は、ステップS8およびステップS9と同一である。また、ステップS8およびステップS9の処理は、初期位置に存在するピストン21cのX2方向への1回の移動で実行される。また、ステップS17の圧力補正処理と、ステップS18、およびステップS19の処理は、初期位置に存在するピストン21cX2方向への1回の移動で実行される。
【0092】
次に、ステップS24において、第2測定部510は、第2被測定ガスの光量を測定する。測定装置100は、ステップS19での加圧状態で、それぞれの検出素子25a,25bにより、光量測定をする。測定装置100は、第1検出素子25aで得られた光量12S、第2検出素子25bで得られた光量13Sとを、所定の記憶領域に記憶させる。
【0093】
次に、ステップS26において、駆動回路50は、第1被測定ガスを排出させるとともに、リファレンス測定を実行する。駆動回路50は、リファレンスガスが、セル11に収容されている状態で、それぞれの検出素子25a,25bにより、光量測定をする。駆動回路50は、第1検出素子25aで得られた光量12R3と、第2検出素子25bで得られた光量13R3を所定の記憶領域に記憶させる。
【0094】
次に、ステップS28において、第2測定部510は、ステップS22での圧力補正部508による補正を経た第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれに対して、2種類の成分ガスの濃度比を測定する。
【0095】
典型的には、第2測定部510は、以下の式(1)、(2)により、第1被測定ガスの12CO2の吸光度12Abs(B)と、13CO2の吸光度13Abs(B)とを求める。
【0096】
12Abs(B)=-log[2・12B/(12R1+12R2)] (1)
13Abs(B)=-log[2・13B/(13R1+13R2)] (2)
なお、12R1と、13R1とは、ステップS7で求められ、12R2と、13R2とは、ステップS13で求められ、12Bと、13Bとは、ステップS12で求められる。
【0097】
また、第2測定部510は、以下の式(3)、(4)により、第2被測定ガスの12CO2の吸光度12Abs(S)と、13CO2の吸光度13Abs(S)とを求める。
【0098】
12Abs(S)=-log[2・12S/(12R2+12R3)] (3)
13Abs(S)=-log[2・13S/(13R2+13R3)] (4)
なお、12R3と、13R3とは、ステップS26で求められ、12Sと、13Sとは、ステップS24で求められる。
【0099】
次に、第2測定部510は、検量線を用いて、第1被測定ガスの12CO2と、13CO2との濃度比、および第2被測定ガスの12CO2と、13CO2との濃度比を求める。測定装置100は、検量線は、上述の基準圧力値において、12CO2濃度の分かっている被測定ガスと、13CO2濃度の分かっている被測定ガスを用いて、作成する。測定装置100は、被測定ガスを基準圧力値に加圧して測定するので、検量線についても、被測定ガスを基準圧力値に加圧して測定する。
【0100】
検量線を求めるには、駆動回路50は、12CO2濃度を0%~6%程度の範囲で変えて、12CO2の吸光度を測定する。駆動回路50は、横軸を12CO2濃度にとり、縦軸を12CO2吸光度とし、プロットし、最小自乗法を用いて12CO2濃度についての曲線を決定する。2次式で近似したものが、比較的誤差の少ない曲線となったので、本実施形態では、2次式で近似した検量線を採用している。
【0101】
同様に、駆動回路50は、13CO2濃度を0%~0.07%程度の範囲で変えて、13CO2の吸光度を測定する。駆動回路50は、横軸を13CO2濃度にとり、縦軸を13CO2吸光度とし、プロットし、最小自乗法を用いて13CO2濃度についての曲線を決定する。2次式で近似したものが、比較的誤差の少ない曲線となったので、本実施形態では、2次式で近似した検量線を採用している。
【0102】
第1被測定ガスにおける12CO2濃度を12Conc(B)とし、第1被測定ガスにおける13CO2濃度13Conc(B)とし、第2被測定ガスにおける12CO2濃度を12Conc(S)とし、第2被測定ガスにおける13CO2濃度13Conc(S)とする。
【0103】
第2測定部510は、第1被測定ガスの濃度比X(B)、および第2被測定ガスの濃度比X(S)をそれぞれ以下の式(5)、(6)で求める。
【0104】
X(B)=13Conc(B)/12Conc(B) (5)
X(S)=13Conc(S)/12Conc(S) (6)
なお、変形例として、第2測定部510は、第1被測定ガスの濃度比X(B)、および第2被測定ガスの濃度比X(S)をそれぞれ以下の式(7)、(8)で求めるようにしてもよい。
【0105】
X(B)=13Conc(B)/[13Conc(B)+12Conc(B)] (7)
X(S)=13Conc(S)/[13Conc(S)+12Conc(S)] (8)
これは12CO2濃度は、13CO2濃度よりはるかに大きいので、いずれもほぼ同じ値となるからである。
【0106】
また、第2測定部510は、第1被測定ガスのCO2濃度と、第2被測定ガス13のCO2濃度と変化分ΔCを、例えば、以下の式(9)により求めるようにしてもよい。
【0107】
ΔC=[第2被測定ガスの濃度比X(S)-第1被測定ガスの濃度比X(B)〕×1000/〔第1被測定ガスの濃度比X(B)〕 (9)
式(9)の単位は、パーミル千分率となる。
【0108】
測定装置100は、表示コントローラ60の制御の元、表示部に、第1被測定ガスの濃度比X(B)、および第2被測定ガスの濃度比X(S)を表示させるようにしてもよい。また、測定装置100は、表示コントローラ60の制御の元、表示部に、変化分ΔCを表示させるようにしてもよい。なお、測定装置100は、求めた13CO2の濃度変化量Δ13CO2が2.5パーミル以上であれば、HPが被検者の胃の中に存在する可能性が高いとして陽性と判定する。
【0109】
なお、測定装置100は、事前測定では、12CO2濃度を測定する一方、13CO2濃度を測定しない。一方、本測定では、12CO2濃度と、13CO2濃度との双方を測定している。したがって、ステップS2およびステップS4で説明した事前測定は、ステップS24で説明した本測定よりも処理量(演算量)が少ない。なお、変形例として、事前測定を、本測定よりも演算量を少なくする手法として、他の手法を採用するようにしてもよい。例えば、事前測定で用いる演算式の量(演算量)を、本測定で用いる演算式の量(演算量)よりも少なくするようにしてもよい。
【0110】
(各工程でのCO
2の推移)
次に、
図6を用いて、各工程でのCO
2の濃度の推移などを説明する。
図6の例においては、CO
2は、
12CO
2と
13CO
2とを混合したもの、または、
12CO
2と
13CO
2とをまとめたものとする。
図6(a)~
図6(f)は各工程でのCO
2の濃度を示し、
図6(A)が第1被測定ガスを示し、
図6(B)が、第2被測定ガスを示す。
【0111】
図6(a)の事前測定工程(ステップS2)において第1被測定ガスのCO
2の濃度は、2%であると測定されたとする。また、
図6(a)の事前測定工程(ステップS4)において第2被測定ガスのCO
2の濃度は、4%であると測定されたとする。
【0112】
次に、
図6(b)の外気取込工程では、ステップS14において、加圧制御部506は、第2被測定ガスについて外気を取り込む。次に、
図6(c)の希釈工程(ステップS16)では、濃度調整部504は、シリンダ21b内において、V/2m
3の第2被測定ガスと、V/2m
3の外気とを混合させる。これにより、加圧制御部506は、第2被測定ガスのCO
2濃度を、第1被測定ガスと同じ2%とすることができる。また、
図6(c)の加圧工程(ステップS19)においても、第2被測定ガスのCO
2濃度は、2%が維持される。
【0113】
次に、
図6(d)の圧力測定工程(ステップS8の説明参照)では、ステップS10での圧力測定部512の第1被測定ガスの圧力値P1を測定する。なお、
図6(d)の例での圧力値Aは、この圧力値P1の第1被測定ガスが、セル11に圧送されたときの圧力値である。第1被測定ガスの圧力値は、=0.2メガパスカル)である。これは、ステップS8において、加圧制御部506が、第1被測定ガスの圧力値が基準圧力となるように加圧処理を行ったことに基づく。
【0114】
ここで、加圧制御部506は、ステップS9およびステップS19でも説明したように、セル11内の第1被測定ガスおよびセル11内の第2被測定ガスのいずれに対しても、同一の加圧率での加圧処理を実行する。したがって、セル11内の第1被測定ガスの圧力値と、セル11内の第2被測定ガスの圧力値とは同一になる筈である。
【0115】
しかしながら、第2被測定ガスの圧力値は、第1被測定ガスの圧力値よりも高くなってしまう。
図6(d)の例に示すように、ステップS20での圧力測定部512の第2被測定ガスの圧力値Bは、0.24メガパスカルになるとする。
【0116】
以下に、第2被測定ガスの圧力値が、第1被測定ガスの圧力値よりも高くなる理由を説明する。第1被測定ガス、および第2被測定ガスは、被検者の呼気であり、一般的に呼気の湿度は100%または約100%である。また、被測定ガスのうち外気が混在された方のガス(
図6の例では、第2被測定ガス)は湿度が低下する。気体の湿度が低下すると該気体の圧力値は高くなることが実験的に判明している。つまり、外気が混在されている第2被測定ガスの方が、第1被測定ガスよりも圧力値は大きくなる。以上により、第2被測定ガスの圧力値が、第1被測定ガスの圧力値よりも高くなる。
【0117】
なお、
図6(d)の例では、圧力値P1および圧力値P2は記載されていない。
次に、
図6(e)の圧力補正工程(ステップS17)において、圧力補正部508は、圧力測定部512で測定した第1被測定ガスと第2被測定ガスとの圧力差に基づいて、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の加圧制御部506での圧力を補正する。
【0118】
典型的には、圧力補正部508は、まず、シリンダ21b内での第1被測定ガスの圧力値P1と、シリンダ21b内での第2被測定ガスの圧力値P2との圧力差ΔPを算出する。
図6の例では、圧力差ΔP=P1-P2となる。
【0119】
また、測定装置100は、バルブV6を開放した状態での(圧力補正処理での)ピストンの第2駆動距離と、圧力差ΔPとが対応付けられた第2対応テーブルとを記憶領域に記憶させている。
図8は、第2対応テーブルの一例を示した図である。
図8の例では、圧力差ΔP1と、第2駆動距離M1とが対応付けられており、圧力差ΔP2と、第2駆動距離M2とが対応付けられている。なお、
図8では、3点リーダが示されており、この3点リーダは、他の圧力差ΔPと第2駆動距離との対応付けを省略していることを示している。なお、変形例として、
図8の対応テーブルではなく、圧力補正部508は、第2対応式を用いるようにしてもよい。この第2対応式は、圧力差ΔPが入力されると、第2駆動距離Tが算出される式である。
【0120】
圧力補正部508は、第2対応テーブルまたは第2対応式を用いて、算出された圧力差ΔPに基づいて、第2駆動距離T(バルブV4とバルブV6を開放した状態でピストン21cを駆動させる距離)を取得する。圧力補正部508は、シリンダ21b内に第2被測定ガスが収容されている状態において、バルブV4およびバルブV6を開放した状態で、初期位置HからX2方向にピストン21cを駆動する。したがって、バルブV6が開放されている状態では、第2被測定ガスは、セル11内に圧送されるが、そのまま、バルブV6を経由して外部に排出される。第2駆動距離T、バルブV6が開放されることにより、シリンダ21b内の第2被測定ガスの圧力は、第1被測定ガスの圧力と同一となる。その結果、ステップS9の加圧処理、およびステップS19の加圧処理において、セル11内の第1被測定ガス、およびセル11内の第2被測定ガスの圧力値を基準圧力値とすることができる。なお、第2被測定ガスへの圧力補正処理において、シリンダ21b内の第2被測定ガスの圧力と、シリンダ21b内の第1被測定ガスの圧力とは同一にならなくてもよく、ステップS9の加圧処理、およびステップS19の加圧処理の後に、セル11内の第1被測定ガス、およびセル11内の第2被測定ガスの圧力値を基準圧力値とできれば、他の構成であってもよい。
【0121】
このように、第2対応テーブルまたは第2対応式は、圧力値の高い方の被測定ガスの圧力が、圧力が低い方の被測定ガスの圧力に一致するような第2駆動距離が求められるように予め設計されている。その結果、加圧工程により、セル11内の第2被測定ガスの圧力値と、セル11内の第1被測定ガスの圧力値とはいずれも基準圧力値となり、同一となる。
【0122】
次に、
図6(f)の光量測定工程(ステップS24)において、第2測定部510は、第2被測定ガスの光量測定を実行する。つまり、光量測定工程では、セル11内の第2被測定ガスの圧力値と、セル11内の第1被測定ガスの圧力値とが同じ状態で、光量測定を実行できる。したがって、結果的に、測定装置100の第2測定部510は、圧力補正部508による補正を経た第2被測定ガスに対して、2種類の成分ガスの濃度比を測定することができる。
【0123】
(シリンダおよびバルブの駆動について)
図9は、第2被測定ガスについての、各実施形態の圧力補正処理、圧送処理、および加圧処理のピストン21cの駆動、および各バルブの開閉状態を示した図である。
図9(A)は、第1実施形態の圧力補正処理、圧送処理、および加圧処理のピストン21cの駆動、および各バルブの開閉状態を示した図である。
図9(B)、
図12(A)、および
図12(B)については、後述する他の実施形態(第2実施形態~第4実施形態)で説明する。また、
図9、
図12において、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスについて、変形例として、圧送処理と加圧処理との順序を逆にしてもよい。
【0124】
第1実施形態の圧力補正処理において、バルブV4とバルブV6を開放した状態で、
図8に示した第2駆動距離M(
図9(A)の圧力差ΔPに応じた距離)に亘って、ピストン21cを初期位置HからX2方向に向かって駆動させる。そうすると、バルブV4と、セル11と、バルブV6とを経由して、外部に排出される。この排出により、測定装置100は、第1被測定ガスと第2被測定ガスとの圧力値を同一にすることができる。この第2駆動距離Mは、第2対応テーブル(
図8参照)により求められた距離である。
【0125】
次に、第1実施形態の圧送処理においては、バルブV4とバルブV6とを開放した状態で、駆動回路50は、圧力補正処理から続けてピストン21cをX2方向に向かって駆動させる。また、このときの駆動量は、
図7で説明した駆動量Lとなる。
【0126】
次に、加圧処理において、加圧制御部506は、バルブV6を閉塞して、バルブV4を開放した状態で、圧力補正処理から続けてピストン21cをX2方向に向かって駆動させる。
【0127】
図11は、圧力補正処理、圧送処理、および加圧処理を説明するための図である。また、本実施形態の駆動回路50は、Vm
3の第1被測定ガスおよびVm
3の第2被測定ガスをシリンダ21b内に収容する。なお、αは予め定められた量であるとする。
図11(A)に示すように、圧力補正部508は、第2被測定ガスの希釈処理(ステップS16)の後、バックラッシュ解消処理として、バルブV5を閉塞した状態で、ピストン21cを初期位置HよりもX1方向側であるバック位置Bに移動させる。次に、
図11(B)に示すように、圧力補正部508は、バルブV5を開放すると共に、バックラッシュ解消処理として、バック位置Bから、ピストン21cをX2方向に移動させて初期位置Hに位置させる。
【0128】
これにより、
図11(B)の矢印に示すように、バックラッシュ解消処理と共に、シリンダ21b内の第2被測定ガスを、αm
3、開放されたバルブV6を経由して外部に排出する。その後、第2被測定ガスについては、
図11(C)に示すように、バックラッシュ解消処理が終了後(バックラッシュが解消した後)も、継続して、シリンダ21bをX2方向に駆動することにより、圧送処理および加圧処理を実行できる。
【0129】
本実施形態では、
図8で定められた駆動距離Mが、
図11(B)~
図11(C)までの距離となる。その後、
図11(D)に示すように、加圧制御部506は、バルブV5を閉塞した状態で圧送処理、および加圧処理を実行する。
【0130】
なお、変形例として、バックラッシュを考慮しない測定装置、つまり、
図11(A)および
図11(B)の処理を実行しないようにしてもよい。
【0131】
(本実施形態の測定装置の奏する効果)
次に、本実施形態の測定装置100が奏する効果について説明する。
【0132】
(1) 本実施形態では、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスの成分ガスの測定精度を向上させるために、第2被測定ガスの希釈処理(ステップS16)と、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスの加圧処理(ステップS9、ステップS19)とを実行する。ここで、第2被測定ガスについて、希釈処理と、加圧処理とを実行すると、第2被測定ガスの圧力値は、第1被測定ガスの圧力値よりも大きくなってしまう。つまり、第2被測定ガスの圧力値は、基準圧力値よりも、大きくなってしまう。したがって、第2被測定ガスについての検量線を用いた処理において、第2被測定ガスの圧力値は、検量線に対応付けられた基準圧力値とは異なる圧力値となってしまう。その結果、該検量線を用いた処理においては、第2被測定ガスの12CO2と、13CO2との濃度比の測定精度が低下してしまう。
【0133】
また、第2被測定ガスの圧力値に応じて、複数の検量線を用いる構成も考えられる。しかしながら、このような構成を採用した場合には、複数の検量線を予め作成する処理が増大するとともに、該複数の検量線の記憶容量も増大してしまう。
【0134】
そこで、圧力補正部508は、ステップS17および
図6(e)に示したように、シリンダ21b内の第1被測定ガスとシリンダ21b内の第2被測定ガスとのうち少なくとも一方の被測定ガスの圧力値を補正する。好ましくは、圧力補正部508は、シリンダ21b内の第1被測定ガスの圧力値とシリンダ21b内の第2被測定ガスの圧力値とが同一となるように、第1被測定ガスと第2被測定ガスとのうち少なくとも一方の被測定ガスの圧力値を補正する。その結果、圧力補正部508は、セル11内の第1被測定ガスの圧力値とセル11の第2被測定ガスの圧力値とを同一の基準圧力値とすることができる。したがって、測定装置100は、成分ガスの濃度比の測定の精度を向上させる。
【0135】
(2) また、圧力補正部508は、ステップS22および
図6(e)で示したように、シリンダ21b内での第1被測定ガスの圧力値P1と第2被測定ガスの圧力値P2とのうち高い方の圧力値(本実施形態では、第2被測定ガスの圧力値である圧力値P2)が、低い方の圧力値(本実施形態では、第1被測定ガスの圧力値である圧力値P1)となるように加圧制御部506での圧力値(シリンダ21b内の圧力値)を補正する。
【0136】
例えば、第1被測定ガスの圧力値を増加させて、第2被測定ガスの圧力値に合わせる手法も考えられる。しかしながら、この手法を採用した測定装置は、基準圧力値に対応する検量線の他に、該基準圧力値より大きい圧力値に対応する検量線も必要となり、検量線に係るデータ容量が増大してしまう。
【0137】
そこで、本実施形態では、圧力補正部508は、第2被測定ガスの圧力値を減少させて、第1被測定ガスの圧力値(基準圧力値)となるように、第2被測定ガスの圧力値を補正する。したがって、測定装置100は、基準圧力値に対応する検量線を保持しておけばよく、基準圧力値とは異なる圧力値に対応する検量線を保持する必要はない。よって、測定装置100は、検量線に係るデータ容量の増大化を防止できる。
【0138】
(3) また、濃度調整部504は、第1測定部502で測定した第1被測定ガスの成分ガス(CO
2)の濃度と、第1測定部502で測定した第2被測定ガスの成分ガス(CO
2)の濃度とのうち高い方の濃度が、低い方の濃度となるように、高い方の濃度の被測定ガス(
図6の例では、第2被測定ガス)を外気で希釈する(ステップS16)。
【0139】
例えば、第1被測定ガスのCO2濃度を増加させて、第2被測定ガスのCO2濃度に合わせる手法も考えられる。しかしながら、この手法を採用した測定装置は、純粋なCO2(CO2のみで構成される気体)を第1被測定ガスに混合させる必要があり、純粋なCO2を製造する装置が必要となり、測定装置100のコストが増大してしまう。
【0140】
そこで、本実施形態では、濃度調整部504は、外気を用いて、第2被測定ガスのCO2濃度を低下させて、第1被測定ガスのCO2濃度とする。したがって、安価な構成により、第1被測定ガスと第2被測定ガスとのCO2濃度を合わせることができる。
【0141】
(4) また、圧力補正部508は、外気で希釈された第2被測定ガスの圧力値を補正する。前述のように、外気で希釈された第2被測定ガスは、第1被測定ガスよりも圧力値が大きくなることが判明している。したがって、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうちいずれの被測定ガスの圧力値が大きいのかといった判断処理を実行することなく、第1被測定ガスの圧力値と、第2被測定ガスの圧力値とを同じにすることができる。
【0142】
(5) また、セル11内の被測定ガスの圧力値を高める加圧部は、シリンダ21bとピストン21cなどにより構成される。したがって、測定装置100は、安価な構成で、セル11内の被測定ガスの圧力値を高めることができる。さらに、駆動回路50は、被測定ガスを収容したセル11内の圧力値が成分ガスの濃度を測定する場合の圧力値(つまり、基準圧力値)となるように、予め定められた移動量(駆動量)でピストン21cを駆動する。該駆動は、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスで共通して実行される(ステップS8とステップS18参照)。したがって、該駆動が、第1被測定ガスと第2被測定ガスとで異なるように実行される測定装置と比較して、ピストン21cの駆動処理に関するプログラム容量を低減できる。
【0143】
(6) また、圧力補正部508は、ピストン21cの駆動により、加圧制御部506での圧力(例えば、シリンダ21b内の圧力)を補正する。ピストン21cは、被測定ガスや外気の取込など種々の処理を行うものである。測定装置100は、種々の処理を行うピストン21を用いて、第2被測定ガスの圧力を補正する。したがって、「被測定ガスや外気の取込など種々の処理と、第2被測定ガスの圧力の補正処理とで異なる構成部を用いる測定装置」と比較して、部品点数を削減できる。
【0144】
(7) また、圧力補正部508は、
図11に示すように、外気で希釈された第2被測定ガス、つまり、セル11内での圧力値が高くなる第2被測定ガスをシリンダ21bからセル11内に圧送する圧送量を、圧力差ΔPに基づいて低減する。換言すれば、圧力補正部508は、第2被測定ガスをセル11内に圧送する前に、該第2被測定ガスの一部を排出する(第2被測定ガスの圧力値を低下する)。
【0145】
例えば、第1被測定ガスの圧送量を増加させて、セル11に収容された場合の第1被測定ガスの圧力値と、セル11に収容された場合の第2被測定ガスの圧力値とを同一にする構成が考えられる。このような構成である場合には、第1被測定ガスを多く使用することになる。そうすると、呼気バッグの第1被測定ガスが足りない等の事象が発生する場合がある。そこで、本実施形態の圧力補正部508は、第2被測定ガスをセル11内に圧送する前に、該第2被測定ガスの一部を排出する。これにより、本実施形態の測定装置100は、被測定ガスが足りない等の事象が発生することなく、セル11に収容された場合の第1被測定ガスの圧力値と、セル11に収容された場合の第2被測定ガスの圧力値とを適切に、同一にできる。
【0146】
(8) また、本実施形態の加圧制御部506は、セル11内に圧送する予め定められた圧送量(本実施形態では、例えば、Vm
3)の被測定ガスをシリンダ21bに収容する収容処理を実行する。ここで、収容処理は、
図11(A)および
図11(B)で示した処理である。また、予め定められた圧送量は、ピストン21cが初期位置Hに位置しているときに、シリンダ21bに収容されている被測定ガスの量(本実施形態では、Vm
3)である。本実施形態の測定装置100は、収容処理において、圧送量を低減する。したがって、バックラッシュ解消処理後の一連の処理(
図11(B)、
図11(C)参照)において、シリンダ21b内の第2被測定ガスを外部に排出できる。つまり、バックラッシュを解消する処理の流れで、第2被測定ガスの圧力値(将来的にセル11に収容される第2被測定ガスの圧力値)を調整(低下)できる。したがって、バックラッシュを解消する処理と、第2被測定ガスの圧力値を調整する処理とが一連の処理となっていない測定装置と比較して、処理工程の数を削減できる。
【0147】
(9) また、本実施形態の測定装置100は、圧力補正処理と、圧送処理とで、開放するバルブ(本実施形態では、バルブV6)を共通化できる。したがって、圧力補正処理と、圧送処理とで、開放するバルブが異なる測定装置と比較して、バルブの制御処理の負担を軽減できるとともに、バルブの摩耗を軽減できる。
【0148】
(10) また、本測定において、濃度比が測定される2種類の成分ガスは、12CO2および13CO2である。したがって、測定装置100は、ヘリコバクタピロリー(HP)が被検者の胃の中に存在するか否かを診断することができる。
【0149】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の測定装置100を説明する。第1実施形態の測定装置100は、シリンダ11内の第2被測定ガスをバルブV6を経由して排出させるとして説明した。第2実施形態の測定装置100は、シリンダ11内の第2被測定ガスをバルブV5を経由して排出させる。
図9(B)は、第2実施形態の圧力補正処理、圧送処理、および加圧処理のピストン21cの駆動、および各バルブの開閉状態を示した図である。
【0150】
第2実施形態は、
図9(B)に示すように、第2被測定ガスの圧力補正処理において、圧力補正部508は、バルブV5を開放し、バルブV1~V4、およびバルブV6を閉塞した状態で、シリンダ21bをX2方向に駆動する。このような構成によれば、圧力補正処理により、バルブV5から排出できる。
【0151】
この第2実施形態の測定装置100であっても、第1実施形態の測定装置100と同様の効果を奏する。
【0152】
[第3実施形態]
第1実施形態および第2実施形態の測定装置100は、シリンダ21b内の第1被測定ガスの圧力値と、シリンダ21b内の第2被測定ガスの圧力値との圧力差ΔPに基づいて、第2被測定ガスの圧力を補正するとして説明した。しかしながら、第3実施形態の測定装置100は、圧力差ΔPではなく、第1被測定ガスの濃度値と、第2被測定ガスの濃度差ΔCに基づいて、第2被測定ガスの圧力値を補正する。ここで、濃度差ΔCは、ステップS2において事前測定で測定した第1被測定ガスのCO2濃度と、ステップS4において事前測定で測定した第2被測定ガスのCO2濃度との差分である。
【0153】
第2実施形態の圧力補正部508は、ステップS2において事前測定で測定した第1被測定ガスのCO
2濃度と、ステップS4において事前測定で測定した第2被測定ガスのCO
2濃度との差分を算出する。
図6の例では、第1被測定ガスのCO
2濃度は、2%であり、第1被測定ガスのCO
2濃度は、4%であることから、ΔCとして、2%が算出される。
【0154】
第2実施形態の測定装置100は、バルブV6を開放した状態での(圧力補正処理での)ピストンの第3駆動距離と、濃度差ΔCとが対応付けられた第3対応テーブルとを記憶領域に記憶させている。
図10は、第3対応テーブルの一例を示した図である。第3対応テーブルは、
図8の圧力差ΔPが、濃度差ΔCに代替されたものである。
図10の例では、濃度差ΔC1と、第3駆動距離N1とが対応付けられており、濃度差ΔC2と、第3駆動距離N2とが対応付けられている。なお、
図8では、3点リーダが示されており、この3点リーダは、他の濃度差ΔCと第3駆動距離との対応付けを省略していることを示している。なお、変形例として、
図10の対応テーブルではなく、圧力補正部508は、第3対応式を用いるようにしてもよい。この第3対応式は、濃度差ΔCが入力されると、第3駆動距離Nが算出される式である。
【0155】
圧力補正部508は、第3対応テーブルまたは第3対応式を用いて、算出された濃度差ΔCに基づいて、第3駆動距離N(バルブV4とバルブV6を開放した状態でシリンダ21bを駆動させる距離)を取得する。圧力補正部508は、シリンダ21b内に第2被測定ガスが収容されている状態において、バルブV4およびバルブ6を開放した状態で、初期位置HからX2方向にピストン21cを駆動する。したがって、バルブV6が開放されている状態では、第2被測定ガスは、セル11内に圧送されるが、そのまま、バルブV6を経由して外部に排出される。第2駆動距離T、バルブV6が開放されることにより、セル11内の第2被測定ガスの圧力は、第1被測定ガスの圧力(=基準圧力値)と同一となる。
【0156】
図12(A)は、第3実施形態の圧力補正処理、圧送処理、および加圧処理のピストン21cの駆動、および各バルブの開閉状態を示した図である。
【0157】
第3実施形態は、
図12(A)に示すように、第2被測定ガスの圧力補正処理において、圧力補正部508は、濃度差ΔCに応じた第3駆動量Nを取得する。第3実施形態の圧力補正処理において、バルブV4とバルブV6を開放した状態で、
図12(A)に示した第3駆動距離Nに亘って、ピストン21cを初期位置HからX2方向に向かって駆動させる。そうすると、バルブV4と、セル11と、バルブV6とを経由して、外部に排出される。この排出により、測定装置100は、第1被測定ガスと第2被測定ガスとの圧力値を同一にすることができる。
【0158】
本実施形態の圧力補正部508は、濃度差ΔCに基づいて第3駆動量Nを取得する。したがって、第1実施形態および第2実施形態のように、シリンダ21b内の圧力を測定する圧力計33を備える必要がない。よって、第1実施形態の測定装置100と比較して部品点数を削減できる。
【0159】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の測定装置100を説明する。第3実施形態の測定装置100は、シリンダ11内の第2被測定ガスをバルブV6を経由して排出させるとして説明した。第4実施形態の測定装置100は、シリンダ11内の第2被測定ガスをバルブV5を経由して排出させる。
図12(B)は、第2実施形態の圧力補正処理、圧送処理、および加圧処理のピストン21cの駆動、および各バルブの開閉状態を示した図である。
【0160】
第2実施形態は、
図12(B)に示すように、第2被測定ガスの圧力補正処理において、圧力補正部508は、バルブV5を開放し、バルブV1~V4、およびバルブV6を閉塞した状態で、シリンダ21bをX2方向に駆動する。このような構成によれば、圧力補正処理により、バルブV5から排出できる。
【0161】
この第4実施形態の測定装置100であっても、第3実施形態の測定装置100と同様の効果を奏する。
【0162】
(変形例)
(1) 本実施形態においては、事前測定は、本測定よりも、測定での演算量が少ないとして説明した。しかしながら、事前測定と、本測定とで測定処理を共通化させるようにしてもよい。このような構成であれば、事前測定と、本測定とで測定プログラムを共通化できることから、プログラムの容量を削減できる。
【0163】
(2) 本実施形態の測定装置は、第1被測定ガスと第2被測定ガスとのうち、成分ガスが濃い方の被測定ガスの濃度を低下させる(希釈させる)ことにより、第1被測定ガスと第2被測定ガスとで成分ガスの濃度を同じにするとして説明した。しかしながら、第1被測定ガスの成分ガスの濃度と第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるのであれば、如何なる処理を実行するようにしてもよい。例えば、測定装置は、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整する。典型的には、測定装置は、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち成分ガスの濃度が低い方の被測定ガス(本実施形態では、第1被測定ガス)に対して、成分ガスを加味することにより、第1被測定ガスの成分ガスの濃度と第2被測定ガスの成分ガスの濃度とを同じにするようにしてもよい。また、測定装置は、第1被測定ガスに対して成分ガスを加味し、かつ第2被測定ガスを希釈して、第1被測定ガスの成分ガスの濃度と第2被測定ガスの成分ガスの濃度とを同じにするようにしてもよい。
【0164】
(3) 本実施形態の測定装置は、第1被測定ガスと第2被測定ガスとのうち、セル11内の圧力値が高い方の被測定ガスの圧力値を低下させることにより、第1被測定ガスと第2被測定ガスとで圧力値を同じにするとして説明した。しかしながら、第1被測定ガスの成分ガスの圧力値と第2被測定ガスの圧力値とが同じになるのであれば、如何なる処理を実行するようにしてもよい。例えば、測定装置は、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち少なくとも一方の圧力値を調整する。典型的には、測定装置は、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち圧力値が低い方の被測定ガス(本実施形態では、第1被測定ガス)を加圧して圧力値を増加させることにより第1被測定ガスの圧力値と第2被測定ガスの圧力値とを同じにするようにしてもよい。また、測定装置は、第1被測定ガスの圧力値を増加し、かつ第2被測定ガスの圧力値を低下させることにより、第1被測定ガスと第2被測定ガスと圧力値を同じにするようにしてもよい。
【0165】
(4) 本実施形態では、加圧部は、シリンダ21bとピストン21cなどにより構成されるとして説明した。しかしながら、加圧部はセル内の被測定ガスを加圧できれば、如何なる構成であってもよい。
【0166】
(5) 本実施形態では、2種類の成分ガスは、12CO2および13CO2であるとして説明した。しかしながら、2種類の成分ガスは、好ましくは互いに同位体の関係であれば、他の成分ガスであってもよい。
【0167】
(6) また、第1実施形態では、駆動回路50は、第1被測定ガスと第2被測定ガスの双方の圧力値を測定するとして説明した。しかしながら、測定装置100は、第1被測定ガスおよび第2被測定ガスのうち成分ガスの濃度が高い方の被測定ガス(本実施形態では、第2被測定ガス)の圧力値を測定し、成分ガスの濃度が薄い方の被測定ガス(本実施形態では、第1被測定ガス)の圧力値を測定しないようにしてもよい。本実施形態の測定装置は、外気圧の大小にかかわらず、
図7などに示したように、セル11内の圧力値を一定にする圧力維持部(圧力維持機能)を有する。圧力維持部は、セル11内の被測定ガスの圧力値を基準圧力値にする。したがって、成分ガスの薄い方の被測定ガスの圧力値は測定せずとも、基準圧力値となる。つまり、駆動回路50は、少なくとも成分ガスの濃度が高い方の被測定ガスの圧力値を測定するようにしても、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0168】
(7) また、互いに同位体の関係である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、前記セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、前記セル内の被測定ガスの前記2種類の成分ガスの濃度を測定する測定装置に以下の工程を実行させるプログラムを実施するようにしてもよい。
【0169】
(7-1) このプログラムは、互いに同位体の関係である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、前記セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、前記セル内の被測定ガスの前記2種類の成分ガスの濃度を測定する測定装置に実行させる測定装置(コンピュータ)に、被測定ガスとして収集した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの成分ガスの濃度を測定する第1測定機能と、前記第1測定機能で測定した前記第1被測定ガスの成分ガスの濃度と前記第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整する濃度調整機能と、前記濃度調整機能による調整を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスに対して、収容した前記セル内で予め定められた力で加圧する加圧機能と、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも成分ガスの濃度が高い方の被測定ガスの圧力値を測定する圧力測定機能と、前記圧力測定機能で測定した前記第1被測定ガスと前記第2被測定ガスとの圧力差に基づいて、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の前記加圧機能での圧力を補正する圧力補正機能と、前記圧力補正機能による補正を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスそれぞれに対して、前記2種類の成分ガスの濃度比を測定する第2測定機能とを実行させるためのプログラムである。
【0170】
(7-2) また、このプログラムは、互いに同位体の関係である2種類の成分ガスを含む被測定ガスを収容するセルを含み、前記セル内の被測定ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、該吸光度に基づいて、前記セル内の被測定ガスの前記2種類の成分ガスの濃度を測定する測定装置に、被測定ガスとして収集した第1被測定ガスおよび第2被測定ガスそれぞれの成分ガスの濃度を測定する第1測定機能と、前記第1測定機能で測定した前記第1被測定ガスの成分ガスの濃度と前記第2被測定ガスの成分ガスの濃度とが同じになるように、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の成分ガスの濃度を調整する濃度調整機能と、前記濃度調整機能による調整を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスに対して、収容した前記セル内で予め定められた力で加圧する加圧機能と、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも成分ガスの濃度が高い方の被測定ガスの圧力値を測定する圧力測定機能と、前記圧力測定機能で測定した前記第1被測定ガスと前記第2被測定ガスとの圧力差に基づいて、前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスのうち少なくとも一方の前記加圧機能での圧力を補正する圧力補正機能と、前記圧力補正機能による補正を経た前記第1被測定ガスおよび前記第2被測定ガスそれぞれに対して、前記2種類の成分ガスの濃度比を測定する第2測定機能とを実行させるためのプログラムである。
【0171】
(8) 本実施形態の圧力補正部は、第2被測定ガスの圧力値をシリンダ21b内で補正するとして説明した。しかしながら、第2被測定ガスの圧力値を補正する箇所は、他の箇所であってもよく、例えば、セル11内としてもよい。また、前述した構成に限られず、測定装置100は、該測定装置100の測定場所および成分ガスの濃度などに関わらず、セル11に注入されたときの被測定ガスの圧力値が基準圧力値とする補正を行うものであれば、如何なる構成を有していてもよい。
【0172】
例えば、圧力補正部は、圧力が高くなる第2被測定ガスについて、加圧制御部による加圧させる圧力(加圧させる度合)を低減させることにより、セル11内の第1被測定ガスと第2被測定ガスとの圧力値を同じとなるようにしてもよい。
【0173】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0174】
100 測定装置、502 第1測定部、504 濃度調整部、506 加圧制御部、508 圧力補正部、510 第2測定部、512 圧力測定部。