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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】バインダーによる積層造形方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/02 20060101AFI20220721BHJP
   B22C 1/00 20060101ALI20220721BHJP
   B22C 1/10 20060101ALI20220721BHJP
   B22C 1/22 20060101ALI20220721BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20220721BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20220721BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20220721BHJP
   B29C 64/343 20170101ALI20220721BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220721BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220721BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20220721BHJP
【FI】
B22C9/02 101Z
B22C1/00 B
B22C1/10 D
B22C1/22 B
B29C64/165
B29C64/209
B29C64/314
B29C64/343
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021067707
(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公開番号】P2022101429
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】109146023
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521157580
【氏名又は名称】金隆化學工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】黄謙賜
(72)【発明者】
【氏名】頼定機
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-262043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00,1/10,1/22,9/00,9/02
B29C 64/00,64/165,64/209,64/314,64/343
B33Y 10/00,30/00,70/00,70/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D樹脂砂型印刷技術によって三次元オブジェクトを製造するための、バインダーによる積層造形方法であって、
フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、及びポリオキシメチレン60~90重量部をバインダーの混合物となるように撹拌し、120~150℃まで昇温させ、1~2時間合成反応させた後、85℃以下で脱水を行い、その後、45℃以下まで降温させ、カップリング剤5~10重量部を加えて、バインダーを得る工程と、
p-トルエンスルホン酸と純水を70~80重量部:20~30重量部の割合でp-トルエンスルホン酸と純水の混合物となるように混合し、リン酸と、p-トルエンスルホン酸と純水の混合物を90~100重量部:3~7重量部の割合で混合し、前記リン酸及びp-トルエンスルホン酸と純水の混合物を60~80℃まで昇温させてから1~3時間撹拌し、硬化剤を得る工程と、
前記硬化剤と砂材とを前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合が0.1~1.0%となるように混合し、100~110℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させ、その後、ノズルから前記砂材に対する質量割合が0.5~2.5%である前記バインダーを吐出する工程と、
ノズルから吐出された前記バインダーと前記硬化剤で均一に被覆された前記砂材の表面とが反応することで砂型を硬化させる工程と、を含むことを特徴とする、
積層造形方法。
【請求項2】
前記ポリオキシメチレンは、70~80重量部であることを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項3】
前記砂材に対する前記硬化剤の割合は0.3~0.7%であり、前記砂材に対する前記バインダーの割合は0.8~1.5%であることを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項4】
前記酸触媒は、p-トルエンスルホン酸、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸及びホウ酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項5】
前記酸触媒は、p-トルエンスルホン酸であることを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項6】
前記フェノール類化合物は、フェノール、ビスフェノールA、キシレノール、メタクレゾール、レソルシノール及びフロログルシノールからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項7】
前記カップリング剤は、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2,3)エポキシ(プロポキシ)プロピルトリメトキシシラン及びN-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の積層造形方法。
【請求項8】
3D樹脂砂型印刷技術によって三次元オブジェクトを製造するための、積層造形用バインダーの製造方法であって、
フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、及びポリオキシメチレン60~90重量部をバインダーの混合物となるように撹拌し、120~150℃まで昇温させ、1~2時間合成反応させた後、85℃以下で脱水を行い、45℃以下まで降温させ、カップリング剤5~10重量部を加えて、バインダーを得る工程、を含むことを特徴とする、
積層造形用バインダーの製造方法。
【請求項9】
前記ポリオキシメチレンは、70~80重量部であることを特徴とする請求項8に記載の積層造形用バインダーの製造方法。
【請求項10】
前記酸触媒は、p-トルエンスルホン酸であることを特徴とする請求項8に記載の積層造形用バインダーの製造方法。
【請求項11】
3D樹脂砂型印刷技術によって三次元オブジェクトを製造するための、アルカリ性フェノール樹脂バインダーによる積層造形方法であって、
フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、及びポリオキシメチレン60~90重量部をバインダーの混合物となるように撹拌し、120~150℃まで昇温させ、1~2時間合成反応させた後、85℃以下で脱水を行い、45℃以下まで降温させ、カップリング剤5~10重量部、アルカリ性フェノール樹脂5~20重量部を加えて、バインダーを得る工程と、
p-トルエンスルホン酸と純水を70~80重量部:20~30重量部の割合でp-トルエンスルホン酸と純水の混合物となるように混合し、リン酸と、p-トルエンスルホン酸と純水の混合物を90~100重量部:3~7重量部の割合で混合し、前記リン酸及びp-トルエンスルホン酸と純水の混合物を60~80℃まで昇温させてから1~3時間撹拌し、硬化剤を得る工程と、
前記硬化剤と砂材とを前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合が0.1~1.0%となるように混合し、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させ、その後、ノズルから前記砂材に対する質量割合が0.5~2.5%である前記バインダーを吐出し、100~110℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させる工程と、
ノズルから吐出された前記バインダーと前記硬化剤で均一に被覆された前記砂材の表面とが反応することで砂型を硬化させる工程と、を含むことを特徴とする、
アルカリ性フェノール樹脂バインダーによる積層造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形技術に関し、特に、積層堆積、積層凝集又は積層分層技術により三次元オブジェクトを製造するためのバインダーによる積層造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂は、汎用の3D印刷材料の一つである。粘結剤の吹付成型による砂型鋳造技術を使用する世界有数の大手メーカーは、ドイツのVoxel jet社、米国のEX ONE社の両社である。Voxel jet社では、珪砂、PMMA粒子材料、石膏などの材料を使用する一方、EX ONE社では、ステンレス鋼、セラミック、コバルトクロム合金、タングステンカーバイドなどの材料を使用する。
【0003】
Voxel jet社で使用されるフェノール樹脂系とEX ONE社で使用されるフラン樹脂系には、以下の差異がある。
フェノール樹脂系は、熱硬化性樹脂であり、砂材による予備混合を行うことなく、直接ノズルを介してコンピュータ支援設計(computer aided design、CAD)の図面に従って樹脂を乾燥砂材の表面に吹き付けた後、加熱して硬化させることができる。
【0004】
フラン樹脂系は、自硬化性樹脂であり、硬化させるためには、先ず硬化剤を砂材に混入し、そしてノズルにより砂材の表面に吹き付け、コンピュータ支援設計に従って主剤を吹き付ける必要がある。鋳物砂は、一般的に鋳造用の荒目砂、鋳物砂バインダー及び補助添加剤などの材料を特定の割合で混合したものである。鋳物砂は、使用されるバインダーの種類によって、樹脂砂、クレー砂、水ガラス砂、セメント砂などに分けられ、なかでも、クレー砂及び樹脂砂がよく用いられる。
従来技術では、鋳造過程中、フラン樹脂は硬化して成型できずバインダーとして使用できないので、フェノール樹脂鋳物砂を選択して鋳物砂の焼結及び粘結の課題を解決している。
【0005】
一般的に、粘結剤の吹付けとは、粘結剤を粉末材料の薄層に粘結することを意味している。粉末材料は、ガラス又は石膏などのようなセラミックを主成分とするものであり、あるいはステンレス鋼などの金属である可能性がある。そのため、バインダーの粘度が低いと、前記ノズルからの吐出量が過剰になりやすく、前記バインダーと粉末との結合効果が低下してしまうので、乾燥成型速度が遅い。
前記バインダーが適当な粘度であると、前記バインダーと粉末との結合効果が良好であり、乾燥成型速度が速い。一方、前記バインダーの粘度が高すぎると、バインダーが前記ノズルから吐出されにくくなり、前記ノズルに付着するので、前記ノズルの目詰まりが発生しやすい。よって、前記ノズルの目詰まり現象を排除するためには、定期的な清掃やメンテナンスを行う必要がある。そのため、前記バインダーは、プリントヘッドを操作する際にバインダーが前記ノズルに付着しないとともに前記ノズルからの吐出速度が速すぎないような粘度を有することが好適である。
【0006】
一般的には、圧送式設備を使用する場合、バインダーの粘度が高すぎると、バインダーをノズルから吐出できないので動作できず、バインダーの粘度が低すぎると、ノズルからの吐出量が過剰になる。室温の条件で、ノズルから砂材が吐出される4~10時間前のバインダーの粘度(Viscosity)は、一般的に10~12cpsの範囲に制御される。
【0007】
高速印刷を達成するためには、適当なプリントヘッド及びバインダーを合わせて使用する必要がある。プリントヘッドは、連続噴射式プリントヘッド(Continuous jet stream print head)及びドロップオンデマンド型プリントヘッド(drop on demand stream print head)に大別できる。連続噴射式プリントヘッドは、ノズルが多く、速度が速く、大型製品の製作に適している。ドロップオンデマンド型プリントヘッドは、ノズルが少なく、速度が遅く、小型製品の製作に適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バインダーの成分及び濃度について、バインダーの粘度が低いと、前記ノズルからの吐出量が過剰になりやすく、前記バインダーと粉末との結合効果が低下してしまうので、乾燥成型速度が遅い。前記バインダーが適当な粘度であると、前記バインダーと粉末との結合効果が良好であり、乾燥成型速度が速い。一方、前記バインダーの粘度が高すぎると、バインダーが前記ノズルから吐出されにくくなり、前記ノズルに付着するので、前記ノズルの目詰まりが発生しやすい。よって、前記ノズルの目詰まり現象を排除するためには、定期的な清掃やメンテナンスを行う必要がある。
【0009】
3D印刷後の乾燥に必要な時間について、バインダー及び硬化剤と砂材とを混合した後、砂型が小さいと、その硬化速度が速い一方、砂型が大きいと、その硬化速度が遅く、ノズルから吐出された後に速やかに反応して砂材を粘結することができず、かつ、砂型のサイズに合わせて硬化速度を調整することができない。
【0010】
一般的には、砂型の製造過程中で樹脂の粘結作用が発生するが、バインダーの流体としての物理的性質が珪砂の混練に影響を与えるとともに、珪砂とバインダーとの間の浸透効率が悪いため、その粘結作用がその後の樹脂砂型の成形品質に影響を与える。通常、従来技術のプロセスは、乾燥砂、セラミック砂及び他の材料に応用できるが、直径9ミクロンの細砂材のような細かい砂材に応用する場合、良好な砂敷き効果が得られない。
【0011】
バインダー及び硬化剤は、常温で保存することができるが、前記バインダーは、常温条件での保存期間が短い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の技術課題を解決するために、本発明は、フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、ポリオキシメチレン60~90重量部をバインダーの混合物となるように撹拌し、120~150℃まで昇温させ、1~2時間合成反応させた後、85℃以下で脱水を行い、その後、45℃以下まで降温させ、カップリング剤5~10重量部を加えて、バインダーを得る工程と、p-トルエンスルホン酸と純水を70~80重量部:20~30重量部の割合でp-トルエンスルホン酸と純水の混合物となるように混合し、そして、リン酸と、p-トルエンスルホン酸と純水の混合物を90~100重量部:3~7重量部の割合で混合し、前記リン酸及びp-トルエンスルホン酸と純水の混合物を60~80℃まで昇温させてから1~3時間撹拌し、硬化剤を得る工程と、前記硬化剤と砂材とを前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合が0.1~1.0%となるように混合し、100~110℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させ、その後、ノズルから前記砂材に対する質量割合が0.5~2.5%である前記バインダーを吐出する工程と、ノズルから吐出された前記バインダーと前記硬化剤で均一に被覆された前記砂材の表面とが反応することで砂型を硬化させる工程と、を含む積層造形方法を提供する。
【0013】
さらに、前記積層造形方法において、前記ポリオキシメチレンは、70~80重量部である。
【0014】
さらに、前記積層造形方法において、前記砂材に対する前記硬化剤の割合は0.3~0.7%であることが最も好ましく、前記砂材に対する前記バインダーの割合は0.8~1.5%であることが最も好ましい。
【0015】
さらに、前記積層造形方法において、前記酸触媒は、p-トルエンスルホン酸、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸及びホウ酸からなる群より選ばれる。
【0016】
さらに、前記積層造形方法において、前記酸触媒は、p-トルエンスルホン酸である。
【0017】
さらに、前記積層造形方法において、前記フェノール類化合物は、フェノール、ビスフェノールA、キシレノール、メタクレゾール、レソルシノール及びフロログルシノールからなる群より選ばれる。
【0018】
さらに、前記積層造形方法において、前記カップリング剤は、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2,3)エポキシ(プロポキシ)プロピルトリメトキシシラン及びN-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランからなる群より選ばれる。
【0019】
上記の技術課題を解決するために、本発明は、フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、ポリオキシメチレン60~90重量部をバインダーの混合物となるように撹拌し、120~150℃まで昇温させ、1~2時間合成反応させた後、85℃以下で脱水を行い、45℃以下まで降温させ、カップリング剤5~10重量部を加えて、バインダーを得る工程を含む積層造形用バインダーの製造方法を提供する。
【0020】
さらに、前記積層造形用バインダーの製造方法において、前記ポリオキシメチレンは、70~80重量部であることが好ましい。
【0021】
さらに、前記積層造形用バインダーの製造方法において、前記酸触媒は、p-トルエンスルホン酸である。
【0022】
上記の技術課題を解決するために、本発明は、フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、ポリオキシメチレン60~90重量部をバインダーの混合物となるように撹拌し、120~150℃まで昇温させ、1~2時間合成反応させた後、85℃以下で脱水を行い、45℃以下まで降温させ、カップリング剤5~10重量部、アルカリ性フェノール樹脂5~20重量部を加えて、バインダーを得る工程と、p-トルエンスルホン酸と純水を70~80重量部:20~30重量部の割合でp-トルエンスルホン酸と純水の混合物となるように混合し、そして、リン酸と、p-トルエンスルホン酸と純水の混合物を90~100重量部:3~7重量部の割合で混合し、前記リン酸及びp-トルエンスルホン酸と純水の混合物を60~80℃まで昇温させてから1~3時間撹拌し、硬化剤を得る工程と、前記硬化剤と砂材とを前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合が0.1~1.0%となるように混合し、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させ、その後、ノズルから前記砂材に対する質量割合が0.5~2.5%である前記バインダーを吐出し、100~110℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させる工程と、ノズルから吐出された前記バインダーと前記硬化剤で均一に被覆された前記砂材の表面とが反応することで砂型を硬化させる工程とを含む、アルカリ性フェノール樹脂バインダーによる積層造形方法をさらに提供する。
【0023】
上記の技術課題を解決するために、本発明は、フェノール類化合物90~110重量部、ポリオキシメチレン80~150重量部、塩基触媒2~5重量部を常温でバインダーの混合物となるように撹拌し、カップリング剤を加えて、アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーを得る工程を含む、アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの製造方法を提供する。
【0024】
本発明の主な効果は次のとおりである。
バインダーは150℃で反応せず、高温のノズルにおいて、自己分解(autodecomposition)反応を起こさないので、耐薬品性及び耐高温性を有する。
【0025】
バインダーの成分及び濃度を改良することにより、製品の機械的強度及び硬度を向上させるだけでなく、ノズルの目詰まりの問題を解消することもできる。また、バインダーの粘度を、ピエゾノズルの所望の基準に応じて、バインダーの配合成分及びプロセスにより調整することで、実用に適した製品を製造することができる。
【0026】
表面張力値を、ピエゾノズルの所望の基準に応じて、バインダーの配合成分及びプロセスにより調整することで、実用に適した製品を製造することができる。
【0027】
バインダーと硬化剤は-8℃で反応可能である。本発明は、石英砂に応用できるような高い硬化速度を有し、3D印刷後の乾燥に必要な時間を減少し、ノズルから吐出された後に速やかに反応して砂材を粘結することができる。
【0028】
積層造形された固形物(particle)の最大粒子径(size)は、いずれも0.6μm未満とすることができる。
【0029】
砂型は、常温条件で硬化することができ、また、砂型のサイズに合わせて硬化速度を調整することができる。通常の砂型製品と比べて、本発明は、砂型が大きい場合でも硬化速度を高めることができる。
【0030】
乾燥砂、セラミック砂及び他の材料に応用することができ、直径9ミクロン(μm)の細砂材のような細かい砂材に応用しても、砂材をうまく敷くことができる。
【0031】
バインダー及び硬化剤は、いずれも常温で保存することができ、前記バインダー及び前記硬化剤は、いずれも劣化しにくい。
【0032】
バインダーの常温条件での保存期間は、12~15ヶ月に達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る積層造形方法である。
図2】本発明に係る積層造形用バインダーである。
図3】本発明に係るアルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの製造方法である。
図4】本発明に係る別のアルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの製造方法である。
図5】バインダーの添加量が1.5重量%である場合の試験片の圧縮強度のデータ図である。
図6】硬化剤の添加量が0.7重量%である場合の試験片の圧縮強度のデータ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
上記の目的を達成するために、図1に示すように、本発明は、前記硬化剤と砂材とを前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合が0.1~1.0%となるように混合し(S101)、100~110℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させ、その後、ノズルから前記砂材に対する質量割合が0.5~2.5%である前記バインダーを吐出し(S102)、ノズルから吐出された前記バインダーと前記硬化剤で均一に被覆された前記砂材の表面とが反応することで(S103)砂型を硬化させる(S104)ことを含む積層造形方法を開示する。
【0035】
3D印刷砂型システムの積層造形は、粘結剤吹付成型プロセス、即ちバインダースプレープロセスを主に採用し、砂型プリンタによって砂材をステージに敷き、続いて各層のパターンに準してノズルから粘結剤を砂材に噴射し、粘結剤粉末を繰り返して噴射して各層の厚み0.25~0.4mmで積層成型する。これによって、合金設計、シミュレーション分析、迅速な鋳型製造及び溶融鋳造などの機能を提供し、シリンダーヘッドなどのエンジン部品、ターボチャージャーのハウジング、板金プレス型、航空宇宙用メーターパネルのフレーム、ギアボックスのカバー、工業用ポンプインペラーなどを含む分野に応用される。
【0036】
3D印刷(3D printing)は、付加製造、積層造形(additive manufacturing、AM)とも呼ばれ、三次元オブジェクトを印刷するあらゆるプロセスを指すことができる。
【0037】
砂材(sand material)は、珪砂(silica sand)、セラミック砂、ガラス砂及び通常の積層造形用原料を使用することができる。
【0038】
フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)は、α-フリルカルビノール、2-フリルメタノール、2-フリルカルビノールとも呼ばれる。
【0039】
ポリオキシメチレン(polyoxymethylene、POM)は、ポリホルムアルデヒド又はポリアセタールとも呼ばれる。
【0040】
通常の触媒は、金属触媒、酸化物触媒、酸触媒、二重機能触媒の4種類に分類できる。同じ反応物に異なる触媒を使用すると、異なる生成物を得ることができる。
【0041】
フェノール樹脂(phenolic resins)は、熱硬化性樹脂に分類される合成プラスチックであり、弱酸及び弱塩基に耐性があり、強酸により分解する高分子材料である。フラン樹脂(furan resin、furane resins)は、自硬化性樹脂である。
【0042】
バインダー(あるいは、粘結剤とも呼ばれる)は、粉末を粘結する機能を有する。前記バインダーは、プリントヘッドの先端におけるノズルから吐出される。有機バインダーは、セラミック粉末に用いられるものであり、水溶性(Water soluble)のもの、又はブチラール樹脂のような揮発性溶剤への溶解が必要なものを含む。無機バインダーは、一般的には、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane)のような珪酸塩類であり、そのまま又は加熱硬化処理によって印刷製品に結合される。
【0043】
フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、ポリオキシメチレン60~90重量部をバインダーの混合物となるように撹拌し、120~150℃まで昇温させ、1~2時間合成反応させた後、85℃以下で脱水を行い、その後、45℃以下まで降温させ、カップリング剤5~10重量部を加えて、バインダーを得る。
【0044】
85℃以下で脱水を行い、その後、45℃以下まで降温させ、カップリング剤5~10重量部を加えて、さらに0.5μm~1μmの濾過材で濾過し、好適なバインダーが得られる。
【0045】
本発明は、p-トルエンスルホン酸と純水を70~80重量部:20~30重量部の割合でp-トルエンスルホン酸と純水の混合物となるように混合し、そして、リン酸と、p-トルエンスルホン酸と純水の混合物を90~100重量部:3~7重量部の割合で混合し、前記リン酸及びp-トルエンスルホン酸と純水の混合物を60~80℃まで昇温させてから1~3時間撹拌し、硬化剤(hardener)を得る。
【0046】
前記硬化剤と砂材とを前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合が0.1~1.0%となるように混合し、100~110℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させ、その後、ノズルから前記砂材に対する質量割合が0.5~2.5%である前記バインダーを吐出する。ノズルから吐出された前記バインダーと前記硬化剤で均一に被覆された前記砂材の表面とが反応することで砂型を硬化させる。
【0047】
以上に述べたとおり、前記酸触媒は、ポリオキシメチレンであり、前記ポリオキシメチレンの割合は、24時間の圧縮強度試験において最適な効果があることから70~80重量部であることが最も好ましい。
【0048】
以上に述べたとおり、前記砂材に対する前記バインダーの質量割合は0.5~2.5%であることが好ましく、前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合は0.1~1.0%であることが好ましい。
【0049】
前記砂材に対する前記バインダーの質量割合は0.8~1.5%であることが最も好ましく、前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合は0.3~0.7%であることが最も好ましい。
【0050】
以上に述べたとおり、前記酸触媒は、p-トルエンスルホン酸、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸から選ばれる一種又は複数種である。ヘテロポリ酸(heteropoly acid)は、通常、化学反応において、繰り返して使用可能な酸触媒として使用されてもよい。ヘテロポリ酸は、モリブドリン酸のような特定の金属及び非金属成分で構成されるオキシ酸であり、ポリ酸及びその他のオキシ酸多面体により形成される複雑な構造を有する。p-トルエンスルホン酸(p-toluenesulfonic acid)は、酸化性のない有機強酸である。
【0051】
以上に述べたとおり、前記酸触媒は、p-トルエンスルホン酸であり、以下の実施例の試験から、p-トルエンスルホン酸が好適な効果があることが分かる。
【0052】
以上に述べたとおり、前記フェノール類化合物は、フェノール、ビスフェノールA、キシレノール、メタクレゾール、レソルシノール、フロログルシノールから選ばれるいずれかの一種又は複数種である。
【0053】
以上に述べたとおり、前記カップリング剤は、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2,3)エポキシ(プロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランから選ばれるいずれかの一種又は複数種である。
【0054】
一般的には、試験片に要求される基準圧縮強度は35kg/cm以上である。本発明に係る試験片は、1時間試験を行った後の圧縮強度が10kg/cm以上であり、24時間試験を行った後の圧縮強度が50kg/cm以上である。
【0055】
3D樹脂砂型印刷技術は、バインダーのpH値、粘度、密度、表面張力などに影響される。また、砂型の製造過程中で樹脂の粘結作用が発生するが、バインダーの流体としての物理的性質が珪砂の混練、珪砂とバインダーとの間の浸透効率及びその粘結作用に影響を与えるため、その後の樹脂砂型の成形品質に影響を与える。本発明は、バインダーと硬化剤と砂材の割合を調整することにより積層造形の印刷効果を最適化する。
【0056】
上記の目的を達成するために、図2に示すように、本発明は、積層造形用バインダーの製造方法を開示する。その配合成分は、フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、ポリオキシメチレン60~90重量部及びカップリング剤5~10重量部を含む。フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、ポリオキシメチレン60~90重量部及びカップリング剤5~10重量部(S201)を混合して(S202)バインダーを製造する(S203)。
【0057】
前記ポリオキシメチレンの割合は、24時間の圧縮強度試験において最適な効果があることから70~80重量部であることが最も好ましい。
【0058】
前記酸触媒はp-トルエンスルホン酸であり、実施例の試験から、p-トルエンスルホン酸が好適な効果があることが分かる。
【0059】
好ましい実施形態では、バインダーは、さらに0.5μm~1μmの濾過材で濾過される。
【0060】
図3に示すように、本発明は、フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、ポリオキシメチレン60~90重量部の各成分(S301)を混合して(S302)バインダーの混合物となるように撹拌し(S303)、120~150℃まで昇温させ、1~2時間合成反応させた後、85℃以下で脱水を行い、45℃以下まで降温させ、昇温、合成、脱水、降温の一連の過程(S304)の後で、カップリング剤5~10重量部、アルカリ性フェノール樹脂5~20重量部を加えて(S305)、バインダーを得る(S306)ことを含む、アルカリ性フェノール樹脂を有する積層造形用バインダーの製造方法を開示する。
【0061】
図3に示すように、上記の目的を達成するために、本発明は、フルフリルアルコール1350~1650重量部、酸触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、ポリオキシメチレン60~90重量部をバインダーの混合物となるように撹拌し、120~150℃まで昇温させ、1~2時間合成反応させた後、85℃以下で真空脱水を行い、45℃以下まで降温させ、カップリング剤5~10重量部、アルカリ性フェノール樹脂5~20重量部を加えて、アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーを得ることを含む、アルカリ性フェノール樹脂を有する積層造形用バインダーの製造方法を開示する。
【0062】
p-トルエンスルホン酸と純水を70~80重量部:20~30重量部の割合でp-トルエンスルホン酸と純水の混合物となるように混合し、そして、リン酸と、p-トルエンスルホン酸と純水の混合物を90~100重量部:3~7重量部の割合で混合し、前記リン酸及びp-トルエンスルホン酸と純水の混合物を60~80℃まで昇温させてから1~3時間撹拌し、硬化剤を得る。
【0063】
前記硬化剤と砂材とを前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合が0.1~1.0%となるように混合し、100~110℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させ、その後、ノズルから前記砂材に対する質量割合が0.5~2.5%である前記バインダーを吐出し、ノズルから吐出された前記バインダーと前記硬化剤で均一に被覆された前記砂材の表面とが反応することで砂型を硬化させる。
【0064】
好ましい実施形態では、バインダーは、カップリング剤5~10重量部及びアルカリ性フェノール樹脂5~20重量部を加えた後、さらに0.5μm~1μmの濾過材で濾過される。
【0065】
前記酸触媒は、p-トルエンスルホン酸、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸から選ばれる一種又は複数種である。ヘテロポリ酸(heteropoly acid)は、通常、化学反応において、繰り返して使用可能な酸触媒として使用されてもよい。ヘテロポリ酸は、モリブドリン酸のような特定の金属及び非金属成分で構成されるオキシ酸であり、ポリ酸及びその他のオキシ酸多面体により形成される複雑な構造を有する。
【0066】
前記カップリング剤は、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2,3)エポキシ(プロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランから選ばれるいずれかの一種又は複数種である。
【0067】
以上に述べたとおり、前記ポリオキシメチレンの割合は、24時間の圧縮強度試験において最適な効果があることから70~80重量部であることが最も好ましい。
【0068】
以上に述べたとおり、前記酸触媒はp-トルエンスルホン酸であり、実施例の試験から、p-トルエンスルホン酸が好適な効果があることが分かる。
【0069】
上記の目的を達成するために、本発明は、フルフリルアルコール1350~1650重量部、塩基触媒2~5重量部、フェノール類化合物120~180重量部、ポリオキシメチレン60~90重量部の各成分を混合してバインダーの混合物となるように撹拌し、120~150℃まで昇温させ、1~2時間合成反応させる。その後、85℃以下で脱水を行い、45℃以下まで降温させ、昇温、合成、脱水、降温の一連の過程の後で、カップリング剤5~10重量部を加えて、バインダーを得ることを含む、アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの製造方法を開示する。
【0070】
図4に示すように、上記の目的を達成するために、本発明は、フェノール類化合物90~110重量部、ポリオキシメチレン80~150重量部、塩基触媒2~5重量部の各成分(S401)を混合して(S402)バインダーの混合物となるように撹拌し(S403)、常温でバインダーの混合物となるように撹拌し(S404)、カップリング剤5~10重量部を加えて(S405)、バインダーを得る(S406)ことを含む、アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの製造方法を開示する。
また、フェノール類化合物90~110重量部、ポリオキシメチレン80~150重量部、塩基触媒2~5重量部を常温でバインダーの混合物となるように撹拌し、カップリング剤を加えて、アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーを得ることを含む、アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの製造方法を開示する。
【0071】
p-トルエンスルホン酸と純水を70~80重量部:20~30重量部の割合でp-トルエンスルホン酸と純水の混合物となるように混合し、そして、リン酸と、p-トルエンスルホン酸と純水の混合物を90~100重量部:3~7重量部の割合で混合し、前記リン酸及びp-トルエンスルホン酸と純水の混合物を60~80℃まで昇温させてから1~3時間撹拌し、硬化剤を得る。
前記硬化剤と砂材とを前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合が0.1~1.0%となるように混合し、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させ、100~110℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させ、その後、ノズルから前記砂材に対する質量割合が0.5~2.5%である前記バインダーを吐出する。ノズルから吐出された前記バインダーと前記硬化剤で均一に被覆された前記砂材の表面とが反応することで砂型を硬化させる。
【0072】
好ましい実施形態では、バインダーは、カップリング剤5~10重量部を加えた後、さらに0.5μm~1μmの濾過材で濾過される。
【0073】
前記砂材に対する前記バインダーの質量割合は0.8~1.5%であることが最も好ましく、前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合は0.3~0.7%であることが最も好ましい。
【0074】
前記カップリング剤は、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2,3)エポキシ(プロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランから選ばれるいずれかの一種又は複数種である。
【0075】
前記アルカリ性フェノール樹脂には、塩基触媒(basic catalyst)(あるいは、アルカリ性触媒とも呼ばれる)が加えられるが、反応生成物が、触媒の割合及び酸性度によって異なる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びいくつかの通常の塩基触媒試薬により触媒されて樹脂生成物が得られる。
【0076】
硬化剤と砂材とを事前に撹拌して混合するため、砂噴射がよりスムーズになり、生砂を砂材として使用する場合に目詰まりが発生しやすいという従来技術の欠点を克服することができる。
【0077】
[実施例1]
本発明は、積層造形用バインダーを提供する。
その配合成分は、フルフリルアルコール1500重量部、酸触媒2重量部、フェノール類化合物160重量部、ポリオキシメチレン70重量部、及びカップリング剤6重量部を含む。
【0078】
[実施例2]
本発明は、別の積層造形用バインダーを提供する。
その配合成分は、フルフリルアルコール1650重量部、酸触媒3重量部、フェノール類化合物170重量部、ポリオキシメチレン85重量部、及びカップリング剤7重量部を含む。
【0079】
[実施例3]
本発明は、以下の工程を含む積層造形用バインダーの製造方法を提供する。
バインダーの製造
フルフリルアルコール1500重量部、酸触媒2重量部、フェノール類化合物150重量部、ポリオキシメチレン75重量部を投入し、常温でバインダーの混合物となるように撹拌し、120℃まで昇温させ、2時間合成反応させた後、80℃で脱水を行い、45℃まで降温させた後、カップリング剤6重量部を加えて、バインダーを得た。
【0080】
酸触媒は酢酸、フェノール類化合物はフェノール、カップリング剤はγ-アミノプロピルトリエトキシシランとした。
【0081】
[実施例4]
本発明は、前記硬化剤を砂材と混合し、100℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させ、その後、ノズルからバインダーを吐出し、ノズルから吐出されたバインダーと前記硬化剤で均一に被覆された前記砂材の表面とが反応することで砂型を硬化させる、アルカリ性フェノール樹脂バインダーによる積層造形方法を提供する。
【0082】
[バインダーの製造]
フルフリルアルコール1500重量部、酸触媒2重量部、フェノール類化合物150重量部、ポリオキシメチレン70重量部を投入し、常温でバインダーの混合物となるように撹拌し、120℃まで昇温させ、2時間合成反応させた後、70℃で脱水を行い、40℃まで降温させた後、カップリング剤6重量部及びアルカリ性フェノール樹脂15重量部を加えて、0.5μm~1μmの濾過材で濾過し、バインダーを得た。
【0083】
自硬化性合成樹脂の物性を、以下に示す。
比重(25℃):1.11~1.15
粘度(30℃):8~20CPS
pH(25℃):7~8
水分:3%以下
固形分:35%以下
遊離アルデヒド:1%以下
酸触媒は酢酸亜鉛、フェノール類化合物はフェノール、カップリング剤はγ-アミノプロピルトリエトキシシランとした。
【0084】
[硬化剤の製造]
p-トルエンスルホン酸と純水を75重量部:25重量部の割合でp-トルエンスルホン酸と純水の混合物となるように混合し、リン酸と、p-トルエンスルホン酸と純水の混合物を95重量部:5重量部の割合で混合し、前記リン酸及びp-トルエンスルホン酸と純水の混合物を60℃まで昇温させてから3時間撹拌し、硬化剤を得た。
【0085】
[砂型の硬化]
まず、前記硬化剤と砂材とを前記砂材に対する前記硬化剤の割合が0.7重量%となるように混合し、100℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、前記硬化剤を前記砂材の表面に均一に被覆させた。その後、ノズルから前記砂材に対する割合が1.5重量%である酸化ケイ素バインダーを吐出し、ノズルから吐出された前記酸化ケイ素バインダーと前記硬化剤で均一に被覆された砂材の表面とが反応することで砂型を硬化させた。
【0086】
砂材として珪砂1kgを取り、硬化剤としてp-トルエンスルホン酸2.5gを加えて、60秒混練した後、後続の工程に供するために砂を取り出し、100℃の高温で加熱し混合して乾燥させた後、続いてノズルから樹脂16.5gを吐出して砂型を硬化させ、常温条件で約24時間保温し、試験片の硬度及び圧縮強度(Compressive strength)を測定した。
【0087】
[実験結果]
試験片の圧縮強度を測定し、材料が脆性破壊前に受ける最大応力値を、材料が破断して破壊されるまで測定した。
【0088】
表1に示すように、通常、試験片に要求される基準圧縮強度は35kg/cm以上であり、本発明に係る試験片は、1時間試験を行った後の圧縮強度が10kg/cm以上であり、24時間試験を行った後の圧縮強度が50kg/cm以上であった。
【0089】
【表1】
【0090】
表2は、バインダーの添加量が1.5重量%である場合の試験片の圧縮強度であり、グループA1~A8における硬化剤の添加量は、それぞれ0.05重量%、0.10重量%、0.30重量%、0.50重量%、0.70重量%、0.90重量%、1.00重量%、1.10重量%であり、すなわち、A1~A8における硬化剤の添加量は、それぞれ0.5g、1g、3g、5g、7g、9g、10g、11gであり、バインダーの添加量はいずれも15gであり、砂材の添加量は1000gであった。
【0091】
【表2】
【0092】
図5は、バインダーの添加量が1.5重量%である場合の試験片の圧縮強度のデータ図である。
【0093】
表3は、硬化剤の添加量がいずれも0.7重量%である場合の試験片の圧縮強度であり、グループB1~B8におけるバインダーの添加量は、それぞれ0.3重量%、0.5重量%、0.8重量%、1.3重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%であり、すなわち、B1~B8におけるバインダーの添加量は、それぞれ3g、5g、8g、13g、15g、20g、25g、30gであり、硬化剤の添加量はいずれも7gであり、砂材の添加量は1000gであった。
【0094】
【表3】
【0095】
図6は、硬化剤の添加量が0.7重量%である場合の試験片の圧縮強度のデータ図である。
【0096】
フルフリルアルコール1500重量部、酸触媒2重量部、フェノール類化合物150重量部、ポリオキシメチレンを投入し、常温でバインダーの混合物となるように撹拌し、120℃まで昇温させ、2時間合成反応させた後、70℃で脱水を行い、40℃まで降温させた後、カップリング剤6重量部及びアルカリ性フェノール樹脂10重量部を加えて、バインダーを得た。
【0097】
表4において、グループC1~C5におけるポリオキシメチレンの添加量は、それぞれ65重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部であった。
【0098】
【表4】
【0099】
実験結果から以下のことが示される。
本発明に係るアルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーによる積層造形方法では、表2に示すように、前記砂材に対する前記アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの質量割合は、0.5~2.5%であることが好ましく、表3に示すように、前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合は、0.1~1.0%であることが好ましい。
【0100】
表2に示すように、前記砂材に対する前記アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの質量割合は0.8~1.5%であることが最も好ましく、表3に示すように、前記砂材に対する前記硬化剤の質量割合は0.3~0.7%であることが最も好ましい。
【0101】
表4に示すように、アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの積層造形方法において、前記ポリオキシメチレンの割合は、70~80重量部であることが最も好ましい。
【0102】
本発明は、課題を解決するための技術手段の好適な実施形態や実施例を示すものに過ぎず、本発明の特許の実施範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の特許請求の範囲と同義のもの、又は本発明の特許請求の範囲に基づいて行った同等の変更と修正は、すべて本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
S101~S104 積層造形方法の工程
S201~S203 積層造形用バインダーの製造工程
S301~S306 アルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの製造方法の工程
S401~S406 別のアルカリ性フェノール樹脂を有するバインダーの製造方法の工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6