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特許7108345電子装置の製造方法、マイクロニードルの製造方法及びマイクロニードル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法、マイクロニードルの製造方法及びマイクロニードル
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
H01L21/92 602G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021534090
(86)(22)【出願日】2020-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2020028607
(87)【国際公開番号】W WO2021015286
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2019136808
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514277260
【氏名又は名称】シンクランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154634
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 みさ子
(72)【発明者】
【氏名】宮地 邦男
(72)【発明者】
【氏名】及川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】内山 翠
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-192928(JP,A)
【文献】特開2010-247230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路部材における第1の電極に形成された被覆材又は前記第1の電極を構成する電極材の少なくとも一方をアブレーションによって突出させることにより、前記第1の電極上にマイクロニードルを形成するマイクロニードル形成ステップと、
第2の回路部材における第2の電極と前記マイクロニードルとを接合する接合ステップと、
前記マイクロニードル形成ステップの後段に、
加熱圧着、レーザ光照射から選択される一の方法又は複数の方法を組み合わせることにより、前記マイクロニードルの先端形状を加工する先端形状調整ステップ
を有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記マイ クロニードル形成ステップでは、
前記被覆材又は前記電極材に対して螺旋状の偏光を有する光渦パルス光を照射する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記被覆材は、
はんだ材でなり、
前記接合ステップでは、
前記第2の電極と前記マイクロニードルとを接触させて加熱する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記マイクロニードル形成ステップの後段に、
前記マイクロニードルの少なくとも先端に接合材を付着させる付着ステップを有し、
前記接合ステップでは、
前記第2の電極と前記マイクロニードルとを接触させた状態で固化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
前記接合ステップでは、
溶融によって液状の接合材を付着させ、
前記接合ステップでは、
付着された液状の接合材を前記第2の電極に接触させた状態で冷却により固化させる
ことを特徴とする請求項3に記載の電子装置の製造方法。
【請求項6】
前記接合ステップでは、
前記第2の電極と前記マイクロニードルとを接触させた状態で加熱及び超音波のうち少なくとも一方による接合処理を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の電子装置の製造方法。
【請求項7】
前記先端形状調整ステップでは、
前記加熱圧着、前記レーザ光照射から選択される一の方法又は複数の方法と、溶融させた金属のディップ付着とを組み合わせることにより、前記マイクロニードルの先端形状を整える
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項8】
第1の回路部材における第1の電極に形成された被覆材又は前記第1の電極を構成する電極材の少なくとも一方からなる被照射材に対して、螺旋状の偏光を有する光渦パルス光を照射することにより、前記第1の電極から突出するマイクロニードルを形成する マイクロニードル形成ステップと、
第2の回路部材における第2の電極と前記マイクロニードルとを接合する接合ステップと、
前記マイクロニードル形成ステップの後段に、
加熱圧着、レーザ光照射から選択される一の方法又は複数の方法を組み合わせることにより 前記マイクロニードルの先端形状を加工する先端形状調整ステップ
ことを特徴とするマイクロニードルの製造方法。
【請求項9】
前記第1の電極の表面から突出し、前記第1の電極に形成された被覆材又は前記第1の電極の少なくとも一方から連続的に形成されている
ことを特徴とする請求項8に記載のマイクロニードル。
【請求項10】
前記マイクロニードルは、
少なくとも先端部分が前記マイクロニードルの主軸部分よりも融点の低い接合材で被覆されている
ことを特徴とする請求項9に記載のマイクロニードル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種電子機器に使用される基板などの電子装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、高性能化が要求され、多層プリント配線板などの基板においても、配線の微細化及び高密度化が進んでいる。これに伴って、半導体チップを実装基板に実装する構造についても、薄型化及び小型化の要請が強まっている。
【0003】
そこで、半導体チップを実装基板に実装する方法として、半導体チップの電極表面に多数の突起電極(バンプ電極)を形成し、この突起電極を介してチップ側の電極と基板側の電極とを電気的に接続するフリップチップ実装が普及している。このようなフリップ実装により、接続構造の多ピン化及び小型化が実現している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-332583号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フリップチップ実装では、さらなる微細化が要求されている。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、微細化が可能な電子装置の製造方法、マイクロニードルの製造方法及びマイクロニードルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため、本発明の電子部品の製造方法は、
第1の回路部材における第1の電極に形成された被覆材又は前記第1の電極を構成する電極材の少なくとも一方から突出するマイクロニードルを形成するマイクロニードル形成ステップと、
第2の回路部材における第2の電極と前記マイクロニードルとを接合する接合ステップとを有することを特徴とする。
【0008】
また本発明のマイクロニードルの製造方法では、第1の回路部材における第1の電極に形成された被覆材又は前記第1の電極を構成する電極材の少なくとも一方からなる被照射材に対して、螺旋状の偏光を有する光渦パルス光を照射することにより、前記第1の電極から突出するマイクロニードルを形成することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明のマイクロニードルでは、第1の回路部材における第1の電極の表面から突出し、前記第1の電極に形成された被覆材又は前記第1の電極の少なくとも一方から連続的に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、微細化が可能な電子装置の製造方法、マイクロニードルの製造方法及びマイクロニードルを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の電子装置の製造方法の説明に供するフローチャートである。
図2】第1の実施の形態におけるマイクロニードルの形成を説明する概略図である。
図3】第1の実施の形態における接合処理の説明に供する概略図である。
図4】第2の実施の形態におけるマイクロニードルの形成を説明する概略図である。
図5】第2の実施の形態における接合処理の説明に供する概略図である。
図6】第3の実施の形態における接合処理の説明に供する概略図である。
図7】本発明に使用される光学系の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明を示すフローチャートである。本発明では、ステップS1(図2参照)において、電極3から突出するマイクロニードル5が形成され、ステップS2(図3参照)において、マイクロニードルの接合処理が実行されることにより、第1回路部材2及び第2回路部材22とが電極3及び電極23を介して接合される。
【0014】
具体的には、まず図2(A)に示すように、第1回路部材2上に形成された電極3の表面に、印刷や塗布などの手法により、電極3を被覆する被覆層としての接合材層4が形成される。第1回路部材2及び第2回路部材22としては特に制限は無く、セラミック基板、シリコン基板、フレキシブルプリント基板、カード基板などの各種回路基板や、当該回路基板上に接合される半導体チップやセラミックコンデンサ、抵抗部品、コイルなどの各種電子部品などが好適に使用される。特に、回路基板上に電子部品が接合される場合に本発明の製造方法を好適に使用することができる。
【0015】
接合材層4に使用される接合材(被覆材)としては、導電性があり熱によって溶融する公知の材料を使用することが可能である。好ましくは、Sn、Sb、Cu,Ag、Bi、In、Znなどを主成分の一部として含有する鉛フリーはんだ材料が用いられる。接合材層4の材質としては、接合処理における加熱(リフロー)温度などに応じて適宜選択される。
【0016】
次いで、図2(B)に示すように、マイクロニードル5が形成される。具体的には、螺旋位相を有する光渦レーザの照射やイオンミリング、エッチングなどの手法を用いて、接合材層4の一部を針状に加工することによりマイクロニードル5が形成される。特に、光渦レーザを用いることにより、短時間でアスペクト比が高く、主軸5Bの直径がほぼ同一となる円柱形状のマイクロニードル5を形成することが可能である。円偏光光渦レーザは、円偏光レーザに特殊な螺旋位相板を通過させることにより、螺旋状の位相を有するレーザであり、通常の円偏光レーザとは相違する特性を有する(詳しくは後述する)。
【0017】
マイクロニードル5の長さに特に制限は無いが、第1回路部材2及び第2回路部材22に必要な離隔距離に応じて適宜選択される。また、マイクロニードル5の直径(主軸5Bにおける平均直径)に特に制限は無いが、2~10μmであることが好ましい。直径が小さすぎると、接合強度が不十分となり、大きすぎると微細化が困難になるため好ましくない。マイクロニードル5の高さに制限は無いが、50~500μm、より好ましくは80~300μmである。マイクロニードルの長さは、例えば第1回路部材2及び第2回路部材22に要する間隔などに応じて適宜選択される。
【0018】
さらに、図2(C)に示すように、マイクロニードル5の先端5Aの形状を加工することもできる。例えば、マイクロニードル5を加熱しながら先端5Aを押し潰すことにより、先端5Aが先端へ向けて幅が大きくなる逆三角形状にすることができる。また、先端5Aにレーザを照射することにより、先端5Aの形状を丸くすることができる。このように、先端5Aをマイクロニードル5の主軸5Bよりも太くすることにより、接合面積を大きくし、接合強度を増大させることが可能になる。
【0019】
そして図3に示すように、第2回路部材22の表面に形成された電極23に対してマイクロニードル5の先端5Aを当接させた状態で加熱(リフロー)処理を行うことにより、マイクロニードル5を介して電極3と電極23とを接合することができる。なお、接合処理の際、仮止め接着剤により位置を固定して加熱することにより、仮止め接着剤を硬化させた後に、リフロー加熱を行うことにより、位置固定の精度が向上するため好ましい。
【0020】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について、図4図5を用いて説明する。第1の実施の形態とは、マイクロニードル105の形成方法と接合方法とが相違している。なお、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と対応する箇所に100を加算した符号を附し、同一箇所についての説明を省略する。
【0021】
図4に示すように、第2の実施の形態では、第1回路部材102に貫通して設けられた電極104の表面に直接的にマイクロニードル105が形成される。電極104の材質については特に制限は無く、Cu、Ag、Al、Au、Ni及びこれらの合金などが適宜選択されて使用される。
【0022】
そしてマイクロニードル105の先端105Aに、接合材106が付着されると共に、接合材106を熱により溶融させた状態で先端105Aを第2回路部材122の電極123に当接させることにより、マイクロニードル105を介して電極104と電極123とが接合される。
【0023】
具体的に、図5(A)及び(B)に示すように、マイクロニードル105の先端105Aを接合材106を加熱により溶融させた接合材槽130に浸漬(ディップ)させることにより、先端105Aに接合材106を付着させる。電極104の融点は、接合材106よりも高く設定されており、接合材槽130への浸漬によってマイクロニードル105が溶融することはない。
【0024】
そのまま第1回路部材102を第2回路部材122の接合箇所に移動させ、接合材106が固化する前に第2回路部材122の電極123に当接させた状態で接合材106を固化させる。これにより、仮止め接着剤やリフロー工程を行わなくても電極104と電極123とを接合することが可能となる。
【0025】
また、追加工程としてリフロー工程を行うことにより、電極123とマイクロニードル105との接合をより強化することも可能である。この場合であっても、マイクロニードル105(電極104)の融点が高いため、リフロー加熱によるマイクロニードル105の破断を未然に防止できる。
【0026】
<第3の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について、図6を用いて説明する。第1の実施の形態とは、マイクロニードル205の形成位置と接合方法とが相違している。なお、第3の実施の形態においては、第1の実施の形態と対応する箇所に200を加算した符号を附し、同一箇所についての説明を省略する。
【0027】
図6に示すように、第1回路部材202の側面に形成された電極204の表面から突出するマイクロニードル205が形成されている。このマイクロニードル205は、電極204から連続的に形成されている。第2回路部材222は上面に電極233が形成されている。
【0028】
第1回路部材202が位置合わせされた状態で、例えば加熱と超音波とを印可可能な印可手段(図示せず)によって加圧しながらマイクロニードル205に熱と超音波を印可することにより、電極233に対してマイクロニードル205が接合される。
【0029】
このように、加熱と超音波とを利用してマイクロニードル205を変形させると共にマイクロニードル205の少なくとも一部を溶融させることにより、電極204と電極233とをマイクロニードル205を介して直接的に接合することができる。
【0030】
<光渦レーザによるマイクロニードルの形成>
次に、光渦レーザを用いてマイクロニードル5,105,205を形成する方法について説明する。
【0031】
本発明で使用される円偏光光渦レーザは、円偏光のレーザビームに螺旋性を持たせたものであり、円偏光の回転方向と光渦レーザの回転方向が同一のパルス光である。パルス光のパルス幅は、被加工物304(接合材層4や電極104,204)の材質や形成したい微小突起のサイズなどに応じて適宜選択されるが、10ピコ秒以上、100ナノ秒以下であることが好ましい。
【0032】
円偏光光渦レーザとしては、ラゲールガウスビーム、ベッセルガウスビーム、及び波面に位相特異点が複数ある多重光渦が例示される。ラゲールガウスビーム、ベッセルガウスビームは円筒座標系のそれぞれ固有モードで、動径の二乗に比例する屈折率分布や利得分布を有する径では、ラゲールガウスビームになり、それがない径ではベッセルガウスビームとなる。
【0033】
ラゲールガウスビームは、光渦レーザの代表的なものであり、光軸上の強度が零(位相特異点)で、光軸断面の強度分布がリング状をなしている。ラゲールガウスビームは、螺旋階段のように、光軸のまわりに1回転した時に位相が2πの整数倍変化するものであり、等位相面が螺旋構造をとる。この整数がラゲールガウスビームの渦次数である。渦次数が、負の整数の場合、回転方向が逆となる。
【0034】
ベッセルガウスビームは、ラゲールガウスビームと同様に、螺旋階段のように、光軸のまわりに1回転した時に位相が2πの整数倍変化するものであり、等位相面が螺旋構造をとる。この整数がベッセルガウスビームの渦次数である。波面に位相特異点が複数ある多重光渦としては、2重光渦、3重光渦などがある。2重光渦では、位相特異点が2つあり、渦が2つあり、それぞれの渦について+1次と-1次の渦次数となる。3重光渦の場合、位相特異点が3つあり、渦が3つあり、それぞれの渦について+1次、+1次、-1次の渦次数となる。
【0035】
すなわち、円偏光光渦レーザとは、光渦レーザの渦次数に対応する軌道角運動量に、円偏光に対応するスピン角運動量が加わっている光渦レーザである。本発明の円偏光光渦レーザでは、光渦レーザの渦次数に対応する軌道角運動量と円偏光に対応するスピン角運動量の両者の角運動量の符号が同じである。すなわち、光渦の回転の方向と円偏光の回転の方向が同じである。逆符号である場合、つまり回転の方法が逆となると、光渦の軌道角運動量と円偏光のスピン角運動量が打ち消しあってしまうからである。
【0036】
本発明の電子装置の製造方法、マイクロニードルの製造方法及びマイクロニードルにおいて、光渦レーザの発生方法は特に限定されるものではなく、光渦レーザの発生方法としては、液晶空間変調器に表示したフォーク型のホログラムにより光渦レーザを発生させる方法、螺旋状位相板により光渦レーザを発生させる方法、エルミートガウシアンモードからの変換により光渦レーザを発生させる方法、およびレーザー共振器から直接出す方法が例示される。
【0037】
図7には、螺旋状位相板により光渦レーザを発生させるための光学系320を示している。
【0038】
レーザー発振器301は、特に限定されなく、この例においてレーザー発振器301は、Nd:YAGレーザーである。レーザー発振器301は、直線偏光のパルス光302をQスイッチ発振する。直線偏光のパルス光302のパルス幅は、10ピコ秒以上100ナノ秒以下である。該パルス幅が10ピコ秒未満であると、プラズマが発生しにくく、100ナノ秒を超えると、HAZの問題が生じるからである。該パルス幅が10ピコ秒以上であると光と被加工物とが十分に相互作用してくれる。
【0039】
レーザー発振器301から発振される直線偏光のパルス光302の波長としては、0.5μm以上、10.0μm以上が使用される。特に1.024μmの波長のパルス光302が好適に使用される。
【0040】
なお、パルス光302の波長は、例えば光パラメトリック共振(OPO)をKTP結晶(KTiOPO)を用いて構成したものや、COレーザからのアップコンバージョンなどにより変換することが可能である。
【0041】
本発明において、レーザー発振器の出力は、設定するピークパワー密度になるように設定されればよく、光渦レーザのパルス光303の被加工物304上でのスポット径、被加工物304の材質やパルス光302の波長などの要因に応じて適宜選択される。好ましくは、レーザー発振器の出力は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01mJ~10mJである。出力が小さすぎるとアブレーションが生じない又は不足し、出力が大きすぎると被加工物304の拡散を生じさせるからである。光渦レーザのパルス光303の被加工物304上でのスポット径は、形成する微小突起のサイズに応じて適宜選択され、特に限定されるものではないが、1μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0042】
前記レーザー発振器1から発振される該直線偏光のパルス光302は、焦点距離50mmのレンズ305と焦点距離300mmのレンズ306を通ってビームサイズが6倍に拡大され、12分割の螺旋状位相板313によって、光渦レーザのパルス光303に変換される。なお、焦点距離50mmのレンズ305と焦点距離300mmのレンズ306との距離は350mmである。螺旋状位相板313の面積を有効に使うことによるビーム品質の向上のためであり、螺旋状位相板313の損傷をなくすためであり、焦点距離は特に限定されるものではない。その後、対物レンズ312(焦点距離50mm)で絞られて、被加工物304に照射される。対物レンズ312の倍率は所望のスポット径に応じて決められるものであり特に限定されなく、この例において対物レンズ312の倍率は5~50倍である。また、対物レンズ312の焦点距離は、特に限定されるものではない。
【0043】
螺旋状位相板313は、透過させるレーザービームに対して所定の位相分布を与えるように厚さ分布を制御した位相板である。位相板の厚さ分布は、階段状の不連続分布で近似されていて、その階段数が分割数である。螺旋状位相板313の分割数は特に限定されないが、例えば12分割や16分割のものが使用される。なお、螺旋状位相板313の代わりに液晶空間変調器に表示したフォーク型のホログラムにより光渦レーザを発生させることも可能である。かかる光学系については特許文献2~4に記載のものを適宜適用しても良い。
【0044】
【文献】特許第5831896号
【文献】特願2013-519522
【文献】特許第5035803号
【0045】
本発明のレーザー加工方法において、光渦レーザがラゲールガウスビームもしくはベッセルガウスビームであり、渦次数が1以上の整数もしくは-1以下の整数であることが好ましく、より好ましくは、渦次数が2以上の整数もしくは-2以下の整数である。ラゲールガウスビームの渦次数が絶対値が高いほど、加工表面が滑らかになるからである。高次の渦次数のラゲールガウスビームを発生させる方法としては、螺旋状位相板を重ねて使用することにより実現できる。例えば、1次の渦を発生させるのに使用するや螺旋状位相板を2重にすることによって、渦次数を2とすることができる。また、液晶空間変調器に表示したフォーク型のホログラムにより光渦レーザを発生させる方法の場合は、位相板液晶空間変調器に表示されたフォーク型ホログラムを3本フォーク型にすることにより渦次数を2とすることができる。また、本発明のレーザー加工方法において、光渦レーザが波面に位相特異点が複数ある多重光渦であることが好ましい。
【0046】
<動作及び効果>
以下、上記した実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて課題及び効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記各実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。また、各特徴に記載した用語の意味や例示等は、同一の文言にて記載した他の特徴に記載した用語の意味や例示として適用しても良い。
【0047】
本発明の電子装置の製造方法では、第1の回路部材(第1回路部材2)における第1の電極に形成された被覆材(接合材層4)又は前記第1の電極を構成する電極材(電極3)の少なくとも一方から突出するマイクロニードル(マイクロニードル105)を形成するマイクロニードル形成ステップと、
第2の回路部材(第2回路部材22)における第2の電極(電極23)と前記マイクロニードル(マイクロニードル5)とを接合する接合ステップとを有することを特徴とする。
【0048】
これにより、棒状のマイクロニードルを用いて接続を行うことにより、電極間のピッチを小さく形成できるため、回路の微細化が可能となる。
【0049】
電子装置の製造方法において、マイクロニードル形成ステップでは、
螺旋状の偏光を有する光渦パルス光を照射することを特徴とする。
【0050】
これにより、電極材又は被覆材に光渦パルス光を照射することによりマイクロニードルを形成できるため、自在な位置に短時間でマイクロニードルを形成でき、電極の微細化が可能となる。
【0051】
電子装置の製造方法において、前記被覆材は、はんだ材でなり、
前記接合ステップでは、
前記第2の電極と前記マイクロニードルとを接触させて加熱することを特徴とする。
【0052】
これにより、リフロー加熱により第1の電極と第2の電極とを接合することができ、既存の設備をそのまま使用して接合処理を行うことができる。
【0053】
電子装置の製造方法において、前記マイクロニードル形成ステップの後段に、
前記マイクロニードルの少なくとも先端に接合材を付着させる付着ステップを有し、
前記接合ステップでは、前記第2の電極と前記マイクロニードルとを接触させた状態で固化させることを特徴とする。
【0054】
マイクロニードルは径が小さく、接合材をディップにより付着させることが容易であり、簡易な工程によりマイクロニードルに接合材を付着させることができる。
【0055】
電子装置の製造方法において、前記接合ステップでは、
溶融によって液状の前記接合材を付着させ、
前記接合ステップでは、
付着された液状の接合材を前記第2の電極に接触させた状態で冷却により固化させることを特徴とする。
【0056】
これにより、接合材を付着させて第2の電極に接触させて冷却するだけの簡易な工程で接合処理を行うことができ、仮止めやリフローなどの工程を省略することができる。
【0057】
電子装置の製造方法において、前記接合ステップでは、
前記前記第2の電極と前記マイクロニードルとを接触させた状態で加熱及び超音波のうち少なくとも一方による接合処理を行うことを特徴とする。
【0058】
これにより、既存の設備を用いて接合処理を行うことができる。
【0059】
電子装置の製造方法において、前記マイクロニードル形成ステップの後段に、
前記マイクロニードルの先端形状を整える先端形状調整ステップを有することを特徴とする。
【0060】
これにより、マイクロニードルの先端形状を整えることができるため、接合強度を高めたり、接合処理に要する時間を短縮したりすることができる。
【0061】
電子装置の製造方法において、前記先端形状調整ステップでは、
加熱圧着、レーザ光照射、溶融させた金属のディップ付着から選択される一の方法又は複数の方法を組み合わせることにより、前記マイクロニードルの先端形状を整えることを特徴とする。
【0062】
これにより、簡易な方法でマイクロニードルの先端形状を整えることができる。
【0063】
マイクロニードルの製造方法では、第1の回路部材における第1の電極に形成された被覆材又は前記第1の電極を構成する電極材の少なくとも一方からなる被照射材に対して、螺旋状の偏光を有する光渦パルス光を照射することにより、前記第1の電極から突出するマイクロニードルを形成することを特徴とする。
【0064】
これにより、微細なピッチで電極材又は被覆材から連続的にマイクロニードルを形成できる。
【0065】
マイクロニードルでは、第1の回路部材における第1の電極の表面から突出し、前記第1の電極に形成された被覆材又は前記第1の電極の少なくとも一方から連続的に形成されていることを特徴とする。
【0066】
これにより、第1の電極から連続的に接続されるマイクロニードルを形成できるため、第1の電極とマイクロニードルとの境界強度を大きくすることができる。
【0067】
前記マイクロニードルは、
少なくとも先端部分が前記マイクロニードルの主軸部分よりも融点の低い接合材で被覆されていることを特徴とする。
【0068】
これにより、接合材を溶融させればマイクロニードルと第2の電極とを接合できると共に、加熱により径の細いマイクロニードルが溶解することがなく、マイクロニードルが破断する恐れがない。
【0069】
バンプ製造装置では、第1の回路部材における第1の電極に形成された被覆材又は前記第1の電極を構成する電極材の少なくとも一方からなる被照射材に対して、螺旋状の偏光を有する光渦パルス光を照射することにより、前記第1の電極から突出するマイクロニードルを形成する照射部と、
前記マイクロニードルの先端形状を整える先端形状調整部とを有することを特徴とする。
【0070】
これにより、光渦パルス光によってマイクロニードルを形成した後、マイクロニードルの先端形状を整えることができる。
【0071】
電子装置の製造システムでは、第1の回路部材における第1の電極に形成された被覆材又は前記第1の電極を構成する電極材の少なくとも一方からなる被照射材に対して、螺旋状の偏光を有する光渦パルス光を照射することにより、前記第1の電極から突出するマイクロニードルを形成する照射部と、
第2の回路部材における第2の電極と前記マイクロニードルとを接合する接合部とを有することを特徴とする。
【0072】
これにより、マイクロニードルを形成した後、第2の電極とマイクロニードルとを接合することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えば回路基板の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
2,102,202 :第1回路部材
3,102,103 :電極
4,106 :接合材
5 :マイクロニードル
5A :先端
5B :主軸
22,122,222 :第2回路部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7