特許 7108351 鉄筋起こし治具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B1)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-07-20

(45)【発行日】2022-07-28

(54)【発明の名称】鉄筋起こし治具

(51)【国際特許分類】

   E04G 21/12 20060101AFI20220721BHJP

【ＦＩ】

E04G21/12 105D

【請求項の数】 4

(21)【出願番号】P 2022068215

(22)【出願日】2022-04-18

【審査請求日】2022-04-18

【早期審査対象出願】

(73)【特許権者】

【識別番号】503289768

【氏名又は名称】大雅工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100165755

【弁理士】

【氏名又は名称】藤田 典彦

(72)【発明者】

【氏名】松元 茂樹

【審査官】河内 悠

(56)【参考文献】

【文献】特開２０２０－１３１６４４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００６－２４９７４２（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開昭５８－０６８５２９（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開平０４－０４４５６８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開昭６２－１５３４７１（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平０２－０７０８６４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平０６－００２４３２（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０４Ｇ ２１／１２

Ｂ２８Ｂ ２３／０２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

作業面に設置する基部と、前記基部に対して回動自在に固定され、鉄筋を所定長さまで差し込んで保持するガイド部と、を備え、
前記基部は、前記ガイド部を前記基部の上面から垂直方向に回動自在に固定するヒンジ部と、前記ガイド部を垂直状態に支持する支持部と、を有 し、
前記支持部は、前記ガイド部の外側面を吸着固定する吸着部を有すること を特徴とする鉄筋起こし治具。

【請求項2】

ガイド部は、鉄筋を差し込んで保持する外筒と、鉄筋の下端部に当接して所定深さまで差し込むようにする内筒と、からなることを特徴とする請求項１記載の鉄筋起こし治具。

【請求項3】

ガイド部は、外筒を延長する延長部を有することを特徴とする請求項１又は２のいずれか一項に記載の鉄筋起こし治具。

【請求項4】

基部は、垂直に露出した鉄筋に固定する固定部を有することを特徴とする請求項１記載の鉄筋起こし治具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、横倒し状態の鉄筋を所定高さの位置に立て起こす鉄筋起こし治具に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、鉄筋コンクリート構造物などの建築物の基礎工事において鉄筋の組立作業の作業者の負担や作業効率を向上させるための種々の治具が提案されている。

【0003】

例えば、特許文献１－３には、複数の鉄筋を所定間隔で保持することで、鉄筋の結束や溶接作業を行うことができ、作業者の負担を軽減し、作業効率を向上させることが可能な治具が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】特開２０２０－１３１６４４号公報（特許第６８６８８７０号）

【文献】実用新案登録第３１３２７３５号

【文献】特開２００７－４６４１１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

しかしながら、上述した治具は、柱部分を構成する垂直に露出した鉄筋の上端部に対して他の鉄筋の下端部を直線上に圧接する作業において、主に作業者が手作業によって作業面上に横倒し状態の鉄筋を所定の高さの位置（約８００ｍｍ、約１３００ｍｍなど）まで立て起こすことには適しておらず、鉄筋（約３ｍの長さ、約３０ｋｇの重量）を作業者が担ぎ上げて立て起こすことは負担が大きく作業効率が低かった。

【0006】

したがって、本発明は、作業現場において横倒し状態の鉄筋を垂直方向に露出した鉄筋の上端部近傍の所定高さの位置で立て起こすことができ、作業者が担ぎ上げることなく、鉄筋の上端部に他の鉄筋の下端部を圧接する作業の作業効率を向上させることが可能な鉄筋起こし治具を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明は、上記課題に鑑み、作業面に設置する基部と、前記基部に対して回動自在に固定され、鉄筋を所定長さまで差し込んで保持するガイド部と、を備え、
前記基部は、前記ガイド部を前記基部の上面から垂直方向に回動自在に固定するヒンジ部と、前記ガイド部を垂直状態に支持する支持部と、を有し、
前記支持部は、前記ガイド部の外側面を吸着固定する吸着部を有することを特徴とするものである。

【0008】

また、上述した構成に加え、ガイド部は、鉄筋を差し込んで保持する外筒と、鉄筋の下端部に当接して所定深さまで差し込むようにする内筒と、からなることが好ましい。

【0009】

また、上述した構成に加え、ガイド部は、外筒を延長する延長部を有することが好ましい。

【0010】

また、上述した構成に加え、基部は、垂直に露出した鉄筋に固定する固定部を有することが好ましい。

【発明の効果】

【0011】

本発明によれば、作業現場において横倒し状態の鉄筋を垂直方向に露出した鉄筋の上端部近傍の所定高さの位置で立て起こすことができ、鉄筋の上端部に他の鉄筋の下端部を圧接する作業の作業効率を向上させることが可能である。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】本発明の鉄筋起こし治具の実施形態の一例を示す正面図である。

【図2】図１の平面図である。

【図3】図１のガイド部の内部構造を示す縦断面図である。

【図4】図１のガイド部に延長部を設けたものを示す正面図である。

【図5】図１の鉄筋起こし治具を用いて横倒しされた鉄筋を差し込んで保持した状態を示す概略図である。

【図6】図５の横倒し状態から鉄筋を所定高さの位置で立て起こした状態を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

（実施形態）
本発明の鉄筋起こし治具の実施形態の一例について図１－６に基づいて詳細に説明する。

【0014】

鉄筋起こし治具１は、作業面に設置する基部１０と、基部１０に対して回動自在に固定され、鉄筋２を所定長さまで差し込むガイド部２０と、を主要部として構成されるものである。

【0015】

基部１０は、ガイド部２０を基部１０の上面から垂直方向に回動自在に固定するヒンジ部１１と、ガイド部２０を垂直状態に支持する支持部１２と、を有する。

【0016】

また、この基部１０は、垂直に露出する鉄筋２の下方近傍の作業面に設置する略平板の板状体であり、板状体の側縁付近に設けられ、垂直に露出した鉄筋２に固定する固定部１３と、を有する。

【0017】

固定部１３は、図１に示すように、基部１０の上面に対して垂設された断面略Ｕ字状のレール材１３ａと、レール材１３ａに固定され、垂直に露出する鉄筋２の下方に対して着脱自在に締め付け固定しうるクランプ１３ｂと、を有する。

【0018】

ガイド部２０は、図３に示すように、鉄筋２を差し込んで保持する外筒２１と、横倒し状態の鉄筋２の下端部２ｂに当接して所定深さｄまで差し込むようにする内筒２２と、からなるものである。この内筒２２は、外筒２１に内挿され、外筒２１の内側面に対して内筒２２の一部の外側面を溶接などで固定させることで、鉄筋２の下端部２ｂに内筒２２の上端部に当接させることができ、鉄筋２が所定深さｄより深く差し込まれないようにする。

【0019】

支持部１２は、図１、図２に示すように、ガイド部２０の外筒２１の外側面を吸着固定する吸着部１２ｂを有する。この支持部１２は、より具体的には、基部１０の上面に対して垂設された断面略Ｌ字状のアングル材１２ａからなり、ガイド部２０の垂直より状態を支持するため、少なくともアングル材１２ａの２つの面が外筒２１の外側面に対して当接するように配置され、また、吸着部１２ｂは、ガイド部２０における金属製の外筒２１を磁着する高強度の磁石にすることが好適である。

【0020】

また、このガイド部２０は、図５に示すように、後述する垂直に露出した鉄筋２の上端部２ａまでの所定高さｈが異なる場合にも使用可能とするために、外筒２１を延長する延長部２３を有してもよい。

【0021】

延長部２３は、ガイド部２０と同様に、外筒２１及び内筒２２の二重の筒体であり、外筒２１の差込口２１ａに対して嵌合固定する嵌合部２３ａを有する。

【0022】

嵌合部２３ａは、外筒２１の外側面に下方に突出するように溶接固定された２つのアングル材からなることで、外筒２１の差込口２１ａの周囲を嵌合固定することができる。

【0023】

次に、上述した鉄筋起こし治具１を用いて、作業者が柱部分を構成する鉄筋２の上端部２ａの所定高さｈの位置の近傍に、他の鉄筋２の下端部２ｂを立て起こす方法について図５、６に基づいて説明する。なお、作業面から垂直に露出する鉄筋２の上端部２ａの所定高さｈは、約８００ｍｍ、１３００ｍｍなどである。また、ガイド部２０に鉄筋２を差し込みうる所定深さｄは、約２００ｍｍから３００ｍｍ程度とする。

【0024】

まず、鉄筋起こし治具１は、図５に示すように、基部１０を垂直に露出した鉄筋２の近くの作業面に設置されるとともに、基部１０の固定部１３を垂直に露出した鉄筋２の下方に対して固定することで安定性を高める。

【0025】

そして、図６に示すように、横倒し状態の鉄筋２をガイド部２０の外筒２１に対して所定深さｄまで差し込んだ後、ガイド部２０の先端及び基部１０に固定されたヒンジ部１１を介してガイド部２０を垂直方向に回動させて立て起こす。

【0026】

このとき、基部１０の上面から垂直方向に立て起こされたガイド部２０の外筒２１の側面が支持部１２に対して当接して支持されるとともに、支持部１２の吸着部１２ｂによって吸着させることで、鉄筋２が所定深さｄまで差し込まれた状態のガイド部２０を垂直状態に保持させる。

【0027】

したがって、上述した鉄筋起こし治具１によって、作業面に横倒しされた鉄筋２の下端部２ｂを垂直方向に露出した鉄筋２の上端部２ａ近傍の所定高さｈの位置で立て起こすことができ、作業者が鉄筋２を担ぎ上げることがなく負担を軽減し、垂直方向に露出した鉄筋２の上端部２ａまで運ぶことで、圧接作業を行うことで作業効率を向上させることが可能である。

【0028】

また、上述した鉄筋起こし治具１によって、外筒２１の長さが基礎工事における柱部分の垂直に露出した鉄筋の長さの目安となり、加工工場にて所定の加工長さで切断加工をしたものをそのまま利用することで、作業現場等にて新たに切断する必要がなくなり、圧接作業の手間が軽減されより一層作業効率を向上させることが可能である。

【0029】

上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、固定部１３のクランプ１３ｂを複数個設けてもよい。

【符号の説明】

【0030】

１ 鉄筋起こし治具
１０ 基部、１１ ヒンジ部、１２ 支持部、１２ａ アングル材、１２ｂ 吸着部、
１３ 固定部、１３ａ レール材、１３ｂ クランプ、
２０ ガイド部、２１ 外筒、２１ａ 差込口、２２ 内筒、２３ 延長部、
２３ａ 嵌合部、
２ 鉄筋、２ａ 上端部、２ｂ 下端部、
ｈ 所定高さ、ｄ 所定深さ

【要約】

【課題】 作業現場において横倒し状態の鉄筋を垂直方向に露出した鉄筋の上端部近傍の所定高さの位置で立て起こすことができ、鉄筋の上端部に他の鉄筋の下端部を圧接する作業の作業効率を向上させることが可能な鉄筋起こし治具を提供する。
【解決手段】 作業面に設置する基部１０と、基部１０に対して回動自在に固定され、鉄筋２を所定深さｄまで差し込んで保持するガイド部２０と、を備えてなる。基部１０は、ガイド部２０を基部１０の上面から垂直方向に回動自在に固定するヒンジ部１１と、ガイド部２０を垂直状態に支持する支持部１２と、を有する
【選択図】 図１

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】