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特許7108353後設置型掃雪装置及び後設置型積雪抑制装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】後設置型掃雪装置及び後設置型積雪抑制装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/16 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
E04H9/16 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022077523
(22)【出願日】2022-05-10
【審査請求日】2022-05-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506275117
【氏名又は名称】原澤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原澤 直樹
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-274112(JP,A)
【文献】特開2015-017377(JP,A)
【文献】特開昭62-082161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
E04D 13/00,15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥側上方から手前側下方に向かって下り勾配となる、建造物又は設置物の屋根の斜面に対し後付けで設けられる後設置型掃雪装置であって、
前記屋根の前記斜面の左縁に、当該斜面に沿って上下動可能に設けられる左スライダーと、
前記屋根の前記斜面の右縁に、当該斜面に沿って上下動可能に設けられる右スライダーと、
前記左スライダーを上下動させる左スライダー駆動手段と、
前記右スライダーを上下動させる右スライダー駆動手段と、
前記左スライダーと前記右スライダーとの間で環状に架け渡された掃雪用線材体と、
前記掃雪用線材体を循環駆動する線材体駆動手段と、
前記左スライダー駆動手段、前記右スライダー駆動手段、前記線材体駆動手段を制御する制御手段と、
前記線材体の循環駆動の挙動に基づき前記屋根の前記斜面上の圧雪の存在を検知する検知手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記掃雪用線材体を循環駆動しつつ、前記左スライダー及び前記右スライダーを上方から下方へ若しくは下方から上方へと駆動することで、前記斜面の外部露出領域の全面に対して順次掃雪を行う第1制御処理と、
前記第1制御処理の実行中において前記検知手段により前記圧雪の存在が検知された場合に、前記左スライダー及び前記右スライダーの駆動を停止するとともに、前記掃雪用線材体の右回り循環駆動と左回り循環駆動とを交互に繰り返す第2制御処理と、
を実行することを特徴とする後設置型掃雪装置。
【請求項2】
請求項1記載の後設置型掃雪装置において、
前記制御手段は、
前記第1制御処理において、前記掃雪用線材体の右回り循環駆動と左回り循環駆動とを交互に繰り返す
ことを特徴とする後設置型掃雪装置。
【請求項3】
請求項2記載の後設置型掃雪装置において、
前記検知手段は、
前記線材体の張力が所定の第1閾値以上となったこと検出する張力検出手段を含む
ことを特徴とする後設置型掃雪装置。
【請求項4】
請求項3記載の後設置型掃雪装置において、
前記線材体は、
当該線材体の張力が前記第1閾値よりも大きな所定の第2閾値となったときに自発破断させるための脆弱部を備える
ことを特徴とする後設置型掃雪装置。
【請求項5】
奥側上方から手前側下方に向かって下り勾配となる、建造物又は設置物の屋根の斜面に対し後付けで設けられる後設置型積雪抑制装置であって、
前記屋根の前記斜面の左縁に、当該斜面に沿って上下動可能に設けられる左スライダーと、
前記屋根の前記斜面の右縁に、当該斜面に沿って上下動可能に設けられる右スライダーと、
前記左スライダーを上下動させる左スライダー駆動手段と、
前記右スライダーを上下動させる右スライダー駆動手段と、
前記左スライダーと前記右スライダーとの間で環状に架け渡された掃雪用線材体と、
前記掃雪用線材体を循環駆動する線材体駆動手段と、
前記左スライダー駆動手段、前記右スライダー駆動手段、前記線材体駆動手段を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記掃雪用線材体を循環駆動しつつ、前記左スライダー及び前記右スライダーを上方から下方へと駆動する第3制御処理と、
前記掃雪用線材体を循環駆動しつつ、前記左スライダー及び前記右スライダーを下方から上方へと駆動する第4制御処理と、
を交互に実行することにより、当該斜面の外部露出領域の全面に対する積雪を抑制する
ことを特徴とする後設置型積雪抑制装置。
【請求項6】
請求項5記載の後設置型積雪抑制装置において、
前記制御手段は、
前記第3制御処理及び前記第4制御処理のセットを間欠的に繰り返すか、
若しくは、
前記第3制御処理の後の前記第4制御処理への移行、及び、前記第4制御処理の後の前記第3制御処理への移行、を間欠的に行う
ことを特徴とする後設置型積雪抑制装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6記載の後設置型積雪抑制装置において、
前記制御手段は、
外部から天気予報情報を取得する情報取得手段を備え、
かつ、
前記情報取得手段による前記天気予報情報の取得結果に基づき、
前記屋根の前記斜面に対する降雪開始予想時刻、若しくは、前記降雪開始予想時刻から第1所定時間だけ前の第1タイミング、若しくは、前記屋根の前記斜面に対する降雪開始予想時刻から第2所定時間だけ後の、積雪が生じる前の第2タイミングにおいて、前記第3制御処理又は前記第4制御処理を開始する
ことを特徴とする後設置型積雪抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物又は設置物の屋根の斜面に設けられる後設置型掃雪装置及び後設置型積雪抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物又は設置物の屋根の斜面に設けられる掃雪装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術の掃雪装置は、ワイヤロープの上端を管状体内の滑子に接続しつつ、その下方側を屋根の斜面に沿って上下方向に垂らし、作用者がワイヤロープの下端を把持して手動で左・右に振ることにより、除雪を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-80263号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の掃雪装置のような上下方向に這わせたワイヤロープを左右に振る方式では、屋根の斜面上を十分に除雪できないおそれがある。特に屋根上に圧雪が生じている場合にはワイヤロープを人力で左右に振ったところでびくともしないおそれがある。また、この方式では、積雪後の対策にのみ主眼が置かれており、降雪開始の際に屋根への積雪を抑制することについては、全く配慮されていない。以上の結果、この従来技術では、積雪重量により屋根の破損等を招くおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、屋根の斜面上における十分な除雪又は積雪抑制を行うことで、屋根の破損等が生じるのを防止することができる後設置型掃雪装置及び後設置型積雪抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の本願発明は、奥側上方から手前側下方に向かって下り勾配となる、建造物又は設置物の屋根の斜面に対し後付けで設けられる後設置型掃雪装置であって、前記屋根の前記斜面の左縁に、当該斜面に沿って上下動可能に設けられる左スライダーと、前記屋根の前記斜面の右縁に、当該斜面に沿って上下動可能に設けられる右スライダーと、前記左スライダーを上下動させる左スライダー駆動手段と、前記右スライダーを上下動させる右スライダー駆動手段と、前記左スライダーと前記右スライダーとの間で環状に架け渡された掃雪用線材体と、前記掃雪用線材体を循環駆動する線材体駆動手段と、前記左スライダー駆動手段、前記右スライダー駆動手段、前記線材体駆動手段を制御する制御手段と、前記線材体の循環駆動の挙動に基づき前記屋根の前記斜面上の圧雪の存在を検知する検知手段と、を有し、前記制御手段は、前記掃雪用線材体を循環駆動しつつ、前記左スライダー及び前記右スライダーを上方から下方へ若しくは下方から上方へと駆動することで、前記斜面の外部露出領域の全面に対して順次掃雪を行う第1制御処理と、前記第1制御処理の実行中において前記検知手段により前記圧雪の存在が検知された場合に、前記左スライダー及び前記右スライダーの駆動を停止するとともに、前記掃雪用線材体の右回り循環駆動と左回り循環駆動とを交互に繰り返す第2制御処理と、を実行することを特徴とする。
【0007】
第1の本願発明の後設置型掃雪装置では、第1制御処理が実行されると、左・右スライダーに水平に架け渡した掃雪用線材体が循環駆動されつつ、屋根の斜面に沿って下降(又は上昇)する動作が行われるため、上下に垂らしたワイヤロープを左右に振る従来技術の方式と異なり、雪の自重を利用して屋根の斜面を円滑かつ十分に除雪することができる。また、左・右スライダーの下降・上昇と掃雪用線材体の循環駆動との組み合わせ動作によって、屋根の斜面の露出部分を満遍なく除雪することができる。
【0008】
また、第1の本願発明の後設置型掃雪装置では、屋根の斜面上に圧雪が生じた場合には第2制御処理が実行される。この第2制御処理が実行されると、掃雪用線材体の下降(又は上昇)をいったん止めた状態で、掃雪用線材体の循環駆動のみが行われ、しかもその際に右回り循環駆動と左回り循環駆動が交互に行われるため、圧雪を糸鋸のように切断し、除雪することができる。
【0009】
以上のように、第1の本願発明の後設置型掃雪装置によれば、屋根の斜面上における十分な除雪ができ、雪の重さによる屋根の破損等が生じるのを防止することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、第5の本願発明は、奥側上方から手前側下方に向かって下り勾配となる、建造物又は設置物の屋根の斜面に対し後付けで設けられる後設置型積雪抑制装置であって、前記屋根の前記斜面の左縁に、当該斜面に沿って上下動可能に設けられる左スライダーと、前記屋根の前記斜面の右縁に、当該斜面に沿って上下動可能に設けられる右スライダーと、前記左スライダーを上下動させる左スライダー駆動手段と、前記右スライダーを上下動させる右スライダー駆動手段と、前記左スライダーと前記右スライダーとの間で環状に架け渡された掃雪用線材体と、前記掃雪用線材体を循環駆動する線材体駆動手段と、前記左スライダー駆動手段、前記右スライダー駆動手段、前記線材体駆動手段を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記掃雪用線材体を循環駆動しつつ、前記左スライダー及び前記右スライダーを上方から下方へと駆動する第3制御処理と、前記掃雪用線材体を循環駆動しつつ、前記左スライダー及び前記右スライダーを下方から上方へと駆動する第4制御処理と、を交互に実行することにより、当該斜面の外部露出領域の全面に対する積雪を抑制することを特徴とする。
【0011】
第2の本願発明の後設置型積雪抑制装置では、第3制御処理が実行されると、左・右スライダーに水平に架け渡した掃雪用線材体が循環駆動されつつ、屋根の斜面に沿って下降する動作が行われる。また、第4制御処理が実行されると、左・右スライダーに水平に架け渡した掃雪用線材体が循環駆動されつつ、屋根の斜面に沿って上昇する動作が行われる。このような掃雪用線材体の循環駆動を伴う左・右スライダーの下降と上昇とを交互に実行することによって、屋根の斜面の外部露出領域を満遍なくカバーして、外部露出領域のいずれにおいても雪が積もる前に掃き出すことができ、積雪を抑制することができる。
【0012】
以上のように、第2の本願発明の後設置型積雪抑制装置によれば、屋根の斜面上における十分な積雪抑制ができ、雪の重さによる屋根の破損等が生じるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、屋根の斜面上における十分な除雪又は積雪抑制を行うことで、屋根の破損等が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態による後設置型掃雪装置(第2実施形態による後設置型積雪抑制装置)の全体構成を示す斜視図である。
図2図1のA部の拡大図であって、(a)掃雪用線材体の一部を小径にした場合、(b)掃雪用線材体の一部を強度の弱い材料にした場合、である。
図3】本発明の第1実施形態による後設置型掃雪装置(第2実施形態による後設置型積雪抑制装置)の右スライダー側の構造を示す図である。
図4図2のB-B矢視図である。
図5】本発明の第1実施形態による後設置型掃雪装置(第2実施形態による後設置型積雪抑制装置)の左スライダー側の構造を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態による後設置型掃雪装置の制御構成を示す機能ブロック図である。
図7】本発明の第1実施形態による後設置型掃雪装置の制御を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2実施形態による後設置型積雪抑制装置の制御構成を示す機能ブロック図である。
図9】本発明の第2実施形態による後設置型積雪抑制装置の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば下記の各構成要素を均等なものに置換した実施形態を採用することができ、それらについても本発明の技術的範囲に含まれる。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするため、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略又は簡略化する。
【0016】
(1)第1実施形態
<構成>
第1実施形態による後設置型掃雪装置1を説明する図を図1図6に示す。なお、以下の説明において、後設置型掃雪装置1に関する手前・奥・左・右・上・下などの方向は、各図中に示される矢印の方向に対応している。
【0017】
後設置型掃雪装置1は、奥側上方から手前側下方に向かって下り勾配となる建造物100の屋根101の斜面102に対し後付けで設けられており、屋根101に積もった雪を取り除くための掃雪装置である。後設置型掃雪装置1は、左スライダー10と、右スライダー20と、左スライダー駆動手段30と、右スライダー駆動手段40と、掃雪用線材体50と、線材体駆動手段60と、制御手段70と、検知手段80と、を有している。
【0018】
左スライダー10は、屋根101の斜面102の左縁に、斜面102に沿って上下動(図1,5の矢印U,D参照)可能に設けられた部材である。
【0019】
左スライダー駆動手段30は、左スライダー10を上下動させる機構である。左スライダー駆動手段30は、左モータ31と、ギヤ機構32と、ボールネジ機構33と、を有している。
【0020】
左モータ31は、ギヤ機構32を介してボールネジ機構33を駆動するモータであり、斜面102の上部に設けられている。ギヤ機構32は、左モータ31とボールネジ機構33とを連結する機構であり、左モータ31の近傍に設けられている。ギヤ機構32は、左モータ31の回転をボールネジ機構33に伝達するギア(図示せず)と、ボールネジ機構33への連結及び非連結の切り替えを行う左クラッチ38(図6参照)と、を有している。左クラッチ38は、ソレノイド39(図6参照)によってON/OFFする電磁クラッチなどの公知のクラッチ機構からなる。ボールネジ機構33は、斜面102の上部から下部にわたって設けられる全ネジ34と、左スライダー10に固定されており全ネジ34に噛みあう内ネジ35と、を有している。
【0021】
また、左スライダー10及び左スライダー駆動手段30は、略箱形状の左ハウジング2によって覆われている。左ハウジング2の右側壁の下部には、斜面102の上部から下部にわたる細長い穴3が形成されている。
【0022】
右スライダー20は、屋根101の斜面102の右縁に、斜面102に沿って上下動(図1,3,4の矢印U,D参照)可能に設けられた部材である。
【0023】
右スライダー駆動手段40は、右スライダー20を上下動させる機構である。右スライダー駆動手段40は、右モータ41と、外側ギヤ機構42と、外側ボールネジ機構43と、を有している。
【0024】
右モータ41は、外側ギヤ機構42を介して外側ボールネジ機構43を駆動するモータであり、斜面102の上部に設けられている。外側ギヤ機構42は、右モータ41と外側ボールネジ機構43とを連結する機構であり、右モータ41の近傍に設けられている。外側ギヤ機構42は、右モータ41の回転を外側ボールネジ機構43に伝達するギア(図示せず)と、外側ボールネジ機構43への連結及び非連結の切り替えを行う右クラッチ48(図6参照)と、を有している。右クラッチ48は、ソレノイド49(図6参照)によってON/OFFする電磁クラッチなどの公知のクラッチ機構からなる。外側ボールネジ機構43は、斜面102の上部から下部にわたって設けられる外側全ネジ44と、右スライダー20に固定されており外側全ネジ44に噛みあう外側内ネジ45と、を有している。
【0025】
また、右スライダー20及び右スライダー駆動手段40は、略箱形状の右ハウジング4によって覆われている。右ハウジング4の左側壁の下部には、斜面102の上部から下部にわたる細長い穴5が形成されている。
【0026】
掃雪用線材体50は、左スライダー10と右スライダー20との間で環状に架け渡される部材である。掃雪用線材体50は、ワイヤーやチェーンなどからなる。掃雪用線材体50は、掃雪用線材体50の張力が所定の第2閾値(後述の第1閾値よりも大きい値)となったときに自発破断させるための脆弱部51を有している。脆弱部51は、掃雪用線材体50の一部を小径にすることによって構成してもよいし(図2(a)参照)、掃雪用線材体50の一部を強度の弱い材料にすることによって構成してもよい(図2(b)参照)。
【0027】
掃雪用線材体50は、線材体駆動手段60によって循環駆動される。ここで、循環駆動とは、例えば、右回りだけに循環駆動したり(右回り循環駆動、図1,3,5の矢印R参照)、左回りだけに循環したり(左回り循環駆動、図1,3,5の矢印L参照)、右回り循環駆動と左回り循環駆動とを周期的に切り替えする駆動である。線材体駆動手段60は、右モータ41と、内側ギヤ機構62と、内側ボールネジ機構63と、右回転体66と、左回転体67と、を有している。
【0028】
右モータ41は、外側ボールネジ機構43を駆動するモータと共通のモータであり、内側ギヤ機構62を介して内側ボールネジ機構63を駆動する。内側ギヤ機構42は、右モータ41と内側ボールネジ機構63とを連結する機構であり、右モータ41の近傍に設けられている。内側ギヤ機構62は、右モータ41の回転を内側ボールネジ機構63に伝達するギア(図示せず)を有している。内側ボールネジ機構63は、外側ボールネジ機構43の左側に並んで配置されており、斜面102の上部から下部にわたって設けられる内側全ネジ64と、右スライダー20に回転自在に支持されており内側全ネジ64に噛みあうウォームギヤ65と、を有している。右回転体66は、ウォームギヤ65に一体回転するように連結されたスプロケットなどからなる部材である。左回転体67は、左スライダー10に回転自在に支持されたスプロケットなどからなる部材である。
【0029】
また、線材体駆動手段60のうち左回転体67以外の構成は、右ハウジング4によって覆われており、左回転体67は、左ハウジング2によって覆われている。そして、掃雪用線材体50は、右回転体66と左回転体67との間で環状に架け渡されており、穴3,5を通じて左ハウジング2と右ハウジング4との間を循環するようになっている。
【0030】
検知手段80は、掃雪用線材体50の循環駆動の挙動に基づき屋根101の斜面102上の圧雪の存在を検知する手段である。検知手段80は、掃雪用線材体50をピンと張るテンショナ81と、掃雪用線材体50の張力が所定の第1閾値(前述の第2閾値よりも小さい値)以上となったこと検出する張力検出手段82と、を有しており、右スライダー20に設けられている。張力検出手段82は、テンショナ81に内蔵されたテンションセンサなどからなる。
【0031】
制御手段70は、左スライダー駆動手段30、右スライダー駆動手段40、線材体駆動手段60を制御する装置である。制御手段70は、各種のデータやプログラムを記憶するROM71及びRAM72と、演算や制御処理を行うCPU73と、を有している。CPU73には、左モータ駆動回路91、右モータ駆動回路92、左クラッチ駆動回路93、及び、右クラッチ駆動回路94が接続されるとともに、前述の張力検出手段82、及び、制御手段70(CPU73)に運転開始指示信号や運転終了指示信号を入力するための操作盤74が接続されている。なお、後述の各種制御処理は、CPU73によってソフトウェア的に実行されるが、ASIC(特定用途向けの集積回路)等によって実行されてもよい。
【0032】
左モータ駆動回路91は、左スライダー10側のボールネジ機構33を制御するための左モータ31を駆動する回路である。右モータ駆動回路92は、右スライダー20側のボールネジ機構43,63を制御するための右モータ31を駆動する回路である。左クラッチ駆動回路93は、ボールネジ機構33側の左クラッチ38を制御するためのソレノイド39をON/OFFする回路である。右クラッチ駆動回路94は、ボールネジ機構43側の右クラッチ48を制御するためのソレノイド49をON/OFFする回路である。
【0033】
制御手段70は、第1制御処理と第2制御処理とを実行する。
【0034】
第1制御処理は、掃雪用線材体50を循環駆動しつつ、左スライダー10及び右スライダー20を上方から下方へ若しくは下方から上方へと駆動することで、斜面102の外部露出領域(ハウジング2,4内を除く全領域)の全面に対して順次掃雪を行う処理である。第1制御処理においては、掃雪用線材体50の右回り循環駆動と左回り循環駆動とを交互に繰り返される。
【0035】
ここで、掃雪用線材体50の循環駆動は、制御手段70(CPU73)が右モータ駆動回路92を通じて右モータ41を制御することによって実行される。具体的には、右モータ41の回転が、内側ギヤ機構62を介して内側ボールネジ機構63の内側全ネジ64に伝達される。内側全ネジ64に伝達された回転は、ウォームギヤ65を介して右回転体66に伝達される。右回転体66に伝達された回転によって、右スライダー20側の右回転体66及び左スライダー側の左回転体67間で環状に架け渡された掃雪用線材体50が循環駆動する。掃雪用線材体50の右回り循環駆動及び左回り循環駆動は、内側全ネジ64の回転方向を正方向及び逆方向に切り替えることによって行われる。
【0036】
また、左スライダー10及び右スライダー20の上下駆動は、制御手段70(CPU73)が、左クラッチ駆動回路93及び右クラッチ駆動回路94を通じて左クラッチ38及び右クラッチ48をONにすることでボールネジ機構33及びボールネジ機構43に左モータ31及び右モータ41の回転が伝達可能な状態にするとともに、左モータ駆動回路91及び右モータ駆動回路92を通じて左モータ31及び右モータ41を同期的に制御することによって実行される。具体的には、左モータ31の回転が、左クラッチ38がON状態になっているギヤ機構32を介してボールネジ機構33の全ネジ34に伝達される。全ネジ34に伝達された回転は、内ネジ35を介して左スライダー10に伝達され、左スライダー10が全ネジ34の回転方向に応じて上方向又は下方向に駆動する。また、右モータ41の回転が、右クラッチ48がON状態になっている外側ギヤ機構42を介して外側ボールネジ機構43の外側全ネジ44に伝達される。外側全ネジ44に伝達された回転は、外側内ネジ45を介して右スライダー10に伝達され、右スライダー20が外側全ネジ44の回転方向に応じて上方向又は下方向に駆動する。
【0037】
第2制御処理は、第1制御処理の実行中において、検知手段80(張力検出手段82)により圧雪の存在が検知された場合に、左スライダー10及び右スライダー20の駆動を停止するとともに、掃雪用線材体50の右回り循環駆動と左回り循環駆動とを交互に繰り返す処理である。
【0038】
ここで、圧雪の存在の検知は、制御手段70(CPU73)が検知手段80(張力検出手段82)から取得する掃雪用線材体50の張力が第1閾値以上であるかどうかを判断することによって実行される。
【0039】
また、左スライダー10及び右スライダー20の駆動停止は、制御手段70(CPU73)が、左クラッチ駆動回路93及び右クラッチ駆動回路94を通じて左クラッチ38及び右クラッチ48をOFFにすることでボールネジ機構33及びボールネジ機構43に左モータ31及び右モータ41の回転が伝達不能な状態にすることによって実行される。具体的には、左クラッチ38がOFF状態になっているため、左モータ31の回転がギヤ機構32を介してボールネジ機構33の全ネジ34及び内ネジ35に伝達されなくなり、その結果、左スライダー10の駆動が停止する。また、右クラッチ48がOFF状態になっているため、右モータ41の回転が外側ギヤ機構42を介して外側ボールネジ機構43の外側全ネジ44及び外側内ネジ45に伝達されなくなり、その結果、右スライダー20の駆動が停止する。
【0040】
また、掃雪用線材体50の循環駆動は、制御手段70(CPU73)が右モータ駆動回路92を通じて右モータ41を制御することによって実行される。具体的には、右モータ41の回転が、内側ギヤ機構62を介して内側ボールネジ機構63の内側全ネジ64に伝達される。内側全ネジ64に伝達された回転は、ウォームギヤ65を介して右回転体66に伝達される。右回転体66に伝達された回転によって、右スライダー20側の右回転体66及び左スライダー側の左回転体67間で環状に架け渡された掃雪用線材体50が循環駆動する。掃雪用線材体50の右回り循環駆動及び左回り循環駆動は、内側全ネジ64の回転方向を正方向及び逆方向に切り替えることによって行われる。
【0041】
<動作>
上記の構成を有する第1実施形態の後設置型掃雪装置1では、以下のようにして、第1制御処理及び第2制御処理を行い、屋根101の斜面102上における除雪を行うことができる。第1実施形態による後設置型掃雪装置1の動作を説明するフローチャートを図7に示す。
【0042】
まず、ステップS5において、制御盤74から制御手段70に運転開始指示信号が入力されると、ステップS10の第1制御処理が開始される。
【0043】
そして、ステップS10の第1制御処理が開始されると、左スライダー10及び右スライダー20が上方から下方へ若しくは下方から上方へと駆動(図1及び図3図5の矢印U,D参照)しながら、掃雪用線材体50が循環駆動(図1及び図3図5の矢印L,R参照)することによって、斜面102の外部露出領域の全面に対して順次掃雪が行われる。第1制御処理は、ステップS20において、制御盤74から制御手段70に運転終了指示信号が入力されて、ステップS25において、運転が停止されるまで、継続される。
【0044】
第1制御処理中においては、ステップS15の圧雪の存在の有無を検知する処理が行われる。すなわち、張力検出手段82が検出した掃雪用線材体50の張力が第1閾値以上である場合には、圧雪が存在するものと判定し、掃雪用線材体50の張力が第1閾値未満である場合には、圧雪が存在しないものと判定する。
【0045】
そして、ステップS15において、圧雪が存在しないものと判定された場合には、ステップS10の第1制御処理が継続され、ステップS15において、圧雪が存在するものと判定された場合には、ステップS30の第2制御処理が開始される。
【0046】
ステップS30の第2制御処理が開始されると、左スライダー10及び右スライダー20の駆動を停止するとともに、掃雪用線材体50の右回り循環駆動(図1及び図3図5の矢印R参照)と左回り循環駆動(図1及び図3図5の矢印L参照)とを交互に繰り返すことによって、糸鋸で木材を切るようにギコギコと圧雪が切断される。第2制御処理は、ステップS30において、制御盤74から制御手段70に運転終了指示信号が入力されて、ステップS25において、運転が停止されるまで、継続される。
【0047】
<実施形態の効果>
以上説明したように、第1実施形態の後設置型掃雪装置1は、奥側上方から手前側下方に向かって下り勾配となる建造物100の屋根101の斜面102に対し後付けで設けられた掃雪装置であり、左スライダー10と、右スライダー20と、左スライダー駆動手段30と、右スライダー駆動手段40と、掃雪用線材体50と、線材体駆動手段60と、制御手段70と、検知手段80と、を有し、制御手段70が第1制御処理と第2制御処理とを実行することを特徴としている。
【0048】
このような構成を有する後設置型掃雪装置1では、第1制御処理が実行されると、左・右スライダー10,20に水平に架け渡した掃雪用線材体50が循環駆動されつつ、屋根101の斜面102に沿って下降(又は上昇)する動作が行われるため、上下に垂らしたワイヤロープを左右に振る従来技術の方式と異なり、雪の自重を利用して屋根101の斜面102を円滑かつ十分に除雪することができる。また、左・右スライダー10,20の下降・上昇と掃雪用線材体50の循環駆動との組み合わせ動作によって、屋根101の斜面102の露出部分を満遍なく除雪することができる。
【0049】
また、後設置型掃雪装置1では、屋根101の斜面102上に圧雪が生じた場合には第2制御処理が実行される。この第2制御処理が実行されると、掃雪用線材体50の下降(又は上昇)をいったん止めた状態で、掃雪用線材体50の循環駆動のみが行われ、しかもその際に右回り循環駆動と左回り循環駆動が交互に行われるため、圧雪を糸鋸のように切断し、除雪することができる。
【0050】
以上のように、後設置型掃雪装置1によれば、屋根101の斜面102上における十分な除雪ができ、雪の重さによる屋根101の破損等が生じるのを防止することができる。
【0051】
また、後設置型掃雪装置1は、いわゆるフレーム構造であるため、後設置型掃雪装置1を装着する前の屋根101の構造に大きな負担がかからないようになっている。またこれにより、既存の住宅の屋根101に後付けで設置が容易である。
【0052】
また、本実施形態では特に、制御手段70が、第1制御処理において、掃雪用線材体50の右回り循環駆動と左回り循環駆動とを交互に繰り返すことを特徴としている。このため、掃雪用線材体50が循環駆動されつつ左・右スライダー10,20が斜面102に沿って下降(又は上昇)する第1制御処理においても、さらに確実に除雪を行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では特に、検知手段80が、掃雪用線材体50の張力が所定の第1閾値以上となったこと検出する張力検出手段82を含むことを特徴としている。このため、掃雪用線材体50の張力を監視しておけば、雪塊からの抗力により掃雪用線材体50の張力が大きくなったことをもって、屋根101の斜面102に圧雪が生じていることを検知することができる。
【0054】
また、本実施形態では特に、掃雪用線材体50が、その張力が第1閾値よりも大きな所定の第2閾値となったときに自発破断させるための脆弱部51を有することを特徴としている。このため、切断不可能なあまりにも固い圧雪があった場合には、自衛的に線材体を切断することで、掃雪用線材体50以外の部分(特に左・右スライダー10,20)に破損や故障が及ばないようにすることができる。
【0055】
(2)第2実施形態
<構成>
第2実施形態による後設置型積雪抑制装置1を説明する図を図1図5及び図8に示す。後設置型積雪抑制装置1は、奥側上方から手前側下方に向かって下り勾配となる建造物100の屋根101の斜面102に対し後付けで設けられており、屋根101に雪が積もるのを抑制するための積雪抑制装置である。なお、後設置型積雪抑制装置1の構成は、制御手段70及びその周辺の構成と制御処理の内容を除き、第1実施形態による後設置型掃雪装置1の構成と同じであるため、以下では、制御手段70及びその周辺の構成と制御処理の内容のみを説明し、その他の構成については説明を省略する。
【0056】
制御手段70は、ROM71、RAM72及びCPU73を有するとともに、情報取得手段75をさらに有している。情報取得手段75は、外部との通信インターフェイスであり、本実施形態では、外部の気象情報提供サーバ67から通信ネットワーク66を経由して天気予報情報を取得する。
【0057】
制御手段70は、本実施形態において、第3制御処理と第4制御処理と、を交互に実行することにより、斜面102の外部露出領域の全面に対する積雪を抑制する。
【0058】
第3制御処理は、掃雪用線材体50を循環駆動しつつ、左スライダー10及び右スライダー20を上方から下方へと駆動する処理である。第4制御処理は、掃雪用線材体50を循環駆動しつつ、左スライダー10及び右スライダー20を下方から上方へと駆動する処理である。
【0059】
ここで、掃雪用線材体50の循環駆動は、制御手段70(CPU73)が右モータ駆動回路92を通じて右モータ41を制御することによって実行される。具体的には、右モータ41の回転が、内側ギヤ機構62を介して内側ボールネジ機構63の内側全ネジ64に伝達される。内側全ネジ64に伝達された回転は、ウォームギヤ65を介して右回転体66に伝達される。右回転体66に伝達された回転によって、右スライダー20側の右回転体66及び左スライダー側の左回転体67間で環状に架け渡された掃雪用線材体50が循環駆動する。掃雪用線材体50の右回り循環駆動及び左回り循環駆動は、内側全ネジ64の回転方向を正方向及び逆方向に切り替えることによって行われる。
【0060】
また、左スライダー10及び右スライダー20の上下駆動は、制御手段70(CPU73)が、左クラッチ駆動回路93及び右クラッチ駆動回路94を通じて左クラッチ38及び右クラッチ48をONにすることでボールネジ機構33及びボールネジ機構43に左モータ31及び右モータ41の回転が伝達可能な状態にするとともに、左モータ駆動回路91及び右モータ駆動回路92を通じて左モータ31及び右モータ41を同期的に制御することによって実行される。具体的には、左モータ31の回転が、左クラッチ38がON状態になっているギヤ機構32を介してボールネジ機構33の全ネジ34に伝達される。全ネジ34に伝達された回転は、内ネジ35を介して左スライダー10に伝達され、左スライダー10が全ネジ34の回転方向に応じて上方向又は下方向に駆動する。また、右モータ41の回転が、右クラッチ48がON状態になっている外側ギヤ機構42を介して外側ボールネジ機構43の外側全ネジ44に伝達される。外側全ネジ44に伝達された回転は、外側内ネジ45を介して右スライダー10に伝達され、右スライダー20が外側全ネジ44の回転方向に応じて上方向又は下方向に駆動する。
【0061】
<動作>
上記の構成を有する第2実施形態の後設置型積雪抑制装置1では、以下のようにして、第3制御処理と第4制御処理と、を交互に実行することにより、斜面102の外部露出領域の全面に対する積雪を抑制することができる。第2実施形態による後設置型積雪抑制装置1の動作を説明するフローチャートを図9に示す。
【0062】
まず、ステップS105において、外部の気象情報提供サーバ67から制御手段70(情報取得手段75)が降雪予想の天気予報情報を取得するとステップS110の処理に移行する。
【0063】
次に、ステップS110では、情報取得手段75による降雪予想に基づき、屋根101の斜面102に対する降雪開始予想時刻から第1所定時間(例えば、30分)だけ前の第1タイミングを決定する。そして、この第1タイミングにおいて、ステップS115~S135の第3制御処理又は第4制御処理を開始する。なお、ここでは、第3制御処理又は第4制御処理を開始するタイミングを第1タイミングとしているが、これに限定されるものではない。例えば、降雪開始予想時刻を第1タイミングとしてもよいし、降雪開始予想時刻から第2所定時間だけ後の積雪が生じる前の第2タイミングとしてもよい。
【0064】
ステップS115の第3制御処理が開始されると、左スライダー10及び右スライダー20が上方から下方へと駆動(図1及び図3図5の矢印D参照)しながら、掃雪用線材体50が循環駆動(図1及び図3図5の矢印L,R参照)することによって、降り始めた雪が積もることなく直ちに掃き下ろされる。
【0065】
次に、ステップS120において、斜面102の下部まで達した左・右スライダー10,20及び掃雪用線材体50の動作を一時停止し(例えば、1分間)、その後、ステップS125の第4制御処理を開始する。
【0066】
ステップS125の第4制御処理が開始されると、左スライダー10及び右スライダー20が下方から上方へと駆動(図1及び図3図5の矢印U参照)しながら、掃雪用線材体50が循環駆動(図1及び図3図5の矢印L,R参照)することによって、降り始めた雪が積もることなく直ちに掃き下ろされる。
【0067】
次に、ステップS130において、斜面102の上部まで達した左・右スライダー10,20及び掃雪用線材体50の動作を一時停止し(例えば、1分間)、その後、ステップS135において、制御盤74から制御手段70に運転終了指示信号が入力されて、ステップS140において、運転が停止されるまで、ステップS115の第3制御処理に戻る。すなわち、ステップS135及びS140の運転終了処理がなされるまで、第3制御処理及び第4制御処理が繰り返される。なお、ここでは、第3制御処理の後の第4制御処理への移行、及び、第4制御処理の後の第3制御処理への移行、がステップS120及びステップS130の一時停止を介して間欠的に行われる。なお、第3制御処理及び第4制御処理を繰り返す際の一時停止のタイミングは、これに限定されるものではなく、第3制御処理及び第4制御処理のセットを間欠的に繰り返すタイミングであってもよい。
【0068】
<実施形態の効果>
以上説明したように、第2実施形態の後設置型積雪抑制装置1は、奥側上方から手前側下方に向かって下り勾配となる建造物100の屋根101の斜面102に対し後付けで設けられた掃雪装置であり、左スライダー10と、右スライダー20と、左スライダー駆動手段30と、右スライダー駆動手段40と、掃雪用線材体50と、線材体駆動手段60と、制御手段70と、検知手段80と、を有し、制御手段70が第3制御処理と第4制御処理とを交互に実行することを特徴としている。
【0069】
このような構成を有する後設置型積雪抑制装置1では、第3制御処理が実行されると、左・右スライダー10,20に水平に架け渡した掃雪用線材体50が循環駆動されつつ、屋根101の斜面102に沿って下降する動作が行われる。また、第4制御処理が実行されると、左・右スライダー10,20に水平に架け渡した掃雪用線材体50が循環駆動されつつ、屋根101の斜面102に沿って上昇する動作が行われる。このような掃雪用線材体50の循環駆動を伴う左・右スライダー10,20の下降と上昇とを交互に実行することによって、屋根101の斜面102の外部露出領域を満遍なくカバーして、外部露出領域のいずれにおいても雪が積もる前に掃き出すことができ、積雪を抑制することができる。
【0070】
以上のように、後設置型積雪抑制装置1によれば、屋根101の斜面102上における十分な積雪抑制ができ、雪の重さによる屋根101の破損等が生じるのを防止することができる。
【0071】
また、後設置型積雪抑制装置1は、いわゆるフレーム構造であるため、後設置型積雪抑制装置1を装着する前の屋根101の構造に大きな負担がかからないようになっている。またこれにより、既存の住宅の屋根101に後付けで設置が容易である。
【0072】
また、本実施形態では特に、制御手段70が、第3制御処理及び第4制御処理のセットを間欠的に繰り返すか、若しくは、第3制御処理の後の第4制御処理への移行、及び、第3制御処理の後の第4制御処理への移行、を間欠的に行うことを特徴としている。この動作時には雪が降り積もった状態ではないため、連続動作とせず適宜の時隔をおいた間欠動作として必要以上の過剰な動作を回避し、動力費の低減、装置寿命・耐久性の低下防止、等を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態では特に、制御手段70が、外部から天気予報情報を取得する情報取得手段75を有し、かつ、情報取得手段75による天気予報情報の取得結果に基づき、屋根101の斜面102に対する降雪開始予想時刻、若しくは、降雪開始予想時刻から第1所定時間だけ前の第1タイミング、若しくは、屋根101の斜面102に対する降雪開始予想時刻から第2所定時間だけ後の、積雪が生じる前の第2タイミングにおいて、第3制御処理又は第4制御処理を開始することを特徴としている。このため、天気予報を活用し、雪が降りだすちょうどそのタイミングに合わせて、若しくは雪が降りだす直前に、若しくは雪が降りだした直後に、自動的に運転開始することで、効率的かつ効果的に積雪抑制を図ることができる。
【0074】
(3)変形例
<A>
第1実施形態の後設置型掃雪装置1において、第1及び第2制御処理時には雪が屋根101から落ちて危険なため、アラーム音を発するようにしてもよい。
【0075】
<B>
第1実施形態の後設置型掃雪装置1及び第2実施形態の後設置型積雪抑制装置1は、建造物100の屋根101に設置するものに限定されるものではなく、大型ソーラーパネルの天井斜面に設置するものであってもよい。
【0076】
<C>
第1実施形態の後設置型掃雪装置1及び第2実施形態の後設置型積雪抑制装置1は、操作盤74からの操作指示によって運転や停止されるものに限定されるものではなく、ネットワーク通信等を介したスマートフォンやタブレットのような通信端末からの遠隔操作指示によって運転や停止されるものであってもよい。例えば、降雪情報を受けて積雪抑制が必要と判断した通信端末がネットワーク経由で後設置型積雪抑制装置1の起動を指示してもよい。
【0077】
<D>
第1実施形態の後設置型掃雪装置1及び第2実施形態の後設置型積雪抑制装置1において、降雪又は積雪センサをさらに設置しておき、降雪又は積雪センサが降雪や積雪を検知した際に、自動的に運転できるように構成してもよい。
【0078】
<E>
第1実施形態の後設置型掃雪装置1においては、ステップS15において、検知手段80(張力検出手段82)によって検出される掃雪用線材体50の張力が第1閾値以上になった場合に、圧雪が存在するものと判定して、圧雪を切断除去するための第2制御処理を行うようにしている。しかし、掃雪用線材体50の張力がさらに大きくなり、第2閾値に達して掃雪用線材体50が切断されると、検知手段80(張力検出手段82)によって検出される掃雪用線材体50の張力がゼロになる。そこで、このような掃雪用線材体50の張力の変化を利用して、後設置型掃雪装置1の運転中に検知手段80(張力検出手段82)によって検出される掃雪用線材体50の張力がゼロになった場合には、掃雪用線材体50が切断されたものと判定して、運転を停止させてもよい。
【0079】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0080】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0081】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 後設置型掃雪装置、後設置型積雪抑制装置
10 左スライダー
20 右スライダー
30 左スライダー駆動手段
40 右スライダー駆動手段
50 掃雪用線材体
51 脆弱部
60 線材体駆動手段
70 制御手段
75 情報取得手段
80 検知手段
82 張力検出手段
100 建造物
101 屋根
102 斜面
【要約】
【課題】 屋根の斜面上における十分な除雪又は積雪抑制を行うことで、屋根の破損等が生じるのを防止する。
【解決手段】後設置型掃雪装置1は、屋根101の斜面102の左右縁に沿って設けられる左右スライダー10,20と、左右スライダー10,20を上下動させる左右スライダー駆動手段30,40と、左右スライダー30,40間で環状に架け渡された線材体50と、線材体50を循環駆動する線材体駆動手段60と、駆動手段30,40,60を制御する制御手段70と、斜面102上の圧雪の存在を検知する検知手段80と、を有し、制御手段70は、線材体50を循環駆動しつつ左右スライダー10,20を上下動させて掃雪を行う第1制御処理と、圧雪の存在が検知された場合に、左右スライダー10,20の駆動を停止するとともに、線材体50の右回り循環駆動と左回り循環駆動とを交互に繰り返す第2制御処理と、を実行する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9