(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/172 20210101AFI20220721BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20220721BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20220721BHJP
【FI】
H01M50/172
H01M50/10
H01M50/543
(21)【出願番号】P 2017014941
(22)【出願日】2017-01-31
【審査請求日】2019-11-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小出 和也
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】市川 篤
【審判官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-501424(JP,A)
【文献】特開2012-212506(JP,A)
【文献】特表2016-506602(JP,A)
【文献】特開2015-153655(JP,A)
【文献】特開2016-146270(JP,A)
【文献】特開2007-250405(JP,A)
【文献】特開2011-113929(JP,A)
【文献】特開2010-080753(JP,A)
【文献】特開2001-052663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/00-50/198
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とをセパレータを介して交互に積層した極板群の正極には平板状の正極端子を、負極には平板状の負極端子を夫々溶接し、これら極板群の上下をラミネートフィルムで覆い、覆ったラミネートフィルムの端部から正極端子と負極端子を外部へ導出させると共に、該覆ったラミネートフィルムの端部全周を互いに重ね合わせてヒートシールして構成される非水電解質二次電池において、 端子を導出する部分のヒートシール幅
L1を5mm以上とし
、正極及び負極の各未塗布部分と各端子との溶接部分からヒートシール部までの長さをL2とした時のL1/L2の値を1.0以下とし、前記長さL2は、それぞれ所定の幅を有する前記溶接部分と前記ヒートシール部が互いに向き合う最短距離により求めることを特徴とする非水電解質電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極とをセパレータを介して交互に積層した極板群の正極には平板状の正極端子を、負極には平板状の負極端子を夫々接続し、これら極板群の上下をラミネートフィルムで覆い、覆ったラミネートフィルムの端部から正極端子と負極端子を外部へ導出させると共に、該覆ったラミネートフィルムの端部全周を互いに重ね合わせてヒートシールして構成される非水電解質電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
正極と負極とをセパレータを介して交互に積層した極板群の正極に正極端子を、負極には負極端子をそれぞれ接続し、これら極板群をラミネートフィルムで覆い、正負端子を外部へ導出させてラミネートフィルムの端部全周をヒートシールした非水電解質電池は知られている(特許文献1)。
【0003】
この様な非水電解質電池には、ヒートシール時の熱による課題があり、例えば、ラミネートフィルムのヒートシール時に起こるラミネートフィルム内の金属箔と端子の短絡を防止する為に、金属箔の内面に形成されるシーラント層を改良してこれを防止することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-10042号公報
【文献】特開2002-343311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ラミネートフィルムのヒートシール時の課題は、ラミネートフィルム内の金属箔と端子の短絡だけではなく、ヒートシールにより、セパレータの穴あきや収縮により容量劣化や電池内短絡が生じることがあることを見出し、これらを解消しようとするものである。
【0006】
本発明者は、材質に拘ることなく、この課題を解決し得ないか鋭意検討した結果見出したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、正極と負極とをセパレータを介して交互に積層した極板群の正極には平板状の正極端子を、負極には平板状の負極端子を夫々溶接し、これら極板群の上下をラミネートフィルムで覆い、覆ったラミネートフィルムの端部から正極端子と負極端子を外部へ導出させると共に、該覆ったラミネートフィルムの端部全周を互いに重ね合わせてヒートシールして構成される非水電解質二次電池において、端子を導出する部分のヒートシール幅を5mm以上とし、更に、該端子の導出部分のヒートシール幅をL1、正極及び負極の各端子の溶接部分からヒートシール部までの長さをL2とした時のL1/L2の値を1.0以下とし、前記長さL2は、それぞれ所定の幅を有する前記溶接部分と前記ヒートシール部が互いに向き合う最短距離により求めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒートシールの幅と各端子の溶接部分からヒートシール部までの長さの関係を規定することで、ヒートシール時のセパレータの穴あきや収縮を防止し得たものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明実施形態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための断面図である。図面において、1は一実施形態の非水電解質二次電池であり、具体的にはリチウムイオン二次電池である。
【0012】
2は正極板で、リチウムコバルト酸化物(LixCoO
2
、但し、xは0≦x≦1)粉末90質量%、アセリレンブラック3質量%、グラファイト3質量%およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)4質量%で構成された粉体にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液を加えて混合して活物質スラリーを調整し、これを厚さ15μmのシート状のアルミニウム箔からなる集電体21にその長さ方向端部に筋状の未塗布部を形成して塗布し、100℃で2時間真空乾燥し、次いで、もう一方の面にも同様に端部に筋状の未塗布部を形成してスラリーを塗布し、同様に真空乾燥した。この際、表裏の未塗布部は同じ方向に位置するようにした。その後両面に活物質を塗布したシートをロールプレスして、各枚数に未塗布部があるように切り出し8枚の矩形状(塗布部寸法100mm×100mm)の正極板2を得た。正極板2の厚さは100μmで、充填密度は3.3g/cm3である。
【0013】
3は負極板で、平均粒径が20μmの人造黒鉛粉末97質量%、スチレンブタジエンラバー(SBR)2質量%およびカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量%で構成された粉体にイオン交換水を加えて混合して活物質スラリーを調整し、これを厚さ10μmのシート状の銅箔からなる集電体31の両面にその長さ方向端部に筋状の未塗布部を形成して塗布し、100℃で2時間真空乾燥した。表裏の未塗布部は同じ方向に位置するようにした。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスして、各枚数に未塗布部があるように切り出し9枚の矩形状(塗布部104mm×104mm)の負極板3を得た。負極の充填密度は1.4g/cm
3
である。
【0014】
これら正極板2と負極板3を108mm×108mmの大きさからなるポリプロピレン製の厚さ30μmの微孔性のセパレータ4を介して交互に積層した。最外側に位置する負極板3のさらに外側にもセパレータ4を配置した。(セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/・・・・・・/負極/セパレータ、と言う順番)正極板2と負極板3の未塗布部は互いに反対側に位置する様な向きに揃えた。積層した後、四隅を粘着テープ(図示せず)で止め、層間すれを起こさないようにした。
【0015】
次に、正極端子22となる厚さ0.25mm、幅7mm、長さ50mmのアルミニウム板を、8枚の正極板2の未塗布部分を重ね一括して超音波溶接により溶接した。同様に負極端子32となる厚さ0.25mm、幅7mm、長さ50mmのニッケルメッキ銅板を、9枚の負極板3の未塗布部分を重ね一括して超音波溶接により溶接した。なお、正極端子22および負極端子32は、超音波溶接に先立ち、外装体による封止予定部に予め厚さ50μmの電子線架橋ポリプロピレンおよび厚さ50μm、融点130℃~140℃の酸変成ポリプロピレンを重ね合わせてなるシーラント5を、酸変成ポリプロピレンが端子側に向けて両面を熱融着しておいた。シーラント5の大きさは、端子の幅方向に2mmずつ両側にはみ出すようにし、長さ方向は、ヒートシール長さより1mm大きくした。
【0016】
そして、積層してなる極板群を覆う外装体6としてラミネートフィルムを用いた。このラミネートフィルムは厚さ25μmのナイロンと厚さ40μmの軟質アルミニウム、厚さ40μmの融点160℃の酸変成ポリプロピレンの積層体からなるラミネートフィルムである。1つは、これを所定のサイズに切り出し、極板群が収納できるサイズのカップ状に深絞り成型した容器61とした。深絞りの大きさは、活物質未塗布部を含む極板群の縦横サイズと略等しい大きさになるようにし、深さは極板群の厚さと略等しくなるように成形した。成形後、深堀り部の周囲につば部62を形成し、つば部62の幅を所定の長さにトリミングした。このように成形したラミネートフィルムの容器61に極板群(電極積層体)を収納した。トリミングされたラミネートフィルムのつば部62の2箇所に、正負極端子22、32を対向する位置に設置した。端子に予め融着しておいたシーラント5がつば部61をまたいで外側にはみ出るようにした。
【0017】
次に、ラミネートフィルムを所定のサイズに切り出したものを蓋63として、上記の電極積層体を収納した容器61の上に設置した。この蓋63は、上記の電極積層体を収納した容器6の開口上面と同じ大きさとし、重ね合わせた。
【0018】
この様に、つば部61上に蓋63を重ね合わせた後、各極板の未塗布部分と各端子との溶接部分からある長さL2離れた部分を上下から加圧しながら熱を加えてシーラント5を含め所定幅(ヒートシール幅)L1をヒートシール(熱融着)して、容器61と蓋63からなる外装体6を備えたリチウムイオン二次電池を作製した。
【0019】
この時10mm幅のヒータを用いて熱融着のヒートシール幅L1を10mmとし、各極板の未塗布部分と各端子の溶接部分とヒートシール(熱融着)部との距離L2を種種変えて、L1とL2の比率(L1/L2)の値を変えた時のセパレータの穴あきや収縮等の不具合の有無を調べた結果、表1に示す通りであった。なお、溶接部分とヒートシール部の距離L2は、夫々所定の幅を有する溶接部分とヒートシール部が互いに向き合う最短距離により求めた。
【0020】
【0021】
次に、L1とL2の比率(L1/L2)の値を1として、ヒートシール幅L1を種種変えた時のセパレータの穴あきや収縮等の不具合の有無を調べた結果、表2に示す通りであった。熱融着時に用いたヒータの幅はヒートシール幅と同じものを使用した。
【0022】
【0023】
これら表からも明らかな如く、ヒートシール幅L1は5mm以上が必要で、各極板の未塗布部分と各端子の溶接部分と熱融着部との距離L2との比率(L1/L2)は1.0以下である必要である事が判った。この条件を満たす時、外装体の熱融着時にセパレータの穴あきや収縮等の不具合を解消でき、この事に起因する電池の容量劣化や電池内短絡が防止し得る。更に、ヒートシール幅5mmの場合において、L1/L2の値を変えた場合も表1に記載のヒートシール幅10mmの場合と同様の結果が得られた。なお、ヒートシール幅は、電解液の漏れ防止や強度などの他の理由からも5mm以上が好ましいことが知られている。また、上記実施例においては、正極端子と負極端子を対向する位置に設けた場合を示したが、同一方向に設けても良い。
【符号の説明】
【0024】
1 リチウムイオン二次電池
2 正極板
3 負極板
4 セパレータ
5 シーラント
6 外装体