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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】車識別システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220721BHJP
   G01S 13/87 20060101ALI20220721BHJP
   G01S 13/58 20060101ALI20220721BHJP
   G01S 13/42 20060101ALI20220721BHJP
   G01S 13/08 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01S13/87
G01S13/58 200
G01S13/42
G01S13/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020071569
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021168063
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2020-06-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、防衛装備庁、請負事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛装備庁長官
(73)【特許権者】
【識別番号】000232357
【氏名又は名称】株式会社YDKテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 嵩智
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 博司
(72)【発明者】
【氏名】松永 功
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-109759(JP,A)
【文献】特開平06-214019(JP,A)
【文献】特開2007-189436(JP,A)
【文献】特開2007-249911(JP,A)
【文献】特表2016-538560(JP,A)
【文献】特開2004-233277(JP,A)
【文献】特開2016-142526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G01S 13/87
G01S 13/58
G01S 13/42
G01S 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主車に搭載される基準装置と、
複数 の副車にそれぞれ搭載される複数の応答装置とを備え、
前記基準装置は、複数の前記副車に向けて所定の基準周波数の送信波を送信すると共に前記送信波に対する応答波に基づいて複数の前記副車を識別し、
前記応答装置は、自らの前記副車に固有に設定された識別周波数だけ前記基準周波数を周波数偏移させた前記応答波を前記主車に向けて送信し、
前記基準装置は、異なる2つの基準周波数の送信波を複数の前記副車に向けて送信し、当該2つの送信波に対する各々の前記応答波の位相差に基づいて複数の前記副車との距離を検出し、前記応答波のドップラーシフトに基づいて複数の前記副車の走行速度を検出することを特徴とする車識別システム。
【請求項2】
前記基準装置は、前記送信波を水平方向に送信するレーダを備え、当該レーダを用いて前記送信波を送信すると共に前記応答波を受信することにより前記副車の前記水平方向における方位を検出することを特徴とする請求項1に記載の車識別システム。
【請求項3】
前記基準装置は、所定の仰角範囲に走査状に前記送信波を送信し、当該送信波の前記応答波を受信することにより前記副車の仰角を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の車識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車識別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、飛行中の航空機の機体を識別すると共に飛行位置を捕捉する航空交通管制情報処理システムが開示されている。この航空交通管制情報処理システムは、航空路監視レーダ等の地上レーダから受信した電波を航空機のトランスポンダで処理することにより、航空機に固有に割り当てられた識別コード等を地上レーダに応答送信するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/koukuu_musen/pdf/070614_1_s2.pdf(SSRモードSシステムの概要及び運用状況:国土交通省航空局)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなレーダ波に応答するタイプのトランスポンダは、アンテナで受信した受信波を復調装置で中間周波数にダウンコンバートした後にデータ処理装置で受信データの解析を行い、識別信号生成装置で生成した固有識別信号を変調装置でアップコンバートしてアンテナから送信する応答装置であり、装置構成が比較的複雑である。したがって、このような応答装置を装備の設置容積が制限される車に搭載することは困難である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも簡単な構成の応答装置を用いた車識別システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、車識別システムに係る第1の解決手段として、主車に搭載される基準装置と、1あるいは複数の副車にそれぞれ搭載される1あるいは複数の応答装置とを備え、前記基準装置は、前記副車に向けて所定の基準周波数の送信波を送信すると共に前記送信波に対する応答波に基づいて前記副車を識別し、前記応答装置は、自らの前記副車に固有に設定された識別周波数だけ前記送信波を周波数偏移させた前記応答波を前記主車に向けて送信する、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、車識別システムに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記基準装置は、異なる複数の基準周波数の送信波を送信し、当該送信波に対する前記応答波に基づいて前記副車との距離を検出する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、車識別システムに係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記基準装置は、前記送信波を水平方向に送信するレーダを備え、当該レーダを用いて前記送信波を送信すると共に前記応答波を受信することにより前記副車の方位を検出する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、車識別システムに係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記基準装置は、所定の仰角範囲に走査状に前記送信波を送信し、当該送信波の前記応答波を受信することにより前記副車の仰角を検出する、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、車識別システムに係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記基準装置は、前記応答波のドップラーシフトに基づいて前記副車の走行速度を検出する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりも簡単な構成のトランスポンダを用いた車識別システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る車識別システムのシステム構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態における基準装置及び応答装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る車識別システムのスキャン動作を示す第1及び第2の模式図である。
図4】本発明の一実施形態における応答波の周波数特性を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る車識別システムは、図1に示すように主車Mに搭載される基準装置mと、4台の副車R1~R4にそれぞれ搭載される4つの応答装置r1~r4とを備えている。なお、図1では4台の副車R1~R4を示しているが、これは便宜的なものであり、副車R1~R4の台数つまり応答装置r1~r4の個数は特に限定されず、1あるいは複数である。
【0014】
主車M及び副車R1~R4は、隊列を組んで走行する走行車両である。基準装置mは、副車R1~R4に向けて所定周波数fの電波を送信波I(f)として送信すると共に当該送信波I(f)に対する応答波A(f)に基づいて副車R1~R4を個別に識別する通信装置である。ここで、上記周波数fは基準装置mが用いる基準周波数である。また「n」は自然数であり、副車R1~R4を総称する場合の添え字である。
【0015】
この基準装置mは、図2(a)に示すように、レーダ1、方位検出装置2、演算装置3及び表示装置4を備えている。レーダ1は、上記送信波I(f)を生成して所定方向に走査状に順次放射すると共に所定方向から進入する応答波A(f)を順次受信する。このレーダ1は、応答波A(f)の周波数fをレーダ検出信号として演算装置3に出力する。なお、上記送信波I(f)の周波数帯域は、例えばマイクロ波帯である。
【0016】
ここで、上記送信波I(f)は、主に副車R1~R4を識別するためのものである。本実施形態の基準装置mは、送信波I(f)に加えて、副車R1~R4との距離を検出するために、異なる複数の基準周波数f01、f02(距離基準周波数)を有する2つの送信波I(f01)、I(f02)を生成する。
【0017】
このレーダ1における送信波I(f)の放射方向つまり送信波I(f)の走査範囲は、水平範囲については主車Mを中心とした360°の範囲、また垂直範囲(仰角範囲)については水平方向を中心にΔG(例えば60°)の範囲である。なお、送信波I(f)の水平方向における放射方向は、例えば図3(a)に示すように主車Mの走行方向を基準角とし、当該基準角に対する偏差角度(水平角θ)によって表される。
【0018】
方位検出装置2は、主車Mを基準とする副車R1~R4の現在位置を方位として検出する装置であり、例えばレーダ1の回転軸に設けられたロータリーエンコーダである。この方位検出装置2は、副車R1~R4の現在位置(方位)を位置検出信号として演算装置3に出力する。なお、主車Mの現在位置を自立的に検出する場合は、GPS(Global Positioning System)等の衛星測距システムに基づいて現在位置を検出してもよい。
【0019】
演算装置3は、上記レーダ検出信号及び位置検出信号に基づいて、副車R1~R4を個別に識別すると共に副車R1~R4の方位、走行速度及び仰角並びに副車R1~R4との距離を演算する。この演算装置3は、演算結果として、副車R1~R4毎の車番、速度(走行速度)、距離、方位(位置)及び仰角を表示装置4に出力する。表示装置4は、このような演算装置3の演算結果を画像として表示する。
【0020】
一方、応答装置r1~r4は、自らの副車R1~R4に固有に設定された識別周波数f~fだけ上記送信波を周波数偏移させた電波を上記応答波として主車Mに向けて送信する通信装置である。
【0021】
より具体的には、応答装置r1は、基準装置mから基準周波数fの送信波I(f)を受信すると、識別周波数fだけ周波数偏移させた電波つまり周波数f+fの応答波A(f+f)を主車Mに向けて送信する。応答装置r2は、基準装置mから基準周波数fの送信波I(f)を受信すると、識別周波数fだけ周波数偏移させた電波つまり周波数f+fの応答波A(f+f)を主車Mに向けて送信する。
【0022】
応答装置r3は、基準装置mから基準周波数fの送信波I(f)を受信すると、識別周波数fだけ周波数偏移させた電波つまり周波数f+fの応答波A(f+f)を主車Mに向けて送信する。応答装置r4は、基準装置mから基準周波数fの送信波I(f)を受信すると、識別周波数fだけ周波数偏移させた電波つまり周波数f+fの応答波A(f+f)を主車Mに向けて送信する。
【0023】
このような応答装置r1~r4は、図2(b)に示すように、受信アンテナ5、位相器6、送信アンテナ7及び識別信号発生器8を備えている。受信アンテナ5は、レーダ1から放射される送信波I(f)を受信し、受信信号に変換して位相器6に出力する。位相器6は、識別信号発生器から入力される識別信号を用いて受信信号に位相変調を施すことにより、受信信号の周波数つまり周波数fを識別信号の周波数(識別周波数f~f)だけ周波数偏移させた応答信号を生成して送信アンテナ7に出力する。
【0024】
送信アンテナ7は、上記応答信号を応答波A(f)に変換し、当該応答波A(f)をレーダ1に向けて放射する。識別信号発生器8は、個別の識別信号を生成して位相器6に出力する。
【0025】
すなわち、応答装置r1の識別信号発生器8は、識別周波数fの識別信号を生成して位相器6に出力し、応答装置r2の識別信号発生器8は、識別周波数fの識別信号を生成して位相器6に出力し、応答装置r3の識別信号発生器8は、識別周波数fの識別信号を生成して位相器6に出力し、応答装置r4の識別信号発生器8は、識別周波数fの識別信号を生成して位相器6に出力する。
【0026】
また、位相器6のうち、応答装置r1の位相器6は、周波数f+fの応答信号を生成して送信アンテナ7に出力し、応答装置r2の位相器6は、周波数f+fの応答信号を生成して送信アンテナ7に出力し、応答装置r3の位相器6は、周波数f+fの応答信号を生成して送信アンテナ7に出力し、応答装置r4の位相器6は、周波数f+fの応答信号を生成して送信アンテナ7に出力する。
【0027】
すなわち、各副車R1~R4の応答装置r1~r4のうち、副車R1の応答装置r1は、レーダ1から送信波I(f)を受信すると、周波数f+fの応答波A(f+f)をレーダ1に向けて送信し、副車R2の応答装置r2は、レーダ1から送信波I(f)を受信すると、周波数f+fの応答波A(f+f)をレーダ1に向けて送信する。
【0028】
また、副車R3の応答装置r3は、レーダ1から送信波I(f)を受信すると、周波数f+fの応答波A(f+f)をレーダ1に向けて送信し、副車R4の応答装置r4は、レーダ1から送信波I(f)を受信すると、周波数f+fの応答波A(f+f)をレーダ1に向けて送信する。
【0029】
ここで、上述した4つの周波数f+f、f+f、f+f、f+fは、所定幅の周波数差を持つ。すなわち、4つの識別周波数f、f、f、fは、所定幅の周波数差を持つように、また副車R1~R4毎に固有の値として予め設定されている。
【0030】
次に、本実施形態に係る車識別システムの動作について、図3及び図4をも参照して詳しく説明する。
【0031】
主車Mの基準装置mは、副車R1~R4を識別する場合、図3(a)及び図3(b)に示すように水平方向全周(360°の範囲)及び所定の仰角範囲ΔDに亘って送信波I(f)を走査状に順次放射する。すなわち、基準装置mのレーダ1は、水平方向に360°、また垂直方向にΔθの角度範囲に送信波I(f)を所定の順番で順次放射する。なお、送信波I(f)は、図3に示すように指向性が比較的狭い電波である。
【0032】
このような主車Mの基準装置mに対して各副車R1~R4の応答装置r1~r4では、受信アンテナ5が送信波I(f)を受信した場合に、位相器6が識別信号発生器8から入力された識別周波数f~fを用いて送信波I(f)の基準周波数fを偏移させた応答波A(f)を生成し、送信アンテナ7が当該応答波A(fn)をレーダ1に向けて放射する。そして、レーダ1は、このような応答波A(f)を受信して周波数fをレーダ検出信号として演算装置3に順次出力する。また、この演算装置3には、方位検出装置2から主車Mの現在位置が位置検出信号として順次入力される。
【0033】
演算装置3は、このように順次入力される周波数fと主車Mの現在位置とに基づいて以下のように各副車R1~R4の車番、速度(走行速度)、距離、方位(位置)及び仰角を演算する。最初に各副車R1~R4の車番については、周波数fの基準周波数fからの偏移(周波数差Δf)を演算し、この周波数差を予め記憶している識別周波数f~fと比較することによって特定する。
【0034】
すなわち、演算装置3には、車番と識別周波数f~fとの関係を示すデータ(車番データ)が予め記憶されている。演算装置3は、この車番データを用いることにより周波数差Δfが識別周波数f~fの何れに相当するかを判断し、この判断結果に基づいて車番を特定する。
【0035】
ここで、主車Mあるいは/及び各副車R1~R4が走行(移動)していた場合、応答波A(f)の周波数fは周知のドップラー効果によって周波数偏移(ドップラーシフトΔf)する。このドップラーシフトΔfは、主車Mと各副車R1~R4との相対速度に依存する。
【0036】
このようなドップラー効果の性質を用いることにより、演算装置3は、副車R1からレーダ1が受信する応答波A(f+f)のドップラーシフトΔfd1に基づいて主車Mと副車R1との相対速度を演算し、副車R2からレーダ1が受信する応答波A(f+f)のドップラーシフトΔfd2に基づいて主車Mと副車R2との相対速度を演算する。
【0037】
また、演算装置3は、副車R1からレーダ1が受信する応答波A(f+f)のドップラーシフトΔfd3に基づいて主車Mと副車R3との相対速度を演算し、副車R4からレーダ1が受信する応答波A(f+f)のドップラーシフトΔfd4に基づいて主車Mと副車R4との相対速度を演算する。
【0038】
続いて、各副車R1~R4の距離の検出について説明する。基準装置mのレーダ1は、2周波CW方式に基づいて、異なる2つの基準周波数f01、f02(距離基準周波数)を有する2つの送信波I(f01)、I(f02)を周囲に向けて順次放射する。そして、各応答装置r1~r4は、このような2つの送信波I(f01)、I(f02)に対して、距離基準周波数f01、f02を識別周波数f~fを用いて偏移させた応答波A(f)をレーダ1に向けて放射する。
【0039】
すなわち、副車R1の応答装置r1は、周波数f01+fの応答波A(f01+f)と周波数f02+fの応答波A(f02+f)とをレーダ1に向けて順次放射する。また、副車R2の応答装置r2は、周波数f01+f2の応答波A(f01+f)と周波数f02+fの応答波A(f02+f)とをレーダ1に向けて順次放射する。
【0040】
また、副車R3の応答装置r3は、周波数f01+fの応答波A(f01+f)と周波数f02+fの応答波A(f02+f)とをレーダ1に向けて順次放射する。また、副車R4の応答装置r4は、周波数f01+fの応答波A(f01+f)と周波数f02+fの応答波A(f02+f)とをレーダ1に向けて順次放射する。
【0041】
そして、レーダ1は、このような応答波A(f)の波形信号を演算装置3に順次出力する。そして、演算装置3は、上記波形信号にFFT処理を施すことにより、2つの応答波A(f)における識別周波数成分の位相φ、φを副車R1~R4毎つまり先に検出した車番毎に演算する。
【0042】
すなわち、演算装置3は、副車R1について2つの応答波A(f01+f1)、A(f02+f1)の識別周波数f1成分の位相φ11、φ12を演算し、副車R2について2つの応答波A(f01+f)、A(f02+f)の識別周波数f成分の位相φ21、φ22を演算する。
【0043】
また、演算装置3は、副車R3について2つの応答波A(f01+f)、A(f02+f)の識別周波数f成分の位相φ31、φ32を演算し、副車R4について2つの応答波A(f01+f)、A(f02+f)の識別周波数f成分の位相φ41、φ42を演算する。
【0044】
そして、演算装置3は、上記位相φ、φの差分(位相差Δφ)を副車R1~R4毎に演算する。すなわち、演算装置3は、位相φ11、φ12に基づいて位相差Δφを演算し、位相φ21、φ22に基づいて位相差Δφを演算し、位相φ31、φ32に基づいて位相差Δφを演算し、位相φ41、φ42に基づいて位相差Δφを演算する。
【0045】
そして、演算装置3は、位相差Δφ及び基準周波数差Δf(=|f01-f02|)を下式(1)に代入することにより距離Dを演算する。なお、式(1)における「c」は電波の伝搬速度つまり光速である。
D=cΔφ/(4πΔf) (1)
【0046】
すなわち、演算装置3は、位相差Δφと基準周波数差Δfと式(1)とを用いることにより主車Mと副車R1との距離Dを演算し、位相差Δφと基準周波数差Δfと式(1)とを用いることにより主車Mと副車R2との距離Dを演算する。また、演算装置3は、位相差Δφと基準周波数差Δfと式(1)とを用いることにより主車Mと副車R3との距離Dを演算し、位相差Δφと基準周波数差Δfと式(1)とを用いることにより主車Mと副車R4との距離Dを演算する。
【0047】
続いて、各副車R1~R4の方位(位置)の検出について説明する。基準装置mのレーダ1は、図3(a)に示すように、水平方向に360°つまり主車Mを中心とした水平方向全周に亘って送信波I(f)を順次放射する。これに対して、各副車R1~R4の応答装置r1~r4は、応答波A(f)をレーダ1に向けて放射する。
【0048】
すなわち、レーダ1は、各副車R1~R4つまり応答装置r1~r4の水平方向から入射する応答波A(f)を最も強度が強い電波として受信する。したがって、演算装置3は、レーダ1から入力される応答波A(f)の波形信号のうちレベルが最も大きいものに相当するレーダ1の水平角θから各副車R1~R4の方位(位置)を求める。
【0049】
最後に、各副車R1~R4の仰角の検出について説明する。レーダ1は、図3(a)に示すように、仰角範囲ΔGに亘って送信波I(f)を走査状に順次放射する。これに対して、各副車R1~R4の応答装置r1~r4は、応答波A(f)をレーダ1に向けて放射する。
【0050】
すなわち、レーダ1は、各副車R1~R4つまり応答装置r1~r4の垂直方向から入射する応答波A(f)を最も強度が強い電波として受信する。したがって、演算装置3は、レーダ1から入力される応答波A(f)の波形信号のうちレベルが最も大きいものに相当するレーダ1の垂直方向を各副車R1~R4の仰角として求める。そして、演算装置3は、このようにして検出した各副車R1~R4の車番、速度(走行速度)、距離、方位(位置)及び仰角を表示装置4に出力して画像表示させる。
【0051】
本実施形態によれば、応答装置r1~r4は基準周波数fに対して自らに固有に設定された識別周波数f~fだけ周波数を変位させた応答波A(f)を生成するので、従来よりも簡単な応答装置r1~r4つまり従来よりも簡単な構成のトランスポンダを用いた車識別システムを提供することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
M 主車
m 基準装置
R1~R4 副車
r1~r4 応答装置
1 レーダ
2 方位検出装置
3 演算装置
4 表示装置
5 受信アンテナ
6 位相器
7 送信アンテナ
8 識別信号発生器
図1
図2
図3
図4