(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】配筋材用の繊維束織物及びこれを使用したコンクリート配筋構造
(51)【国際特許分類】
D03D 1/00 20060101AFI20220721BHJP
E04C 5/07 20060101ALI20220721BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20220721BHJP
D03D 3/08 20060101ALI20220721BHJP
D03D 13/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
D03D1/00 A
E04C5/07
E04G21/12 105C
D03D3/08
D03D13/00
(21)【出願番号】P 2017118430
(22)【出願日】2017-06-16
【審査請求日】2020-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000204620
【氏名又は名称】大嘉産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 武志
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-291590(JP,A)
【文献】特開平08-218552(JP,A)
【文献】特開2009-126730(JP,A)
【文献】特開平02-258657(JP,A)
【文献】特開2001-300932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
C04B2/00-40/06
E04C5/00-5/20
E04G21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが多数の繊維を束ねた繊維束からなる経糸と、この経糸をなす繊維束を相互に連結する緯糸とからなる平織の繊維束織物であって、
前記緯糸が、前記経糸の複数本おきに前記経糸の間を通過し表裏へ移行するようにして織り込まれており、
前記複数本の前記経糸は、互いに密着して固定され、当該緯糸の経糸間通過部分が関節となって前記経糸を折り返すことができる、繊維束織物。
【請求項2】
前記緯糸の経糸間通過部分が前記経糸の切り離し部としての機能をもつ、請求項1に記載の繊維束織物。
【請求項3】
前記緯糸の経糸間通過部分で前記経糸を折り返すことにより折板形状とした請求項1に記載の繊維束織物からなる、配筋材。
【請求項4】
請求項3に記載の配筋材を埋設したコンクリート配筋構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート配筋の材料に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の柱や梁などコンクリート構造物の配筋には、鋼製や繊維強化樹脂製の棒状材が配筋材として用いられる。これら配筋材は、コンクリート構造物に要求される強度に応じて様々な断面径のものが必要になる。そして特に大径の配筋材が必要な場合、特許文献1,2に開示されているように、多数の配筋材を束ねて1本の配筋材を形成するなどの手法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-150630号公報
【文献】特開2017-025625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の背景に鑑みると、コンクリート構造物の要求強度に応じた断面径に、現場で簡単に加工できる配筋材があるとよい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
当課題に対して本発明は、それぞれが多数の繊維を束ねた繊維束からなる経糸と、この経糸をなす繊維束を相互に連結する緯糸とからなる平織の繊維束織物を提案する。この繊維束織物において前記緯糸は、前記経糸の複数本おきに前記経糸の間を通過して表裏へ移行し浮き沈みするように織り込まれていて、当該経糸の複数本おきにある緯糸の経糸間通過部分が関節となって前記経糸を折り返すことができる構造になっている。また、この緯糸の経糸間通過部分は、カッターなどで切断することで前記経糸の切り離し部としての機能ももつ。
【0006】
本発明に係る繊維束織物は、前記緯糸の経糸間通過部分で前記経糸を折り返すことにより、折板形状の配筋材として、コンクリート配筋に使用することができる。すなわち、本発明によれば、前記繊維束織物から形成した折板形状の配筋材を埋設したコンクリート配筋構造が提案される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る繊維束織物は、必要な幅(経糸本数)を切り取って折板形状に折り畳むことが自在にでき、折り畳んで重ねる厚さに従って様々な強度の配筋材を得ることができる。この作業はコンクリート打設の現場で簡単に行えるので、コンクリート構造物の要求強度に応じた強さの配筋材を、予め用意せずとも現場加工で簡単に用意することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)本発明に係る繊維束織物の実施形態を示した平面図、(B)緯糸の織り込み方を説明する端面図、(C)経糸をなす繊維束の断面図。
【
図2】折板形状に折り畳んだ
図1の繊維束織物からなる配筋材を型枠内に設置したコンクリート配筋構造を示す図。
【
図3】折板形状に折り畳んだ
図1の繊維束織物からなる配筋材を布製型枠内に設置したコンクリート配筋構造を示す図。
【
図4】
図1の繊維束織物の切り出しについて説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1(A)に、本発明に係る繊維束織物の実施形態について、平面図で示してある。繊維束織物1は、経糸10と緯糸20とからなる平織の織物である。経糸10は、それぞれが多数の化学繊維を束ねた繊維束からなり、この経糸をなす繊維束10がその軸方向Yを互いに平行にして横1列に並べられ、緯糸20によって相互に連結されている。緯糸20は、
図1(B)に示すとおり、経糸をなす繊維束10の複数本おき(本実施形態では3本おき)に経糸10の間を通過して表から裏へまた裏から表へ移行し浮き沈みするように織り込まれていて、当該緯糸の経糸間通過部分21が関節となって経糸の繊維束10を折り返すことができる構造になっている。
【0010】
図1(A)及び
図1(B)から分かるように、経糸の繊維束10は、上記の織り方で張力をかけた緯糸20により、本実施形態において3本ずつひとまとまりに束ねられて、この3本は互いに密着して固定される。一方、経糸3本おきに緯糸20が表裏へ移行するので、この経糸3本おきに現れる緯糸20の経糸間通過部分21に該当する繊維束10の間は、例えば0.1mm~1mm程度の、緯糸20の材質(又は太さ)に従う隙間が存在し、離れている。したがって、経糸間通過部分21を関節(ヒンジ)として経糸の繊維束10を折り返すことができ、
図1(B)に示すように、繊維束織物1を、折板形状(緯糸方向Xにおいて経糸10がW字形に並ぶ)に折り畳むことができる。そして、この緯糸20の経糸間通過部分21は、経糸間の隙間にカッターなどの刃を入れて切断することが可能であり、経糸10の切り離し部としての機能をもつ。このような緯糸20は、ポリエチレン製やポリプロピレン製のものを使用できる。
【0011】
経糸をなす繊維束10は、
図1(C)の断面図に示すように、1本1本が軸方向Yに延伸する長繊維の高強度繊維(例えばアラミド繊維)11を多数束ね、フェノール系、ポリエステル系、エポキシ系又はアクリル系の樹脂を含浸して固めることで形成される。アラミド繊維11を束ねた1本の繊維束10の太さは、一例として500デシテックス(dtex)とし、0.5mm以上で5mm以下の直径にするのが配筋用強度を考えると好ましい。また、含浸した樹脂の硬度は、繊維束織物1を加工するうえで、80以下(ロックウェル硬さ)にするのがよい。
【0012】
以上の形態の繊維束織物1は、緯糸20の経糸間通過部分21を関節として経糸の繊維束10を折り返すことにより折板形状に折り畳み(
図1(B))、この折板形状に折り畳んだ繊維束織物1を配筋材として、鉄筋の代わりに型枠内に設置することができる。例えば
図2に示すように、柱や梁などのコンクリート構造物を形成する型枠30の内側に、折板形状に折り畳んだ繊維束織物1を多数設置し、コンクリートを打設する。折板形状の繊維束織物1は、釘やタッカーにより直接、型枠30に仮留めすることができるので、鉄筋を設置するときのような結束具や間隔具などが不要であり、工程が簡素化される。
【0013】
図3には、コンクリートマットなどを形成する布製型枠40の中に、折板形状に折り畳んだ繊維束織物1を配筋材として設置した例を示す。構造的強度をもたない布製型枠40に対し、その湾曲性や施工性を阻害することなく(繊維束織物1も樹脂製)構造的強度を付加することができる。
【0014】
上記実施形態に係る繊維束織物1は、適当な経糸間通過部分21で緯糸20を切断することにより、必要な幅(言い換えると、
図1(A)の緯糸方向Xにおける経糸10の本数)を切り取ることができる(
図4参照)。この切り出した繊維束織物1を折板形状に折り畳むことで、折り畳んで重ねる厚さに応じた様々な強度の配筋材を得ることができる。その切り出す幅は、繊維束織物1の折り畳み回数を調節する目安とすることができる。この作業はコンクリート打設の現場で簡単に行えるので、コンクリート構造物の要求強度に応じた強さの配筋材を、予め用意せずとも現場加工で簡単に用意することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 繊維束織物
10 経糸(繊維束)
11 化学繊維
20 緯糸