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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】カテーテルおよびマニホールド
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/01 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
A61M25/01 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017228216
(22)【出願日】2017-11-28
(65)【公開番号】P2019097598
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】黒田 慶太
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 陽平
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-284780(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013933(WO,A1)
【文献】米国特許第05295968(US,A)
【文献】国際公開第2016/167020(WO,A1)
【文献】特開2005-102860(JP,A)
【文献】国際公開第2007/138569(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材と、
遠近方向に延在している内腔を有しており、前記筒状部材の近位端部に接続されているマニホールド本体と、
前記遠近方向に延在しており、前記内腔に挿通可能なスタイレットと、
前記内腔のうち前記スタイレットよりも近位側に配置されており、前記スタイレットと接触して前記スタイレットを近位側から固定する固定部材と、を有し、
前記マニホールド本体の近位部において前記スタイレットの近位端部を受け入れ可能前記マニホールド本体の半径方向に沿って延在している溝が形成されているカテーテル。
【請求項2】
筒状部材と、
遠近方向に延在している内腔を有しており、前記筒状部材の近位端部に接続されているマニホールド本体と、
前記遠近方向に延在しており、前記内腔に挿通可能なスタイレットと、
前記内腔のうち前記スタイレットよりも近位側に配置されており、前記スタイレットと接触して前記スタイレットを近位側から固定する固定部材と、を有し、
前記マニホールド本体の近位部において前記内腔の中心軸よりも半径方向外方に、前記スタイレットの近位端部を受け入れ可能前記マニホールド本体の周方向に沿って延在している溝が形成されているカテーテル。
【請求項3】
前記が、前記遠近方向に沿って延在している請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記スタイレットの近位端部が、遠位側に向かって折り返されている区間を有している請求項1~3のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記スタイレットの近位端が、前記マニホールド本体の遠位側を向くように配置されている請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記スタイレットの近位端部がU字形状に折り返されている請求項4または5に記載のカテーテル。
【請求項7】
遠近方向に延在しており筒状部材に挿通可能なスタイレットと共に使用され、かつ前記筒状部材の近位端部に接続されるマニホールドであって、
前記遠近方向に延在しており、内腔を有するマニホールド本体を有し、
前記マニホールド本体の近位部であって前記内腔の中心軸よりも半径方向外方に、スタイレットの近位端部を挿入可能なが形成されており、
前記が、前記マニホールド本体の半径方向と周方向の少なくともいずれかに沿って延在しており、前記溝の前記半径方向外方の一部において前記内腔と並行して遠近方向に延在している第2内腔が形成されているマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手元側の剛性を高めるスタイレットを有するカテーテルと、これに用いられるマニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルの手元側の剛性を高めて安定した形状とするために、特許文献1に示すようにカテーテルにはスタイレットという線状部材が挿入される。
【0003】
カテーテル内でスタイレットを固定する方法として、例えば、特許文献1にはカテーテルの基端部に、カテーテルを固定できるカテーテルコネクタ(マニホールド)と、カテーテルコネクタと嵌合可能であって、カテーテルコネクタの内腔に挿通しているスタイレットを固定できるスタイレットコネクタとが備え付けられていることが開示されている。詳細には、スタイレットの近位端部が略90度に折り曲げられており、先端がスタイレットコネクタに固定されている。このようにスタイレットを固定することで、カテーテルの近位側からスタイレットが脱落することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-284780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている方法でスタイレットを固定しても、カテーテルの操作中にチューブ内でスタイレットが変位し、筒状部材内へのガイドワイヤ等の部材の挿通、または薬液や造影剤等の注入がしにくいことがあった。そこで、本発明はスタイレットが変位しにくいカテーテルおよびマニホールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し得た本発明のカテーテルは、筒状部材と、遠近方向に延在している内腔を有しており、筒状部材の近位端部に接続されているマニホールド本体と、遠近方向に延在しており、内腔に挿通可能なスタイレットと、を有しているカテーテルであって、スタイレットの近位端部が、遠位側に向かって折り返されている区間(以下、「折り返し区間」と称することがある)を有している点に要旨を有する。本発明のカテーテルは、上記スタイレットの折り返し区間をマニホールド本体に係合しやすいため、カテーテルを操作してもスタイレットが変位しにくくなり、筒状部材内への他の部材の挿通や薬液等の注入をスムーズに行うことができる。
【0007】
上記カテーテルにおいて、マニホールド本体の近位部であって内腔の中心軸よりも半径方向外方に、スタイレットの近位端部を挿入可能な開口が形成されていることが好ましい。
【0008】
上記カテーテルにおいて、開口が遠近方向に沿って延在していることが好ましい。
【0009】
上記カテーテルにおいて、開口がさらにマニホールド本体の半径方向に沿って延在していることが好ましい。
【0010】
上記カテーテルにおいて、開口がマニホールド本体の周方向に沿って延在していることが好ましい。
【0011】
上記カテーテルにおいて、スタイレットの近位端がマニホールド本体の遠位側を向くように配置されていることが好ましい。
【0012】
上記カテーテルにおいて、スタイレットの近位端部がU字形状に折り返されていることが好ましい。
【0013】
本発明は遠近方向に延在しており筒状部材に挿通可能なスタイレットと共に使用され、かつ筒状部材の近位端部に接続されるマニホールドも提供する。本発明のマニホールドは、遠近方向に延在しており、内腔を有するマニホールド本体を有し、マニホールド本体の近位部であって内腔の中心軸よりも半径方向外方に、スタイレットの近位端部を挿入可能な開口が形成されている点に要旨を有する。本発明のマニホールドによれば、マニホールド本体の開口にスタイレットの近位端部を挿入することで、マニホールド本体とスタイレットを係合しやすいため、カテーテルを操作してもスタイレットが変位しにくくなり、筒状部材内への他の部材の挿通や薬液等の注入をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカテーテルおよびマニホールドによれば、マニホールド本体とスタイレットを係合しやすいため、カテーテルを操作してもスタイレットが変位しにくくなり、筒状部材内への他の部材の挿通や薬液等の注入をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るカテーテルの近位側の構造を示す断面図(一部側面図)を表す。
図2図1に示すカテーテルのII-II線に沿った断面図を表す。
図3図1に示すスタイレットの近位端部を拡大した側面図を表す。
図4図1に示すマニホールドの開口の変形例を示す背面図を表す。
図5図1に示すマニホールドの開口の他の変形例を示す背面図を表す。
図6図3に示すスタイレットの変形例を示す側面図を表す。
図7図3に示すスタイレットの他の変形例を示す側面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のカテーテルは、筒状部材と、遠近方向に延在している内腔を有しており、筒状部材の近位端部に接続されているマニホールド本体と、遠近方向に延在しており、マニホールド本体の内腔に挿通可能なスタイレットと、を有しているカテーテルであって、スタイレットの近位端部が、遠位側に向かって折り返されている区間(折り返し区間)を有している。本発明のカテーテルは、上記スタイレットの折り返し区間をマニホールド本体に係合しやすいため、カテーテルを操作してもスタイレットが変位しにくくなり、筒状部材内への他の部材の挿通や薬液等の注入をスムーズに行うことができる。
【0017】
また、本発明のマニホールドは、遠近方向に延在しており筒状部材に挿通可能なスタイレットと共に使用され、かつ筒状部材の近位端部に接続されるものであって、遠近方向に延在しており、内腔を有するマニホールド本体を有し、マニホールド本体の近位部であって内腔の中心軸よりも半径方向外方に、スタイレットの近位端部を挿入可能な開口が形成されている。本発明のマニホールドによれば、マニホールド本体の開口にスタイレットの近位端部を挿入することで、マニホールド本体とスタイレットを係合しやすいため、カテーテルを操作してもスタイレットが変位しにくくなり、筒状部材内への他の部材の挿通や薬液等の注入をスムーズに行うことができる。
【0018】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0019】
本発明においてカテーテルは医療用のカテーテル全般を指し、バルーンカテーテル、マイクロカテーテル、貫通カテーテル、吸引カテーテルを含む。カテーテルは、内視鏡で胆管や膵管を造影する検査(Endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)で造影剤を注入するために好適に用いられる。カテーテルの近位側とはカテーテルの延在方向に対して使用者(術者)の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向(すなわち処置対象側の方向)を指す。また、カテーテルの近位側から遠位側への方向を遠近方向または軸方向と称する。
【0020】
以下、図1図7を参照しながら、本発明の実施の形態に係るカテーテルについて説明する。図1はカテーテルの近位側の構造を示す断面図(一部側面図)であり、図2図1に示すカテーテルのII-II線に沿った断面図であり、図3図1に示すスタイレットの近位端部を拡大した側面図である。図4図5は、図1に示すマニホールド本体の開口の変形例を示す背面図であり、図6図7は、図3に示すスタイレットの変形例を示す側面図である。なお、図4図5ではマニホールド本体の外周面に設けられているねじ山を省略して記載している。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るカテーテル1は、筒状部材5と、マニホールド本体11と、スタイレット20を有している。また、本発明の実施の形態に係るマニホールド10は、筒状部材5に挿通可能なスタイレット20と共に使用されるものであって、マニホールド本体11を有している。
【0022】
筒状部材5は遠位側と近位側を有している。筒状部材5としては樹脂チューブが挙げられ、樹脂チューブは例えば押出成形によって製造することができる。筒状部材5を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好適に用いられる。
【0023】
筒状部材5は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。筒状部材5は、軸方向または周方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0024】
マニホールド10は、筒状部材5内に造影剤や薬剤を注入するためのシリンジ等が接続される。マニホールド10は、マニホールド本体11を有している。マニホールド10は、後述する蓋部材32や、弾性部材34、シール部材35を含んでもよい。マニホールド本体11は、遠近方向に延在している内腔12を有しており、筒状部材5の近位端部に接続されている。
【0025】
マニホールド本体11は、複数の内腔を有していることが好ましい。図1に示すようにマニホールド本体11の内腔12は、遠近方向に延在している主内腔12Aと、主内腔12Aから分岐している副内腔12Bを有していてもよい。その場合、主内腔12Aにスタイレット20が挿通されていることが好ましい。
【0026】
副内腔12Bの軸方向は、例えば主内腔12Aの軸方向に対して20度以上80度以下の範囲で傾斜していてもよい。図1では、副内腔12Bの軸方向が主内腔12Aの軸方向に対して60度傾斜するように副内腔12Bが設けられている。
【0027】
マニホールド本体11の遠近方向に延在している内腔(図1の主内腔12A)において、遠位端における内径よりも近位端部における内径が大きいことが好ましい。マニホールド本体11の主内腔12Aの近位端部にスタイレット20を補助的に固定する弾性部材34を配置することができる。弾性部材34については後述する。
【0028】
マニホールド本体11を構成する材料としては、例えば、ABSやポリカーボネート等の合成樹脂や、ポリウレタン発泡体等の発泡プラスチックを用いることができる。
【0029】
マニホールド本体11の遠位端部に筒状部材5が接続されていることが好ましい。筒状部材5とマニホールド本体11は直接接続されていてもよい。また、図1に示すように、一方端がマニホールド本体11の遠位端部に挿入され、他方端が筒状部材5の近位端部に挿入されている接続部材30を介して間接的に接続されていてもよい。接続部材30としては、ステンレス鋼から構成されているパイプが挙げられる。
【0030】
図1に示すように、中空部を有する保護部材31内に筒状部材5の近位端部およびマニホールド本体11の遠位端部が配置されていることが好ましい。これにより筒状部材5からマニホールド11の形状が急激に変化して、筒状部材5やマニホールド本体11が座屈することを防止できる。保護部材31は、遠位側に向かって外径が小さくなるよう勾配が設けられていることが好ましく、錐形状や錐台形状であることがより好ましい。保護部材31はシリコーンゴム、ポリアミドエラストマー等の弾性材料から構成することができる。
【0031】
保護部材31をマニホールド本体11に接続しやすくするために、マニホールド本体11の遠位側には、近位端よりも外径が小さい小径部14が設けられていることが好ましい。保護部材31との嵌合性を高めるために、小径部14の外周面には環状の凸部15が形成されてもよい。
【0032】
スタイレット20はカテーテル1の剛性を高めるために、マニホールド本体11の内腔12および筒状部材5の内腔6に挿通可能な線状の部材である。スタイレット20は少なくとも一部が遠近方向に延在している。スタイレット20は単線、互いに結束または撚り合わされた複数の単線であってもよい。また、スタイレット20は線材をコイル状に形成したものであってもよい。
【0033】
図示していないが、スタイレット20の遠位端は、筒状部材5の遠位端よりも近位側に位置していることが好ましく、筒状部材5の軸方向中央よりも近位側に位置していることがより好ましい。これにより筒状部材5の遠位側を柔軟にしつつ、カテーテル1の近位側の剛性を高めることができる。
【0034】
スタイレット20の近位端部は、遠位側に向かって折り返されている区間(折り返し区間21)を有している。スタイレット20の折り返し区間21をマニホールド本体11に係合しやすいため、カテーテル1を操作してもスタイレット20が変位しにくくなり、筒状部材5内への他の部材の挿通や薬液等の注入をスムーズに行うことができる。
【0035】
折り返し区間21は、スタイレット20の近位端22を含む部分に設けられていることが好ましいが、スタイレット20の近位端22よりも遠位側に設けられていてもよい。
【0036】
折り返し区間21の数は特に制限されず、例えば3つ以下にすることができるが、マニホールド本体11内のスペースには限りがあるため、スタイレット20には折り返し区間21が1つのみ設けられていることが好ましい。
【0037】
折り返し区間21はマニホールド本体11と係合する程度の長さであればよく、折り返し区間21の長さは、例えばスタイレット20の全長の1%以下、0.5%以下、または0.3%以下とすることができる。
【0038】
図1に示すように、スタイレット20の折り返し区間21が筒状部材5の中心軸よりも半径方向外方に配置されていることが好ましく、スタイレット20全体が筒状部材5の中心軸よりも半径方向外方に配置されていることがより好ましい。これにより、マニホールド本体11の内腔12や筒状部材5の内腔6を広く確保できるため、筒状部材5内への他の部材の挿通や薬液等の注入を一層スムーズに行うことができる。
【0039】
スタイレット20は、折り返し区間21よりも遠位側が遠近方向に沿って延在していることが好ましい。これによりスタイレット20の折り返し区間21よりも遠位側を、遠近方向に沿って延在しているマニホールド本体11の主内腔12Aに挿通しやすくなる。スタイレット20は直線状であることが好ましい。スタイレット20が直線状である場合、筒状部材に挿入されるガイドワイヤとの干渉を少なくすることができる。スタイレット20が波形などの曲線状であってもよい。例えば、筒状部材5の内腔6に接触するらせん状とすることができる。
【0040】
スタイレット20は、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金等の金属材料から構成することができる。
【0041】
マニホールド本体11にスタイレット20の折り返し区間21を係合固定するために、マニホールド本体11には、スタイレット20の折り返し区間21を受け入れ可能な開口13が形成されていることが好ましい。詳細には、マニホールド本体11の近位部であって内腔12(主内腔12A)の中心軸Cよりも半径方向外方に、スタイレット20の近位端部を挿入可能な開口13が形成されていることがより好ましい。このような開口13にスタイレット20の折り返し区間21を挿入することで、マニホールド本体11とスタイレット20を係合固定することができる。
【0042】
スタイレット20はマニホールド本体11の主内腔12Aに挿通され、さらに、スタイレット20の折り返し区間がマニホールド本体11の開口13に挿通される。主内腔12Aと開口13とは、図4に示すように連続的に形成されていてもよく、図5に示すように別々に形成されていてもよい。また、主内腔12Aと開口13の間の部分がマニホールド本体11に設けられる場合、当該部分はスタイレット20の外周を内包する内腔を有していてもよく、スタイレット20の外周の一部に接する溝を有していてもよい。
【0043】
図示していないが、開口13がマニホールド本体11を貫通するように形成されていてもよい。その場合、開口13がマニホールド本体11の外と連通する。ただし、マニホールド本体11の主内腔12Aを通じて筒状部材5の内腔6に薬液等の液体を流す場合、開口13から外に液体が漏れ出すことを防ぐために、開口13はマニホールド本体11の内壁に設けられていることが好ましい。
【0044】
図1に示すように、開口13が遠近方向に沿って延在していることが好ましい。開口13の一部が遠近方向に沿って延在していてもよく、開口13全体が遠近方向に沿って延在していてもよい。これにより、開口13にスタイレット20の折り返し区間21を挿通しやすくなる。
【0045】
マニホールド本体11の遠近方向において、開口13の長さL1は折り返し区間21の長さL2より短いことが好ましい。これによりカテーテル1を近位側から見たときに、スタイレット20の折り返し区間21が開口13から突出するように配置されるため、スタイレット20の配置および取り外しを行いやすくなる。
【0046】
図示していないが、マニホールド本体11の遠近方向において、開口13の長さL1は折り返し区間21の長さL2より長くてもよい。これによりカテーテル1を近位側から見たときに、スタイレット20の折り返し区間21が開口13の近位端よりも遠位側に配置されるため、スタイレット20が開口13から抜け落ちにくくなる。
【0047】
図1に示すように、マニホールド本体11の開口13がスタイレット20の折り返し区間21の形状に沿って形成されていることが好ましい。これによりスタイレット20がマニホールド本体11に固定されやすくなり、スタイレット20が変位することを防げる。
【0048】
図1および図3に示すように、マニホールド本体11の遠近方向において、スタイレット20の折り返し区間21と対向している区間(対向区間23)が、マニホールド本体11の主内腔12Aを形成している内壁と接触していることが好ましい。このようにスタイレット20の一部をマニホールド本体11の内壁に接触させることによって、スタイレット20がマニホールド本体11の主内腔12Aの中心軸Cよりも半径方向外方に配置されやすくなる。
【0049】
図4に示すように、開口13がさらにマニホールド本体11の半径方向に沿って延在していることが好ましい。これによりスタイレット20をマニホールド本体11に強固に固定できる。
【0050】
図5に示すように、開口13が、マニホールド本体11の周方向に沿って延在していることが好ましい。その場合、開口13がマニホールド本体11の周方向の一部に設けられていてもよく、周方向の全体にわたって設けられていてもよい。このように開口13がマニホールド本体11の周方向に沿って延在することで、折り返し区間21を開口13に挿入しやすくなる。
【0051】
スタイレット20は、マニホールド本体11から取り外し可能であることが好ましいが、マニホールド本体11に接着または溶着されていてもよい。
【0052】
スタイレット20の近位端22は、マニホールド本体11の遠位側、近位側、または半径方向の外方を向いていてもよいが、マニホールド本体11の遠位側を向くように配置されていることが好ましい。その場合、スタイレット20の近位端22は平面を有していることが好ましい。スタイレット20の近位端面がマニホールド本体11の内壁と接触しやすくなるため、スタイレット20がマニホールド本体11から抜けにくくなる。
【0053】
図1および図3に示すようにスタイレット20の近位端部が湾曲して折り返し区間21が形成されていてもよい。詳細には、図1に示すようにスタイレット20の近位端部がU字形状に折り返されていることが好ましい。このようにスタイレット20の近位端部を湾曲形状にすることにより、部分的に応力が集中することを抑制できる。
【0054】
図6に示すようにスタイレット20の近位端部が折り曲げられて折り返し区間21が形成されていてもよい。このようにスタイレット20を折り曲げ形状とすることでもスタイレット20とマニホールド本体11を強固に固定できる。
【0055】
図7に示すように折り返し区間21がスタイレット20の近位端22よりも遠位側に設けられていてもよい。例えば、スタイレット20は、折り返し区間21の近位端よりも近位側に遠近方向と異なる方向に延在している区間(補助固定区間24)を有していてもよい。スタイレット20が補助固定区間24を有している場合、図示していないが、マニホールド本体11の開口13は遠近方向に沿って延在している第1区間と、第1区間と隣り合い遠近方向と異なる方向に延在している第2区間を有していることが好ましい。開口13の第1区間にスタイレット20の折り返し区間21を、開口13の第2区間にスタイレット20の補助固定区間24を配置することができる。このようにスタイレット20の補助固定区間24や開口13の第2区間を設けることで、スタイレット20がマニホールド本体11の開口13により一層固定されやすくなり、スタイレット20が変位することを防げる。
【0056】
上記補助固定区間24において、スタイレット20はマニホールド本体11の半径方向または周方向に延在していることが好ましい。例えば、図7では折り返し区間21の近位端よりも近位側に、半径方向に延在している補助固定区間24が設けられている例を示している。
【0057】
図1に示すように、上記カテーテル1または上記マニホールド10において、マニホールド本体11の近位端部に蓋部材32が配置されていることが好ましい。蓋部材32は、マニホールド本体11の主内腔12Aの近位端部を塞ぐために設けられる。また、蓋部材32により、スタイレット20と弾性部材34を遠位方向に押さえることもできる。マニホールド本体11の近位端部と蓋部材32が係合していることが好ましい。例えば、マニホールド本体11の近位端部の外周面にねじ山16が形成されており、蓋部材32に該ねじ山16と係合する溝33が形成されている態様とすることができる。
【0058】
蓋部材32は遠近方向に貫通している貫通孔を有していることが好ましい。貫通孔を介して筒状部材5内にガイドワイヤ等の他の部材を導入することができる。
【0059】
蓋部材32はマニホールド本体11と同様の材料から構成することができる。
【0060】
マニホールド本体11の主内腔12Aの近位端部には弾性部材34が設けられていることが好ましい。これにより弾性部材34によりスタイレット20を補助的に固定することができる。弾性部材34は遠近方向に貫通している貫通孔を有していることが好ましい。貫通孔にガイドワイヤを挿通させることができる。図示していないが、弾性部材34の遠位端面に溝が設けられていてもよい。この溝にスタイレット20を配置することができるため、マニホールド本体11とスタイレット20が一層強固に固定される。弾性部材34はシリコーンゴム、ポリアミドエラストマー等から構成することができる。
【0061】
図1に示すように、スタイレット20の折り返し区間21が弾性部材34と接触していることが好ましい。これによりスタイレット20の折り返し区間21が弾性部材34で押さえられるため、内腔12に挿通される他の部材等の動きを阻害することなくスタイレット20を固定できる。
【0062】
スタイレット20の折り返し区間21よりも遠位側(より好ましくは、折り返し区間21と対向している対向区間23)が、弾性部材34の遠位端部と接触していることが好ましい。弾性部材34がスタイレット20の折り返し区間21よりも遠位側を押さえることにより、スタイレット20の折り返し区間21よりも遠位側が半径方向の外方に変位しやすくなるため、内腔12に挿通される他の部材等の動きを一層阻害しにくくなる。
【0063】
マニホールド本体11の遠近方向において、蓋部材32と弾性部材34の間にシール部材35が設けられていてもよい。これにより蓋部材32と弾性部材34の密閉性を高めることができる。シール部材35としてはOリングが挙げられる。
【符号の説明】
【0064】
1:カテーテル
5:筒状部材
10:マニホールド
11:マニホールド本体
12:内腔
12A:主内腔、12B:副内腔
13:開口
14:小径部
15:凸部
16:ねじ山
20:スタイレット
21:折り返し区間
22:近位端
23:対向区間
24:補助固定区間
30:接続部材
31:保護部材
32:蓋部材
33:溝
34:弾性部材
35:シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7