(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】車両のハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20220721BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
E05B85/16 D
E05B85/16 A
E05B85/16 B
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2017242842
(22)【出願日】2017-12-19
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】遠山 孝生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 輝久
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 壮
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-090770(JP,U)
【文献】特開2016-142046(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151116(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに固定されるハンドルベースと、
把手部を備えてハンドルベースに連結されるハンドル本体とを有し、
前記ハンドル本体は、前記把手部がドア表面に形成されたハンドル収容部に嵌合する初期位置と、把手部がハンドル収容部から突出して把持可能な操作待機位置との間を移動可能で、かつ、操作待機位置方向への付勢力が付与されるとともに、
ハンドルベースには、
前記ハンドル本体に係脱し、係止状態で前記ハンドル本体を前記付勢力に抗して初期位置に保持するストッパが設けられ、
前記ハンドル本体は、ストッパの解除操作により前記付勢力により操作待機位置まで駆動される車両のハンドル装置。
【請求項2】
前記ストッパはプランジャをハンドル本体に係止させて該ハンドル本体を初期位置に保持し、利用者に対する認証成立を条件にハンドル本体との係止解除方向に駆動されるソレノイドにより形成される請求項1記載の車両のハンドル装置。
【請求項3】
前記ハンドル本体の把手部に静電容量センサの電極が収容される請求項2記載の車両のハンドル装置。
【請求項4】
前記ハンドル本体
は回転軸部の先端から側方に前記把手部を突設して形成され、ストッパの係止解除により操作待機位置に移動するとともに、
前記ハンドルベースには、
ハンドル本体が初期位置から操作待機位置へ移動する際の前記回転軸部周りの回転操作により外部に露出して操作可能になるシリンダ錠が配置される請求項1、2または3記載の車両のハンドル装置。
【請求項5】
前記ハンドル本体は、ストッパの係止解除により前記シリンダ錠の露出位置まで移動する請求項4記載の車両のハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のハンドル装置としては、従来、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、ハンドル装置はハウジングにハンドルを連結して形成される。ハンドルは、車両のドア表面からの突出感をなくすために、不使用時にはドア表面に形成されたハンドル収容部に嵌合した格納位置(初期位置)に保持される。
【0003】
ドア開放操作時には、ハンドル収容部に嵌合状態となっている初期位置からハンドルに対する操作が可能な配置位置(操作待機位置)まで移動させることが必要で、初期位置から操作待機位置への移動にはモータが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来例において、初期位置から操作待機位置への移動にモータを使用するために、構造が複雑で、かつ、高価になるという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の問題を解決すべくなされたものであって、安価に製造することのできる車両のハンドル装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
車両のドア1に固定されるハンドルベース2と、
把手部3を備えてハンドルベース2に連結されるハンドル本体4とを有し、
前記ハンドル本体4は、前記把手部3がドア1表面に形成されたハンドル収容部5に嵌合する初期位置と、把手部3がハンドル収容部5から突出して把持可能な操作待機位置との間を移動可能で、かつ、操作待機位置方向への付勢力が付与されるとともに、
ハンドルベース2には、前記ハンドル本体4に係脱し、係止状態で前記ハンドル本体4を前記付勢力に抗して初期位置に保持するストッパ6が設けられ、
前記ハンドル本体4は、ストッパ6への解除操作により前記付勢力により操作待機位置まで駆動される車両のハンドル装置を提供することにより達成される。
【0008】
本発明において、ハンドル本体4は初期位置と操作待機位置との間を移動可能であり、操作待機位置においてドア1内のドアラッチ装置11の解除操作等の必要な操作を行うことによりドア1を開放することができる。
【0009】
ハンドル本体4に操作待機位置側への付勢力を負荷し、これを解放することによりハンドル本体4を操作待機位置に移動させることにより、モータ等のアクチュエータを使用することが不要となるために、構造が簡単になり、かつ、コスト低減を図ることが可能になる。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記ストッパ6はプランジャ7をハンドル本体4に係止させて該ハンドル本体4を初期位置に保持し、利用者に対する認証成立を条件にハンドル本体4との係止解除方向に駆動されるソレノイドにより形成される車両のハンドル装置を構成することができる。
【0011】
付勢力に抗してハンドル本体4を初期位置に保持するためのストッパ6としては、例えば、プッシュラッチ装置等の機械的な拘束手段を利用することができるが、ソレノイドを使用し、駆動条件を利用者に対する認証成立を条件とすると、認証成立の有無をハンドル本体4の操作待機位置への移動により知ることができ、さらに、認証成立によりドアラッチ装置11の解錠操作を行うようにすると、操作待機位置まで移動したハンドル本体4を操作してドアラッチ装置11のラッチ解除操作、ドア1の開放操作を連続して行うことができる。
【0012】
この場合、
前記ハンドル本体4の把手部3に静電容量センサの電極8が収容される車両のハンドル装置を構成すると、例えば、静電容量センサによるハンドル本体4への接触検知を認証部12に対する認証動作の開始トリガとして利用することが可能になる。
【0013】
さらに、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記ハンドル本体4は回転軸部9の先端から側方に前記把手部3を突設して形成され、ストッパ6の係止解除により操作待機位置に移動するとともに、
前記ハンドルベース2には、ハンドル本体4が初期位置から操作待機位置へ移動する際の前記回転軸部9周りの回転操作により外部に露出して操作可能になるシリンダ錠10が配置される車両のハンドル装置を構成することができる。
【0014】
ドアラッチ装置11の解錠は、ドア1に配置したシリンダ錠10への操作により行うことが可能であるが、シリンダ錠10をハンドル本体4が初期位置にあるときにハンドル本体4により隠され、ハンドル本体4が操作待機位置からさらに回転操作された際に外部に露出する位置に配置すると、ハンドル装置を使用しない状態でシリンダ錠10が外部に露出することがなく、美観が向上する。
【0015】
この場合、
前記ハンドル本体4は、ストッパ6の係止解除により前記シリンダ錠10の露出位置まで移動する車両のハンドル装置を構成すると、使い勝手が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、初期位置から操作待機位置への移動にモータ等を使用することがないために、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を示す図で、(a)は車両のドア表面を示す図、(b)は(a)の1B-1B線断面、(c)は(b)の1C方向矢視図である。
【
図2】ハンドル本体を示す図で、(a)は平面図、(b)は裏面図である。
【
図3】ハンドルベースを示す図で、(a)は平面図、(b)は裏面図である。
【
図4】ハンドル本体の動作を示す図で、(a)は
図1(c)の要部を示す図、(b)はハンドル本体を操作待機位置まで回転させた状態を示す
図1(b)に対応する図、(c)は
図4(b)の4C方向矢視図である。
【
図5】ハンドル本体を操作位置まで回転操作した状態を示す図で、(a)は
図1(b)に対応する図、(b)は
図4(a)に対応する図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態を示す図で、(a)は車両のドア表面を示す図、(b)は(a)の7B-7B線断面、(c)は(b)の7C方向矢視図である。
【
図8】ハンドル本体が操作待機位置まで回転した状態を示す図で、(a)は
図7(c)に対応する図、(b)は
図7(b)に対応する図である。
【
図9】本発明の第3の実施の形態を示す図で、(a)は車両のドア表面を示す図、(b)は(a)の9B-9B線断面、(c)は(b)の9C方向矢視図である。
【
図10】ハンドル本体の動作を示す図で、(a)は
図9(a)の10A方向矢視図、(b)は操作待機位置における
図9(a)の9B-9B線断面である。
【
図11】ハンドル本体の動作を示す図で、(a)は
図10(b)の11A方向矢視図、(b)は操作位置における
図11(a)の11B方向矢視図である。
【
図12】本発明の第4の実施の形態を示す図で、(a)は
図9(a)に対応する図、(b)はカム溝を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1以下に示すように、ハンドル装置は、ドア1に固定されるハンドルベース2にハンドル本体4を連結して形成される。
【0019】
ハンドル装置は、車両のドア1を正面から見た
図1(a)の上方を上方、左側を前方、右側を後方に向けるとともに、
図1(b)において上方を室外側(表面側)、反対側を室内側(裏面側)に向けた姿勢でドア1に固定される。
【0020】
図2に示すように、ハンドル本体4は、前後方向に長い把手部3と、この把手部3の一端部裏面に膨隆し、裏面中央部にバネ収容凹部13aを備えたヒンジブロック部13と、把手部3の先端から前方に向けて突設される被係止片14とを有し、把手部3には静電容量センサの電極8が固定される。
【0021】
また、ヒンジブロック部13には駆動突部13bが突設されるとともに、回転軸15が挿通する軸挿通孔13cが上下方向に開設される。
【0022】
ハンドルベース2は、上記ハンドル本体4のヒンジブロック部13の上下対向側壁に隣接して配置されるヒンジ受け片16a間に後部連結壁16bを架設した後方部分16と、ヒンジ受け片16aから前方に張り出す立ち上がり壁17a間に前部連結壁17bを架設した前方部分17とを有して形成され、ヒンジ受け片16aには、上記ハンドル本体4の軸挿通孔13cに連通する軸挿通孔16cが開設される。
【0023】
また、ハンドルベース2の後部連結壁16bには前方に向けて張り出すバネ受け片16dが突設され、バネ受け片16dとヒンジ受け片16aとの間には、ハンドル本体4の駆動突部13bが挿通可能な間隙が形成される。バネ受け片16dは後述するようにハンドル本体4を連結した状態でハンドル本体4のバネ収容凹部13aに対向し、バネ収容凹部13aの幅方向寸法に比して大寸の幅方向寸法を有するように形成される。
【0024】
さらに、ヒンジ受け片16aの裏面にはレバー18が軸18a周りに回転自在に軸支される。レバー18の一端は上記間隙に至り、その先端には後述する遊び用切欠18bが形成され、反対端には一端がドア1内のドアラッチ装置11に連結されるロッド棒あるいはケーブル装置等の伝達部材19の他端が連結される伝達部材19の連結部18cが形成される。
【0025】
レバー18の
図3(b)において時計回りの回転を許容し、反時計回りの回転を規制するために、ヒンジ受け片16aの裏面には、レバーストッパ部16eが突設される。
【0026】
また、ハンドルベース2の前部連結壁17bにはストッパ6としてのソレノイドが固定される。ソレノイド6は通電時にプランジャ7が突出位置から吸引位置に後退するプル型で、通電停止時には図外の復帰スプリングにより突出状態に復帰するものが使用される。ソレノイド6のプランジャ7の先端には、
図1に示すように、裏面を向く傾斜面7aが形成される。
【0027】
上記ハンドル本体4のハンドルベース2への連結は、双方の軸挿通孔13c、16cに回転軸15を挿通させて行われ、連結状態においてハンドル本体4は、
図1に示す初期位置から
図4に示す操作待機位置を経て
図5に示す操作位置まで回転する。
【0028】
図1、
図4(a)に示すように、回転軸15には一端がハンドルベース2のヒンジ受け片16aに、他端がハンドル本体4のバネ収容凹部13aの天井壁に当接するトーションスプリング20が巻装されており、ハンドル本体4を操作待機位置側に付勢する。トーションスプリング20は、ハンドル本体4が操作待機位置まで回転した状態で撓みが解消される自然状態になるように諸元が決定される。
【0029】
また、
図1に示すように、上記ソレノイド6は、プランジャ7がトーションスプリング20による操作待機位置方向への付勢力に抗して被係止片14を押さえ付けることによりハンドル本体4を初期位置に保持する。
【0030】
したがって、本例において、ソレノイド6に通電してプランジャ7を吸引すると、プランジャ7による規制が解除されたハンドル本体4はトーションスプリング20の復元力により撓みが解消されるまで、すなわち、操作待機位置まで回転する。
図4(c)に示すように、ハンドル本体4の操作待機位置までの回転によりハンドル本体4の駆動突部13bはレバー18の遊び用切欠18bの領域内を移動するために、レバー18に接触することがなく、レバー18による抵抗を受けることがない。
【0031】
この後、
図5(a)に示すように、ハンドル本体4を握って操作位置まで回転させると、
図5(b)に示すように、レバー18はハンドル本体4の駆動突部13bに押されて回転し、伝達部材19を介してドアラッチ装置11のラッチ解除動作が行われる。
【0032】
また、この状態からハンドル本体4を初期位置側に押し込むと、
図5(a)に示すように、ハンドル本体4の被係止片14がソレノイド6のプランジャ7に形成された傾斜面7aに当接し、プランジャ7には吸引方向の分力が発生する。この結果、プランジャ7は吸引方向に移動して被係止片14を通過を許容した後、戻りスプリングにより突出位置まで復帰し、以後、被係止片14の裏面方向への移動、すなわち、ハンドル本体4の操作待機位置方向への回転が規制される。
【0033】
図6に以上のハンドル装置を使用した車両のドア開閉操作装置を示す。ドア開閉操作装置は、ハンドル装置に加え、CPU21a、メモリ21bを含む制御部21と、利用者が所持する電子キー22を認証する認証部12と、ドアラッチ装置11を解錠状態にするラッチ施解錠用アクチュエータ23とを有する。
【0034】
まず、利用者が初期位置にあるハンドル本体4の把手部3に触れると、把手部3に電極8が固定された静電容量センサにより接触が検出され、これを検知した制御部21は認証部12に認証開始指令を出力する。認証開始指令を受領した制御部21は認証部12を起動して該認証部12から利用者が所持する電子キー22に対して認証コード出力要求信号を出力した後、電子キー22からの認証コードの受信を待ち、電子キー22からの認証コードに対する認証が成立すると、制御部21はソレノイド6を吸引動作させるとともに、ラッチ施解錠用のアクチュエータ23を駆動してドアラッチ装置11の施解錠操作部11aを作動させてドアラッチ装置11を解錠する。
【0035】
なお、本例において、認証部12における認証開始を静電容量センサへの接触により行う場合を示したが、利用者が所持する電子キー22からのアクティブ信号、すなわち、認証部12からの認証コード出力要求を待たずに認証コードを出力するように構成することもできる。
【0036】
ソレノイド6のプランジャ7の吸引によりハンドル本体4は操作待機位置まで回転し、その後、利用者が操作位置まで回転操作すると、ドアラッチ装置11のラッチ解除操作部11bが作動してラッチが解除される。
【0037】
図7に本発明の第2の実施の形態を示す。上述した実施の形態においては、ストッパ6にソレノイドを使用し、解除操作を電子的制御により行う場合を示したが、本例に示すように、解除操作を手動により行うように構成することができる。
図7に示す実施の形態は、ドアラッチ装置11の施錠状態を解除するためのシリンダ錠10に組み込まれたストッパ6を示すもので、図外の解錠キーにより回転操作されるプラグ10aの終端に連結されるシリンダレバー24に固定される。
【0038】
なお、以下の実施の形態の説明において上述した実施の形態と実質的に同一の構成要素は図中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
本例においてシリンダ錠10は例えば、図示しないクリップ部材等を使用してドア1に直接固定される場合が示されているが、ハンドルベース2に固定することもできる。また、ストッパ6は、ストッパケース6a内にスライドブロック6bを進退自在に挿入して形成され、圧縮スプリング6cにより突出位置側に付勢される。スライドブロック6bの先端にはソレノイド6のプランジャ7の先端と同様に傾斜面6dが形成される。
【0040】
したがって、本例においてシリンダ錠10が施錠状態にあるときにはストッパ6のスライドブロック6bにより被係止片14の移動が規制されるためにハンドル本体4は初期位置に保持される。
【0041】
この状態からシリンダ錠10を解錠方向に回転操作すると、プラグ10a、およびシリンダレバー24も
図8に示すように回転し、ストッパ6のスライドブロック6bによる被係止片14への拘束が解消されたハンドル本体4はトーションスプリング20の復元力により操作待機位置まで回転する。
【0042】
この後、ハンドル本体4を操作位置まで回転操作してドアラッチ装置11を操作すると、シリンダ錠10への解錠操作により解錠状態に移行したドアラッチ装置11のラッチ解除操作が行われ、引き続きハンドル本体4を引っ張ることによりドア1を開放することができる。また、操作位置、あるいは操作待機位置からハンドル本体4を押し込むと、被係止片14がスライドブロック6bの傾斜面6dに当接した後、一旦スライドブロック6bを縮退位置に押し込み、次いで、スライドブロック6bが再び突出位置に復帰することにより、被係止片14の移動が拘束される。
【0043】
図9に本発明の第3の実施の形態を示す。本実施の形態において、ハンドル本体4は把手部3の一端部から裏面側に向けて円柱状の回転軸部9、およびレバー作動突部26を突出させて形成され、回転軸部9には、後述するカムピン27が摺動自在に嵌合するカム溝28が形成される。
【0044】
また、把手部3の先端には、円柱状のプッシュラッチ被係止部29が裏面側に向けて突設される。
【0045】
レバー作動突部26は回転軸部9に比して小径の円柱形状に形成され、裏面側先端近傍にストッパピン30の挿入孔26aが形成される。
【0046】
ドア1に固定されるハンドルベース2は、一端部に上記ハンドル本体4の回転軸部9が挿通するハンドル保持筒31を備えるとともに、反対端部にシリンダ錠10を保持して形成され、ハンドル保持筒31の壁面に隣接してストッパ6としてのプッシュラッチ装置が固定される。
【0047】
プッシュラッチ装置6は、上述したハンドル本体4のプッシュラッチ被係止部29を押し込むことにより該プッシュラッチ被係止部29を拘束してプッシュラッチ装置6からの離脱を規制し、再度プッシュラッチ被係止部29を押し込むことにより拘束を解除し、プッシュラッチ被係止部29の離脱を許容するように構成される。
【0048】
また、ハンドルベース2には、一端部に被作動杆部18dを、反対端にドアラッチ装置11への伝達部材19を連結する連結部18cを備えたレバー18が軸18a周りに回転自在に連結される。
【0049】
ハンドル装置は、ハンドルベース2のハンドル保持筒31にハンドル本体4の回転軸部9を挿入して組み立てられ、ハンドル保持筒31には、ハンドル本体4のカム溝28に嵌合するように、カムピン27が固定される。
【0050】
また、ハンドル本体4のハンドルベース2からの離脱を防止するために、ハンドル本体4の挿入孔26にストッパピン30が、
図9(c)に示すように、上記レバー18の回転面に対して直行する方向に突出するように固定される。
【0051】
さらに、ハンドル本体4は、ハンドル本体4とハンドルベース2との間には、ハンドル本体4のレバー作動突部26を巻装する圧縮スプリング32により突出方向に付勢されるとともに、ハンドル本体4のプッシュラッチ被係止部29はハンドルベース2のプッシュラッチ装置6に係止されており、ハンドル本体4は、圧縮スプリング32の付勢力に抗して初期位置に保持される。
【0052】
したがって本例において、初期位置から一旦ハンドル本体4を押し込むと、プッシュラッチ装置によるハンドル本体4の拘束が解除され、ハンドル本体4は
図10に示すように、圧縮スプリング32の復元力により表面側に移動する。
【0053】
ハンドル本体4の表面側に移動に伴ってハンドル本体4はカム溝28がカムピン27により回転力を受けるために、
図11に示すように、回転軸部9周りに回転する。ハンドル本体4の回転により、ハンドル本体4の把手部3により覆われていたシリンダ錠10が外部に露出し、この後、シリンダ錠10を操作することにより、ドアラッチ装置11を解錠操作することができる。
【0054】
さらに、ハンドル本体4の正面方向の移動、および回転移動に伴ってストッパピン30も回転してレバー18の被作動杆部18dに対峙し、この状態からハンドル本体4を引き出すようにして正面方向に並進移動させると、
図11(b)に示すように、ストッパピン30によりレバー18が回転し、ドアラッチ装置11のラッチ解除操作が行われる。
【0055】
図12に本発明の第4の実施の形態を示す。本例は
図11のストッパ6をソレノイド6に変更したもので、ハンドル本体4の回転軸部9にはハンドル保持筒31に打ち込まれるカムピン27が摺動自在に嵌合する第1カム溝33と、ソレノイド6のプランジャ7が摺動自在に嵌合する第2カム溝34とが形成される。
【0056】
図12(b)に示すように、第2カム溝34は、
図9(b)におけるカム溝28の正面側端部(
図12(b)における上端部)から正面方向に延びる上行路34aと、上行路34aの終端から斜め下方に延びる短斜路34bと、短斜路34bの終端から傾斜路34cに連結される連結路34dを有し、傾斜路34c、およびそれから延びる下行路34eは
図9におけるカム溝28の下方部分に一致する。
【0057】
また、第2カム溝34の上行路の始端は閉塞端34fとされてプランジャ7の下方への移動が規制される。
【0058】
一方、第1カム溝33は、プランジャ7が上記第2カム溝34の上行路34a、短斜路34b、および連結路34dに沿って移動する際のカムピン27との干渉が発生しないように、対応部位に空間部33aを備えて形成される。
【0059】
したがって、本例において、ハンドル本体4が初期位置にある状態ではソレノイド6のプランジャ7が第2カム溝34の閉塞端34fに当接することにより表面側への移動が規制されるとともに、閉塞端34fに隣接する側壁34gに当接して回転が規制され、カムピン27は第1カム溝33の空間部33aの始端部に位置する。
【0060】
この状態から把手部3への接触が静電容量センサにより検知され、認証部12において電子キー22に対する認証が成立すると、制御部21はソレノイド6を吸引動作させるとともに、ラッチ施解錠用のアクチュエータ23を駆動してドアラッチ装置11の施解錠操作部11aを作動させてドアラッチ装置11を解錠する。
【0061】
また、ソレノイド6のプランジャ7が吸引されると、プランジャ7は第2カム溝34から離脱し、突出方向の移動をプランジャ7の第2カム溝34の閉塞端34fへの当接により規制されて初期位置に保持されていたハンドル本体4には、圧縮スプリング32の復元力により突出方向の力が付与される。
【0062】
一方、ハンドル本体4の突出方向への移動はカムピン27が嵌合する第1カム溝33によりガイドされており、ハンドル本体4は、
図9と同様に、回転軸部9周りに回転しながら操作待機位置に移動し、この後、ハンドル本体4を引くことによりドアラッチ装置11を解除し、ドア1を開放することができる。
【0063】
これに対し、ソレノイド6に対する吸引制御が故障、バッテリ切れ等により不可能になった場合、一旦ハンドル本体4をドア1内方に押し込むとプランジャ7は第2カム溝34の上行路34aを終端位置方向(
図12(d)における上方)に相対的に移動する。
【0064】
この後、ハンドル本体4の把手部3を該把手部3とドア1のハンドル収容部5との間に形成される間隙分、すなわち、把手部3がハンドル収容部5の周壁に当接するまでハンドル本体4を回転させると、プランジャ7は第2カム溝34の短斜路34bの始端から僅かに
図12(b)において左方向に移動する。この状態からハンドル本体4の押し込み力を解消すると、圧縮スプリング32の復元力によりハンドル本体4は突出方向に移動し、プランジャ7が短斜路34b、連結路34dを経由して傾斜路34cに至りながらハンドル本体4を
図11(a)に示すように回転させる。
【0065】
ハンドル本体4が回転した状態において、
図11に示すように、シリンダ錠10が外部に露出し、この後、シリンダ錠10への操作によるドアラッチ装置11の解錠、ハンドル本体4によるラッチ解除を経てドア1を開放することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ドア
2 ハンドルベース
3 把手部
4 ハンドル本体
5 ハンドル収容部
6 ストッパ
7 プランジャ
8 静電容量センサの電極
9 回転軸部
10 シリンダ錠