IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トゥー‐シックス・インコーポレイテッドの特許一覧

特許7108410光学的に仕上げられた薄い高アスペクト比のダイヤモンド基板又は窓、及び、これらの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】光学的に仕上げられた薄い高アスペクト比のダイヤモンド基板又は窓、及び、これらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/04 20060101AFI20220721BHJP
   C23C 16/01 20060101ALI20220721BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20220721BHJP
   C23C 16/27 20060101ALI20220721BHJP
   C30B 25/02 20060101ALI20220721BHJP
   C30B 33/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C30B29/04 E
C23C16/01
C23C16/02
C23C16/27
C30B25/02 P
C30B33/00
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2017551112
(86)(22)【出願日】2016-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-04-26
(86)【国際出願番号】 US2016028031
(87)【国際公開番号】W WO2016168796
(87)【国際公開日】2016-10-20
【審査請求日】2019-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】62/148,339
(32)【優先日】2015-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/093,160
(32)【優先日】2016-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502334032
【氏名又は名称】トゥー‐シックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,ウエン-チン
(72)【発明者】
【氏名】リィウ,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】アイスラー,エルギン,イー.
(72)【発明者】
【氏名】バルバロッサ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】タナー,チャールズ,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,トーマス,イー.
【合議体】
【審判長】平塚 政宏
【審判官】井上 猛
【審判官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-209028(JP,A)
【文献】特表2015-504972(JP,A)
【文献】特開平8-133893(JP,A)
【文献】特開平4-238896(JP,A)
【文献】特開2007-39742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する成長側表面及び核生成側表面を有する 自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓であって、
前記自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、前記核生成側表面に、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を含み、
前記自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の最大寸法を前記自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さで割ったアスペクト比が100以上であり、
前記自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さが400ミクロン以下であり、前記光学的に仕上げられた表面が、50nm以下の表面粗さ(Ra)を有し、
前記自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、厚さ4mm以上のシリコン基板上でCVD成長した後、前記シリコン基板が化学的又は機械的に除去されて形成される、自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【請求項2】
5mm以上の前記最大寸法を有する、請求項1に記載の自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【請求項3】
前記最大寸法が40mm以上である、請求項1又は2に記載の自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【請求項4】
前記厚さが、350ミクロン以下である、請求項1~のうちいずれか一つに記載の自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【請求項5】
前記アスペクト比が、125以上である、請求項1~のうちいずれか一つに記載の自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【請求項6】
前記最大寸法が、前記自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の直径である、請求項1~のうちいずれか一つに記載の自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【請求項7】
遮蔽レンズから34cmの距離で測定される1.06ミクロン光散乱係数が、20/cm以下である、請求項1~のうちいずれか一つに記載の自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【請求項8】
ダイヤモンド核生成密度が、1.0×105/cm2以上である、請求項1~のうちいずれか一つに記載の自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【請求項9】
対向する成長側表面及び核生成側表面を有する自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓を形成する方法であって、
(a)厚さ4mm以上のシリコン基板を提供する工程と、
(b)前記シリコン基板の表面上に、100以上のアスペクト比を有し、厚さが400ミクロン以下であるダイヤモンドフィルム、基板又は窓をCVD成長させる工程であって、前記アスペクト比が、前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の最大寸法を前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さで割った比である工程と、
(c)CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓から前記シリコン基板を化学的又は機械的に除去する工程と、
を含 み、
前記自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、前記核生成側表面に、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を含み、前記光学的に仕上げられた表面が、50nm以下の表面粗さ(Ra)を有する、 自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓を形成する方法。
【請求項10】
さらに、工程(b)の前に、20nm以下の表面粗さ(Ra)を有する光学的仕上げまで前記シリコン基板表面を研磨する工程を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側表面は、前記シリコン基板の研磨された表面のRaよりも大きいRaを有する、請求項又は10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓がまだ前記シリコン基板上にある間に、前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長表面を50nm以下の表面粗さ(Ra)まで研磨する工程を含む、請求項11のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記シリコン基板の表面、及び、CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側表面は非平面であり、
CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側表面の形状は、前記シリコン基板の表面形状に適合する反転形状である、請求項12のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側表面は、ドーム、コーン、ピラミッド、非球面、放物線及び双曲線の形状のうちいずれか一つを有する、請求項13のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長側表面は、CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側表面よりも大きな熱伝導率を有する、請求項14のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
さらに、CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長表面に光管理コーティングを付与する工程、及び、CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓から前記シリコン基板を除去した後に、CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側に前記光管理コーティングを付与する工程のうち少なくとも一つを含む、請求項15のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
さらに、シリコン基板表面上で成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓を有する前記シリコン基板を一又は複数の片に切断する工程を含む、請求項16のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
工程(b)は、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素及びホウ素のうち少なくとも一つを含む雰囲気下で、前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓をCVD成長させる工程を含む、請求項17のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
工程(b)の前に、前記シリコン基板の表面にダイヤモンド粒子を播種する、請求項18のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
(1)液体懸濁液中のサブミクロン又はミクロンサイズのダイヤモンド粉末から構成される超音波浴中における前記シリコン基板の超音波処理、及び、
(2)液体懸濁液中の平均粒子径が100nm未満のナノ結晶ダイヤモンド粉末から構成される超音波浴中における前記シリコン基板の超音波処理、
のうち少なくとも一つを経て、前記シリコン基板にダイヤモンド粒子を播種する、請求項19のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
前記液体懸濁液は、水、アルコール、炭化水素及び有機溶媒のうち一又は複数を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(1)含水ダイヤモンドスラリー又は有機ダイヤモンドスラリー浴中の前記シリコン基板の超音波処理、
(2)ダイヤモンド粉末を用いた前記シリコン基板の研磨、又は、
(3)前記シリコン基板のダイヤモンド切削、
のプロセスのうち少なくとも一つを経て、前記シリコン基板にダイヤモンド粒子を播種する、請求項21のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
前記シリコン基板の最大寸法が、30mm以上である、請求項22のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
前記シリコン基板の最大寸法が、前記シリコン基板の直径である、請求項23のうちいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互作用
本出願は、2015年4月16日に出願された米国仮出願第62/148,339号及び2016年4月7日に出願された米国特許出願第15/093,160号の利益を主張し、参照することによって本願に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本出願は、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を有する薄いダイヤモンドフィルム、基板又は窓に関する。ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、厚さに対する最大寸法として定義される、大きなアスペクト比を有する。また、本発明は、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の製造方法に関する。
【0003】
関連技術の説明
ダイヤモンドは、モース硬度10を有する、既知の最も硬い材料であり、その硬さが、例えば切断、切削、穴あけ、フライス削り等の用途においてダイヤモンドを有用にさせる。また、ダイヤモンドは、最大で2000~2200W/(m・K)の熱伝導率を有する既知の最も熱伝導性が高い材料であり、この熱伝導率が、厳しい条件下における温度管理用途においてダイヤモンドを望ましくさせる。さらに、ダイヤモンドは低い摩擦係数を有し、この摩擦係数が、例えばブレーキ等の用途においてダイヤモンドを汎用性のある材料にさせる。ダイヤモンド上にダイヤモンドを用いると、摩擦係数が低くなり、過酷な条件下での潤滑用途において有利になる。また、ダイヤモンドは、マイクロ波、赤外線、可視光及び他の紫外線電磁波を送信するための優れた光学材料である。さらに、ダイヤモンドは、高フルエンス核放射線の検出器として用いる際、非常に安定である。その上、ダイヤモンドは、高温又は極低温条件下でさえ、強酸、強塩基、強酸化剤又は強還元剤を含み得る化学的環境において、非常に不活性でもある。さらに、ダイヤモンドは、高い屈折率を有し、宝石産業において広く用いられる。
【0004】
ダイヤモンドは、多用途かつ貴重な材料であるにもかかわらず、その入手性は、自然界では限られている。土から採掘されたダイヤモンドは、一般的には単結晶であり、その幾何学的寸法はサイズが制限され、しばしば、大きな寸法を必要とする工業用途においては小さすぎる。多くの場合、自然界で形成されたダイヤモンドは、不純物及び結晶欠陥を含む。結晶サイズが比較的大きく、化学成分が比較的純粋で、結晶欠陥がない比較的完全なダイヤモンド結晶は、非常に高価で、たいていの場合に貴重である。
【0005】
合成ダイヤモンドは、極めて高い圧力及び極めて高い温度下において化学反応器内で工業的に製造される(HTHPプロセス)ことが知られている。このような過酷な合成条件のため、ダイヤモンドの寸法と同様に、反応器のサイズは制限される。また、このプロセスは、過酷で要求が厳しいダイヤモンド成長条件に関係して、プロセス、装置及び安全性において高コストになる。たいていの場合、HTHPプロセスでは、ダイヤモンド格子内へ触媒不純物を取り込むため、黄色がかった色を有するダイヤモンドを製造する。その上、HTHPプロセスでは、大径のダイヤモンドウェハーを製造することができない。
【0006】
工業的に、ダイヤモンドを、化学蒸着(CVD)と呼ばれるプロセスを用いて反応器内で成長させてもよい。この場合、適した成長条件をマイクロ波強化プラズマ、タングステン熱フィラメント、DCジェットプラズマ、レーザー誘起プラズマ、アセチレン・トーチ等によって達成し得る。CVD成長プロセスは、低応力フィルム又はクラックのない大きなサイズのダイヤモンドを得ることが困難であるにもかかわらず、異なる基板及び/又は自立ダイヤモンド厚膜上に多結晶ダイヤモンド薄膜をうまく成長させることができることも、当該技術分野においてよく知られている。
【0007】
多くのダイヤモンドの用途では、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の表面が、光又は電磁波を伝播する目的のために、音波媒体として働く目的のために、又は、光/電磁波を反射する、もしくは、エレクトロニクス、フォトニクス又はオプトエレクトロニクスから、ろう付け又は接着のような結合メカニズムを介して熱エネルギーを取り除く基板として働く目的のために、光学的に滑らかである必要がある。
【0008】
ダイヤモンドは、世界で最も硬い材料の一つであるため、ダイヤモンドの研磨は時間がかかり、費用がかかり、多量の熱を発生し得る。それゆえに、研磨中に接着剤によって所定の位置でダイヤモンドを保持するのは、摩擦により発生した熱が接着剤を溶かし、又は、壊し得るため、良い選択ではない。さらに、ダイヤモンドは壊れやすく、容易に破砕する。その上、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓のCVD成長は、高価な資本設備を必要とする時間のかかるプロセスであり、該プロセスは、非常に狭い領域でダイヤモンドを成長させるために多くの電気エネルギーを使用する。それゆえに、CVDダイヤモンドは高価であり、一又は複数の光学的に仕上げられたダイヤモンド表面に関する要求が満たされるのであれば、多くの用途では、薄いダイヤモンド基板又は窓のみが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓が非常に薄い(例えば、厚さが400ミクロン以下)場合、特に、ダイヤモンドフィルム、窓又は基板が厚さ400ミクロン以下に及ぶ場合には、研磨中に所定の位置でダイヤモンドフィルム、基板又は窓を保持するのは困難である。これは、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓が例えば直径等の少なくとも一つの大きな寸法(25mm以上)を有する場合に特に当てはまる。薄いダイヤモンドフィルム、窓又は基板を光学的に仕上げられた表面に研磨することの制限以上に、高アスペクト比(厚さに対する最大寸法(例えば、限定されるものではないが直径)の比)、特にダイヤモンド部分のアスペクト比が100以上の場合、ダイヤモンド部分をうまく研磨及び製造することにも課題がある。
【0010】
薄く、ダイヤモンド表面の片側又は両側が光学的に仕上げられた、大面積のダイヤモンドフィルム、窓又は基板を製造する必要がある。また、特に、30mm以上の最大寸法(例えば、限定されるものではないが直径)を有するダイヤモンド部品のために、100以上のアスペクト比を有する薄い(厚さが400ミクロン未満)又は厚い(400ミクロン又はそれより厚い)ダイヤモンドフィルム、窓又は基板を製造する必要がある。また、光又は電磁波管理に関して、ドーム、コーン、ピラミッド又は任意の非平面形状等の非平面表面を有するダイヤモンド片は、ダイヤモンドの特異的性質を利用するために必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載される薄いダイヤモンド基板又は窓は、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面及び100以上のアスペクト比、又は、400ミクロン以下の厚さ及び25mm以上の最大形状寸法の組み合わせを含む。
【0012】
薄いダイヤモンド基板又は窓の厚さは、400ミクロン以下、350ミクロン以下、300ミクロン以下、250ミクロン以下又は200ミクロン以下としてもよい。薄いダイヤモンド基板又は窓の最大寸法は、25mm以上、40mm以上、50mm以上、60mm以上、80mm以上又は100mm以上としてもよい。薄いダイヤモンド基板又は窓のアスペクト比は、100以上、125以上、150以上、175以上又は200以上としてもよい。
【0013】
本明細書に記載されるCVDダイヤモンドは、例えばシリコンからなる犠牲基板上で成長し、その表面が必要に応じて光学的に仕上げられていてもよい。アズグロウンダイヤモンド表面は、従来の研磨プロセスによって研磨し、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下又は10nm以下の表面粗さ(Ra)を有する光学的仕上げレベルとしてもよい。そして、表面上にダイヤモンドが成長する犠牲基板を(化学的及び又は機械的に)取り除いて、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を有する自立ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の片を製造してもよい。
【0014】
CVDダイヤモンドが光学的に仕上げられた(例えば、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下又は2nm以下の表面粗さRa)犠牲基板の表面上に成長する場合、CVD成長ダイヤモンドの核生成側は、犠牲基板の表面粗さとほぼ一致する表面粗さRaを有する。一例では、CVD成長ダイヤモンドの核生成側は、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下又は2nm以下の基板のRaに対して、それぞれ、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下又は10nm以下のRaを有する。ダイヤモンドが、犠牲基板の表面上でCVD成長した後、犠牲基板とは反対側のCVD成長ダイヤモンド側を、従来の研磨プロセスによって、必要に応じて研磨してもよい。本明細書に記載されるCVDダイヤモンドが光学的に仕上げられていない犠牲基板の表面(例えば、化学的にエッチングされた及び/又は機械的に仕上げられた表面)上に成長する場合、CVD成長ダイヤモンドの成長側表面を、従来の研磨プロセスによって研磨してもよい。そうすると、CVD成長ダイヤモンドは、成長側(50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下又は10nm以下の表面粗さ(Ra))上に光学的に仕上げられた表面を一つだけ有する。
【0015】
同様のプロセスは、非平面の光学的に仕上げられた表面(50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下又は10nm以下の表面粗さ(Ra))を有するダイヤモンドの片を製造するためにも適用可能である。一例では、非平面表面は、ドーム、コーン、ピラミッド、非球面、放物線及び双曲線、又は、他の非平面形状を含み得る。本明細書に記載された薄いダイヤモンド窓又は基板を製造する方法もまた開示される。少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を有する薄いダイヤモンド基板又は窓を成長させるための調整された成長条件もまた開示される。
【0016】
本発明の様々な好ましい及び限定されない例又は態様を説明し、以下の番号を付けた項で述べる。
【0017】
第1項:少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を含み、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の最大寸法をダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さで割ったアスペクト比が100以上であり、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さが150ミクロン以上である、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【0018】
第2項:400ミクロン以下(0.4mm以下)の厚さ、及び、25mm以上の前記最大寸法を有する、第1項に記載のダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【0019】
第3項:少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面が、50nm以下の表面粗さ(Ra)を有する、第1項又は第2項に記載のダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【0020】
第4項:前記最大寸法が40mm以上である、第1項~第3項のうちいずれか一つに記載のダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【0021】
第5項:前記厚さが、350ミクロン以下である、第1項~第4項のうちいずれか一つに記載のダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【0022】
第6項:前記アスペクト比が、125以上である、第1項~第5項のうちいずれか一つに記載のダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【0023】
第7項:前記最大寸法が、前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の直径である、第1項~第6項のうちいずれか一つに記載のダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【0024】
第8項:遮蔽レンズから34cmの距離における1.06ミクロン光散乱係数が、20/cm以下である、第1項~第7項のうちいずれか一つに記載のダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【0025】
第9項:ダイヤモンド核生成密度が、1.0×10/cm上である、第1項~第8項のうちいずれか一つに記載のダイヤモンドフィルム、基板又は窓。
【0026】
第10項:(a)シリコン基板を提供する工程と、(b)前記シリコン基板の表面上に、100以上のアスペクト比を有し、厚さが150ミクロン以上であるダイヤモンドフィルム、基板又は窓をCVD成長させる工程であって、前記アスペクト比が、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の最大寸法を前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さで割った比である工程と、を含む、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓を形成する方法。
【0027】
第11項:前記シリコン基板が、2mm以上の厚さを有する、第10項に記載の方法。
【0028】
第12項:さらに、工程(b)の前に、20nm以下の表面粗さ(Ra)を有する光学的仕上げまでシリコン基板表面を研磨する工程を含む、第10項又は第11項に記載の方法。
【0029】
第13項:CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側は、前記シリコン基板の研磨された表面のRaよりも大きいRaを有し、前記シリコン基板の研磨された表面のRaが20nm以下である場合には、CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側のRaが、50nm以下である、第10項~第12項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0030】
第14項:前記シリコン基板表面、及び、CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側は、それぞれ750nm以上の表面粗さ(Ra)を有する、第10項~第13項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0031】
第15項:さらに、前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓がまだ前記シリコン基板上にある間に、前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長表面を50nm以下の表面粗さ(Ra)まで研磨する工程を含む、第10項~第14項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0032】
第16項:前記シリコン基板の表面、及び、CVD成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側は非平面であり、CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側の形状は、前記シリコン基板の表面形状に適合する反転形状である、第10項~第15項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0033】
第17項:CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側は、ドーム、コーン、ピラミッド、非球面、放物線及び双曲線の形状のうちいずれか一つを有する、第10項~第16項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0034】
第18項:さらに、CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓から前記シリコン基板を化学的又は機械的に除去する工程を含む、第10項~第17項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0035】
第19項:CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長側は、CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側よりも大きな熱伝導率を有する、第10項~第18項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0036】
第20項:さらに、CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長表面に光管理コーティングを適用する工程、及び/又は、CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓から前記シリコン基板を除去した後に、CVD成長した記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側に前記光管理コーティングを適用する工程のうち少なくとも一つを含む、第10項~第19項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0037】
第21項:さらに、シリコン基板表面上で成長した前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓を有する前記シリコン基板を一又は複数の片に切断する工程を含む、第10項~第20項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0038】
第22項:工程(b)は、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素及びホウ素のうち少なくとも一つを含む雰囲気下で、前記ダイヤモンドフィルム、基板又は窓をCVD成長させる工程を含む、第10項~第21項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0039】
第23項:工程(b)の前に、前記シリコン基板の表面にダイヤモンド粒子を播種する、第10項~第22項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0040】
第24項:(1)含水ダイヤモンドスラリー又は有機ダイヤモンドスラリー浴中における前記シリコン基板の超音波処理、(2)ダイヤモンド粉末を用いた前記シリコン基板の研磨、又は、(3)前記シリコン基板のダイヤモンド切削、のうち少なくとも一つを経て、前記シリコン基板にダイヤモンド粒子を播種する、第10項~第23項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0041】
第25項:(1)液体懸濁液中のサブミクロン又はミクロンサイズのダイヤモンド粉末から構成される超音波浴中における前記シリコン基板の超音波処理、及び、(2)液体懸濁液中の平均粒子径が100nm未満のナノ結晶ダイヤモンド粉末から構成される超音波浴中における前記シリコン基板の超音波処理、のうち少なくとも一つを経て、前記シリコン基板にダイヤモンド粒子を播種する、第10項~第24項のうちいずれか一つに記載の方法。前記液体懸濁液は、水、アルコール、炭化水素又は他の有機溶媒のうち一又は複数を含み得る。
【0042】
第26項:前記シリコン基板の最大寸法が、30mm以上である、第10項~第25項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0043】
第27項:前記シリコン基板の最大寸法が、前記シリコン基板の直径である、第10項~第26項のうちいずれか一つに記載の方法。
【0044】
第28項:シリコン基板上にCVD成長したダイヤモンドフィルム、基板又は窓を含み、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さが150ミクロン以上であり、200ミクロン以上の全厚さを有し、直径が20mm以上である、ダイヤモンド-シリコン複合基板。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1A図1Aは、犠牲基板上にダイヤモンドフィルム、窓又は基板をCVD成長させる一例の方法のフロー図であって、前記方法の一つの経路では、成長したダイヤモンドフィルム、窓又は基板の核生成側又は表面のみが光学的に仕上げられた表面を有し、前記方法のもう一つの経路では、成長したダイヤモンドフィルム、窓又は基板の両方の核生成側又は表面が光学的に仕上げられた表面を有する。
図1B図1Bは、犠牲基板上にダイヤモンドフィルム、窓又は基板をCVD成長させる一例の方法のフロー図であって、成長したダイヤモンドフィルム、窓又は基板の核生成側又は表面が光学的に仕上げられた表面を有さず、成長したダイヤモンドフィルム、窓又は基板の成長側又は表面が光学的に仕上げられた表面を有する。
図2図2は、犠牲基板(例えばシリコン)上にダイヤモンドフィルム、窓又は基板を成長させるために使用することができるマイクロ波プラズマCVD反応器の一例である。
図3A図3Aは、犠牲基板の成長表面に形成されたパターン「II-VI」を含む犠牲基板上へ適合して成長したダイヤモンドフィルム、窓又は基板の写真である。
図3B図3Bは、図3Aに示すダイヤモンドフィルム、窓又は基板の核生成側の拡大図である。
図3C図3Cは、図3Aに示すダイヤモンドフィルム、窓又は基板の成長側の拡大図である。
図4図4は、図3Aに示すダイヤモンドフィルム、窓又は基板の成長側中央部、成長側端部、核生成側中央部及び核生成側端部のラマングラフを示す、ラマン強度対波長のグラフである。
図5A図5Aは、本明細書に記載された指針に従った、図2のマイクロ波プラズマCVD反応器内で「反転形状」の犠牲基板上に適合して成長する一形状のダイヤモンドフィルム、窓又は基板である。
図5B図5Bは、本明細書に記載された指針に従った、図2のマイクロ波プラズマCVD反応器内で「反転形状」の犠牲基板上に適合して成長する一形状のダイヤモンドフィルム、窓又は基板である。
図5C図5Cは、本明細書に記載された指針に従った、図2のマイクロ波プラズマCVD反応器内で「反転形状」の犠牲基板上に適合して成長する一形状のダイヤモンドフィルム、窓又は基板である。
図5D図5Dは、本明細書に記載された指針に従った、図2のマイクロ波プラズマCVD反応器内で「反転形状」の犠牲基板上に適合して成長する一形状のダイヤモンドフィルム、窓又は基板である。
図5E図5Eは、本明細書に記載された指針に従った、図2のマイクロ波プラズマCVD反応器内で「反転形状」の犠牲基板上に適合して成長する一形状のダイヤモンドフィルム、窓又は基板である。
図5F図5Fは、本明細書に記載された指針に従った、図2のマイクロ波プラズマCVD反応器内で「反転形状」の犠牲基板上に適合して成長する一形状のダイヤモンドフィルム、窓又は基板である。
図6A図6Aは、本明細書に記載された実施例3に従って成長した、ラッピングされたダイヤモンド-シリコン複合基板の拡大断面図(視野=4.33mm)である。
図6B図6Bは、本明細書に記載された実施例3に従って成長した、ラッピングされたダイヤモンド-シリコン複合基板の拡大断面図(視野=649.6μm)である。
図7図7は、トレイに配置された、本明細書に記載された実施例6に従って成長した自立ダイヤモンドフィルム4の写真である。
図8図8は、図7に示す自立ダイヤモンドフィルム4の核生成側/表面のSEM写真である。
図9図9は、本明細書に記載されたそれぞれ実施例8~10に従って成長した自立ダイヤモンドフィルム4の光散乱係数の3つのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の例は、添付の図面を参照して説明され、同じ符号は、同様又は機能的に等しい要素に対応する。
【0047】
一例では、ダイヤモンドフィルム、窓又は基板は、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を含むことができ、アスペクト比を100以上とし得る。別の例では、ダイヤモンドフィルム、窓又は基板は、400ミクロン以下の厚さと、25mm以上の幾何学的寸法(最大寸法)との組み合わせを含んでいてもよい。光学的に仕上げられた表面は、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下又は10nm以下の表面粗さRaを有していてもよい。
【0048】
ダイヤモンドフィルム、窓又は基板は、25mm以上、40mm以上、50mm以上、60mm以上、70mm以上、80mm以上又は100mm以上の最大幾何学的寸法を有していてもよい。
【0049】
ダイヤモンドフィルム、窓又は基板は、400ミクロン以下、350ミクロン以下、300ミクロン以下、250ミクロン以下又は200ミクロン以下であってもよい。
【0050】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓のアスペクト比(本明細書では、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さに対するダイヤモンドフィルム、基板又は窓の最大寸法として定義される)は、100以上、125以上、150以上、175以上又は200以上であってもよい。
【0051】
可視光又は電磁波を透過するために、ダイヤモンドフィルム、窓又は基板の片側又は両側の表面を、光学的に仕上げてもよい。光エネルギーの吸収が少ない高品質ダイヤモンドが望ましい可能性がある。実際、少量の光吸収が望ましいことがある。ランベルト・ベールの法則によると、以下の通りである。
【0052】
【数1】
【0053】
ここで、Aは吸光度、Iは透過光強度、Iは入射光強度、ελは吸光係数、lは光路の長さ、cは光吸収分子の濃度である。
【0054】
ダイヤモンドフィルム、窓又は基板を通る光吸収を低減する一つの方法は、ダイヤモンドの品質に変化がないとすれば、光路の長さ、例えば、透光性ダイヤモンドフィルム、窓又は基板の厚さlを減らすことである。また、ダイヤモンドフィルム、窓又は基板を透過する間の光散乱は、光路の長さ(光がダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さに垂直に進む場合、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さに等しい)に直接相関し得る。一例では、最少量の光を吸収及び/又は散乱させる目的で、薄いダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、光学的に仕上げられた両側表面を有していてもよい。
【0055】
可視光又は電磁波を反射する、又は、温度管理のために、エレクトロニクス、フォトニクス又はオプトエレクトロニクス(例えば、限定されるものではないが、レーザーダイオード、レーザーダイオードアレイ(バー)、面発光型半導体レーザー、面発光型半導体レーザーのアレイ、発光デバイス等)等のデバイスに結合する用途では、ダイヤモンドフィルム、窓又は基板の少なくとも一つの表面を、光学的に仕上げてもよい。電磁波を反射するためのダイヤモンドフィルム、窓又は基板の厚さは、数(1~9)ミクロン、数十(10~99)ミクロン、又は、数百(100~999)ミクロンであってもよい。一例では、ダイヤモンドフィルム、窓又は基板が薄いほど、コストは低くなる。一例では、温度管理のために、150~200ミクロンの厚さのダイヤモンドフィルム、窓又は基板が、多くの用途において、熱源から熱エネルギーを奪うのに十分となり得る。それゆえに、例えば電磁波の反射又は温度管理の用途で要求されるよりも厚いダイヤモンドフィルム、窓又は基板は、単にコストの増加を意味し、必ずしも必要ではない。
【0056】
ここで、本明細書で記載するダイヤモンドフィルム、窓又は基板を言及する場合、ダイヤモンドフィルム、窓又は基板等の語は、個々に、又は、組み合わせて、交換可能に用いられてもよい。
【0057】
ダイヤモンドは硬い材料であると同時に、非常に脆い。ダイヤモンドフィルムが薄い(例えば、400×10-6m以下)場合、及び、最大幾何学的寸法が大きい場合、ダイヤモンドフィルム片は、非常に壊れやすい。例えばCVDによって、厚さが薄く、その最長寸法が大きいダイヤモンドフィルム片を単独で成長させることは、困難である。
【0058】
一例の従来技術の多結晶ダイヤモンドフィルム成長プロセスは、ダイヤモンドフィルムが特定の厚さに達するまで、高温で金属基板上にダイヤモンドフィルムを成長させる工程を含み、そうすると、ダイヤモンドフィルムの熱膨張係数(CTE)(1×10-6m/m-K)と金属基板のCTE(タングステンの場合は4.6×10-6m/m-K、モリブデンの場合は5.0×10-6m/m-K等)との差に起因して、ダイヤモンドフィルムが金属基板から望ましくない層間剥離が起こる。金属基板上のダイヤモンドフィルムの厚さが1mm以上である場合、ダイヤモンドフィルムは層間剥離を免れるが、しばしば望ましくない割れが生じ、ダイヤモンドフィルムからダイヤモンド部品を切り出す(採取する)可能性を低下させる。ダイヤモンドフィルムの厚さが500ミクロンよりも小さい場合、ダイヤモンドフィルムの破砕又は亀裂の問題が象徴的になる。ダイヤモンドフィルムの厚さが300~400ミクロン以下の場合、(タングステン又はモリブデンのような)金属基板から、サイズが顕著な、割れていない、又は、破砕していないダイヤモンドフィルムの片を採取することが困難になる。それゆえに、従来技術では、一又は複数の光学的に仕上げられた表面を有し、かつ、顕著な最大寸法、例えば直径を有する、薄い(例えば400×10-6m以下)ダイヤモンドフィルム、窓又は基板を製造する工程は、従来の薄化/研磨プロセスが使用されると仮定すると、厚いアズグロウンダイヤモンドフィルムから開始しなければならなかった。これは、高価な成長及び製造プロセスとなる。
【0059】
上述のように、ダイヤモンドは硬く、脆い。ダイヤモンドフィルムは、厚さが薄く、大きな寸法、例えば直径を有する場合、壊れやすくなる。ダイヤモンドは、不活性でもある。ダイヤモンドを研磨する工程は、主に、ダイヤモンド粒子を必要とする機械的な力を用いて行う。それゆえに、特にダイヤモンドの厚さが400ミクロン以下であり、最大寸法、例えば直径が40mm以上である場合、研磨中に所定の位置で薄いダイヤモンドの片を保持することは困難になる。ダイヤモンドフィルムの厚さが薄くなる(例えば300ミクロン以下)場合、最大寸法が25mm以上であるダイヤモンドの片を研磨することは、ほぼ不可能になる。それゆえに、従来の方法で、最大寸法が顕著であり、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を有する薄いダイヤモンドフィルム、窓又は基板の片を製造するために、厚いアズグロウンダイヤモンドウェハーの片を使用することは、費用がかかるだけでなく、困難である。
【0060】
本明細書に記載された指針に従った薄いダイヤモンドフィルム、基板又は窓を製造する方法の例は、図1A及び1Bのフロー図に示す。本明細書に記載された例は、一寸法、例えば直径が大きい犠牲基板(例えばシリコン)を用いる。
【0061】
図1Aを参照して、光学的に仕上げられた片側又は両側の表面を有するダイヤモンドフィルムを製造する一例は、図1Aのフロー図を参照して説明する。
【0062】
工程100では、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を有する基板が提供される。工程102では、光学的に仕上げられた表面は、必要に応じて、ダイヤモンド粒子を用いて、又は、ダイヤモンド切削によって播種される。工程104では、光学的に仕上げられた表面(播種された、又は、播種されていない)を有する基板は、CVD成長装置(例えば、図2に示すCVD反応器16)の内部に配置される。工程106では、ダイヤモンドフィルムが、基板上にCVD成長する。
【0063】
一例では、ダイヤモンドフィルムが光学的に仕上げられた表面(核生成表面)を一つだけ有することが望ましい場合、工程106に続いて、基板材料が化学的及び/又は機械的に除去される工程116が実行される。ダイヤモンドフィルムの核生成表面が光学的に仕上げられた基板表面上にCVD成長したので、工程116における基板の除去によって、工程118で、片側(核生成側)が光学的に仕上げられた表面を有する自立ダイヤモンドフィルムを生成する。
【0064】
一例では、ダイヤモンドフィルムの成長側表面が光学的に仕上げられていることが望ましい場合、工程106に続いて、ダイヤモンドフィルムがまだ基板上にある間に、ダイヤモンドフィルムの成長表面を研磨する工程108が実行される。一例では、研磨されたダイヤモンド成長表面と基板材料の層とを含む複合基板を製造することが望ましい場合、工程108に続いて、基板層を薄くして、基板に接着し、研磨して光学的に仕上げられたダイヤモンドフィルムの成長表面を含む複合基板を製造する工程114が実行される。
【0065】
あるいは、両側表面が光学的に仕上げられたダイヤモンドフィルムを有することが望ましい場合、工程108に続いて、基板材料が化学的及び/又は機械的に取り除かれる工程110が実行される。ダイヤモンドフィルムの核生成表面が光学的に仕上げられた基板表面上にCVD成長し、かつ、ダイヤモンドフィルムの成長表面が工程108で研磨されたので、工程110における基板の除去は、工程112で、光学的に仕上げられた表面を両側(成長側及び核生成側)に有する自立ダイヤモンドフィルムを生成する。
【0066】
ここで、図1Bを参照して、成長面上に光学的に仕上げられた表面を有するダイヤモンドフィルムを製造する一例について説明する。工程200では、光学的に仕上げられた表面を有さない基板が提供される。工程202では、ダイヤモンドフィルムがCVD成長する基板表面を、必要に応じて、ダイヤモンド粒子を用いて、及び/又は、ダイヤモンド切削によって播種する。次に、工程204では、基板(播種された、又は、播種されていない)を、CVD成長装置(例えば、図2に示すCVD反応器16)の内部に配置する。工程206では、ダイヤモンドフィルムが、基板上でCVD成長する。
【0067】
工程208では、ダイヤモンドフィルムの成長表面を、ダイヤモンドフィルムがまだ基板上にある間に研磨する。基板に接着し、研磨して光学的に仕上げられたダイヤモンドフィルムの成長表面を含む複合基板を製造することが望ましい場合、工程210に進み、基板を、前記複合基板を製造するために薄くする。
【0068】
ただ一つの光学的に仕上げられた表面を有する自立ダイヤモンドフィルムを製造することが望ましい場合、工程208から工程212へ進み、基板を化学的及び/又は機械的に除去する。そして、工程214では、光学的に仕上げられた表面を有するダイヤモンドフィルムの成長表面、及び、光学的に仕上げられた表面を有さない基板側上に成長する核生成側のおかげで、光学的に仕上げられていない表面を有するダイヤモンドフィルムの核生成側を備える自立ダイヤモンドフィルムを製造する。
【0069】
シリコンの熱膨張係数(CTE)は、約3.0×10-6m/m-Kであり、一方で、ダイヤモンドのCTEは、約1.0×10-6m/m-Kである。ダイヤモンドフィルムは、一般的に、高温で成長する。基板(犠牲的又は恒久的)上でのダイヤモンドフィルムの成長が終わると、温度が実質的にダイヤモンド成長温度から室温に低下し、そうすると、成長したダイヤモンドフィルムと基板(例えばシリコン)との間のCTEの不一致が、通常、ダイヤモンドフィルム及び/又は基板の割れを引き起こす。これは、シリコン等の基板の一又は複数の寸法が大きい場合に、特に深刻である。その上、金属基板(例えばタングステン及びモリブデン)と異なり、シリコンは脆く、CVDダイヤモンド成長プロセス中、CVDプラズマ起動で基板上に残ることができない。
【0070】
以下の比較例1では、シリコンウェハー(直径が6インチ、厚さが625ミクロン)をダイヤモンドフィルム成長のための犠牲基板として用いた。残念ながら、プラズマ調整プロセス中、これらのシリコンウェハーの各々は破砕した。
【0071】
驚くべきことに、例えばシリコンディスク等の厚い(2mm以上)犠牲基板の片のみが、プラズマ調整プロセスに耐えることができることを発見した。一例では、シリコンディスクは、2mm以上の厚さ、4mm以上の厚さ、6mm以上の厚さ、又は、8mm以上の厚さであってもよい。
【0072】
別の例では、CVDダイヤモンド成長のために光学的に仕上げられた表面を有する、例えばシリコン等の犠牲基板を使用する。前記犠牲基板上でCVDダイヤモンドが成長後、犠牲基板は化学的(腐食剤又はフッ化水素によって)及び/又は機械的に(研磨及び/又はラッピングによって)除去され、結果的に従来の研磨プロセスを必要としない光学的に仕上げられたダイヤモンド表面(核生成側上)が得られる。これによって、核生成側上に光学的に仕上げられた表面を有する自立ダイヤモンドフィルムの薄い片を効率的で経済的に製造することができる。
【0073】
別の例では、ダイヤモンドフィルムがまだ犠牲基板(例えばシリコン)上にある間に、アズグロウンダイヤモンド(成長)表面(核生成側の反対側)を研磨する。この場合、ダイヤモンドフィルムと犠牲基板とを組み合わせた全厚さは、従来の研磨プロセスが、研磨プロセス中にダイヤモンドフィルムが破砕するという重大なリスクを伴わず、前記組み合わせを保持して研磨することを可能にする十分な厚さであり得る。アズグロウンダイヤモンドフィルムの成長側上で光学レベルの仕上げを達成した後、ダイヤモンドフィルムと犠牲基板との組み合わせは、犠牲基板を化学的及び/又は機械的に除去するプロセスを経ることができる。このプロセスの最後には、ダイヤモンドフィルムの薄い片は、光学的に仕上げられた両側の表面(成長及び核生成)を有する。
【0074】
多結晶ダイヤモンドフィルムの成長側は、ダイヤモンドフィルムの核生成側よりも良好な熱伝導率を有し得ることが知られている。この場合、ダイヤモンドの成長側表面だけ光学的に仕上げればよい。それゆえに、別の例では、光学的に仕上げられていない(例えば、化学的にエッチングされた及び/又は機械的にラッピングされた表面)シリコン等の犠牲基板を、犠牲基板として用いてもよい。
【0075】
一例では、犠牲基板上に成長したダイヤモンドフィルムの片の核生成側は、銅等の別の従来の温度管理材料と比較して、良好な熱伝導率であり得る。それゆえに、光学的に仕上げられたダイヤモンド表面の核生成側を備えれば十分である。この場合、別の例では、ダイヤモンドフィルムの核生成側に光学的に仕上げられた表面を有するシリコン等の犠牲基板を使用する。ダイヤモンドフィルム成長後、成長表面(核生成側の反対側)を、必要に応じて、平らにラッピングし、その後、化学的エッチング及び/又は機械的ラッピング/研磨によって犠牲基板を除去することができる。このプロセスは、結果的に、従来の研磨プロセスに頼らず、ダイヤモンドフィルムが研磨中に破砕又は破壊するリスクを避けて、核生成側上に光学的に仕上げられた表面を有する薄い(例えば400×10-6m以下)ダイヤモンドフィルムをもたらし得る。
【0076】
別の例では、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を有する犠牲基板上にダイヤモンドフィルムをCVD成長させた後、ダイヤモンドフィルム(犠牲基板の除去後)の光学的に仕上げられた(核生成)表面は、例えば、反射防止コーティング、ビームスプリッターコーティング、全反射コーティング等の光管理コーティングを用いて、覆われてもよい。このようなダイヤモンドフィルムを、特定の用途に適した異なる幾何学的寸法にレーザーカットしてもよい。レーザーカットは、ダイヤモンド層がまだ犠牲基板(例えばシリコン)上にある間に行ってもよく、レーザーカットの前に、アズグロウンダイヤモンド表面を、必要に応じて、ラッピングし、及び/又は、研磨してもよい。
【0077】
一例では、ダイヤモンドフィルムは、光学的品質(0.5/cm以下の吸光度を有し、赤外光、近赤外光、可視光又は紫外光等の電磁波の吸収が低い)としてもよい。一例では、ダイヤモンドフィルムはまた、マイクロ波用途のための低い損失正接を有していてもよい(1×10-2以下の損失正接を有する)。一例では、ダイヤモンドフィルムはまた、機械的及び/又は熱的グレードのダイヤモンド(暗色であってもよく、例えば800W/m-K以上の熱伝導率を有していてもよい)としてもよい。一例では、ダイヤモンドフィルムはまた、検出器グレードのダイヤモンド(100ミクロン以上の電荷収集距離を有する)及び/又は電気化学的グレードのダイヤモンドとしてもよい。
【0078】
一例では、ダイヤモンドフィルムは、マイクロ波支援プラズマCVDプロセス、熱フィラメントCVDプロセス、熱スプレーCVDプロセス、アーク放電プラズマCVDプロセス、直流熱プラズマCVDプロセス、高周波プラズマCVDプロセス、水プラズマCVDプロセス、アセチレン・トーチCVDプロセス、超高周波プラズマCVDプロセス等によって成長させてもよい。
【0079】
一例では、ダイヤモンドフィルムの成長温度は、600℃~1300℃以上の範囲としてもよい。一例では、ダイヤモンドフィルムの成長速度は、サブミクロン/時間~20ミクロン/時間以上としてもよい。一例では、ダイヤモンドフィルムをCVD成長させるためのメタン濃度は、水素中で1%に満たない値から5%に達する範囲としてもよい。一例では、例えば、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、ホウ素等の他の添加材もまた、ダイヤモンド成長速度制御及び/又はダイヤモンド品質制御の目的で、CVD成長装置内に加えてもよい。
【0080】
一例では、光学的に仕上げられているか、又は、光学的に仕上げられていない、シリコン等の犠牲基板の表面を、ダイヤモンド粒子を用いた超音波処理によって、含水ダイヤモンドスラリー又は有機ダイヤモンドスラリーを用いたダイヤモンド粉末又はスラリーを用いた研磨によって、又は、ダイヤモンド切削によって、播種してもよい。
【0081】
一例では、ダイヤモンド成長のためのシリコン等の犠牲基板は、直径25mm以上、直径2インチ(50.8mm)以上、直径66mm以上、直径3インチ(76.2mm)以上、直径4インチ(101.6mm)以上、又は、直径5インチ(127mm)以上としてもよい。
【0082】
一例では、シリコン等の犠牲基板の厚さは、2mm以上、4mm以上、6mm以上又は8mm以上としてもよい。
【0083】
一例では、犠牲基板(例えばシリコン)の表面は、光学的に仕上げられ、化学的にエッチングされ、及び/又は、例えばラッピング及び/又は研磨によって機械的に仕上げられてもよい。一例では、犠牲基板(例えばシリコン)の光学的に仕上げられた表面の表面粗さRaを、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下又は2nm以下としてもよい。
【0084】
一例では、例えば、ダイヤモンド構造の光学的に仕上げられた表面を必要とするドーム(図5A)、コーン(図5B)、ピラミッド(図5C)、非球面(図5D)、放物線(図5E)、双曲線(図5F)、又は、他の非平面形状等の非平面形状のダイヤモンド構造の場合、ダイヤモンド表面を研磨することは困難である。たとえ可能であったとしても、厚くて大きな寸法のダイヤモンドブロックの片をこのような非平面形状に研磨することは、過剰な時間及びコストを必要とし、無駄になるダイヤモンドの量が極度に増える。それゆえに、一例では、CVDダイヤモンドは、光学的に仕上げられた表面輪郭が最終的なダイヤモンド基板の所望の輪郭及び形状の反転形状を有する犠牲基板(例えばシリコン)上に成長してもよい。ダイヤモンド成長後、犠牲基板(例えばシリコン)は、エッチング(例えばKOH又はHFを用いる)によって化学的に除去され、及び/又は、研磨及びラッピングによって機械的に除去されてもよい。一例では、ダイヤモンドフィルムがCVD成長し得る犠牲基板の非平面表面の輪郭を、ダイヤモンド切削プロセス又は一般的な光学的製造プロセスによって製造してもよい。犠牲基板の非平面表面は、一又は複数の一般的な製造プロセスを用いて形成され得る適切な及び/又は望ましい形状に作られてもよい。このような形状は、例えば、ドーム(図5A)、コーン(図5B)、ピラミッド(図5C)、非球面(図5D)、放物線(図5E)、双曲線(図5F)、又は、他の非平面形状を含む。
【0085】
本明細書で記載されるダイヤモンドフィルムの例は、光/電磁波管理用の光学窓;エレクトロニクス、フォトニクス及びオプトエレクトロニクスの温度管理用の基板;化学的不活性、音波管理、電磁波管理、摩擦制御及び検出器を含む使用のための基板;及び、例えば、限定されるものではないが、フライス削り、切断、穴あけ、レース加工等の機械的使用のための材料として用いてもよい。
【0086】
別の例では、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、遮蔽レンズから34cmの距離での1.06ミクロン光散乱係数が、20/cm以下、15/cm以下、10/cm以下、7/cm以下又は5/cm以下であってもよい。このような光散乱係数は、光学的用途、温度管理用途、音響管理用途等に適する可能性がある。
【0087】
別の例では、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、1.0×10/cm以上、1.0×10/cm以上、1.0×10/cm以上、1.0×10/cm以上又は1.0×10/cm以上のダイヤモンド核生成密度を有していてもよい。このようなダイヤモンド核生成密度は、音響管理のための音響波伝播、温度管理のためのフォノン伝播、光管理のためのフォトン伝播に適する可能性がある。このようなダイヤモンド核生成密度はまた、機械的用途、低い気孔率が望ましい化学的不活性、表面摩擦制御等にも適する可能性がある。
【0088】
以下の実施例及び比較例は、例示のためのものであって、限定されるものではない。
【0089】
走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、エネルギー分散型分析X線(EDAX)検出器を備えた走査型電子顕微鏡を用いて得た。
【0090】
ラマンスペクトルは、ラマン顕微鏡(共焦点)によって得た。ラマン分光法は、ダイヤモンド、単結晶又は多結晶の評価の標準として広く用いられている。それは、炭素の異なる形態(同素体)(例えばダイヤモンド、グラファイト、バッキーボール等)の各々を容易に区別可能な識別特性がある。フォトルミエッセンス(PL)技術を組み合わせることで、ラマン分光法は、相純度、結晶サイズ及び配向、欠陥レベル及び構造、不純物の種類及び濃度、並びに、応力及び歪みを含むダイヤモンドの様々な特性を評価するための非破壊的方法を提供する。特に、1332cm-1の一次ダイヤモンドラマンピークの幅(半値全幅FWHM)は、ダイヤモンドピークとグラファイトピークとの間のラマン強度比(1350cm-1のDバンド及び1600cm-1のGバンド)と同様に、ダイヤモンド品質を示す直接の指標である。さらに、ダイヤモンド粒子及びフィルムの応力及び歪みレベルは、ダイヤモンドラマンピークシフトから推定し得る。静水圧応力下でのダイヤモンドラマンピークシフトの変化量は、約3.2cm-1/GPaであり、引張応力下では低い波数、圧縮応力下では高い波数にピークシフトすることが報告されている。ここで表わされるラマンスペクトルは、514nm励起レーザーを備えるラマン分光器を用いて得た。
【0091】
研磨されたダイヤモンドフィルムの片又はシリコンの片の表面における表面粗さ(Ra)及びPeak-to-Valley(PV)測定値は、20倍対物レンズを備えた干渉計によって得られた。測定面積は、200ミクロン×350ミクロンであった。
【0092】
マイクロ波プラズマによってダイヤモンドの化学蒸着が向上されることは、当該技術分野においてよく知られている。図2は、本明細書に記載される方法で多結晶ダイヤモンド4を成長させるために使用することができるマイクロ波プラズマCVDシステム2の一例を示す概略図である。図2に示すCVDシステム2の使用において、水素及びメタンを含む反応性ガス6の混合物を、マイクロ波プラズマCVD反応器16内へ流入させる。反応性ガス6の混合物の流量は、マスフローコントローラ8によって調整される。排出ガス10は、CVD反応器16から、主として真空ポンプ12へ流れる。マイクロ波エネルギーは、一般的にマグネトロン14によって生成され、石英窓18を通ってCVD反応器16へ誘導される。反応器16内では、マイクロ波エネルギーは、プラズマ20に変換され、反応性ガス6の水素分子を水素フリーラジカルにラジカル化させ、同様に、反応性ガス6のメタン分子をメチルフリーラジカル、メチレンフリーラジカル、メチンフリーラジカル、及び、2以上の炭素を含む二次又は三次フリーラジカルにラジカル化させる。CVD反応器16の底部には、その上で多結晶ダイヤモンドフィルム4が成長する基板24を支持する基板ホルダー22又は土台が配置される。シリコン、チタン、ニオブ、モリブデン、タングステン、タンタル、又は、必要に応じて適切な炭化物形成物の基板24を基板ホルダー22上に配置してもよい。
【0093】
プラズマ20が発生中、炭素種を含むラジカル化されたフリーラジカルは、基板24の表面に衝突し、「ヒットアンドスティック」と呼ばれるメカニズムによって炭素種が定着する。プラズマ20によって生成された水素フリーラジカルは、まだ水素原子を含む固定表面炭素種に衝突し、水素原子をこのような固定炭素種から引き抜き、水素原子の数がより少ないC-C結合を形成するために、すべての水素原子が引き抜かれるまで、表面炭素フリーラジカルを形成する。いくつかの純粋な炭素-炭素結合は、本質的にspであり得、これはダイヤモンド格子にとって望ましい。いくつかの純粋な炭素-炭素結合は、本質的にspであり得、これは本質的にグラファイトにあるものであるから望ましくない。しかしながら、水素フリーラジカルは、sp炭素をダイヤモンド格子から取り除くよりも速く、sp炭素をグラファイト種から取り除くことができる。
【0094】
プラズマ20のサイズが、基板24の表面を覆うのに十分な大きさのサイズに調整される場合、反応性ガス6の混合物中の水素及びメタンの濃度は、成長温度に加えて、ダイヤモンド成長のための重大なパラメーターであることが、当該技術分野においてよく知られている。マイクロ波エネルギー及び反応器16内の圧力は、基板サイズに大きく依存する。当業者は、本明細書で記載された手順及び指示に従い、高品質のダイヤモンドフィルム、窓又は基板の播種、蒸着及び成長の目的で、プラズマ20を、異なるサイズの基板24を覆うのに十分な大きさの適切なサイズに調整することができるはずである。
【0095】
以下の各実施例及び比較例において、図2に示される符号は、同一又は機能的に同等の要素に用いられる。
【0096】
実施例1:光学的に仕上げられた一つの表面を有するダイヤモンドフィルムの製造方法
【0097】
図3A~3Cを参照して、また引き続き図2を参照して、一例では、直径66mm、厚さ11.5mmの単結晶シリコンの片は、一般的なシリコンの製造方法を用いて製造され、シリコン基板24として使用された。基板24の表面1をダイヤモンド切削して、Raが6~7nmの光学的に仕上げられた表面とした。ロゴ「II-VI」もまたダイヤモンド切削によって、シリコン基板24の表面1に「II-VI」パターンの溝を窪むように切削した。そして、シリコン基板24を、ダイヤモンド切削され、光学的に仕上げられた表面(表面1)が石英窓18の方へ向くように、CVD反応器16内に配置した。水素及びメタン、例えば1,850mL/minの水素及び13.6mL/minのメタンを含む反応性ガス6の混合物を、マスフローコントローラ8の調整下で、マイクロ波プラズマCVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズがシリコン基板24の表面1を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、800℃に制御した。168時間のダイヤモンド成長後、成長反応を停止し、厚さが285ミクロンの多結晶ダイヤモンドフィルム4が、シリコン基板24の表面1上に適合して蒸着された。次に、シリコン基板をダイヤモンドフィルム4から、高温でKOH水溶液を用いて剥がし、続いてHF-HNOを用いて剥がし、直径66mm、厚さ285ミクロン、アスペクト比231である自立ダイヤモンドフィルム4を得た。シリコン基板24の表面1上に成長した自立ダイヤモンドフィルム4の核生成表面は、9.1nmの表面粗さ(Ra)を有すると測定され、光学的に仕上げられていると見なされた。
【0098】
図3Aは、光学的に透明である、自立ダイヤモンドフィルム4の核生成表面又は側面の画像である。図3Aから分かるように、基板24の表面1のダイヤモンド切削された溝内に適合して成長した「II-VI」ロゴは、ダイヤモンドの片、例えばダイヤモンドフィルム4の非平面表面が、一又は複数の従来の製造方法によって容易に製造可能な犠牲基板(例えばシリコン)の「反転形状」表面に適合させてダイヤモンドを成長させることによって得ることができることを明示している。重要なことに、図3Aに示すダイヤモンドフィルム4の非平面(核生成)表面は、光学的に仕上げられる。図3B及び3Cは、図3Aに示すダイヤモンドフィルム4の核生成側(Ra=9.1nm)及び成長側の顕微鏡写真である。
【0099】
別の例では、直径66mm、厚さ11.5mmの単結晶シリコンの第2の片を、一般的なシリコン製造方法で製造し、シリコン基板24として用いた。このシリコン基板24の表面1をダイヤモンド切削し、Raが6~7nmの光学的に仕上げられた表面とした。そして、表面1を含む、このシリコン基板24全体を、ダイヤモンドエタノール懸濁スラリーを用いて超音波処理した。次に、このシリコン基板24を、ダイヤモンド切削し、光学的に仕上げられた表面(表面1)が石英窓18へ向くように、CVD反応器16内に配置した。水素及びメタン、例えば1,850mL/minの水素及び13.6mL/minのメタンを含む反応性ガス6の混合物を、マスフローコントローラ8の調整下で、マイクロ波プラズマCVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズがシリコン基板24の表面1を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26によって、800℃に制御した。148時間のダイヤモンド成長後(ダイヤモンド成長反応を停止した)、厚さが233ミクロンの多結晶ダイヤモンドフィルム4が、石英窓18に対向するシリコン基板24の表面上に適合して蒸着された。次に、シリコン基板24をダイヤモンドフィルム4から、高温でKOH水溶液を用いて剥がし、続いてHF-HNOを用いて剥がし、直径66mm、厚さ233ミクロン、アスペクト比283である自立ダイヤモンドフィルムを得た。シリコン基板24の表面1上に成長した、この自立ダイヤモンドフィルム4の核生成表面は、約11.5nmの表面粗さ(Ra)を有すると測定され、光学的に仕上げられていると見なされた。
【0100】
この後者の例のダイヤモンドフィルム4の品質を、図4に示すように、ラマン分光法によって評価した。図4に示すように、成長側のダイヤモンド結晶は、約2.8cm-1の狭いFWHM(単結晶ダイヤモンド片のFWHM3.5cm-1と比較して)によって証明されるように、優れた品質であり、ラマンピークの中心が1331.9~1332.1cm-1であり、成長側のダイヤモンドフィルム4に応力がないことを示唆している。核生成側のダイヤモンド結晶もまた、約3.8~4.1cm-1のFWHMによって証明されるように、とても優れていて、ラマンピークの中心が1331.6cm-1であり、核生成側のダイヤモンドフィルム4で応力が低いことを示す。
【0101】
実施例2:光学的に仕上げられた一表面又は二表面を有するダイヤモンドフィルムの製造
【0102】
別の例では、直径2インチ(50.8mm)、厚さ10mmの単結晶シリコン2の片は、一般的なシリコン製造方法を用いて製造され、シリコン基板24として用いた。このシリコン基板24の両側の表面を、一般的な化学機械的研磨プロセスによって光学的に仕上げ、1nm未満のRaとした。そして、このシリコン基板24全体を、ダイヤモンド(0.25ミクロン)エタノール懸濁スラリーで超音波処理した。次に、このシリコン基板24を、光学的に仕上げられた表面の一つが石英窓18へ向くように、CVD反応器16内に配置した。反応性ガス6の混合物、例えば1,850mL/minの水素及び13.6mL/minのメタンを、マイクロ波プラズマCVD反応器16内に流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズが石英窓18に対向するシリコン基板24の表面を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器の圧力16を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、800℃に制御した。140時間のダイヤモンド成長後、成長反応を停止し、石英窓18に対向するシリコン基板24の表面に適合して蒸着された厚さが200~220ミクロンの多結晶ダイヤモンドフィルム4を得た。そして、ダイヤモンドフィルム24の成長表面を、ダイヤモンドフィルム24がまだシリコン基板24上にある間に、ラッピングし、研磨してRa5.0nmの表面粗さとした。ラッピング及び研磨後、シリコン基板24上のダイヤモンドフィルム4の厚さは、約125ミクロンであった。そして、シリコン基板24をダイヤモンドフィルム4から、高温でKOH水溶液を用いて剥がし、続いてHF-HNOを用いて剥がし、直径2インチ(50.8mm)、厚さ125ミクロン、アスペクト比406である自立ダイヤモンドフィルム4を得た。自立ダイヤモンドフィルム24の両側の表面は、光学的仕上げ品質であって、光学窓又は他の用途の基板として用いることができる。
【0103】
別の例では、直径2インチ(50.8mm)、厚さ10mmの単結晶シリコンの第二の片は、一般的なシリコンの製造方法を用いて製造され、シリコン基板24として用いた。このシリコン基板24の両側の表面は、一般的な化学機械的研磨プロセスによって光学的に仕上げ、1nm未満のRaとした。そして、このシリコン基板24全体を、ダイヤモンドメタノール懸濁スラリーで超音波処理した。次に、このシリコン基板24を、光学的に仕上げられた表面の一つが石英窓18へ向くように、CVD反応器16(図2)内に配置した。反応性ガス6の混合物、例えば2,700mL/minの水素及び16.2mL/minのメタンは、マスフローコントローラ8の調整下で、マイクロ波プラズマCVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズが石英窓18に対向するシリコン基板24の表面を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、832~866℃に制御した。72時間のダイヤモンド成長後、成長反応を停止し、石英窓18に対向するシリコン基板24の表面に適合して蒸着された厚さが110~130ミクロンの多結晶ダイヤモンドフィルム4を得た。そして、ダイヤモンドフィルム4の成長表面を、ダイヤモンドフィルム4がまだシリコン基板24上にある間に、ラッピングし、研磨してRa5.8nmの表面粗さ(Ra)とした。ラッピング及び研磨後、シリコン基板24上のダイヤモンドフィルム4の厚さは、60~70ミクロンであった。そして、シリコン基板24は、高温でKOH水溶液を用いてダイヤモンドフィルム4から剥ぎ、続いてHF-HNOにより剥ぎ、直径2インチ(50.8mm)、厚さ60~70ミクロン、アスペクト比781である自立ダイヤモンドフィルム4を得た。自立ダイヤモンドフィルム4の両側の表面は、光学的仕上げ品質であって、光学窓又は他の用途の基板として用いることができる。
【0104】
さらに別の例では、直径2インチ(50.8mm)、厚さ10mmの単結晶シリコンの第三の片は、一般的なシリコンの製造方法を用いて製造され、シリコン基板24として用いた。このシリコン基板24の両側の表面は、一般的な化学機械的研磨プロセスによって光学的に仕上げ、1nm未満のRaとした。そして、このシリコン基板24全体を、0.25ミクロンダイヤモンドスラリーで研磨し、続いて一般的な洗浄工程を行った。次に、このシリコン基板24を、一つのダイヤモンドスラリー研磨し光学的に仕上げられた表面が石英窓18へ向くように、CVD反応器16(図2)内に配置した。反応性ガス6の混合物、例えば2,700mL/minの水素及び16.2mL/minのメタンを、マスフローコントローラ8の調整下で、マイクロ波プラズマCVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズが石英窓18に対向するシリコン基板24の表面を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、794~835℃に制御した。95時間のダイヤモンド成長後、成長反応を停止し、石英窓18に対向するシリコン基板24の表面に適合して蒸着された直径が2インチ(50.8mm)、厚さが156ミクロンの多結晶ダイヤモンドフィルム4を得た。ダイヤモンドフィルムは、アスペクト比が326であった。ダイヤモンドフィルム4からシリコン基板24を剥がした後、ダイヤモンドフィルム4の核生成側の表面粗さは7.7nmであると測定され、ダイヤモンドフィルム4の成長側の表面は、アズグロウンダイヤモンド表面に一般的な粗さを有すると判定された。
【0105】
実施例3:化学的にエッチングされた両側の表面を有する単結晶Si基板(直径166mm、厚さ10mm)上に成長したダイヤモンドフィルム-光学的に仕上げられた一表面を有するダイヤモンドフィルムの製造
【0106】
別の例では、直径166mm、厚さ10mmの単結晶シリコンの片を、一般的なシリコン製造方法を用いて製造し、シリコン基板24として用いた。このシリコン基板24の両側の表面を、一般的な化学的エッチングプロセスによって仕上げ、918nmの表面粗さ(Ra)とした。そして、このシリコン基板24全体を、ダイヤモンド粉末で研磨し、CVD反応器16(図2)内に配置した。反応性ガス6の混合物、例えば2,800mL/minの水素及び84mL/minのメタンを、マスフローコントローラ8の調整下で、マイクロ波プラズマCVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズが石英窓18に対向するシリコン基板24の表面を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、1120℃に制御した。44時間のダイヤモンド成長後、成長反応を停止し、石英窓18に対向するシリコン基板24の表面に適合して蒸着された厚さが350ミクロンの多結晶ダイヤモンドフィルム4を得て、これによりダイヤモンド-シリコン(ダイヤモンド-オン-シリコン)複合基板を形成した。そして、ダイヤモンドフィルム4がまだシリコン基板24上にある間に、ダイヤモンド4成長表面を平らにラッピングした。ラッピング後、ダイヤモンドフィルム4の厚さは、300ミクロンであった。そして、ダイヤモンド-シリコン複合基板を再びラッピングし、シリコン基板上での合計の厚さを約1.7~1.8mmとした。図6A及び6Bは、この例のラッピングされたダイヤモンドシリコン複合基板の拡大断面図(それぞれ、視野=4.33mm及び649.6μm)を示す。
【0107】
そして、ラッピングされたダイヤモンドフィルム4表面を、さらに研磨して光学的に仕上げ、直径166mmのシリコン基板24上に薄いダイヤモンドフィルム4(すなわち、厚さが300ミクロンより薄い)を製造した。ダイヤモンドフィルム4は、光学ミラーとして、又は、エレクトロニクス、フォトニクス又はオプトエレクトロニクスのための基板として用いられてもよい。
【0108】
次に、露出したダイヤモンド成長表面を研磨するために、直径50mmの片を一つ、及び、直径1インチ(25.4mm)の片を複数、ダイヤモンド-シリコン複合基板からレーザーカットした。直径が50mmのダイヤモンド-シリコン複合基板片の露出したダイヤモンド成長表面を研磨し、1nmのRaとした。仕上げられたダイヤモンドの厚さは、170~180ミクロンであった。そして、シリコン基板を直径50mmの片から、高温でKOH水溶液を用いて剥がし、続いてHF-HNOを用いて剥がし、直径50mm、中央部で厚さ133ミクロン、端の周辺で厚さ144~176ミクロン、中央部のアスペクト比376である自立ダイヤモンドフィルム片を得た。直径50mmの自立ダイヤモンドフィルムの光学的に仕上げられた成長表面を、光学ミラー又は温度管理等の他の用途のための基板として用いることができる。直径50mmのダイヤモンドフィルムの核生成側は、表面粗さ(Ra)が約799nmであり、これは、化学的エッチングされたシリコン表面の表面粗さ(約918nm)と同様である。シリコン基板をダイヤモンド-シリコン複合基板の50mm片から除去する代わりに、少なくとも光学的に仕上げられたダイヤモンド表面を備えたダイヤモンド-シリコン複合基板の50mm片が得られるように、シリコン基板を薄くし、研磨してもよい。
【0109】
実施例4:化学的にエッチングされた両側の表面を有する多結晶Si基板(直径166mm×厚さ10mm)上に成長したダイヤモンドフィルム-光学的に仕上げられた一表面を有するダイヤモンドフィルムの製造
【0110】
別の例では、直径166mm、厚さ10mmの多結晶シリコンの片を、一般的なシリコン製造方法を用いて製造し、シリコン基板24として用いた。このシリコン基板24の両側の表面を、一般的な化学的エッチングプロセスによって仕上げ、816nmの表面粗さ(Ra)とした。そして、このシリコン基板24全体を、ダイヤモンド粉末で研磨し、CVD反応器16(図2)内に配置した。反応性ガス6の混合物、例えば2,800mL/minの水素及び84mL/minのメタンを、マスフローコントローラ8の調整下で、マイクロ波プラズマCVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズが石英窓18に対向するシリコン基板24の表面を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、1120℃に制御した。24時間のダイヤモンド成長後、成長反応を停止し、石英窓18に対向するシリコン基板24の表面に適合して蒸着された厚さが175ミクロンの多結晶ダイヤモンドフィルム4を得た。そして、ダイヤモンド4成長表面を、ダイヤモンドフィルム4がまだシリコン基板24上にある間に、平らにラッピングし、その後、研磨して光学的に仕上げた。そして、シリコン基板24をダイヤモンドフィルム4から、高温でKOH水溶液を用いて剥がし、続いてHF-HNOを用いて剥がし、直径166mm、厚さ175ミクロン未満、アスペクト比948である自立ダイヤモンドフィルム4の片を得た。光学的に仕上げられたダイヤモンド成長表面を、光学ミラー又は温度管理等の他の用途のための基板として用いてもよい。シリコン基板24を除去する代わりに、少なくとも光学的仕上げに仕上げられたダイヤモンド成長表面を有するダイヤモンド-シリコン複合基板が得られるように、シリコン基板24を薄くし、研磨してもよい。
【0111】
実施例5:化学機械的研磨プロセスにより光学的に仕上げられた一表面(例えばRa:1.3nm)を有する多結晶Si基板(直径166mm、厚さ10mm)上に成長したダイヤモンドフィルム-光学的に仕上げられた片側又は両側の表面を有するダイヤモンドフィルムの製造
【0112】
別の例では、直径166mm、厚さ10mmの多結晶シリコンの片を、一般的なシリコン製造方法を用いて製造し、シリコン基板24として用いた。このシリコン基板24の両側の表面を、一般的な化学的エッチングプロセスによって仕上げ、816nmの表面粗さ(Ra)とした。そして、シリコン基板24の表面1を、化学機械的研磨プロセスによって研磨し、光学的に仕上げた(Ra:約1.3nm)。このシリコン基板24全体を、石英窓18に対向する光学的に仕上げられた表面(表面1)を有するダイヤモンド成長のために、含水ダイヤモンドスラリーを用いて超音波処理し、CVD反応器16(図2)内に配置した。反応性ガス6の混合物、例えば2,800mL/minの水素及び16.8mL/minのメタンを、マスフローコントローラ8の調整下で、マイクロ波プラズマCVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズがシリコン基板24の表面1を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、846~868℃に制御した。164時間のダイヤモンド成長後、成長反応を停止し、シリコン基板24の表面1に適合して蒸着された直径166mm、厚さ295ミクロンの多結晶ダイヤモンドフィルム4を得て、これによりダイヤモンド-シリコン複合基板を形成した。そして、ダイヤモンドフィルム4がまだシリコン基板24上にある間に、ダイヤモンド成長表面を平らにラッピングした。ラッピングされたダイヤモンド成長表面を、さらに研磨して光学的に仕上げ、アスペクト比563のダイヤモンドフィルム4を得た。この例では、ダイヤモンド-シリコン複合基板が1.7~2.0mmの全厚さを有するまで、このダイヤモンド-シリコン複合基板のシリコン基板24側を研磨した。ダイヤモンド-シリコン複合基板をレーザーカットし、直径75mmの片を1つ、直径38.5mmの片を2つ、及び、直径1インチ(25.4mm)の片を2つとした。続いて、150~200ミクロン以下のダイヤモンド厚さを有する光学的に仕上げられた表面の各片を得るために、各片の露出したダイヤモンド成長表面を光学的に仕上げた。一例では、75mm片の研磨されたダイヤモンド成長表面の表面粗さ(Ra)は、2.75nm(3.59,2.35,2.43,2.57及び2.89nm)であると測定された。各片のシリコン基板を、高温でKOH水溶液を用いて剥ぎ、続いてHF-HNOにより剥ぎ、直径1インチ(25.4mm),38.5mm及び75mmの自立ダイヤモンドフィルム4を得た。各自立ダイヤモンドフィルム4は、150ミクロンの厚さ、及び、それぞれ169,256及び500のアスペクト比を有する。各片の光学的に仕上げられたダイヤモンド成長表面を、例えば、光学窓として、光学ミラーとして、又は、温度管理等の他の用途のための基板として使用することができる。
【0113】
シリコン基板を剥がし、自立ダイヤモンドフィルム4の片を形成するために、レーザー切断後に残るラッピングされたダイヤモンド-シリコン複合基板の片を、高温でKOH水溶液を用いて処理した。この自立ダイヤモンドフィルム4の片の核生成表面は、表面粗さ(Ra)が15.3nm及び平均粒子サイズが約20ミクロンのミラー表面仕上げを有していた。核生成密度を微調整しながら、核生成表面の表面粗さを10nm未満に減らしてもよいと考える。シリコン基板24を除去する代わりに、少なくとも光学的に仕上げられたダイヤモンド表面を用いてダイヤモンド-シリコン複合基板の片を形成するために、シリコン基板24(ダイヤモンド層4がまだ上にある間に)を薄くし、研磨することができる。ダイヤモンド-シリコン複合基板の片は、例えば光学ミラー又はエレクトロニクス、フォトニクス、オプトエレクトロニクス等のための基板として用いてもよい。
【0114】
実施例6:化学機械的研磨プロセスにより光学的に仕上げられた一表面(Ra:1nm未満)を有する多結晶Si基板(直径166mm、厚さ10mm)上のダイヤモンド成長-光学的に仕上げられた片側又は両側の表面を有するダイヤモンドの薄いフィルムの製造
【0115】
別の例では、直径166mm、厚さ10mmの多結晶シリコンの片を、一般的なシリコン製造方法を用いて製造し、シリコン基板24として用いた。このシリコン基板24の両側の表面を、一般的な化学的エッチングプロセスによって仕上げた。このシリコン基板24の表面1を、粗さRaが1nm未満のミラー仕上げになるまで、化学機械的に研磨した。シリコン基板24の表面1上の高いダイヤモンド核生成密度、良好なダイヤモンド-シリコン(ダイヤモンド-トゥー-シリコン)接着を実現するため、及び、表面1上に成長したダイヤモンドフィルムが表面1から剥離することを避けるため、2工程の播種プロセスを用いた。
【0116】
まず、このシリコン基板24全体を、平均サイズ0.25μmのダイヤモンド粉末/メタノール懸濁溶液からなる超音波浴中で超音波処理した。そして、この実施例6に関連して、後述する第二ダイヤモンド核生成成長工程で記載された成長条件と同一の成長条件を用いた、表面1上での1時間の第一ダイヤモンド核生成成長工程のために、表面1を石英窓18に向けて、CVD反応器16(図2)内に配置した。この第一ダイヤモンド核生成工程により、シリコン基板24の表面1上で低い密度のダイヤモンド核生成(10/cm未満)となった。そして、第一工程ダイヤモンド核生成を含むこのシリコン基板24を、CVD反応器16から取り出し、超音波浴中のナノ結晶ダイヤモンド粉末(一般的な粒子サイズが20nm未満)/メタノール懸濁水溶液中で超音波処理した。
【0117】
ナノ結晶ダイヤモンド粉末/メタノール懸濁溶液中での超音波処理後、第二ダイヤモンド核生成成長工程及び第一工程ダイヤモンド核生成上の連続したダイヤモンド成長のために、第一工程ダイヤモンド核生成を含むシリコン基板24を、表面1を石英窓18に向けて、CVD反応器16内に再度投入した。この第二工程では、2,800mL/minの水素及び16.8mL/minのメタンの混合物を、マスフローコントローラ8の調整下で、CVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズがシリコン基板24の表面1、特に、シリコン基板24の表面1上の第一工程ダイヤモンド核生成を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。基板の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、800℃に制御した。
【0118】
140時間のダイヤモンド成長(第二工程ダイヤモンド核生成)後、ダイヤモンド成長反応を停止し、アスペクト比593のシリコン基板24の表面1上に適合して蒸着された厚さ280μmの多結晶ダイヤモンドフィルム4を得た。ダイヤモンドフィルム4がまだシリコン基板24上にある間に、ダイヤモンドフィルム4のダイヤモンド成長表面を研磨し、ダイヤモンドフィルム4の研磨されたダイヤモンド成長表面の異なる場所で測定される表面粗さ(Ra)を3.28,6.75,15.4,11.4,12.2及び6.97nm、アスペクト比を790にするとともに、厚さを210μmとした。
【0119】
シリコン-ダイヤモンド複合基板を直径5インチ(12.7mm)片にレーザーカット後、シリコン基板24をこの片から、高温でKOH水溶液を用いて剥ぎ、直径5インチ(127mm)、厚さ210μm、アスペクト比605である自立ダイヤモンドフィルム4を得た。トレイに配置されたこの自立ダイヤモンドフィルム4の写真を図7に示す。
【0120】
自立ダイヤモンドフィルム4の核生成側の表面粗さは、核生成表面ダイヤモンドフィルム4の異なる場所で測定される平均表面粗さ(Ra)が2.08,2.46,2.38,2.07,1.98及び1.90nmであると測定された。第二核生成工程後のダイヤモンドフィルム4の核生成側面/表面のダイヤモンド核生成密度を、SEM観察(図8)によって、10/cmを超えると推定した。
【0121】
成長表面及び核生成表面の両方が光学的に仕上げられた自立ダイヤモンドフィルム4を、光学窓、ミラー、又は、光学的用途、温度管理、音響管理、検出器、マイクロ波/電磁波管理、機械的用途、化学的不活性、摩擦制御等の用途のための基板として用いてもよい。
【0122】
代わりに、少なくとも光学的に仕上げられたダイヤモンド成長表面を備えたダイヤモンド-シリコン複合基板の片を得るため、シリコン基板24(ダイヤモンドフィルム4がまだ付着している間に)を薄くし、研磨してもよい。ダイヤモンド-シリコン複合基板の片は、光学ミラーとして、又は、エレクトロニクス、フォトニクス、オプトエレクトロニクス等のための基板として用いてもよい。
【0123】
実施例7:ナノダイヤモンド播種を用いて、光学的に仕上げられたシリコン基板(直径166mm、厚さ10mm)上に成長させられたダイヤモンドフィルムの良好な接着の不達成。
【0124】
別の例では、直径166mm、厚さ10mmの多結晶シリコンの片を、一般的なシリコン製造方法で製造し、シリコン基板24として用いた。シリコン基板24の両側の表面を、一般的な化学的エッチングプロセスにより仕上げた。このシリコン基板24の表面1を化学機械的に研磨し、粗さRaが1nm未満のミラー仕上げとした。そして、シリコン基板24全体を、超音波浴中のナノ結晶ダイヤモンド粉末(一般的な粒子サイズが20nm未満)/メタノール懸濁溶液中で超音波処理した。
【0125】
ナノ結晶ダイヤモンド粉末/メタノール懸濁溶液中での超音波処理後、このシリコン基板24を、表面1が石英窓18へ向くように、CVD反応器16内に投入した。そして、2,800mL/minの水素及び16.8mL/minのメタンの混合物を、マスフローコントローラ8の調整下で、CVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズがシリコン基板24の表面1を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。基板の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、821~840℃に制御した。
【0126】
189時間のダイヤモンド成長後、ダイヤモンド成長反応を停止し、シリコン基板24の表面1上に適合して蒸着された厚さ320μmの多結晶ダイヤモンドフィルム4を有するシリコン-ダイヤモンド複合基板を得た。しかしながら、このダイヤモンドフィルム4はシリコン基板24からの部分的(しかし実質的)な剥離を受け、ダイヤモンドフィルム4の成長表面のその後の研磨を行うことができなかった。その結果、剥離されたダイヤモンドフィルム4の核生成表面は、平均表面粗さ(Ra)が2~4nmであると測定されたにもかかわらず、光学的に仕上げられた成長表面を達成できなかった。
【0127】
実施例8:0.25mmダイヤモンド粒子播種による、光学的に仕上げられた多結晶シリコン基板(直径166mm、厚さ10mm)上でのダイヤモンド成長
【0128】
別の例では、直径166mm、厚さ10mmの多結晶シリコンの片を、一般的なシリコン製造方法で製造し、シリコン基板24として用いた。シリコン基板24の両側の表面を、一般的な化学的エッチングプロセスにより仕上げた。このシリコン基板24の表面1を化学機械的に研磨し、粗さRaが1.5nm未満のミラー仕上げとした。そして、シリコン基板24全体を、平均サイズ0.25μmのダイヤモンド粉末/メタノール懸濁溶液中の超音波浴中で超音波処理し、次に、表面1が石英窓18へ向くように、CVD反応器16(図2)内に配置した。
【0129】
2,800mL/minの水素及び16.8mL/minのメタンの混合物を、マスフローコントローラ8の調整下で、CVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズがシリコン基板24の表面1を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。基板の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、845~868℃に制御した。
【0130】
163時間のダイヤモンド成長後、ダイヤモンド成長反応を停止し、アスペクト比563のシリコン基板24の表面1上に適合して蒸着された厚さ295μmの多結晶ダイヤモンドフィルム4を有するシリコン-ダイヤモンド複合基板を得た。
【0131】
ダイヤモンドフィルムがシリコン基板に接着されている間、ダイヤモンドフィルム4の成長表面を、研磨して光学的に仕上げ(Raが3~5nm)、99ミクロンの(ダイヤモンドフィルム4の)厚さ、168のアスペクト比とした。ダイヤモンドフィルムがまだシリコン基板24に接着されている間、シリコン-ダイヤモンド複合基板を、様々な直径を有する多数の様々な片にレーザーカットし、その後、各片のシリコン基板24を除去(KOH水溶液によって溶解)し、それによって自立ダイヤモンドフィルム4の片を形成した。これらの自立ダイヤモンドフィルム4の片の核生成表面は、平均表面粗さ(Ra)が5~9nm、及び、核生成密度が10/cm以上であった。自立ダイヤモンドフィルム4のこれらの片の一つは、99ミクロンの厚さを有し、図9のグラフ(a)に示すように、遮蔽レンズから34.0mmの距離において、1.06μm波長の光散乱が8.22/cmの光散乱係数を有すると特徴付けられた。
【0132】
実施例9:第一播種工程(0.25mmダイヤモンド粒子播種)及び続く第二播種工程(ナノダイヤモンド粒子播種)による、光学的に仕上げられたシリコン基板(直径2インチ(50.8mm)、厚さ10mm)上の成長ダイヤモンド
【0133】
別の例では、直径50.8mm、厚さ10mmの多結晶シリコンの片を、一般的なシリコン製造方法で製造し、シリコン基板24として用いた。シリコン基板24の両側の表面を、化学機械的研磨して、粗さRaが1.5nm未満にミラー仕上げした。そして、シリコン基板24全体を、平均サイズ0.25μmのダイヤモンド粉末/メタノール懸濁溶液中で超音波処理(播種)し、次にCVD反応器16(図2)内に配置した。
【0134】
そして、2,800mL/minの水素及び16.8mL/minのメタンの混合物を、マスフローコントローラ8の調整下で、CVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズがシリコン基板24の表面1を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、780℃に制御した。1時間のダイヤモンド成長後、ダイヤモンド成長反応を停止し、シリコン基板24の表面1の周囲に蒸着されたダイヤモンド粒子を有するダイヤモンド播種シリコン基板24が観察された。
【0135】
そして、ダイヤモンド播種シリコン基板24を、CVD反応器16から取り出し、超音波浴中のナノ結晶ダイヤモンド粉末(一般的な粒子サイズが20nm未満)/メタノール懸濁水溶液中で超音波処理した。次に、ナノダイヤモンド処理したダイヤモンド播種Si基板を、表面1が再び石英窓18へ向くように、CVD反応器16内に再度投入した。そして、2,800mL/minの水素及び16.8mL/minのメタンの混合物を、マスフローコントローラ8の調整下で、CVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズがシリコン基板24の表面1を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、790~821℃に制御した。
【0136】
さらなる143時間のダイヤモンド成長後、ダイヤモンド成長反応を停止し、厚さが245ミクロン、アスペクト比が207のダイヤモンドフィルム4を有するシリコン‐ダイヤモンド複合基板を得た。ダイヤモンド成長表面は、ダイヤモンドフィルム4がまだシリコン基板24上にある間に、研磨して光学的に仕上げ(Raが3~5nm)、197ミクロンの(ダイヤモンドフィルム4の)厚さ、258のアスペクト比とした。
【0137】
そして、シリコン基板24を、このシリコン-ダイヤモンド複合基板から、自立ダイヤモンドフィルム4を残して除去(KOH水溶液によって溶解)した。この自立ダイヤモンドフィルム4の核生成表面は、平均表面粗さ(Ra)=2.73nm、10/cm以上の核生成密度、及び、滑らかな表面仕上げを有し、これらのうち後者2つは、例えば温度管理、光学管理、半導体装置、摩擦制御等の用途に非常に望ましい。この自立ダイヤモンドフィルム4は、図9のグラフ(b)に示すように、散乱光収集レンズから34mmの距離で、1.06μm波長の光散乱が2.69/cmの光散乱係数を有すると特徴付けられた。1.06μm波長の光散乱は、当該技術分野で低ミクロン光散乱と考えられており、光学、熱、音響用途等に非常に適している。
【0138】
実施例10:一工程播種(ナノダイヤモンド粒子播種)による、光学的に仕上げられたシリコン基板(直径2インチ(50.8mm)、厚さ10mm)上の成長ダイヤモンド
【0139】
別の例では、直径50.8mm、厚さ10mmの多結晶シリコンの片を、一般的なシリコン製造方法で製造し、シリコン基板24として用いた。シリコン基板24の表面1を化学機械的研磨して、粗さRaが1.5nm未満にミラー仕上げし、もう一方の表面を一般的な化学的エッチングプロセスによってエッチングした。次に、このシリコン基板24を、超音波浴中のナノ結晶ダイヤモンド粉末(一般的な粒子サイズが20nm未満)/メタノール懸濁溶液中で超音波処理した。
【0140】
このシリコン基板を、表面1が石英窓18へ向くように、CVD反応器16内に投入した。そして、2,800mL/minの水素及び16.8mL/minのメタンの混合物を、マスフローコントローラ8の調整下で、CVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20のサイズがシリコン基板24の表面1を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。シリコン基板24の中央部におけるダイヤモンド成長温度を、例えば、光度高温計26を用いて、800℃に制御した。
【0141】
118時間のダイヤモンド成長後、ダイヤモンド成長反応を停止し、シリコン基板24の表面1上に適合して蒸着された厚さ190μmのダイヤモンドフィルム4を有するシリコン-ダイヤモンド複合基板を得た。ダイヤモンド成長表面を、ダイヤモンドフィルム4がまだシリコン基板24上にある間に、研磨して光学的に仕上げ、140ミクロンの(ダイヤモンドフィルム4の)厚さとした。
【0142】
そして、シリコン基板24を、このシリコン-ダイヤモンド複合基板から、自立ダイヤモンドフィルム4を残して除去(KOH水溶液によって溶解)した。この自立ダイヤモンドフィルム4の核生成表面は、2~3nmの平均表面粗さ(Ra)、10/cm以上の核生成密度、及び、滑らかな表面仕上げを有し、これらのうち後者2つは、例えば温度管理、光学管理、半導体装置、摩擦制御等の用途に非常に望ましい。
【0143】
この自立ダイヤモンドフィルム4はまた、図9のグラフ(c)に示すように、遮蔽レンズから34mmの距離において、1.06μm波長の光散乱が2.09/cmの光散乱係数を有すると特徴付けられた。
【0144】
同じダイヤモンド成長条件下で、異なるシリコン基板24上において、この実施例10の指針に従って行ったいくつかの追加の実験では、問題が発生した。一例では、ダイヤモンドフィルム4がシリコン基板24から剥離し、剥離したダイヤモンドフィルムの成長表面上でさらなる研磨を行うことができなかった。これらの例は、ナノダイヤモンド播種単独では、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を有する薄いダイヤモンド基板を製造するために信頼できるプロセスではない可能性を示唆している。
【0145】
比較例1:シリコンウェハー(直径6インチ(15.24mm)、厚さ625ミクロン)上のダイヤモンドフィルム成長の失敗
【0146】
一例では、3つのシリコンウェハー24(nタイプ、直径6インチ(152.4mm)、厚さ625ミクロン)を準備した。各シリコンウェハー24の表面1を化学機械的に研磨して光学的表面に仕上げ、各シリコンウェハー24のもう一方の表面を化学エッチングで研磨した。そして、各シリコンウェハー24の表面1(光学的に仕上げた)をダイヤモンド粉末で研磨した。
【0147】
次に、シリコンウェハー24の一つを、ダイヤモンド成長のために、光学的に仕上げられた表面1が石英窓18へ向くように、マイクロ波プラズマCVD反応器16内に配置した。反応性ガス6の混合物、例えば2,500mL/minの水素及び75mL/minのメタンを、マイクロ波プラズマCVD反応器16内へ流入させた。プラズマ20発生開始後、プラズマ20がシリコンウェハー24の表面1を覆うように、マグネトロン14の出力及び反応器16の圧力を調整した。このプラズマ調整プロセス中、このシリコンウェハー24は、多数の小片に破砕した。
【0148】
この実験は、他の2つのシリコンウェハーを用い、粉末速度及び圧力を変化させて繰り返したが、同様の結果、すなわち、他の二つのシリコンウェハー24もまた多数の小片に破砕した。
【0149】
比較例2:厚さが400ミクロンよりも薄い、光学的に仕上げられたダイヤモンドの不達成
【0150】
一例では、直径50mm、75mm、85mm及び100mmのCVD成長ダイヤモンド片を、厚さが550ミクロンよりも大きいアズグロウンダイヤモンドウェハーからレーザーカットした。そして、各ダイヤモンド片のアズグロウン表面を平坦にラッピングした。次に、これらのダイヤモンド片の、成長表面又は核生成表面のどちらか一方の各表面の片面を、従来の研磨プロセスによって研磨し、光学的に仕上げた。裏返してもう一方の面を薄く研磨しようとする際、これらのダイヤモンド片は、厚さが400ミクロンに達する前に破砕され、従来のダイヤモンド研磨プロセスでは、アスペクト比125を達成することは困難であることが示唆された。
【0151】
以上より、本明細書に開示されるように、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、(1)少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面及び100以上のアスペクト比、又は、(2)400以下の厚さ、及び、25mm以上の最大又は最長幾何学的寸法の組み合わせのいずれかからなる。
【0152】
光学的に仕上げられた表面は、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下又は10nm以下の表面粗さ(Ra)を有していてもよい。
【0153】
最大又は最長幾何学的寸法は、40mm以上、50mm以上、60mm、70mm以上、80mm以上又は100mm以上としてもよい。
【0154】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さは、400ミクロン以下、350ミクロン以下、300ミクロン以下、250ミクロン以下又は200ミクロン以下としてもよい。
【0155】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の最大又は最長幾何学的寸法をダイヤモンドフィルム、基板又は窓の厚さで割った比として定義されるアスペクト比は、100以上、125以上、150以上、175以上又は200以上としてもよい。
【0156】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、20/cm以下、15/cm以下、10/cm以下、7/cm以下又は5/cm以下の、遮蔽レンズから34cmの距離における1.06ミクロン光散乱係数を有していてもよい。
【0157】
犠牲基板(例えばシリコン)の片を、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓を成長させるために用いてもよい。犠牲基板は、2mm以上、4mm以上、6mm以上又は8mm以上の厚さを有していてもよい。
【0158】
犠牲基板は、光学的に仕上げられた表面を有していてもよく、すなわち、表面は、20以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下又は2nm以下の表面粗さ(Ra)を有する。
【0159】
犠牲基板上のCVDダイヤモンド成長後、例えば化学的(腐食剤、フッ化水素又はイオンエッチング)及び/又は機械的(研磨又はラッピング)に、犠牲基板を取り除いてもよい。ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面は、成長表面、核生成表面、又は、両方としてもよい。
【0160】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長表面を、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓がまだシリコン基板に付着している間に、従来の研磨プロセスによって光学的に研磨してもよい。ダイヤモンドフィルム、基板又は窓と犠牲基板との合計の厚さは、従来の研磨プロセスが、研磨中に破砕することなく、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓を保持して研磨するのに十分に厚い。ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長表面上に光学的レベルの仕上げを達成した後、犠牲基板を、例えば化学的及び/又は機械的に除去してもよい。このプロセスの結果、少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面(例えば、成長表面)を有する、例えば、厚さが400ミクロン以下の薄いダイヤモンドフィルム、基板又は窓を得た。
【0161】
多結晶ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の片の成長側は、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側よりも大きな熱伝導率を有していてもよい。一例では、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長側のみを、光学的に仕上げてもよい。一方、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側を光学的に仕上げる必要はない。それゆえに、犠牲基板のダイヤモンド成長表面を光学的に仕上げる必要はない。一例では、犠牲基板のダイヤモンド成長表面を、化学的にエッチング、及び/又は、機械的にラッピングしてもよい。そうすると、犠牲基板のこの表面上に成長したダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側は、光学的仕上げを有さない。
【0162】
一例では、光学的仕上げを有するダイヤモンドフィルム、基板又は窓の核生成側は、他の従来の温度管理材料、例えば銅に比べて、より大きな熱伝導率を有し得る。
【0163】
一例では、ダイヤモンド成長のために少なくとも一つの光学的に仕上げられた表面を有する犠牲基板(例えばシリコン)は、核生成側上を光学的に仕上げたダイヤモンドフィルム、基板又は窓のCVD成長を促進し得る。ダイヤモンド成長後、ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長表面を、必要に応じて平らにラッピングし、及び/又は、研磨し、その後、例えば化学的エッチング及び/又は機械的ラッピング/研磨によって、犠牲基板を任意に除去してもよい。このプロセスによって、従来のダイヤモンド研磨プロセスを必要とせず、研磨中にダイヤモンドフィルム、基板又は窓を破砕又は破壊するリスクを避けて、光学的に仕上げられた表面(核生成側上)を有するダイヤモンドフィルム、基板又は窓の片を製造できる。
【0164】
光管理コーティング、例えば、反射防止コーティング、ビームスプリッターコーティング、全反射コーティング等を、ダイヤモンドフィルム、窓又は基板の成長及び/又は核生成表面に適用してもよい。本明細書に記載されるダイヤモンドフィルム、基板又は窓を、様々な異なる用途のために様々な幾何学的寸法にレーザーカットしてもよい。ダイヤモンドフィルム、基板又は窓がまだシリコン基板(ダイヤモンドフィルム、基板又は窓が成長したままの)上にあり、ラッピングされ、及び/又は、研磨される間に、レーザーカットを行ってもよい。
【0165】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、光学的品質(赤外光、近赤外光、可視光又は紫外光等の電磁波の吸収が低い)としてもよく、さらに、又は、代わりに、マイクロ波の波長で低い損失正接を有していてもよい。ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、さらに、又は、代わりに、機械的及び/又は熱的グレードのダイヤモンド(後者は一般的に暗色である)とすることができる。
【0166】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、マイクロ波支援プラズマCVDプロセス、熱フィラメントCVDプロセス、熱スプレーCVDプロセス、アーク放電プラズマCVDプロセス、直流熱プラズマCVDプロセス、高周波プラズマCVDプロセス、水プラズマCVDプロセス、アセチレン・トーチCVDプロセス、超高周波プラズマCVDプロセス等によって成長させてもよい。
【0167】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長温度は、600℃~1300℃以上の範囲としてもよい。より高い成長温度の使用が想定される。
【0168】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓の成長速度は、サブミクロン/時間~20ミクロン/時間としてもよい。より高い成長速度が想定される。
【0169】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓を成長させるためのメタン濃度は、水素中で1%に満たない値から5%に達する範囲としてもよい。
【0170】
例えば、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素及び/又はホウ素を含む他の添加材もまた、ダイヤモンド成長速度及び/又は成長ダイヤモンド品質を制御する目的で、成長装置に加えてもよい。
【0171】
犠牲基板(例えばシリコン)の片側又は両側の表面を、例えば、含水ダイヤモンドスラリー又は有機ダイヤモンドスラリーを用いた超音波処理によって、ダイヤモンド粉末を用いた研磨によって、又は、ダイヤモンド切削によって、必要に応じて光学的に仕上げ、及び/又は、必要に応じてダイヤモンド播種してもよい。
【0172】
ダイヤモンド成長のための犠牲基板(例えばシリコン)は、直径30mm以上、直径2インチ以上、直径66mm以上、直径3インチ以上、直径4インチ以上、又は、直径5インチ以上としてもよい。
【0173】
犠牲基板(例えばシリコン)のダイヤモンド成長表面は、光学的に仕上げ、又は、化学的にエッチングされていてもよい。犠牲基板(例えばシリコン)の光学的に仕上げられた表面の表面粗さ(Ra)は、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下又は2nm以下としてもよい。
【0174】
成長ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、一又は複数の非平面表面を有していてもよい。一つの限定されない例では、非平面表面の核生成側が、ドーム、コーン、ピラミッド、非球面、放物線及び双曲線、又は他の非平面形状のうちいずれか一つを有していてもよい。これらの形状は、光学的に仕上げられた犠牲基板(例えばシリコン)の光学的に仕上げられた表面輪郭上に適合して成長し得る、光学的に仕上げられた表面を有していてもよい。犠牲基板のこのような光学的に仕上げられた表面輪郭は、最終的なダイヤモンド部分の所望の表面輪郭の反転形状としてもよい。ダイヤモンド成長後、犠牲基板(例えばシリコン)を、例えばエッチング(例えばKOH又はHF)により化学的に、及び/又は、研磨及びラッピングにより機械的に、取り除いてもよい。犠牲基板(例えばシリコン)の非平面表面の所望の輪郭を、ダイヤモンド切削プロセス又は一般的な光学的製造プロセスによって製造してもよい。
【0175】
ダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、光学窓;エレクトロニクス、フォトニクス又はオプトエレクトロニクスの温度管理用の基板;化学的不活性、音波管理、電磁波管理、摩擦制御及び検出器を含む使用のための基板;及び、例えば、フライス削り、切断、穴あけ、レース加工等の機械的用途のための材料として用いてもよい。
【0176】
一例では、ダイヤモンド-シリコン複合基板は、シリコン層上にダイヤモンドCVD成長層を有する。ダイヤモンド層の少なくとも成長表面を、光学的に仕上げ、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下又は10nm以下の表面粗さ(Ra)としてもよい。複合基板の全厚さは、300ミクロン以上、500ミクロン以上、1mm以上、2mm以上又は5mm以上としてもよい。ダイヤモンド-シリコン複合基板の直径は、20mm以上、30mm以上、40mm以上、50mm以上、75mm以上、100mm以上、125mm以上又は150mm以上としてもよい。
【0177】
上述のすべての実施例で記載されるダイヤモンドフィルム、基板又は窓は、例えば、光透過のための光学窓、光反射のための光学窓、光スプリッター、マイクロ波窓、検出器、エレクトロニクス、フォトニクス及び/又はオプトエレクトロニクス(例えば、限定されるものではないが、レーザーダイオード、ダイオードレーザーバーのようなレーザーダイオードアレイ、面発光型半導体レーザー(VCSEL)、面発光型半導体レーザーのアレイ、発光デバイス等)のための温度管理用基板の用途に使用することができる。
【0178】
これらの例は、添付の図面を参照して説明されている。上述の例を読み理解すると、設計変更及び部分変更は他のものにも行われると考えられる。したがって、上述の実施例は、限定的な開示として解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図7
図8
図9