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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】消火用ノズルカバー
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/02 20060101AFI20220721BHJP
   A62C 31/28 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A62C31/02
A62C31/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018014705
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2018065005
(43)【公開日】2018-04-26
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390027029
【氏名又は名称】住友ケミカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 光也
(72)【発明者】
【氏名】山本 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】久松 義和
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3138072(JP,U)
【文献】特開2004-046384(JP,A)
【文献】特表2009-539523(JP,A)
【文献】特開平10-033710(JP,A)
【文献】特開2001-061988(JP,A)
【文献】特開平10-272205(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0343474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井板の上側から前記天井板の下側に向かって延在する配管が供給する消火用流体を前記配管の下端から前記天井板の下側に噴出する消火用ノズルを前記天井板の下側から覆う消火用ノズルカバーであって、
金属の圧延材から成り、前記天井板の下側から付けられる固着手段のみにより前記天井板の下側から取り付けられ、前記配管及び前記消火用ノズルのいずれかを囲繞しつつ前記天井板の上側に対して前記天井板の下側を封止するベース部と、
金属の圧延材から成り、前記ベース部と一体化し、前記消火用ノズルが前記消火用流体を噴出していないときに前記消火用ノズルを前記天井板の下側から覆い、前記消火用ノズルが前記消火用流体を噴出するときに前記消火用ノズルを前記天井板の下側に対して開放するカバー部と、
を備えた消火用ノズルカバー。
【請求項2】
前記カバー部は前記ベース部と嵌合により一体化する、請求項1に記載の消火用ノズルカバー。
【請求項3】
前記消火用ノズルが前記消火用流体を噴出するときに、前記カバー部が前記消火用ノズルを前記天井板の下側に対して開放するようにしつつ、前記カバー部と前記ベース部とが分離しないように前記カバー部と前記ベース部とを連結する連結部をさらに備えた請求項1又は2に記載の消火用ノズルカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用ノズルカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品関連施設等のクリーンルームで天井板の上側に対して天井板の下側を封止しつつ、火災の検知時に、泡等の消火用流体を天井板の下側に噴出する消火用ノズルを天井板の下側から覆う消火用ノズルカバーが提案されている。例えば、特許文献1には、天井板に気密に取り付けたボディに対して着脱可能な消火用ノズルカバーが開示されている。ボディは、青銅又は非鉄合金の鋳造品である。特許文献1には、ボディが天井板の上側に取り付けられるナットにより天井板の下側から取り付けられる態様が開示されている。また、特許文献1には、ボディが天井板の下側に取り付けられるナットにより天井板の上側から取り付けられる態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3138072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の技術では、消火用ノズルカバーの設置作業において、いずれの態様でも天井板の上側の屋根裏側と天井板の下側の室内側との両側からの作業が必要になる。そのため、消火用ノズルカバーの設置作業の作業性が低く、改善が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、消火用ノズルカバーの設置作業の作業性を向上させることができる消火用ノズルカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天井板の上側から天井板の下側に向かって延在する配管が供給する消火用流体を配管の下端から天井板の下側に噴出する消火用ノズルを天井板の下側から覆う消火用ノズルカバーであって、天井板の下側に付けられる固着手段により天井板の下側から取り付けられ、配管及び消火用ノズルのいずれかを囲繞しつつ天井板の上側に対して天井板の下側を封止するベース部と、ベース部と一体化し、消火用ノズルが消火用流体を噴出していないときに消火用ノズルを天井板の下側から覆い、消火用ノズルが消火用流体を噴出するときに消火用ノズルを天井板の下側に対して開放するカバー部を備えた消火用ノズルカバーである。
【0007】
この構成によれば、天井板の上側から天井板の下側に向かって延在する配管が供給する消火用流体を配管の下端から天井板の下側に噴出する消火用ノズルを天井板の下側から覆う消火用ノズルカバーにおいて、カバー部はベース部と一体化し、消火用ノズルが消火用流体を噴出していないときに消火用ノズルを天井板の下側から覆い、消火用ノズルが消火用流体を噴出するときに消火用ノズルを天井板の下側に対して開放する。ベース部は天井板の下側に付けられる固着手段により天井板の下側から取り付けられ、配管及び消火用ノズルのいずれかを囲繞しつつ天井板の上側に対して天井板の下側を封止する。つまり、天井板の下側のみからの作業により、ベース部を設置することができるため、消火用ノズルカバーの設置作業の作業性を向上させることができる。
【0008】
この場合、カバー部はベース部と嵌合により一体化することが好適である。
【0009】
この構成によれば、カバー部はベース部と嵌合により一体化するため、消火用ノズルカバーの設置作業の作業性をさらに向上させることができる。
【0010】
また、消火用ノズルが消火用流体を噴出するときに、カバー部が消火用ノズルを天井板の下側に対して開放するようにしつつ、カバー部とベース部とが分離しないようにカバー部とベース部とを連結する連結部をさらに備えることが好適である。
【0011】
この構成によれば、連結部により、消火用ノズルが消火用流体を噴出するときに、カバー部が消火用ノズルを天井板の下側に対して開放するようにしつつ、カバー部とベース部とが分離しないように連結されるため、消火用ノズルが消火用流体を噴出した後のカバー部の再利用がより容易となる。
【0012】
また、ベース部は金属材を圧延加工することにより製造されていることが好適である。
【0013】
この構成によれば、ベース部は金属材を圧延加工することにより製造されているため、鋳造等により製造される場合に比べて製造がより容易である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の消火用ノズルカバーによれば、消火用ノズルカバーの設置作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る消火用ノズルカバーの消火用ノズルが消火用流体を噴出していないときの状態を示す縦断面図である。
図2】(A)、(B)、(C)及び(D)は図1の消火用ノズルカバーの設置作業の工程を示す縦断面図であり、(E)は図1の消火用ノズルが消火用流体を噴出するときの動作を示す縦断面図である。
図3】(A)は第2実施形態の消火用ノズルカバーの消火用ノズルが消火用流体を噴出していない状態を示す図であり、(B)は第2実施形態の消火用ノズルカバーの消火用ノズルが消火用流体を噴出するときの状態を示す図である。
図4】(A)は第3実施形態の消火用ノズルカバーの消火用ノズルが消火用流体を噴出していない状態を示す図であり、(B)は第3実施形態の消火用ノズルカバーの消火用ノズルが消火用流体を噴出するときの状態を示す図である。
図5】(A)は第4実施形態の消火用ノズルカバーの消火用ノズルが消火用流体を噴出していない状態を示す図であり、(B)は第4実施形態の消火用ノズルカバーの消火用ノズルが消火用流体を噴出するときの状態を示す図である。
図6】(A)は第5実施形態の消火用ノズルカバーの消火用ノズルが消火用流体を噴出していない状態を示す図であり、(B)は第5実施形態の消火用ノズルカバーの消火用ノズルが消火用流体を噴出するときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る消火用ノズルカバー1Aは、例えば、医薬品の製造及び研究等が行われる医薬品関連施設や、手術室等の医療関連施設や、食品の製造及び研究等が行われる食品関連施設や、半導体製造施設等の工業関連施設のクリーンルームの天井板101の消火用ノズル103に配置される。消火用ノズル103は、例えば、泡状の消火用流体をクリーンルームの室内側である天井板101の下側Lに噴出する泡ヘッドである。クリーンルームの室内側である天井板101の下側Lの区域は清浄度管理がなされている区域である。クリーンルームの天井板101の下側Lの清浄度は、外気をHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)等で濾過してクリーンルーム内に供給することによって維持されている。
【0017】
天井裏である天井板101の上側Hは、清浄度管理がなされておらず、塵埃多数である区域である。天井板101の上側Hには、不図示の供給源から泡、CO、ハロゲン、粉末、不活性ガス及び水等の消火用流体を供給する不図示の一次配管が設置されている。一次配管からは、天井板101の上側Hから天井板101の下側Lに向かって延在する配管102が分岐している。本実施形態の消火用ノズルカバー1Aは、火災の検知時に、天井板101の上側Hから天井板101の下側Lに向かって延在する配管102が供給する消火用流体を配管102の下端から天井板101の下側Lに噴出する消火用ノズル103を天井板101の下側Lから覆う。
【0018】
消火用ノズルカバー1Aは、ベース部2とカバー部9とを備えている。ベース部2は、天井板101の下側Lに付けられる固着手段であるビス8により天井板101の下側Lから取り付けられ、配管102を囲繞しつつ天井板101の上側Hに対して天井板101の下側Lを封止する。ベース部2は金属材を圧延加工することにより製造されている。ベース部2は、ベースプレート部3と、フランジ部4と、円筒部5とを有する。
【0019】
ベースプレート部3は、天井板101と密接する円板である。ベースプレート部3は、配管102を天井板101の上側Hから天井板101の下側Lに挿通させ、その内周面で配管102を囲繞するための中央孔部3Hを含む。ベースプレート部3の直径は、例えば、約100~150mmである。中央孔部3Hの内径は配管102の外径よりも僅かに大きい。ベースプレート部3の外縁部には、ビス8を挿通するためのビス孔部3hを含む。ビス孔部3hは、例えば、ベースプレート部3の外縁部の4箇所に設けられている。
【0020】
フランジ部4は、ベースプレート部3の形状に対応した形状のフランジであり、ベースプレート部3と密接する。フランジ部4は、ベースプレート部3のビス孔部3hに対応したビス孔部4hを含む。円筒部5はフランジ部4と一体化した円筒であり、フランジ部4から天井板101の下側Lに向かって突出している。円筒部5の直径は、例えば、約80~100mmであり、円筒部5の天井板101の下側Lへの突出長は、例えば、約50~80mmである。円筒部5の下端の外周面には、カバー部9と嵌合する嵌合部5fを含む。円筒部5は、配管102を囲繞する。ベースプレート部3、フランジ部4及び円筒部5は、例えば、日本工業規格に規定されたSUS304の厚さ約0.5mm程度の板材を圧延加工することにより製造されている。
【0021】
中央孔部3Hの内周面が配管102を囲繞するように天井板101と密接させられたベース部2のベースプレート部3にベース部2のフランジ部4が密接させられている。ベースプレート部3のビス孔部3hとフランジ部4のビス孔部4hとにビス8が挿通され、ビス孔部3h,4hに挿通されたビス8が天井板101に天井板101の下側Lからねじ込まれている。これにより、ベース部2は、天井板101の下側Lに付けられる固着手段であるビス8により天井板101の下側Lから取り付けられる。なお、固着手段は、釘、ピン、アンカー、面ファスナー及び接着剤等でもよい。
【0022】
ベースプレート部3の中央孔部3Hと配管102との隙間は、コーキング6により封止される。また、天井板101とベースプレート部3の外周部との隙間と、ベースプレート部3の外周部とフランジ部4の外周部との隙間は、コーキング7により封止される。これにより、ベース部2は、配管102を囲繞しつつ天井板101の上側Hに対して天井板101の下側Lを封止する。
【0023】
カバー部9は、ベース部2と一体化し、消火用ノズル103が消火用流体を噴出していないときに消火用ノズル103を天井板101の下側Lから覆い、消火用ノズル103が消火用流体を噴出するときに消火用ノズル103を天井板101の下側Lに対して開放する。カバー部9は、側板10と底板11とを有する。側板10は、ベース部2の円筒部5の外径よりも僅かに大きい内径の円筒形状を有する。側板10の天井板101の下側Lへの長さは、例えば、50~100mmである。側板10の上端の内周面には、ベース部2の円筒部5の嵌合部5fと嵌合する嵌合部10fを含む。つまり、ベース部2の外側にカバー部9が被せられる。
【0024】
カバー部9はベース部2と嵌合により一体化する。ベース部2の円筒部5の嵌合部5fに対してカバー部9の側板10の嵌合部10fは摺動する。嵌合部5fと嵌合部10fとは、互いに曲面同士の摩擦力によって通常は互いに外れずに一体化される。嵌合部5fと嵌合部10fとの摩擦力は、例えば、天井板101の下側Lにカバー部9を手で引くとカバー部9がベース部2から外れる程度の摩擦力である。なお、図1の態様とは異なり、ベース部2の嵌合部5fは円筒部5の下端の内周面に設けられ、カバー部9の嵌合部10fは側板10の上端の外周面に設けられていてもよい。つまり、ベース部2の内側にカバー部9が差し込まれてもよい。
【0025】
底板11は、側板10と一体化し、側板10の円筒形状の底面を構成する円板である。カバー部9の側板10と底板11とは、ベース部2と同様に、例えば、日本工業規格に規定されたSUS304の厚さ約0.5mm程度の板材を圧延加工することにより製造されている。カバー部9とベース部2とが一体化した状態でのカバー部9の底板11の天井板101の下面からの距離は、例えば、約100~135mmである。
【0026】
底板11の上面には、例えば内径数mm程度の略円環状のワイヤ取付部11hを含む。ワイヤ12の一端は、ワイヤ取付部11hに取り付けられる。ワイヤ12の他端は、例えば、配管102に取り付けられる。ワイヤ12は、カバー部9の内部に収容される。ワイヤ12は、消火用ノズル103が消火用流体を噴出するときに、カバー部9が消火用ノズル103を天井板101の下側Lに対して開放するようにしつつ、カバー部9とベース部2とが分離しないようにカバー部9とベース部2とを連結する連結部として機能する。なお、ワイヤ12は、不燃性かつ耐熱性の糸、紐等でもよい。また、ワイヤ12の他端は、消火用ノズル103や、ベース部2や、天井板101に取り付けられてもよい。
【0027】
以下、本実施形態の消火用ノズルカバー1Aの設置作業の工程及び消火用ノズル103が消火用流体を噴出するときの動作について説明する。まず、図2(A)に示すように、中央孔部3Hの内周面に消火用ノズル103が取り付けられていない配管102を囲繞させつつ天井板101と密接させられたベース部2のベースプレート部3に、ベース部2のフランジ部4が密接させられる。ベースプレート部3のビス孔部3hとフランジ部4のビス孔部4hとにビス8が挿通され、ビス孔部3h,4hに挿通されたビス8が天井板101に天井板101の下側Lからねじ込まれる。これにより、ベース部2は、天井板101の下側Lに付けられる固着手段であるビス8により天井板101の下側Lから取り付けられる。
【0028】
図2(B)に示すように、ベースプレート部3の中央孔部3Hと配管102との隙間が、コーキング6により封止される。また、天井板101とベースプレート部3の外周部との隙間と、ベースプレート部3の外周部とフランジ部4の外周部との隙間とが、コーキング7により封止される。これにより、ベース部2は、配管102を囲繞しつつ天井板101の上側Hに対して、天井裏の不浄空気が入らないように天井板101の下側Lを封止する。
【0029】
図2(C)に示すように、配管102の下端に消火用ノズル103が取り付けられる。図2(D)に示すように、ワイヤ12の一端がワイヤ取付部11hに取り付けられ、ワイヤ12の他端が配管102等に取り付けられた状態で、ワイヤ12がカバー部9の内部に収容されつつ、ベース部2にカバー部9が取り付けられる。
【0030】
図2(E)に示すように、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出するときには、消火用流体104の圧力でベース部2の嵌合部5fに対してカバー部9の嵌合部10fが摺動し、ベース部2からカバー部9が容易に外れ、カバー部9が消火用ノズル103を天井板101の下側Lに対して開放する。ワイヤ12は、カバー部9とベース部2とが分離しないようにカバー部9とベース部2とを連結する。
【0031】
上記特許文献1に記載されているような消火用ノズルカバーでは、気密性を保持するために、配管を天井裏から出すために天井板に空けた開口部の位置と消火用ノズルカバーのボディの位置とを精密に合わせることと、一次配管から分岐した配管の下端のねじ部の位置と消火用ノズルカバーのボディの位置とを精密に合わせる必要がある。これらの位置合わせには、(1)寸分の違いなく配管の寸法取りをすること、(2)寸分の違いなく、現地で一次配管と一次配管から分岐した配管とを溶接すること及び(3)天井に設置した全ての消火用ノズルにおいて、(1)及び(2)の作業を天井裏で実施することの全てが必要となる。
【0032】
(1)及び(2)が必要であるのは、天井板に空けた開口部と同じ大きさのボディを天井板に取り付けることで気密性を得ているからである。また、(3)が必要であるのは、配管の長さ又は高さが消火用ノズルの位置ごとに、施工誤差により全て異なるためである。天井裏は暗く、狭いため作業効率が悪く、寸法が合わない場合は同じ作業をやり直すことになり、天井板材を取り換える場合もある。また、天井板は割れやすい材質であり、天井板が割れることにより、クリーンルームが汚染される可能性もある。また、消火用ノズルカバーのボディは鋳造品であるため、カバーとは別途製造する必要があり、製造の納期が長く、製造費用が高い欠点がある。
【0033】
一方、本実施形態によれば、天井板101の上側Hから天井板101の下側Lに向かって延在する配管102が供給する消火用流体104を配管102の下端から天井板101の下側Lに噴出する消火用ノズル103を天井板101の下側Lから覆う消火用ノズルカバー1Aにおいて、カバー部9はベース部2と一体化し、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出していないときに消火用ノズル103を天井板101の下側Lから覆い、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出するときに消火用ノズル103を天井板101の下側Lに対して開放する。ベース部2は天井板101の下側Lに付けられる固着手段であるビス8により天井板101の下側Lから取り付けられ、配管102を囲繞しつつ天井板101の上側Hに対して天井板101の下側Lを封止する。つまり、天井板101の下側Lのみからの作業により、ベース部2を設置することができるため、消火用ノズルカバー1Aの設置作業の作業性を向上させることができる。
【0034】
つまり、上記特許文献1に記載されているような消火用ノズルカバーでは、天井裏及び室内の側の作業によって、天井板に空けた開口部の位置と消火用ノズルカバーのボディの位置とを精密に合わせることと、一次配管から分岐した配管の下端のねじ部の位置と消火用ノズルカバーのボディの位置とを精密に合わせる必要があるが、本実施形態では、取り付けられた配管102の周囲にベース部2とカバー部9とを天井板101の下側Lから被せるだけで、嵌合部5f,10fで施工誤差を吸収してくれるので、設置作業がより簡単に行える。
【0035】
また、本実施形態によれば、カバー部9はベース部2と嵌合により一体化するため、消火用ノズルカバー1Aの設置作業の作業性をさらに向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、連結部であるワイヤ12により、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出するときに、カバー部9が消火用ノズル103を天井板101の下側Lに対して開放するようにしつつ、カバー部9とベース部2とが分離しないように連結されるため、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出した後のカバー部9の再利用がより容易となる。
【0037】
また、本実施形態によれば、ベース部2は金属材を圧延加工することにより製造されているため、鋳造等により製造される場合に比べて製造がより容易である。つまり、本実施形態の消火用ノズルカバー1Aは、上記特許文献1に記載されているような消火用ノズルカバーよりも構造が簡単であり、圧延材が使用できるため、製造の納期が短く、製造費用が安い。また、本実施形態の消火用ノズルカバー1Aは工場でまとめて製造することができ、量産性に優れる。
【0038】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。図3(A)に示す第2実施形態に係る消火用ノズルカバー1Bでは、連結部はベース部2の下端とカバー部9の上端との境界部の一箇所に設けられた蝶番13である。ベース部2の下端とカバー部9の上端との境界部の蝶番13の反対側は不図示のクリップ等により、天井板101の下側Lにカバー部9を手で引くと、カバー部9が天井板101の下側Lに開く程度の強度で結合されている。図3(B)に示すように、蝶番13は、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出するときに、カバー部9が消火用ノズル103を天井板101の下側Lに対して開放するようにしつつ、カバー部9とベース部2とが分離しないようにカバー部9とベース部2とを連結する連結部として機能する。本実施形態では、簡単な構造により、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出するときに、カバー部9が消火用流体104の噴出に影響を与え難い利点がある。
【0039】
また、図4(A)に示す第3実施形態に係る消火用ノズルカバー1Cでは、2つに分離することにより、消火用ノズル103を天井板101の下側Lに対して開放自在な一対のカバー部15,16を備える。連結部は、ベース部2の下端とカバー部15の上端との境界部に設けられた蝶番13及びベース部2の下端とカバー部16の上端との境界部に設けられた蝶番14である。カバー部15とカバー部16との境界部は不図示のクリップ等により、天井板101の下側Lにカバー部15,16を手で引くとカバー部15,16が天井板101の下側Lに開く程度の強度で結合されている。図4(B)に示すように、蝶番13,14は、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出するときに、互いに開いたカバー部15,16が消火用ノズル103を天井板101の下側Lに対して開放するようにしつつ、カバー部15,16とベース部2とが分離しないようにカバー部15,16とベース部2とを連結する連結部として機能する。
【0040】
本実施形態では、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出するときに、カバー部9が消火用流体104の噴出にさらに影響を与え難い利点がある。なお、カバー部15,16は、3つ以上に分離することにより、消火用ノズル103を天井板101の下側Lに対して開放自在でもよい。
【0041】
また、図5(A)に示す第4実施形態に係る消火用ノズルカバー1Dでは、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出するときに破砕するカバー部17を備える。カバー部17は、例えば、発泡スチロール等の合成樹脂や紙等から構成することができる。本実施形態の消火用ノズルカバー1Dは連結部を備えていない。図5(A)及び図5(B)に示すように、本実施形態の消火用ノズルカバー1Dのカバー部17は、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出していないときに消火用ノズル103を天井板101の下側Lから覆い、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出するときに消火用流体の圧力により破砕することによって消火用ノズル103を天井板101の下側Lに対して開放する。本実施形態では、消火用ノズルカバー1Dのカバー部17を使い捨てにすることができる利点がある。
【0042】
また、図6(A)に示す第5実施形態に係る消火用ノズルカバー1Eでは、配管102に天井板101の高さで取り付けられた消火用ノズル103に対して、ベース部18は、消火用ノズル103を囲繞しつつ天井板101の上側Hに対して天井板101の下側Lを封止する。ベース部18の円筒部5の天井板101の下側Lへの突出長は、消火用ノズル103からの消火用流体104の噴出の障害とならない程度に短い長さである。また、本実施形態では、消火用ノズル103が天井板101の高さまで引込んでいるため、カバー部19の側板10の天井板101の下側Lへの長さは、上記第1実施形態よりも短くすることができる。図6(B)に示すように、消火用ノズル103が消火用流体104を噴出するときのカバー部19の動作は、上記第1実施形態の消火用ノズルカバー1Aと同様である。本実施形態では、ワイヤ12の他端は、ベース部18の円筒部5のワイヤ取付部5hに取り付けられている。本実施形態の消火用ノズルカバー1Eには、上述した第2実施形態~第4実施形態に係る蝶番13,14及びカバー部9,15,16,17が適用されてもよい。本実施形態では、消火用ノズルカバー1Eが天井板101の下側Lに突出する長さを短くすることができる利点がある。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、消火用ノズルカバー1A,1B,1C,1D,1Eの材質は、SUS304のようなステンレス鋼以外にも、アルミニウム合金等の他の金属材や、不燃材料を適用することができる。また、上記実施形態のベース部2の形状は、円板状以外にも長方形板状及び正方形板状等でもよい。また、上記実施形態のカバー部9等の形状は、円筒形状以外にも横断面が長方形状及び正方形状の筒状であってもよく、半球状であってもよい。また、消火用ノズルカバー1A,1B,1C,1D,1Eの製法は、圧延加工以外にも、鋳造、削り出し及び成型等を適用することができる。また、消火用ノズルカバー1A,1B,1C,1D,1Eによって覆われる消火用ノズルは、泡ヘッドの他に、CO消火用ヘッド、ハロゲン消火用ヘッド、粉末消火栓ヘッド、水消火用ヘッド(スプリンクラーヘッド)、水噴霧ヘッドも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1A,1B,1C,1D,1E…消火用ノズルカバー、2…ベース部、3…ベースプレート部、3H…中央孔部、3h…ビス孔部、4…フランジ部、4h…ビス孔部、5…円筒部、5f…嵌合部、5h…ワイヤ取付部、6,7…コーキング、8…ビス、9…カバー部、10…側板、10f…嵌合部、11…底板、11h…ワイヤ取付部、12…ワイヤ、13,14…蝶番、15,16…カバー部、17…カバー部、18…ベース部、19…カバー部、101…天井板、102…配管、103…消火用ノズル、104…消火用流体、H…上側、L…下側。
図1
図2
図3
図4
図5
図6