IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ハーマンの特許一覧

<>
  • 特許-加熱調理器 図1
  • 特許-加熱調理器 図2
  • 特許-加熱調理器 図3
  • 特許-加熱調理器 図4
  • 特許-加熱調理器 図5
  • 特許-加熱調理器 図6
  • 特許-加熱調理器 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20220721BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
F24C3/12 R
F24C3/12 B
A47J37/06 366
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018034843
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019148397
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁尾 麻里恵
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶太
(72)【発明者】
【氏名】横山 敬仁
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189531(JP,A)
【文献】特開2016-056995(JP,A)
【文献】特開2017-026268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の載置部を含む加熱対象物が配置される加熱室と、
前記加熱室に配置された前記加熱対象物を上方から加熱するための上バーナーと、
前記上バーナーの火力を変更するための上バーナー用火力変更部と、
前記加熱室に配置された前記加熱対象物の熱容量の指標となる熱容量情報を検知する熱容量検知部と、
前記熱容量検知部で検知した前記熱容量情報に基づいて、前記上バーナー用火力変更部を制御する制御部とを備え、
前記熱容量検知部は、
前記載置部の温度を検知する温度センサーを有し、
前記熱容量検知部は、前記温度センサーの検知結果に基づき、前記加熱対象物が加熱された時における前記載置部の温度勾配を算出し、前記熱容量情報として検知するものであり、
前記制御部は、前記温度勾配が予め設定された閾値よりも大きいか否かを判定し、
前記閾値は、前記温度センサーにおいて、検知した初期温度毎に設定されている、
加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱室に配置された前記加熱対象物を下方から加熱するための下バーナーと、
前記下バーナーの火力を変更するための下バーナー用火力変更部とを更に備え、
前記制御部は、前記熱容量検知部で検知した前記熱容量情報に基づいて、前記下バーナー用火力変更部を制御する、
請求項1の加熱調理器。
【請求項3】
前記制御部は、前記熱容量検知部で前記熱容量情報を検知した後、前記温度センサーにより前記加熱対象物の温度を検知し、この温度センサーの検知した温度と、前記熱容量情報に応じて設定された制御温度とに基づいて、前記上バーナー用火力変更部を制御する、
請求項1又は請求項2の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱調理器に関し、詳しくは、加熱室に配置された加熱対象物を上方及び下方からそれぞれ加熱する上バーナー及び下バーナーを備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガスコンロ用グリルが開示されている。このガスコンロ用グリルは、グリル庫と、グリル庫の底部に設けられた下バーナーと、グリル庫の上部に設けられた上バーナーとを備えている。グリル庫の内部には、魚類等の被調理物が載置されるグリル皿が配置される。下バーナーは、グリル皿を下方から加熱する。上バーナーは、グリル皿に載置された被調理物を上方から加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-119243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなガスコンロ用グリルにあっては、グリル皿に載せられる被調理物の大きさ又は重さ等が大きく変わった際に、上バーナーにより、被調理物を適切な火力で加熱することが難しい。このため、例えば、被調理物が小さいときには、被調理物の上面が焼けすぎたり、被調理物が大きいときには、被調理物が十分に加熱されなかったりする可能性がある。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、加熱対象物を上バーナーの適切な火力の火で加熱することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る加熱調理器は、加熱室、上バーナー、上バーナー用火力変更部、熱容量検知部及び制御部を備える。前記加熱室には、板状の載置部を含む加熱対象物が配置される。前記上バーナーは、前記加熱室に配置された前記加熱対象物を上方から加熱する。前記上バーナー用火力変更部は、前記上バーナーの火力を変更する。前記熱容量検知部は、前記加熱室に配置された前記加熱対象物の熱容量の指標となる熱容量情報を検知する。前記制御部は、前記熱容量検知部で検知した前記熱容量情報に基づいて、前記上バーナー用火力変更部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る加熱調理器は、加熱対象物を上バーナーの適切な火力の火で加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る加熱調理器の斜視図である。
図2図2は、同上の加熱調理器のグリル装置を前後方向と直交する断面で示した断面図である。
図3図3は、同上のグリル装置であって、一部を断面で示した斜視図である。
図4図4は、同上のグリル装置の概念図である。
図5図5は、同上の加熱調理器のブロック図である。
図6図6Aは、熱容量が小さい被調理物を加熱したときにおける、加熱対象物の温度変化とグリル装置のバーナーの火力の変化を示したグラフである。図6Bは、熱容量が大きい被調理物を加熱したときにおける、加熱対象物の温度変化とグリル装置のバーナーの火力の変化を示したグラフである。
図7図7は、同上の加熱調理器のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)概要
図1図7に示す本実施形態の加熱調理器1は、グリル付きのガスこんろであって、詳しくはキッチンカウンター(図示せず)に形成された孔に上方より挿入されて設置されるドロップインこんろである。なお、本開示の技術は、グリルを備えたテーブルこんろ、又はこんろを備えないガスグリル等にも適用可能である。
【0010】
以下、加熱調理器1の各構成について、加熱調理器1の設置状態における方向を用いて説明する。具体的には、加熱調理器1から見て、設計上利用者が位置する方を前方と定義する。また、加熱調理器1を前方から見たときを基準にして、左右方向を定義する。
【0011】
本実施形態の加熱調理器1は、加熱室20、上バーナー26、上バーナー用火力変更部31、熱容量検知部及び制御部16を備える。加熱室20には、板状の載置部(底板部50)を含む加熱対象物が配置される。
【0012】
上バーナー26は、加熱室20に配置された加熱対象物を上方から加熱する。上バーナー用火力変更部31は、上バーナー26の火力を変更する。
【0013】
熱容量検知部は、加熱室20に配置された加熱対象物の熱容量の指標となる熱容量情報を検知する。制御部16は、熱容量検知部で検知した熱容量情報に応じて上バーナー用火力変更部31を制御する。なお、本開示における「熱容量情報」は、加熱対象物の熱容量と相関する情報であればよく、加熱対象物の熱容量に限られない。例えば、熱容量検知部によって検知される熱容量情報は、加熱対象物を加熱したときにおける加熱対象物の温度勾配、加熱対象物の重量又は大きさ等であってもよい。
【0014】
本実施形態の加熱調理器1は、加熱対象物の熱容量に応じて上バーナー26の火力を変更できる。このため、被調理物の大きさ又は重さ等が変化しても、上バーナー26の火力を被調理物に適した火力にして、被調理物を加熱することができる。
【0015】
(2)構成
以下、加熱調理器1について詳述する。図1に示すように、本実施形態の加熱調理器1は、ケーシング10と、グリル装置2と、複数のこんろバーナー11と、制御部16(図5参照)と、天板12と、複数の五徳13とを備えている。
【0016】
ケーシング10は、上方に開口した箱状に形成されている。ケーシング10の内部には、複数のこんろバーナー11が設置されている。天板12はケーシング10上に設置されている。天板12はケーシング10の上面を覆う。天板12において複数のこんろバーナー11の各々は、天板12を貫通して上方に突出している。天板12において複数のこんろバーナー11に対応する箇所には、複数の五徳13が設置されている。
【0017】
加熱調理器1は、複数のこんろバーナー11にそれぞれ対応する複数のこんろ用操作部15を備えている。利用者は、各こんろ用操作部15を操作することで、対応するこんろバーナー11の点火と消火の切替え及び火力の変更を行うことができる。
【0018】
グリル装置2は、加熱対象物が配置される加熱室20と、加熱室20に設けられた支持機構21(図2)と、支持機構21によって前後方向に移動可能に支持されたグリル扉22とを有している。
【0019】
図2及び図3に示す本実施形態の加熱室20は、箱状に形成されたグリル庫である。加熱室20は、ケーシング10と天板12とで囲まれた空間に配置されている。加熱室20は、底部200、左右の側壁部201、後壁部202及び天井部203を有している。加熱室20の内側には、底部200、左右の側壁部201、後壁部202及び天井部203で囲まれた加熱空間が形成されている。加熱空間には、肉又は魚等の被調理物を含む加熱対象物が配置される。
【0020】
図3に示すように、加熱室20の前端部には、開口部25が形成されている。加熱室20の内部空間は、開口部25を介してケーシング10(図1参照)の前方に開放される。加熱対象物は、開口部25を通して加熱室20に出し入れされる。
【0021】
加熱室20の開口部25は、グリル扉22(図1参照)によって開閉される。グリル扉22を支持する支持機構21は、図2に示すように、左右一対のスライドレール210を有している。左右のスライドレール210は、それぞれ加熱室20の左右の側壁部201の下端部に、前後方向に移動可能に取り付けられている。加熱室20の底部200は、中空である。各スライドレール210は、加熱室20の底部200の内部に配置されている。
【0022】
グリル扉22は、左右のスライドレール210に取り付けられている。グリル扉22は、図1に示す閉位置と、この閉位置よりも前方の開位置との間で前後方向に移動可能である。
【0023】
本実施形態の加熱調理器1は、図2及び図3に示す被調理物受け5を更に備えている。グリル装置2で加熱される被調理物は、被調理物受け5に載せられた状態で加熱室20内に配置される。すなわち、本実施形態のグリル装置2で加熱される加熱対象物は、被調理物とこれを受ける被調理物受け5とで構成される。
【0024】
被調理物受け5は、金属製である。被調理物受け5は、上方に開口した浅底の容器状に形成されている。被調理物受け5は、上方から見て矩形状で水平方向に広がった板状の底板部50と、底板部50の周縁から上方に向けて突出した周壁部51とを有する。底板部50には、焼き網のように上下方向に貫通する孔が形成されていない。底板部50は、被調理物が載せられる部分である。すなわち、本実施形態では、底板部50によって、被調理物が載せられる板状の載置部が構成されている。
【0025】
なお、被調理物受け5は、上方に開口した容器状の本体と、この本体の上開口部を塞ぐ蓋とで構成されてもよい。この場合、本体の底部によって載置部が構成される。また、被調理物受け5は、平板状の皿であってもよい。
【0026】
本実施形態の加熱調理器1は、被調理物受け5を取り外し可能に支持する支持体6を更に備えている。支持体6は、被調理物受け5を下方から支持する。支持体6は、上方から見て枠状に形成されており、例えば、金属製の線材を変形させ、この線材の両端を溶接等で繋ぐことによって形成される。
【0027】
支持体6の前端部は、グリル扉22に着脱可能に連結される。グリル扉22に支持体6が連結され、かつ、支持体6で被調理物受け5が支持された状態において、支持体6及び被調理物受け5は、グリル扉22と連動する。すなわち、グリル扉22が図1に示す閉位置に配置されると、支持体6及び被調理物受け5は、加熱室20内に配置され、グリル扉22が開位置に配置されると、支持体6及び被調理物受け5は、加熱室20の開口部25よりも前方に配置される。
【0028】
図2及び図3に示すように、グリル装置2は、グリルバーナーとして、上バーナー26及び下バーナー27を更に有している。上バーナー26は、加熱室20の上部(詳しくは天井部203)に取り付けられている。上バーナー26は、加熱室20内に配置された加熱対象物(被調理物受け5及び被調理物)を上方から加熱する。このとき、被調理物受け5に載せられた被調理物は、上バーナー26からの輻射熱によって加熱される。
【0029】
下バーナー27は、加熱室20の下部(詳しくは底部200)に設置されている。下バーナー27は、加熱室20内に配置された加熱対象物を下方から加熱する。このとき、被調理物受け5に載せられた被調理物は、下バーナー27によって加熱された被調理物受け5の熱が、被調理物に伝わることによって加熱される。
【0030】
本実施形態の上バーナー26及び下バーナー27の各々は、ブンゼンバーナーである。グリル装置2は、上バーナー26及び下バーナー27に都市ガス等の燃料ガスを供給するガス供給路28を有している。
【0031】
図4に示すように、本実施形態のガス供給路28は、主流路280と、主流路280から分岐した一対の分岐路281,282とを有している。主流路280には燃料ガスが供給される。一対の分岐路281,282のうちの一方は、上バーナー26に通じる上バーナー用流路281であり、他方は下バーナー27に通じる下バーナー用流路282である。
【0032】
グリル装置2は、主流路280に設けられた開閉弁29を有している。開閉弁29は、例えば電磁弁である。開閉弁29が開いた状態で、主流路280に供給された燃料ガスは、上バーナー26及び下バーナー27に供給される。
【0033】
グリル装置2は、上バーナー用点火プラグ30と、下バーナー用点火プラグ40とを有している。上バーナー用点火プラグ30は、上バーナー26に設置されており、下バーナー用点火プラグ40は、下バーナー27に設置されている。開閉弁29が開いた状態で、上バーナー用点火プラグ30が作動することにより、上バーナー26は点火される。開閉弁29が開いた状態で、下バーナー用点火プラグ40が作動することにより、下バーナー27は点火される。開閉弁29が閉じることで、上バーナー26及び下バーナー27は、消火される。
【0034】
グリル装置2は、一対の火力変更部31,41を更に有している。一対の火力変更部31,41の一方は、上バーナー用火力変更部31であり、他方は、下バーナー用火力変更部41である。上バーナー用火力変更部31は、上バーナー用流路281に設けられた電磁弁31aで構成されている。ガス供給路28は、上バーナー用流路281における電磁弁31aよりも上流側と下流側とを接続するバイパス路34を有している。バイパス路34にはオリフィス(流路断面積の小さな流路)35が設けられている。
【0035】
上バーナー26の火力は、電磁弁31aが開閉されることにより、変更される。電磁弁31aが開いた状態では、主流路280から上バーナー用流路281に供給された燃料ガスは、電磁弁31aとオリフィス35との両者を通過して上バーナー26に供給される。この場合、上バーナー26の火力は、「強」になる。一方、電磁弁31aが閉じた状態では、主流路280から上バーナー用流路281に供給された燃料ガスは、電磁弁31a及びオリフィス35のうちのオリフィス35のみを通過して上バーナー26に供給される。この場合、上バーナー26に供給される燃料ガスの流量は、電磁弁31aが開いた状態にあるときよりも少なくなり、上バーナー26の火力は、「弱」になる。
【0036】
下バーナー用火力変更部41は、下バーナー用流路282に設けられた電磁弁41aで構成されている。ガス供給路28は、下バーナー用流路282における電磁弁41aよりも上流側と下流側とを接続するバイパス路44を有している。バイパス路44には、オリフィス45が設けられている。
【0037】
下バーナー27の火力は、電磁弁41aが開閉されることにより、変更される。電磁弁41aが開いた状態では、主流路280から下バーナー用流路282に供給された燃料ガスは、電磁弁41aとオリフィス45との両者を通過して下バーナー27に供給される。この場合、下バーナー27の火力は、「強」になる。一方、電磁弁41aが閉じた状態では、主流路280から下バーナー用流路282に供給された燃料ガスは、電磁弁41a及びオリフィス45のうちのオリフィス45のみを通過して下バーナー27に供給される。この場合、下バーナー27に供給される燃料ガスの流量は、電磁弁41aが開いた状態にあるときよりも少なくなり、下バーナー27の火力は、「弱」になる。
【0038】
上バーナー用火力変更部31及び下バーナー用火力変更部41の各々は、電磁弁31a,41aに限られない。例えば、上バーナー用火力変更部31は、上バーナー用流路281に設けられた流量制御弁であってもよい。また、下バーナー用火力変更部41は、下バーナー用流路282に設けられた流量制御弁であってもよい。
【0039】
グリル装置2は、加熱室20に配置された加熱対象物の熱容量の指標となる熱容量情報を自動で検知する熱容量検知部を有している。本実施形態の熱容量検知部は、被調理物受け5の温度情報を検知する温度センサー46を有している。
【0040】
本実施形態の温度センサー46は、図2及び図3に示すように下バーナー27の中央部に設置されている。温度センサー46は、加熱室20内に配置された被調理物受け5の下方に位置する。
【0041】
温度センサー46は、温度センサー46の上端部に位置する温度検知部47を有している。温度検知部47は、上下方向に移動可能である。温度検知部47には、例えば、ばね等の付勢部材により、上方に力が加えられている。
【0042】
加熱室20内に被調理物受け5が配置されたとき、温度検知部47は、被調理物受け5の底板部50の下面に直接接触する。これにより、被調理物受け5の底板部50の温度が、温度センサー46によって検知可能になる。
【0043】
本実施形態の制御部16は、温度センサー46で検知された温度Tに基づき、加熱対象物を加熱したときにおける温度勾配Tgを熱容量情報として算出する、すなわち、本実施形態の熱容量検知部は、温度センサー46と制御部16とで構成されている。なお、温度勾配Tgについては、後述する。
【0044】
本実施形態の加熱調理器1は、グリル装置2を操作するための操作部として、図1に示すグリル用操作部14を備えている。グリル用操作部14は、ケーシング10の前面に設けられたカンガルーポケット方式の操作部である。グリル用操作部14は、非使用時にはケーシング10内に配置され、使用時にはケーシング10から前方に突出した位置に配置される。グリル用操作部14は、利用者によって操作される操作パネル(図示せず)を有している。操作パネルは、グリル用操作部14がケーシング10から前方に突出した位置に配置されたときにのみ露出する。なお、グリル用操作部14は、例えば、ケーシング10の前面に固定的に設けられた操作パネル等であってもよい。
【0045】
図5に示す制御部16は、例えば、マイクロコンピュータで構成される。制御部16には、開閉弁29、上バーナー用火力変更部31(電磁弁31a)、下バーナー用火力変更部41(電磁弁41a)、上バーナー用点火プラグ30、下バーナー用点火プラグ40、温度センサー46、グリル用操作部14等が電気的に接続されている。制御部16は、開閉弁29、上バーナー用火力変更部31、下バーナー用火力変更部41、上バーナー用点火プラグ30及び下バーナー用点火プラグ40の各々を制御する。
【0046】
本実施形態の加熱調理器1は、利用者によるグリル用操作部14の操作により、グリル装置2による自動調理を実行する。以下、この自動調理について詳述する。
【0047】
自動調理を行うとき、利用者は、加熱室20内に加熱対象物を配置する。次に利用者は、グリル用操作部14を操作することで、複数の調理メニューの中から任意の調理メニューを選択して自動調理の実行の指令をする。制御部16は、自動調理の指令を受けたとき、調理メニュー毎に設定された複数の制御条件の中から、選択された調理メニューに対応する制御条件を決定し、この制御条件と、温度センサー46で検知した温度とに基づいて、上バーナー用点火プラグ30、下バーナー用点火プラグ40、開閉弁29、上バーナー用火力変更部31及び下バーナー用火力変更部41等を自動で制御する。このようにして、選択された調理メニューに応じた自動調理が実行される。
【0048】
利用者が選択可能な調理メニューとしては、例えば、魚、米、パン等の被調理物の種類の違い、姿焼き、切り身、干し物等の被調理物の状態の違い及び焼き加減の違い等に応じて制御条件が決定された調理メニューがある。上述した制御条件は、調理メニュー毎に異なる。
【0049】
自動調理において、制御部16は、図6A及び図6Bに示すように、熱容量判定モード及び温度調整モードを順に実行する。図7にこの自動調理を行うときのフローチャートを示す。熱容量判定モードは、図7に示すステップS1~S5の処理により実行され、温度調整モードは図7に示すステップS6又はステップS7の処理により実行される。
【0050】
熱容量判定モードは、加熱室20内に配置された加熱対象物の熱容量の大きさを判定するモードであり、自動調理の開始と同時に開始される。熱容量判定モードでは、まず、図7に示すステップS1の処理が実行される。ステップS1において、制御部16は、開閉弁29、電磁弁31a及び電磁弁41aの各々を開いた状態とし、かつ上バーナー用点火プラグ30及び下バーナー用点火プラグ40を作動させる。これにより、上バーナー26及び下バーナー27の各々は、火力が「強」の状態で点火され、加熱対象物が上バーナー26及び下バーナー27によって加熱される。
【0051】
なお、ステップS1の処理により点火される上バーナー26及び下バーナー27の各々の火力は、選択される調理メニューに応じて決定される。ステップS1の処理により点火される上バーナー26及び下バーナー27の各々の火力は、例えば、「上バーナー:強/下バーナー:弱」、「上バーナー:弱/下バーナー:強」又は「上バーナー:弱/下バーナー:弱」であってもよい。なお、上バーナー26の点消火の切り換え及び下バーナー27の点消火の切り換えが個別に行える加熱調理器1の場合、ステップS1の処理では、上バーナー26及び下バーナー27のうちの一方のみが点火されることにより、加熱対象物が加熱されてもよい。
【0052】
ステップS1に続いて実行されるステップS2において、制御部16は、温度センサー46により被調理物受け5の現時点での温度Tを検知し、この温度Tが予め設定された設定温度T(例えば、160℃)以上であるか否かを判定する。ステップS2において温度Tが設定温度T未満であればステップS3に進み、設定温度T以上であればステップS4に進む。なお、設定温度Tは、調理メニュー毎に設定される。
【0053】
ステップS3において制御部16は、熱容量判定モードが開始された時点(上バーナー26及び下バーナー27が点火された時点)から経過した時間tが、予め設定された設定時間t(例えば、350秒)以上であるか否かを判定する。ステップS3において、時間tが、設定時間t以上であればステップS4に進み、設定時間t未満であれば、ステップS2に戻る。なお、設定時間tは、調理メニュー毎に設定される。
【0054】
ステップS3の処理は、省略可能である。この場合、ステップS2において温度Tが設定温度T未満であるときには、例えば、所定時間後に再びステップS2に戻る処理が行われる。
【0055】
ステップS4及びこれに続いて行われるステップS5において、制御部16は、加熱対象物の熱容量の大きさの判定を行う。ステップS4において制御部16は、熱容量判定モードの開始時点から現時点まで経過した時間tに対する加熱対象物の温度勾配Tgを算出する。この温度勾配Tgは、加熱対象物の熱容量の指標となる熱容量情報である。
【0056】
温度勾配Tgは、熱容量判定モードの開始時点において温度センサー46によって検知した初期温度Tと、現時点において温度センサー46により検知した温度Tと、時間tとに基づいて算出される。すなわち、温度勾配Tgは、Tg=(T-T)/tの演算式で算出される。
【0057】
ステップS5において制御部16は、ステップS4で算出した温度勾配Tgが、予め設定された閾値Tgよりも大きいか否かを判定する。なお、閾値Tgは、予め実験により求められた値であり、調理メニュー毎に設定される。また、閾値Tgは、当該熱容量判定モードにおいて検知した初期温度T毎に設定される。この閾値Tgは、例えば、検量線に基づいて決定される。この検量線は、初期温度Tを異ならせて加熱対象物を加熱する実験を行うことで作成され、初期温度Tと温度勾配Tgとの両者を変数とする検量線である。
【0058】
ステップS5において、温度勾配Tgが閾値Tgよりも大きい場合(すなわち、加熱対象物の熱容量が小さい場合)、熱容量判定モードから温度調整モードに移行し、続いてステップS6に進む。また、ステップS5において、温度勾配Tgが閾値Tg以下である場合(すなわち、加熱対象物の熱容量が大きい場合)、熱容量判定モードから温度調整モードに移行し、続いてステップS7に進む。
【0059】
ステップS6及びステップS7の各々(温度調整モード)において、制御部16は、温度センサー46で検知した温度に基づいて、電磁弁31a及び電磁弁41aの開閉を自動で切り替える自動温度制御を実行する。この自動温度制御は、ステップS5の処理の終了時点から開始される。
【0060】
図6Aは、ステップS6による処理が行われた自動調理時における、温度Tと、上バーナー26及び下バーナー27の火力との変化を示したグラフである。図6Bは、ステップS7による処理が行われた自動調理時における、温度Tと、上バーナー26及び下バーナー27の火力との変化を示したグラフである。
【0061】
ステップS6及びステップS7の各々で実行される自動温度制御では、制御部16は、温度センサー46による温度検知を繰り返し行い、温度センサー46で検知した温度Tが、予め設定された上バーナー制御温度Tよりも高くなったときに、電磁弁31aを閉じて上バーナー26の火力を「弱」に切り換え、上バーナー制御温度T以下になったときに、電磁弁31aを開いて上バーナー26の火力を「強」に切り換える。
【0062】
また、制御部16は、ステップS6及びステップS7の各々で実行される自動温度制御において、温度センサー46で検知した温度Tが、予め設定された下バーナー制御温度Tよりも高くなったときに、電磁弁41aを閉じて下バーナー27の火力を「弱」に切り換え、下バーナー制御温度T以下になったときに、電磁弁41aを開いて下バーナー27の火力を「強」に切り換える。
【0063】
また、ステップS6及びステップS7の各々で実行される自動温度制御では、制御部16は、熱容量判定モードが開始された時点から設定時間tが経過した時点で、温度調整モード(自動温度制御)を終了し、開閉弁29を閉じて、上バーナー26及び下バーナー27を消火する。これにより、自動調理が終了する。
【0064】
ステップS6の自動温度制御で用いられる上バーナー制御温度T(以下、第1上バーナー制御温度TT1という)は、ステップS7の自動温度制御で用いられる上バーナー制御温度T(以下、第2上バーナー制御温度TT2という)よりも低い。すなわち、自動調理における上バーナー26の火力の変更条件は、加熱対象物の熱容量に応じて変更される。このため、被調理物は、上バーナー26によって適切に加熱される。本実施形態では、第1上バーナー制御温度TT1が、180℃に設定され、第2上バーナー制御温度TT2が、200℃に設定される。
【0065】
ステップS6の自動温度制御で用いられる下バーナー制御温度T(以下、第1下バーナー制御温度Tu1という)は、ステップS7の自動温度制御で用いられる下バーナー制御温度T(以下、第2下バーナー制御温度Tu2という)よりも低い。すなわち、自動調理における下バーナー27の火力の変更条件は、加熱対象物の熱容量に応じて変更される。このため、被調理物は、下バーナー27によって適切に加熱される。本実施形態では、第1下バーナー制御温度Tu1が、160℃に設定され、第2下バーナー制御温度Tu2が、190℃に設定される。
【0066】
ステップS6の自動温度制御で用いられる設定時間T(以下、設定時間Tc1という)は、ステップS7の自動温度制御で用いられる設定時間T(以下、設定時間Tc2という)よりも短い。このため、自動調理における上バーナー26及び下バーナー27による加熱対象物の加熱量は、加熱対象物の熱容量に応じて変更され、被調理物が適切に加熱される。本実施形態では、設定時間Tc1は530秒に設定され、設定時間Tc2は800秒に設定される。
【0067】
なお、本実施形態の各自動温度制御では、上バーナー制御温度Tが、下バーナー制御温度Tよりも高いが、上バーナー制御温度Tは、下バーナー制御温度Tよりも低くてもよいし、下バーナー制御温度Tと同じであってもよい。また、設定時間Tc1と、設定時間Tc2とは同じ値であってもよい。
【0068】
また、本実施形態の自動温度制御では、上バーナー26及び下バーナー27の各々の火力が、「強」と「弱」の2段階に切り換えられるが、3段階以上に切り換えられてもよい。また、この場合、切り換えられる火力としては、上バーナー26及び下バーナー27の各々が消火した「切り」を含んでもよい。
【0069】
また、本実施形態の自動調理では、加熱対象物の熱容量に応じて決定される処理として、ステップS6による処理とステップS7による処理との2種類の処理があるが、3種類以上の処理があってもよい。また、各処理では、上バーナー26の火力の変更条件、下バーナー27の火力の変更条件及び設定時間Tのうち、上バーナー26の火力の変更条件と下バーナー27の火力の変更条件とだけが異なってもよいし、上バーナー26の火力の変更条件のみが異なってもよい。
【0070】
また、自動温度制御における、上バーナー制御温度T、下バーナー制御温度T及び時間Tの各々は、例えば、熱容量判定モードで算出される温度勾配Tgと、検量線とに基づいて算出してもよい。この検量線は、温度勾配Tgが異なる加熱対象物を加熱する実験を行うことで作成され、温度勾配Tgと上バーナー制御温度T、温度勾配Tgと下バーナー制御温度T又は温度勾配Tgと時間Tを変数とする。
【0071】
また、例えば、熱容量検知部によって検知される熱容量情報は、加熱対象物の温度勾配Tgに限られず、例えば、加熱室20内に配置される加熱対象物の重さ又は大きさ等であってもよい。この他、本実施形態の加熱調理器1は、適宜設計変更可能である。
【0072】
(3)態様
上述した実施形態から明らかなように、第1の態様の加熱調理器1は、加熱室20、上バーナー26、上バーナー用火力変更部31、熱容量検知部及び制御部16を備える。加熱室20には、板状の載置部(底板部50)を含む加熱対象物が配置される。上バーナー26は、加熱室20に配置された加熱対象物を上方から加熱する。上バーナー用火力変更部31は、上バーナー26の火力を変更する。熱容量検知部は、加熱室20に配置された加熱対象物の熱容量の指標となる熱容量情報を検知する。制御部16は、熱容量検知部で検知した熱容量情報に基づいて、上バーナー用火力変更部31を制御する。
【0073】
この態様によれば、加熱対象物の熱容量に応じて上バーナー26の火力が変更される。すなわち、加熱対象物の熱容量が大きいほど、上バーナー26による加熱量が大きくなる制御が行われる。このため、被調理物の大きさ又は重さ等が変化しても、上バーナー26の火力を被調理物に適した火力にして、被調理物を加熱することができる。
【0074】
第2の様態の加熱調理器1は、第1の様態との組み合わせにより実現され得る。第2の態様において、加熱調理器1は、下バーナー27と、下バーナー用火力変更部41とを更に備える。下バーナー27は、加熱室20に配置された加熱対象物を下方から加熱する。下バーナー用火力変更部41は、下バーナー27の火力を変更する。制御部16は、熱容量検知部で検知した熱容量情報に基づいて、下バーナー用火力変更部41を制御する。
【0075】
この態様によれば、加熱対象物の熱容量に応じて、上バーナー26の火力と下バーナー27の火力が変更される。すなわち、加熱対象物の熱容量が大きいほど、上バーナー26による加熱量と下バーナー27による加熱量とが大きくなる制御が行われる。このため、被調理物の大きさ又は重さ等が変化しても、上バーナー26及び下バーナー27の各々の火力を被調理物に適した火力にして、被調理物を加熱することができる。
【0076】
第3の様態の加熱調理器1は、第1又は第2の様態との組み合わせにより実現され得る。第3の態様において、熱容量検知部は、温度センサー46を有する。温度センサー46は、載置部の温度を検知する。熱容量検知部は、温度センサー46の検知結果に基づき、加熱対象物が加熱された時における載置部の温度勾配を熱容量情報として検知する。
【0077】
この態様によれば、熱容量検知部は、温度センサー46を利用して、熱容量情報を検知する。
【0078】
第4の様態の加熱調理器1は、第3の様態との組み合わせにより実現され得る。第4の態様において、制御部16は、熱容量検知部で熱容量情報を検知した後、温度センサー46により加熱対象物の温度Tを検知し、この温度センサー46の検知結果と、熱容量情報に応じて決定された変更条件とに基づいて、上バーナー用火力変更部31を制御する。
【0079】
この態様によれば、温度センサー46で検知した加熱対象物の温度Tと、加熱対象物の熱容量に応じて決定された変更条件とに基づいて、加熱対象物が適切に加熱される。また、この場合、温度センサー46を、熱容量情報の検知と、加熱対象物の温度に応じた上バーナー26の火力制御との両者に用いることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 加熱調理器
16 制御部
20 加熱室
26 上バーナー
27 下バーナー
31 上バーナー用火力変更部
41 下バーナー用火力変更部
46 温度センサー
50 底板部(載置部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7