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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】飲食品用容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/02 20060101AFI20220721BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A47J36/02 A
A47J27/00 101B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018049286
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019154980
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】元岡 新也
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-165297(JP,A)
【文献】特開平07-327833(JP,A)
【文献】実開昭62-067526(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 36/02
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部の底側に全周に亘って内側に湾曲する湾曲部が形成され、前記湾曲部の先端縁で囲まれるようにして開口が設けられ、前記開口を閉塞するようにして前記先端縁の近傍の外側にクラッド材の底板が容器内外で積層され、前記底板の容器内外の内側に配置される前記湾曲部の前記先端縁が前記底板の前記クラッド材の最内層の金属材に溶け込むようにして全周に亘って溶接されている飲食品用容器であって、
前記底板の前記クラッド材の最外層が電磁誘導で発熱する発熱材で形成され、
前記最外層の内側に前記発熱材よりも熱伝導率の高い高熱伝導材による伝熱層が設けられ、
前記湾曲部の前記先端縁と溶接される前記クラッド材の最内層の前記金属材が前記湾曲部の先端縁と同種の金属材で形成されており、
電磁調理器用容器を構成していることを特徴とする飲食品用容器。
【請求項2】
前記周壁部が内周壁部と前記内周壁部と離間して外側に設けられる外周壁部とから構成され、
前記内周壁部の上端部と前記外周壁部の上端部が接合され且つ前記内周壁部の下端部と前記外周壁部の下端部が接合されて前記内周壁部と前記外周壁部との間に閉鎖空間が設けられていることを特徴とする請求項1記載の飲食品用容器。
【請求項3】
前記内周壁部と前記外周壁部が積層されて前記湾曲部の先端縁が形成され、
積層状態の前記湾曲部の先端縁が前記底板の前記クラッド材の内側に配置されて前記底板に溶接されていることを特徴とする請求項記載の飲食品用容器。
【請求項4】
前記内周壁部の内方に延びる下端縁が前記外周壁部の内方に延びる下端縁よりも内方に延在されて突出部が設けられ、
前記底板の上部に周状段差が前記底板の外周に倣うように形成され、
前記底板の上面と前記突出部の上面が略面一になるようにして前記突出部が前記周状段差の上面に載置されて前記突出部の先端縁が前記底板に溶接されることを特徴とする請求項記載の飲食品用容器。
【請求項5】
請求項1~の何れかに記載の飲食品用容器の製造方法であって、
前記周壁部の前記湾曲部の前記先端縁を前記底板に全周に亘ってレーザー溶接で溶接することを特徴とする飲食品用容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底側だけにクラッド材が設けられる電磁調理器用の鍋や炊飯器の内釜等の飲食品用容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底側だけにクラッド材が設けられる電磁調理器用の飲食品用容器として特許文献1の鍋がある。この鍋は、内側がステンレス、外側がアルミの二層素材で鍋本体を形成し、接合層となる最上層をアルミ、最下層を電磁誘導加熱される磁性材のフェライト系ステンレスとした二層のクラッド材を、鍋本体の底板の外側にブレージング(ロウ付け)によって止着した構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-291615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の鍋は、鍋本体の底板の外側にクラッド材を全面に亘ってブレージング(ロウ付け)し、接合強度を確保しているものである。しかしながら、このブレージング(ロウ付け)工程は、ロウ付け用の大がかりな設備が必要になる、鍋本体の底板外側の接合面とクラッド材の接合面を清浄にする管理が必要になる、接合される鍋本体の底板とクラッド材を均一に加熱する必要がある、接合される鍋本体とクラッド材の熱膨張差が大きい場合にはクラッド材が鍋本体から脱離してしまう可能性が高くなるため鍋本体とクラッド材の材料が限定される、というデメリットがある。そのため、ブレージング(ロウ付け)工程を経ずに製造可能な容器が求められている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、底側だけにクラッド材が設けられる飲食品用容器において、ブレージング(ロウ付け)工程を経ずに製造可能な飲食品用容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の飲食品用容器は、周壁部の底側に全周に亘って内側に湾曲する湾曲部が形成され、前記湾曲部の先端縁で囲まれるようにして開口が設けられ、前記開口を閉塞するようにして前記先端縁の近傍の外側にクラッド材の底板が積層され、前記先端縁が前記底板に全周に亘って溶接されていることを特徴とする。
これによれば、底側だけにクラッド材が設けられる飲食品用容器において、ブレージング(ロウ付け)工程を経ずに製造することができる。従って、容器底板の外側に全面に亘ってクラッド材をブレージングする際のデメリットを無くすことができる。即ち、ロウ付け用の大がかりな設備が不要になって製造コストを低減できる、容器の底板外側の接合面とクラッド材の接合面を清浄にする管理が不要になる、接合される容器の底板とクラッド材を均一に加熱することが不要になる、接合される容器底板とクラッド材の熱膨張差が大きい場合にクラッド材が容器底板から脱離することを無くすことができ、容器の周壁部に使用する材料と底板のクラッド材に使用する材料の自由度を高めることができるメリットを得ることができる。また、湾曲部の先端縁が容器内部で底板に溶接され、容器の外側から視認できない箇所に溶接部が形成されることから、容器の美観を高めることができる。
【0007】
本発明の飲食品用容器は、前記底板の前記クラッド材の最外層が電磁誘導で発熱する発熱材で形成され、前記最外層の内側に前記発熱材よりも熱伝導率の高い高熱伝導材による伝熱層が設けられ、電磁調理器用容器を構成していることを特徴とする。
これによれば、底側だけにクラッド材が設けられる電磁調理器用容器をブレージング(ロウ付け)工程を経ずに低コストで製造することができる。また、所要強度を得るために比較的板厚が厚い周壁部を介さずに容器底側にクラッド材が設けられ、底側の開口を閉塞するクラッド材から容器内部に直接伝熱する構造になることから、容器内部の加熱効率を向上することができる。
【0008】
本発明の飲食品用容器は、前記クラッド材の最内層が前記湾曲部の先端縁と同種の金属材で形成されていることを特徴とする。更に、本発明の飲食品用容器は、周壁部の底側に全周に亘って内側に湾曲する湾曲部が形成され、前記湾曲部の先端縁で囲まれるようにして開口が設けられ、前記開口を閉塞するようにして前記先端縁の近傍の外側にクラッド材の底板が容器内外で積層され、前記底板の容器内外の内側に配置される前記湾曲部の前記先端縁が前記底板の前記クラッド材の最内層の金属材に溶け込むようにして全周に亘って溶接されている飲食品用容器であって、前記底板の前記クラッド材の最外層が電磁誘導で発熱する発熱材で形成され、前記最外層の内側に前記発熱材よりも熱伝導率の高い高熱伝導材による伝熱層が設けられ、前記湾曲部の前記先端縁と溶接される前記クラッド材の最内層の前記金属材が前記湾曲部の先端縁と同種の金属材で形成されており、電磁調理器用容器を構成していることを特徴とする。
これによれば、クラッド材の最内層を周壁部の湾曲部の先端縁に容易且つ強固に溶接することができる。
【0009】
本発明の飲食品用容器は、前記周壁部が内周壁部と前記内周壁部と離間して外側に設けられる外周壁部とから構成され、前記内周壁部の上端部と前記外周壁部の上端部が接合され且つ前記内周壁部の下端部と前記外周壁部の下端部が接合されて前記内周壁部と前記外周壁部との間に閉鎖空間が設けられていることを特徴とする。
これによれば、底側だけにクラッド材が設けられ、内周壁部と外周壁部との間の閉鎖空間で周壁部の略全体に亘って断熱効果を有する飲食品用容器を低コストで製造することができる。
【0010】
本発明の飲食品用容器は、前記内周壁部と前記外周壁部が積層されて前記湾曲部の先端縁が形成され、積層状態の前記湾曲部の先端縁が前記底板の前記クラッド材の内側に配置されて前記底板に溶接されていることを特徴とする。
これによれば、二重構造容器における下側で積層状態の内周壁部と外周壁部の先端縁を相互に接合する工程と、周壁部の湾曲部の先端縁を底板のクラッド材に接合する工程を、同時に1つの溶接工程で行うことが可能となり、製造工程を効率化することができる。
【0011】
本発明の飲食品用容器は、前記内周壁部の内方に延びる下端縁が前記外周壁部の内方に延びる下端縁よりも内方に延在されて突出部が設けられ、前記底板の上部に周状段差が前記底板の外周に倣うように形成され、前記底板の上面と前記突出部の上面が略面一になるようにして前記突出部が前記周状段差の上面に載置されて前記突出部の先端縁が前記底板に溶接されることを特徴とする。
これによれば、底板と突出部の上面が略面一になるようにして突出部を周状段差に載置して溶接することにより、容器内面の底部に段差が生ずることを無くし、仕上面を綺麗にすることができる。
【0012】
本発明の飲食品用容器は、本発明の飲食品用容器を製造する方法であって、前記周壁部の前記湾曲部の前記先端縁を前記底板に全周に亘ってレーザー溶接で溶接することを特徴とする。
これによれば、周壁部の湾曲部の先端縁と底板のクラッド材を短時間で綺麗な仕上がりで溶接することができる。また、異種材の接合が比較的容易であることから、周壁部の材料と底板の材料の自由度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の飲食品用容器によれば、底側だけにクラッド材が設けられる飲食品用容器において、ブレージング(ロウ付け)工程を経ずに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本発明による第1実施形態の飲食品用容器を示す正面図、(b)は同図(a)のA-A断面図。
図2図1(b)のB部拡大図。
図3図1(b)のC部拡大図。
図4】本発明による第2実施形態の飲食品用容器の図3に相当する要部拡大図。
図5】本発明による第3実施形態の飲食品用容器の図3に相当する要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態の飲食品用容器〕
本発明による第1実施形態の飲食品用容器1は、電磁調理器用の鍋等の電磁調理器用容器として用いられるものであり、図1図3に示すように、上方と下方が開放している略筒状の周壁部2と、周壁部2の下方の底側に設けられる底板5とから構成される。図示例の飲食品用容器1は略有底円筒状の容器であり、略円筒状の周壁部2の底側に底板5が固着されて形成されている。
【0016】
周壁部2の上端部には外方に若干延びるフランジ21が全周に亘って形成されており、周壁部2の底側の下端部には内側に湾曲する湾曲部22が全周に亘って形成されている。そして、第1実施形態における周壁部2は、内周壁部3と、内周壁部3と離間して外側に設けられる外周壁部4とから構成され、内周壁部3の上端部と外周壁部4の上端部のそれぞれに、外方に若干延びるフランジ31、41が全周に亘って形成され、内周壁部3の底側の下端部と外周壁部4の底側の下端部のそれぞれに、内側に湾曲する湾曲部32、42が全周に亘って形成されている。
【0017】
内周壁部3の上端部と外周壁部4の上端部は、フランジ31、41を一部積層して、積層した箇所を溶接部6によって接合されている。また、外周壁部4の下端部に設けられている湾曲部42には、その先端近傍に上方に曲がって形成された段差部421が設けられ、段差部421の上端から内方に屈曲して延びる延在片422が設けられている。この延在片422が内周壁部3の湾曲部32の先端近傍の領域に積層され、後述する溶接部7で接合されることにより、内周壁部3の下端部と外周壁部4の下端部が接合されている。
【0018】
即ち、第1実施形態における周壁部2は、内周壁部3と外周壁部4による二重構造になっており、内周壁部3の上端部と外周壁部4の上端部、内周壁部3の下端部と外周壁部4の下端部のそれぞれの接合により、内周壁部3と外周壁部4との間に閉鎖空間Sが設けられている。周壁部2の閉鎖空間Sには大気を閉じ込めて空気による断熱層を設ける構成とするが、より断熱効果、保温効果を高めるために、閉鎖空間Sの大気を真空引きして減圧状態の空気により断熱層を設ける構成、或いは閉鎖空間Sに断熱マット等の断熱材を内装して断熱層を設ける構成としてもよい。
【0019】
周壁部2の底側には、湾曲部22の先端縁で囲まれるようにして開口23が設けられている。第1実施形態では、内周壁部3と外周壁部4が底側の先端近傍で積層されて湾曲部22の先端縁、換言すれば湾曲部32、42の先端縁が形成され、湾曲部22の先端縁或いは湾曲部32、42の先端縁で囲まれているようにして開口23が設けられている。尚、周壁部2を構成する材料、第1実施形態では内周壁部3、外周壁部4を構成する材料には、例えばSUS304等の耐熱性に優れ、耐食性、溶接性の良好な金属材を用いることが好ましい。
【0020】
そして、開口23を閉塞するようにして湾曲部22の先端縁或いは湾曲部32、42の先端縁の近傍の外側にクラッド材の底板5が積層されている。底板5のクラッド材の最外層は電磁誘導で発熱する発熱材51で形成されている。発熱材51としては、例えばSUS430等のフェライト系ステンレスなど電磁誘導で高効率に誘導加熱を生ずる磁性材とすると好適であるが、SUS304等のオーステナイト系ステンレスなど抵抗発熱の大きい材料を使用することも可能であり、電磁誘導で発熱する適宜の発熱材とすることが可能である。
【0021】
底板5のクラッド材の最外層の内側には、発熱材よりも熱伝導率の高い高熱伝導材52による伝熱層が設けられ、第1実施形態では、発熱材51による最外層の内側に隣接して高熱伝導材52による伝熱層が積層して固着されている。高熱伝導材52としては、例えばアルミニウム、或いは銅など熱伝導率の高い適宜の材料を用いることが可能である。
【0022】
更に、第1実施形態におけるクラッド材の底板3は、三層構造になっており、クラッド材の最内層には湾曲部22の先端縁或いは湾曲部32、42の先端縁と同種の金属材53が設けられ、高熱伝導材52による伝熱層に隣接して積層固着されている。即ち、例えば内周壁部3、外周壁部4を構成する材料がSUS304の場合には、クラッド材の最内層の金属材53もSUS304で形成される。
【0023】
周壁部2の湾曲部22の先端縁は、図3に示すように、底板5に容器周方向に全周に亘って溶接されており、溶接部7で接合されている。第1実施形態では、積層状態の湾曲部32、42の先端縁が、底板5のクラッド材の内側に配置されて、溶接部7で底板5にされ、図示例では底板5の最内層の金属材53に溶け込むようにして溶接されている。この溶接部7は、レーザー溶接による溶接で形成すると好適であり、又、上端部の溶接部6もレーザー溶接による溶接で形成すると好適である(図2参照)。
【0024】
溶接部7をレーザー溶接による工程で形成する場合、内周壁部3の湾曲部32の先端縁と外周壁部4の湾曲部42の先端縁を積層して配置すると共に、積層状態の湾曲部32、42の先端縁の外側に底板5となるクラッド材を配置し、積層状態の湾曲部32、42の先端縁と底板5となるクラッド材を同時に一度のレーザー溶接工程で接合して溶接部7を形成すると好適である。
【0025】
第1実施形態によれば、底側だけにクラッド材が設けられる電磁調理器用容器の飲食品用容器1において、ブレージング(ロウ付け)工程を経ずに製造することができる。従って、容器底板の外側に全面に亘ってクラッド材をブレージングする際のデメリットを無くすことができる。即ち、ロウ付け用の大がかりな設備が不要になって製造コストを低減できる、容器の底板外側の接合面とクラッド材の接合面を清浄にする管理が不要になる、接合される容器の底板とクラッド材を均一に加熱することが不要になる、接合される容器底板とクラッド材の熱膨張差が大きい場合にクラッド材が容器底板から脱離することを無くすことができ、容器の周壁部2に使用する材料と底板5のクラッド材に使用する材料の自由度を高めることができるメリットを得ることができる。
【0026】
また、湾曲部22の先端縁が容器内部で底板5に溶接され、容器の外側から視認できない箇所に溶接部7が形成されることから、容器の美観を高めることができる。また、所要強度を得るために比較的板厚が厚い周壁部2を介さずに容器底側にクラッド材が設けられ、底側の開口23を閉塞するクラッド材から容器内部に直接伝熱する構造になることから、容器内部の加熱効率を向上することができる。
【0027】
また、底板5のクラッド材の最内層を湾曲部22の先端縁と同種の金属材で形成することにより、クラッド材の最内層を周壁部2の湾曲部22の先端縁或いは湾曲部32、42の先端縁に容易且つ強固に溶接することができる。また、内周壁部3と外周壁部4との間に閉鎖空間Sを設ける構造により、底側だけにクラッド材が設けられ、内周壁部3と外周壁部4との間の閉鎖空間Sで周壁部2の略全体に亘って断熱効果を有する飲食品用容器1を低コストで製造することができる。
【0028】
また、積層状態の湾曲部32、42の先端縁と底板5となるクラッド材を同時に一度のレーザー溶接工程で接合して溶接部7を形成する場合には、二重構造容器における下側で積層状態の内周壁部3と外周壁部4の先端縁を相互に接合する工程と、周壁部2の湾曲部22の先端縁或いは内周壁部3と外周壁部4の湾曲部32、42の先端縁を底板5のクラッド材に接合する工程を、同時に1つの溶接工程で行うことが可能となり、製造工程を効率化することができる。更に、レーザー溶接で溶接することにより、周壁部2の湾曲部22の先端縁と底板5のクラッド材を短時間で綺麗な仕上がりで溶接することができ、又、異種材の接合が比較的容易であることから、周壁部2の材料と底板5の材料の自由度をより高めることができる。
【0029】
〔第2実施形態の飲食品用容器〕
本発明による第2実施形態の飲食品用容器1aも、電磁調理器用の鍋等の電磁調理器用容器として用いられるものであり、上方と下方が開放している略筒状の周壁部2aと、周壁部2aの下方の底側に設けられ、周壁部2aの底側に固着されている底板5aとから構成される(図4参照)。尚、第2実施形態で特に言及しない構成は第1実施形態と同様である。
【0030】
周壁部2aは内周壁部3aと外周壁部4aとから構成されている。周壁部2a、内周壁部3a、外周壁部4a、閉鎖空間Saの構成は、それぞれ第1実施形態の周壁部2、内周壁部3、外周壁部4、閉鎖空間Sの構成と基本的に同様であるが、内周壁部3aの湾曲部32aの先端近傍の領域に積層される外周壁部4aの段差部421aから延在する延在片422aが短く形成されて、内周壁部3aの湾曲部32aの先端縁、換言すれば内周壁部3aの内方に延びる下端縁が、外周壁部4aの湾曲部42aの先端縁、換言すれば外周壁部4aの内方に延びる下端縁よりも、よりも内方に延在されて突出部33aが設けられ、突出部33aが全周に亘って形成されている点で相違する。
【0031】
周壁部2aの底側には、湾曲部22a或いは湾曲部42aの突出部33aの先端縁で囲まれるようにして開口23aが設けられている。尚、内周壁部3aと外周壁部4aの上端部をレーザー溶接等で接合する構成は第1実施形態と同様である。また、周壁部2a、或いは内周壁部3a、外周壁部4aを構成する材料には第1実施形態と同様のものを用いることができる。また、閉鎖空間Saには第1実施形態と同様に空気層、減圧層或いは断熱マットを設けることができる。
【0032】
そして、開口23aを閉塞するようにして湾曲部22aの先端縁或いは湾曲部42aの先端縁の近傍の外側にクラッド材の底板5aが積層されている。底板5aの構成、材料は第1実施形態と同様であり、第1実施形態の発熱材51、高熱伝導材52、金属材53と同様の発熱材51a、高熱伝導材52a、金属材53aが積層されて固着されている。
【0033】
第2実施形態における底板5aには、その上部に第1周状段差54aが設けられ、第1周状段差54aは底板上部を切り欠くようにして底板5aの外周に倣うように形成されている。更に、底板5aには第1周状段差54aから一段下がるようにして第2周状段差55aが設けられ、第2周状段差55aも底板5aの外周に倣うように形成されている。図4の例の第1周状段差54aは、三層構造の底板5aの最内層の金属材53aの径或いは大きさを、発熱材51a及び高熱伝導材52aの径或いは大きさよりも小さくすることで形成され、図示例の第2周状段差55aは高熱伝導材52aの上部を一部切り欠くようにして形成されている。
【0034】
内周壁部3aの内方に延びる突出部33aは第1周状段差54aの上面に載置され、図示例では突出部33aの厚さと金属材53aの厚さが略面一になっていることから、突出部33aの上面と底板5aの最内層の金属材53aの上面が略面一になっている。また、外周壁部4aの延在片422aの大部分は第2周状段差55aの上面に載置され、第2周状段差55aに収容されるようにして配置される。
【0035】
湾曲部22aの先端縁或いは湾曲部42aの先端縁に対応する突出部33aの先端縁は、底板5aに容器周方向に全周に亘って溶接されており、溶接部7aで接合されている。図示例では突出部33aの先端縁が底板5aの最内層の金属材53aと中間層の高熱伝導材52aに溶け込むようにして溶接されているが、突出部33aの先端縁が底板5aの最内層の金属材53aだけに溶け込むようにして溶接することも可能である。尚、第1周状段差54aと第2周状段差55aの間に段差のない周状段差を設け、この周状段差に先端縁の位置が同じ突出部33aの先端縁と延在片422aの先端縁を収容するように載置し、突出部33aの先端縁及び延在片422aの先端縁を金属材53a及び高熱伝導材52aに一括して溶接部で接合する構成とすることも可能である。溶接部7aも、レーザー溶接による溶接で形成すると好適である。
【0036】
第2実施形態によれば、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができると共に、底板5aと突出部33aの上面が略面一になるようにして突出部33aを第1周状段差54aに載置して溶接することにより、飲食品用容器1aの内面の底部に段差が生ずることを無くし、仕上面を綺麗にすることができる。
【0037】
〔第3実施形態の飲食品用容器〕
本発明による第3実施形態の飲食品用容器1bも、電磁調理器用の鍋等の電磁調理器用容器として用いられるものであり、上方と下方が開放している略筒状の周壁部2bと、周壁部2bの下方の底側に設けられ、周壁部2bの底側に固着されている底板5bとから構成される(図5参照)。図示例の飲食品用容器1bは略有底円筒状の容器であり、略円筒状の周壁部2bの底側に底板5bが固着されて形成されている。
【0038】
周壁部2bの底側の下端部には内側に湾曲する湾曲部22bが全周に亘って形成されている。第3実施形態における周壁部2bは、二重構造ではなく単層構造であり、好適には例えばSUS304等の耐熱性に優れ、耐食性、溶接性の良好な金属材で形成される。周壁部2bの底側には、湾曲部22bの先端縁で囲まれるようにして開口23bが設けられている。
【0039】
そして、開口23bを閉塞するようにして湾曲部22bの先端縁の近傍の外側にクラッド材の底板5bが積層されている。底板5bの構成、材料は第1実施形態の底板5と同一であり、電磁誘導で発熱する最外層の発熱材51b、中間層の高熱伝導材52b、湾曲部22bの先端縁と同種のSUS304等の金属材である最内層の金属材53bの三層構造になっている。
【0040】
周壁部2bの湾曲部22bの先端縁は、底板5bに容器周方向に全周に亘って溶接されており、溶接部7bで接合されている。図示例では湾曲部22bの先端縁が底板5bの最内層の金属材53bに溶け込むようにして溶接されているが、最内層の金属材53bと中間層の高熱伝導材52bに溶け込むようにして溶接することも可能である。この溶接部7bも、レーザー溶接による溶接で形成すると好適である。
【0041】
第3実施形態によれば、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0042】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態及びその変形例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0043】
例えば上記実施形態における底板5、5a、5bのクラッド材は最外層の発熱材51、51a、51b、中間層の高熱伝導材52、52a、52b、最内層の金属材53、53a、53bの三層構造としたが、本発明の底板のクラッド材には複数層の適宜のクラッド材が含まれ、例えば本発明の飲食品用容器を電磁調理器用の飲食品用容器とする場合には、層状に発熱材が積層されている適宜のクラッド材を用いることが可能である。尚、電磁調理器用の飲食品用容器とする場合には、最外層を発熱材で形成し、その内側に高熱伝導材の層を形成する少なくとも二層構造の構成とすると好適であり、更に高熱伝導材の内層に別の金属材等の別層を設ける場合にはSUS304等の熱伝導率の高い材料で別層を形成すると良好である。
【0044】
また、本発明の飲食品用容器は、例えば電磁調理器用の鍋や炊飯器の内釜等の電磁調理器用の飲食品用容器以外にも用いることが可能であり、底側だけにクラッド材が設けられる適宜の容器に適用することが可能である。また、本発明における溶接、溶接部はレーザー溶接による溶接、溶接部とすることが好ましいが、適用可能な範囲でレーザー溶接以外の溶接、溶接部とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば電磁調理器用の鍋や炊飯器の内釜等として利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1、1a、1b…飲食品用容器 2、2a、2b…周壁部 21…フランジ 22、22a、22b…湾曲部 23、23a、23b…開口 3、3a…内周壁部 31…フランジ 32、32a…湾曲部 33a…突出部 4、4a…外周壁部 41…フランジ 42、42a…湾曲部 421、421a…段差部 422、422a…延在片 5、5a、5b…底板 51、51a、51b…発熱材 52、52a、52b…高熱伝導材 53、53a、53b…金属材 54a…第1周状段差 55a…第2周状段差 6…溶接部 7、7a、7b…溶接部 S、Sa…閉鎖空間
図1
図2
図3
図4
図5