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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】吊架線保護カバー
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/22 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
B60M1/22 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018061305
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019043537
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2017169642
(32)【優先日】2017-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 武弘
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-189163(JP,A)
【文献】特開2013-084460(JP,A)
【文献】特開2013-201319(JP,A)
【文献】特開2015-200100(JP,A)
【文献】特開平06-099766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って二分割された半円筒部と、半円筒部の一端に鍔部と、他端に半径方向に突出し、前記鍔部に有する嵌合凹部にはめ込み可能な嵌合凸部とをそれぞれ備えた一対の分割体からなり、両分割体を半円筒部の軸線方向に互い違いに係合させることにより吊架線周りに糸巻状に組まれ、前記鍔部及び嵌合凸部の外側面から突出する第1固定部及び第2固定部にストッパが係合して両分割体が固定される吊架線保護カバーであって、
前記第1固定部は、前記第2固定部との並び方向に開口して前記ストッパを挿通させるガイド孔を備え、
前記第2固定部は、前記ガイド孔を通した前記ストッパの進入により前記鍔部と前記嵌合凸部の軸線方向の相対移動を阻止する係合凹部を備え、
前記ストッパは、前記第2固定部の前記係合凹部に進入する基部と、
この基部の挿入方向先端部の両側部から前方に延出して側方へ折り返され、基部を挟んで後方まで延びる対向一対の脚部と、
これらの脚部を弾性的に縮小変形させて原形より狭小幅の前記ガイド孔に基部と共に貫通させ、先端部が抜け出たら原形に復帰してガイド孔の出口側の開口縁に係合し抜け止めするように前記脚部の途上から側方へ突出するロック用突起
前記ガイド孔を貫通した状態で前記第2固定部から離れた位置においてガイド孔の出口側の開口縁に係合し抜け止めするように、前記脚部の途上から側方へ突出する保持用突起とを具備することを特徴とする吊架線保護カバー。
【請求項2】
前記ストッパには、前記第2固定部の係合凹部に進入したロック位置で前記第1固定部のガイド孔の内部に位置して目視不能となる状態表示部を具備することを特徴とする請求項1に記載の吊架線保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車線路において吊架線に装着するために半割の一対の分割体で構成され、吊架線を両側から挟むように対向させて分割体同士を係合させ吊架線周りに固定する吊架線保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒部の一端に鍔部を、他端に半径方向に突出する嵌合凸部をそれぞれ備えた一対の分割体から成り、鍔部に嵌合凸部をはめ込み可能な嵌合凹部を備え、両分割体を互い違いに係合させることにより糸巻状に構成され、吊架線周りに装着されて円筒部にハンガーイヤなどを掛け止める吊架線保護カバーがある。分割体は、鍔部及び嵌合凸部から軸線方向に突出した軸線直交方向に隣接する凸状固定部を備え、これらの凸状固定部のピン孔に二股の割りピンや、特許文献1に記載の止めピンを貫通させることにより、相互間が固定される。割りピンは、ピン孔を貫通させて露出した先端部を凸状固定部の側面に沿って折り曲げて抜け止めする。
特許文献1の止めピンは、弾性変形可能な金属線で構成され、中間部に分割体のピン孔の内周面を押圧するように撓ませつつ挿入させるための曲げ部と、一端部に曲がりの内側に折り返した先端が出口側のピン孔から露出すると、曲げ部の戻り変形により、ピン孔の出口側縁部に係合する抜け係合凹部と、他端部に、曲がりの内側に折り返し、ピン孔の内周面から固定部の側面までを受け入れるクリップ部とを具備する。この止めピンは、ピン孔に差し込んでピン孔の出口側の縁部に係合すれば抜け止めされ、また抜け係合凹部の先端を固定部のピン孔の開口に向けて縁部に沿って軸線直交方向に押し込めば、曲げ部が弾性変形して先端が開口に落ち込んで係合を解き、止めピンを引き抜ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-189163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の吊架線保護カバーのうち前者においては、割りピンを挿入後、割りピンを二股に開いて曲げることにより抜け止めするが、ピン孔からの脱落を防ぎながらの操作が煩わしく、作業手袋を装着したままでの指先での細かな操作が一層困難になる。また、取り外し作業の際に、曲げた割りピンを真っ直ぐに戻してからペンチ等の工具で引き抜く必要がある。
後者においては、止めピンの形状が長手方向に対して曲げ部による曲りの幅が小さく、小さなピン孔に止めピンを差し込むため、作業手袋を装着したままの指先での細かな操作に難点がある。特に、吊架線保護カバーの着脱作業がトロリ線の高さ位置での高所作業となる上に、夜間に行うことが多く、より簡単に着脱操作できるものが望まれる。また、吊架線保護カバーの分割体が互いに分離する上、分割体と比較して小サイズの止めピンが紛失し易いので、保管、持ち運びなどの管理上、操作、状態確認の取扱い上の煩わしさに難点がある。
そこで、本発明は、組み付けた一対の分割体に対して簡単にロック及び解除操作できる操作性の良好で、取扱いに好都合な吊架線保護カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、軸線方向に沿って二分割された半円筒部3と、半円筒部3の一端に鍔部4と、他端に半径方向に突出し、鍔部4の嵌合凹部8にはめ込み可能な嵌合凸部5とをそれぞれ備えた一対の分割体2,2を半円筒部3の軸線方向に互い違いに係合させることにより吊架線周りに糸巻状に組み付ける吊架線保護カバーを構成する。鍔部4及び嵌合凸部5の外側面に、第1固定部9及び第2固定部10を突設し、これら固定部9,10間をストッパ11で係合させて両分割体の分離を阻止する。第1固定部9は、第2固定部10との並び方向に開口してストッパ11を挿通させるガイド孔9aを備える。第2固定部10は、ストッパ11が進入して鍔部4と嵌合凸部5の軸線方向の相対移動を阻止する係合凹部10aを備える。ストッパ11は、弾性的に縮小変形させて原形より狭小幅のガイド孔9aに貫通させ、先端部が抜け出たら原形に復帰してガイド孔9aの出口側の開口縁に係合し抜け止めすると共に、第2固定部10の係合凹部10aに進入して鍔部4と嵌合凸部5を固定する側方へ突出するロック用突起11dを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、一対の分割体を組んだ状態で第1固定部のガイド孔に差し込めば、第2固定部の係合凹部にストッパが入り込んで、第1固定部と第2固定部とがストッパを介して結合すると共に、ストッパが抜け止めされるので、分割体が互いに固定され、吊架線に簡単に装着でき、またストッパを幅方向につまんで弾性変形させさて引き戻せば、第2固定部の係合凹部から離脱して第1固定部と第2固定部との結合が解除され、分割体を簡単に取り外すことができ、この結果、吊架線保護カバーの着脱作業を手元の暗い高所で作業手袋を装着したままでも簡単に着脱操作できできる。
保持用突起によりストッパを第1固定部に保持すれば、分割体から分離することなく一体になって持ち運びや保管等の管理上好都合となる。
状態表示部がストッパのロック位置でガイド孔の内部に位置して目視不能となるので、ロック状態,非ロック状態を容易に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る吊架線保護カバーの斜視図である。
図2図1の吊架線保護カバーの正面図である。
図3図1の吊架線保護カバーの背面図である。
図4図1の吊架線保護カバーの平面図である。
図5図1の吊架線保護カバーの底面図である。
図6図1の吊架線保護カバーの右側面図である。
図7図1の吊架線保護カバーの左側面図である。
図8図1の吊架線保護カバーの分解斜視図である。
図9図1の吊架線保護カバーの一部拡大斜視図である。
図10図1の吊架線保護カバーの正面図であり、(A)はストッパを抜いた状態、(B)はストッパが保持位置にある状態、(C)はストッパがロック位置にある状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1実施例を図面を参照して説明する。
図1ないし図7において、吊架線保護カバー1は、円筒部の両端に鍔部を備えた糸巻き状をなす。図8に示すように、吊架線保護カバー1は、円筒部が軸線方向に沿って二分割され、一端に鍔部4をそれぞれ備えた合成樹脂製の一対の分割体2,2を鍔部4が両端に配置されるように互い違いに組み付けて構成される。
【0009】
分割体2は、吊架線保護カバー1の円筒部を軸線方向に二分した半円筒部3と、これら半円筒部3の一端に半径方向に拡がる鍔部4と、半円筒部3の他端に軸線直交方向に延出する嵌合凸部5とを具備する。半円筒部3の側縁部には、互いを組み付ける際にスライド係合可能な軸線方向の溝6と突条7とを備えている。鍔部4には、半円筒部3が連続する部位の反対側の中央部に嵌合凸部5がはまる嵌合凹部8を備える。半円筒部3には他方の鍔部4が突き当たり位置決めする円弧状突起3aを有する。
【0010】
図9に示すように、鍔部4及び嵌合凸部5の外側面には、外側に向かって張り出した第1固定部9,第2固定部10を備え、これらがストッパ11を介して結合される。第1固定部9には、第2固定部10を臨むように開口する軸線直交方向の矩形の通し孔9aを備える。第2固定部10は、軸線方向に延びる直交方向に並んだ平行一対の矩形棒状体で構成される。第2固定部10の第1固定部9に近い側面には、上部を張り出させる係合凹部10aを備える。
【0011】
図10に示すように、ストッパ11は、平面視略M字状の弾性合成樹脂材で構成される。ストッパ11は、中央部の直方形状の基部11aと、この基部11aの先端面の上下両側部から前方に延出して折り返され基部11aの上下の側面に沿って後方まで延び基部11aを挟んで対向する一対の脚部11bとを具備する。板状の脚部11bは、前端同士及び後端同士を接近させるように幅方向に弾性的に縮小変形可能で、これにより脚部11bの相互間隔より狭小幅の通し孔9aに挿入可能である。脚部11bの前端部及び中間部の上下外側面には、第1固定部9の通し孔9aを通過したら原形への戻りにより拡大して通し孔9aの出口側の開口縁部に抜け止めする保持用突起11c及びロック用突起11dを有する。両突起11c,11dは、挿入方向前側面が通し孔9aへの挿入を円滑に行うために傾斜しており、後側面が通し孔9aの開口縁部に引っかかるようにほぼ直角をなす。保持用突起11cは、第1固定部9にストッパ11を保持して分割体2に一体に組み付けておき紛失を防止できる。ロック用突起11dは、ストッパ11を通し孔9aに押し込んで基部11aが第2固定部10の係合凹部10b内に進入した状態でストッパ11を抜け止めする。ストッパ11の基部11aの表裏両側面及び脚部11bの上下外側面には、ロック用突起11dの後部に対応する位置に他の部位から色分けされた状態表示部11eを備える。この状態表示部11eは、基部11aが第2固定部10の係合凹部10b内に進入してストッパ11が抜け止めされるロック状態で通し孔9a内に位置し第1固定部9と重なることにより目視不能となる。従って、状態表示部11eは第1固定部9から露出した非ロック状態と第1固定部9に重なったロック状態とを識別させる。
【0012】
この吊架線保護カバー1を吊架線に装着するには、吊架線を挟んで一対の分割体2,2の半円筒部3を軸線方向に互い違いに配置し、溝6と突条7をスライド係合させて、鍔部4の嵌合凹部8に嵌合凸部5を嵌めれば吊架線周りに組み付ける。分割体2,2の組み付け状態で固定部9の通し孔9aにストッパ11を差し込む。ストッパ11の両脚部11bの後端部を横につまんで先端部を通し孔9aに押し込めば、先端部が幅方向に縮小変形して、通し孔9aに挿入することができる。ストッパ11は、保持用突起11cが通し孔9aから出ると、原形に復帰して通し孔9aの出口側の開口より拡がるので縁部に引っかかり抜け止めされ、固定部9に保持される。さらにストッパ11を通し孔9aに押し込むと、脚部11b,11b間が狭まるように幅方向に縮小変形して、通し孔9aをロック用突起11dが通過でき、通し孔9aから出ると、原形に復帰して通し孔9aの開口より拡がるので縁部に引っかかり抜け止めされる。この状態で、ストッパ11の基部11aが第2固定部10の係合凹部10aに進入して第2固定部10に突き当たり、分割体2,2の組み付け状態をロックする。このとき、状態表示部11eが通し孔9aの内部に位置し第1固定部9に隠れて目視不能となりロック状態を確認できる。
一方、吊架線保護カバー1を吊架線から取り外すには、ストッパ11の両脚部11bの後端部を横につまんで幅方向に縮小変形させながら通し孔9aから引き出し、ロック用突起11dが入口側開口を抜け出れば、ストッパ11が第2固定部10の係合凹部10aから離脱するので、分割体2,2を軸線方向にスライドさせて分離することができる。ストッパ11は、一方の分割体2の固定部9に組み付けておけば、紛失が防止される。
【符号の説明】
【0013】
1 吊架線保護カバー
2 分割体
3 半円筒部
3a 円弧状突起
4 鍔部
5 嵌合凸部
6 溝
7 突条
8 嵌合凹部
9 第1固定部
9a 通し孔
10 第2固定部
10a 係合凹部
11 ストッパ
11a 基部
11b 脚部
11c 保持用突起
11d ロック用突起
11e 状態表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10