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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】介助装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/053 20060101AFI20220721BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A61G7/053
A61G5/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018073825
(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2019180677
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】平岡 丈弘
(72)【発明者】
【氏名】野口 剛裕
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡志
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094128(WO,A1)
【文献】特開2005-103033(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145758(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00 - A61G 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介助者の移乗動作を介助する介助装置であって、
基台と、
前記被介助者の身体の一部を支持しつつ、前記基台に対して昇降する支持部と、
前記支持部を駆動する駆動部と、
前記支持部が前記被介助者から受ける荷重を検出する荷重検出部と、
前記支持部の高さを検出する高さ検出部と、
検出された前記荷重および検出された前記高さに基づき、前記被介助者の体格に対応する適正高さを超えて前記支持部が上昇した上げ過ぎ状態を判定する判定部と、を備え
前記判定部は、前記支持部の前記高さに対応して予め定められた荷重閾値に基づいて、前記上げ過ぎ状態を判定する、
介助装置。
【請求項2】
前記荷重閾値は前記支持部の前記高さに応じて変動する、請求項1に記載の介助装置。
【請求項3】
前記荷重検出部は、前記支持部が前記被介助者の胴体の上部寄りの部位から受ける上側荷重を検出する上側荷重検出部、および、前記支持部が前記被介助者の前記胴体の下部寄りの部位から受ける下側荷重を検出する下側荷重検出部を含み、
前記判定部は、前記上側荷重と前記下側荷重の差分に相当するバランス荷重および前記高さに基づいて、前記上げ過ぎ状態を判定する、
請求項1または2に記載の介助装置。
【請求項4】
前記荷重検出部は、前記支持部が前記被介助者の胴体の上部寄りの部位から受ける上側荷重を検出する上側荷重検出部、および、前記支持部が前記被介助者の前記胴体の下部寄りの部位から受ける下側荷重を検出する下側荷重検出部を含み、
前記上側荷重検出部および前記下側荷重検出部の少なくとも一方は、左右に離隔して配置された複数の部分荷重検出部からなる、請求項1-3のいずれか一項に記載の介助装置。
【請求項5】
前記上げ過ぎ状態であるか否かを表示する表示部をさらに備える、請求項1-4のいずれか一項に記載の介助装置。
【請求項6】
前記支持部は、前記基台に対して前後方向に揺動しながら昇降し、または、前記基台に対して直接的に昇降し、または、前記基台に対する前後方向の揺動および直接的な昇降を併用する、請求項1-5のいずれか一項に記載の介助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、被介助者の移乗動作を介助する介助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の進展に伴い、介助装置のニーズが増大している。介助装置は、一般的に、アクチュエータからの駆動により、被介助者の身体の一部を支持した支持部を移動させる。介助装置の導入によって、介助者および被介助者の身体的な負担が軽減されるとともに、介助者の人手不足も緩和される。介助装置の一例として、被介助者の座位姿勢からの移乗動作を介助する装置がある。この種の介助装置に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の介助装置は、被介助者を支持しつつ基台に対して昇降動作する支持部と、支持部を駆動する駆動部と、支持部が被介助者から受ける荷重を検出する荷重検出部と、駆動部を制御する制御部と、を備える。制御部は、荷重検出部によって検出された荷重値に基づき、動作中の支持部の起立動作または着座動作を停止する。これによれば、検出された荷重値に基づいて支持部が停止するので、被介助者の姿勢が良好に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/094128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の介助装置では、被介助者の体格が考慮されていないため、支持部が上昇し過ぎてしまうこと(上げ過ぎ状態)が皆無でなかった。介助者の手動操作にしたがって支持部が次第に上昇するタイプの介助装置でも、常に支持部の適正高さを判断できるとは限らず、支持部の上げ過ぎ状態は発生し得る。支持部の上げ過ぎ状態において、被介助者は、不快感を持ったり、痛みを感じたりして、使用快適性が低下する。
【0006】
本明細書では、被介助者の体格に対応する適正高さを超えて支持部が上昇した上げ過ぎ状態を判定して、被介助者の使用快適性の向上に寄与する介助装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、被介助者の移乗動作を介助する介助装置であって、基台と、前記被介助者の身体の一部を支持しつつ、前記基台に対して昇降する支持部と、前記支持部を駆動する駆動部と、前記支持部が前記被介助者から受ける荷重を検出する荷重検出部と、前記支持部の高さを検出する高さ検出部と、検出された前記荷重および検出された前記高さに基づき、前記被介助者の体格に対応する適正高さを超えて前記支持部が上昇した上げ過ぎ状態を判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記支持部の前記高さに対応して予め定められた荷重閾値に基づいて、前記上げ過ぎ状態を判定する、介助装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示する介助装置によれば、支持部が被介助者から受ける荷重だけでなく、支持部の高さを考慮した判定を行うので、被介助者の体格に対応して変化する適正高さを超えて支持部が上昇した上げ過ぎ状態を判定できる。これにより、被介助者の使用快適性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の介助装置の構成を模式的に示す図である。
図2】荷重検出部に相当する三つの荷重センサの配設位置を示す胴体支持部の模式図である。
図3】支持部の上げ過ぎ状態の一例を示す介助装置の側面図である。
図4】支持部の上げ過ぎ状態の判定方法を図式的に示す図であって、バランス荷重と支持部の高さとの組み合わせをプロットした散布図である。
図5】介助装置が被介助者の起立動作を介助する場合の制御部の動作フローを示す図である。
図6】荷重検出部の配設位置の変形例を示す胴体支持部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態の介助装置1の構成
実施形態の介助装置1について、図1図5を参考にして説明する。図1は、実施形態の介助装置1の構成を模式的に示す図である。介助装置1は、例えば、被介助者のベッドと車椅子との間の移乗や、車椅子と便座との間の移乗など、異なる二箇所の間の移乗動作を介助する。詳細には、介助装置1は、被介助者の胴体を支持して、座位姿勢から移乗時姿勢への起立動作、および移乗時姿勢から座位姿勢への着座動作を介助する。ここで、移乗時姿勢は、臀部が座面から浮いた姿勢であり、立位姿勢および中腰姿勢を含む。つまり、移乗時姿勢は、上半身が起立した状態および前かがみの状態などを含む。また、介助装置1は、移乗する二箇所が離れている場合に、移乗時姿勢の被介助者を移送することができる。
【0011】
介助装置1は、基台2、アーム3、支持部4、駆動部5、操作器6、および判定部7などで構成されている。基台2は、足載置台21、左右一対の前輪22、および左右一対の後輪23などで形成される。足載置台21は、床面に近接して概ね水平に配置される。足載置台21は、被介助者が足を載置して乗る部位である。前輪22は、基台2の前寄りに配設され、後輪23は、基台2の後寄りに配設される。前輪22および後輪23の転舵機能により、介助装置1は、直進移動および旋回移動だけでなく、真横への移動および超信地旋回(その場での回転)が可能となっている。さらに、前輪22は、移動を規制するロック機能を備える。
【0012】
アーム3は、上下方向に長く形成されており、基台2の前寄りから上方に向かって立設される。支持部4は、アーム3の上部の後方に揺動可能に設けられる。支持部4は、胴体支持部41、左右一対の脇支持部42、およびハンドル43などで構成される。胴体支持部41は、剛性の高い略矩形のベースプレートを用いて形成される。ベースプレートの被介助者に対向する側の面に、柔軟な胴体接触部材が設けられる。胴体支持部41は、被介助者の胴体のうち胸の辺りを支持する。
【0013】
左右一対の脇支持部42は、胴体支持部41の左右両側の上部寄りに取り付けられ、後方に向かって延在する。脇支持部42は、鈍角に屈曲するJ字状に形成される。脇支持部42は、被介助者の脇や肩を支持する。ハンドル43は、胴体支持部41の被介助者から離れた側に設けられる。ハンドル43は、略四角形の枠形状に形成され、胴体支持部41から前方に張り出している。ハンドル43は、被介助者が把持する部位であるとともに、介助装置1を移動させるために介助者が把持する部位でもある。
【0014】
胴体支持部41のベースプレートと胴体接触部材の間には、荷重検出部に相当する三つの荷重センサが配設される。図2は、荷重検出部に相当する三つの荷重センサの配設位置を示す胴体支持部41の模式図である。図示されるように、胴体支持部41の上部寄りの左右に離隔して、左上部荷重センサ46および右上部荷重センサ47が配設される。また、胴体支持部41の下部寄りの左右方向の中央に、下部荷重センサ48が配設される。
【0015】
左上部荷重センサ46は、被介助者の胸の左上部から受ける左上側荷重W1を検出する。右上部荷重センサ47は、被介助者の胸の右上部から受ける右上側荷重W2を検出する。左上部荷重センサ46および右上部荷重センサ47は、部分荷重検出部に相当する。左上側荷重W1と右上側荷重W2との比較により、被介助者の姿勢の左右のアンバランスが判定される。なお、左上部荷重センサ46および右上部荷重センサ47に代えて、胴体支持部41の上部寄りの左右方向の中央に一つの上部荷重センサを設けてもよい。ただし、この態様では、左右のアンバランスの判定は行われない。
【0016】
下部荷重センサ48は、被介助者の胸の下部から受ける下側荷重W3を検出する。後で詳述するように、被介助者の体格に対応する適正高さを超えて支持部4が上昇した上げ過ぎ状態を判定するために、バランス荷重BWが用いられる。バランス荷重BWは、上側荷重から下側荷重を減算して求められ、下の式(1)で表される。
BW=W1+W2-W3 …………………(1)
バランス荷重BWは、支持部4に支持された被介助者の前傾姿勢の程度を表す指標となる。バランス荷重BWは、正値および負値のどちらにもなり得る。
【0017】
駆動部5は、アーム3の内部に配設されている。駆動部5は、モータ本体部51およびモータ制御部52などで構成される。モータ本体部51は、図略の機構部を介して支持部4の揺動を駆動する。モータ制御部52は、モータ本体部51の正転および反転の切り替え、および回転量の制御を行う。
【0018】
支持部4は、駆動部5からの制御により、基台2に対して前方に揺動しながら上昇する(矢印A参照)。これにより、支持部4は、被介助者の胴体を支持しつつ、座位姿勢から移乗時姿勢への起立動作を介助する。このとき、モータ制御部52は、モータ本体部51の回転量に基づいて、支持部4の高さHを算出する。つまり、モータ制御部52は、支持部4の高さHを検出する高さ検出部を兼ねる。
【0019】
なお、支持部4は、基台2に対して直接的に鉛直方向に昇降してもよい。また、支持部4は、基台2に対する前後方向の揺動および直接的な鉛直方向の昇降を併用してもよい。支持部4の昇降方式に合わせて、駆動部5および高さ検出部が適宜設けられる。
【0020】
操作器6は、伸縮可能な信号ケーブル69を用いてアーム3に接続されている。操作器6は、制御部61、操作部62、および表示部66を有する。制御部61は、操作部62、および表示部66に接続される。制御部61は、さらに、三つの荷重センサおよびモータ制御部52に接続される。操作部62には、介助者が操作する上昇ボタン63および下降ボタン64が設けられている。上昇ボタン63が押下されたとき、制御部61は、モータ制御部52を介してモータ本体部51を正転駆動し、支持部4を上昇させる。逆に、下降ボタン64が押下されたとき、制御部61は、モータ制御部52を介してモータ本体部51を反転駆動し、支持部4を下降させる。
【0021】
制御部61は、支持部4の上げ過ぎ状態を判定する判定部7を含む。判定部7は、判定結果を表示部66に表示する。表示部66は、判定結果だけでなく、通常時の動作状況等も表示する。判定部7の機能については、後の動作の説明の中で詳述する。操作器6および駆動部5は、アーム3内に搭載されたバッテリによって駆動される。なお、制御部61は、アーム3の側に配設されていてもよい。また、信号ケーブル69に代えて、無線通信部を用いることもできる。
【0022】
2.支持部4の上げ過ぎ状態の判定方法
次に、支持部4の上げ過ぎ状態の判定方法について説明する。図3は、支持部4の上げ過ぎ状態の一例を示す介助装置1の側面図である。図3において、支持部4は、適正高さを極端に超えて上昇し過ぎている。このため、被介助者Mは、足が基台2から離れ、全体重が支持部4によって支えられた浮上状態に陥っている。浮上状態の被介助者Mは、不快感を持ったり、痛みを感じたりして、使用快適性が低下する。支持部4の適正高さは、被介助者Mの体格に応じて異なる。図3の極端な例でなくとも、被介助者Mが基台2上に爪先立ちになった状態で、支持部4は既に上昇し過ぎている。
【0023】
判定部7は、図4に示される散布図を用いて、支持部4の上げ過ぎ状態を判定する。図4は、支持部4の上げ過ぎ状態の判定方法を図式的に示す図であって、バランス荷重BWと支持部4の高さHとの組み合わせをプロットした散布図である。図4の横軸は、支持部4の高さHを表し、縦軸は、バランス荷重BWを表す。図4の散布図は、様々な体格の複数の被験者を対象とし、介助装置1が各被験者の複数回の起立動作を介助する実験を行って得られた結果である。以降では、バランス荷重BWと高さHとの組み合わせをプロットした点を測定点と呼称する。
【0024】
図4において、高身長の被験者における測定点の推移の一例が曲線C1で示されている。すなわち、支持部4の上昇に伴い、測定点は、縦軸上の上部寄りの始点D1から右下方向へと推移する。そして、支持部4の上昇が終了した時点で、測定点は、黒塗りで示された適正領域R2内の終点E1に移動している。また、低身長の被験者における測定点の推移の一例が曲線C2で示されている。すなわち、支持部4の上昇に伴い、測定点は、縦軸上の始点D1よりも下側の始点D2から右下方向へと推移する。そして、支持部4の上昇が終了とされた時点で、測定点は、適正領域R2内でかつ終点E1よりも左下側の終点E2に移動している。
【0025】
曲線C1および曲線C2の両方の場合で、バランス荷重BWは正値から負値へと徐々に減少している。また、終点E1の高さH1は、高身長の被験者に対する適正高さを表し、終点E2の高さH2は、低身長の被験者に対する適正高さを表す。高さH1と高さH2は相違し、つまり、支持部4の適正高さは、被介助者Mの体格に応じて変化する。ただし、支持部4の適正高さは、被介助者Mの感覚に依存する面もあるため、個人差の影響などを受ける。
【0026】
図4において、大多数の測定点の終点は、ハッチングで示された適正領域R2に含まれ、プロットが省略されている。適正領域R2では、支持部4が適正高さで停止し、被験者は良好な使用快適性を感じる。適正領域R2は、左下から右上に延びる帯状の領域で示される。適正領域R2の左上側に、上げ不足領域R1が位置する。上げ不足領域R1において、支持部4は、上昇する途中にあり、被験者の膝は、大きく曲がった状態となっている。
【0027】
適正領域R2の右下側に要注意領域R3が位置する。さらに、要注意領域R3の右下側に上げ過ぎ領域R4が位置する。適正高さを超えて支持部4が上昇すると、測定点は、要注意領域R3に進入し、さらには、上げ過ぎ領域R4に進入する。図4において、要注意領域R3および上げ過ぎ領域R4の測定点のみが、プロットされて示されている。
【0028】
要注意領域R3では、支持部4が適正高さをわずかに超過する傾向にあり、一部の被験者は使用快適性の低下を感じる。上げ過ぎ領域R4では、支持部4が適正高さを超過して、多くの被験者が不快感を持ったり、痛みを感じたりする。本実施形態において、要注意領域R3と上げ過ぎ領域R4を区切る境界線は、荷重閾値WJを表す。
【0029】
荷重閾値WJは、支持部4の高さHに応じて変動する。荷重閾値WJは、実験結果に基づいて予め定められる。図4の例で、荷重閾値WJは、高さHの一次関数で表現される右肩上がりの直線となっている。判定部7は、介助装置1の動作中に取得されたバランス荷重BWと高さHとを組み合わせた測定点を図4にプロットする。さらに、判定部7は、測定点が上げ過ぎ領域R4の中に位置する場合に、支持部4の上げ過ぎ状態と判定し、それ以外の場合には、測定点が位置する領域(R1~R3)を特定する。
【0030】
なお、四つの領域(R1~R4)は必須でなく、例えば、上げ過ぎ領域R4とその他の領域の二領域化に簡素化してもよい。また、四つの領域の境界線は、直線に限定されず、曲線であってもよい。また、図4を用いることは必須でなく、同等の別法を用いてもよい。例えば、判定部7は、四つの領域の境界線を数式で保持することにより、上述した判定を行うことができる。また、判定部7は、四つの領域を判別する一覧表形式の測定点テーブルを保持してもよい。
【0031】
3.実施形態の介助装置1の動作
次に、実施形態の介助装置1の動作について説明する。図5は、介助装置1が被介助者Mの起立動作を介助する場合の制御部61の動作フローを示す図である。図5のステップS1で、制御部61は、上昇ボタン63の押下を待つ。介助者によって上昇ボタン63が押下されたときのステップS2で、制御部61は、駆動部5を動作させて、支持部4を上昇させる。
【0032】
次のステップS3で、制御部61の判定部7は、三つの荷重センサから左上側荷重W1、右上側荷重W2、および下側荷重W3の値を取得する。次のステップS4で、判定部7は、式(1)を用いてバランス荷重BWを算出する。次のステップS5で、判定部7は、モータ制御部52から、支持部4の高さHの値を取得する。次のステップS6で、判定部7は、バランス荷重BWと支持部4とを組み合わせた測定点が散布図上のどの領域に位置するか調査して、動作フローの分岐先を判断する。
【0033】
測定点が上げ不足領域R1または適正領域R2に位置する場合、動作フローはステップS7に進められる。判定部7は、正常である旨を表示部66に表示する。表示方法として、「正常」の文字を表示したり、緑色ランプを点灯したりできる。この後、動作フローは、ステップS1に戻されて、動作が継続する。介助者は、支持部4が適正高さに上昇するまで上昇ボタン63の押下状態を継続することができ、適当な時点で上昇ボタン63の押下を止める。
【0034】
測定点が要注意領域R3に位置する場合、動作フローはステップS8に進められる。判定部7は、要注意である旨を表示部66に表示する。表示方法として、「要注意」の文字を表示したり、黄色ランプを点灯したりできる。この後、動作フローは、ステップS1に戻されて、動作が継続する。介助者は、目視により被介助者Mの姿勢を確認しつつ、上昇ボタン63または下降ボタン64を押下することができる。
【0035】
測定点が上げ過ぎ領域R4に位置する場合、動作フローはステップS9に進められる。判定部7は、上げ過ぎ状態である旨を表示部66に表示する。表示方法として、「上げ過ぎ」の文字を表示したり、赤色ランプを点灯したりできる。これにより、介助者は、支持部4の上げ過ぎ状態を明確に認識できる。このとき、上げ過ぎ領域R4を判定する荷重閾値WJは、支持部4の高さHに応じて変動し、換言すると、被介助者Mの体格が考慮されている。したがって、上げ過ぎ状態の判定精度は、従来技術よりも高精度である。さらに、支持部4の上げ過ぎ状態が荷重閾値WJによって自動的に判定されるので、熟練度の低い介助者が介助装置1を操作しても良好な介助が可能となる。
【0036】
次の、ステップS10で、支持部4の以降の上昇が強制的に停止される。この後、介助者が下降ボタン64を押下すると、制御部61は、駆動部5を動作させて、支持部4を下降させる。被介助者Mの起立動作は、多くの場合にステップS1~ステップS8の繰り返しの中で終了する。つまり、ステップS9およびステップS10が実行されるケースは、稀である。
【0037】
なお、図5の動作フローは、各種の変形が可能である。例えば、ステップS7およびステップS8を省略して、直ちにステップS1に戻るようにしてもよい。つまり、正常や要注意の表示を行わず、上げ過ぎ状態のみを表示してもよい。また、ステップS8で、支持部4の上昇を一時停止させて、介助者の注意を喚起してもよい。さらには、ステップS10における支持部4の強制停止を行わず、ステップS1に戻るようにしてもよい。
【0038】
実施形態の介助装置1によれば、支持部4が被介助者Mから受ける荷重(W1、W2、W3)だけでなく、支持部4の高さHを考慮した判定を行うので、被介助者Mの体格に対応して変化する適正高さを超えて支持部4が上昇した上げ過ぎ状態を判定できる。これにより、被介助者Mの使用快適性の向上に寄与することができる。
【0039】
4.実施形態の変形および応用
なお、荷重検出部は、図6に示されるように変形されてもよい。図6は、荷重検出部の配設位置の変形例を示す胴体支持部41の模式図である。図示されるように、胴体支持部41の上部寄りの左右方向の中央に上部荷重センサ81を配設し、胴体支持部41の下部寄りの左右に離隔して、左下部荷重センサ82および右下部荷重センサ83を配設してもよい。この変形例でも、図4に示される判定方法、および図5に示される動作フローを準用することができる。本実施形態は、その他にも様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:介助装置 2:基台 3:アーム 4:支持部 41:胴体支持部 46:左上部荷重センサ 47:右上部荷重センサ 48:下部荷重センサ 5:駆動部 51:モータ本体部 52:モータ制御部 6:操作器 63:上昇ボタン 66:表示部 7:判定部 M:被介助者 W1:左上側荷重 W2:右上側荷重 W3:下側荷重 BW:バランス荷重 H:支持部の高さ R1:上げ不足領域 R2:適正領域 R3:要注意領域 R4:上げ過ぎ領域 WJ:荷重閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6