(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】エアゾールボタンキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 83/20 20060101AFI20220721BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
B65D83/20 100
B05B9/04
(21)【出願番号】P 2018082744
(22)【出願日】2018-04-24
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000141118
【氏名又は名称】株式会社丸一
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】星野 和徳
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005469(JP,A)
【文献】特開2014-205509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0173465(US,A1)
【文献】特開2006-103750(JP,A)
【文献】特開2017-030802(JP,A)
【文献】特開2017-043404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/20
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の上端に設けられ、内容物を吐出するためのボタンキャップであって、キャップ部と、当該キャップ部に連接された噴射部と、この噴射部を下方に押し下げる押下部とから成り、前記噴射部はその下端にエアゾール容器上端のバルブステムと接続するステム接続部を有し、このステム接続部から噴射部の前端に位置する噴口へと連続する流通路が設けられ、前記押下部を下方に押し下げることにより噴射部も下方に押下されると共に、前記バルブステムも下方に押し下げられ、エアゾール容器内の内容物が前記噴射部の噴口から外界に吐出され
、前記噴射部の流通路がステム接続部から上方に延長する上向き流通路と、この上向き流通路から略直角方向前方に向かう横向き流通路とから成り、この横向き流通路の出口が噴口を形成して、当該噴射部は前記上向き流通路部と前記横向き流通路部とから成る略逆L字形状を有するエアゾールボタンキャップにおいて、
前記押下部が前記キャップ部の直径方向に設けられ、その押下部の前端部が噴口側に位置し、この前端部を支点部としてキャップ部と回動自在に設けられ、その他端の後端部を押下力点部と成し、
前記支点部と押下力点部との間に作用点部を設け、この作用点部で前記噴射部を下方に押し下げることができ、
前記作用点部が前記押下部の天部から下方に延長する略逆三角形形状の下向き延長部からなり、
この下向き延長部が前記天部から2枚設けられ、これら2枚の下向き延長部の先端部は前記噴射部の横向き流通路部の両側に設けた受部と当接し、
前記噴射部がキャップ部の後方壁部に連接し、
前記作用点部が前記噴口とステム接続部との間に位置していることを特徴とするエアゾールボタンキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器の上端に設けられる押下ボタンとキャップとが一体的に形成されたボタンキャップの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のエアゾールボタンキャップとしては、本願出願人が提案した下記特許文献1に記載のものを挙げることができる。
この文献に記載のエアゾール容器の噴口一体型ボタンキャップは、キャップの直径方向の中央部に押下ボタンをキャップ部に連接して設け、この押下ボタンの前方部から前方に延長するノズル部(噴射部)を設け、前記押下ボタンの下端にはエアゾール容器上端のバルブステムと接続するステム接続部を設け、このステム接続部から前記噴射部の前端に設けられている噴口まで連続する流通路を形成したものである。
この従来例にあっては、押下ボタンがエアゾール容器のバルブステムの上に位置し、バルブステムをその上方から下方に押し下げて内容物を噴霧する。
【0003】
下記特許文献2に記載のエアゾール容器用キャップも、本願出願人が提案したものであるが、噴射機構付きキャップ、つまりエアゾールボタンキャップに使用後の残留ガス抜き機構を付加したものである。
この文献に記載されたエアゾールボタンキャップにおいては、キャップ本体部と、その内部に形成されたステム接続部(噴射部)と、このステム接続部を下方に押下できる作動部(押下ボタン又は押下部)とからなる。
【0004】
この作動部は、キャップ本体部の直径方向に配設され、前記ステム接続部の下端開口部(バルブステムとの連結孔)の上方位置で軸着され、この作動部の後端部を押し下げると、作動部の前端部が上方に回動し、ステム接続部の前端から前方に延長するノズル部の噴口が露出されると共に、作動部の天部から下方に延長する突出部がステム接続部(バルブステムと接続する入口部の後方側)を押下し、同時にバルブステムも下方に押下され、エアゾール容器内の内容物が上記ステム接続部及びノズル部の流通路を通過して噴口から外界に噴霧されることとなる。
【0005】
上記作動部においては、その略中央部に位置する軸着部が支点部となり、その後端部に位置する押下部が力点部となり、両者の間に位置する突出部が作用点部となる。
そして、上記作用点部は、支点部と力点部との間に位置するのであるが、この従来例では、押下部である力点部は、バルブステムの上方位置にはなく、右側の後端側に位置し、梃子の原理を利用してバルブステムの上方の支点部を支点として右方向に回動して上記作用点部を押下するものである。この作用点部の位置は、上記した通り、バルブステムと接続するステム接続部の入口部の右側、つまり後方側に位置するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-16877号公報
【文献】特開2014-205509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係るエアゾールボタンキャップにあっては、上記特許文献2に記載のボタンキャップとその構成が近似するタイプのものである。
即ち、エアゾール容器の上端のバルブステムを上から直接押下する構成でなく、前記バルブステムを押下するに際して、作動部の一部をキャップ部に軸着し、作動部の後端の押下部を押し下げ、回動させることにより上記バルブステムを押下できる構成を有するものである。
【0008】
上記構成からなるボタンキャップにおいて、その押下部の押下げ力を極めて軽くなるようにし、極めて小さい力で操作できるようにすることが本発明の課題である。
これにより、極めて小さい力で押下部を押し下げることが可能となり、使用者・需要者に操作の負担を軽減させ、否それ以上に操作に当たり非常に軽いという快感を味わわせることができるようにすることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、エアゾール容器の上端に設けられ、内容物を吐出するためのボタンキャップであって、キャップ部と、当該キャップ部に連接された噴射部と、この噴射部を下方に押し下げる押下部とから成り、前記噴射部はその下端にエアゾール容器上端のバルブステムと接続するステム接続部を有し、このステム接続部から噴射部の前端に位置する噴口へと連続する流通路が設けられ、前記押下部を下方に押し下げることにより噴射部も下方に押下されると共に、前記バルブステムも下方に押し下げられ、エアゾール容器内の内容物が前記噴射部の噴口から外界に吐出され、前記噴射部の流通路がステム接続部から上方に延長する上向き流通路と、この上向き流通路から略直角方向前方に向かう横向き流通路とから成り、この横向き流通路の出口が噴口を形成して、当該噴射部は前記上向き流通路部と前記横向き流通路部とから成る略逆L字形状を有するエアゾールボタンキャップにおいて、前記押下部が前記キャップ部の直径方向に設けられ、その押下部の前端部が噴口側に位置し、この前端部を支点部としてキャップ部と回動自在に設けられ、その他端の後端部を押下力点部と成し、前記支点部と押下力点部との間に作用点部を設け、この作用点部で前記噴射部を下方に押し下げることができ、前記作用点部が前記押下部の天部から下方に延長する略逆三角形形状の下向き延長部からなり、この下向き延長部が前記天部から2枚設けられ、これら2枚の下向き延長部の先端部は前記噴射部の横向き流通路部の両側に設けた受部と当接し、前記噴射部がキャップ部の後方壁部に連接し、前記作用点部が前記噴口とステム接続部との間に位置していることを特徴とするエアゾールボタンキャップである。
ここで、上記押下部の「前端部」及び「後端部」という表現の「前後」の方向は、噴射部の噴口が位置する方向を「前」、その反対側を「後」としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、エアゾール容器の上端に設けられ、内容物を吐出するためのボタンキャップであって、キャップ部と、当該キャップ部に連接された噴射部と、この噴射部を下方に押し下げる押下部とから成り、前記噴射部はその下端にエアゾール容器上端のバルブステムと接続するステム接続部を有し、このステム接続部から噴射部の前端に位置する噴口へと連続する流通路が設けられ、前記押下部を下方に押し下げることにより噴射部も下方に押下されると共に、前記バルブステムも下方に押し下げられてエアゾール容器内の内容物が前記噴射部の噴口から外界に噴霧されるエアゾールボタンキャップにおいて、前記押下部が前記キャップ部の直径方向に設けられ、その押下部の前端部が噴口側に位置し、この前端部を支点部としてキャップ部と回動自在に設けられ、その他端の後端部を押下力点部と成し、前記支点部と力点部との間に作用点部を設け、この作用点部で前記噴射部を下方に押し下げることができる。
【0014】
従って、前記押下力点部を指等で下方に押し下げることによって、前記支点部を中心として押下部が右方向に回動し、前記作用点部が噴射部を押し下げることができるのであるが、前記作用点部が前記噴口とステム接続部との間に位置しているため、その梃子作用により、その押下力を極めて軽いものとすることができるのである。
【0015】
従来のボタンキャップ(上記第2従来例)にあっては、上記した通り、略中央部(バルブステムの上方)に位置する軸着部が支点部となり、その後端部に位置する押下部が力点部となり、両者の間に位置する突出部が作用点部となる。そして、上記作用点部は、支点部と力点部との間に位置することとなるのであるが、その力点部はステム接続部の右側、つまり後方側、押下部の側に設けられている。
しかし、本発明においては、この作用点部が噴射部のステム接続部の左側、つまり前方側に設けられ、その押下力を極めて小さいものとすることができるのである。
【0016】
本発明においては、上記発明における作用点部の構成をより具体化したものである。
つまり、この作用点部が前記押下部の天部から下方に延長する2枚の略逆三角形形状の下向き延長部からなり、これら2枚の下向き延長部の先端部が前記噴射部の両側に設けた受部に当接するように形成したものである。
【0017】
本発明においては、噴射部とキャップ部との接続関係を具体化したものであり、即ち、この噴射部がキャップ部の後方壁部と連接できることを特定した。
実施態様の具体化を図ったものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエアゾールボタンキャップを図示しており、その(A)が平面図、その(B)が一部切欠拡大斜視図である。
【
図2】上記実施形態の縦断面を図示しており、その(A)が
図1(A)のA-A線断面図、その(B)が同じくB-B線断面図、その(C)が同じくC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るエアゾールボタンキャップを図示しており、その(A)が平面図、その(B)が一部切欠拡大斜視図である。
図2は、上記実施形態の縦断面を図示しており、その(A)が
図1(A)のA-A線断面図、その(B)が同じくB-B線断面図、その(C)が同じくC-C線断面図である。
【0021】
本発明に係るエアゾールボタンキャップ10(以下単に「ボタンキャップ」という。)は、キャップ部11と、このキャップ部11の内部でこのキャップ部11と連接する噴射部12と、この噴射部12を押し下げることのできる押下部13とから成る。
【0022】
キャップ部11は、底面が開口した筒体形状を有しており、その直径方向の内部に噴射部12と押下部13が配置する。
キャップ部11の下端周縁部11bが図示はしていないエアゾール容器の上端周縁部に冠着する。
【0023】
キャップ部11の天部11tは、周縁部が湾曲した有底状態に形成されているが、その直径方向は切り欠かれた状態に形成され、その内部に噴射部12と押下部13が配置する。
キャップ部11の前方壁部11fには、窓部11wが形成され、この窓部11wに噴射部12の前端の噴口12fが臨む。
【0024】
噴射部12は、その下端にエアゾール容器のバルブステムの上端部と接続するステム接続部12sを備え、このステム接続部12sから上方に向かう上向き流通路12uとこの上向き流通路12uから略直角方向の横方向に連続する横向き流通路12yが形成され、この横向き流通路12yの出口が噴口12fとなる。
【0025】
上記上向き流通路12uと横向き流通路12yとの接続部12mは、その横断面積を前記上向き及び横向き流通路12u、12yの横断面積よりも小さく形成している。
上記ステム接続部12sの上方の後方側の壁面部には、キャップ部11の後方壁部11rと接続する接続部12rが設けられている。
【0026】
この接続部12rの存在により、この噴射部12は、後に説明する押下部13の押し下げ操作により下方に押し下げられることができる。
即ち、この噴射部12は、この接続部12rの後方端の接続部位を中心にして下方に回動できるのである。
この噴射部12が下方に回動すると、噴射部12のステム接続部12sも下方に移動し、エアゾール容器のバルブステムを押下して、エアゾール容器内の内容物が吐出されることとなる。
【0027】
押下部13は、上記した通り、キャップ部11の直径方向全体に渡り、あたかもキャップ部11の天部11tの一部を形成するように設けられる。
より詳しくは、この押下部13は、その前方部分の左右両側に位置する軸部15で回動自在にキャップ部11に取り付けられている。
【0028】
即ち、上記軸部15を支点部として、押下部13は回動する。換言すると、この押下部13の後方端の押下力点部13rを押し下げると、上記軸部15を支点部として回動させることができる。
押下部13の天部の下面には、2枚の下向き延長部13kが設けられている。
この下向き延長部13kは、略逆三角形をした板状のものであり、その下方先端部13vが作用点部となって、噴射部12を押し下げることができる。
【0029】
即ち、噴射部12の両側にはその前後方向に段部12dが形成されており、この段部12dに上記下向き延長部13kの下方先端部13vが当接しているのである。つまり、この段部12dが上記押下部13に設けた下向き延長部13kの下方先端部13vの受部となる。
従って、押下部13の後方端の押下力点部13rを例えば人差し指で押し下げると、その前端部の軸部15(支点部)を中心として右回りに回動して、噴射部12の受部としての段部12dを下方に押し下げることができるのである。
これによってエアゾール容器のバルブステムも下方に押し下げられ、エアゾール容器内の内容物が噴口12fから外界に噴霧されることとなるのである。
【0030】
ここで、本発明においては、押下力点部13rと、支点部(軸部15)と、作用点部である押下部13の下向き延長部13kの下方先端部13v(作用点部)との位置関係が重要となる。
この作用点部である下方先端部13vが、本発明では、支点部15と押下力点部13rとの間であって、しかも、噴射部12のステム接続部12sの左側、つまり噴口側に位置しているのである。
【0031】
仮に、上記作用点部13vがステム接続部12sの右側、後方側に位置すると、従来のボタンキャップと同様の構成となるのであるが、この作用点部13vをステム接続部12sの左側、つまり噴口側に近付けて設けることにより、いわば爪切り型の梃子の原理と同様に、よりその押下力が小さいものであっても、エアゾール容器のバルブステムを押下することができることとなるのである。
【0032】
本願発明においては、上記のように、支点部と作用点部と力点部との位置関係がポイントであって、支点部と力点部の長さをより長く取り、その間の作用点部をより支点部側に近付けることにより、梃子の原理を利用して、力点部の押下力をより小さくすることができるのである。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の通り種々設計変更することが可能である。
キャップ部の下端部の直径は、エアゾール容器の上端部の外周縁部と良好に冠着できるサイズとすればよく、エアゾール容器の大きさに合致できるサイズにすればよく、その外径形状も適宜自由に設計変更することができる。
【0034】
要は、キャップ部の直径方向に切欠部を設け、噴射部と押下部とが配置できればよい。
噴射部の形態及び大きさも適宜キャップ部のサイズに合致させて設計することができ、その内部にエアゾール容器の内容物が流通できる流通路を設け、この流通路の入口を下端のステム接続部とし、その出口を前端の噴口とすればよい。
噴口には、各種タイプの噴口チップを嵌合させ、噴霧パターンの変更を図ることもできる。
【0035】
噴射部の両側に設けた受部としての段部も適宜設計変更することができ、押下部の天部から下向きに延長する下向き延長部の下方先端部が当接できる単なる突起部であってもよいし、段部以外のその他の手段を採用することができる。
この噴射部は、キャップ部の前方壁部に接続させることも可能である。
【0036】
押下部も、キャップ部の直径方向の切欠部に合致する形態を採用することができ、上記実施形態では、キャップ部の天部の外形と合致する形態を採用している。
押下部の後端部の押下力点部には、指を掛かりやすくするための窪みを設けているが、この窪みの形態も自由に設計変更することができる。
【0037】
押下部に設けた下向き延長部も、略逆三角形の板状のものとしたが、その形態は自由に設計変更することができ、単なる天部から下方に延長する突出部又は突起によって形成することもできる。
但し、この下向き延長部の下方先端部である作用点部の位置は、噴射部のステム接続部と噴口との間に設けることが重要である。
即ち、この作用点部を出来る限り噴口側に位置させることにより、梃子の原理で、この押下部の後端の押下力点部の押下力を小さいものとすることができるからである。
【0038】
以上、本発明においては、エアゾールボタンキャップにおいて、その押下部の支点部と作用点部と力点部との位置関係を考慮し、支点部と力点部との距離を最大のものとし、中間に位置する作用点部の位置を支点部側に近付けることにより力点部の押下力を最小のものとすることができ、押下部の押下力点部を軽い力で押下することができ、軽く気持ちのよい押下力にて噴霧操作を行うことができるエアゾールボタンキャップを提供することができた。
【符号の説明】
【0039】
10 エアゾールボタンキャップ
11 キャップ部
11b 下端周縁部
11t 天部
11f 前方壁部
11r 後方壁部
11w 窓部
12 噴射部
12d 段部
12f 噴口
12r 接続部
12s ステム接続部
12u 上向き流通路
12y 横向き流通路
13 押下部
13k 下向き延長部
13r 押下力点部
13v 下方先端部(作用点部)
15 軸部(支点部)