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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】水放出性油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/894 20060101AFI20220721BHJP
   A61K 8/895 20060101ALI20220721BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220721BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220721BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220721BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20220721BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/895
A61K8/34
A61K8/73
A61K8/06
A61Q1/04
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018083188
(22)【出願日】2018-04-24
(65)【公開番号】P2019189547
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】圓藤 良恭
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/008238(WO,A1)
【文献】特開2019-038781(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216696(WO,A1)
【文献】特開2019-085388(JP,A)
【文献】特開2011-219448(JP,A)
【文献】特開2015-074654(JP,A)
【文献】特開2014-097937(JP,A)
【文献】特開2014-097936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0185989(US,A1)
【文献】Laboratoires La Prairie, Switzerland,Liquid Soft Glow,Mintel GNPD [online],2012年08月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#1870422, [検索日:2022.6.24], 製品詳細, 製品情報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)~(d)を含み、(a)成分と(b)成分の配合割合が、(a)成分:(b)成分=60:1~4:1であることを特徴とする水放出性油中水型乳化化粧料。
(a)乳化性架橋シロキサンエラストマー 0.1~5重量%
(b)非乳化性架橋シロキサンエラストマー 0.01~5重量%、
(c)保湿剤 5~30重量%
(d)セルロースガム 0.1~1重量%
【請求項2】
請求項記載の化粧料において、さらに(e)疎水性粉末 0.1~5重量%を含むことを特徴とする水放出性油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化粧料において、(a)乳化性架橋シロキサンエラストマーが(ジメチコン/PEG)クロスポリマーまたは(ジメチコン/ポリグリセリル)クロスポリマーであることを特徴とする水放出性油中水型乳化化粧料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の化粧料において、(b)非乳化性架橋シロキサンエラストマーが(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーであることを特徴とする水放出性油中水型乳化化粧料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の化粧料において、さらに乳化剤0.05~3重量%を含むことを特徴とする水放出性油中水型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水放出性油中水型乳化化粧料に関し、特に安定性および凍結安定性が高い水放出性油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水放出性化粧料(はじめはクリーム状で、皮膚になじませると水滴に変化する化粧料)の開発が進んでいる。例えば、乳化性架橋シロキサンエラストマー、非乳化性架橋シロキサンエラストマー、およびこれらの溶媒、水相を含む水放出性化粧料が知られている(特許文献1参照)。
しかし、これらの水放出性化粧料は、離水性が高く、製品中で離水してしまい安定性に満足できるものではなかった。特に低温での保存時には著しい離水性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-517478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記従来技術に鑑み行われたものであり、その解決すべき課題は、安定性および凍結安定性が高い水放出性油中水型乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが前述の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定量の(a)乳化性架橋シロキサンエラストマー、(b)非乳化性架橋シロキサンエラストマー、(c)保湿剤、(d)水溶性増粘剤を配合することにより、安定性および凍結安定性が高い水放出性油中水型乳化化粧料を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明にかかる水放出性油中水型乳化化粧料は、次の(a)~(d)を含むことを特徴とする。
(a)乳化性架橋シロキサンエラストマー 0.1~5重量%
(b)非乳化性架橋シロキサンエラストマー 0.01~5重量%
(c)保湿剤 5~30重量%
(d)水溶性増粘剤 0.1~1重量%
前記化粧料において、(a)成分と(b)成分の配合割合が、(a)成分:(b)成分=60:1~4:1であることが好適である。
前記化粧料において、さらに(e)疎水性粉末 0.1~5重量%を含むことが好適である。
前記化粧料において、(a)乳化性架橋シロキサンエラストマーが(ジメチコン/PEG)クロスポリマーまたは(ジメチコン/ポリグリセリル)クロスポリマーであることが好適である。
前記化粧料において、(b)非乳化性架橋シロキサンエラストマーが(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーであることが好適である。
前記化粧料において、さらに乳化剤0.05~3重量%を含むことが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、安定性および凍結安定性が高い水放出性油中水型乳化化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明にかかる水放出性油中水型乳化化粧料は、安定性が高く(離水性が低く)、凍結安定性に優れた化粧料である。しかし、皮膚になじませると瞬時に水滴に変化し、みずみずしさに優れる化粧料になる。
【0009】
((a)乳化性架橋シロキサンエラストマー)
(a)乳化性架橋シロキサンエラストマーは、ポリオキシアルキレン単位またはポリグリセリン単位を有する架橋オルガノポリシロキサンエラストマーである。
【0010】
乳化性架橋シロキサンエラストマーとしては、例えば、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー(市販品としてはKSG-210、KSG-240;信越化学工業社製)、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー(市販品としてはKSG-310、KSG-320、KSG-330;信越化学工業社製)、(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー(市販品としてはKSG-340;信越化学工業社製)、(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー(市販品としてはKSG-320Z、KSG-350Z、KSG-360Z、KSG-380Z;信越化学工業社製)等の(ジメチコン/PEG)クロスポリマー、(ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー(市販品としてはKSG-710;信越化学工業社製)、(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー(市販品としてはKSG-810、KSG-820、KSG-830、KSG-840;信越化学工業社製)、(ポリグリセリル-3/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー等の(ジメチコン/ポリグリセリル)クロスポリマー等が挙げられる。
【0011】
(a)成分の配合量は、純分として、0.1~5重量%であることが好ましく、0.3~3重量%であることがより好ましく、0.5~2重量%であることが特に好ましい。(a)成分の配合量が0.1重量%未満の場合、乳化が不十分になる恐れがある。(a)成分の配合量が5重量%を超える場合、放出後の水の質が劣る。
【0012】
((b)非乳化性架橋シロキサンエラストマー)
(b)非乳化性架橋シロキサンエラストマーは、ポリオキシアルキレン単位またはポリグリセリン単位を有さない架橋オルガノポリシロキサンエラストマーである。
【0013】
非乳化性架橋シロキサンエラストマーとしては、例えば、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(市販品としてはKSG-15、KSG-1510、KSG-16、KSG-1610、KSG-19、KSG-016F;信越化学工業社製)、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー(市販品としてはKSG-18A;信越化学工業社製)、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー(市販品としてはKSG-41A、KSG-42A、KSG-43、KSG-44;信越化学工業社製)、(ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)/ビスビニルジメチコン)クロスポリマー(市販品としてはKSG-042Z、KSG-045Z、KSG-048Z;信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0014】
(b)成分の配合量は、純分として、0.01~5重量%であることが好ましく、0.01~3重量%であることがより好ましく、0.01~2重量%であることが特に好ましい。(b)成分の配合量が0.01重量%未満の場合、安定性に劣る。(b)成分の配合量が5重量%を超える場合、水放出性に劣る。
【0015】
本発明にかかる水放出性油中水型乳化化粧料において、(a)成分と(b)成分の配合割合が、(a)成分:(b)成分=60:1~4:1であることが好ましく、39:1~8:1であることがより好ましく、38:1~15:1であることが特に好ましい。(a)成分の配合割合が低すぎると、安定性に劣る場合がある。(b)成分の配合割合が低すぎると、水放出性に劣る場合がある。
【0016】
((c)保湿剤)
保湿剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D-マンニット等が挙げられる。
これらのうち、(c)成分として1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコールを含むことが好ましい。
【0017】
(c)成分の配合量は、5~30重量%であることが必要である。また、保湿剤の配合量が20重量%以下であることが好ましい。(c)成分の配合量が5重量%未満の場合、凍結安定性に劣る。(c)成分の配合量が30重量%を超える場合、水放出性、安定性に劣る。
【0018】
((d)水溶性増粘剤)
水溶性増粘剤は、化粧料に通常使用可能な水溶性増粘剤であれば特に限定されない。
【0019】
水溶性増粘剤としては、例えば、セルロースガム、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、セルロース末などのセルロース系高分子等、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系高分子等が挙げられる。
また、アラビアゴム、トラガカント、ガラクタン、キャロブガム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)などの植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチンなどの動物系高分子、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン系高分子等が挙げられる。
さらに、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマーなどのビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミドなどのアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸などの無機系水溶性高分子、PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート共重合体、(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、(アクリル酸アルキル/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー等が挙げられる。
これらのうち、(d)成分としてセルロースガムを含むことが好ましい。
【0020】
(d)成分の配合量は、0.1~1重量%であることが必要である。(d)成分の配合量が0.1重量%未満の場合、凍結安定性に劣る。(d)成分の配合量が1重量%を超える場合、水放出性に劣る。
【0021】
((e)疎水性粉末)
本発明にかかる水放出性油中水型乳化化粧料は、上記必須成分である(a)~(d)成分の他に、(e)疎水性粉末を含むことが好ましい。
【0022】
疎水性粉末は、粉体の表面が疎水性を有するものであれば特に限定されるものではない。疎水性粉末としては、例えば、シリコーン樹脂粉体、フッ素樹脂粉体など、粉体自体が疎水性を有するもののほか、無機粉体粒子の表面を、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類、デキストリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、金属石鹸、アルキルリン酸エーテル、フッ素化合物、またはスクワラン、パラフィン等の炭化水素類を用いて、溶媒を使用する湿式法、気相法、メカノケミカル法等により疎水化処理したものが挙げられる。疎水化処理される無機粉体粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム等が挙げられる。
【0023】
(e)成分を配合する場合、その配合量は、0.1~5重量%であることが好ましい。(e)成分の配合量が0.1重量%未満の場合、視覚効果が低い場合がある。(e)成分の配合量が5重量%を超える場合、安定性に劣る場合がある。
【0024】
上記(a)~(e)成分の他に、任意成分として、化粧料に通常配合可能な成分を、本願発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。そのような任意成分としては、乳化剤、油性成分、水性成分、紫外線吸収剤、薬剤等が挙げられる。
【0025】
乳化剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
乳化剤を配合する場合、その配合量は、0.05~3重量%であることが好ましい。乳化剤の配合量が0.05重量%未満の場合、安定性に劣る場合がある。乳化剤の配合量が3重量%を超える場合、水放出性が劣る場合がある。
【0026】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、シリコーン鎖分岐型メチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、アルキル基含有架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基分岐型ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。
【0027】
油性成分としては、例えば、シリコーン油、極性油等が挙げられる。
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどの鎖状シリコーン油、および環状シリコーン油等が挙げられる。
極性油分としては、例えば、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソパルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソデシル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチルなどのエステル油等が挙げられる。
【0028】
水性成分としては、例えば、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤等が挙げられる。
金属イオン封鎖剤としては、エデト酸ナトリウム塩、メタリン酸ナトリウム、リン酸等が挙げられる。
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0029】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-tert-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0030】
薬剤としては、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸2-グルコシド、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、2-Lアスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類、アラントイン、アズレン等の抗炎症剤、アルブチン、4-メトキシサリチル酸又はその塩、トラネキサム酸又はその誘導体等の美白剤、酸化亜鉛、タンニン酸等の収斂剤、イオウ、塩化リゾチーム、塩酸ピリドキシン、γ-オリザノール等が挙げられる。
また、上記薬剤は遊離の状態で使用されるほか、造塩可能なものは酸または塩基の塩の型で、またカルボン酸基を有するものはそのエステルの形で使用することができる。
【0031】
本発明にかかる水放出性油中水型乳化化粧料は、化粧料に広く応用することが可能である。例えば、ハンドクリーム、美白用美容液、乳液、クリーム、口紅、洗顔料、ムース等の製品が挙げられる。
【実施例
【0032】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する重量%(純分)で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた試験の評価方法について説明する。
【0033】
評価(1):水放出性
製剤を0.2g採取し、一方の手の甲の上に置き、他方の手でそれを塗布した際に水を放出する時間にて評価する。
◎:塗布直後~2秒後に水を放出した
○:2秒後~5秒後に水を放出した
△:5秒後~10秒後に水を放出した
×:水を放出しない
【0034】
評価(2):安定性
室温で4週間放置し、目視、顕微鏡観察にて性状を確認し評価する。
◎:目視観察の際に、製造直後と比較し、ほとんど変化が認められなかった。
○:目視観察の際に、製造直後と比較し、ごくわずかに変化が認められた。
例えば、透明容器に充填の際の空隙にわずかに液が確認された。
△:目視観察の際に、製造直後と比較し、変化が認められた。
例えば、透明容器に充填の際の空隙に液が確認され、製剤表面に液がわずかに確認された。
×:目視観察の際に、製造直後と比較し、変化が認められた。
例えば、透明容器に充填の際の空隙に液が多数確認され、製剤表面に液が確認された。
【0035】
評価(3):凍結安定性
完全に製剤が凍結する温度(-20℃)で保存したのち、室温にて1日放置し解凍後、目視、顕微鏡観察にて性状を確認し評価する。
◎:目視観察の際に、製造直後と比較し、ほとんど変化が認められなかった。
○:目視観察の際に、製造直後と比較し、ごくわずかに変化が認められた。
例えば、透明容器に充填の際の空隙にわずかに液が確認された。
△:目視観察の際に、製造直後と比較し、変化が認められた。
例えば、透明容器に充填の際の空隙に液が確認され、製剤表面に液がわずかに確認された。
×:目視観察の際に、製造直後と比較し、変化が認められた。
例えば、透明容器に充填の際の空隙に液が多数確認され、製剤表面に液が確認された。
【0036】
評価(4):使用性
調製した試料について専門パネラー10名によって実使用試験を実施した。具体的には、調製した試料を各パネラーの顔に塗布し、のびの軽さを総合して下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
◎:専門パネラー8名以上が、使用性に優れると認めた。
○:専門パネラー6名以上8名未満が、使用性に優れると認めた。
△:専門パネラー3名以上6名未満が、使用性に優れると認めた。
×:専門パネラー3名未満が、使用性に優れると認めた。
【0037】
本発明者らは、乳化性架橋シロキサンエラストマーおよび非乳化性架橋シロキサンエラストマーを含む水放出性油中水型乳化化粧料の安定性を向上させるための成分について検討を行った。
すなわち、本発明者らは、下記表1に示す水放出性油中水型乳化化粧料を常法により調製し、上記評価方法(1)~(4)で評価した。結果を表1、表2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
(*1):KSG-210(信越化学工業社製)
(*2):KSG-15(信越化学工業社製)
(*3):セロゲンPR(第一工業製薬社製)
(*4):EP1-WC-50(日本精化社製)
【0041】
表1より、乳化性架橋シロキサンエラストマーおよび非乳化性架橋シロキサンエラストマーを含むことで、水放出性および安定性に優れた水放出性水中油型乳化化粧料を得ることができるが、凍結安定性に劣っていた(試験例1-1)。
試験例1-1に保湿剤または水溶性増粘剤を添加することで、凍結安定性が少し改善した(試験例1-2または1-3)。
【0042】
これらのことから、本発明にかかる水放出性水中油型乳化化粧料は、(a)乳化性架橋シロキサンエラストマー 0.1~5重量%、(b)非乳化性架橋シロキサンエラストマー 0.01~5重量%、(c)保湿剤、(d)水溶性増粘剤を含むことが必要であることがわかった。
また、本発明にかかる水放出性水中油型乳化化粧料は、(e)疎水性粉末 0.1~5重量%を含むことが好ましい。
【0043】
次に、(c)成分の配合量について検討を行った。本発明者らは、下記表3に示す水放出性油中水型乳化化粧料を常法により調製し、上記評価方法(1)~(3)で評価した。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
表3より、(c)成分の配合量が多すぎても少なすぎても、水放出性および安定性に改善の余地がある結果となることが明らかになった。
したがって、(c)保湿剤の配合量は5~30重量%であることが必要である。
【0046】
次に、(d)成分の配合量について検討を行った。本発明者らは、下記表4に示す水放出性油中水型乳化化粧料を常法により調製し、上記評価方法(1)~(3)で評価した。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
表4より、(d)成分の配合量が少なすぎると凍結安定性に劣り、(d)成分の配合量が多すぎると水放出性に劣ることが明らかになった。
したがって、(d)水溶性増粘剤の配合量は0.1~1重量%であることが必要である。
【0049】
次に、(a)成分と(b)成分の配合量について検討を行った。本発明者らは、下記表5に示す水放出性油中水型乳化化粧料を常法により調製し、上記評価方法(1)~(3)で評価した。結果を表5に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
表5より、(a)成分と(b)成分の配合割合は、水放出性や安定性、凍結安定性に影響することが明らかになった。
したがって、(a)成分と(b)成分の配合割合が、(a)成分:(b)成分=60:1~4:1であることが好ましく、39:1~8:1であることがより好ましく、38:1~15:1であることが特に好ましい。
【0052】
次に、乳化剤の配合について検討を行った。本発明者らは、下記表6に示す水放出性油中水型乳化化粧料を常法により調製し、上記評価方法(1)~(3)で評価した。結果を表6に示す。
【0053】
【表6】
【0054】
(*5):KF-6028(信越化学工業社製)
(*6):KF-6017(信越化学工業社製)
(*7):KF-6038(信越化学工業社製)
【0055】
表6より、乳化剤を配合することで、安定性をより向上させることが可能であるが、水を放出する速度が遅くなることが明らかになった。
したがって、安定性を考慮すると、乳化剤を配合することが好ましい。
【0056】
以下に、本発明にかかる水放出性油中水型乳化化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0057】
処方例1:水放出性クリーム
【0058】
処方例2:水放出性クリーム