(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】芝刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/82 20060101AFI20220721BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20220721BHJP
A01D 34/68 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A01D34/82
A01D34/64 M
A01D34/68 K
(21)【出願番号】P 2018097986
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布施 陽一
(72)【発明者】
【氏名】山田 涼太
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0054498(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0031185(KR,A)
【文献】特開2016-208950(JP,A)
【文献】特開2001-178238(JP,A)
【文献】特開2015-112030(JP,A)
【文献】特表2013-507985(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0367257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/63 - 34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの刈刃が設けられたカッティングディスクが回転軸を中心に回転可能に配在され、前記カッティングディスクの下側に底部ディスクが配置され、前記底部ディスクの外周に、前記刈刃が到達する領域を超えて径方向外側に延びる複数の櫛歯部が設けられた芝刈機であって、
前記櫛歯部は、弾性変形可能な素材で形成され、先端側に行くに従って上向きに湾曲するとともに、前記櫛歯部が外力を受けて内向きに弾性変形したときに前記カッティングディスクに当接するようにされ
、
前記刈刃が到達する領域は、前記カッティングディスクの外縁より内側に設定されていることを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記底部ディスクは、前記回転軸における前記カッティングディスクの下側に該回転軸に対して相対回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項
1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記櫛歯部の先端は、該櫛歯部が外力を受けていない状態において、前記カッティングディスクより径方向外側かつ前記カッティングディスクの下面より上側まで延設されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記櫛歯部の根元部分は、前記底部ディスクの外周から該底部ディスクと同一平面上に延びており、前記櫛歯部の根元部分から先端側に行くに従って上向きに湾曲していることを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記底部ディスクは樹脂製であることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記カッティングディスクは、前記芝刈機の本体シャーシに対して上方へ移動可能な状態で吊り下げられて支持されており、前記芝刈機の本体シャーシに対して前記カッティングディスクを昇降して前記刈刃による芝刈高さを調整するようになっていることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の芝刈機。
【請求項7】
前記芝刈機は、自動走行可能とされていることを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載の芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈機に係り、特に、地面上にある落下物を刈刃から保護するようにされた芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地面に生えた芝生や雑草(以下、纏めて芝草ということがある)を刈り取るための芝刈機として、作業者が操縦することなく、自動的(自律的、自主的ともいう)に走行可能な自動走行式芝刈機(自律走行式芝刈機、自走式芝刈機などともいう)が普及してきた。この自動走行式芝刈機は、例えば、車輪を駆動するための電動モータ(以下、走行用モータという)、芝刈用の刈刃(カッタブレードともいう)を駆動するための電動モータ(以下、作業用モータという)が配備されるとともに、これらモータを制御する制御装置、これらモータや制御装置に電力を供給するバッテリ等が搭載され、ワイヤー等で区画された芝刈領域内(以下、フィールドということがある)を駆動輪によって自動的に走行しつつ、略水平に回転する刈刃によって芝草を刈ることができる。また、所定の作業サイクルが終了した場合や、芝刈作業中にバッテリ残量が所定値以下まで低下した場合には、芝刈機が、充電ステーションに向けて自動的に帰還走行を行い、充電ステーションにてバッテリへの充電が自動的に行われる。バッテリへの充電が終了した後は、指定された芝刈領域での芝刈作業が自動的に再開される。かかる自動走行式芝刈機は、作業者不在のまま長時間芝草の刈り作業を行うことが可能であり、いわゆるロボット式芝刈機やロボットモアなどとして知られている。
【0003】
また、かかる近年の芝刈機においては、刈刃の保護やメンテナンス性向上、小型化等のために、作業用モータによって駆動されて略水平に回転するカッティングディスクに、複数の刈刃が取り付けられた形式のものが開発されている(例えば、下記特許文献1等参照)。
【0004】
前記した如くの芝刈機(ロボットモア)は、ゴルフ場、競技場、公園、自宅の庭等の様々な場所・領域で使用できるが、例えば、ゴルフボールが存在するフィールド(例えば、ゴルフ練習場)をロボットモアが芝刈り作業する際、刈刃がゴルフボールを傷付けるのを防ぐために、ゴルフディスクと呼ばれるガード部材が必要である。
【0005】
このようなガード部材が設けられたロボットモアとして、例えば下記特許文献2に見られるように、モータの駆動軸に、該駆動軸に垂直かつその外周に少なくとも一つの刈刃が設けられたカッティングディスクが連結され、前記カッティングディスクに実質的に平行かつ前記カッティングディスクの下側に底部ディスクが配置され、前記底部ディスクの外周に、前記刈刃が到達する領域を超えて径方向外側に延びる複数の櫛歯部が設けられたものが既に知られている。
【0006】
前記した特許文献2に所載の芝刈機において、前記底部ディスクは、ロールベアリング等を介して前記モータの駆動軸に取り付けられており、モータが回転すると、その回転に応じて底部ディスクも連れ回される。そのため、自動走行中(芝刈作業中)に地面上にあるゴルフボールに接近すると、刈刃より先に底部ディスクの櫛歯部(の先端)がゴルフボールに接触し、ゴルフボールは刈刃に接触する前に回転する底部ディスクの櫛歯部によって弾き飛ばされるので、刈刃がゴルフボールを傷付けるのを防止できるとともに、刈刃自体も保護される。
【0007】
また、特許文献2に所載の芝刈機においては、地面に対する刈刃の高さ、いわゆる芝刈高さを調節するために、カッティングディスクや底部ディスクがサスペンションシステムを介して本体シャーシに連結され、それらが一体となって本体シャーシに対して昇降するとともに、前記櫛歯部の先端が僅かに上向きに湾曲している。そのため、自動走行中(芝刈作業中)に、前記した如くに回転する底部ディスクの櫛歯部によってゴルフボールを弾き飛ばすことができない場合でも、そのゴルフボールに底部ディスクが乗り上げやすくなっており、これによっても、刈刃がゴルフボールを傷付けるのを防止できるとともに、刈刃自体も保護される。
【0008】
また、通常作業時は、隣り合う櫛歯部間に入り込んだ芝草を、回転する刈刃によって刈ることができるため、前記のようにゴルフボールが散乱するフィールドでも、事前にゴルフボールを回収せずに芝刈作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-208950号公報
【文献】欧州特許第1211924号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記芝刈機が芝刈作業を行うフィールド内には、ゴルフボール等の保護すべき落下物のほか、石、岩等の障害物も存在する。上記特許文献2等に所載の芝刈機は、必然的に質量が大きくなるので、当該芝刈機がフィールド上に存在する石、岩等の硬い障害物に衝突すると、膨大な衝撃力が底部ディスクに加わることになる。ガード部材としての底部ディスクは、通常、金属製の薄板で作製されるとともに、その外周に設けられた櫛歯部は、細長い形状を有しているため、石、岩等の硬い障害物に衝突すると容易に変形・破損してしまう。
【0011】
前記のように底部ディスク、特にその外周に設けられた櫛歯部が変形・破損すると、カッティングディスクに設けられた刈刃が露出し、フィールド内のゴルフボールを傷付けるとともに、刈刃自体が損傷してしまうおそれもある。
【0012】
それに対し、底部ディスクの耐久性を向上させるために、肉厚を厚くしたり、剛性のある素材を採用するなどして、底部ディスクの強度を確保する対策が考えられるが、そのような対策では重量が増加してしまうので、当該底部ディスクが取り付けられた作業用モータの負担が大きくなる、作業時間が短くなる、持ち運びしにくくなる、より膨大な衝撃力が底部ディスクに付加されてしまう等といった種々の問題が起こり得る。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、重量増加を抑えつつ、所望の耐久性を確保することのできる芝刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る芝刈機は、基本的には、少なくとも一つの刈刃が設けられたカッティングディスクが回転軸を中心に回転可能に配在され、前記カッティングディスクの下側に底部ディスクが配置され、前記底部ディスクの外周に、前記刈刃が到達する領域を超えて径方向外側に延びる複数の櫛歯部が設けられ、前記櫛歯部は、弾性変形可能な素材で形成され、先端側に行くに従って上向きに湾曲するとともに、前記櫛歯部が外力を受けて内向きに弾性変形したときに前記カッティングディスクに当接するようにされていることを特徴としている。
【0015】
好ましい態様では、前記刈刃が到達する領域は、前記カッティングディスクの外縁より内側に設定される。
【0016】
別の好ましい態様では、前記底部ディスクは、前記回転軸における前記カッティングディスクの下側に該回転軸に対して相対回転可能に取り付けられる。
【0017】
別の好ましい態様では、前記櫛歯部の先端は、該櫛歯部が外力を受けていない状態において、前記カッティングディスクより径方向外側かつ前記カッティングディスクの下面より上側まで延設される。
【0018】
別の好ましい態様では、前記櫛歯部の根元部分は、前記底部ディスクの外周から該底部ディスクと同一平面上に延びており、前記櫛歯部の根元部分から先端側に行くに従って上向きに湾曲する。
【0019】
別の好ましい態様では、前記底部ディスクは樹脂製である。
【0020】
別の好ましい態様では、前記カッティングディスクは、前記芝刈機の本体シャーシに対して上方へ移動可能な状態で吊り下げられて支持されており、前記芝刈機の本体シャーシに対して前記カッティングディスクを昇降して前記刈刃による芝刈高さを調整するようになっている。
【0021】
他の好ましい態様では、前記芝刈機は、自動走行可能とされる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、底部ディスクの外周に設けられた櫛歯部が外力を受けて内向きに弾性変形したときにカッティングディスクに当接し、受けた外力をカッティングディスクに受け流す(換言すれば、外力の一部をカッティングディスクで受ける)とともに、櫛歯部の変位量がカッティングディスクによって規制されるので、底部ディスクを薄肉かつ軽量としつつも、強度を確保しやすくなる。そのため、底部ディスクの櫛歯部は芝刈領域内に存在する硬い障害物に衝突しても変形・破損しにくくなり、所望の耐久性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る芝刈機の一実施形態の全体斜視図。
【
図2】
図1に示される芝刈機の、本体ハウジングを取り外した状態を示す分解斜視図。
【
図3】
図2に示されるカッティングヘッド部分を拡大して示す要部拡大斜視図。
【
図9】
図3のカッティングヘッドの落下物(ゴルフボール等)に衝突する前後を示す要部拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0025】
[芝刈機1の全体構成]
図1は、本発明に係る芝刈機の一実施形態の全体斜視図であり、
図2は、
図1に示される芝刈機の、本体ハウジングを取り外した状態を示す分解斜視図である。
【0026】
図示実施形態の芝刈機1は、予め設定された芝刈領域(フィールド)内に生えた芝草を刈るように自動的に走行可能な無人自動走行式芝刈機(いわゆる、ロボット式芝刈機やロボットモア)である。
【0027】
前記芝刈機1は、主に、車輪を駆動して自動走行を行うための走行部10、芝刈用の刈刃を駆動して芝刈作業を行うための作業部20、走行部10(の走行用モータ)および作業部20(の作業用モータ31)を自動制御する制御装置(不図示)、走行部10(の走行用モータ)および作業部20(の作業用モータ31)並びに制御装置に電力を供給するバッテリ(不図示)等を有し、それらが本体シャーシ5に搭載されるとともに、下方開放の本体ハウジング6により覆われている。
【0028】
また、図示は省略するが、前記芝刈機1には、各種の検出センサ(障害物検出センサ、角速度センサ、加速度センサ、ワイヤー検出センサ、バッテリ残量検出センサ等)が備えられており、前記各種の検出センサで検出された検出信号は、前記制御装置に送信され、前記制御装置にて、走行部10および作業部20の自動制御に用いられるようになっている。例えば、ワイヤー検出センサは、後述するように、芝刈機1が自動走行する際の目印となるワイヤーを検出するためのセンサである。
【0029】
[走行部10の構成]
前記芝刈機1は、本例では、後輪駆動型の自走ロボットである。前記芝刈機1の走行部10は、本体シャーシ5の前部に横並びで(換言すれば、左右方向に沿って)設けられた複数個(図示例では、4個)の前輪11と、本体シャーシ5の後部に左右一対で設けられた後輪12と、を有する。
【0030】
非駆動輪(従動輪ともいう)である各前輪11は、本例では、自在キャスターで構成されている。なお、前輪11は、自在キャスターに限られず、固定キャスターであってもよいし、前輪11の個数は、図示例に限られないことは当然である。
【0031】
一方、駆動輪である左右の後輪12は、各後輪12に配備された自動走行用の走行用モータ(不図示)により個別に駆動され、これにより、芝刈機1は、操舵制御可能となっている。
【0032】
前記制御装置は、CPU、RAM、ROM等を有するマイクロコンピュータ(マイコン)で構成されており、前記ワイヤー検出センサで検出された検出信号に基づいて、芝刈領域の境界を認識するとともに、前記角速度センサ、加速度センサ等で検出された検出信号に基づいて、各後輪12に配備された走行用モータを個別に駆動制御することにより、前記芝刈領域内で前記芝刈機1の前進、後退、旋回等の走行を自動的に行うことができる。
【0033】
また、前記制御装置は、予め設定された作業サイクルが終了した場合や、前記バッテリ残量検出センサで検出された検出信号に基づいてバッテリ残量が所定値以下まで低下した場合に、芝刈機1を操舵して充電ステーションに向けて帰還走行させ、充電ステーションにてバッテリへの充電を行い、バッテリへの充電が終了した後は、指定された芝刈領域での芝刈作業を再開させることができる。
【0034】
なお、本例では、自動走行方式(詳しくは、自動走行領域の境界認識方式)として、いわゆるワイヤー方式(上記特許文献1等を併せて参照)を採用しているが、従来知られたその他の方式を採用してもよいことは勿論である。
【0035】
本例では、前記制御装置、前記芝刈機1の電源としてのバッテリ、前記各後輪12に配備された走行用モータ等は、駆動輪である左右の後輪12の間に配置されたカバーケース7内に収納されて設置されている。
【0036】
[作業部20の構成]
前記芝刈機1の作業部20は、本例では、本体シャーシ5の前輪11と後輪12の間に搭載されたカッティングヘッド30を含んで構成されている。詳しくは、前記作業部20は、前後方向(進行方向)で視たときに当該芝刈機1の左右方向の略全幅をカバーできるように、左右方向に沿って千鳥配置で設けられた同一構成の複数個(図示例では、5個)のカッティングヘッド30を有している。
【0037】
なお、前記作業部20を構成するカッティングヘッド30の配置構成や個数、大きさ等は、図示例に限られず、例えば芝刈機1の大きさ、芝刈領域の大きさ等に応じて適宜に選択できる。
【0038】
各カッティングヘッド30は、本例では、連結フレーム29、および該連結フレーム29に上下方向に揺動可能に取り付けられた上下一対の連結部材28を介して、本体シャーシ5に接続されている。詳しくは、前記本体シャーシ5に連結フレーム29が連結固定され、その連結フレーム29の上下に、左右一対の連結アーム27が二又状に設けられた連結部材28が上下方向に揺動可能に取り付けられており、各連結部材28の各連結アーム27(つまり、合計で4本の連結アーム27)の先端部が、カッティングヘッド30(のモータハウジング33)に連結されている。
【0039】
また、各カッティングヘッド30には、前記連結部材28等を介して当該カッティングヘッド30を本体シャーシ5に対して昇降させることによって、地面に対する相対的な高さ、いわゆる芝刈高さ(言い換えれば、刈刃36で刈られる芝草の長さ)を調節する機構(芝刈高さ調節機構)が備えられている(後で詳述)。
【0040】
(カッティングヘッド30の構成)
前記作業部20を構成する各カッティングヘッド30の構成を、
図3~
図9を参照しながら詳細に説明する。
図3は、
図2に示されるカッティングヘッド部分を拡大して示す要部拡大斜視図であり、
図4~
図8はそれぞれ、
図3のカッティングヘッドの正面図、側面図、上面図、下面図、縦断面図である。また、
図9は、
図3のカッティングヘッドの落下物(ゴルフボール)に衝突する前後を示す要部拡大縦断面図である。
【0041】
各カッティングヘッド30は、本体シャーシ5から下方へ突出するように配されるとともに、芝刈機1が自動走行しているときに地面と略平行な面で回転するカッティングディスク35を有し、このカッティングディスク35の下面側に芝刈用の刈刃36が回転自在に組み付けられている。このカッティングディスク35は、前記走行用モータとは別個に(独立して)設けられた作業用モータ31によって回転駆動され、これにより、回転するカッティングディスク35の下側で刈刃36が相対的に且つ地面と略平行な面で回転(詳細には、微小角度範囲内で揺動)せしめられ、地面に生えた芝草を刈り取ることができる。
【0042】
より詳しくは、各カッティングヘッド30は、その上下左右4箇所が前記4本の連結アーム27に連結支持された蓋部材34付き円筒状のモータハウジング33を有し、このモータハウジング33内に、カッティングディスク35を回転駆動するための作業用モータ31が収容されている。作業用モータ31の出力軸(回転軸)32は、地面へ向かってモータハウジング33から下方へ延びており、この出力軸32の下部(モータハウジング33から下方に突出した部分)に、厚肉円盤状のカッティングディスク35が一体回転可能に連結固定されている(特に、
図8参照)。
【0043】
前記カッティングディスク35の下面側には、周方向に略等角度間隔をあけて同一形状の複数個(図示例では、3個)の刈刃36が装着されている。各刈刃36は、ボルト類37を介して、カッティングディスク35に相対回転可能、且つ、カッティングディスク35と略平行な面で回転するように組み付けられている。すなわち、カッティングディスク35の回転中心(軸)と各刈刃36の回転中心とは、偏芯配置されている。
【0044】
ここで、本実施形態では、各刈刃36が到達する領域(すなわち、各刈刃36の回転軌跡)Rは、円盤状のカッティングディスク35の外縁より内側に設定されている(
図7参照)。これにより、後述する底部ディスク40の櫛歯部41が内向きの外力を受けて内側へ向けて弾性変形したときに、各刈刃36と櫛歯部41との接触が回避されるようになっている(後で詳述)。
【0045】
また、本実施形態では、前記カッティングディスク35の下側に位置するように、前記出力軸32の下端部に、薄肉円盤からなる底部ディスク(アンチフリクションディスクということがある)40が取り付けられている。詳しくは、前記底部ディスク40は、弾性変形可能な樹脂製(例えばPP樹脂)とされ、この底部ディスク40の内周に、出力軸32の下端部を覆う蓋状のカバー部材39が取り付けられており、このカバー部材39と前記出力軸32の下端部との間にロールベアリング38が介装されている(特に、
図8参照)。このようにロールベアリング38等のベアリングを介装して前記出力軸32に底部ディスク40を取り付けることにより、底部ディスク40は、出力軸32に相対回転可能、且つ、当該出力軸32が回動したときに当該出力軸32に連れ回されるようになっている。
【0046】
なお、ここでは、底部ディスク40は、弾性変形可能な樹脂製とされているが、弾性的に変形可能であれば、バネ鋼等の金属製やゴム製であってもよい。
【0047】
さらに、前記底部ディスク40の外周(周縁)には、所定間隔をあけて複数個(図示例では、15個)の櫛歯部41が径方向外側に向けて突設されている。各櫛歯部41は、下側から視て、周方向で所定幅を有する概略矩形状を呈するとともに、各刈刃36が到達する領域(すなわち、各刈刃36の回転軌跡)Rを超えてカッティングディスク35(の外縁)より外側まで延びている(
図7参照)。また、各櫛歯部41は、側方から視て、根元部分が前記底部ディスク40の外周から該底部ディスク40と同一平面上に延びるとともに、その根元部分から先端側(外端側)に行くに従って次第に上向きに湾曲しており、その先端(外端)は、カッティングディスク35(の外縁)より径方向外側かつカッティングディスク35の下面より上側まで延設されている。
【0048】
(カッティングヘッド30の動作)
上記構成を有するカッティングヘッド30を備えた芝刈機1は、前記走行部10による自動走行中に、作業用モータ31を駆動すると、出力軸32を中心にカッティングディスク35が一体に回転し、該カッティングディスク35の回転による遠心力によって該カッティングディスク35に設けられた各刈刃36が(カッティングディスク35に対して相対的に)円周方向に起き上がった状態になり、走行する芝刈機1の下方で底部ディスク40の隣り合う櫛歯部41間に入り込んだ芝草を刈ることができる。各刈刃36は、芝草を刈った際の反力で(遠心力による起き上がり方向とは逆方向に)微小角度範囲だけ揺動するが、遠心力によって起き上がった状態に戻り、この微小角度範囲内での揺動を繰り返すことになる。
【0049】
また、作業用モータ31を駆動すると、その出力軸32の回転に応じて(ロールベアリング38を介して)底部ディスク40も連れ回される。そのため、自動走行中(芝刈作業中)に地面上にある落下物(ゴルフボール等)に接近すると、刈刃36より先に底部ディスク40の櫛歯部41が落下物に接触し、落下物は刈刃36に接触する前に回転する底部ディスク40の櫛歯部41によって弾き飛ばされる。
【0050】
また、自動走行中(芝刈作業中)に、底部ディスク40の櫛歯部41が、地面上にある障害物(硬い石、岩等)に接触したり、前記した如くに回転する回転する底部ディスク40の櫛歯部41によって落下物(ゴルフボール等)を弾き飛ばすことができない場合、底部ディスク40の櫛歯部41は、その障害物や落下物から内向きの外力を受けることになる。ここで、本実施形態では、底部ディスク40が、弾性変形可能な素材で形成され、底部ディスク40の櫛歯部41が、先端側(外端側)に行くに従って次第に上向きに湾曲しており、その先端(外端)は、当該櫛歯部41が外力を受けていない状態において、カッティングディスク35(の外縁)より径方向外側かつカッティングディスク35の下面より上側まで延設されているため、底部ディスク40の櫛歯部41が外力を受けて内向きに弾性変形したとき、その先端がカッティングディスク35の外縁に当接する。そのため、受けた外力をカッティングディスク35に受け流す(換言すれば、外力の一部をカッティングディスク35で受ける)とともに、櫛歯部41の変位量がカッティングディスク35によって規制されるようになる(
図9参照)。
【0051】
なお、前記のように、各刈刃36が到達する領域Rは、円盤状のカッティングディスク35の外縁より内側に設定されているため、底部ディスク40の櫛歯部41が外力を受けて内向きに弾性変形し、その先端がカッティングディスク35の外縁に当接しても、櫛歯部41が、カッティングディスク35の下面側で揺動する各刈刃36に接触することはない。
【0052】
(芝刈高さ調節機構の構成)
また、前記作業部20を構成する各カッティングヘッド30には、上記構成に加えて、以下のような地面に対する刈刃36の高さ、いわゆる芝刈高さを調節するための芝刈高さ調節機構が備えられている。
【0053】
すなわち、本例では、本体シャーシ5に、左右方向に沿って回転自在に巻回軸26が配置されており(
図2参照)、各カッティングヘッド30は、前記連結アーム27に設けられた付勢部材としての付勢ばね(不図示)によって下方に付勢されるとともに、前記巻回軸26に巻き回された調節ベルト(不図示)によって、地面から所定の高さとなるように吊り下げられて支持されている。前記制御装置によって、調節用モータ(図示例では、カバーケース7内に収納された調節用の電動モータ)を駆動して巻回軸26を回動させ、該巻回軸26に巻き回された調節ベルトの巻き出し長さを調節することによって、本体シャーシ5に対して各カッティングヘッド30を昇降させ、地面に対する各カッティングヘッド30の相対的な高さ、すなわち刈刃36の相対的な高さを調節可能となっている。
【0054】
つまり、上記構成とされた芝刈高さ調節機構を有する各カッティングヘッド30は、本体シャーシ5に対して、上方へ移動可能、より詳しくは、下方への移動は調節ベルトで規制(制限)されるが、上方への移動は規制されずに相対移動可能となっている。
【0055】
(芝刈高さ調節機構を含む動作)
上記構成を有するカッティングヘッド30を備えた芝刈機1は、前記した芝刈高さ調節機構によってカッティングヘッド30が本体シャーシ5に対して上方へ移動可能となっており、また、前記のようにカッティングヘッド30に設けられた底部ディスク40の櫛歯部41が先端側(外端側)に行くに従って次第に上向きに湾曲している。そのため、自動走行中(芝刈作業中)に地面上にある障害物や落下物に接近し、底部ディスク40の櫛歯部41がその障害物や落下物に接触したとき、カッティングヘッド30が(付勢ばねの付勢力に抗して)本体シャーシ5に対して上方へ移動(詳しくは、カッティングヘッド30が連結アーム27を持つ連結部材28を介して本体シャーシ5に対して上方へ揺動)し、障害物や落下物に対して上方へ逃げるようにしてその障害物や落下物に底部ディスク40が乗り上げやすくなっている。また、底部ディスク40が障害物や落下物に乗り上げたことによる芝刈機1の浮き上がりも防止できるようになっている。
【0056】
以上で説明したように、本実施形態の芝刈機1においては、底部ディスク40の外周に設けられた櫛歯部41が外力を受けて内向きに弾性変形したときにカッティングディスク35に当接し、受けた外力をカッティングディスク35に受け流す(換言すれば、外力の一部をカッティングディスク35で受ける)とともに、櫛歯部41の変位量がカッティングディスク35によって規制されるので、底部ディスク40を薄肉かつ軽量としつつも、強度を確保しやすくなる。そのため、底部ディスク40の櫛歯部41は芝刈領域内に存在する硬い障害物に衝突しても変形・破損しにくくなり、所望の耐久性を確保することができる。
【0057】
また、底部ディスク40の櫛歯部41は、弾性変形可能な素材(例えば樹脂)で形成されるので、櫛歯部41が地面上にある落下物(ゴルフボール等)に接触したとき、当該櫛歯部41の弾性力によって落下物を弾き飛ばしやすくなるという効果もある。
【0058】
また、底部ディスク40の櫛歯部41は、先端側に行くに従って上向きに湾曲するので、その先端が落下物(ゴルフボール等)や障害物(硬い石、岩等)に接触しにくくなり、これによっても、底部ディスク40の櫛歯部41は変形・破損しにくくなる。
【0059】
また、底部ディスク40の櫛歯部41は、弾性変形可能な素材(例えば樹脂)で形成されるとともに、先端側に行くに従って上向きに湾曲するので、櫛歯部41が地面上にある障害物や落下物に接触したとき、底部ディスク40がその障害物や落下物に乗り上げやすくなっており(言い換えれば、障害物や落下物が底部ディスク40の下側に入り込みやすくなっており)、これによっても、底部ディスク40の櫛歯部41は変形・破損しにくくなる。
【0060】
かかる構成により、カッティングディスク35に設けられた刈刃36が地面上にある保護すべき落下物(ゴルフボール等)を傷付けるのを確実に防止できるとともに、刈刃36自体も確実に保護されるので、例えばゴルフボール等の保護すべき落下物が散乱するフィールドでも、事前に落下物を回収せずに芝刈作業を効率的に行うことができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、バッテリで駆動して芝刈領域内を自動走行可能な自動走行式芝刈機を例示して説明したが、本発明は、作業者が乗用、あるいは、手押し式ハンドル等にて制御を行う手動式の芝刈機にも適用できることは勿論である。
【0062】
また、上記実施形態では、車輪や刈刃の駆動源(動力源)として、当該芝刈機に内蔵されたバッテリから電力供給を受けて駆動する走行用モータや作業用モータを例示して説明したが、例えばエンジン等を駆動源として自動走行用の車輪や芝刈作業用の刈刃を駆動してもよいことは詳述するまでも無い。
【符号の説明】
【0063】
1 芝刈機
5 本体シャーシ
6 本体ハウジング
7 カバーケース
10 走行部
11 前輪(従動輪)
12 後輪(駆動輪)
20 作業部
26 巻回軸
27 連結アーム
28 連結部材
29 連結フレーム
30 カッティングヘッド
31 作業用モータ
32 出力軸(回転軸)
33 モータハウジング
34 蓋部材
35 カッティングディスク
36 刈刃
37 ボルト類
38 ロールベアリング
39 カバー部材
40 底部ディスク
41 櫛歯部