IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パンパシフィック・カッパー株式会社の特許一覧

特許7108462撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造
<>
  • 特許-撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造 図1
  • 特許-撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造 図2
  • 特許-撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造 図3
  • 特許-撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造 図4
  • 特許-撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造 図5
  • 特許-撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造 図6
  • 特許-撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造 図7
  • 特許-撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造 図8
  • 特許-撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/12 20190101AFI20220721BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20220721BHJP
   B01F 27/702 20220101ALI20220721BHJP
   B01F 35/30 20220101ALI20220721BHJP
   B01F 35/92 20220101ALI20220721BHJP
   B01F 35/95 20220101ALI20220721BHJP
   C02F 11/13 20190101ALI20220721BHJP
   F26B 17/20 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C02F11/12
B01F27/112
B01F27/702
B01F35/30
B01F35/92
B01F35/95
C02F11/13
F26B17/20 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018098964
(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公開番号】P2019202271
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】500483219
【氏名又は名称】パンパシフィック・カッパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】宮永 洋
(72)【発明者】
【氏名】岡本 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】片又 聖也
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-222092(JP,A)
【文献】特開平11-063239(JP,A)
【文献】特開2005-270737(JP,A)
【文献】特開2000-130601(JP,A)
【文献】特開2003-247779(JP,A)
【文献】特開2003-190755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00 - 11/20
B01F 27/00 - 27/96
B01F 35/00 - 35/95
F26B 1/00 - 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能にジャケット内に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、前記ジャケット内及び前記撹拌翼内に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造であって、
投入口側の鏡板を貫通するように配置された前記回転軸の周囲に配置された1又は複数の投入口側グランドパッキンと、
前記回転軸の周囲に取り付けられて前記投入口側グランドパッキンを保持する投入口側パッキンボックスと、
を備え、
前記投入口側パッキンボックスは前記鏡板と別体とされて、当該鏡板に着脱可能に固定されており、
排出口側の堰板を貫通するように配置された前記回転軸の周囲に前記堰板と別体とされて、当該堰板に着脱可能に固定された排出口側パッキンボックスを配置すると共に、前記排出口側パッキンボックスと前記回転軸の間にスリーブを介在させることにより、前記被処理物が漏出する隙間を狭くしたことを特徴とする撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造。
【請求項2】
互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能にジャケット内に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、前記ジャケット内及び前記撹拌翼内に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造であって、
排出口側の堰板を貫通するように配置された前記回転軸の周囲に前記堰板と別体とされて、当該堰板に着脱可能に固定された排出口側パッキンボックスを配置すると共に、前記排出口側パッキンボックスと前記回転軸の間にスリーブを介在させることにより、前記被処理物が漏出する隙間を狭くしたことを特徴とする撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造。
【請求項3】
請求項2に記載の撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造において、
前記排出口側パッキンボックスと前記スリーブとの間に1又は複数の排出口側グランドパッキンを配置したことを特徴とする撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造において、
前記堰板と前記排出口側グランドパッキンとの間の所定位置から前記排出口側パッキンボックス内へ注水を行う注水機構が設けられていることを特徴とする撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造。
【請求項5】
請求項4に記載の撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造において、
前記注水機構による注水は、100~500mL/分で行うことが可能とされていることを特徴とする撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造において、
粒子径が1~100μmである前記被処理物の漏出を防止したことを特徴とする撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造に関し、さらに詳しくは、ジャケット内に投入した被処理物が撹拌翼軸の周囲から外部へ漏出することを防止した撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥、し尿汚泥、活性汚泥等は、水分が多く資源化や処分に際して問題となるため、乾燥を施して減量および資源化を図っている。また、森林保全のために間伐された間伐採(=林地残材)等は、そのままでは水分が多くバイオマス燃料等に利用することができない。そこで、木質チップ(木材チップ)にした後、乾燥が施される。このような汚泥や木質チップの乾燥には、例えば、ウェッジスタイルドライヤー(「撹拌翼付乾燥機」ともいう。)が用いられている。この種の撹拌翼付乾燥機として、例えば、特許文献1に示すものがある。
【0003】
図8は、従来の撹拌翼付乾燥機を示す正面図である。図示された撹拌翼付乾燥機100は、水平配置された横長のジャケット(又はケーシング)101を備え、ジャケット101は支持部材107によって床面に支持されている。ジャケット101には乾燥対象となる被処理物をジャケット101内に供給するための供給口102、乾燥後の被処理物を排出する排出口103、加熱された熱媒体の注入口104及び加熱蒸気供給口108が設けられ、ジャケット101の内部にはジャケット101を長手方向に貫通するようにして2つの回転軸105が並列に配置されている。各回転軸105は、それぞれに対応して配置された駆動源である駆動機構106によって回転駆動されるようになっている。そして、各回転軸105には複数の撹拌翼(図示せず)がそれぞれ所定間隔に取り付けられている。このように構成された撹拌翼付乾燥機100は、供給口102から被処理物を投入し、加熱された熱媒体、例えば加熱蒸気を注入口104から各回転軸105を介して図示しない撹拌翼内に供給すると共に、加熱蒸気供給口108から二重構造とされたジャケット101の空洞に供給することにより被処理物の加熱乾燥を行うようになっている。
【0004】
供給口102側の回転軸105には、図9(a)に示すように、ジャケット101の側板である鏡板101aと一体化されたパッキンボックス110が配設され、排出口103側に設けられた回転軸105には、図9(b)に示すように、逆ネジ部122及びシールボックス部120aとパッキンボックス部120bを備えたシールボックス120が配設されている。尚、パッキンボックス部120bはシールボックスとしての機能も備えている。そして、パッキンボックス110の内部には円筒状のグランドパッキン112が配置され、シールボックス部120aには円筒状のシートパッキン121が配置されている。尚、符号111はパッキン押さえである。パッキンボックス110及びシールボックス120は、ジャケット101内に投入された被処理物が回転軸105に沿って外部に漏出するのを防止するために設けられている。逆ネジ部122は回転軸105と堰板109の間の隙間を通って漏出する被処理物をジャケット101内側に戻すことにより被処理物の漏出の防止を図るものである。シールボックス120は逆ネジ部122のみでは被処理物の漏出を防止できない場合があったことから別途設けられたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-9876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した構成の撹拌翼付乾燥機を用いて、銅等の金属を含有し、且つ水分含有率が高く粒子の小さいスラッジ状の被処理物の乾燥を行ったところ、パッキンボックス110側では、図9(a)の矢印Eに示すような経路で回転軸105に沿うようにしてパッキンボックス110内のグランドパッキン112を通過して被処理物の漏れが発生し、シールボックス120側では、図9(b)の矢印Fに示すような経路で回転軸105に沿うようにして逆ネジ部122、シールボックス120内のシートパッキン121を通過して乾燥後の被処理物の漏れが発生した。加えて、パッキンボックス110及びシールボックス120からの被処理物の漏出によってグランドパッキン112及びシートパッキン121が劣化し、さらに漏出が酷くなることが判明した。この場合、グランドパッキン112及びシートパッキン121の交換が必要となるが、グランドパッキン112においては、供給口102側のジャケット101の鏡板101aとパッキンボックス110が溶接によって一体とされており、パッキンボックス110を容易に取り外すことができない構造であり、グランドパッキン112の周辺で被処理物が固化している場合には全てのグランドパッキン112の交換ができないという問題があった。パッキンボックス110やシールボックス120から被処理物が漏出すると作業環境が著しく悪化すると共に周辺設備の故障を引き起こすという問題がある。また、乾燥した被処理物が撹拌翼付乾燥機外に漏出してしまうと撹拌翼の上部まで保持できず、撹拌翼にスラッジが直接接して鋳付きが成長するため電動機への負荷が大幅に上昇して定格操業/安定操業ができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、ジャケット内に投入した被処理物が外部へ漏出するのを防止すると共に、グランドパッキンの交換作業を簡便に行えるようにした撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1に記載の本発明は、互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能にジャケット内に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、前記ジャケット内及び前記撹拌翼内に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造であって、投入口側の鏡板を貫通するように配置された前記回転軸の周囲に配置された1又は複数の投入口側グランドパッキンと、前記回転軸の周囲に取り付けられて前記投入口側グランドパッキンを保持する投入口側パッキンボックスとを備え、前記投入口側パッキンボックスは前記鏡板と別体とされて、当該鏡板に着脱可能に固定されており、排出口側の堰板を貫通するように配置された前記回転軸の周囲に前記堰板と別体とされて、当該堰板に着脱可能に固定された排出口側パッキンボックスを配置すると共に、前記排出口側パッキンボックスと前記回転軸の間にスリーブを介在させることにより、前記被処理物が漏出する隙間を狭くしたことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するため請求項2に記載の本発明は、互いに平行に配置された少なくとも2本の回転軸を互いに反対方向へ回転可能にジャケット内に配置し、前記回転軸には所定の間隔を有して撹拌翼をそれぞれ複数配置すると共に、一方側の回転軸に取り付けられた撹拌翼と他方側に取り付けられた撹拌翼が交互に位置するように配置され、前記ジャケット内及び前記撹拌翼内に加熱された熱媒体を供給することにより被処理物を加熱乾燥する撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造であって、排出口側の堰板を貫通するように配置された前記回転軸の周囲に前記堰板と別体とされて、当該堰板に着脱可能に固定された排出口側パッキンボックスを配置すると共に、前記排出口側パッキンボックスと前記回転軸の間にスリーブを介在させることにより、前記被処理物が漏出する隙間を狭くしたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するため請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造において、前記排出口側パッキンボックスと前記スリーブとの間に1又は複数の排出口側グランドパッキンを配置したことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するため請求項4に記載の本発明は、請求項2又は3に記載の撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造において、前記堰板と前記排出口側グランドパッキンとの間の所定位置から前記排出口側パッキンボックス内へ注水を行う注水機構が設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため請求項5に記載の本発明は、請求項4に記載の撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造において、前記注水機構による注水は、100~500mL/分で行うことが可能とされていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため請求項6に記載の本発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造において、粒子径が1~100μmである前記被処理物の漏出を防止したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造によれば、ジャケットに投入した被処理物が外部へ漏出しないようにすることができ、設備の健全性を維持し設備の稼働率を向上させることが可能になるという効果がある。また、グランドパッキンの全数交換が容易となり、常に漏出防止を図ることができるという効果がある。さらに、被処理物の漏出が防止されるので被処理物を撹拌翼の上部まで保持することが可能となり、例えば、スラッジ状の高水分原料を乾燥機内に供給して撹拌翼で撹拌する際に発生する被処理物の抵抗を緩和し、電動機過負荷を防止して安定操業を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る撹拌翼付乾燥機の一実施形態を示す平面図である。
図2図1に示す撹拌翼付乾燥機のB-B断面図である。
図3図1に示す撹拌翼付乾燥機の側面断面図である。
図4図1に示すA部の詳細を示す拡大図である。
図5】撹拌翼の翼片の詳細を説明する図である。
図6】投入口側から5枚目までの各翼片の各取付角度を示す説明図である。
図7】本発明に係る撹拌翼付乾燥機のシール構造の一実施形態を示し、(a)は投入口側のシール構造を示す正面断面図、(b)は排出口側のシール構造を示す正面断面図である。
図8】従来の撹拌翼付乾燥機を示す正面図である。
図9】従来の撹拌翼付乾燥機の回転軸の両端における被処理物漏れを示し、(a)は乾燥機の投入口側の漏れを示す説明図、(b)は乾燥機の排出口側の漏れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[撹拌翼付乾燥機の構成]
以下、本発明に係る撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。初めに撹拌式乾燥機の構成について説明し、その後に本発明に係る撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造について説明する。図1は本発明に係る撹拌翼付乾燥機の一実施形態を示す平面図、図2図1に示す撹拌翼付乾燥機のB-B断面図、図3図1に示す撹拌翼付乾燥機の側面断面図である。
【0017】
図示された撹拌式乾燥機1は、概略として、水平に配置された横長のジャケット(又はケーシング)2と、ジャケット2の内部を貫通するように並列に配置された2つの回転軸3a,3bと、回転軸3a,3bのそれぞれに所定間隔に取り付けられた複数(本実施形態では、回転軸3a側に22基、回転軸3b側に23基)の撹拌翼(ウェッジ)4(4-1~4-45)と、回転軸3a,3bの駆動源である駆動機構5a,5bと、ジャケット2の後端(図1では右側端)に配設された堰板6と、ジャケット2を支持する支持部材7を備えて構成されている。
【0018】
ジャケット2は、例えば金属製であり、図3に示すように、下部側が撹拌翼4-1~4-22及び撹拌翼4-23~4-45の形状に即して断面が円弧状をした略W字形状に形成されると共に、その内部は密封構造とされている。そして、図2に示すように、ジャケット2の一端側(図2では左側)の上部には被処理物の投入口2aが設けられ、他端側(図2では右側)には堰板6が配置されると共に、堰板6の上部に排出口2eが設けられている。そして、堰板6の上部高さ位置は撹拌翼4の高さ位置よりも高い位置とされている。これにより、操業の初めに全ての撹拌翼4-1~4-45の上部が隠れる高さとなるまでジャケット2内に半乾燥状態の被処理物を保持させることで、投入口2aから投入された新たな被処理物が撹拌翼4の表面に直接接触するのを防止して、撹拌翼4の表面で鋳付きが成長するのを防止したものである。尚、堰板6の上部高さ位置は、被処理物を撹拌翼4-1~4-45の回転中心から上端までの長さの80%以上、好ましくは95%以上の高さ、さらに好ましくは上端の高さまで満たすことができる高さを確保できれば撹拌翼4の表面の鋳付きの成長を防止することは可能である。また、ジャケット2は二重構造とされていると共に、ジャケット2の両側面にはそれぞれ加熱蒸気供給口2f,2fが複数設けられ、加熱蒸気供給口2f,2fから加熱蒸気をジャケット2の空洞内に供給することによりジャケット2内の被処理物の加熱乾燥を促進する。そして、ジャケット2の底部には複数(図2では3つ)のドレン排出口2c,2cが取り付けられており、加熱蒸気供給口2f,2fから供給された加熱蒸気が冷却された後のドレンを排水するようになっている。さらに、排出口2eの近傍には加熱エア供給口2bが設けられると共に、ジャケット2の上部の途中位置にはジャケット2内に導入された加熱エアと被処理物を乾燥させる際に発生する蒸気を図示しない集塵装置へ導くための排気ダクト2d(図2参照)が接続されている。そして、排気ダクト2dと図示しない集塵装置とは図示しない導管によって連結されており、導管の少なくとも集塵装置の手前及び集塵装置にはいわゆるスチームトレースが設けられている。被処理物を乾燥させる際に発生する蒸気によって乾燥装置内部や図示しない集塵装置が結露するのを防止するためである。尚、スチームトレースは導管の少なくとも集塵装置の手前又は集塵装置のいずれか一方に設けることもできる。スチームトレースによって図示しない集塵装置内の温度が露点温度以下に低下するのを防止する。集塵装置内の温度が露点温度以下になると結露によって集塵装置の濾布が濡れてしまい、濾布による圧損が急上昇して操業不可になるからである。
【0019】
回転軸3a,3bは、内部が中空状とされてその内部に蒸気供給口2g,2gを介して加熱蒸気(例えば、0.5~0.6MPaの加熱蒸気)が導入可能に形成されており、回転軸3a,3b内に導入された加熱蒸気はさらに、後述するように、撹拌翼4-1~4-45の内部に導入されるようになっている。被処理物が加熱蒸気によって加熱された回転軸3a,3b及び撹拌翼4-1~4-45と接触することにより被処理物の乾燥が行われる。尚、蒸気供給口2g,2gは、内部に複数の流路を備えたロータリージョイントによって形成されており、回転軸3a,3b及び撹拌翼4-1~4-45に導入された加熱蒸気が熱交換されることにより生じた水分は再び蒸気供給口2g,2gを介して排水される。乾燥された被処理物は、堰板6の上部に設けられた排出口2eからオーバーフローするようにして排出され、排出シュート2h(図2参照)を介して密閉式の搬送装置、例えば、フローコンベアによって搬出されるように構成されている。その理由は、解砕・乾燥された乾燥品の粒子径が1~100μmと極めて細かい場合にはベルトコンベア等の開放系のコンベアによる搬送では乾燥品が飛散したり、落鉱が極めて多くなって搬送不良が生じるおそれがあるからである。
【0020】
回転軸3a,3bはそれぞれ両端側が軸受けによって回転可能に軸支されている。そして、図6に示すように、回転軸3aは時計方向に回転し、回転軸3bは反時計方向に回転するようになっている。すなわち、回転軸3a,3bは駆動機構5a,5bによって互いに逆方向で、且つ、同一速度で回転するように駆動されようになっている。そして、図1に示すように、本実施形態では各回転軸3a,3bにそれぞれ取り付けられて2列に配置された撹拌翼4-1~4-45は回転軸3a側が22基(4-1~4-22)で、回転軸3b側が23基(4-23~4-45)となっている。平面方向から見ると、撹拌翼4-1~4-22と撹拌翼4-23~4-45とがジャケット2の中央側で一部が交互に千鳥状に重なるようにして配置されている。
【0021】
撹拌翼4-1~4-45は、それぞれ同一の形状とされ、円盤状の2箇所の一部に切欠部8,8によって扇形に形成された一対の翼片4a,4b及び翼片4c,4dを備えて形成されている。翼片4a~4dは、内部が中空構造とされ、回転軸3a,3bに導入された加熱蒸気が内部に導入されて加熱されるようになっている。また、翼片4a~4dは、図5に示すように、回転方向側端部を厚く、回転方向逆側端部を薄くしたテーパー状とされており被処理物の解砕及び撹拌力を増加できる形状とされている。また、図3に示すように、撹拌翼4-1~4-22は、回転軸3a側においては翼片4a,4bの2枚を同一円周上に対向配置されており、同様に、撹拌翼4-23~4-45は、回転軸3b側においては翼片4c,4dの2枚を同一円周上に対向配置させた構成になっている。そして、撹拌翼4-1~4-45の翼片4a~4dは切欠部8の設けられた位置が軸方向から見て所定枚数(本実施形態では4枚)において重ならないように異なる位置に配置されている。
【0022】
切欠部8を形成する外縁部には補助翼20が取り付けられている。補助翼20は、被処理物を乾燥した乾燥物が固まらないように解砕すると共に、被処理物を出口側へ送り出したり入口側へ戻したりして被処理物をジャケット2内に所定時間保持して乾燥を促進するために設けられている。補助翼20は金属製の板部材を90°に折り曲げた略L字状の補助翼片20a,20aを2個一対として翼片4a~4dに形成した切欠部8における回転方向の前端側の縁部の外周部に位置する外周端縁部に設けられた補助翼取付座12にボルト13,13及びロックナットによって固定することによって取り付けられている。そして、補助翼20は翼片4a~4dの板面に対して各々所定の傾斜角度θで取り付けられている。
【0023】
翼片4a~4dの回転軸3a,3bへの取り付け角度は、本実施形態の場合、図6に示すようになっている。図6では回転軸3aに撹拌翼4-1~4-5の5枚目まで、そして、回転軸3bに撹拌翼4-23~4-27の5枚目までの各翼片4a~4dの取付角度を示している。そして、回転軸3a側においては、撹拌翼4-1~4-4の翼片4a,4bが水平位置(9時の位置)から半時計方向へ15°、60°、105°、150°というように角度をずらして取り付けられ、撹拌翼4-5~4-22は撹拌翼4-1~4-4の取り付けの繰り返しとなる。また、回転軸3b側においては、撹拌翼4-23~4-26の翼片4c,4dが12時の位置から時計方向へ15°、60°、105°、150°というように角度をずらして取り付けられ、撹拌翼4-27~4-45は撹拌翼4-23~4-26の取り付けの繰り返しとなる。このように、補助翼20の取り付け方向がそれぞれ相違するので被処理物の破砕や撹拌が十分に行われると共に、被処理物を投入口2a側から排出口2e側へ送り出すと共に反対側へ戻す動きを与える撹拌翼4の作用がさらに補助される。尚、補助翼20は、被乾燥物の粘着性の度合等に応じて適宜、最適な大きさ、形状及び傾斜角等のものを選定することができる。
【0024】
駆動機構5a,5bは、回転軸3a,3bのそれぞれに対応して同一構成のものが配置されている。ここで、回転軸3a側の駆動機構5aの構成について説明すると、図2に示すように、駆動源であるモーター5a-1と、モーター5a-1の回転数を調整する減速装置5a-2と、減速装置5a-2の回転出力を回転軸3aに伝達する伝達部材5a-3とを備えて構成されている。
【0025】
堰板6は、ジャケット2内に供給された被処理物をせき止め、被処理物が撹拌翼4-1~4-45の回転中心から上端までの長さの80%以上、好ましくは95%以上の高さ、さらに好ましくは上端の高さ(図2のYレベルを越える高さ)まで満たされるように保持するための部材である。被処理物を撹拌翼4-1~4-45の回転中心から上端までの長さの少なくとも80%以上の高さまで保持できれば、撹拌翼4-1~4-45への鋳付き防止及び駆動機構5a,5bの過負荷の発生を防止することができる。堰板6の寸法・形状は図3に示すジャケット2の内部形状相当であるが、上端の高さは少なくとも撹拌翼4-1~4-45が投入された被処理物によって隠れる高さ以上とされ、撹拌翼4-1~4-45の上部高さよりも上方とされている。尚、堰板6の使用材料は、撹拌翼4-1~4-45によって乾燥品の押し出し圧に耐えられるもの、例えば鉄系等の金属を用いることができる。
【0026】
支持部材7は、ジャケット2を所定の高さに維持するための構造体であり、所望の強度を有する鋼管、形鋼等を組み合わせて構築されている。
【0027】
[撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造]
次に、本発明に係る撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造について説明する。図7は本発明に係る撹拌翼付乾燥機のシール構造の一実施形態を示し、(a)は投入口側のシール構造を示す正面断面図、(b)は排出口側のシール構造を示す正面断面図である。すなわち、図7(a)は図2に示す符号Gの近傍を示し、図7(b)は図2に示す符号H近傍を示している。また、ここでは、回転軸3a側についてのみ示しているが、回転軸3b側も同じ構成となっている。図7(a)に示すように、投入口2a側に配置された投入口側パッキンボックス15は鏡板14と別体とされ、鏡板14にボルト16によって着脱可能に固定されている。これにより、投入口側パッキンボックス15は、ジャケット2から自由に取り外せる構造となっている。そして、投入口側パッキンボックス15の下部には、数巻(本実施形態では4巻)の円筒状の投入口側グランドパッキン17a,17aが並列配置され、被処理物(半乾燥物)の外部への漏れ防止を図っている。
【0028】
一方、出口側のシール構造は、図7(b)に示すように、回転軸3a(3b)の周囲を取り巻くようにして鋼板又は耐磨耗鋼板によって形成された円筒状のスリーブ19が配設されている。スリーブ19は、図7(b)に示すスリーブ取付部22を被覆するようにして配置されている。そして、スリーブ19の外側には堰板6に着脱可能に固定された排出口側パッキンボックス18が配置されている。排出口側パッキンボックス18と回転軸3a(3b)の間にスリーブを介在させることにより、回転軸3a(3b)の回転を阻害しない範囲で被処理物が漏出する隙間ができるだけ狭くなるようにしている。そして、排出口側パッキンボックス18とスリーブ19との間には数巻(本実施形態では3巻)の排出口側グランドパッキン17b,17bが配設されている。尚、スリーブ19と排出口側パッキンボックス18の最適クリアランスは被処理物によっては異なる場合があり、銅等の金属を含有し、且つ水分含有率が高く粒子の小さい(例えば、1~100μm)スラッジ状の被処理物の場合には3~5mm程度である。排出口側パッキンボックス18は、堰板6とは別体にされ、堰板6に着脱可能に固定されているので排出口側グランドパッキン17b,17bの全巻の交換も容易に行うことができる。
【0029】
被処理物が非常に細かい場合には上記のような出口側のシール構造であっても排出口側グランドパッキン17b,17bを通り抜けてしまう場合がある。そのため、排出口側パッキンボックス18とスリーブ19との間に水を供給するための注水機構30が設けられている。排出口側パッキンボックス18とスリーブ19との間を通って排出口側グランドパッキン17b側へ漏出してくる乾燥状態の被処理物に水分を含ませることにより被処理物をペースト状にして流動性を低下させることで、回転軸3a(3b)と堰板6の隙間から排出シュート2hへの漏出を防止する。つまり、スリーブ19と排出口側パッキンボックス18との間にペースト状の被処理物を介在させることにより半乾燥状態又は乾燥状態の被処理物の漏出を防いでいる。尚、注水が少なすぎると排出口側パッキンボックス18から半乾燥状態又は乾燥状態の被処理物が漏出するおそれがあるが、逆に、注水機構30による注水が多すぎると水が図示しない排出シュート2hに流れ込んでしまい、排出シュート2hに落下してくる乾燥品が鋳付いて閉塞してしまうおそれがある。そのため、被処理物の漏出を防止すると共に乾燥品の鋳付きが生じないようにするためには注水機構30による注水を100~500(mL/分)とすることが好ましい。
【0030】
[本発明に係る撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造の動作]
次に、上述した撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造の動作について説明する。本実施形態における被処理物の性状は、水分含量が30~70質量%、銅品位が5~50質量%、嵩比重が1.2~2.0、粒子径が1~100μmのスラッジ状のものである。
【0031】
初めに、回転軸3a,3bを介して加熱蒸気を撹拌翼4-1~4-45内に導入すると共に、加熱蒸気供給口2f,2fを介してジャケット2内に加熱蒸気を導入し、さらに駆動機構5a,5bを駆動して撹拌翼4-1~4-45を所定速度(例えば、15~30rpm)で回転駆動させ、投入口2aから被処理物をジャケット2内に投入する。このときの被処理物の投入速度は定格(例えば、3.0wt/h)の1/3以下の投入速度で投入する。定格の1/3の速度より早い投入速度で投入すると、被処理物が撹拌翼4-1~4-45に鋳着いてしまい、撹拌翼4-1~4-45から離れなくなり、乾燥効率が著しく低下すると共に鋳付きの除去に手間がかかるからである。尚、ジャケット2内には、排ガス中に多量の水分が含まれるため、排ガス処理設備や排ガスダクトの結露防止のために蒸気圧0.5~0.6MPaの蒸気で熱交換された加熱蒸気を加熱蒸気供給口2f,2fを介して導入することでジャケット2内部が露点温度以下とならないようにしている。また、スチームトレースによって少なくとも集塵装置内を80℃以上に維持しているので集塵装置の濾布が結露によって濡れて圧損が急上昇して操業不可となるのを防止している。
【0032】
ジャケット2内に投入された被処理物は、回転している撹拌翼4-1~4-45及び補助翼20によって順次撹拌されながら後段へ移動し、その過程で乾燥処理が行われる。この過程では、乾燥中の被処理物の高さ位置が撹拌翼4-1~4-45の上部が隠れる高さとなるまで半乾燥を行う。この過程において、特に撹拌翼4-1~4-10及び撹拌翼4-23~4-32の補助翼20には大きな負荷がかかり、ボルト13,13にも強い力(剪断力)が加わるが、少なくとも投入口から10枚目までの撹拌翼4-1~4-10及び撹拌翼4-23~4-32の補助翼20にはボルト13,13としてSUS316L:M16を用いることでボルト13,13の破断が防止され、補助翼20の脱落も発生することがない。半乾燥工程では被処理物の水分含量が20質量%以上、30質量%未満となるように被処理物の乾燥を行う。半乾燥を行うのは撹拌翼4-1~4-45への鋳付き防止及び駆動機構5a,5bの過負荷軽減のためである。このような半乾燥工程を継続することによりジャケット2内には半乾燥品が堆積し、最終的に撹拌翼4-1~4-45の上端が隠れるレベルに到達するまで半乾燥を行う。半乾燥工程において、上述したように、投入口2a側では投入口側グランドパッキン17aによって被処理物の漏出が防止され、排出口2b側ではスリーブ19と排出口側パッキンボックス18との間の隙間が狭く、また、排出口側グランドパッキン17b及び注水機構30による注水により被処理物の漏出が防止される。
【0033】
半乾燥品が撹拌翼4-1~4-45が隠れる高さまでジャケット2内に貯えられたら、被処理物の投入速度を定格の投入速度(例えば、3.0wt/h)の80~100%の投入速度で定格操業に移行する。乾燥工程では、被処理物の水分含量が15質量%以上、20質量%未満となるように乾燥を行う。被処理物の水分含量が15%未満となるような完全乾燥を行うと被処理物の粒度が細かいことから、乾燥品貯留鉱区やその後の運搬などの際に酷い発塵を生じることで作業環境の悪化を招いたり、設備寿命を著しく短くする等の不具合を招くおそれがある。そのため、水分含量が20質量%以上、30質量%未満の半乾燥品の状態で一旦ジャケット2内に保持し、その後、乾燥工程によって被処理物の水分含量が15質量%以上、20質量%未満となるように乾燥を行う。乾燥工程においても、上述したように、投入口2a側では投入口側グランドパッキン17aによって被処理物の漏出が防止され、排出口2b側ではスリーブ19と排出口側パッキンボックス18との間の隙間が狭く、また、排出口側グランドパッキン17b及び注水機構30による注水により被処理物の漏出が防止される。このような構造は被処理部の粒子径が小さい(例えば、1~100μm)場合に特に有効である。そして、乾燥工程において撹拌翼4-1~4-45の回転によって解砕されて乾燥された乾燥品は、堰板6の上端をオーバーフローして排出シュート2hへ落下し、さらに密閉式のフローコンベアによって所定の場所へ運ばれる。そして、操業の継続により投入口側グランドパッキン17a,17aが摩耗した場合でも、投入口側パッキンボックス15は鏡板14と別体となっているため投入口側パッキンボックス15を鏡板14から取り外すことで全条の投入口側グランドパッキン17aを簡単に交換することができる。また、排出口側グランドパッキン17b,17bが摩耗した場合でも排出口側パッキンボックス18は堰板6と別体となっているため排出口側パッキンボックス18を堰板6から取り外すことで全条の排出口側グランドパッキン17b,17bを簡単に交換することができる。
【0034】
以上のように、好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る撹拌翼付乾燥機における回転軸のシール構造は上記実施例に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々な変形が可能である。また、高水分率、高嵩比重であれば含銅スラッジ以外の被処理物にも幅広く適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 撹拌翼付乾燥機
2 ジャケット
2a 投入口
2b 加熱エア供給口
2c ドレン
2d 導管
2e 排出口
2f 加熱蒸気供給口
2g 蒸気供給口
2h 排出シュート
3a,3b 回転軸
4-1~4-45 撹拌翼
4a~4d 翼片
5a,5b 駆動機構
5a-1 モーター
5a-2 減速装置
5a-3 伝達部材
6 堰板
7 支持部材
8 切欠部
12 補助翼取付座
13 ボルト
14 鏡板
15 投入口側パッキンボックス
16 ボルト
17a 投入口側グランドパッキン
17b 排出口側グランドパッキン
18 排出口側パッキンボックス
19 スリーブ
20 補助翼
20a 補助翼片
22 スリーブ取付部
30 注水機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9