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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】基板吸着装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20220721BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H01L21/68 P
B23Q3/08 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018101453
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019186509
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2018066741
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】井出 悟
(72)【発明者】
【氏名】三井 貴彦
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-084643(JP,A)
【文献】特開平11-245163(JP,A)
【文献】特開2016-004909(JP,A)
【文献】特開2011-071472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B23Q 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャックの上面に基板を吸着させる基板吸着装置であって、
前記真空チャックの上面に載置された前記基板に上方から当てられる非通気性のシートと、
前記シートの周縁部を支持して前記真空チャックの周縁部近傍に上方から当接する貼付ハウジングと、
前記貼付ハウジングを上下方向に移動させる往復動装置と、
前記真空チャックと前記基板との間から気体を吸引する第1の真空ラインと、
前記真空チャックと前記シートとの間から気体を吸引する第2の真空ラインと、を具備し、
前記貼付ハウジングは、本体部と、前記本体部に下方から着脱可能に取り付けられたシート支持部と、を有し、
前記シートは、前記本体部と前記シート支持部に挟まれて固定されており、
前記第2の真空ラインは、前記貼付ハウジングを貫通し、
前記第2の真空ラインの吸引口は、前記シート支持部に形成されていることを特徴とする基板吸着装置。
【請求項2】
前記真空チャックまたは前記貼付ハウジングの周縁部近傍には、前記基板を囲み前記真空チャックと前記貼付ハウジングに当接する外周シールが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板吸着装置に関し、特に、反りのある大型実装基板(PLP)を真空チャックに吸着する基板吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反りのある半導体基板を真空チャック等に吸着する方法として、半導体基板を真空チャックに押し付けて吸着する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、大きな反りが発生しやすい基板をステージに吸着保持させる基板保持方法として、押圧手段によって基板の吸着部位を複数の領域に区分された基板保持面に押し付けて吸着させる基板保持方法が開示されている。同文献の基板保持方法では、押圧手段としてガス噴射装置が用いられており、乾燥空気、窒素ガス、希ガス等のガスを基板の上面に向かって噴射することにより、基板が基板保持面に押し付けられる。
【0004】
また例えば、特許文献2に開示された半導体ウエハの吸着方法は、反りが発生している半導体ウエハを吸着テーブルの上面に載置し、フィルムを半導体ウエハ及びその周囲における吸着テーブルを覆うように載置するものである。そして、吸着テーブルの吸引孔によって空気が吸引されると、フィルム下が減圧状態となり、フィルムで半導体ウエハが全面的に押さえ付けられ、半導体ウエハは、その反りが矯正されて吸着テーブルの上面に吸着される。
【0005】
また例えば、反りのある半導体基板を真空チャック等に吸着する方法として、マウンターリング等に半導体基板を貼り付けてから真空チャックに吸着させる方法や、ゴム風船状の空気枕等によって半導体基板の全面を押し付ける方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-197707号公報
【文献】特開2012-84643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術による基板の吸着方法では、大型実装基板を高精度に貼付するために、改善すべき問題点があった。
【0008】
例えば、特許文献1に開示された従来技術のように、ガスを噴射して基板保持面に基板を押し付けて吸着させる方法では、大型の基板を吸着保持するためには、多数の領域に区分された基板保持面が必要になる。そして、区分された多数の領域にガスを噴射するためには、複雑な仕様のガス噴射装置等が必要になる。また、基板に複数回ガスを噴射する必要があるので、基板の全体が吸着されるまでに長い時間を要する。
【0009】
また、特許文献2に開示された従来技術のように、吸着テーブルの吸引孔のみによってフィルムを吸引する方法では、吸引が不十分であり、大型の基板の反りを矯正することが難しい。
【0010】
また、マウンターリングに基板を貼り付けてから真空チャックに吸着させる方法では、マウンターリングのシートと真空チャックとの間にテープが介在するため、基板の研削の加工精度が良くない。また、基板を抑えるためのフィルムやテープが消耗品となるため、基板加工の生産性が低くなってしまう。
【0011】
また、ゴム風船状の空気枕等によって半導体基板の全面を押し付ける方法では、面積の大きな基板を押し付ける場合、基板やそれを押圧するための装置に対して圧力による反力が大きくなる。そのため、基板及び空気枕等を抑えるために高強度の構造物が必要となり、装置全体が大きくなってしまうという問題点があった。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易的な構造で、大面積の基板を高精度に貼付することが可能な生産性の高い基板吸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の基板吸着装置は、真空チャックの上面に基板を吸着させる基板吸着装置であって、前記真空チャックの上面に載置された前記基板に上方から当てられる非通気性のシートと、前記シートの周縁部を支持して前記真空チャックの周縁部近傍に上方から当接する貼付ハウジングと、前記貼付ハウジングを上下方向に移動させる往復動装置と、前記真空チャックと前記基板との間から気体を吸引する第1の真空ラインと、前記真空チャックと前記シートとの間から気体を吸引する第2の真空ラインと、を具備し、前記貼付ハウジングは、本体部と、前記本体部に下方から着脱可能に取り付けられたシート支持部と、を有し、前記シートは、前記本体部と前記シート支持部に挟まれて固定されており、前記第2の真空ラインは、前記貼付ハウジングを貫通し、前記第2の真空ラインの吸引口は、前記シート支持部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の基板吸着装置によれば、真空チャックの上面に基板を吸着させる基板吸着装置であって、真空チャックの上面に載置された基板に上方から当てられる非通気性のシートと、シートの周縁部を支持して真空チャックの周縁部近傍に上方から当接する貼付ハウジングと、貼付ハウジングを上下方向に移動させる往復動装置と、真空チャックと基板との間から気体を吸引する第1の真空ラインと、真空チャックとシートとの間から気体を吸引する第2の真空ラインと、を具備する。これにより、上方から基板に強い力を加えることなく、第1の真空ライン及び第2の真空ラインによる気体の吸引によって基板を真空チャックの上面に高精度に吸着させることができる。よって、基板を上方から強力に押圧する装置を設けることなく、簡易的な構造の装置で、大面積の基板を貼付する作業が可能となる。
【0015】
また、基板が真空チャックに吸着された後には、第2の真空ラインによる気体の吸引を停止してシートの下方に大気圧または低圧の圧空を供給し、貼付ハウジングを上昇させることにより、シートを損傷させることなく基板から容易に剥がすことができる。よって、損傷の少ないシートを繰り返し利用することができ、基板吸着工程について優れた生産性が得られる。
【0016】
また、本発明の基板吸着装置によれば、貼付ハウジングは、本体部と、その下方から着脱可能に取り付けられたシート支持部と、を有し、シートは、本体部とシート支持部に挟まれて固定されても良い。これにより、貼付ハウジングへのシートの着脱が容易になり、シートが破損した際等にシートを容易に取り替えることができる。
【0017】
また、本発明の基板吸着装置によれば、第2の真空ラインは、貼付ハウジングを貫通し、第2の真空ラインの吸引口は、シート支持部に形成されても良い。これにより、真空チャックに吸着された基板を研削等の加工を行うために移動する際、第2の真空ラインを基板と共に移動させる必要がなくなる。そのため、第2の真空ラインを部品数が少なく組み立てが容易である簡易的な構造にすることができる。
【0018】
また、本発明の基板吸着装置によれば、真空チャックまたは貼付ハウジングの周縁部近傍には、基板を囲み真空チャックと貼付ハウジングに当接する外周シールが設けられていても良い。これにより、貼付ハウジングが真空チャックに定着した際に形成される空間の密閉性を高めることができ、第2の真空ラインによって空間を真空にすることができる。その結果、シートによって基板をしっかりと押さえることができ、大型の基板であっても反りを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る基板吸着装置を備えた研削装置の概略を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る基板吸着装置の真空チャックに基板が載せられた状態を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る基板吸着装置の貼付ハウジングが真空チャックに定置された状態を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る基板吸着装置のワークが真空チャックに吸着された状態を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る基板吸着装置の貼付ハウジングが上昇して基板の吸着が完了した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る基板吸着装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る基板吸着装置10を備えた研削装置1の概略を示す平面図である。なお、以下の説明では、図1において下方を研削装置1の前方、上方を研削装置1の後方と言う。
【0021】
図1を参照して、研削装置1は、基板等のワークWを研削または研磨する装置である。研削装置1に設けられた本発明の実施形態に係る基板吸着装置10は、反りのある大面積のワークWを真空チャック21(図2参照)に吸着することができる装置である。
【0022】
ワークWは、平面視略矩形状の形態をなす研削または研磨対象の半導体基板等であり、例えば、積層基板やWLP(Wafer Level Package)、WLPを更に大型化した大型実装基板のPLP(Panel Level Package)等であっても良い。
【0023】
研削装置1は、といし軸40と、コラム41と、基板吸着装置10と、テーブル20と、制御盤50と、を有する。といし軸40は、コラム41に支持されており、上下方向に移動可能に設けられている。
【0024】
といし軸40には、図示しない研削といしが回転自在に設けられており、ワークWの上面は、といし軸40に設けられた研削といしによって研削または研磨される。具体的には、図1に2点鎖線で示す研削位置Bにおいて、ワークWは、研削といしによって加工される。
【0025】
といし軸40の前方には、基板吸着装置10が設けられている。基板吸着装置10は、ワークWの反りを矯正し平らにするための装置である。基板吸着装置10が設けられていることによって、反りのあるワークWであっても、テーブル20に固定することができるのである。
【0026】
テーブル20は、研削装置1の前後方向に移動可能に設けられており、テーブル20の上面には、ワークWが載置され固定される。テーブル20の上面にワークWが吸引され固定される場合、または、吸引が解除されてワークWが取り外される場合、テーブル20は、前方に移動して貼付位置Aにある。詳しくは、テーブル20は、ワークWを貼付するための貼付ハウジング11の下方に位置する。
【0027】
他方、ワークWに対して研削または研磨の加工が行われる場合、テーブル20は、後方に移動して、といし軸40の下方近傍の研削位置Bにある。また、テーブル20は、略水平方向に回転自在に設けられても良い。これにより、ワークWを回転させながら研削または研磨を実行することができる。
【0028】
制御盤50は、各種情報を入力するための入力部や各種情報を表示するモニター、各種演算等を行う演算部等を有する。制御盤50は、入力された情報に基づき、各種演算を実行し、研削装置1全体における加工の監視及び制御等を行う。
【0029】
上記構成の研削装置1でワークWの研削加工等が行われる場合、先ず、基板吸着装置10のテーブル20は、貼付位置Aに移動する。次に、加工されるワークWが図示しないロボット等によってテーブル20の上方に載置される。そして、詳細については後述するが、ワークWは、テーブル20の上方にある真空チャック21の上面に吸着される。
【0030】
次に、テーブル20に固定されたワークWは、テーブル20と共に後方へ移動し、研削位置Bに置かれる。そして、といし軸40に設けられた研削といしによってワークWの上面が研削される。
【0031】
研削の加工が終了したワークWは、テーブル20と共に前方へ移動し、貼付位置Aに置かれる。そして、ワークWは、真空チャック21による吸着がなくなり、取り外し可能な状態になり、図示しないロボット等によって次の工程を行う装置へと運ばれる。以上のようにワークWの研削または研磨の工程が行われる。
【0032】
図2は、真空チャック21の上面にワークWが載置された状態を示す基板吸着装置10の断面図であり、特に、テーブル20が基板吸着装置10の下方の貼付位置A(図1参照)に位置している状態を示している。図2に示すように、基板吸着装置10は、真空チャック21と、貼付ハウジング11と、を有する。
【0033】
真空チャック21は、平面視略矩形状の形態をなし、テーブル20の上部に設けられている。真空チャック21は、上面側の中央近傍が上方に突出する略ハット状に形成されている。具体的には、真空チャック21の周囲近傍の面である上面21aと、真空チャック21の中央近傍の面である上面21cと、の間には、段差面21bが形成されており、中央近傍の上面21cは周囲近傍の上面21aよりも高くなっている。真空チャック21の上面21cは、ワークWが載置される面であり、ワークWを支持するために空気を吸引する吸引口23が複数形成されている。
【0034】
真空チャック21には、吸引口23に繋がる第1の真空ラインとしての真空ライン22が形成されている。真空ライン22は図示しない吸引装置に接続されており、該吸引装置が駆動することにより、吸引口23から空気が吸引される。これにより、ワークWは、真空チャック21の上面21cに吸着され固定される。なお、真空チャック21としてポーラス状の通気性のある材料を使用して、その上面にワークWを真空吸着できるようにしても良い。
【0035】
真空チャック21の上面21cの周囲近傍には、ワークWの吸着面の粗さによっては、内周シール24が設けられている。内周シール24は、ワークWの周縁部から空気が侵入することを防止するシール部材であり、ワークWの下面と真空チャック21の上面21cに当接するよう取り付けられている。
【0036】
内周シール24が設けられることにより、ワークWの外周からの空気侵入が防がれ、ワークWと真空チャック21との間には、良好な真空状態が得られる。そして、真空ライン22による空気の吸引によるワークWに対する吸着力が増し、反りのある大面積の基板を高精度に貼付することができる。
【0037】
なお、貼付ハウジング11には後述する外周シール18が設けられているので、基板吸着装置10は、内周シール24が設けられない構成を採用することも可能である。
【0038】
貼付ハウジング11は、真空チャック21の上面21a、21cを覆うことができる大きさであり、平面視略矩形状の略キャンバス状に形成されている。貼付ハウジング11の下部は開口しており、その開口の周縁部近傍は、真空チャック21の周囲近傍の上面21aに当接するように形成されている。
【0039】
貼付ハウジング11の上部には、貼付ハウジング11を上下方向に移動させる駆動装置として往復動装置30が接続されている。往復動装置30は、例えば、エアシリンダ32及びエアピストン31から構成される駆動装置である。なお、往復動装置30は、エアシリンダ32及びエアピストン31に限定されず、電動アクチュエータ等、その他の動力装置であっても良い。
【0040】
貼付ハウジング11は、平面視略矩形状に形成された本体部12と、本体部12に下方に設けられるシート支持部13と、本体部12とシート支持部13に挟まれたシート14と、を有する。
【0041】
シート支持部13は、貼付ハウジング11の下部開口の周縁部に設けられており、平面視略矩形枠状に形成されている。シート支持部13は、例えば、ボルト等の固定具17によって本体部12に対して着脱可能に固定されている。シート支持部13の下面13aは、真空チャック21の上面21aに当接し、シート支持部13の内周面13bは、真空チャック21の段差面21bに所定の隙間をもって嵌合するよう形成されている。
【0042】
シート14は、非通気性のシートであり、例えば、軟質の塩化ビニル樹脂シート材等によって形成されている。なお、シート14の材料は、軟質の塩化ビニル樹脂に限定されるものではなく、空気が漏れない材料であれば、その他の材料でも良い。
【0043】
シート14は、貼付ハウジング11の下部の開口を塞ぐように設けられている。具体的には、シート14は、その周縁部が本体部12とシート支持部13によって挟まれて固定されている。前述の通り、本体部12とシート支持部13は着脱可能であるので、貼付ハウジング11へのシート14の着脱は容易である。よって、シート14が破損した際等にシート14を容易に取り替えることができる。
【0044】
貼付ハウジング11には、第2の真空ラインとしての真空ライン15が設けられている。真空ライン15は、貼付ハウジング11を貫通し、真空ライン15の吸引口16は、シート14の下方のシート支持部13に形成されている。詳しくは、真空ライン15の吸引口16は、シート支持部13の内周面13bに形成されている。真空ライン15には、図示しない吸引装置が接続されており、該吸引装置によって、吸引口16から空気が吸引される。
【0045】
真空ライン15が貼付ハウジング11に設けられることにより、真空チャック21に吸着されたワークWを研削等の加工を行うために移動する際、真空ライン15をワークWと共に移動させる必要がなくなる。そのため、真空ライン15を部品数が少なく組み立てが容易である簡易的な構造にすることができる。
【0046】
シート支持部13の下面13a、即ち真空チャック21の周縁部近傍の上面21aに当接する部分には、空気が漏れない様に帯状の外周シール18が形成されている。外周シール18は、貼付ハウジング11が下降した際に、ワークWを囲み、真空チャック21と貼付ハウジング11に当接する空気漏れ防止のシール部材である。
【0047】
外周シール18が形成されることにより、貼付ハウジング11が真空チャック21に定着した際に形成される空間の密閉性を高めることができ、真空ライン15によって空間を真空にすることができる。その結果、シート14によってワークWを強く押さえることができ、大型の基板であっても反りを矯正することができる。なお、外周シール18は、真空チャック21の周縁部近傍に形成されても良いし、シート支持部13の周縁部近傍に形成されても良い。
【0048】
次に、図2ないし図5を参照して、小さな吸引口23が多数開けられた真空吸着用の真空チャック21に、反りのあるシート状のワークWを吸着する方法を説明する。
図3は、基板吸着装置10の貼付ハウジング11が真空チャック21に定置された状態を示し、図4は、基板吸着装置10のワークWが真空チャック21に吸着された状態を示し、図5は、基板吸着装置10の貼付ハウジング11が上昇してワークWの吸着が完了した状態を示している。なお、図4図5に示す矢印は、空気の流れる方向を示している。
【0049】
図2に示すように、初めに、真空チャック21の上面21cに反りのあるワークWが載置される。具体的には、ワークWは、図示しないロボット等によって真空チャック21の所定の位置に載置される。このとき、貼付ハウジング11は、往復動装置30によって引かれて上昇した状態であり、真空チャック21から離れている。
【0050】
ワークWが載置された後、図3に示すように、貼付ハウジング11は、往復動装置30によって押されて下降し、ワークWと真空チャック21を上方から覆うように真空チャック21に定置される。
【0051】
具体的には、貼付ハウジング11の内周面13bで囲まれた開口に、真空チャック21の段差面21bで囲まれた上面21c及びその上の置かれたワークWが嵌るように、貼付ハウジング11が下降する。そして、貼付ハウジング11の下面13aが真空チャック21の周縁部近傍の上面21aに密着する。
【0052】
前述のように、真空チャック21の中央近傍の上面21cは、真空チャック21の周縁部近傍の上面21aよりも高く形成される。そのため、下降した貼付ハウジング11のシート14をワークWの上面に当接させることができる。
【0053】
また、貼付ハウジング11が真空チャック21に定着されることにより、シート14の下面と、貼付ハウジング11のシート支持部13の内周面13bと、真空チャック21の上面21aと、段差面21bと、によって囲まれた空間が形成される。
【0054】
図4に示すように、貼付ハウジング11が真空チャック21に定着された後、シート14の下方の空間の空気が、真空ライン22及び真空ライン15によって吸引される。具体的には、初めに、真空チャック21の真空ライン22によって、吸引口23から空気が吸引される。これにより、ワークWと真空チャック21との間の空気が吸引され、ワークWは、真空チャック21の上面21cに吸着される。
【0055】
次に、貼付ハウジング11の真空ライン15によって、吸引口16からシート14の下方の空間の空気が吸引され、シート14の下方の空間が真空になる。これにより、シート14には、真空状態による吸着力が与えられ、シート14は、下方に向かって押さえ付けられる。
【0056】
そして、ワークWは、シート14と共に真空チャック21の上面21cに押し付けられる。これにより、ワークWは、反りが矯正され、平らな状態で真空チャック21に吸着され固定される。
【0057】
上記のように、真空ライン15によって空気を吸引してシート14を真空チャック21に押し付ける方法では、簡易的な構造の貼付ハウジング11だけで、大面積のワークWを真空チャック21に密着させることができる。このように、本発明の基板吸着装置10では、ワークWを吸着させるために、従来技術のような強力に押圧する装置を必要としない。
【0058】
その後、貼付ハウジング11の真空ライン15による吸引を停止して、真空チャック21とシート14との間に大気圧または低圧の圧空を供給する。その際、真空ライン22による吸引は停止されずに行われているので、ワークWは真空チャック21に貼り付けられた状態に維持される。真空チャック21の真空ライン22の圧力を確認し、ワークWが真空チャック21に完全に吸着されていることを確認する。
【0059】
そして、図5に示すように、往復動装置30によって貼付ハウジング11が上方に持ち上げられ、シート14とワークWが分離する。ワークWが真空ライン22によって吸引されて真空チャック21に貼り付けられた状態で貼付動作は完了となる。
【0060】
このように、基板吸着装置10を用いることにより、反りのあるワークWを平らにした状態で真空チャック21に固定することができ、ワークWの研削及び研磨の精度を高めることができる。また、真空チャック21とワークWの間にその他の貼付用シート等を設ける必要がないため、ワークWの生産費を削減し、生産性を高めることができる。
【0061】
また、ワークWが真空チャック21に吸着された後に真空ライン15による気体の吸引を停止してシート14の下方に大気圧または低圧の圧空を供給し、貼付ハウジング11を上昇させることにより、シート14を損傷させることなくワークWから容易に剥がすことができる。よって、損傷の少ないシート14を繰り返し利用することができ、基板吸着工程について優れた生産性が得られる。
【0062】
以上、本実施形態では、研削装置1に設けられた基板吸着装置10について説明したが、基板吸着装置10は、これに限定されるものではなく、その他の加工装置に設けられても良い。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 研削装置
10 基板吸着装置
11 貼付ハウジング
12 本体部
13 シート支持部
14 シート
15 真空ライン
16 吸引口
18 外周シール
20 テーブル
21 真空チャック
21a 上面
21b 段差面
21c 上面
22 真空ライン
23 吸引口
24 内周シール
30 往復動装置
40 といし軸
41 コラム
50 制御盤
図1
図2
図3
図4
図5