(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】発熱検知装置及び発熱検知システム
(51)【国際特許分類】
G01K 5/72 20060101AFI20220721BHJP
G01K 7/16 20060101ALI20220721BHJP
G01N 25/72 20060101ALI20220721BHJP
B60M 1/28 20060101ALN20220721BHJP
H02G 1/02 20060101ALN20220721BHJP
【FI】
G01K5/72
G01K7/16 M
G01N25/72 F
B60M1/28 R
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2018112815
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104064
【氏名又は名称】大熊 岳人
(72)【発明者】
【氏名】林 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】長澤 健太
(72)【発明者】
【氏名】片山 信一
(72)【発明者】
【氏名】山川 盛実
(72)【発明者】
【氏名】大澤 和寿
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康利
(72)【発明者】
【氏名】豊田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大石 真歩
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-153225(JP,A)
【文献】実開昭50-064243(JP,U)
【文献】実開平04-069742(JP,U)
【文献】特開2003-324802(JP,A)
【文献】特開2006-145478(JP,A)
【文献】実開平03-017894(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
G01N 25/00-25/72
B60M 1/28
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象物に装着されてこの検知対象物の発熱を検知する発熱検知装置であって、
前記検知対象物の外周部の周方向に間隔をあけて複数の検知箇所で、この検知対象物の発熱を検知する発熱検知部を備え、
前記発熱検知部は、
前記検知対象物の各検知箇所から熱を受けたときの抵抗値の変化量が異なる複数の抵抗体と、
前記複数の抵抗体の抵抗値の変化を検知する抵抗値変化検知部と、
前記検知対象物の各検知箇所から所定温度を超える熱を受けたときに開閉する複数の開閉部と、
前記複数の開閉部の開閉状態を検知する開閉状態検知部とを備えること、
を特徴とする発熱検知装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の発熱検知装置において、
前記複数の抵抗体は、直列接続されており、前記検知対象物の温度が上昇したときに抵抗値が指数関数的に増加又は低下し、
前記抵抗値変化検知部は、前記検知対象物の検知箇所毎に発熱による前記抵抗体の抵抗値の増加又は低下を検知し、
前記複数の開閉部は、前記複数の抵抗体毎に並列接続されており、前記検知対象物の各検知箇所から所定温度を超える熱を受けたときに閉じ、
前記開閉状態検知部は、前記検知対象物の各検知箇所の開閉部の閉状態を検知することによって、この検知対象物の発熱を検知すること、
を特徴とする発熱検知装置。
【請求項3】
検知対象物の発熱を検知する発熱検知システムであって、
請求項1
又は請求項
2に記載の発熱検知装置と、
前記発熱検知装置の検知結果を送信する送信装置と、
前記送信装置から送信される前記検知結果を受信する受信装置と、
を備える発熱検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検知対象物に装着されてこの検知対象物の発熱を検知する発熱検知装置、及び検知対象物の発熱を検知する発熱検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道では、電気車に電力を供給するために、この電気車が走行する線路に沿って電線路(電車線路)が設けられており、き電変電所からこの電車線にき電線によって電力を供給している。電車線設備のセンシングを行うにあたり、急務となるのがき電線破断の未然発見である。き電線の破断の原因の多くは、圧縮管(電線接続管)内部の腐食によって電気抵抗が高くなり、圧縮管出口付近のより線が溶断するものである。そのため、圧縮管内部の異常によって発生する腐食による発熱をセンシングする手法が求められてきた。従来、電線や接続箇所などの発熱による異常の確認は、示温ラベルによる表示、通電時の赤外線カメラによる観察又は目視検査が行われていた。
【0003】
従来の熱画像システムは、熱画像を撮像する撮像素子と、この撮像素子が出力する出力信号を変換して温度データを演算する変換演算回路と、この変換演算回路が出力する温度データを記憶するデータ記憶素子と、このデータ記憶素子が記憶する温度データを外部に送信する送信回路などを熱センサ装置が備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の熱画像システムでは、表示装置と熱センサ装置との間で通信をすることによって、熱センサ装置から表示装置に温度データを送信し、この温度データから温度分布画像を表示装置が生成し、この温度分布画像を表示装置が画面上に表示している。
【0004】
従来の示温ラベルは、予め設定された温度に達すると溶融を開始する着色ワックスと、この着色ワックスが浸み込みやすい材質のシートと、このシートを被覆する透明体などを備えている(例えば、特許文献2参照)。このような従来の示温ラベルでは、送電線などが異常発熱したときに着色ワックスが溶融を開始し、着色ワックスがシートに浸み込みこのシートを発色させることによって、巡回点検時に異常高温を知らせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の熱画像システムは、電線や接続箇所などが通電中でないときには温度上昇が確認できない問題点がある。また、従来の示温ラベルは、上昇温度が大きいときには表示が困難であるとともに、近接しないと表示を視認することが困難であり、はがれ易いなどの設置上の問題点がある
【0008】
この発明の課題は、検知対象物の発熱を確実に検知することができるとともに、検知対象物の発熱を容易に確認することができる発熱検知装置及び発熱検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、
図1、
図2、図4及び図17に示すように、検知対象物(F,C)に装着されてこの検知対象物の発熱を検知する発熱検知装置であって、前記検知対象物の外周部の周方向に間隔をあけて複数の検知箇所(P
1~P
6)で、この検知対象物の発熱を検知する発熱検知部(3)を備え、
前記発熱検知部は、前記検知対象物の各検知箇所から熱を受けたときの抵抗値の変化量(ΔR)が異なる複数の抵抗体(R
1
~R
6
)と、前記複数の抵抗体の抵抗値の変化を検知する抵抗値変化検知部(15)と、前記検知対象物の各検知箇所から所定温度(T
0
)を超える熱を受けたときに開閉する複数の開閉部(S
1
~S
6
)と、前記複数の開閉部の開閉状態を検知する開閉状態検知部(7)とを備えることを特徴とする発熱検知装置(2A,2B)である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項
1に記載の発熱検知装置において、
図17に示すように、前記複数の抵抗体は、直列接続されており、前記検知対象物の温度が上昇したときに抵抗値が指数関数的に増加又は低下し、前記抵抗値変化検知部は、前記検知対象物の検知箇所毎に発熱による前記抵抗体の抵抗値の増加又は低下を検知し、前記複数の開閉部は、前記複数の抵抗体毎に並列接続されており、前記検知対象物の各検知箇所から所定温度を超える熱を受けたときに閉じ、前記開閉状態検知部は、前記検知対象物の各検知箇所の開閉部の閉状態を検知することによって、この検知対象物の発熱を検知することを特徴とする発熱検知装置である。
【0011】
請求項3の発明は、
図1に示すように、検知対象物(F,C)の発熱を検知する発熱検知システムであって、請求項1
又は請求項
2に記載の発熱検知装置(2A,2B)と、前記発熱検知装置の検知結果を送信する送信装置(13)と、前記送信装置から送信される前記検知結果を受信する受信装置(14)とを備える発熱検知システム(1)である。
【発明の効果】
【0020】
この発明によると、検知対象物の発熱を確実に検知することができるとともに、検知対象物の発熱を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の第1実施形態に係る発熱検知システムを模式的に示す全体図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した状態を示す断面図である。
【
図3】
図2のIII-III線で切断した状態を示す断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線で切断した状態を示す断面図である。
【
図5】
図4のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
【
図6】この発明の第1実施形態に係る発熱検知装置の回路図である。
【
図7】この発明の第1実施形態に係る発熱検知装置の発熱検知動作を模式的に示すグラフである。
【
図8】この発明の第2実施形態に係る発熱検知装置の回路図である。
【
図9】この発明の第2実施形態に係る発熱検知装置の発熱検知動作を模式的に示すグラフである。
【
図10】この発明の第3実施形態に係る発熱検知装置の回路図である。
【
図11】の発明の第3実施形態に係る発熱検知装置における発熱検知部の抵抗体の抵抗温度係数を一例として模式的に示すグラフである。
【
図12】この発明の第4実施形態に係る発熱検知装置における発熱検知部の抵抗体の抵抗温度係数を模式的に示すグラフである。
【
図13】この発明の第5実施形態に係る発熱検知装置の回路図である。
【
図14】この発明の第5実施形態に係る発熱検知装置における発熱検知部の抵抗体の抵抗温度係数を一例として模式的に示す片対数グラフである。
【
図15】この発明の第5実施形態に係る発熱検知装置の発熱検知動作を模式的に示すグラフである。
【
図16】この発明の第6実施形態に係る発熱検知装置における発熱検知部の抵抗体の抵抗温度係数を一例として模式的に示す片対数グラフである。
【
図17】この発明の第7実施形態に係る発熱検知装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1~
図5に示すき電線Fは、き電用変電所から電車線に電力を供給する電線である。き電線Fは、電車又は電気機関車などの電気車の集電装置が摺動する架線のトロリ線と並行に架設されており、一定区間毎にこのトロリ線に電力を供給する。き電線Fは、例えば、硬銅より線又は硬アルミニウムより線などである。き電線Fは、発熱検知装置2A,2Bによって発熱の有無が検知される被検体(検知対象物)である。き電線Fは、
図2に示すように、断面形状が略円形である。
【0023】
図1、
図4及び
図5に示す接続部Cは、き電線Fを接続する部材である。接続部Cは、き電線Fの端部同士を電気的及び機械的に接続する金具である。接続部Cは、例えば、き電線Fの端部の外周面に装着された状態で圧縮されてこのき電線Fを把持する圧縮接続管(スリーブ)である。
図1、
図4及び
図5に示す接続部Cは、張力の作用するより線同士をスリーブによって電気的及び機械的に接続する直線スリーブである。接続部Cは、き電線Fが銅線の場合には銅製の圧縮接続管が使用され、き電線Fがアルミニウム線の場合にはアルミニウム製の圧縮接続管が使用される。接続部Cは、
図4に示すように、断面形状が略六角形である。
【0024】
図1に示す発熱検知システム1は、き電線F又は接続部Cの発熱を検知するシステムである。発熱検知システム1は、き電線F又は接続部Cの発熱を発熱検知装置2A,2Bが検知したときに、この発熱検知装置2A,2Bの検知結果を外部機器に送信してこのき電線F又は接続部Cの発熱を告知する。発熱検知システム1は、
図1に示すように、発熱検知装置2A,2Bと、送信装置13と、受信装置14などを備えている。
【0025】
図1~
図3に示す発熱検知装置2Aは、き電線Fに装着されてこのき電線Fの発熱を検知する装置である。
図1、
図4及び
図5に示す発熱検知装置2Bは、接続部Cに装着されてこの接続部Cの発熱を検知する装置である。
図1~
図5に示す発熱検知装置2Aは、き電線Fに着脱自在に装着されており、このき電線Fの発熱を直接検知する。
図1、
図4及び
図5に示す発熱検知装置2Bは、接続部Cに着脱自在に装着されており、この接続部Cの発熱を直接検知するとともに、き電線Fの発熱をこの接続部Cを通じて検知する。発熱検知装置2A,2Bは、
図2及び
図4に示すように、き電線F又は接続部Cの外周部に巻き付けられた状態で、このき電線F又はこの接続部Cの発熱を検知する発熱検知帯である。発熱検知装置2A,2Bは、
図1に示すように、き電線F又は接続部Cの発熱を検知したときに、このき電線F又はこの接続部Cの発熱を送信装置13に送信する。発熱検知装置2A,2Bは、電気鉄道におけるき電線F又は接続部Cの圧縮箇所の異常発熱を検知する異常発熱検知センサとして機能する。
【0026】
発熱検知装置2Aは、例えば、接続部Cの一方の端部近傍のき電線Fの外周面の発熱と、この接続部Cの他方の端部近傍のき電線Fの発熱とをそれぞれ検知する。発熱検知装置2Bは、例えば、接続部Cの両端部から僅かに中央部寄りの2箇所におけるき電線F又は接続部Cの外周面の発熱をそれぞれ検知する。発熱検知装置2Aは、
図2に示すように、き電線Fの円柱状の外周面と密着するように内周面が円形に形成されている。一方、発熱検知装置2Bは、
図4に示すように、接続部Cの六角形の外周面と密着するように内周面が角形に形成されている。発熱検知装置2A,2Bは、
図2及び
図4に示すように、き電線F及び接続部Cの外周面の周方向に連続してこれらの外周面を囲むように被覆している。発熱検知装置2A,2Bは、き電線Fの中心線を中心として中心角60°となる6箇所の検知箇所P
1~P
6で、き電線F又は接続部Cの外周部の温度を検知する。発熱検知装置2A,2Bは、
図2~
図6に示す発熱検知部3と、
図2~
図5に示す装着部8A,8Bと、導電部9と、弾性部10と、被覆部11などを備えている。発熱検知装置2A,2Bは、いずれも略同一構造であり、以下では発熱検知装置2Aによってき電線Fの発熱を検知する場合を中心に説明し、発熱検知装置2Bについては発熱検知装置2Aと対応する部分について同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0027】
図2~
図5に示す発熱検知部3は、き電線Fの外周部の周方向に間隔をあけて複数の検知箇所P
1~P
6で、このき電線Fの発熱を検知する手段である。発熱検知部3は、き電線Fの所定温度を超える発熱を検知する。発熱検知部3は、き電線Fが所定温度以下であるときには、電気回路Eを閉じてこの電気回路Eを通電状態(ON状態)にしている。一方、発熱検知部3は、き電線Fが所定温度を超えたときには、電気回路Eを開いてこの電気回路Eを通電状態から非通電状態(OFF状態)に切り替える。発熱検知部3は、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から熱を受けて、き電線Fの多角点多点の温度上昇を検知する。発熱検知部3は、
図6に示すように、複数の開閉部S
1~S
6と、配線部4A~4Dと、電源部5と、コネクタ部6A~6Cと、開閉状態検知部7などを備えている。
【0028】
図6に示す電気回路Eは、き電線Fの発熱を検知するために電気的素子によって構成された回路である。電気回路Eは、複数の開閉部S
1~S
6、配線部4A~4C、電源部5及び開閉状態検知部7などによって構成されている。電気回路Eは、き電線Fが所定温度以下であるときには、開閉部S
1~S
6のいずれも閉じており通電状態を維持している。一方、電気回路Eは、き電線Fが所定温度を超えて発熱したときには、開閉部S
1~S
6の少なくとも一つが開いて通電状態から非通電状態に切り替わる。
【0029】
開閉部S
1~S
6は、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から所定温度を超える熱を受けたときに開閉する素子である。開閉部S
1~S
6は、直列接続されており、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から所定温度を超える熱を受けたときに開く。開閉部S
1~S
6は、
図6に示すように、通常時には電気接点を閉じているb接点として機能し、き電線Fが所定温度以下であるときには電気接点を閉じており、き電線Fが所定温度を超えたときには電気接点を開く。開閉部S
1~S
6は、例えば、所定の設定温度に達したときに開閉動作するサーモスイッチのような電線用の温度開閉器、又は所定の設定温度に達したときに電磁力によって接点を開閉する継電器(リレー)などの素子である。開閉部S
1~S
6は、
図2に示すように、き電線Fの中心線を中心として中心角60°となるように、き電線Fの外周部の周方向に間隔をあけて複数配置されており、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6に対応して合計6個配置されている。開閉部S
1~S
6は、き電線Fの外周部に向けて押圧されるように、装着部8A,8Bの内周面から僅かに露出した状態で、この装着部8A,8Bに保持されている。
【0030】
図6に示す配線部4A~4Cは、複数の開閉部S
1~S
6、電源部5及び開閉状態検知部7を電気的に接続する手段である。配線部4Dは、開閉状態検知部7と送信装置13とを電気的に接続する手段である。配線部4A~4Cは、複数の開閉部S
1~S
6、電源部5及び開閉状態検知部7を直列に接続している。配線部4Aは、装着部8A側に配線されており、配線部4Bは装着部8B側に配線されており、配線部4Cは収容部12側に配線されている。配線部4A~4Dは、例えば、銅線、銀めっき銅線、銅ニッケル合金線、ニッケルクラッド銅線又はニッケルめっき銅線などを被覆材によって被覆したリード線である。電源部5は、電気回路Eに電力を供給する手段である。電源部5は、例えば、直流電力を放電する一次電池、電力を蓄積する充電可能な二次電池、又は太陽光などの光エネルギーを電力に変換する光電池などである。
【0031】
コネクタ部6A~6Cは、配線部4A~4Cを電気的に接続する手段である。コネクタ部6A~6Cは、例えば、嵌合及び分離が可能であって配線部4A~4Cを電気的に接続する雄端子及び雌端子である。コネクタ部6Aは、装着部8A側と装着部8B側に形成されており、コネクタ部6Bは装着部8A側と収容部12側に形成されており、コネクタ部6Cは装着部8B側と収容部12側に形成されている。コネクタ部6Aは、装着部8Aと装着部8Bとが接合状態になったときに配線部4Aと配線部4Bとを接続し、装着部8Aと装着部8Bとが分離状態になったときに配線部4Aと配線部4Bとを切り離す。コネクタ部6B,6Cは、装着部8A,8Bと収容部12とが接合状態になったときに配線部4A,4Bと配線部4Cとを接続し、装着部8A,8Bと収容部12とが分離状態になったときに配線部4A,4Bと配線部4Cとを切り離す。
【0032】
開閉状態検知部7は、複数の開閉部S1~S6の開閉状態を検知する手段である。開閉状態検知部7は、き電線Fの各検知箇所P1~P6の開閉部S1~S6の開状態を検知することによって、き電線Fの発熱を検知する。開閉状態検知部7は、配線部4Cを流れる電流を測定することによって、電気回路Eの通電状態を検知して開閉部S1~S6の開閉状態を検知する。開閉状態検知部7は、例えば、機械的な可動部を備えておらず、配線部4Cの通電状態及び非通電状態を検知する半導体リレー(solid-state relay(SSR))のようなスイッチング素子である。開閉状態検知部7は、き電線Fが所定温度を超えて開閉部S1~S6が開き、電気回路Eが通電状態から非通電状態に切り替わったときに、発熱検知信号を送信装置13に出力する。
【0033】
図2に示す装着部8A,8Bは、き電線Fに着脱自在に装着される部分である。装着部8A,8Bは、発熱検知部S
1~S
6を保持した状態で、き電線Fに着脱自在に装着される。装着部8A,8Bは、
図2に示すように、き電線Fの外側から着脱可能なように分割及び結合可能な構造であり、互いに嵌合させることによって一体化される。装着部8Aは、き電線Fの外周面の一方の半面に装着され、装着部8Bはこのき電線Fの外周面の他方の半面に装着される。装着部8A,8Bは、この装着部8A,8Bの内周面がき電線Fの外周面と対向する凹状の湾曲面に形成されている。装着部8A,8Bは、この装着部8A,8Bを貫通して形成されている収容口に開閉部S
1~S
6を嵌め込み収容している。装着部8A,8Bは、
図3に示すように、弾性部10及び被覆部11の両端部を挟み込むように、この装着部8A,8Bの両端部にフランジ部が形成されている。
【0034】
図2及び
図3に示す導電部9は、電流が流れる部分である。導電部9は、き電線Fの表面に電流が均一に流れるようにこのき電線Fの表面と接触している。導電部9は、装着部8A,8Bと開閉部S
1~S
6との間の隙間から異物が浸入するのを防止する。導電部9は、き電線Fの外周面と装着部8A,8Bの内周面との間に挟み込まれるように、この装着部8A,8Bの内周面の表面に貼り付けられてアルミニウム製のテープなどである。
【0035】
弾性部10は、き電線Fの外周部に導電部9を通じて開閉部S
1~S
6を密着させるための弾性力を発生する部分である。弾性部10は、
図2に示すように、外観が円環状の部材であり、装着部8A,8Bの外周部の全周に所定の厚さで形成されている。弾性部10は、
図2及び
図3に示すように、開閉部S
1~S
6が導電部9を介してき電線Fと密着するように、開閉部S
1~S
6をき電線Fに向かって押圧する。弾性部10は、被覆部11と導電部9との間を電気的に絶縁する絶縁材としても機能する。弾性部10は、例えば、熱安定性、撥水性及び電気絶縁性を有するシリコーン樹脂などである。
【0036】
被覆部11は、弾性部10の表面を被覆する部分である。被覆部11は、弾性部10の表面を保護するとともに、発熱検知装置2Aの内部に雨水などが侵入するのを防止する。被覆部11は、
図2及び
図3に示すように、外観が円環状の部材であり、弾性部10の外周部の全周に所定の厚さで形成されている。弾性部10は、例えば、耐水性、耐候性、耐摩耗性、電気絶縁性を有するとともに機械強度に優れたメラミン樹脂などのようなスポンジである。
【0037】
図6に示す収容部12は、配線部4C、電源部5及び開閉状態検知部7を収容する部分である。収容部12は、この収容部12の内部に雨水などが浸入するのを防止するために、配線部4C、電源部5及び開閉状態検知部7を密閉状態で収容する。収容部12は、装着部8A,8Bに着脱自在に装着される。
【0038】
図1に示す送信装置13は、発熱検知装置2A,2Bの検知結果を送信する装置である。送信装置13は、発熱検知装置2A,2Bの開閉状態検知部7がき電線Fの発熱を検知したときに、この開閉状態検知部7の検知結果を受信装置14に送信する。送信装置13は、発熱検知部3が出力する発熱検知信号を受信したときに、この発熱検知信号を検知結果として送信する。送信装置13は、発熱検知装置2A,2Bの検知結果を無線で送信する送信機である。送信装置13は、固定バンドによって、接続部Cに着脱自在に装着されている。
【0039】
図1に示す受信装置14は、送信装置13から送信される検知結果を受信する装置である。受信装置14は、発熱検知装置2A,2Bの開閉状態検知部7がき電線Fの発熱を検知したときに、この開閉状態検知部7の検知結果を送信装置13から受信する。受信装置14は、送信装置13が送信する発熱検知信号を検知結果として受信する。受信装置14は、発熱検知信号を受信したときには、き電線Fの発熱を指令又は保守区に通信する。受信装置14は、送信装置13が送信する発熱検知装置2A,2Bの検知結果を受信する受信機である。受信装置14は、例えば、線路に沿って巡回する作業員が所有するスマートフォン、携帯電話又はタブレット型端末などの携帯端末装置(情報処理端末)、信号機器室内の通信機器、駅構内などの通信機器室内の通信機器、又は線路上を走行する列車の運行を管理する中央指令所内の運行管理装置などである。受信装置14は、発熱検知信号を受信したときには、音声若しくは光によって警報を発生する警報器、又は文字、図形、記号、色彩若しくはこれらの組合せによって所定の表示を行う表示灯を必要に応じて動作させる。
【0040】
次にこの発明の第1実施形態に係る発熱検知システム及び発熱検知装置の動作を説明する。
図2に示すように、装着部8A,8Bの導電部9の内周面をき電線Fの外周面に密着させて、装着部8Aと装着部8Bとを嵌合させると、
図1に示すように発熱検知装置2Aがき電線Fに取り付けられる。例えば、接続部Cの内部が腐食すると、この接続部Cの出口付近のき電線Fが発熱する。
図2及び
図3に示すように、発熱検知装置2Aの導電部9とき電線Fの外周面とが接触しているため、このき電線Fが発生する熱が導電部9を通じて開閉部S
1~S
6に伝達される。
図2に示すように、き電線Fの外周部を囲むように間隔をあけて開閉部S
1~S
6が配置されている。このため、き電線Fが部分的に発熱した場合であっても、開閉部S
1~S
6の少なくとも一つにき電線Fから熱が伝達する。
【0041】
図7に示す縦軸は、電流値(A)であり、横軸は時間(s)である。
図7に示すように、き電線Fが所定温度に達する時間t
0よりも前では、
図6に示す開閉部S
1~S
6が電気接点を閉じた状態であるため、電気回路Eが通電状態である。その結果、
図7に示すように、電気回路Eを流れる電流の電流値が所定値I
0であるため、き電線Fが所定温度を超えて発熱していないと開閉状態検知部7が検知する。一方、
図7に示すように、き電線Fが所定温度を超える時間t
0以降では、
図6に示す開閉部S
1~S
6が閉状態から開状態に切り替わり、電気回路Eが非通電状態になる。その結果、
図7に示すように、電気回路Eを流れる電流の電流値がゼロに変化するため、き電線Fが所定温度を超えて発熱したと開閉状態検知部7が検知し、開閉状態検知部7が発熱検知信号を送信装置13に送信する。送信装置13が発熱検知信号を受信装置14に送信すると、作業員が所有する携帯端末装置や信号機器室内の通信機器などに、き電線Fの発熱が告知される。
【0042】
この発明の第1実施形態に係る発熱検知システム及び発熱検知装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、き電線Fの外周部の周方向に間隔をあけて複数の検知箇所P1~P6で、このき電線Fの発熱を発熱検知部3が検知する。このため、き電線Fの異常発熱を多角度多点で容易に検知することができるとともに、き電線Fの全周の異常発熱を常時センシングすることができる。例えば、き電線Fの検知箇所P1~P6の全てに一つの発熱検知部3を取り付けることによって一つの電気回路Eによってき電線Fの温度をむらなく検知することができる。
【0043】
(2) この第1実施形態では、き電線Fの各検知箇所P1~P6から所定温度を超える熱を受けたときに複数の開閉部S1~S6が開閉し、この複数の開閉部S1~S6の開閉状態を開閉状態検知部7が検知する。このため、各検知箇所P1~P6に対応して開閉部S1~S6を配置し、き電線Fから伝導する熱によって少なくとも一つの開閉部S1~S6を開閉動作させ、き電線Fの異常発熱を簡単に検知することができる。
【0044】
(3) この第1実施形態では、複数の開閉部S1~S6が直列接続されており、き電線Fの各検知箇所P1~P6から所定温度を超える熱を受けたときに開閉部S1~S6が開く。また、この第1実施形態では、き電線Fの各検知箇所P1~P6の開閉部S1~S6の開状態を開閉状態検知部7が検知することによって、き電線Fの発熱を開閉状態検知部7が検知する。このため、き電線Fの外周部に開閉部S1~S6を連続的に接続して、このき電線Fの温度上昇を多角度多点で検知することができる。また、き電線Fが所定温度を超えたときに開閉部S1~S6が電気回路Eを通電状態に切り替えるため、電気回路Eの通電状態を検知することによってき電線Fの発熱を簡単に検知することができる。さらに、配線部4A~4Cが切断したようなときにも、開閉状態検知部7が電気回路Eの非通電状態を検知するため、発熱検知信号を出力し発熱検知装置2A,2Bの異常を知らせることができる。
【0045】
(4) この第1実施形態では、発熱検知装置2A,2Bの検知結果を送信装置13が送信し、この送信装置13から送信されるこの検知結果を受信装置14が受信する。このため、き電線Fの発熱を送信機から無線などによって受信機に出力し、き電線Fの発熱を迅速かつ正確に告知させることができるとともに、き電線Fの発熱を容易に確認することができる。例えば、発熱検知装置2A,2Bから出力される電気信号によってインタフェースを介してき電線Fの温度の異常を遠方でセンシングすることができる。
【0046】
(第2実施形態)
以下では、
図1~
図6に示す部分と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図8に示す発熱検知部3は、
図6に示す発熱検知部3とはき電線Fの発熱検知時の開閉動作が逆である。
図8に示す発熱検知部3は、き電線Fが所定温度以下であるときには、電気回路Eを開いてこの電気回路Eを非通電状態(OFF状態)にしている。一方、発熱検知部3は、き電線Fが所定温度を超えたときには、電気回路Eを閉じてこの電気回路Eを非通電状態から通電状態(OFF状態)に切り替える。
【0047】
開閉部S
1~S
6は、
図6に示す開閉部S
1~S
6とは異なり、配線部4A~4Cによって並列に接続されており、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から所定温度を超える熱を受けたときに閉じる。開閉部S
1~S
6は、
図8に示すように、通常時には電気接点を開いているa接点として機能し、き電線Fが所定温度以下であるときには電気接点を開いており、き電線Fが所定温度を超えたときには電気接点を閉じる。開閉部S
1~S
6は、
図6に示す開閉部S
1~S
6と同様に、
図2に示すようにき電線Fの中心線を中心として中心角60°となるように、き電線Fの外周部の周方向に間隔をあけて複数配置されている。配線部4A~4Cは、
図8に示すように、開閉部S
1~S
6、電源部5及び開閉状態検知部7を並列に接続している。
【0048】
開閉状態検知部7は、き電線Fの各検知箇所P1~P6の開閉部S1~S6の閉状態を検知することによってき電線Fの発熱を検知する。開閉状態検知部7は、き電線Fが所定温度を超えて開閉部S1~S6が閉じ、電気回路Eが非通電状態から通電状態に切り替わったときに、発熱検知信号を送信装置13に出力する。
【0049】
次にこの発明の第2実施形態に係る発熱検知システム及び発熱検知装置の動作を説明する。
図9に示す縦軸は、電流値(A)であり、横軸は時間(s)である。き電線Fが所定温度に達する時間t
0よりも前では、
図8に示す開閉部S
1~S
6が電気接点を開いた状態であるため、電気回路Eが非通電状態である。その結果、
図9に示すように、電気回路Eを流れる電流の電流値がゼロであるため、き電線Fが所定温度を超えて発熱していないと開閉状態検知部7が検知する。一方、き電線Fが所定温度を超える時間t
0以降では、
図6に示す開閉部S
1~S
6が開状態から閉状態に切り替わり、電気回路Eが通電状態になる。その結果、
図9に示すように、電気回路Eを流れる電流の電流値が所定値I
0に変化するため、き電線Fが所定温度を超えて発熱したと開閉状態検知部7が検知し、開閉状態検知部7が発熱検知信号を送信装置13に送信する。送信装置13が発熱検知信号を受信装置14に送信すると、作業員が所有する携帯端末装置や信号機器室内の通信機器などに、き電線Fの発熱が告知される。
【0050】
この発明の第2実施形態に係る発熱検知装置には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第2実施形態では、複数の開閉部S1~S6が並列接続されており、き電線Fの各検知箇所P1~P6から所定温度を超える熱を受けたときに開閉部S1~S6が閉じる。また、この第2実施形態では、き電線Fの各検知箇所P1~P6の開閉部S1~S6の閉状態を開閉状態検知部7が検知することによって、き電線Fの発熱を開閉状態検知部7が検知する。このため、き電線Fの外周部に開閉部S1~S6を連続的に接続して、このき電線Fの温度上昇を多角度多点で検知することができる。また、き電線Fが所定温度を超えたときに開閉部S1~S6が電気回路Eを閉じるため、電気回路Eの通電状態を検知することによってき電線Fの発熱を簡単に検知することができる。
【0051】
(第3実施形態)
図10に示す発熱検知部3は、抵抗値の変化を検知することによって、き電線Fの所定温度を超える発熱を検知する。発熱検知部3は、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から熱を受けて抵抗値が所定値R
THを超えたときに、き電線Fが所定温度を超えて発熱したことを検知する。発熱検知部3は、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から熱を受けて、き電線Fの多角点多点の温度上昇を検知する。発熱検知部3は、複数の抵抗体R
0と、配線部4A~4Dと、電源部5と、コネクタ部6A~6Cと、抵抗値変化検知部15と、発熱判定部16などを備えている。電気回路Eは、複数の抵抗体R
0、配線部4A~4C、電源部5及び抵抗値変化検知部15などによって構成されている。
【0052】
抵抗体R
0は、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から熱を受けたときに抵抗値が変化する素子である。抵抗体R
0は、直列接続されており、き電線Fの温度が上昇したときに抵抗値が増加する。抵抗体R
0は、
図11に示すように、温度が上昇したときに抵抗値も増加するような正の抵抗温度係数を示す。ここで、
図11に示す縦軸は、抵抗値(Ω)であり、横軸は温度(℃)である。温度T
0は、き電線Fが発熱する発熱温度である。所定値R
THは、き電線Fが発熱したときの抵抗値であり、き電線Fが発熱の有無を判定するときの判定基準となる抵抗値である。
図10に示す抵抗体R
0は、いずれも抵抗温度係数が同一である。抵抗体R
0は、例えば、正の抵抗温度係数を示すセメント抵抗器又は正特性サーミスタなどの素子である。抵抗体R
0は、
図2及び
図5に示す開閉部S
1~S
6と同様に、き電線Fの中心線を中心として中心角60°となるように、き電線Fの外周部の周方向に間隔をあけて複数配置されている。抵抗体R
0は、
図2及び
図5に示す開閉部S
1~S
6と同様に、き電線Fの外周部に向けて押圧されるように、装着部8A,8Bの内周面から僅かに露出した状態でこの装着部8A,8Bに保持されている。
【0053】
図10に示す配線部4A~4Cは、複数の抵抗体R
0、電源部5及び抵抗値変化検知部15を電気的に接続する手段である。配線部4A~4Cは、複数の抵抗体R
0、電源部5及び抵抗値変化検知部15を直列に接続している。配線部4Dは、抵抗値変化検知部15と発熱判定部16とを電気的に接続する手段であり、配線部4Eは抵抗値変化検知部15と送信装置13とを電気的に接続する手段である。配線部4Eは、配線部4A~4Dと同様のリード線である。
【0054】
送信装置13は、き電線Fが発熱していると発熱検知装置2A,2Bの発熱判定部16が判定したときに、この発熱判定部16の判定結果を
図1に示す受信装置14に送信する。送信装置13は、配線部4Dによって発熱判定部16と電気的に接続されている。受信装置14は、発熱検知装置2A,2Bの抵抗値変化検知部15がき電線Fの発熱を検知したときに、この抵抗値変化検知部15の検知結果を送信装置13から受信する。
【0055】
抵抗値変化検知部15は、複数の抵抗体R0の抵抗値の変化を検知する手段である。抵抗値変化検知部15は、き電線Fの発熱による各検知箇所P1~P6の抵抗体R0の抵抗値の増加を検知する。抵抗値変化検知部15は、例えば、配線部4Cを流れる電流の電流値を計測することによって、複数の抵抗体R0の合成抵抗値を計測する抵抗計などである。抵抗値変化検知部15は、電源部5から供給される電力によって動作し、所定の時間間隔をあけて抵抗体R0の抵抗値を測定する。抵抗値変化検知部15は、複数の抵抗体R0の抵抗値を抵抗値信号として発熱判定部16に出力する。
【0056】
発熱判定部16は、抵抗値変化検知部15の検知結果に基づいて、き電線Fの発熱の有無を判定する手段である。発熱判定部16は、抵抗値変化検知部15が出力する抵抗値信号に基づいて、複数の抵抗体R0の抵抗値(合成抵抗値)が所定値RTHを超えているか否かを判定する。発熱判定部16は、抵抗体R0の抵抗値が所定値RTHを超えているときにはき電線Fが発熱していると判定し、抵抗体R0の抵抗値が所定値RTH以下であるときにはき電線Fが発熱していない判定する。発熱判定部16は、き電線Fが発熱していると判定したときには発熱検知信号を送信装置13に出力する。
【0057】
次にこの発明の第3実施形態に係る発熱検知システム及び発熱検知装置の動作を説明する。
例えば、接続部Cの内部が腐食してき電線Fが発熱すると、このき電線Fが発生する熱が導電部9を通じて抵抗体R0に伝達する。き電線Fの外周部を囲むように間隔をあけて抵抗体R0が配置されているため、き電線Fが部分的に発熱した場合であっても、抵抗体R0の少なくとも一つにき電線Fから熱が伝達する。き電線Fが発熱して温度が上昇すると抵抗体R0の抵抗値が大きくなるため、抵抗値変化検知部15が複数の抵抗体R0の合成抵抗値を測定し、この複数の抵抗体R0の合成抵抗値が所定値RTHを超えているか否かを発熱判定部16が判定する。複数の抵抗体R0の合成抵抗値が所定値RTHを超えていると発熱判定部16が判定したときには、発熱判定部16が発熱検知信号を送信装置13に送信する。送信装置13が発熱検知信号を受信装置14に送信すると、作業員が所有する携帯端末装置や信号機器室内の通信機器などに、き電線Fの発熱が告知される。
【0058】
この発明の第3実施形態に係る発熱検知装置には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第3実施形態では、き電線Fの各検知箇所P1~P6から熱を受けたときに複数の抵抗体R0の抵抗値が変化し、この複数の抵抗体R0の抵抗値の変化を抵抗値変化検知部15が検知する。このため、抵抗値が同一である複数の抵抗体R0の抵抗値の連続的な変化を測定することによって、き電線Fの発熱を簡単に検知することができる。
【0059】
(2) この第3実施形態では、複数の抵抗体R0が直列接続されており、き電線Fの温度が上昇したときにこの複数の抵抗体R0の抵抗値が増加し、き電線Fの発熱によるこの抵抗体R0の抵抗値の増加を抵抗値変化検知部15が検知する。このため、き電線Fの外周部に抵抗体R0を連続的に接続して、この抵抗体R0の抵抗温度係数による変化を用いて、このき電線Fの温度上昇を多角度多点で検知することができる。
【0060】
(第4実施形態)
図10に示す発熱検知部3は、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から熱を受けて抵抗値が所定値R
THを下回ったときに、き電線Fが所定温度を超えて発熱したことを検知する。抵抗体R
0は、
図11に示す抵抗体R
0とは異なり、
図12に示すようにき電線Fの温度が上昇したときに抵抗値が低下する。抵抗体R
0は、温度が上昇したときに抵抗値が低下するような負の抵抗温度係数を示す。ここで、
図12に示す縦軸は、抵抗値(Ω)であり、横軸は温度(℃)である。抵抗体R
0は、いずれも抵抗温度係数が同一である。抵抗体R
0は、例えば、負の抵抗温度係数を示す負特性サーミスタなどの素子である。
【0061】
図10に示す抵抗値変化検知部15は、き電線Fの発熱による各検知箇所P
1~P
6の抵抗体R
0の抵抗値の低下を検知する。発熱判定部16は、複数の抵抗体R
0の抵抗値(合成抵抗値)が所定値R
THを下回っているか否かを判定する。発熱判定部16は、複数の抵抗体R
0の抵抗値が所定値R
THを下回っているときにはき電線Fが発熱していると判定し、複数の抵抗体R
0の抵抗値が所定値R
TH以上であるときにはき電線Fが発熱していないと判定する。
【0062】
次にこの発明の第4実施形態に係る発熱検知システム及び発熱検知装置の動作を説明する。
図12に示すように、き電線Fが発熱して温度が上昇すると抵抗体R
0の抵抗値が小さくなるため、抵抗値変化検知部15が抵抗体R
0の抵抗値を検知し、抵抗体R
0の抵抗値が所定値R
THを下回るか否かを発熱判定部16が判定する。抵抗体R
0の抵抗値が所定値R
THを下回ると発熱判定部16が判定したときには、発熱判定部16が発熱検知信号を送信装置13に送信する。送信装置13が発熱検知信号を受信装置14に送信すると、作業員が所有する携帯端末装置や信号機器室内の通信機器などに、き電線Fの発熱が告知される。この第4実施形態には、第1実施形態から~第3実施形態と同様の効果がある。
【0063】
(第5実施形態)
図13に示す発熱検知部3は、抵抗値の変化を検知することによって、き電線Fの所定温度を超える発熱を検知するとともに、抵抗値の変化量ΔRを検知することによって、き電線Fの発熱箇所を検知する。発熱検知部3は、複数の抵抗体R
1~R
6と、配線部4A~4Eと、電源部5と、コネクタ部6A~6Cと、抵抗値変化検知部15と、発熱判定部16などを備えている。
【0064】
抵抗体R
1~R
6は、
図15に示すように、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から熱を受けたときの抵抗値の変化量ΔRが異なる素子である。抵抗体R
1~R
6は、
図13に示すように、直列接続されており、
図14及び
図15に示すようにき電線Fの温度が上昇したときに抵抗値が指数関数的に増加する。抵抗体R
1~R
6は、
図14に示すように、温度が上昇したときに抵抗値も増加するような正の抵抗温度係数を示す。ここで、
図14に示す縦軸は、抵抗値(Ω)であり、横軸は温度(℃)であり、グラフは温度と抵抗値との関係を表す片対数グラフである。基準温度T
refは、通常時(非発熱時)のき電線Fの温度である。
【0065】
図13に示す抵抗体R
1~R
6は、
図15に示すように、いずれも抵抗温度係数が異なる。抵抗体R
1~R
6は、例えば、
図14に示すように、基準温度T
refにおいて抵抗値が1Ω、10Ω、100Ω、1kΩ、10kΩ、100kΩにそれぞれ設定されている。抵抗体R
1~R
6は、例えば、正の抵抗温度係数を示す金属抵抗器又は正特性サーミスタなどの素子である。抵抗体R
1~R
6は、
図2及び
図5に示す開閉部S
1~S
6と同様に、き電線Fの中心線を中心として中心角60°となるように、き電線Fの外周部の周方向に間隔をあけて複数配置されている。抵抗体R
1~R
6は、
図2及び
図5に示す開閉部S
1~S
6と同様に、き電線Fの外周部に向けて押圧されるように、装着部8A,8Bの内周面から僅かに露出した状態でこの装着部8A,8Bに保持されている。配線部4A~4Cは、複数の抵抗体R
1~R
6、電源部5及び抵抗値変化検知部15を電気的に接続する手段である。配線部4A~4Cは、複数の抵抗体R
1~R
6、電源部5及び抵抗値変化検知部15を直列に接続している。
【0066】
抵抗値変化検知部15は、複数の抵抗体R1~R6の抵抗値の変化を検知する手段である。抵抗値変化検知部15は、き電線Fの検知箇所P1~P6毎に発熱による抵抗体R1~R6の抵抗値の増加を検知する。抵抗値変化検知部15は、例えば、配線部4Cを流れる電流の電流値を計測することによって、複数の抵抗体R1~R6の合成抵抗値を計測する抵抗計などである。抵抗値変化検知部15は、電源部5から供給される電力によって動作し、所定の時間間隔をあけて抵抗体R1~R6の抵抗値を測定する。抵抗値変化検知部15は、複数の抵抗体R1~R6の抵抗値を抵抗値信号として発熱判定部16に出力する。
【0067】
発熱判定部16は、き電線Fの発熱の有無とこのき電線Fの発熱箇所とを判定する手段である。発熱判定部16は、抵抗値変化検知部15の検知結果に基づいて、き電線Fの発熱の有無とこのき電線Fの発熱箇所とを判定する。発熱判定部16は、複数の抵抗体R
1~R
6の抵抗値(合成抵抗値)が所定値R
THを超えているか否かを判定する。発熱判定部16は、複数の抵抗体R
1~R
6の抵抗値が所定値R
THを超えているときにはき電線Fが発熱していると判定し、複数の抵抗体R
1~R
6の抵抗値が所定値R
TH以下であるときにはき電線Fが発熱していないと判定する。発熱判定部16は、複数の抵抗体R
1~R
6の抵抗値の変化量ΔRに基づいて、き電線Fの発熱箇所を判定する。発熱判定部16は、
図15に示すように、抵抗体R
1~R
6の抵抗値の変化量ΔR
1~ΔR
6が異なるため、き電線Fが発熱したときの抵抗体R
1~R
6の抵抗値の変化から検知箇所P
1~P
6のいずれが発熱したかを判定する。発熱判定部16は、き電線Fが発熱していると判定したときには検知箇所P
1~P
6毎の発熱の有無を発熱検知信号として送信装置13に出力する。
【0068】
次にこの発明の第5実施形態に係る発熱検知システム及び発熱検知装置の動作を説明する。
例えば、接続部Cの内部が腐食してき電線Fが発熱すると、このき電線Fが発生する熱が導電部9を通じて抵抗体R1~R6に伝達する。き電線Fの外周部を囲むように間隔をあけて抵抗体R1~R6が配置されているため、き電線Fが部分的に発熱した場合であっても、抵抗体R1~R6の少なくとも一つにき電線Fから熱が伝達する。き電線Fが発熱して温度が上昇すると、抵抗体R1~R6の合成抵抗値が大きくなるため、抵抗値変化検知部15が抵抗体R1~R6の合成抵抗値を測定し、抵抗体R1~R6の合成抵抗値が所定値RTHを超えているか否かを発熱判定部16が判定する。
【0069】
図15に示すように、抵抗体R
1~R
6の抵抗温度係数がそれぞれ異なるため、き電線Fの温度が上昇した後の各抵抗体R
1~R
6の抵抗値の変化量ΔR
1~ΔR
6もそれぞれ異なる。例えば、通常時のき電線Fの温度が基準温度T
refから上昇して、
図15に示す抵抗体R
1~R
6の抵抗値がそれぞれ10%増加したと仮定する。この場合には、抵抗体R
1が抵抗値1Ωから1.1Ωに0.1Ω増加し、抵抗体R
2が抵抗値10Ωから11Ωに1Ω増加し、抵抗体R
3が抵抗値100Ωから110Ωに1Ω増加し、抵抗体R
4が抵抗値1kΩから1.1kΩに100Ω増加し、抵抗体R
5が抵抗値10kΩから11kΩに1kΩ増加し、抵抗体R
6が抵抗値100kΩから110kΩに10kΩ増加する。
図15に示すように、き電線Fの温度が上昇する前に比べて、き電線Fの温度が上昇した後では、抵抗体R
1~R
6の抵抗値の変化量ΔR
1~ΔR
6が抵抗体R
1から抵抗体R
6に順に大きくなっている。例えば、抵抗体R
1については基準温度T
refから温度T
0に上昇すると、抵抗値の変化量ΔR
1が僅かであるが、抵抗体R
6については基準温度T
refから温度T
0に上昇すると抵抗値の変化量ΔR
6が極めて大きい。
【0070】
このため、
図13に示す複数の検知箇所P
1~P
6でき電線Fが発熱したときには、それぞれの抵抗体R
1~R
6の抵抗温度係数に特有の測定値が合成抵抗値として抵抗値変化検知部15が測定する。その結果、発熱箇所に対応する複数の抵抗体R
1~R
6の抵抗値の合成抵抗値(加算値)を抵抗値変化検知部15が測定するため、いずれの検知箇所P
1~P
6でき電線Fが発熱したかを発熱判定部16が判定する。抵抗体R
1~R
6の合成抵抗値が所定値R
THを超えていると発熱判定部16が判定したときには、発熱の有無を発熱検知信号として発熱判定部16が送信装置13に送信する。また、検知箇所P
1~P
6毎の発熱の有無を発熱判定部16が判定したときには、検知箇所P
1~P
6毎の発熱の有無を発熱検知信号として発熱判定部16が送信装置13に送信する。送信装置13が発熱検知信号を受信装置14に送信すると、作業員が所有する携帯端末装置や信号機器室内の通信機器などに、き電線Fの発熱とこのき電線Fの発熱箇所とが告知される。
【0071】
この発明の第5実施形態に係る発熱検知装置には、第1実施形態~第4実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第5実施形態では、き電線Fの各検知箇所P1~P6から複数の抵抗体R1~R6が熱を受けたときに、この複数の抵抗体R1~R6の抵抗値の変化量ΔRが異なり、この複数の抵抗体R1~R6の抵抗値の変化を抵抗値変化検知部15が検知する。その結果、抵抗体R1~R6の全体の抵抗値を測定するだけで、発熱箇所が検知箇所P1~P6のいずれであるかを容易に特定することができる。また、個々の抵抗体R1~R6の抵抗値の変化量ΔRが異なるため、抵抗体R1~R6毎に個別にセンシングすることができるとともに、検知箇所P1~P6毎にき電線Fの発熱の有無を評価することができる。さらに、複数の抵抗体R1~R6の抵抗値の変化量ΔRを監視することによって、き電線Fが発熱する前にき電線Fの温度上昇を事前に把握することができる。
【0072】
(2) この第5実施形態では、複数の抵抗体R1~R6が直列接続されており、き電線Fの温度が上昇したときに、複数の抵抗体R1~R6の抵抗値が指数関数的に増加する。また、この第5実施形態では、き電線Fの検知箇所P1~P6毎に発熱による抵抗体R1~R6の抵抗値の増加を抵抗値変化検知部15が検知する。このため、温度によって抵抗値が指数関数的に変化する抵抗体R1~R6を用いて、多角度多点の温度上昇を検知箇所P1~P6毎に検知することができる。例えば、き電線Fの外周部に抵抗体R1~R6を連続的に接続して、この抵抗体R1~R6の指数関数的に変化する抵抗値を用いるとともに、この抵抗体R1~R6の温度係数による変化を利用して、き電線Fの温度上昇を多角度多点で検知することができる。
【0073】
(第6実施形態)
図13に示す抵抗体R
1~R
6は、
図14及び
図15に示す抵抗体R
1~R
6とは異なり、
図16に示すようにき電線Fの温度が上昇したときに抵抗値が指数関数的に低下する。抵抗体R
1~R
6は、
図16に示すように、温度が上昇したときに抵抗値が低下するような負の抵抗温度係数を示す。ここで、
図16に示す縦軸は、抵抗値(Ω)であり、横軸は温度(℃)であり、グラフは温度と抵抗値との関係を表す片対数グラフである。温度T
0は、き電線Fが発熱する温度である。
図16に示す抵抗体R
1~R
6は、いずれも抵抗温度係数が異なる。抵抗体R
1~R
6は、例えば、負の抵抗温度係数を示す負特性サーミスタなどの素子である。
【0074】
図13に示す抵抗値変化検知部15は、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6の発熱による抵抗体R
1~R
6の抵抗値の低下を検知する。発熱判定部16は、複数の抵抗体R
1~R
6の抵抗値(合成抵抗値)が所定値R
THを下回っているか超えているか否かを判定する。発熱判定部16は、複数の抵抗体R
1~R
6の抵抗値が所定値R
THを下回っているときにはき電線Fが発熱していると判定し、複数の抵抗体R
1~R
6の抵抗値が所定値R
THを超えているときにはき電線Fが発熱していないと判定する。
【0075】
次にこの発明の第6実施形態に係る発熱検知システム及び発熱検知装置の動作を説明する。
き電線Fが発熱して温度が上昇すると、抵抗体R1~R6の合成抵抗値が小さくなるため、抵抗値変化検知部15が抵抗体R1~R6の合成抵抗値を検知し、抵抗体R1~R6の抵抗値が所定値RTHを下回るか否かを発熱判定部16が判定する。また、それぞれの抵抗体R1~R6の抵抗温度係数に特有の測定値が合成抵抗値として抵抗値変化検知部15に測定されて、いずれの検知箇所P1~P6でき電線Fが発熱したかを発熱判定部16が判定する。検知箇所P1~P6毎の発熱の有無を発熱検知信号として発熱判定部16が送信装置13に送信し、送信装置13が発熱検知信号を受信装置14に送信すると、作業員が所有する携帯端末装置や信号機器室内の通信機器などに、き電線Fの発熱とこのき電線Fの発熱箇所とが告知される。この第6実施形態には、第1実施形態から~第5実施形態と同様の効果がある。
【0076】
(第7実施形態)
図17に示す発熱検知部3は、抵抗値の変化を検知することによって、き電線Fの所定温度を超える発熱を検知するとともに、抵抗値の変化量ΔRを検知することによって、き電線Fの発熱箇所を検知する。発熱検知部3は、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から熱を受けて、き電線Fの多角点多点の温度上昇を検知する。発熱検知部3は、
図17に示すように、複数の開閉部S
1~S
6と、複数の抵抗体R
1~R
6と、配線部4A~4Eと、電源部5と、コネクタ部6A~6Cと、開閉状態検知部7と、抵抗値変化検知部15と、発熱判定部16などを備えている。
【0077】
電気回路Eは、複数の開閉部S1~S6、複数の抵抗体R1~R6、配線部4A~4D、電源部5、開閉状態検知部7、抵抗値変化検知部15及び発熱判定部16などによって構成されている。電気回路Eは、き電線Fが所定温度以下であるときには、開閉部S1~S6のいずれも開いており非通電状態を維持している。一方、電気回路Eは、き電線Fが所定温度を超えて発熱したときには、開閉部S1~S6の少なくとも一つが閉じて非通電状態から通電状態に切り替わる。
【0078】
開閉部S
1~S
6は、
図6に示す開閉部S
1~S
6とは異なり、複数の抵抗体R
1~R
6毎に並列接続されており、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6から所定温度を超える熱を受けたときに閉じる。開閉部S
1~S
6は、
図17に示すように、通常時には電気接点を開いているa接点として機能し、き電線Fが所定温度以下であるときには電気接点を開いており、き電線Fが所定温度を超えたときには電気接点を閉じる。開閉部S
1~S
6は、
図6に示す開閉部S
1~S
6と同様に、き電線Fの中心線を中心として中心角60°となるように、き電線Fの外周部の周方向に間隔をあけて複数配置されている。配線部4A,4Bは、開閉部S
1~S
6と抵抗体R
1~R
6とをそれぞれ並列に接続している。配線部4Cは、並列に接続された開閉部S
1~S
6及び抵抗体R
1~R
6と、並列に接続された開閉状態検知部7及び抵抗値変化検知部15と、電源部5とを直列に接続している。
【0079】
開閉状態検知部7は、き電線Fの各検知箇所P
1~P
6の開閉部S
1~S
6の閉状態を検知することによってき電線Fの発熱を検知する。開閉状態検知部7は、き電線Fが所定温度を超えて開閉部S
1~S
6が閉じて、電気回路Eが非通電状態から通電状態に切り替わったときに、発熱検知信号を送信装置13に出力する。抵抗体R
1~R
6は、
図14及び
図16に示すようにき電線Fの温度が上昇したときに抵抗値が指数関数的に増加又は低下する。抵抗体R
1~R
6は、温度が上昇したときに抵抗値が増加又は低下するような抵抗温度係数を示す。
【0080】
抵抗値変化検知部15は、き電線Fの検知箇所P
1~P
6毎に発熱による抵抗体R
1~R
6の抵抗値の増加又は減少を検知する。抵抗値変化検知部15は、複数の抵抗体R
1~R
6の抵抗値を抵抗値信号として発熱判定部16に出力する。発熱判定部16は、複数の抵抗体R
1~R
6の抵抗値の変化量ΔRに基づいて、き電線Fの発熱箇所を判定する。発熱判定部16は、例えば、
図15に示すように、抵抗体R
1~R
6の抵抗値の変化量ΔR
1~ΔR
6が異なるため、き電線Fが発熱したときの抵抗体R
1~R
6の抵抗値の変化から検知箇所P
1~P
6のいずれが発熱したかを判定する。発熱判定部16は、検知箇所P
1~P
6毎の発熱の有無を発熱検知信号として送信装置13に出力する。
【0081】
次にこの発明の第7実施形態に係る発熱検知システム及び発熱検知装置の動作を説明する。
き電線Fが発熱して温度が上昇すると、抵抗体R1~R6の合成抵抗値が変化する。それぞれの抵抗体R1~R6の抵抗温度係数に特有の測定値が合成抵抗値として抵抗値変化検知部15に測定されて、いずれの検知箇所P1~P6でき電線Fが発熱したかを発熱判定部16が判定する。検知箇所P1~P6毎の発熱の有無を発熱検知信号として発熱判定部16が送信装置13に送信し、送信装置13が発熱検知信号を受信装置14に送信すると、作業員が所有する携帯端末装置や信号機器室内の通信機器などに、き電線Fの発熱が告知される。
【0082】
き電線Fがさらに発熱すると、き電線Fが発生する熱が導電部9を通じて開閉部S1~S6に伝達される。き電線Fが所定温度を超えると、開閉部S1~S6が開状態から閉状態に切り替わり、電気回路Eが通電状態になる。その結果、き電線Fが所定温度を超えて発熱したと開閉状態検知部7が検知し、開閉状態検知部7が発熱検知信号を送信装置13に送信する。送信装置13が発熱検知信号を受信装置14に送信すると、作業員が所有する携帯端末装置や信号機器室内の通信機器などに、き電線Fの発熱が告知される。
【0083】
この発明の第7実施形態に係る発熱検知装置には、第1実施形態~第6実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第7実施形態では、き電線Fの各検知箇所P1~P6から複数の抵抗体R1~R6が熱を受けたときに、この複数の抵抗体R1~R6の抵抗値の変化量ΔRが異なり、この複数の抵抗体R1~R6の抵抗値の変化を抵抗値変化検知部15が検知する。また、この第7実施形態では、き電線Fの各検知箇所P1~P6から所定温度を超える熱を受けたときに複数の開閉部S1~S6が開閉し、この複数の開閉部S1~S6の開閉状態を開閉状態検知部7が検知する。このため、き電線Fが発熱する前にき電線Fの温度上昇を事前に把握することができるとともに、き電線Fが発熱した後に迅速に警告を発生させることができる。
【0084】
(2) この第7実施形態では、複数の抵抗体R1~R6が直列接続されており、き電線Fの温度が上昇したときに抵抗値が指数関数的に増加又は低下し、き電線Fの検知箇所P1~P6毎に発熱による抵抗体R1~R6の抵抗値の増加又は低下を抵抗値変化検知部15が検知する。また、この第7実施形態では、複数の開閉部S1~S6が複数の抵抗体R1~R6毎に並列接続されており、き電線Fの各検知箇所P1~P6から所定温度を超える熱を受けたときに複数の開閉部S1~S6が閉じ、開閉状態検知部7がき電線Fの各検知箇所P1~P6の開閉部S1~S6の閉状態を検知することによって、このき電線Fの発熱を検知する。このため、き電線Fの温度上昇を検知箇所P1~P6毎に検知することができるとともに、き電線Fの異常発熱を簡単に検知することができる。
【0085】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、検知対象物がき電線Fである場合を例に挙げて説明したが、接続部Cを検知対象物とする場合についてもこの発明を適用することができる。例えば、き電線Fから分岐するき電分岐線とこのき電線Fとを接続する平行スリーブ、き電線Fを把持するスリーブ部を支持構造物に引き留める引留クランプ又は圧縮式引留クランプなどを検知対象物とする場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、検知対象物がき電線路である場合を例に挙げて説明したが、電気車に集電装置を通じて電力を供給する構造を有する電車線路を検知対象物とする場合についても、この発明を適用することができる。例えば、電気車の集電装置のすり板が接触するトロリ線を支持するちょう架線、トロリ線をちょう架線に吊り下げるハンガイヤー、き電線Fからトロリ線に電力を供給するフィードイヤーなどを検知対象物とする場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、検知対象物が電線路である場合を例に挙げて説明したが、剛体ちょう架式電車線路の剛体き電線、送電線又は配電線などの電線路などを検知対象物とする場合についても、この発明を適用することができる。
【0086】
(2) この実施形態では、き電線F及び接続部Cに発熱検知装置2A,2Bをグループ化して複数装着する場合を例に挙げて説明したが、き電線F又は接続部Cに発熱検知装置2A,2Bを単体で装着する場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、接続部Cの断面形状が略六角形である場合を例に挙げて説明したが、断面形状が六角形以外の多角形である場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、き電線Fの中心線を中心として中心角60°となるように、開閉部S1~S6又は抵抗器R0,R1~R6をき電線F又は接続部Cの外周部の周方向に等間隔で合計6個配置する場合を例に挙げて説明したが、任意の設置個数又は設置間隔でこれらを配置する場合についても、この発明を適用することができる。
【0087】
(3) この実施形態では、接続部Cの両端部に発熱検知装置2Bを装着する場合を例に挙げて説明したが、き電線Fと接続部Cとの境界部に跨るように発熱検知装置2A,2Bを装着する場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、配線部4A~4Eがリード線である場合を例に挙げて説明したが、配線部4A~4Eがフレキシブルプリント基板である場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この第3実施形態~第7実施形態では、発熱検知装置2A,2B側に発熱判定部16を備える場合を例に挙げて説明したが、受信装置14側に発熱判定部16を備える場合についても、この発明を適用することができる。この場合には、抵抗値変化検知部15が出力する抵抗値信号を送信装置13から受信装置14に送信し、受信装置14側の発熱判定部16によってき電線Fの発熱の有無を判定することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 発熱検知システム
2A,2B 発熱検知装置
3 発熱検知部
4A~4E 配線部
5 電源部
6A~6C コネクタ部
7 開閉状態検知部
8A,8B 装着部
9 導電部
10 弾性部
11 被覆部
12 収容部
13 送信装置
14 受信装置
15 抵抗値変化検知部
16 発熱判定部
F き電線(検知対象物)
C 接続部(検知対象物)
P1~P6 検知箇所
S1~S6 開閉部
R0~R6 抵抗体
I0 所定値
T0 温度(所定温度)
Tref 基準温度
RTH 所定値
ΔR,ΔR1~ΔR6 変化量