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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】気体採取装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20220721BHJP
   G01N 1/02 20060101ALN20220721BHJP
【FI】
G01N1/22 B
G01N1/02 W
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018114238
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019219172
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149216
【弁理士】
【氏名又は名称】浅津 治司
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100121120
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 尚
(72)【発明者】
【氏名】片山 仁
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-133231(JP,A)
【文献】特開2002-257695(JP,A)
【文献】特開平11-076202(JP,A)
【文献】特開平10-010115(JP,A)
【文献】特開2014-157039(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0289390(US,A1)
【文献】実開平01-168867(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/497
G01N 33/00-33/02
A61B 5/06- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッグ内の気体を採取するための気体採取装置であって、
装置筐体と、
開口部を有しており、前記装置筐体内の第1位置と、前記装置筐体外において前記開口部が露出することでバッグを収納するための第2位置との間で移動可能なバッグ収納部と、
前記装置筐体内で固定されており、前記バッグ収納部が第2位置にあるときに前記バッグ収納部内には進入せず、前記バッグ収納部が第1位置にあるときに前記バッグ収納部内に進入している採取針と、
前記バッグ収納部が第2位置にあるときに、前記バッグ収納部が第1位置に戻ることを許容する第1姿勢と、前記バッグ収納部が第1位置に戻ることを規制する第2姿勢とを取ることができるストッパを有する規制部と、
を備えた気体採取装置。
【請求項2】
前記バッグ収納部が第2位置に到達すれば、前記ストッパを自動的に第2姿勢に変更する姿勢変更機構をさらに備えている、請求項1に記載の気体採取装置。
【請求項3】
前記バッグ収納部が第2位置にある状態で、前記ストッパは初期状態として第1姿勢に維持され、
前記バッグ収納部に設けられ、作業者の操作によって前記ストッパを第1姿勢から第2姿勢に変更する姿勢変更機構をさらに備えている、請求項1に記載の気体採取装置。
【請求項4】
前記規制部は、前記開口部を開閉するためのカバーをさらに有しており、
前記カバーは、前記バッグ収納部が第1位置から第2位置に向かって移動するときに第2位置に到達するまでは前記開口部を閉じており、第2位置に到達すれば姿勢変更機構により前記開口部を開くことが可能である、請求項1に記載の気体採取装置。
【請求項5】
前記ストッパと前記カバーは一体に形成されており、
前記ストッパが第1姿勢の時に前記カバーは前記開口部を閉じており、前記ストッパが第2姿勢の時に前記カバーは前記開口部を開いている、請求項4に記載の気体採取装置。
【請求項6】
バッグ内の気体を採取するための気体採取装置であって、
装置筐体と、
開口部を有しており、前記装置筐体内の第1位置と、前記装置筐体外において前記開口部が露出することでバッグを収納するための第2位置との間で移動可能なバッグ収納部と、
前記装置筐体内で固定されており、前記バッグ収納部が第2位置にあるときに前記バッグ収納部内には進入せず、前記バッグ収納部が第1位置にあるときに前記バッグ収納部内に進入する、採取針と、
前記開口部を開閉するための部材であり、前記バッグ収納部が第1位置から第2位置に向かって移動するときに第2位置に到達するまでは前記開口部を閉じており、第2位置に到達すれば姿勢変更機構により前記開口部を開くことが可能である、カバーと、
を備えた気体採取装置。
【請求項7】
前記姿勢変更機構は、前記バッグ収納部が第2位置に到達すれば、前記カバーを自動的に開く、請求項6に記載の気体採取装置。
【請求項8】
前記バッグ収納部が第2位置にある状態で前記カバーは初期状態として閉じられており、
前記姿勢変更機構は、前記バッグ収納部に設けられ、作業者の操作によって前記カバーを開かせる、請求項6に記載の気体採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体採取装置、特に、バッグ内の気体を採取針によって採取する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2枚の矩形のフィルムを貼り合せた容器本体に開口を2つ設け、各開口にそれぞれ筒状体を嵌め、各筒状体にそれぞれキャップを設けた呼気採取容器(以後、バッグという)が開示されている。
特許文献1のバッグは、例えば、オートサンプラーにセットされる。オートサンプラーでは、採取針がバッグに突き刺さり、バッグ内の気体を吸い出してガス分析装置に送り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-166914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置ではオートサンプラーが開いた状態で採取針が露出する状態が生じ、作業者が採取針に接触する可能性があった。また、その問題を解消するための具体的な検討はなされてこなかった。
本発明の目的は、採取針が用いられる気体採取装置の安全性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0006】
本発明の一見地に係る気体採取装置は、バッグ内の気体を採取するための装置であって、装置筐体と、バッグ収納部と、採取針と、規制部とを備えている。
バッグ収納部は、開口部を有しており、装置筐体内の第1位置と、装置筐体外において開口部が露出することでバッグを収納するための第2位置との間で移動可能である。
採取針は、装置筐体内で固定されており、バッグ収納部が第2位置にあるときにバッグ収納部内には進入せず、バッグ収納部が第1位置にあるときにバッグ収納部内に進入している。
規制部は、ストッパを有している。ストッパは、バッグ収納部が第2位置にあるときに、バッグ収納部が第1位置に戻ることを許容する第1姿勢と、バッグ収納部が第1位置に戻ることを規制する第2姿勢とを取ることができる。
この装置では、バッグ収納部が第2位置にあるときにストッパを第2姿勢とすることで、バッグ収納部が意図せずに第2位置から第1位置に戻ることを規制できる。したがって、バッグ収納部の開口部が露出した状態でかつ採取針がバッグ収納部に進入する状態が生じにくい。
【0007】
気体採取装置は、バッグ収納部が第2位置に到達すれば、ストッパを自動的に第2姿勢に変更する姿勢変更機構をさらに備えていてもよい。
この装置では、姿勢変更機構によってストッパは自動的に第2姿勢に変更される。
【0008】
バッグ収納部が第2位置にある状態で、ストッパは初期状態として第1姿勢に維持されてもよい。気体採取装置は、姿勢変更機構をさらに備えていてもよい。姿勢変更機構は、バッグ収納部に設けられ、作業者の操作によってストッパを第1姿勢から第2姿勢に変更する。
この装置では、作業者が姿勢変更機構を操作することで、ストッパは第2姿勢に変更される。作業者はストッパではなく姿勢変更機構を操作できるので、作業性が良い。
【0009】
規制部は、開口部を開閉するためのカバーをさらに有していてもよい。その場合、カバーは、バッグ収納部が第1位置から第2位置に向かって移動するときに第2位置に到達するまでは開口部を閉じており、第2位置に到達すれば開口部を開くことが可能である。
この装置では、バッグ収納部が第2位置に到達するまでは、カバーによってバッグ収納部の開口部が閉じられている。したがって、バッグ収納部を引き出すときに、バッグ収納部の開口部が露出した状態で採取針がバッグ収納部に進入する状態が生じにくい。
【0010】
ストッパとカバーは一体に形成されていてもよい。その場合、ストッパが第1姿勢の時にカバーは開口部を閉じており、ストッパが第2姿勢の時にカバーは開口部を開いている。
この装置では、規制部の構造が簡単になる。
【0011】
本発明の他の見地に係る気体採取装置は、バッグ内の気体を採取するための装置であって、装置筐体と、バッグ収納部と、採取針と、カバーとを備えている。
バッグ収納部は、開口部を有しており、装置筐体内の第1位置と、装置筐体外において開口部が露出することでバッグを収納するための第2位置との間で移動可能である。
採取針は、装置筐体内で固定されており、バッグ収納部が第2位置にあるときにバッグ収納部内には進入せず、バッグ収納部が第1位置にあるときにバッグ収納部内に進入する。
カバーは、開口部を開閉するための部材であり、バッグ収納部が第1位置から第2位置に向かって移動するときに第2位置に到達するまでは開口部を閉じており、第2位置に到達すれば開口部を開くことが可能である。
この装置では、バッグ収納部が第2位置に到達するまでは、カバーによってバッグ収納部の開口部が閉じられている。したがって、バッグ収納部を引き出すときに、バッグ収納部の開口部が露出した状態で採取針がバッグ収納部に進入する状態が生じにくい。
【0012】
気体採取装置は、バッグ収納部が第2位置に到達すれば、カバーを自動的に開くカバー姿勢変更機構をさらに備えていてもよい。
この装置では、カバー姿勢変更機構によってカバーは自動的に第2姿勢に変更される。
【0013】
バッグ収納部が第2位置にある状態で、カバーは初期状態として閉じられていてもよい。気体採取装置は、カバー姿勢変更機構をさらに備えていてもよい。カバー姿勢変更機構は、バッグ収納部に設けられ、作業者の操作によってカバーを開かせる。
この装置では、作業者がカバー姿勢変更機構を操作することで、カバーは第2姿勢に変更される。作業者はカバーでなくカバー姿勢変更機構を操作すればよいので、作業性が良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る気体採取装置では、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の気体採取装置(引き出し・クローズ)の斜視図。
図2図1の一部を取り除いた状態の斜視図。
図3】気体採取装置(引き出し・オープン)の斜視図。
図4図3の一部を取り除いた状態の斜視図。
図5】気体採取装置の内部構成を示す斜視図。
図6】気体採取装置の内部部材の動作を示す模式的平面図。
図7】気体採取装置の内部部材の動作を示す模式的平面図。
図8】気体採取装置の内部部材の動作を示す模式的平面図。
図9】気体採取装置の内部部材の動作を示す模式的平面図。
図10】気体採取装置の内部部材の動作を示す模式的平面図。
図11】気体採取装置の内部部材の動作を示す模式的平面図。
図12】第2実施形態の気体採取装置(引き出し・クローズ)の斜視図。
図13図12の一部を取り除いた状態の斜視図。
図14】気体採取装置(引き出し・オープン)の斜視図。
図15図14の一部を取り除いた状態の斜視図。
図16】気体採取装置の内部構成を示す斜視図。
図17】第3実施形態の気体採取装置(引き出し・クローズ)の斜視図。
図18図17の一部を取り除いた状態の斜視図。
図19】気体採取装置の内部構成を示す斜視図。
図20】気体採取装置(引き出し・オープン)の斜視図。
図21図20の一部を取り除いた状態の斜視図。
図22】第4実施形態の気体採取装置(引き出し・クローズ)の斜視図。
図23図22の一部を取り除いた状態の斜視図。
図24】気体採取装置の内部構成を示す斜視図。
図25】気体採取装置(引き出し・オープン)の斜視図。
図26図25の一部を取り除いた状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1実施形態
(1)基本構成
図1図5を用いて、第1実施形態の気体採取装置1を説明する。図1は、第1実施形態の気体採取装置(引き出し・クローズ)の斜視図である。図2は、図1の一部を取り除いた状態の斜視図である。図3は、気体採取装置(引き出し・オープン)の斜視図である。図4は、図3の一部を取り除いた状態の斜視図である。図5は、気体採取装置の内部構成を示す斜視図である。
なお、以下の説明では、後述するバッグ収納部9のスライド方向を第1方向とし、第1方向に直交する水平方向を第2方向とする。
【0017】
気体採取装置1は、気体採取袋つまりガスバッグ3(図9図11)内のサンプルガスつまり気体(例えば、呼気)を採取するための装置である。より具体的には、気体採取装置1は、ガスバッグ3を収納することで、その中の気体を図示しない分析装置に供給可能とする装置である。ガスバッグ3内の気体は、配管接続されているガス分析装置に内蔵するポンプによって吸引される。
気体採取装置1は、装置筐体5を有している。装置筐体5は、内部が空洞の箱部材である。装置筐体5は、図5図11に示すように、内部空間5aと、装置手前側の開口部5bとを有している。内部空間5aには、後述する各種部材が設けられている。
【0018】
気体採取装置1は、図5に示すように、採取針7を有している。採取針7は、後述するガスバッグ3内に刺さって気体を吸引するための装置である。採取針7は、内部空間5aにおいて固定されている。採取針7は第1方向に延びており、採取針7の先端7aは、装置筐体5の装置手前側を向いている。より具体的には、採取針7の先端7aは、内部空間5a内ではあるが、開口部5bに近接した位置に配置されている。
【0019】
気体採取装置1は、バッグ収納部9を有している。バッグ収納部9は、後述するガスバッグ3を収納するための部材である。バッグ収納部9は、図3図5に示すように、上方に開いた第1開口部9aを有している。バッグ収納部9は、装置筐体5内の第1位置(収納位置)と、装置筐体5外において第1開口部9aが露出することでガスバッグ3を収納するための第2位置(引き出し位置)との間で、開口部5bを通って移動可能である。具体的には、バッグ収納部9は、側方にスライド移動することで第1位置と第2位置との間で移動可能である。なお、バッグ収納部9から見て、第1方向の装置筐体5側を奥側といい、第1方向の装置筐体5と反対側を手前側という。
バッグ収納部9が第1位置にあるときに、採取針7の先端7aはバッグ収納部9に進入している(図6)。バッグ収納部9が第2位置にあるときに、採取針7の先端7aはバッグ収納部9内には進入していない(図9)。
【0020】
バッグ収納部9の第1方向奥側には、図6図11に示すように、内部空間5a内に通じる第2開口部9bが形成されている。
バッグ収納部9の前側プレート9cには、取手9dが設けられている。
【0021】
気体採取装置1は、図1及び図2に示すように、カバー部材11を有している。
カバー部材11は、カバー13を有している。カバー13は、バッグ収納部9が第2位置にある状態で、第1開口部9aを開閉するための部材である。
【0022】
カバー13は、平板状の部材であり、第1開口部9aに対応した形状である。カバー13は、バッグ収納部9に回動自在に固定され、第1開口部9aを閉じる第1位置(図1図2)と、第1開口部9aを開く第2位置(図3図4)との間で回動可能である。具体的には、カバー13の第1方向手前側部分(具体的には、後述するストッパ15の一部分)が、図2及び図5に示すように、バッグ収納部9の第1方向手前側部分に回動自在に連結されている。これにより、カバー13は、第1位置では第1方向奥側端がバッグ収納部9の上部に一致しており、第2位置では第1方向奥側端がバッグ収納部9の上部から上方に離れた位置になるように、回動する。
カバー13は、図1図5に示すように、第2方向両端に把持操作部51を有している。把持操作部51は、バッグ収納部9の第2方向側面から第2方向にわずかに突出している。したがって、図1及び図3に示すように、作業者が例えば指53によって下から操作してカバー13を容易に開くことができる。なお、把持操作部51はバッグ収納9の出し入れを妨げない寸法に設定されている。
【0023】
カバー部材11は、ストッパ15を有している。ストッパ15は、バッグ収納部9が第2位置にあるときに、バッグ収納部9が第1位置に戻ることを許容する第1姿勢と、バッグ収納部9が第1位置に戻ることを規制する第2姿勢とを取ることができる。具体的には、ストッパ15とカバー13は一体に形成されている。そのため、ストッパ15は、カバー13が第1位置の時に第1姿勢を取り、カバー13が第2位置の時に第2姿勢を取る。このようにカバー13とストッパ15が一体に形成されているので、構造が簡単になる。
さらに具体的には、ストッパ15は、カバー13の長手方向両端に設けられた板状部材である。ストッパ15は、具体的には、90度の円弧状外周面を有する板状部材である。ストッパ15は、図1及び図2に示すように第1姿勢ではバッグ収納部9内に入り込んでおり、バッグ収納部9が開口部5bを出入りするのを制限しない。ストッパ15は、図3図5に示すように第2姿勢では、開口部5bの外側近傍で装置筐体5の一部に対して第1方向に近接する位置に配置されるので、バッグ収納部9が開口部5bから内部空間5aに入るのを規制する。
【0024】
気体採取装置1は、安全板19を有している。安全板19は、バッグ収納部9を第2位置に配置したときに採取針7の先端7aがバッグ収納部9内に露出することを防止するための部材である。安全板19は、具体的には、バッグ収納部9の奥側の壁を構成する板状部材である。ただし、安全板19は、バッグ収納部9に対して第1方向に所定範囲内で移動できる。安全板19の装置筐体5に対する移動は、図6に示すように、第1開口部9a近傍の第1位置と、第1開口部9aからバッグ収納部9の第1方向幅だけ離れた第2位置との間の範囲S内に制限されている。
安全板19には、採取針7が貫通可能な孔19aが形成されている。
【0025】
気体採取装置1は、固定ブロック41を有している。固定ブロック41には、採取針7が固定されている。さらに、固定ブロック41には、収納部シャフト43及び安全板シャフト45を支持するリニアガイド(図示せず)が設けられている
気体採取装置1は、カラー47を有している。カラー47は、収納部シャフト43に固定され、安全板19の第1方向奥側に配置されている。カラー47は、バッグ収納部9を開くときに、安全板19を一緒に引き出すことを可能にする(例えば、図7)。また、バッグ収納部9を完全に開いたときに(例えば、図8)、カラー47は、安全板19がさらに第1方向奥側に移動することを規制することで、採取針7が露出することを防止する。
なお、カラー47の代わりに、バッグ収納部に折り返し部を形成して、折り返し部によってカラー47と同じ機能を実現してもよい。具体的には、折り返し部は、バッグ収納部9を開くときに、安全板19を一緒に引き出すことを可能にする。また、バッグ収納部9を完全に開いたときに、折り返し部は、安全板19がさらに第1方向奥側に移動することを規制することで、採取針7が露出することを防止する。
【0026】
(2)基本動作
図6図11を用いて、気体採取装置1において、バッグ収納部9を引き出して、ガスバッグ3をバッグ収納部9に収納して、バッグ収納部9を閉じる一連の動作を説明する。図6図11は、気体採取装置の内部部材の動作を示す模式的平面図である。
【0027】
図6では、バッグ収納部9は第1位置にある。したがって、採取針7の先端7aはバッグ収納部9内に位置している。このとき、安全板19は、第1位置と第2位置の間の範囲S内の任意の位置にある。
図7では、バッグ収納部9は第1位置から第2位置への途中でわずかに引き出された位置にある。上記の動作では安全板19は、カラー47によって移動させられている。
この場合も採取針7は、安全板19の孔19aから突出して、バッグ収納部9内に位置している。ただし、カバー部材11のカバー13が第1開口部9aを閉じているので、作業者が採取針7の先端7aに触れることはできない。つまり、バッグ収納部9の第1開口部9aが露出した状態で採取針7がバッグ収納部9に進入する状態が生じない。
【0028】
図8では、バッグ収納部9は第2位置にある。この状態から、作業者がカバー部材11のカバー13を第1姿勢から第2姿勢に変更する。つまり、第1開口部9aが開かれる。ただし、図8に示すように、採取針7の先端7aがバッグ収納部9内には進入していない。さらに、カラー47が安全板19のストッパとして機能することで、安全板19が固定されているので、採取針7が7の先端7aが安全板19からバッグ収納部9内に露出していない。したがって、作業者が採取針7の先端7aに触れることはない。
さらに、カバー部材11のカバー13が第2姿勢であるので、ストッパ15は第2姿勢を取っている。つまり、バッグ収納部9が第1位置に戻ることが規制されている。このため、例えば図8に示す第2位置からバッグ収納部9が意図せずに第1方向奥側に移動することを防止できる。つまり、バッグ収納部9の第1開口部9aが露出した状態でかつ採取針7がバッグ収納部9に進入する状態が生じない。
【0029】
図9では、作業者によって、ガスバッグ3がバッグ収納部9内に入れられる。次に、作業者がカバー13を第1姿勢に変更し、そのままバッグ収納部9を第1方向奥側に移動させる。
図10では、バッグ収納部9が第2位置と第1位置との間に位置している。また、ガスバッグ3は安全板19に当接している。この後に、安全板19は、ガスバッグ3に押されて第1方向奥側に移動する。
【0030】
図11では、バッグ収納部9が第1位置に位置しており、採取針7の先端7aがガスバッグ3内に入り込んでいる。つまり、図10から図11に移行する途中で、採取針7の先端7aがガスバッグ3に突き刺さる。
この状態で、バッグ収納部9内の気体は、採取針7から吸引されて図示しない測定装置に送られる。それにより、ガス測定が実行される。
【0031】
2.第2実施形態
前記実施形態ではカバー部材のカバーは作業者によって直接開閉されていたが、カバーは開閉機構を介して開閉されてもよい。
図12図16を用いて、そのような実施形態としての第2実施形態を説明する。図12は、第2実施形態の気体採取装置(引き出し・クローズ)の斜視図である。図13は、図12の一部を取り除いた状態の斜視図である。図14は、気体採取装置(引き出し・オープン)の斜視図である。図15は、図14の一部を取り除いた状態の斜視図である。図16は、気体採取装置の内部構成を示す斜視図である。
なお、基本的な構成は第1実施形態と同じであるので、それら構成の説明は省略する。
【0032】
気体採取装置1は、ねじりバネ17を有している。ねじりバネ17は、バッグ収納部9が第2位置に到達すれば、カバー13を自動的に開くカバー姿勢変更機構である。これにより、カバー13は自動的に第2姿勢に変更される。
【0033】
バッグ収納部9が第2位置にある状態(第1実施形態の図8)では、カバー部材11のカバー13は、ねじりバネ17によって、第1姿勢から第2姿勢に変更される。つまり、第1開口部9aが開かれる。ただし、図8に示すように、採取針7の先端7aがバッグ収納部9内には進入していない。さらに、カラー47が安全板19のストッパとして機能することで、安全板19が固定されているので、採取針7が7の先端7aが安全板19からバッグ収納部9内に露出していない。したがって、作業者が採取針7の先端7aに触れることはない。
さらに、カバー部材11のカバー13が第2姿勢であるので、ストッパ15は第2姿勢を取っている。つまり、バッグ収納部9が第1位置に戻ることが規制されている。このため、例えば図8に示す第2位置からバッグ収納部9が意図せずに第1方向奥側に移動することを防止できる。つまり、バッグ収納部9の第1開口部9aが露出した状態でかつ採取針7がバッグ収納部9に進入する状態が生じない。
【0034】
作業者によって、ガスバッグ3がバッグ収納部9内に入れられると(第1実施形態の図9)、次に、作業者がカバー13を第1姿勢に変更し、そのままバッグ収納部9を第1方向奥側に移動させる。
【0035】
3.第3実施形態
第2実施形態ではカバー13を第2姿勢に変更する動作は、ねじりバネ17によって自動的に行われていた。しかし、カバー13の姿勢変更は、作業者の操作によって行われてもよい。
図17図21を用いて、そのような実施形態を第3実施形態として説明する。図17は、第3実施形態の気体採取装置(引き出し・クローズ)の斜視図である。図18は、図17の一部を取り除いた状態の斜視図である。図19は、気体採取装置の内部構成を示す斜視図である。図20は、気体採取装置(引き出し・オープン)の斜視図である。図21は、図20の一部を取り除いた状態の斜視図である。
【0036】
気体採取装置1は、図18及び図19に示すように、姿勢変更機構21を有している。姿勢変更機構21は、バッグ収納部9に設けられ、作業者の操作によってカバー部材11を第1姿勢から第2姿勢に変更するための機構である。姿勢変更機構21は、上下方向の操作によってカバー部材11を回動させるリンク機構である。
姿勢変更機構21は、第1部材23と、第2部材25とを有している。第1部材23は、第1部分23aと、第2部分23bと、操作部23cとを有している。第1部分23aは、第2方向に長く延びている。第2部分23bは、第1部分23aの両端から奥側に向かって斜め上方に延びている。第2部材25は、第1端がカバー13又はストッパ15に固定され、第2端が第1部材23の第2部分23bの端部に回動自在に連結されている。
操作部23cは、第1部材23の前面側に設けられた突起であり、前側プレート9cに形成されたスリット9e内に配置されている。スリット9eは上下方向に長く延びており、そのため操作部23cはスリット9eに沿って上下方向に移動可能である。
【0037】
図17及び図18に示すようバッグ収納部9を第2位置に引き出した状態で、カバー部材11は初期状態として第1姿勢に維持されている。そして、操作部23cはスリット5dの下方に位置している。
この状態から作業者が操作部23cを上側に移動させると、第2部材25が第1部材23によって駆動されながら、カバー部材11を回動させる。その結果、図20及び図21に示すように、カバー部材11が第2姿勢になる。
この装置では、作業者が姿勢変更機構21を操作することで、カバー部材11は第2姿勢に変更される。作業者はカバー部材11ではなく姿勢変更機構21を操作できるので、作業性が良い。
【0038】
4.第4実施形態
図22図26を用いて、カバー13の姿勢変更を作業者の操作によって行う他の実施形態を第4実施形態として説明する。図22は、第4実施形態の気体採取装置(引き出し・クローズ)の斜視図である。図23は、図22の一部を取り除いた状態の斜視図である。図24は、気体採取装置の内部構成を示す斜視図である。図25は、気体採取装置(引き出し・オープン)の斜視図である。図26は、図25の一部を取り除いた状態の斜視図である。
【0039】
気体採取装置1は、図23及び図24示すように、姿勢変更機構31を有している。姿勢変更機構31は、バッグ収納部9に設けられ、作業者の操作によってカバー部材11を第1姿勢から第2姿勢に変更するための機構である。姿勢変更機構31は、回転方向の操作によってカバー部材11を回動させるリンク機構を採用している。
姿勢変更機構31は、回転部材32と、第1部材33と、第2部材35とを有している。回転部材32は、円板部32aと、操作部32bとを有している。操作部32bは、円板部32aの前面側に設けられた突起であり、前側プレート9cに形成された孔9f内に配置されている。そのため操作部32bは孔9fにおいて回転可能である。回転部材32の奥側には、突起32cが設けられている(後述)。
第1部材33は、第1部分33aと、第2部分33bとを有している。第1部分33aは、第2方向に延びている。第1部分33aは、図24に示すように、第2方向に延びるスリット33cを有しており、その中に回転部材32の突起32cが挿入されている。第2部分33bは、第1部分33aから奥側に向かって斜め上方に延びている。第2部材35は、第1端がカバー13又はストッパ15に固定され、第2端が第1部材33の第2部分33bの端部に回動自在に連結されている。
【0040】
図22及び図23に示すようバッグ収納部9を第2位置に引き出した状態で、カバー部材11は初期状態として第1姿勢に維持されている。
この状態から作業者が操作部32bを回動させると、突起32cが、スリット33c内を移動しながら第1部材33を上側に移動させる。その結果、第2部材35が第1部材33によって駆動されながら、カバー部材11を回動させる。その結果、図25及び図26に示すように、カバー部材11が第2姿勢になる。なお、突起32cとスリット33cは互いに摺動するので、そこでの動作をスムーズにするために、少なくとも摺動箇所にはPOM(ポリアセタール)、PE(ポリエチレン)などの滑り性の良い樹脂材が用いられる。
この装置では、作業者が姿勢変更機構31を操作することで、カバー部材11は第2姿勢に変更される。作業者はカバー部材11ではなく姿勢変更機構31を操作できるので、作業性が良い。
【0041】
5.実施形態の共通事項
上記第1~第4実施形態は、下記の構成及び機能を共通に有している。
気体採取装置(例えば、気体採取装置1)は、バッグ(例えば、ガスバッグ3)内の気体を採取するための装置であって、装置筐体(例えば、装置筐体5)と、バッグ収納部(例えば、バッグ収納部9)と、採取針(例えば、採取針7)と、規制部(例えば、カバー部材11)とを備えている。
バッグ収納部は、開口部(例えば、第1開口部9a)を有しており、装置筐体内の第1位置と、装置筐体外において開口部が露出することでバッグを収納するための第2位置との間で移動可能である。
採取針は、装置筐体内で固定されており、バッグ収納部が第2位置にあるときにバッグ収納部内には進入せず、バッグ収納部が第1位置にあるときにバッグ収納部内に進入している。
規制部は、ストッパ(例えば、ストッパ15)を有している。ストッパは、バッグ収納部が第2位置にあるときに、バッグ収納部が第1位置に戻ることを許容する第1姿勢と、バッグ収納部が第1位置に戻ることを規制する第2姿勢とを取ることができる。
この装置では、バッグ収納部が第2位置にあるときにストッパを第2姿勢とすることで、バッグ収納部が意図せずに第2位置から第1位置に戻ることを規制できる。したがって、バッグ収納部の開口部が露出した状態でかつ採取針がバッグ収納部に進入する状態が生じにくい。
【0042】
6.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施例及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
ストッパとカバーは一体でなくてもよい。
ストッパとカバーは、いずれか一方のみが設けられていてもよい。
バッグ収納部は、スライドではなく、回動によって第1位置と第2位置との間を移動してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、バッグ内の気体を採取針によって採取する装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 :気体採取装置
3 :バッグ
5 :装置筐体
5a :内部空間
5b :開口部
7 :採取針
9 :バッグ収納部
9a :第1開口部
9b :第2開口部
11 :カバー部材
13 :カバー
15 :ストッパ
21 :姿勢変更機構
31 :姿勢変更機構
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