(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20220721BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220721BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220721BHJP
H05B 33/06 20060101ALI20220721BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H05B33/04
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/06
G09F9/30 330
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2018117904
(22)【出願日】2018-06-21
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮本 光秀
(72)【発明者】
【氏名】秋元 肇
(72)【発明者】
【氏名】松本 優子
(72)【発明者】
【氏名】多田 裕介
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-097361(JP,A)
【文献】特開2011-040413(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0038598(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0074333(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/06
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素が設けられる画素領域において、前記複数の画素の各々に対応して設けられた第1電極と、
前記画素領域の周囲に設けられた周辺領域において、前記画素領域に隣接したコンタクト領域に延長され、前記複数の画素に亘って設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層と、
前記コンタクト領域に設けられ、前記第2電極と電気的に接続される第3電極と、
前記コンタクト領域において、任意の点から1μm以上100μm以内の範囲で1つ以上設けられる、複数の島状の有機層と、
を備え、
前記第2電極は、MgAg合金を含み、
前記第3電極は、無機膜を含む、表示装置。
【請求項2】
前記第3電極は、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金、アルミニウム、チタンの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第3電極は、前記コンタクト領域において、互いに隣接する複数の島状の有機層の間に設けられた開口を介して前記第2電極と接続される、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記発光層は、有機EL材料を含む、請求項1に記載に表示装置。
【請求項5】
前記コンタクト領域に設けられ、前記第2電極と前記第3電極とが接続する接続部は、その外周におけ
る2点間の距離
の最大値が1μm以上100μm以下である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を表示する表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electro Luminescence、以下有機EL)素子を用いる有機EL表示装置がある。
【0003】
トップエミッション型の有機EL表示装置の場合、上部電極を通して有機EL素子の発光層から光を取り出すため、上部電極に透明電極又は半透明電極を用いる。発光効率を向上させるためにマイクロキャビティ効果を利用する場合、上部電極にMgAg合金などの半透明の材料が電極材料として使用される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上部電極が対向電極である場合、対向電極と配線基板に設けられた電極とは、有機EL表示装置の画像を表示する表示領域の外側に設けられるコンタクト領域で電気的に接続される。MgAg合金は無機膜との密着性が低いため、対向電極がMgAg合金で構成される場合、コンタクト領域で対向電極が剥離する虞があり、有機EL表示装置の歩留まりが下がるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、コンタクト領域でのMgAg膜の剥離を防止し、有機EL表示装置の歩留まりを向上させることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る表示装置は、複数の画素が設けられる画素領域において、前記複数の画素の各々に対応して設けられた第1電極と、前記複数の画素に亘って設けられ、前記画素領域の外側に設けられたコンタクト領域に延長された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層と、前記コンタクト領域に設けられた第3電極と、前記第3電極を覆い、前記第3電極を露出するコンタクトホールが設けられた有機絶縁層と、前記コンタクトホールに設けられ、外周の任意の2点間の最大距離が1μm以上100μm以下である、前記第2電極と前記第3電極との接続部と、を備える。
【0008】
本発明の一実施形態に係る表示装置は、複数の画素が設けられる画素領域において、前記複数の画素の各々に対応して設けられた第1電極と、前記画素領域の周囲に設けられた周辺領域において、前記画素領域に隣接したコンタクト領域に延長され、前記複数の画素に亘って設けられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた発光層と、前記コンタクト領域に設けられ、前記第2電極と電気的に接続される第3電極と、前記コンタクト領域において、任意の点から1μm以上100μm以内の範囲で1つ以上設けられる、複数の島状の有機層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の構成を示した概略図である。
【
図3】
図2に示したコンタクトホールの拡大図である。
【
図4】
図2におけるB-B線に対応する断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の表示装置を平面視した場合の拡大図である。
【
図8】
図6におけるD-D線に対応する断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の表示装置を平面視した場合の拡大図である。
【
図10】
図9におけるE-E線に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有さない。
【0011】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。なお、以下の説明では、特に断りのない限り、断面視においては、基板の一主面に対して画素領域、コンタクト領域が配置される側を「上」又は「上面」といい、その逆を「下」又は「下面」として説明する。
【0012】
また、本明細書において「αはA、B又はCを含む」、「αはA,B及びCのいずれかを含む」、「αはA,B及びCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αはA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0013】
また、本明細書中において、「表示装置」とは、有機EL素子を用いて画像を表示する装置を指す。したがって、表示装置には、有機EL素子を含む表示モジュール(表示パネルともいう)、及び表示モジュールに対して他の要素(例えば、カバーガラスなど)を組み合わせた表示装置が含まれる。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置100の構成を示した概略図であり、有機EL表示装置100を平面視した場合における概略構成を示している。本明細書では、有機EL表示装置100を画面(画像領域)に垂直な方向から見た様子を「平面視」と呼ぶ。尚、
図1において、後述するゲート線(走査線GL)が延長する方向をx方向、後述する映像信号線(映像信号線DL)が延長する方向をy方向と示している。
【0015】
表示装置100は、基板102上に、画素領域104、周辺領域103、第1駆動回路108、第2駆動回路110、フレキシブルプリント回路114が設けられている。画素領域104には複数の画素106が配列される。周辺領域103は画素領域104の周辺に設けられる。周辺領域103には、第1駆動回路108、第2駆動回路110、フレキシブルプリント回路114が配置される。第1駆動回路108は、画素領域104の各画素106にゲート線GLを介して走査信号を出力し、第2駆動回路110は映像信号線DLを介して各画素106に映像信号を出力する。フレキシブルプリント回路114には端子電極116が設けられる。端子電極116は、外部回路から表示装置100を駆動する信号及び電力が入力される。
【0016】
図1では詳細に示されないが、画素106は有機EL素子を含む。有機EL素子の詳細は後述される。有機EL素子は各画素106に対応して個別に形成される第1電極と、画素領域104の略一面に形成される第2電極と、第1電極と第2電極との間の有機層を含む。本実施形態において、表示装置100は、光を有機EL素子の上側から取り出すトップエミッション型の表示装置である。
【0017】
周辺領域103において、画素領域104に隣接して、画素領域104の外側にコンタクト領域112が設けられる。コンタクト領域112は、有機EL素子の第2電極が、端子電極116と接続される第3電極と電気的に接続される領域となる。本実施形態においては、第2電極はコンタクト領域112の略全面に重畳するものとする。第3電極は、基板102に設けられた配線を介して端子電極116と接続されてもよい。また、第3電極は、基板102に設けられ、端子電極116と接続された配線であってもよい。
【0018】
図2は、
図1に示した領域Aの拡大図である。
図2に示すように、コンタクト領域112において、第2電極は、複数のコンタクトホール140を介して第3電極と接続される。コンタクトホール140においては、第2電極と第3電極とが接続する接続部分が設けられている。コンタクトホール140における第2電極と第3電極との接続部分の外周の任意の2点間の最大距離は1μm以上100μm以下である。
【0019】
図3は、
図2に示したコンタクトホール140の拡大図である。本実施形態のように第2電極がコンタクトホール140全体に重畳する場合、第2電極及び第3電極との接続部分の外周は、コンタクトホール140の底部の外周に相当する。したがって、コンタクトホール140の底部の外周における任意の2点間の最大距離は、1μm以上100μm以下である。つまり、
図3に示すように、コンタクトホール140が矩形の場合、コンタクトホール140のx方向の幅w1、y方向の幅w2、及び対角方向の幅w3のうち、w3が最大である場合、1μm≦w3≦100μmである。尚、
図2において、コンタクトホールを明確に示すために、第2電極及び第3電極は省略されている。
【0020】
尚、コンタクトホール140に形状は、矩形に限定されるわけではない。例えば、コンタクトホール140が円形であれば、コンタクトホールの径の大きさが1μm以上100μm以下であればよい。また、例えば、コンタクトホール140が楕円形であれば、コンタクトホール140の長径が1μm以上100μm以下であればよい。
【0021】
図4は、
図2におけるB-B線に対応する断面構造を示す。
図4に示すように、画素106は基板102上に配置される。画素106はトランジスタ118と有機EL素子120を含んで構成される。
【0022】
基板102としては、ガラス基板、有機樹脂フィルム等が適用される。基板102の第1面にはベースコート層122が設けられる。ベースコート層122は無機絶縁膜で形成される。トランジスタ118は、半導体層124、ゲート絶縁層126及びゲート電極128が積層された構造を有する。トランジスタ118は、半導体層124とゲート電極128とが重畳する領域がチャネル形成領域となり、その外側に一導電型を付与する不純物元素が添加されたソース・ドレイン領域130を有する。
【0023】
有機EL素子120は、第1電極142、有機層146、第2電極148が積層された構造を有する。本実施形態においては、第1電極142がアノード、第2電極148がカソードであるものとする。第1電極142は、各画素106に個別に配置され、トランジスタ118と電気的に接続される。具体的に第1電極142は、ソース・ドレイン電極134と電気的に接続される。ソース・ドレイン電極134は、またトランジスタ118のソース・ドレイン領域130と電気的に接続される。これにより、有機EL素子120は実質的にトランジスタ118と電気的に接続された状態となる。有機EL素子120はトランジスタ118によって発光が制御される。第2電極148は、画素領域104の略一面に形成され、画素領域104の外側のコンタクト領域112で第3電極136と電気的に接続されている。
【0024】
尚、トランジスタ118のゲート電極128とソース・ドレイン電極134との間には層間絶縁層132が設けられている。また、ソース・ドレイン電極134と第1電極142との間には平坦化層138が設けられている。さらに、平坦化層138上には、第1電極142の周縁部を覆う隔壁層144が設けられている。
【0025】
図4で示す積層構造において、ベースコート層122、ゲート絶縁層126、層間絶縁層132は無機絶縁膜で形成される。無機絶縁膜としては、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等が用いられる。一方、平坦化層138、隔壁層144は、有機絶縁膜で形成される。有機絶縁膜としては、例えば、ポリイミド膜、アクリル膜、エポキシ膜等が用いられる。また、半導体層124は、シリコン半導体、又は酸化物半導体によって形成される。ゲート電極128は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、モリブデン-タングステン合金(MoW)等の金属材料で形成される。ソース・ドレイン電極134は、例えば、アルミニウム(Al)膜の下層側及び上層側にチタン(Ti)膜が積層された構造を有する。また、第3電極136は、ソース・ドレイン電極134と同じ導電層、又はゲート電極128と同じ導電層で形成される。
図4は、第3電極136が、ソース・ドレイン電極134と同じ導電層で設けられる態様を示す。
【0026】
コンタクト領域112において、第3電極136は平坦化層138及び隔壁層144の下層側に配置され、平坦化層138と隔壁層144によって覆われている。このため第3電極136は、平坦化層138及び隔壁層144に形成されたコンタクトホール140によって上面が露出される。第2電極148は、画素領域104から周辺領域103に延長され、コンタクトホール140において第3電極136と電気的に接続される。
【0027】
有機EL素子120の上層側には封止層150が設けられる。封止層150は、複数の膜が積層された構造を有する。
図4では、一例として、封止層150が第1無機絶縁膜152、有機樹脂膜154及び第2無機絶縁膜156が積層された構造を有する場合を示している。封止層150は、異なる素材を組み合わせた積層構造により、封止性能を高められている。例えば、第1無機絶縁膜152に欠陥が含まれても、有機樹脂膜154がその欠陥部分を埋め込み、さらに第2無機絶縁膜156を設けることで当該欠陥による封止性能の劣化を補うことのできる構造を有している。
【0028】
図5は、有機EL素子120の詳細を示す。有機EL素子120は、有機層146が第1電極142と第2電極148とに挟まれた構造を有する。有機層146は、有機エレクトロルミネセンス材料を含む発光層164に加え、キャリア輸送特性(例えば、キャリアの移動度)が異なる複数の層が積層されていてもよい。例えば、有機層146は、第1電極142側から、ホール注入層158、ホール輸送層160、電子ブロック層162、発光層164、ホールブロック層166、電子輸送層168、電子注入層170が積層された構造を有していてもよい。
【0029】
有機EL素子120の第1電極142はアノードであり、有機層146にホールを注入するため、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)導電性材料で形成される。例えば、第1電極142は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の導電性金属酸化物材料を用いて作製することができる。第1電極142は導電性金属酸化物材料を用いてスパッタリング法や真空蒸着法により作製される。
【0030】
ホール注入層158は、第1電極142から発光層164へのホールの注入障壁を下げると共に、第1電極142とホール輸送層160とのエネルギーレベルの相違を緩和し、ホールの注入を容易にするために設けることが好ましい。ホール注入層158は、フタロシアニン系、アミン系、カルバゾール系の有機材料が用いられる。
【0031】
ホール輸送層160に用いられるホール輸送層材料は、後述する発光層164へのホールの移動率を高めるため、適度なイオン化ポテンシャルを有すると同時に、発光層164から電子がホール輸送層160側に移動することを防止する程度の電子親和力を有する材料であることが好ましい。ホール輸送層160は、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物等のホール移動度が高い有機材料が用いられる。
【0032】
発光層164は、ホスト材料とドーパント材料を組み合わせて形成することができる。このような、ホスト材料とドーパント材料の組み合わせを用いると、励起状態のホスト分子のエネルギーがドーパント材料の分子へ移動してドーパント材料の分子がエネルギーを放出して発光する。ホスト化合物としては、電子輸送材料、正孔輸送材料を用いることができる。例えば、Alq3等のキノリノール金属錯体のホスト材料にピラン系誘導体、キナクリドン誘導体や、クマリン誘導体をドープしたもの、後述する電子輸送材料のビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリン)-4-フェニルフェノール-アルミニウム錯体等のホスト材料に、ペリレン等の縮合多環芳香族をドープしたもの、あるいはホール輸送材料の4,4’-ビス(m-トリルフェニルアミノ)ビフェニル(TPD)等のホスト材料にルブレン等をドープしたもの、カルバゾール系化合物のホスト材料に、イリジウム錯体や白金錯体をドープしたもの等を用いることができる。
【0033】
尚、発光層164は、上述のような材料を用いて、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応して設けられていてもよいし、白色発光を得るために、赤(R)色に対応する層、緑(G)色に対応する層、青(B)に対応する層が積層された構造、又は青(G)と黄色(Y)に対応する層が積層された構造を有していてもよい。
【0034】
電子輸送層168に用いられる電子輸送層材料は、発光層164への電子の移動率を高めるため、適度なイオン化ポテンシャルを有すると同時に、発光層164からホールが電子輸送層168側に移動することを防止する程度の電子親和力を有する材料であることが好ましい。電子輸送層168は、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キノリノール系の金属錯体等の有機物質を用いて形成することができる。
【0035】
電子注入層170は、第2電極148の仕事関数と、電子輸送層168の電子親和力(LUMO準位)のエネルギー差が大きいことに起因して電子の注入が困難になるのを緩和するために設けられる。具体的には、電子注入層170は、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、カルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、イッテルビウム(Yb)等の希土類、又はリチウム(Li)等と電子輸送材料との共蒸着膜、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(CsCO3)等のフッ化物、酸化物や炭酸塩などから選択される仕事関数の小さい物質で形成することができる。
【0036】
ホールブロック層166、電子ブロック層162は、発光層164を挟むように設けられる。ホールブロック層166は、第1電極142の側から発光層164を通過して第2電極148側へホールが移動することを抑制し、電子ブロック層162は、第2電極148の側から発光層164を通過して第1電極142側へ電子が移動することを抑制するために設けられる。このようなホールブロック層166及び電子ブロック層162を設けることにより、発光層164でホールと電子が再結合する確率を向上させ、有機EL素子120の発光効率(内部量子効率)を向上させることができる。
【0037】
電子ブロック層162の材料は、LUMO準位が高く、即ち、電子親和力が小さく、HOMO準位がホール輸送層のHOMO準位に近い材料で形成されることが好ましい。例えば、電子ブロック層162は、スターバーストアミン系材料、TPD等の有機材料を用いて形成することができる。
【0038】
ホールブロック層166の材料としては、HOMO準位が低く(イオン化ポテンシャルの大きい)、LUMO準位が電子輸送層のLUMO準位に近い材料で形成されることが好ましい。例えば、トリアリールボラン誘導体等、BAlq等の有機材料を用いて形成することができる。
【0039】
第2電極148は、カソードであり、有機層146に電子を注入するため、仕事関数の小さい導電性材料で形成されることが好ましい。本実施形態において、表示装置100は、トップエミッション型であるため、第2電極148の材料は、透明電極又は半透明電極を用いる。マイクロキャビティ効果によって有機EL素子120の発光効率を向上させるために、本実施形態では、第2電極148として、マグネシウムと銀の合金(MgAg合金)から形成された半透明電極を用いる。
【0040】
尚、上記で例示される、有機層146を構成する有機材料は一例に過ぎず、上記以外にも公知の材料を用いることができる。また、有機層146の積層構造も
図5に示す構造に限定されない。例えば、有機層146は、ホール注入層、ホールブロック層166、電子ブロック層162等が適宜省略された構造を有していてもよい。
【0041】
上述したように、第2電極148の材料であるMgAg合金は無機膜との密着性が低いため、MgAg合金を含む第2電極148は第3電極136との密着性が低い。そのため、本実施形態においては、コンタクトホール140における、第2電極148及び第3電極136との接続部分の外周において、任意の2点間の最大距離は、1μm以上100μm以下に設定する。第2電極148と第3電極136との接続部における任意の2点間の最大距離を100μm以下に限定することにより、第2電極148と第3電極136との剥離を防止して、表示装置100の歩留まりを向上させることができる。また、コンタクトホール140の周辺及びコンタクトホール140の側壁で第2電極148と接触している平坦化層138及び隔壁層144は、有機絶縁膜である。そのため、第2電極148と平坦化層138及び隔壁層144との密着性は、第2電極148と第3電極136との密着性よりも高い。したがって、第2電極148がコンタクトホール140の周辺及びその側壁で、平坦化層138及び隔壁層144と密着することより、第2電極148がコンタクトホール140から剥離することが防止される。その結果、第2電極148と第3電極136とが剥離することが防止され、表示装置100の歩留まりが向上される。
【0042】
以上に述べた第1実施形態では、第2電極148がコンタクト領域112の略全面に重畳する場合を説明した。しかしながら、第2電極148はコンタクトホール140に少なくとも一部が重畳していればよい。
【0043】
[第2実施形態]
図6は、本実施形態の表示装置100Aを平面視した場合の拡大図である。尚、表示装置100Aの概略構成は、
図1を参照して説明した表示装置100の概略構成と略同様であるため詳細な説明は省略する。
【0044】
図6に示すように、本実施形態に係る表示装置100Aでは、第2電極148Aがコンタクト領域112Aに設けられたコンタクトホール140Aに一部が重畳する。詳細には、第2電極148Aの端部が、コンタクトホール140Aの少なくとも一部と重畳する。
【0045】
図7は、
図6に示した領域Cの拡大図である。
図8は、
図6におけるD-D線に対応する断面構造を示す。第1実施形態と同様にコンタクト領域112Aにおいて、第2電極148Aは、複数のコンタクトホール140Aを介して第3電極136と接続される。第3電極136は、コンタクトホール140Aによって露出されている。上述したように、本実施形態では、第2電極148Aの端部が、コンタクトホール140Aの少なくとも一部と重畳している。コンタクトホール140Aにおける、第2電極148Aと、第3電極136との接続部分の外周において、任意の2点間の最大距離は1μm以上100μm以下である。つまり、
図7に示すように、コンタクトホール140Aが矩形の場合、コンタクトホール140Aにおける第2電極148Aと、第3電極136との接続部分のx方向の幅w4、y方向の幅w5、及び対角方向の幅w6のうち、w6が最大である場合、1μm≦w6≦100μmである。尚、
図6及び
図7において、コンタクトホールを明確に示すために、第3電極136は省略されている。
【0046】
第2電極148Aと第3電極136との接続部分の外周における、任意の2点間の最大距離を100μm以下に限定することにより、第2電極148Aと第3電極136との剥離を防止して、表示装置100Aの歩留まりを向上させることができる。
【0047】
以上に述べた第1実施形態及び第2実施形態では、コンタクトホール140、140Aでの第2電極148、148Aと第3電極136との接続部分の外周における、任意の2点間の最大距離を1μm以上100μm以下に限定している場合を説明した。しかしながら、コンタクト領域における第2電極及び第3電極の接続態様はこれらに限定されるわけではない。
【0048】
[第3実施形態]
図9は、本実施形態の表示装置100Bを平面視した場合の拡大図である。尚、表示装置100Bの概略構成は、
図1を参照して説明した表示装置100の概略構成と略同様であるため詳細な説明は省略する。
【0049】
図9に示すように、本実施形態に係る表示装置100Bでは、コンタクト領域112Bにおいて、島状の有機層801が複数設けられる。コンタクト領域112Bでは、任意の点qから1μm以上100μm以内の範囲内で1つ以上の島状の有機層801が設けられる。換言すると、任意の点qを中心した、半径r(1≦r≦100)μmの円の内側には1つ以上の島状の有機層801が設けられる。
【0050】
図10は、
図9におけるE-E線の沿った断面図である。
図10に示すように、コンタクト領域112Bにおいて、島状の有機層801が設けられる。有機層801は、隔壁層144と同一の材料で形成されてもよい。有機層801は、コンタクト領域112Bまで延在された隔壁層144及び平坦化層138に設けられた開口803によって、隔壁層144から分離されて形成されてもよい。有機EL素子120の第2電極148Bは、コンタクト領域112Bに延長される。コンタクト領域112Bにおいて、隣接し合う隔壁層144と島状の有機層801との間、及び互いに隣接する島状の有機層801の間に設けられた開口803によって第3電極136Bが露出される。第2電極148Bは、開口803において第3電極136Bと接続する。
【0051】
本実施形態では、コンタクト領域112Bにおける、任意の点qから1μm以上100μm以内の範囲内で1つ以上の有機層801を設けることにより、第2電極148Bと第3電極136Bとの接続部分の大きさを1μm以上100μm以内に設定する。これにより、第2電極148Bと第3電極136Bとの剥離を防止して、表示装置100Bの歩留まりを向上させることができる。また、コンタクトホール領域112Bにおいて、開口803の周辺及び開口803の側壁で第2電極148と接触している平坦化層138及び隔壁層144又は島状の有機層801は、有機絶縁膜である。そのため、第2電極148と平坦化層138及び隔壁層144又は島状の有機層801との密着性は、第2電極148と第3電極136との密着性よりも高い。したがって、第2電極148が開口803の周辺及びその側壁で、平坦化層138及び隔壁層144又は島状の有機層801と密着することより、第2電極148が開口803から剥離することが防止される。その結果、第2電極148と第3電極136とが剥離することが防止され、表示装置100Bの歩留まりが向上される。
【0052】
[実施例]
730mm×920mmのガラス基板上に、
図4及び
図5を参照して説明した第1実施形態に係る有機EL表示装置100に基づいて、有機EL表示装置を作製した。この際、コンタクトホールにおける第2電極(カソード)と、該第2電極と接続される第3電極との接続部分の外周の任意の2点間の最大距離を100μmとした有機EL表示装置を実施例1とした。また、比較例として、コンタクトホールにおける第2電極(カソード)と第3電極との接続部分の外周の任意の2点間の最大距離を200μm、及びコンタクトホールにおける第2電極(カソード)と第3電極との接続部分の外周の任意の2点間の最大距離を500μmとした有機EL表示装置を比較例1及び比較例2として準備した。
【0053】
以上に述べた実施例1、比較例1及び比較例2における第2電極と第3電極との剥離の発生率は以下の表1のとおりである。
【表1】
【0054】
以上の表1から明らかなように、コンタクト領域において、第2電極と第3電極との接続部分の外周の任意の2点間の最大距離を1μm以上100μm以下にすることにより、第2電極と第3電極とが剥離することが防止され、表示装置の歩留まりが向上されることが理解される。
【符号の説明】
【0055】
100,100A,100B・・・表示装置、102・・・基板、104・・・画素領域、106・・・画素、108・・・第1駆動回路、110・・・第2駆動回路、112,112A,112B・・・コンタクト領域、114・・・端子領域、116・・・端子電極、118・・・トランジスタ、120・・・有機EL素子、122・・・ベースコート層、124・・・半導体層、126・・・ゲート絶縁層、128・・・ゲート電極、130・・・ソース・ドレイン領域、132・・・層間絶縁層、134・・・ソース・ドレイン電極、136,136B・・・第3電極、138・・・平坦化層、140・・・開口部、142・・・第1電極、144・・・隔壁層、146・・・有機層、148,148A,148B・・・第2電極、150・・・封止層、152・・・第1無機絶縁膜、154・・・有機樹脂膜、156・・・第2無機絶縁膜、801・・・有機層、803・・・開口