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特許7108481居眠り運転防止走行制御方法及び車両走行制御装置
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  • 特許-居眠り運転防止走行制御方法及び車両走行制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】居眠り運転防止走行制御方法及び車両走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 28/06 20060101AFI20220721BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220721BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20220721BHJP
   B60W 30/188 20120101ALI20220721BHJP
   F02D 41/08 20060101ALI20220721BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
B60K28/06 A
G08G1/16 F
B60W50/14
B60W30/188
F02D41/08
F02D45/00 362
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018130594
(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公開番号】P2020006847
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 正明
(72)【発明者】
【氏名】松田 洋一
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-162173(JP,A)
【文献】特開2016-068799(JP,A)
【文献】特開2004-216955(JP,A)
【文献】特開2010-196480(JP,A)
【文献】特開2002-276425(JP,A)
【文献】特開2002-332884(JP,A)
【文献】特開昭60-015240(JP,A)
【文献】米国特許第09725036(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 28/06
G08G 1/16
B60W 50/14
B60W 30/188
F02D 41/08
F02D 45/00
G08B 21/06
B60K 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
居眠り運転の可能性又は居眠り運転が検出された場合、エンジンのトルクを変動させて車両の振動を発生させることにより運転者の覚醒を図る居眠り運転防止走行制御方法であって、
前記車両がアイドリング状態で停車中である場合に、アイドリング状態において各気筒に噴射される燃料量の平均値がほぼ同一となるように燃料噴射量を増減する気筒間制御における前記燃料噴射量の増減量を、前記各気筒に噴射される燃料量の平均値のばらつきを生ずる量に変更し前記気筒間制御を実行することで、前記エンジンのトルクの変動を発生させることを特徴とする居眠り運転防止走行制御方法。
【請求項2】
居眠り運転の可能性又は居眠り運転が検出された場合、エンジンのトルクを変動させて車両の振動を発生させることにより運転者の覚醒を図る居眠り運転防止走行制御方法であって、
前記車両がアイドリング状態で停車中である場合に、エンジン回転数の変動を平滑化してエンジン回転数を目標アイドリング回転数近傍に維持可能とするアイドリングガバナ制御において、前記エンジン回転数の変動量の平滑化に用いられるPID制御におけるPID定数を、前記エンジン回転数の変動量の平滑化のレベルを粗くする設定に変更し前記アイドリングガバナ制御を実行することで、前記エンジンのトルクの変動を発生させることを特徴とする居眠り運転防止走行制御方法。
【請求項3】
前記車両が走行中である場合に、アクセルの踏み込み又はアクセルの開放の際に生ずるエンジン回転数の変動を平滑化する駆動系振動制御における前記平滑化のレベルを設定する制御定数を、前記平滑化のレベルを粗くする設定に変更し前記駆動系振動制御を実行することで、前記エンジンのトルクの変動を発生させることを特徴とする請求項1、又は、請求項2記載の居眠り運転防止走行制御方法。
【請求項4】
車両の動作制御を実行可能に構成された電子制御ユニットを有し、前記車両の走行を制御可能に構成されてなる車両走行制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
居眠り運転の可能性又は居眠り運転の検出信号が入力された場合、エンジンのトルクを変動させて車両の振動を発生させることにより運転者を覚醒せしめ得るよう構成されてなるものであって、前記車両がアイドリング状態で停車中である場合に、アイドリング状態において各気筒に噴射される燃料量の平均値がほぼ同一となるように燃料噴射量を増減する気筒間制御を実行可能とし、
前記気筒間制御における前記燃料噴射量の増減量を、前記各気筒に噴射される燃料量の平均値のばらつきを生ずる量に変更し前記気筒間制御を実行することで、前記エンジンのトルクの変動を発生させ得るよう構成されてなることを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項5】
車両の動作制御を実行可能に構成された電子制御ユニットを有し、前記車両の走行を制御可能に構成されてなる車両走行制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
居眠り運転の可能性又は居眠り運転の検出信号が入力された場合、エンジンのトルクを変動させて車両の振動を発生させることにより運転者を覚醒せしめ得るよう構成されてなるものであって、前記車両がアイドリング状態で停車中である場合に、エンジン回転数の変動を平滑化してエンジン回転数を目標アイドリング回転数近傍に維持可能とするアイドリングガバナ制御を実行可能とし、
前記アイドリングガバナ制御において、前記エンジン回転数の変動量の平滑化に用いられるPID制御におけるPID定数を、前記エンジン回転数の変動量の平滑化のレベルを粗くする設定に変更し前記アイドリングガバナ制御を実行することで前記エンジンのトルクの変動を発生させ得るよう構成されてなることを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項6】
前記電子制御ユニットは、
前記車両が走行中である場合に、アクセルの踏み込み又はアクセルの開放の際に生ずるエンジン回転数の変動を平滑化する駆動系振動制御を実行可能とし、
前記駆動系振動制御における前記平滑化のレベルを設定する制御定数を、前記平滑化のレベルを粗くする設定に変更し前記駆動系振動制御を実行することで前記エンジンのトルクの変動を発生させ得るよう構成されてなることを特徴とする請求項4、又は、請求項5記載の車両走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両における居眠り運転防止のための車両走行制御装置に係り、特に、構成の簡素化、汎用性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の動作が電子制御される自動車両においては、自動車事故を未然に防ぎ、安全な車両走行を確保する等の観点から、様々な事故対策、安全対策が採られていることは良く知られている通りである。
自動車事故の発生原因の中で多くの割合を占めるものとして居眠り運転を挙げることができ、居眠り運転による自動車事故の発生を防止する観点から、様々な方策が提案、実用化されている。
【0003】
例えば、運転者の居眠りの可能性や居眠りが検出された場合に、シートベルトを締めつけて運転者の覚醒を図り、事故防止を図った装置等が提案、実用化されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-15240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来装置にあっては、シートベルトを締めつけにより運転者の確実な覚醒を確保できるものではあるが、居眠りの可能性や居眠りが検出された際に、シートベルトを自動的に締めつけるための駆動装置が必要な構成となっている。このため、既存の車両に、この居眠り運転防止装置を適用するには、シートベルトを締めつけるための駆動装置を新たに増設する必要が生ずるのみならず、その配設スペースの確保等の様々な課題が生ずるため、現実的には困難であり、装置としての汎用性に欠けると共に、設置使用における自由度が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、簡易な構成で、居眠り運転を確実に防止でき、既存の車両にも後付可能で汎用性の高い車両走行制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る居眠り運転防止走行制御方法は、
居眠り運転の可能性又は居眠り運転が検出された場合、エンジンのトルクを変動させて車両の振動を発生させることにより運転者の覚醒を図る居眠り運転防止走行制御方法であって、
前記車両がアイドリング状態で停車中である場合に、アイドリング状態において各気筒に噴射される燃料量の平均値がほぼ同一となるように燃料噴射量を増減する気筒間制御における前記燃料噴射量の増減量を、前記各気筒に噴射される燃料量の平均値のばらつきを生ずる量に変更し前記気筒間制御を実行することで、前記エンジンのトルクの変動を発生させるよう構成されてなるものである。
また、上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る車両走行制御装置は、
車両の動作制御を実行可能に構成された電子制御ユニットを有し、前記車両の走行を制御可能に構成されてなる車両走行制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
居眠り運転の可能性又居眠り運転の検出信号が入力された場合、エンジンのトルクを変動させて車両の振動を発生させることにより運転者を覚醒せしめ得るよう構成されてなるものであって、前記車両がアイドリング状態で停車中である場合に、アイドリング状態において各気筒に噴射される燃料量の平均値がほぼ同一となるように燃料噴射量を増減する気筒間制御を実行可能とし、
前記気筒間制御における前記燃料噴射量の増減量を、前記各気筒に噴射される燃料量の平均値のばらつきを生ずる量に変更し前記気筒間制御を実行することで、前記エンジンのトルクの変動を発生させ得るよう構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転者を覚醒させるための追加の部品や装置を必要とすることなく、簡易な構成で、居眠り運転を確実に防止することができ、しかも、既存の車両に後付け可能であり、汎用性の高い車両走行制御装置を提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態における車両走行制御装置の構成例を示す構成図である。
図2】本発明の実施の形態における車両走行制御装置によって実行される居眠り運転防止走行制御処理の手順を示すサブルーチンフローチャートである。
図3】アクセル操作に伴うエンジン回転数の変化特性例を示す特性線図であって、図3(A)は駆動系振動制御が無い場合のアクセル操作に伴うエンジン回転数の変化特性例を示す特性線図、図3(B)は従来の駆動系振動制御を実行した場合のアクセル操作に伴うエンジン回転数の変化特性例を示す特性線図である。
図4】アイドリング状態におけるエンジン回転数の変動特性の一例を示す特性線図であって、図4(A)は気筒間制御が無い場合のアイドリング状態におけるエンジン回転数の変動特性の一例を示す特性線図、図4(B)は従来の気筒間制御を実行した場合のアイドリング状態におけるエンジン回転数の変動特性の一例を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図4を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における車両走行制御装置の構成について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における車両走行制御装置は、車両300に搭載された電子制御ユニット100を主たる構成要素として構成されてなるものである。
この電子制御ユニット100は、内燃機関としてのエンジン200の動作制御の実行を可能に構成されたものであり、それ自体は、電子制御を可能とした従来の自動車両に搭載されたものと基本的に同一のものである。
【0011】
すなわち、本発明の実施の形態における電子制御ユニット100は、従来同様、エンジン200の回転制御や燃料噴射弁(図示せず)の燃料噴射制御など、車両の走行制御として必要な種々の制御が実行可能に構成されたものであることを前提とする。
さらに、本発明の実施の形態における電子制御ユニット100においては、気筒間制御や駆動系振動制御、さらに、アイドルガバナ制御などのエンジン200のトルク制御を可能とした既存の制御が適宜選択されて実行可能となっていることを前提とする。なお、気筒間制御、駆動系振動制御及びアイドルガバナ制御の具体的内容については後述する。
【0012】
かかる電子制御ユニット100は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータを中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を備えると共に、入出力インターフェイス回路(図示せず)を主たる構成要素として構成されてなるものである。
【0013】
この電子制御ユニット100には、図示されないセンサ等により検出された車両の動作制御に必要な各種の信号、例えば、大気圧、エンジン回転数、アクセル開度、エンジン冷却水温等が入力されて、燃料噴射制御等に供されるものとなっている。
さらに、本発明の実施の形態における電子制御ユニット100には、運転者の居眠りの可能性があることを示す検出信号又は運転者の居眠りの検出信号が外部から入力されるものとなっている。なお、運転者の居眠りの可能性又は運転者の居眠りを検出する方法については後述する。
【0014】
図2には、電子制御ユニット100により実行される本発明の実施の形態における居眠り運転防止走行制御処理の手順を示すサブルーチンフローチャートが示されており、以下、同図を参照しつつ、その内容について説明する。
電子制御ユニット100による処理が開始されると、最初に、居眠り検出信号が入力されたか否かが判定される(図2のステップS100参照)。
ここで、居眠検出信号は、居眠り運転の可能性を検出した場合の検出信号、及び、居眠り運転を検出した場合の検出信号の双方を包含し、これらの検出信号は外部装置から入力されるものとなっている。
【0015】
ここで、居眠り運転の可能性、又は、居眠り運転の検出について説明する。
運転者の居眠りの可能性、又は、居眠りを検出する技術(以下、説明の便宜上、「居眠り検出技術」と称する)、装置は、既に、様々なものが提案、実用化されていることは良く知られている通りである。
一方、如何なる居眠り検出技術や装置を用いるかは、本発明の実施の形態における居眠り運転防止走行制御処理の実行に直接何らかの影響を与えるものではないので、その選択は任意であり、特定の技術、装置に限定されるものではない。
【0016】
なお、居眠り検出の具体的な方策としては、例えば、赤外線により瞳孔検出を行い、瞳孔の開き具合により居眠りの可能性があるか、又は、居眠りであるか否かを判定する技術がある。また、運転者の心拍を検出し、その変化に基づいて居眠りの可能性や居眠りであることを検出する技術もある。さらには、カメラを用いて運転者の目や瞼の変化を検出し、その検出結果に基づいて居眠り検出を行う技術などが比較的良く知られている。
【0017】
しかして、ステップS100において、居眠り検出信号が入力されたと判定された場合(YESの場合)には、次述するステップS110の処理へ進むこととなる。
一方、居眠り検出信号は、入力されていないと判定された場合(NOの場合)には、以後の一連の処理を実行する必要はないため、処理は一旦終了され、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。図示されないメインルーチンにおいては、他の処理を実行した後、再び、この一連の処理が開始されることとなる。
【0018】
ステップS110においては、車両300が走行中であるか否かが判定される。
ステップS110において、車両300は走行中であると判定された場合(YESの場合)には、ステップS120の処理へ進む。
一方、車両300は走行中ではないと判定された場合(NOの場合)、すなわち、換言すれば、停車中でアイドリング状態にある場合には、ステップS130の処理へ進む。
【0019】
ステップS120においては、特別車両振動モードの実行と共に報知処理が実行される。
特別車両振動モードは、既存の駆動系振動制御を後述するように、車両300の振動発生に流用し、それによって運転者の覚醒を図るものである。
本発明の実施の形態において前提とする既存の駆動系振動制御は、アクセル(図示せず)の踏み込みと開放の際に生ずるエンジン回転数の変動を平滑化して、快適性の向上等を図ったものである。
【0020】
例えば、図3(A)には、上述の駆動系振動制御が無い場合のアクセル操作時におけるエンジン回転数の変動特性の一例を示す特性線が示されており、同図を参照しつつ、既存の駆動系振動制御について説明する。
同図において、二点鎖線の矢印で示された区間は、アクセルの踏み込みに対応してエンジン回転数が上昇している区間であり、点線の矢印で示された区間は、アクセルが開放されてエンジン回転数が低下している区間である。なお、横軸は計測時間を表している。
【0021】
エンジン回転数が上昇する際、又は、エンジン回転数が低下する際、いずれにおいても、エンジン回転数は直線的に上昇、又は、下降するのではなく、比較的短い周期で上昇と下降とを繰り返しながら、すなわち、変動を伴いながら全体として上昇、又は、下降するのが通常である。
このようなエンジン回転数の変動は、運転者や乗員にとっては不快なものであり、車両300の快適性や商品性の向上等を図るという観点からは無いことが望ましい。
【0022】
駆動系振動制御は、上述のエンジン回転数の変動を抑圧、低減すべく、燃料噴射量を制御してエンジン回転数の上昇、又は、下降が円滑となるようにしたものである。このような駆動系振動制御を実行した場合、上述した図3(A)に示されたようなエンジン回転数の変化は、図3(B)に示されたように大凡直線的となり、先に述べたような運転者や乗員の不快感を払拭し、快適走行が確保される。
【0023】
上述のように、駆動系振動制御は、通常、エンジン回転数の変動を平滑化すべく、試験結果やシミュレーション結果等に基づいて、最適な制御定数が設定されている。
本発明の実施の形態における特別車両振動モードは、駆動系振動制御における上述の制御定数を、敢えて、図3(A)に示されたようなエンジン回転数の変動が生ずる設定に変更、すなわち、換言すれば、エンジン回転数の変動の平滑化のレベルを粗くする設定に変更し、車両300を振動させることで運転者の覚醒を図るものである。
【0024】
制御定数は、車両300の具体的な仕様や運転者の覚醒を促す適切な振動の大きさ等を考慮して、試験結果やシミュレーション結果等に基づいて定めるのが好適である。
【0025】
上述のようにして特別車両振動モードが実行されると共に、報知処理が行われる。
すなわち、報知処理は、運転者に、特別車両振動モードによって発生した車両の振動が、エンジン200の異常動作によるものではなく、居眠り運転の可能性又は居眠り運転であることを運転者に認識させるためものであることを、運転者に知らしめる動作である。
【0026】
具体的には、例えば、車両300の計器盤(図示せず)の表示灯を点灯させる方法がある。この場合、既存の表示灯を流用し、例えば、特定の点灯パターンで点灯させることで、報知動作であることを運転者に認識させると好適である。
また、近年、計器盤には、文字や図形等の表示を可能とした液晶表示素子を備えたものがあるが、この液晶表示素子にソフトウェア処理により、居眠り運転の可能性又は居眠り運転であることを知らしめる特定の文字や図形等を点滅表示させる等の方法を採ると好適である。
【0027】
なお、特別車両振動モード及び報知の実行時間は、任意である。
すなわち、所定時間経過したら終了するようにしても良いし、また、例えば、計器盤(図示せず)等の特定のスイッチを用いたいわゆるリセット操作がなされるまで継続するようにしても良い。
特別車両振動モード及び報知が実行された後は、一旦、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
【0028】
一方、ステップS130においては、特別アイドリングモードと報知処理が実行される。
特別アイドリングモード処理は、アイドリング状態において、以下に説明するようにして車両300の振動を発生させて運転者の覚醒を図るものである。
本発明の実施の形態においては、特別アイドリングモードの実行のため、電子制御ユニット100は、既存の気筒間制御を実行できるものであることが前提である。
【0029】
ここで、既存の気筒間制御処理について説明する。
気筒間制御処理は、アイドリング状態において実行されるもので、各燃料噴射弁(図示せず)の噴射特性のばらつき(不均一性)や経年変化により生ずる噴射特性の差等に起因して各気筒(図示せず)に噴射される燃料量がばらつくことで生ずるエンジン回転数の変動を低減、抑圧するために行われるものである。
【0030】
例えば、図4(A)には、気筒間制御処理が無い場合において、アイドリング状態でのエンジン回転数の変動特性の一例を示す特性線が示されており、同図を参照しつつ、既存の気筒間制御について説明する。
同図の特性例の場合、エンジン回転数の変動幅は、回転数で大凡20rpm程となっている。なお、図4において横軸は計測時間を表している。
このようなエンジン回転数の変動は、個人差はあるものの、運転者、乗員にとって決して心地良いものではなく、不快感を招くことが多い。
【0031】
そのため、既存の気筒間制御処理は、各気筒に噴射される燃料量の平均値がほぼ同一となるように、燃料噴射量を増減することで、上述のようなエンジン回転数の変動を低減、抑圧したものである。
このような気筒間制御を実行した場合、アイドリング時のエンジン回転数の変動量は、例えば、図4(B)に示されたように大凡3rpm程度に抑圧され、運転者、乗員が不快感を抱くことはほぼ皆無となる。
【0032】
本発明の実施の形態における特別アイドリングモード処理は、上述の気筒間制御における各燃料噴射弁の燃料噴射量の増減量を、敢えて、各気筒に噴射される燃料量の平均値にばらつきが生ずる量に変更し、図4(A)に示されたように、通常の気筒間制御処理の実行時(図4(B)参照)と異なり、エンジン回転数の変動を生じさせて運転者の覚醒を図るものである。
燃料噴射量の増減量は、車両300の具体的な仕様や運転者の覚醒を促す適切なエンジン回転数の変動量等を考慮して試験結果やシミュレーション結果等に基づいて定めるのが好適である。
【0033】
上述のようにして特別アイドリングモード処理が実行されると共に、報知処理が行われる。
報知処理は、先にステップS120で述べたものと基本的に同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【0034】
上述した本発明の実施の形態においては、特別車両振動モード制御、特別アイドリングモード制御として、既存の駆動系振動制御、既存の気筒間制御を流用する構成としたが、必ずしもこの構成に限定される必要は無い。
駆動系振動制御及び気筒間制御は、いずれもエンジントルクを制御する点で共通しており、このようにエンジントルクを所望の範囲で変えることができる既存の制御であれば、特別車両振動モード制御や特別アイドリングモード制御に流用可能である。
【0035】
例えば、特別アイドリングモード制御に流用可能なものとして、一般にアイドリングガバナ制御と称される既存の制御がある。
このアイドリングガバナ制御は、アイドリング時におけるエンジン回転数の変動を平滑化して、エンジン回転数を目標アイドリング回転数近傍に維持可能とするものである。
【0036】
通常、アイドリングガバナ制御においては、PID制御に基づくフィードバック制御が用いられており、エンジン回転数の変動量の平滑化は、PID制御におけるPID定数を適宜好適な値に選定することで行われるものとなっている。
したがって、特別アイドリングモード制御にアイドリングガバナ制御を流用する場合には、平滑化のレベルが粗くなるようにPID定数の設定変更を行うことで、適度なエンジン回転数の変動を生じさせて、運転者の覚醒を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
既存の車両にも後付可能で汎用性が高く、簡易な構成で、居眠り運転の確実な防止が所望される車両走行制御装置に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
100…電子制御ユニット
200…エンジン
図1
図2
図3
図4