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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】還元剤タンク及び排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20220721BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
B01D53/94 222
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018157369
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020029845
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】真野 佑輝
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-156224(JP,A)
【文献】特開昭58-061020(JP,A)
【文献】特表2016-534916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(5)から排出される排気ガスの浄化に用いられる液体還元剤を貯留する還元剤タンク(60)において、
前記還元剤タンク(60)の底部(67)に接して設けられ、前記液体還元剤を圧送するポンプ(41)の吸込み口(41a)が位置する吸入エリア(65)を囲むように形成されるとともに、周壁(61a~61c)の一部に前記液体還元剤を流通可能な開放部(69)を有する壁部材(61)を備え
前記還元剤タンク(60)の平面形状において、第1の方向の長さが、前記第1の方向に直交する第2の方向の長さよりも長くなっており、
前記壁部材(61)は、前記第1の方向の一端側に備えられ、
前記壁部材(61)は、前記第1の方向の一端側から他端側に向けて上端部の高さが高くな
ことを特徴とする還元剤タンク。
【請求項2】
前記還元剤タンク(61)の底部(67)に前記ポンプ(41)が取り付けられる
ことを特徴とする請求項に記載の還元剤タンク。
【請求項3】
前記吸入エリア(65)内に、前記液体還元剤の液面までの距離に応じた信号を出力するレベルセンサ(45)が設けられ、
前記壁部材(61)の高さは、前記還元剤タンク(60)の前記第1の方向の一端側の位置が他端側の位置よりも高くなるように前記還元剤タンク(60)が傾いた場合であっても、前記レベルセンサ(45)により超音波(46)を発信可能な範囲(47)内に尿素水溶液が滞留可能に設定される
ことを特徴とする請求項に記載の還元剤タンク。
【請求項4】
液体還元剤を貯留する還元剤タンク(60)と、前記液体還元剤を内燃機関(5)の排気通路に供給する還元剤供給装置(30)と、前記排気通路に配設されて前記液体還元剤を用いて前記内燃機関(5)から排出される排気ガス中の窒素酸化物を還元する選択還元触媒(13)と、を備えた排気浄化装置(10)において、
前記還元剤タンク(60)は、
前記還元剤タンク(60)の底部(67)に接して設けられ、前記液体還元剤を圧送するポンプ(41)の吸込み口(41a)が位置する吸入エリア(65)を囲むように形成されるとともに、周壁(61a~61c)の一部に前記液体還元剤を流通可能な開放部(69)を有する壁部材(61)を備え
前記還元剤タンク(60)の平面形状において、第1の方向の長さが、前記第1の方向に直交する第2の方向の長さよりも長くなっており、
前記壁部材(61)は、前記第1の方向の一端側に備えられ、
前記壁部材(61)は、前記第1の方向の一端側から他端側に向けて上端部の高さが高くな
ことを特徴とする排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤タンク及び排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体に搭載されるディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガス中にはNOX(窒素酸化物)が含まれる。かかるNOXを還元して窒素や水等に分解することにより排気ガスを浄化する装置として、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが実用化されている。
【0003】
尿素SCRシステムは、液体還元剤として尿素水溶液を使用し、尿素水溶液が分解することにより生成されるアンモニアを排気ガス中のNOXと反応させることにより、NOXを分解するシステムである。尿素水溶液は、還元剤タンクに貯蔵される。還元剤タンク内の尿素水溶液は、ポンプによって圧送されるとともに、電磁弁等の制御弁によって調量されて排気通路内に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-122391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、還元剤タンクを移動体に搭載する際のレイアウト上の制約等により、ポンプによる液体還元剤の吸込み口が還元剤タンクの水平方向の端部側に位置する場合がある。この場合、路面の傾き等によって、液体還元剤の吸込み口が位置する側の高さが反対側の高さよりも高くなるようにして車体が傾くと、吸込み口の周囲の液体還元剤が少量になりやすい。その結果、液体還元剤を排気通路に供給することができなくなって、排気ガスの浄化が不十分となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、車体が傾いた場合であっても液体還元剤の供給を継続可能な還元剤タンク及び排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、内燃機関を備えた車両に搭載され、内燃機関から排出される排気ガスの浄化に用いられる液体還元剤を貯留する還元剤タンクであって、還元剤タンクの底部に接して設けられ、液体還元剤を圧送するポンプの吸込み口が位置する吸入エリアを囲むように形成されるとともに、周壁の一部に液体還元剤を流通可能な開放部を有する壁部材を備える還元剤タンクが提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、液体還元剤を貯留する還元剤タンクと、液体還元剤を内燃機関の排気通路に供給する還元剤供給装置と、排気通路に配設されて液体還元剤を用いて内燃機関から排出される排気ガス中の窒素酸化物を還元する選択還元触媒と、を備えた排気浄化装置であって、還元剤タンクは、還元剤タンクの底部に接して設けられ、液体還元剤を圧送するポンプの吸込み口が位置する吸入エリアを囲むように形成されるとともに、周壁の一部に液体還元剤を流通可能な開放部を有する壁部材を備える排気浄化装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、車体が傾いた場合であっても液体還元剤の供給を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る排気浄化装置の構成例を示す模式図である。
図2】同実施形態に係る還元剤タンクを上方から見た模式図である。
図3】同実施形態に係る還元剤タンクを側方から見た模式図である。
図4図2の還元剤タンクを左側から見た模式図である。
図5図2の還元剤タンクを右側から見た模式図である。
図6】壁部材の一例を示す斜視図である。
図7】壁部材を備えない還元剤タンクが水平に維持された状態を示す説明図である。
図8】壁部材を備えない還元剤タンクが傾いた状態を示す説明図である。
図9】同実施形態に係る還元剤タンクが水平に維持された状態を示す説明図である。
図10】同実施形態に係る還元剤タンクが傾いた状態を示す説明図である。
図11】ポンプユニットがレベルセンサを備える例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<1.尿素SCRシステムの構成例>
まず、尿素SCRシステム10の構成例について説明する。図1は、尿素SCRシステム10の構成例を示す模式図である。
【0013】
尿素SCRシステム10は、ディーゼルエンジン等の内燃機関5の排気系に設けられる排気浄化装置である。尿素SCRシステム10は、内燃機関5を備えた車両、建設機械又は農機等の移動体や発電機等の機器に搭載される。尿素SCRシステム10は、液体還元剤として尿素水溶液を用いて、内燃機関5から排出される排気ガス中のNOXを分解して排気ガスを浄化する。尿素水溶液としては、例えば凍結温度が最も低い約32.5%濃度の尿素水溶液が用いられる。
【0014】
尿素SCRシステム10は、排気管11の途中に配設された選択還元触媒13と、選択還元触媒13よりも上流の排気通路内に尿素水溶液を供給する還元剤供給装置30とを備える。
【0015】
選択還元触媒13は、内燃機関5の排気ガス中に含まれるNOXを、アンモニアを用いて選択的に還元する。選択還元触媒13は、還元剤供給装置30により供給された尿素水溶液が分解することにより生成されるアンモニアを吸着する。選択還元触媒13は、流入する排気ガス中のNOXをアンモニアと反応させて分解する。
【0016】
還元剤供給装置30は、選択還元触媒13よりも上流の排気通路内に尿素水溶液を供給する。還元剤供給装置30は、制御装置100によって制御される。尿素水溶液の噴射量は、選択還元触媒13よりも下流に流出するNOXの濃度及びアンモニアの濃度が基準値以下となるように制御される。
【0017】
選択還元触媒13よりも上流及び下流の排気管11には、それぞれの位置で排気温度を検出する排気温度センサ21,23が設けられる。排気温度センサ21,23のセンサ信号は制御装置100に出力される。排気温度センサ21,23によって検出される排気温度は、選択還元触媒13の温度推定にも用いられる。選択還元触媒13よりも下流に設けられる排気温度センサ23は省略されてもよい。これ以外に、排気管11には、図示しないNOX濃度センサやアンモニアセンサ等が設けられていてもよい。
【0018】
還元剤供給装置30は、噴射弁31とポンプ41とを備える。ポンプ41は、還元剤タンク60内の尿素水溶液を噴射弁31に向けて圧送する。噴射弁31は、選択還元触媒13よりも上流側の位置で排気管11に固定される。噴射弁31は、液体還元剤を調量して排気通路内に噴射する。ポンプ41及び噴射弁31は、制御装置100によって制御される。
【0019】
本実施形態において、ポンプ41は、還元剤タンク60の底部に装着される。ポンプ41には、他端が噴射弁31に接続された還元剤供給路57が接続される。ポンプ41は、還元剤タンク60内の尿素水溶液を吸い込み、還元剤供給路57を介して噴射弁31に供給する。ポンプ41としては、例えば電磁駆動式のダイヤフラムポンプ又はギヤポンプが用いられる。噴射弁31としては、例えば通電制御により開弁及び閉弁が切り替えられる電磁駆動式の噴射弁が用いられる。ポンプ41及び噴射弁31は、制御装置100により制御される。
【0020】
例えば制御装置100は、噴射弁31に供給される尿素水溶液の圧力が所定の目標値で維持されるようにポンプ41の出力を制御する。また、制御装置100は、尿素水溶液の目標噴射量に応じて開弁時間を調節する。例えば制御装置100は、一定の噴射サイクルごとに、噴射サイクルの全体の時間に対する通電時間の比であるデューティ比を調節することにより、尿素水溶液の噴射量を制御する。
【0021】
<2.還元剤タンク>
次に、液体還元剤としての尿素水溶液を貯留する還元剤タンク60の構成について説明する。
【0022】
図2図5は、還元剤タンク60を示す模式図である。図2は、還元剤タンク60を上方から見た模式図であり、図3は、還元剤タンク60を側方から見た模式図である。図4は、図2の還元剤タンク60を左側から見た模式図であり、図5は、図2の還元剤タンク60を右側から見た模式図である。
【0023】
本実施形態に係る還元剤タンク60は、第1の方向(図中のY方向:以下、「長手方向」ともいう。)の長さが第1の方向に直交する第2の方向(図中のX方向)の長さよりも長い平面形状を有する。例えば、乗用車に搭載される還元剤タンク60が車体後部のトランクルームの下方に配置される場合、還元剤タンク60は、タイヤハウスや補助タイヤ、燃料タンクその他が配置される空間の隙間に設置可能なように、長手方向を有する形状となり得る。
【0024】
図示した還元剤タンク60の平面形状は矩形状となっているが、平面形状は矩形状に限られず、長円形その他の長手方向を有する形状であってよい。また、還元剤タンク60の平面形状が長手方向を有していなくてもよいが、長手方向を有する場合、還元剤タンク60が傾いた場合の尿素水溶液の液面の上下変動幅が大きいため、本実施形態に係る還元剤タンク60として特に好適である。
【0025】
還元剤タンク60の長手方向の一端側(図2及び図3の右側)の底部67には、ポンプ41が装着される。本実施形態において、ポンプ41は、還元剤タンク60の底面から下方に突設された円筒凹部63に取り付けられる。例えば、円筒凹部63に形成された開口に対して、ポンプ41を含むポンプユニットが接合される。ポンプユニットの接合部は、液密に接合される。ポンプ41は、吸込み口41aを備え、当該吸込み口41aを介して還元剤タンク60内の尿素水溶液を吸込み、圧送する。なお、還元剤タンク60の底面に円筒凹部を設けることなく、底面に開口を形成し、当該開口に対してポンプユニットが接合されてもよい。
【0026】
還元剤タンク60は、内部に壁部材61を備える。壁部材61は、還元剤タンク60の底部67に接して設けられる。また、壁部材61は、ポンプ41の吸込み口41aが位置する吸入エリア65を囲むように形成される。本実施形態において、吸入エリア65は、概ね円筒凹部63の位置する領域に対応する。
【0027】
図6は、壁部材61の一例を示す斜視図である。図6に示した壁部材61は、矩形状の平面形状を有し、還元剤タンク60の長手方向の一端側は開放されて、尿素水溶液を流通可能な開放部69とされる。つまり、壁部材61を構成する周壁はU字状に形成され、還元剤タンク60の長手方向の一端側が開放されている。また、壁部材61を構成する周壁のうち、還元剤タンク60の第2の方向(X方向)の両側に位置する周壁部61b,61cの高さは、還元剤タンク60の長手方向の一端側から他端側にかけて(図2及び図3の右側から左側にかけて)次第に高くなっている。二つの周壁部61b,61cのうち、他端側の周壁部61aに接する位置の高さは、周壁部61aの高さに一致する。
【0028】
図7図10を参照して、還元剤タンク60の作用を説明する。図7及び図8は、壁部材を備えない還元剤タンク160を示す参考例であり、図7が、還元剤タンク160が水平に維持された状態を示し、図8が、還元剤タンク160が傾いた状態を示す。また、図9及び図10は、壁部材61を備える本実施形態に係る還元剤タンク160を示す例であり、図9が、還元剤タンク60が水平に維持された状態を示し、図10が、還元剤タンク60が傾いた状態を示す。
【0029】
図7に示すように、参考例に係る還元剤タンク160では、例えば車両が水平な路面を走行している間、還元剤タンク160内の尿素水溶液の液面は、還元剤タンク160の底部67と略平行になる。このとき、ポンプ41による吸入エリア65に尿素水溶液が存在し、ポンプ41は、尿素水溶液を適切に吸い込むことができる。
【0030】
一方、図8に示すように、参考例に係る還元剤タンク160では、例えば車両が傾いた路面を走行し、ポンプ41が装着された一端側の高さが高くなるように還元剤タンク160が傾いた場合、尿素水溶液は還元剤タンク160の他端側に偏る。このとき、尿素水溶液の液面が、ポンプ41による吸入エリア65よりも下方に位置するようになると、ポンプ41は、尿素水溶液を適切に吸い込むことができない。
【0031】
これに対して、図9に示すように、本実施形態に係る還元剤タンク60では、例えば車両が水平な路面を走行している間、還元剤タンク60内の尿素水溶液の液面は、還元剤タンク60の底部67と略平行になる。このとき、尿素水溶液は、壁部材61の開放部69あるいは上部空間を介して壁部材61内にも入り込む。このため、ポンプ41による吸入エリア65に尿素水溶液が存在し、ポンプ41は、尿素水溶液を適切に吸い込むことができる。
【0032】
また、図10に示すように、本実施形態に係る還元剤タンク60では、例えば車両が傾いた路面を走行し、ポンプ41が装着された一端側の高さが高くなるように還元剤タンク60が傾いた場合、尿素水溶液は還元剤タンク60の他端側に偏りつつも、壁部材61によって吸入エリア65内に尿素水溶液が保持される。このため、ポンプ41は、尿素水溶液を適切に吸い込むことができる。
【0033】
還元剤タンク60が傾いた状態から再び水平な状態に戻された場合には、尿素水溶液は、壁部材61の開放部69あるいは上部空間を介して壁部材61内に入り込み、図9に示す状態となる。本実施形態において、壁部材61の開放部69は、還元剤タンク60の長手方向の一端側の全体を底部67に至るまで開放するため、尿素水溶液の残量が比較的少ない場合であっても、還元剤タンク60が水平な状態になったときに尿素水溶液を壁部材61内に進入させることができる。
【0034】
ただし、還元剤タンク60の長手方向の一端側に位置する周壁の高さによって、還元剤タンク60が傾いたときに壁部材61内に保持される尿素水溶液の液面の位置が決まる。このため、還元剤タンク60の長手方向の一端側に設けられる開放部69の底部67からの高さは、還元剤タンク60が傾いたときの壁部材61内の尿素水溶液の液面の高さが所望の高さ以上となるように設定されることが好ましい。
【0035】
例えば、還元剤タンク60の底部67から開放部69までの高さは、還元剤タンク60が傾いたときの尿素水溶液の吸込みやすさを考慮して設定されてもよい。また、ポンプ41を含むポンプユニットが、尿素水溶液の残量を検出するレベルセンサを備える場合、還元剤タンク60の底部67から開放部69までの高さは、還元剤タンク60が傾いた場合であっても、あらかじめ設定された所定レベル以上の距離を示す検出信号を出力可能に設定されてもよい。
【0036】
図11は、ポンプ41を含むポンプユニット44が尿素水溶液の残量を検出するレベルセンサ45を備える例を示す。図11に示したレベルセンサ45は、ポンプユニット44から上方に向けて超音波46を発信し、液面で反射される超音波46を受信するまでの時間によって、尿素水溶液の残量を計測する。かかるレベルセンサ45において、超音波46を発信可能な領域は、図11中の破線で示される範囲47に制限されている。このため、還元剤タンク60の底部67から開放部69までの高さは、尿素水溶液が還元剤タンク60内に存在する場合に、還元剤タンク60が傾いてもレベルセンサ45により超音波46を発信可能な範囲47内に尿素水溶液が滞留するように設定される。
【0037】
また、壁部材61は、還元剤タンク60が傾いた場合であっても、レベルセンサ45によって、少なくとも還元剤タンク60が水平な状態で検出される尿素水溶液の残量レベル以上検出されるように配置あるいは設計される。
【0038】
これにより、例えば、尿素水溶液の残量が所定レベル未満になったときに内燃機関5からのNOXの排出量を抑制するために内燃機関5の出力が制限されるように制御条件が設定されている車両において、適切な量の尿素水溶液が残っているにもかかわらずレベルセンサ45によって尿素水溶液の残量が所定レベル未満に検出されるおそれを低減することができる。
【0039】
なお、還元剤タンク60が傾いた場合に、壁部材61の内部に尿素水溶液が保持されるようにするには、壁部材61を構成する周壁の高さが全周に渡って一定であってもよく、壁部材61の上部に天板が設けられてもよい。ただし、尿素水溶液が壁部材61により囲まれる割合が高い場合、つまり、壁部材61の内部空間が外部に開放される割合が低い場合、尿素水溶液の凍結時に、凍結した尿素水溶液が膨張することによってポンプ41を破損させるおそれがある。このため、上記実施形態に示したように、壁部材61の上部が解放され、また、壁部材61を構成する周壁の高さが位置によって低くされることが好ましい。
【0040】
また、壁部材61を構成する周壁の高さが一定である場合や、壁部材61の上部に天板が設けられる場合、例えば還元剤タンク60が第2の方向(X方向)に傾いた場合に、尿素水溶液が第2の方向に存在する壁部材61の周壁によって堰き止められ、尿素水溶液の残量(液面レベル)が不要に高く検出されるおそれがある。このため、上記実施形態に示したように、壁部材61の上部又は壁部材61の一部が解放され、かつ、壁部材61の高さが、還元剤タンク60の長手方向の一端側から他端側にかけて次第に高くなることが好ましい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る還元剤タンク60は、底部67に接して設けられ、ポンプ41による尿素水溶液の吸入エリア65を囲むように形成され、かつ、周壁の一部に尿素水溶液を流通可能な開放部69を有する壁部材61を備える。このため、還元剤タンク60が所定方向に傾いた場合であっても、吸入エリア65内に尿素水溶液が保持され、尿素水溶液の供給を継続させることができる。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0043】
例えば、上記実施形態では、壁部材61が矩形状の平面形状を有していたが、本発明はかかる例に限定されない。壁部材61の平面形状は円形状その他の形状であってよい。また、上記実施形態では、壁部材61の開放部69が、還元剤タンク60の長手方向の一端側の前面を開放していたが、本発明はかかる例に限定されない。開放部は、高さ方向(Z方向)又は水平方向等の適宜の方向に形成された1つ又は複数のスリットであってもよく、1つ又は複数の孔であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
5・・・内燃機関、10・・・尿素SCRシステム(排気浄化装置)、13・・・選択還元触媒、30・・・還元剤供給装置、41・・・ポンプ、41a・・・吸込み口、45・・・レベルセンサ、60・・・還元剤タンク、61・・・壁部材、61a,61b,61c・・・周壁部、65・・・吸入エリア、67・・・底部、69・・・開放部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11