(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】自動走行システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20220721BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20220721BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20220721BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
G08G1/09 V
G08G1/00 X
H04Q9/00 311A
(21)【出願番号】P 2018159726
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】西別府 慎也
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-168883(JP,A)
【文献】特開2010-004469(JP,A)
【文献】特開2012-054678(JP,A)
【文献】特開2009-200806(JP,A)
【文献】特開2018-121121(JP,A)
【文献】特開2018-117240(JP,A)
【文献】米国特許第08942860(US,B2)
【文献】特開2006-033001(JP,A)
【文献】特開2003-069536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
G08G 1/09
G08G 1/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両に設けられ、前記作業車両を
作業領域内の目標走行経路に沿って自動走行させる自動走行制御部と、
前記作業車両を走行制御するための制御信号を無線通信にて送信可能な遠隔操作用の通信端末と、
前記作業車両に設けられ、前記通信端末から送信された前記制御信号を無線通信にて受信して前記自動走行制御部に伝達する車両側受信部と、
前記通信端末と前記車両側受信部との無線通信に使用する通信チャンネルを複数の通信チャンネルから設定するチャンネル設定部と、
複数の通信チャンネルの夫々の過去の通信状態を
前記作業領域毎に記憶する通信状態記憶部と、が備えられている自動走行システム。
【請求項2】
作業車両に設けられ、前記作業車両を作業領域内の目標走行経路に沿って自動走行させる自動走行制御部と、
前記作業車両を走行制御するための制御信号を無線通信にて送信可能な遠隔操作用の通信端末と、
前記作業車両に設けられ、前記通信端末から送信された前記制御信号を無線通信にて受信して前記自動走行制御部に伝達する車両側受信部と、
前記通信端末と前記車両側受信部との無線通信に使用する通信チャンネルを複数の通信チャンネルから設定するチャンネル設定部と、
複数の通信チャンネルの夫々の過去の通信状態を記憶する通信状態記憶部と、
前記通信状態記憶部に記憶された前記通信状態に基づいて、
前記作業領域毎に、複数の通信チャンネルから使用候補の通信チャンネルを選択するチャンネル選択部
と、が備えられ、
前記チャンネル設定部は、前記チャンネル選択部にて選択された使用候補の通信チャンネルから前記通信端末と前記車両側受信部との無線通信に使用する通信チャンネルを設定す
る自動走行システム。
【請求項3】
前記チャンネル選択部は、複数の通信チャンネルから使用候補の通信チャンネルを複数選択するように構成され、
前記通信端末と前記車両側受信部との無線通信が成立するか否かを所定の時間間隔毎に確認する通信確認処理を行う通信確認部が備えられ、
前記チャンネル設定部は、前記通信確認処理において前記通信端末と前記車両側受信部との無線通信が成立しない場合に、通信チャンネルの設定を、設定中の通信チャンネルから別の使用候補の通信チャンネルに切り替える請求項2記載の自動走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を目標走行経路に沿って自動走行させる自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の自動走行システムは、衛星測位システム等を用いて取得される作業車両の測位情報に基づいて、予め生成した目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
このような自動走行システムを用いて無人の作業車両にて圃場内の農作業を行う場合には、他者が誤って圃場内に侵入したとき等の危険が発生した際、自動走行中の無人の作業車両を遠隔操作にて走行停止させる必要がある。そこで、特許文献1に記載の自動走行システムでは、無線通信にて作業車両の自動走行を制御する遠隔操作デバイス(通信端末の一例)が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の自動走行システムでは、ユーザ等は、遠隔操作デバイスを操作することで、自動走行中の無人の作業車両を遠隔操作にて走行停止させることができる。しかしながら、他者等の外部機器が使用する無線通信との混信等に起因して遠隔操作デバイスと作業車両との無線通信に通信途絶が発生し、必要なときに作業車両を遠隔操作で緊急停止できない事態が生じることも考えられる。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、遠隔操作にて一層確実に作業車両の走行を制御することのできる自動走行システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、作業車両に設けられ、前記作業車両を目標走行経路に沿って自動走行させる自動走行制御部と、
前記作業車両を走行制御するための制御信号を無線通信にて送信可能な遠隔操作用の通信端末と、
前記作業車両に設けられ、前記通信端末から送信された前記制御信号を無線通信にて受信して前記自動走行制御部に伝達する車両側受信部と、
前記通信端末と前記車両側受信部との無線通信に使用する通信チャンネルを複数の通信チャンネルから設定するチャンネル設定部と、
複数の通信チャンネルの夫々の過去の通信状態を記憶する通信状態記憶部と、が備えられている点にある。
【0007】
本構成によれば、ユーザ等は、通信端末を所有して当該通信端末から作業車両を走行制御するための制御信号を無線通信にて送信することができる。作業車両に備えられた車両側受信部は、当該通信端末から送信された制御信号を無線通信にて受信して自動走行制御部に伝達するので、遠隔操作にて作業車両の走行を制御することができる。
そして、本構成では、複数の通信チャンネルの夫々の過去の通信状態を記憶する通信状態記憶部が備えられているので、当該通信状態記憶部に記憶された複数の通信チャンネルの夫々の過去の通信状態を考慮して、チャンネル設定部にて複数の通信チャンネルから通信端末と車両側受信部との無線通信に使用する通信チャンネルを設定することができる。
よって、例えば、複数の通線チャンネルのうちで過去の通信途絶回数が少ない等の適切な通信チャンネルを通信端末と車両側受信部との無線通信に使用する通信チャンネルに設定することが可能となり、遠隔操作にて一層確実に作業車両の走行を制御することができるようになる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記通信状態記憶部に記憶された前記通信状態に基づいて、複数の通信チャンネルから使用候補の通信チャンネルを選択するチャンネル選択部が備えられ、
前記チャンネル設定部は、前記チャンネル選択部にて選択された使用候補の通信チャンネルから前記通信端末と前記車両側受信部との無線通信に使用する通信チャンネルを設定する点にある。
【0009】
本構成によれば、チャンネル選択部にて、通信状態記憶部に記憶された通線チャンネル毎の過去の通信状態に基づいて、複数の通信チャンネルから使用候補の通信チャンネルを選択し、チャンネル設定部にて、その使用候補の通信チャンネルから通信端末と車両側受信部との無線通信に使用する通信チャンネルを設定することができる。
よって、複数の通信チャンネルから適切な通信チャンネルを通信端末と車両側受信部との無線通信に使用する通信チャンネルに自動的に設定することが可能となる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記チャンネル選択部は、複数の通信チャンネルから使用候補の通信チャンネルを複数選択するように構成され、
前記通信端末と前記車両側受信部との無線通信が成立するか否かを所定の時間間隔毎に確認する通信確認処理を行う通信確認部が備えられ、
前記チャンネル設定部は、前記通信確認処理において前記通信端末と前記車両側受信部との無線通信が成立しない場合に、通信チャンネルの設定を、設定中の通信チャンネルから別の使用候補の通信チャンネルに切り替える点にある。
【0011】
本構成によれば、チャンネル選択部にて複数の通信チャンネルから使用候補の通信チャンネルを複数選択し、チャンネル設定部にて使用候補の通信チャンネルのいずれかを通信端末と車両側受信部との無線通信に使用する通信チャンネルに設定することができる。そして、通信確認部にて通信確認処理を行うことで、使用中の通信チャンネルにて無線通信が成立するか否かを所定の時間間隔毎に確認することができ、無線通信が成立しない場合には、チャンネル設定部にて現在の無線通信が成立しない通信チャンネルから別の使用候補の通信チャンネルに自動的に切り替えることができる。
よって、通信端末と車両側受信部との無線通信が成立しない通信途絶が発生した場合に、その通信途絶を早期に解消して通信端末と車両側受信部との無線通信を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】自動走行システムの概略構成を示すブロック図
【
図3】目標走行経路を生成した状態における作業領域を示す図
【
図4】緊急停止用リモコンの概略構成を示すブロック図
【
図6】リモコン受信機の起動処理を行うときの動作を示すフローチャート
【
図7】緊急停止用リモコンの起動処理を行うときの動作を示すフローチャート
【
図8】リモコン受信機の起動処理後の動作を示すフローチャート
【
図9】緊急停止用リモコンの起動処理後の動作を示すフローチャート
【
図10】緊急停止用リモコンとリモコン受信機の無線通信における通信チャンネルの切り替え動作のタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る自動走行システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この自動走行システムは、
図1に示すように、作業車両としてトラクタ1を適用しているが、トラクタ以外の、乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、ホイールローダ、除雪車等の乗用作業車両、及び、無人草刈機等の無人作業車両を適用することができる。
【0014】
この自動走行システムは、
図1及び
図2に示すように、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を備えている。携帯通信端末3には、タッチ操作可能な表示部51(例えば、液晶パネル)等を有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等を採用することができる。
【0015】
トラクタ1は、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪5、及び、駆動可能な左右の後輪6を有する走行機体7が備えられている。走行機体7の前方側には、ボンネット8が配置され、ボンネット8内には、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)9が備えられている。走行機体7のボンネット8よりも後方側には、搭乗式の運転部を形成するキャビン10が備えられている。
【0016】
走行機体7の後部には、3点リンク機構11を介して、作業装置12の一例であるロータリ耕耘装置を昇降可能かつローリング可能に連結することで、トラクタ1をロータリ耕耘仕様に構成することができる。トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置に代えて、プラウ、播種装置、散布装置等の作業装置12を連結することができる。
【0017】
トラクタ1には、
図2に示すように、エンジン9からの動力を変速する電子制御式の変速装置13、左右の前輪5を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構14、左右の後輪6を制動する左右のサイドブレーキ(図示せず)、左右のサイドブレーキの油圧操作を可能にする電子制御式のブレーキ操作機構15、ロータリ耕耘装置等の作業装置12への伝動を断続する作業クラッチ(図示せず)、作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構16、ロータリ耕耘装置等の作業装置12を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構17、トラクタ1の自動走行等に関する各種の制御プログラム等を有する車載電子制御ユニット18、トラクタ1の車速を検出する車速センサ19、前輪5の操舵角を検出する舵角センサ20、及び、トラクタ1の現在位置及び現在方位を測定する測位ユニット21等が備えられている。
【0018】
なお、エンジン9には、電子ガバナを備えた電子制御式のガソリンエンジンを採用してもよい。変速装置13には、油圧機械式無段変速装置(HMT)、静油圧式無段変速装置(HST)、又は、ベルト式無段変速装置等を採用することができる。パワーステアリング機構14には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構14等を採用してもよい。
【0019】
キャビン10の内部には、
図1に示すように、パワーステアリング機構14(
図2参照)を介した左右の前輪5の手動操舵を可能にするステアリングホイール38、搭乗者用の運転席39、タッチパネル式の表示部、及び、各種の操作具等が備えられている。
【0020】
図2に示すように、車載電子制御ユニット18は、変速装置13の作動を制御する変速制御部181、左右のサイドブレーキの作動を制御する制動制御部182、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を制御する作業装置制御部183、自動走行時に左右の前輪5の目標操舵角を設定してパワーステアリング機構14に出力する操舵角設定部184、及び、予め生成された自動走行用の目標走行経路P(例えば、
図3参照)等を記憶する不揮発性の車載記憶部185等を有している。
【0021】
図2に示すように、測位ユニット21には、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置22、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサ等を有してトラクタ1の姿勢や方位等を測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)23等が備えられている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)等がある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、圃場周辺の既知位置には、
図1及び
図2に示すように、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局4が設置されている。
【0022】
トラクタ1と基準局4との夫々には、
図2に示すように、測位衛星71(
図1参照)から送信された電波を受信する測位アンテナ24,61、及び、トラクタ1と基準局4との間における測位情報を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール25,62等が備えられている。これにより、衛星航法装置22は、トラクタ側の測位アンテナ24が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報と、基地局側の測位アンテナ61が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報とに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。また、測位ユニット21は、衛星航法装置22と慣性計測装置23とを備えることにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0023】
トラクタ1に備えられる測位アンテナ24、通信モジュール25、及び、慣性計測装置23は、
図1に示すように、アンテナユニット80に収納されている。アンテナユニット80は、キャビン10の前面側の上部位置に配置されている。
【0024】
図2に示すように、携帯通信端末3には、表示部51等の作動を制御する各種の制御プログラム等を有する端末電子制御ユニット52、及び、トラクタ側の通信モジュール25との間における測位情報を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール55等が備えられている。端末電子制御ユニット52は、トラクタ1を自動走行させるための目標走行経路P(例えば、
図3参照)を生成する走行経路生成部53、及び、ユーザが入力した各種の入力情報や走行経路生成部53が生成した目標走行経路P等を記憶する不揮発性の端末記憶部54等を有している。
【0025】
走行経路生成部53が目標走行経路Pを生成するに当たり、携帯通信端末3の表示部51に表示された目標走行経路設定用の入力案内に従って、運転者や管理者等のユーザ等が作業車両や作業装置12の種類や機種等の車体情報を入力しており、入力された車体情報が端末記憶部54に記憶されている。目標走行経路Pの生成対象となる作業領域S(
図3参照)を圃場としており、携帯通信端末3の端末電子制御ユニット52は、圃場の形状や位置を含む圃場情報を取得して端末記憶部54に記憶している。
【0026】
圃場情報の取得について説明すると、ユーザ等が運転してトラクタ1を実際に走行させることで、端末電子制御ユニット52は、測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置等から圃場の形状や位置等を特定するための位置情報を取得することができる。端末電子制御ユニット52は、取得した位置情報から圃場の形状及び位置を特定し、その特定した圃場の形状及び位置から特定した作業領域Sを含む圃場情報を取得している。
図3では、矩形状の作業領域Sが特定された例を示している。
【0027】
特定された圃場の形状や位置等を含む圃場情報が端末記憶部54に記憶されると、走行経路生成部53は、端末記憶部54に記憶されている圃場情報や車体情報を用いて、目標走行経路Pを生成する。
【0028】
図3に示すように、走行経路生成部53は、作業領域S内を中央領域R1と外周領域R2とに区分け設定している。中央領域R1は、作業領域Sの中央部に設定されており、先行してトラクタ1を往復方向に自動走行させて所定の作業(例えば、耕耘等の作業)を行う往復作業領域となっている。外周領域R2は、中央領域R1の周囲に設定されており、トラクタ1を方向転換させる方向転換領域となっている。走行経路生成部53は、例えば、車体情報に含まれる旋回半径やトラクタ1の前後幅及び左右幅等から、トラクタ1を圃場の畔際で旋回走行させるために必要となる旋回走行用のスペース等を求めている。走行経路生成部53は、外周領域R2に求めたスペース等を確保するように、作業領域S内を中央領域R1と外周領域R2とに区分けしている。
【0029】
走行経路生成部53は、
図3に示すように、車体情報や圃場情報等を用いて、目標走行経路Pを生成している。例えば、目標走行経路Pは、中央領域R1において同じ直進距離を有して作業幅に対応する一定距離をあけて平行に配置設定された直線状の複数の作業経路P1と、外周領域R2において隣接する作業経路P1の始端と終端とを連結する連結経路P2とを有している。複数の作業経路P1は、トラクタ1を直進走行させながら、所定の作業を行うための経路である。連結経路P2は、所定の作業を行わずに、トラクタ1の走行方向を180度転換させるためのUターン経路であり、作業経路P1の終端と隣接する次の作業経路P1の始端とを連結している。ちなみに、
図3に示す目標走行経路Pは、あくまで一例であり、どのような目標走行経路を設定するかは適宜変更が可能である。
【0030】
走行経路生成部53にて生成された目標走行経路Pは、表示部51に表示可能であり、車体情報及び圃場情報等と関連付けた経路情報として端末記憶部54に記憶されている。経路情報には、目標走行経路Pの方位角、及び、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された設定エンジン回転速度や目標走行速度等が含まれている。
【0031】
このようにして、走行経路生成部53が目標走行経路Pを生成すると、端末電子制御ユニット52が、携帯通信端末3からトラクタ1に経路情報を転送することで、トラクタ1の車載電子制御ユニット18が、経路情報を取得することができる。車載電子制御ユニット18は、取得した経路情報に基づいて、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置については、リアルタイム(例えば、数ミリ秒周期)でトラクタ1から携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1の現在位置を把握している。
【0032】
経路情報の転送に関しては、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、経路情報の全体を端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に一挙に転送することができる。また、例えば、目標走行経路Pを含む経路情報を、情報量の少ない所定距離ごとの複数の経路部分に分割することもできる。この場合には、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階においては、経路情報の初期経路部分のみが端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に転送される。自動走行の開始後は、トラクタ1が情報量等に応じて設定された経路取得地点に達するごとに、その地点に対応する以後の経路部分のみの経路情報が端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に転送するようにしてもよい。
【0033】
トラクタ1の自動走行を開始する場合には、例えば、ユーザ等がスタート地点にトラクタ1を移動させて、各種の自動走行開始条件が満たされると、携帯通信端末3にて、ユーザが表示部51を操作して自動走行の開始を指示することで、携帯通信端末3は、自動走行の開始指示をトラクタ1に送信する。これにより、トラクタ1では、車載電子制御ユニット18が、自動走行の開始指示を受けることで、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。車載電子制御ユニット18が、衛星測位システムを用いて測位ユニット21により取得されるトラクタ1の測位情報に基づいて、作業領域S内の目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部として構成されている。
【0034】
自動走行制御には、変速装置13の作動を自動制御する自動変速制御、ブレーキ操作機構15の作動を自動制御する自動制動制御、左右の前輪5を自動操舵する自動操舵制御、及び、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を自動制御する作業用自動制御、等が含まれている。
【0035】
自動変速制御においては、変速制御部181が、目標走行速度を含む目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力と車速センサ19の出力とに基づいて、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標走行速度がトラクタ1の車速として得られるように変速装置13の作動を自動制御する。
【0036】
自動制動制御においては、制動制御部182が、目標走行経路Pと測位ユニット21の出力とに基づいて、目標走行経路Pの経路情報に含まれている制動領域において左右のサイドブレーキが左右の後輪6を適正に制動するようにブレーキ操作機構15の作動を自動制御する。
【0037】
自動操舵制御においては、トラクタ1が目標走行経路Pを自動走行するように、操舵角設定部184が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて左右の前輪5の目標操舵角を求めて設定し、設定した目標操舵角をパワーステアリング機構14に出力する。パワーステアリング機構14が、目標操舵角と舵角センサ20の出力とに基づいて、目標操舵角が左右の前輪5の操舵角として得られるように左右の前輪5を自動操舵する。
【0038】
作業用自動制御においては、作業装置制御部183が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて、トラクタ1が作業経路P1(例えば、
図3参照)の始端等の作業開始地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業(例えば耕耘作業)が開始され、かつ、トラクタ1が作業経路P1(例えば、
図3参照)の終端等の作業終了地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業が停止されるように、クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17の作動を自動制御する。
【0039】
このようにして、トラクタ1においては、変速装置13、パワーステアリング機構14、ブレーキ操作機構15、クラッチ操作機構16、昇降駆動機構17、車載電子制御ユニット18、車速センサ19、舵角センサ20、測位ユニット21、及び、通信モジュール25、等によって自動走行ユニット2が構成されている。
【0040】
この実施形態では、キャビン10にユーザ等が搭乗せずにトラクタ1を自動走行させるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1を自動走行させることも可能となっている。よって、キャビン10にユーザ等が搭乗せずに、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗している場合でも、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができる。
【0041】
キャビン10にユーザ等が搭乗している場合には、車載電子制御ユニット18にてトラクタ1を自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転に基づいてトラクタ1を走行させる手動走行状態とに切り替えることができる。よって、自動走行状態にて目標走行経路Pを自動走行している途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができ、逆に、手動走行状態にて走行している途中に、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることができる。手動走行状態と自動走行状態との切り替えについては、例えば、運転席39の近傍に、自動走行状態と手動走行状態とに切り替えるための切替操作部を備えることができるとともに、その切替操作部を携帯通信端末3の表示部51に表示させることもできる。また、車載電子制御ユニット18による自動走行制御中に、ユーザがステアリングホイール38を操作すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができる。
【0042】
トラクタ1には、
図1及び
図2に示すように、トラクタ1(走行機体7)の周囲における障害物を検知して、障害物との衝突を回避するための障害物検知システム100が備えられている。障害物検知システム100は、レーザを用いて測定対象物までの距離を3次元で測定可能な複数のライダーセンサ101,102と、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定可能な複数のソナーを有するソナーユニット103,104と、障害物検知部110と、衝突回避制御部111とが備えられている。
【0043】
ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104にて測定する測定対象物は、物体や人等としている。ライダーセンサ101,102は、トラクタ1の前方側を測定対象とする前ライダーセンサ101と、トラクタ1の後方側を測定対象とする後ライダーセンサ102とが備えられている。ソナーユニット103,104は、トラクタ1の右側を測定対象とする右側のソナーユニット103と、トラクタ1の左側を測定対象とする左側のソナーユニット104とが備えられている。
【0044】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定情報に基づいて、所定距離内の物体や人等の測定対象物を障害物として検知する障害物検知処理を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、障害物検知部110にて障害物を検知すると、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させる衝突回避制御を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させるだけでなく、報知ブザーや報知ランプ等の報知装置26を作動させて、障害物が存在することを報知している。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、通信モジュール25,55を用いて、トラクタ1から携帯通信端末3に通信して表示部51に障害物の存在を表示させることで、障害物が存在することを報知可能としている。
【0045】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定情報に基づく障害物検知処理をリアルタイムで繰り返し行い、物体や人等の障害物を適切に検知している。衝突回避制御部111は、リアルタイムで検知される障害物との衝突を回避するための衝突回避制御を行うようにしている。
【0046】
障害物検知部110及び衝突回避制御部111は、車載電子制御ユニット18に備えられている。車載電子制御ユニット18は、コモンレールシステムに含まれたエンジン用の電子制御ユニット、ライダーセンサ101,102、及び、ソナーユニット103,104等にCAN(Controller Area Network)を介して通信可能に接続されている。
【0047】
このような自動走行システムを用いて無人のトラクタ1にて作業領域S内の農作業を行う場合には、他者が誤って作業領域S内に侵入したとき等の危険が発生した際に、ユーザ等は自動走行中の無人のトラクタ1を遠隔操作で緊急停止させる必要がある。
そこで、この自動走行システムでは、
図1及び
図2に示すように、無線通信にてトラクタ1を緊急停止させる緊急停止指令等のトラクタ1を走行制御するための制御信号を送信可能な緊急停止用リモコン200(遠隔操作用の通信端末の一例)と、当該緊急停止用リモコン200から送信された制御信号を無線通信にて受信して車載電子制御ユニット18に伝達するリモコン受信機300(車両側受信部の一例)とが備えられている。
【0048】
緊急停止用リモコン200はユーザ等に所有され、リモコン受信機300はトラクタ1に搭載されている。また、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300とは、トラクタ1の通信モジュール25を使用して行う携帯通信端末3や基地局4との無線通信とは別の系統にて無線通信を行うように構成されている。
【0049】
緊急停止用リモコン200を所有するユーザ等が、必要なタイミングで緊急停止用リモコン200を操作することで、トラクタ1を緊急停止させるための緊急停止指令を無線通信にて送信することができる。そして、緊急停止用リモコン200から緊急停止指令が無線通信にて送信されると、トラクタ1のリモコン受信機300が当該制御信号を受信して車載電子制御ユニット18に伝達し、車載電子制御ユニット18が自動制動制御を行ってトラクタ1を停止させる。
【0050】
この自動走行システムでは、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300との無線通信を行うための通信チャンネルとして、7つ(複数の一例)の通線チャンネルが設定可能に用意されている。緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300は、起動時点で、通線チャンネル毎の過去の通信状態を考慮して7つの通線チャンネルから3つ(複数の一例)の通線チャンネルを使用候補として選択し、選択した3つ(複数の一例)の使用候補の通線チャンネルのいずれかを使用して無線通信を確立するように構成されている。
【0051】
そして、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300は、起動中において、無線通信が成立するか否かを所定の時間間隔毎に確認する通信確認処理を行い、その通信確認処理にて無線通信が成立しなくても、それが使用中の通信チャンネルに起因すると考えられる所定の条件(本例では外部機器が通信チャンネルを使用中等)が成立する場合には、3つ(複数の一例)の使用候補の通信チャンネルの中の他の通信チャンネルに自動的に切り替え、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300の無線通信を継続して、トラクタ1の自動走行を継続するように構成されている。
【0052】
つまり、
図10のタイムチャートに示すように、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300は、例えば、通信チャンネルAにて無線通信が確立している場合、通信確認処理として、確認信号(ハートビート信号h)と応答信号(アンサーバック信号a)の送受信(図中の細線矢印)を所定の時間間隔毎に行い、無線通信が成立するか否かを所定の時間間隔毎に確認している。そして、このときに通信確認処理における通信待機時間を経過し、無線通信が成立しなくても、外部機器が通信チャンネルAを使用中(通信中)であることによるものであれば、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300は、使用する通信チャンネルを通信チャンネルBに切り替えて無線通信が確立し、通信チャンネルBにて無線通信を行う。
【0053】
なお、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300は、その通信確認処理にて無線通信が成立せず、それが使用中の通信チャンネルに起因しないと考えられる所定の条件(本例では外部機器が通信チャンネルを使用中でない等)が成立する場合には、通信途絶を確定し、トラクタ1の車載電子制御ユニット18に通信途絶情報を送信するとともに、ユーザ等に通信途絶を報知するように構成されている。
【0054】
緊急停止用リモコン200は、
図4に示すように、アンテナ201と接続された通信モジュール202、通信相手となるリモコン受信機のID等を記憶する不揮発性のリモコン記憶部203、電源となる電池(図示省略)、ユーザ等が緊急停止指令(制御信号の一例)を送信する操作を行うための緊急停止ボタン204、トラクタ1の状態や通信途絶等の無線通信の状態を報知する報知装置(ブザー)206A,報知装置(LED)206B、緊急停止用リモコン200内の各部の動作を制御するリモコン制御部210等を備えて構成されている。ちなみに、
図4の一点鎖線で示すように、ユーザ等がトラクタ1の自動走行を一時停止させたり、そこから自動走行を再開させたりする一時停止・再開指令(制御信号の一例)を送信する操作を行うためのポーズボタン205を緊急停止用リモコン200に備えることもできる。
【0055】
リモコン制御部210には、確認信号の送信や応答信号の受信等の通信確認処理を行う通信確認部211、通信チャンネルの設定や切り替え等の処理を行うチャンネル設定部212等が備えられている。更に、リモコン制御部210には、使用中の通信チャンネルの電波状態を判定する電波状態判定部213が備えられている。電波状態判定部213は、確認信号等の送信時に行われる現在通信中の他の装置があるか否か等を確認するキャリアセンスにて取得した使用中の通信チャンネルの電波強度を閾値と比較し、使用中の通信チャンネルの電波状態を判定する。
【0056】
リモコン受信機300には、
図5に示すように、アンテナ301と接続された通信モジュール302、通信相手となる緊急停止用リモコンのIDや後述する複数の通信チャンネルの過去の通信状態等を記憶する不揮発性の受信機記憶部303(通信状態記憶部に相当する)、緊急停止指令等のトラクタ1を走行制御するための制御信号を車載電子制御ユニット18にCANを介して送信するCANインターフェース304、リモコン受信機300内の各部の動作を制御する受信機制御部310等を備えて構成されている。アンテナ301は、例えば、キャビン10の内部(
図1参照)等に配置されている。
【0057】
受信機制御部310には、確認信号の受信や応答信号の送信等の通信確認処理を行う通信確認部311や、通信チャンネルの設定や切り替え等の処理を行うチャンネル設定部312等が備えられている。更に、受信機制御部310には、通信チャンネル毎の過去の通信状態を受信機記憶部303に書き込む処理を行う通信状態記録部313、受信機記憶部303に記憶された通信チャンネル毎の過去の通信状態に基づいて使用候補の通信チャンネルを選択するチャンネル選択部314、使用中の通信チャンネルの電波状態を取得する電波状態取得部315、取得した電波状態を判定する電波状態判定部316が備えられている。
【0058】
通信状態記録部313は、通信チャンネル毎の過去の通信状態として、通信チャンネル毎の過去の通信途絶回数や起動時の電波状態確認結果等を受信機記憶部303に書き込むように構成されている。通信状態記録部313は、例えば、通信途絶が発生した場合等に、使用中の通信チャンネルの通信途絶回数等を増加させるように受信機記憶部303に書き込む。ちなみに、通信チャンネルの通信状態は、周囲の環境で変化するので、作業領域S毎に異なることから、通信状態記録部313は、通信チャンネル毎の過去の通信状態を作業領域S毎にカウントして書き込むこともできる。
【0059】
チャンネル選択部314は、後述する起動処理等において、受信機記憶部303に記憶された通信チャンネル毎の過去の通信状態に基づいて、設定可能に用意された複数(本例では7つ)の通信チャンネルから複数(本例では3つ)の使用候補の通信チャンネルを選択する。
【0060】
電波状態取得部315は、例えば、使用中の通信チャンネルにおいてキャリアセンスを行い、当該通信チャンネルでの電波強度等の電波状態を取得する。電波状態判定部316は、例えば、電波状態取得部315にて取得した使用中の通信チャンネルの電波強度を閾値と比較して、使用中の通信チャンネルの電波状態を判定する。
【0061】
なお、緊急停止用リモコン200の通信確認部211とリモコン受信機300の通信確認部311とが自動走行システムの通信確認部に相当し、緊急停止用リモコン200のチャンネル設定部212とリモコン受信機300のチャンネル設定部312とが自動走行システムのチャンネル設定部に相当する。
【0062】
次に、
図6、
図7を参照して、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300とを起動して無線通信を確立する場合の緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300の夫々の動作について説明する。
【0063】
(リモコン受信機300の動作)
図6のフローチャートに示すように、リモコン受信機300の受信機制御部310は、トラクタ1のエンジン9が始動される等の所定の起動条件が満たされると、起動処理を開始して電源を投入する(ステップ♯11)。そして、チャンネル選択部314が、チャンネル選択処理を実行し、複数(本例では7つ)の通信チャンネルから複数(本例では3つ)の使用候補の通信チャンネルを選択する(ステップ♯12)。
【0064】
チャンネル選択部314は、チャンネル選択処理として、受信機記憶部303に記憶されている複数(本例では7つ)の通信チャンネル毎の過去の通信状態を取得し、複数(本例では7つ)の通信チャンネルから優先順位の高い複数(本例では3つ)の通信チャンネルを使用候補チャンネルとして選択する。チャンネル選択の優先順位は、適宜に変更可能であるが、本実施形態では、当該作業領域Sにおいて所定期間内の通信途絶回数等が少ない順等に設定されている。
【0065】
チャンネル選択処理にて複数(本例では3つ)の使用候補の通信チャンネルが選択されると、電波状態取得部315が、電波状態取得処理を実行し、複数の使用候補の通信チャンネルの1つを使用してキャリアセンスを行い、その使用中の通信チャンネルの電波強度を電波状態として取得する(ステップ♯13)。
【0066】
電波状態取得部315は、使用候補の1つの通信チャンネルの電波状態の取得が所定回数(例えば3回)を満了するまで、当該通信チャンネルの電波状態取得処理を繰り替えし実行する(ステップ♯14のNoの場合、ステップ♯13)。
電波状態取得部315は、1つの通信チャンネルの電波状態の取得が所定回数を満了すると当該通信チャンネルの電波状態の取得を完了し、複数の使用候補の通信チャンネルの全ての電波状態の取得が完了していなければ、電波状態の取得が完了していない他の使用候補の通信チャンネルに切り替え、切り替え後の通信チャンネルにて電波状態取得処理を実行する(ステップ♯14のYesの場合、ステップ♯15のNoの場合、ステップ♯16、ステップ♯13)。
【0067】
複数(本例では3つ)の使用候補の通信チャンネルの全ての電波状態の取得が完了すると、チャンネル設定部312が、チャンネル確定処理を実行し、複数の使用候補の通信チャンネルの中で、電波状態の良い通信チャンネル(電波強度の高い通信チャンネル)を使用する通信チャンネルに確定し、使用する通信チャンネルとして設定する(ステップ♯15のYesの場合、ステップ♯17)。このようにして、リモコン受信機300の起動処理が完了する。なお、電波状態取得部315にて取得した使用候補の通信チャンネル毎の電波状態(電波状態確認結果)は、通信状態記録部313により過去の通信状態の一つとして受信機記憶部303に書き込まれる。
【0068】
(緊急停止用リモコン200の動作)
図7のフローチャートに示すように、緊急停止用リモコン200のリモコン制御部210は、電源投入前に緊急停止ボタン204が操作される等の所定の起動条件が満たされると、起動処理を開始して電源を投入し、チャンネル設定部212が、チャンネル仮設定処理を実行し、複数(本例では7つ)の通信チャンネルから1つの通信チャンネルを無線通信に使用する通信チャンネルに設定する(ステップ♯21、ステップ♯22)。チャンネル設定部212は、チャンネル仮設定処理において、直前に使用した通信チャンネルを無線通信に使用する通信チャンネルに設定したり、規定の順番やランダムに選択した1つの通信チャンネルを無線通信に使用する通信チャンネルに設定することができる。
【0069】
チャンネル仮設定処理にて通信チャンネルが設定されると、通信確認部211が、確認信号送信処理を実行し、当該通信チャンネルを使用して無線通信の確立(無線通信が成立するか否か)を確認するための確認信号を送信する(ステップ♯23)。その確認信号に対して通信待機時間内にリモコン受信機300から応答信号を受信しない場合は、チャンネル設定部212が、チャンネル切替処理を実行し、通信チャンネルを別の通信チャンネルに切り換え、通信確認部211が切り替え後の通信チャンネルを使用して改めて確認信号送信処理を実行する(ステップ♯24のNoの場合、ステップ♯26、ステップ♯23)。
【0070】
確認信号に対して通信待機時間内にリモコン受信機300から応答信号を受信すると、チャンネル設定部212が、チャンネル確定処理を実行し、当該確認信号を送信した通信チャンネルを、無線通信に使用する通信チャンネルに確定して設定する(ステップ♯24のYesの場合、ステップ♯25)。このようにして、緊急停止用リモコン200の起動処理が完了し、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300の無線通信が確立する。
【0071】
次に、
図8、
図9を参照して、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300の夫々の起動中において、無線通信が成立しない通信途絶が生じた場合の緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300の夫々の動作について説明する。
【0072】
(リモコン受信機300の動作)
図8のフローチャートに示すように、起動中において、リモコン受信機300の通信確認部211は、通信確認処理を実行しており、緊急停止用リモコン200からの確認信号を受信すると、緊急停止用リモコン200に応答信号を送信している(ステップ♯31のYesの場合、ステップ♯32)。この応答信号には、通信途絶した場合に切り替える次候補(切り替え先)の通線チャンネルを特定する情報が含まれており、応答信号を受信した緊急停止用リモコン200は、当該応答信号に含まれる次候補の通線チャンネルを特定する情報をリモコン記憶部203に記憶している。
【0073】
通信待機時間が経過しても、緊急停止用リモコン200から確認信号を受信しない場合には、電波状態取得部315が、電波状態取得処理を実行し、使用中の通信チャンネルを使用してキャリアセンスを行い、その使用中の通信チャンネルの電波強度を電波状態として取得する(ステップ♯31のNo、ステップ♯33のYesの場合、ステップ♯34)。
【0074】
電波状態取得処理にて使用中の通信チャンネルの電波状態を取得すると、電波状態判定部316が、電波状態判定処理を実行し、当該通信チャンネルを外部機器が使用中であるか否かを判定する(ステップ♯35)。電波状態判定部316は、電波状態判定処理において、電波状態取得部315にて取得した電波強度を閾値と比較し、電波強度が閾値よりも大きい場合は、当該通信チャンネルを外部機器が使用中でないと判定し、電波強度が閾値よりも小さい場合は、当該通信チャンネルを外部機器が使用中であると判定する。
【0075】
電波状態判定処理にて当該通信チャンネルを外部機器が使用中であると判定すると、チャンネル設定部312が、チャンネル切替処理を実行し、使用中の通信チェンネルから次候補の通信チャンネルに切り替える(ステップ♯35のYesの場合、ステップ♯36)。
【0076】
そして、チャンネル切替処理の実行後、通信待機時間が経過する前に緊急停止用リモコン200から確認信号を受信すると、通信確認部311が、緊急停止用リモコン200に応答信号を送信するとともに、通信状態記録部313が、通信状態記録処理を実行して切り替え前の元の通信チャンネルの不具合の情報(通信途絶の回数や時間等)を受信機記憶部303に書き込む(ステップ♯37のYesの場合、ステップ♯38、ステップ♯39)。
【0077】
一方、チャンネル切替処理の実行後、通信待機時間が経過しても、緊急停止用リモコン200からの確認信号を受信しない場合は、受信機制御部310が、通信途絶を確定し、CANインターフェースを使用してトラクタ1の車載電子制御ユニット18に通信途絶情報を送信する。そして、通信状態記録部313が、通信状態記録処理を実行し、切り替え後の通信チャンネルの不具合の情報(通信途絶の回数や時間等)を受信機記憶部303に書き込むとともに、切り替え前の元の通信チャンネルの不具合の情報(通信途絶の回数や時間)を受信機記憶部303に書き込む(ステップ♯37のNo、ステップ♯41のYesの場合、ステップ♯42、ステップ♯43、ステップ♯39)。
このように、チャンネル切替処理の実行後、通信待機時間が経過しても、緊急停止用リモコン200からの確認信号を受信しない場合に、通信途絶を確定することで、チャンネル切替処理が繰り返されることによる通信途絶時間の長期化を防止するようにしている。
【0078】
また、電波状態判定処理にて当該通信チャンネルを外部機器が使用中でないと判定すると、受信機制御部310が、通信途絶を確定し、CANインターフェースを使用してトラクタ1の車載電子制御ユニット18に通信途絶情報を送信する。そして、通信状態記録部313が、通信状態記録処理を実行し切り替え前の元の通信チャンネルの不具合の情報(通信途絶の回数や時間)を受信機記憶部303に書き込む(ステップ♯35のNoの場合、ステップ♯40、ステップ♯39)。
ちなみに、トラクタ1の車載電子制御ユニット18は、通信途絶情報を受信すると、自動制動制御を行ってトラクタ1を停止させる。
【0079】
(緊急停止用リモコン200の動作)
図9のフローチャートに示すように、起動中において、緊急停止用リモコン200の通信確認部211は、通信確認処理を実行しており、リモコン受信機300に対して通信待機時間未満の所定の時間間隔で確認信号を送信している(ステップ♯41)。緊急停止用リモコン200の通信確認部211は、リモコン受信機300に確認信号を送信する際、その直前のタイミングでキャリアセンスを行い、そのキャリアセンスで取得した電波強度を電波状態としてリモコン記憶部203に記憶している。
【0080】
リモコン受信機300に確認信号を送信した後、通信待機時間が経過してもリモコン受信機300から応答信号を受信しない場合は、電波状態判定部213が、電波状態判定処理を実行し、リモコン記憶部203に記憶されている使用中の通信チャンネルの電波状態に基づいて確認信号の送信が失敗した状態にあるか否かを判定する(ステップ♯42のNo、ステップ♯43のYesの場合、ステップ♯44)。
電波状態判定部213は、電波状態判定処理において、確認信号を送信した際の電波強度を閾値と比較し、電波強度が閾値よりも強い場合は、外部機器が当該通信チャンネルを使用中ではなく、確認信号の送信が成功した状態にあると判定し、電波強度が閾値よりも弱い場合は、外部機器が当該通信チャンネルを使用中で確認信号の送信が失敗した状態にあると判定する。
【0081】
電波状態判定処理にて確認信号の送信が失敗した状態にあると判定すると、電波状態判定部213は、更に、送信が失敗した状態が所定時間継続しているか否かを判定し、所定時間継続している場合には、チャンネル設定部212が、チャンネル切り替え処理を実行して使用中の通信チェンネルから記憶部に記憶されている次候補の通信チャンネルに切り替える(ステップ♯44のYes、ステップ♯45のYesの場合、ステップ♯46)。そして、ステップ♯41に戻り、通信確認部211が切り替え後の通信チャンネルにてリモコン受信機300に確認信号を送信する。なお、切り替え後の通信チャンネルで送信した確認信号に対して、所定時間内にリモコン受信機300から応答信号を受信しない場合には、報知装置6A,6Bにてユーザ等に通信途絶を報知する。
【0082】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0083】
(1)作業車両の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両は、エンジン9と走行用の電動モータとを備えるハイブリット仕様に構成されていてもよく、また、エンジン9に代えて走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、走行部として、左右の後輪6に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪6が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
【0084】
(2)上記実施形態では、遠隔操作用の通信端末の一例として、緊急停止用リモコン200を例に示したが、タブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等であってもよく、場合によっては、自動走行システムに備えられた携帯通信端末3と兼用構成されていてもよい。
【0085】
(3)上記実施形態では、チャンネル選択部314が、使用候補の通信チャンネルを複数(3つ)選択するように構成されている場合を例に示したが、使用候補の通信チャンネルを1つだけ選択するように構成されていてもよい。
【0086】
(4)上記実施形態では、通信状態記憶部303に記憶されたチャンネル毎の過去の通信状態に基づいてチャンネル設定部212,312が自動的に使用する通信チャンネルを設定する場合を例に示したが、通信状態記憶部303に記憶されたチャンネル毎の過去の通信状態を考慮してユーザ等が手動で使用する通信チャンネルを設定してもよい。
【0087】
(5)上記実施形態では、通信確認処理として、緊急停止用リモコン200とリモコン受信機300による通信確認処理として、確認信号(ハートビート信号)と応答信号(アンサーバック信号)の送受信(図中の細線矢印)を所定の時間間隔毎に行う場合を例に示したが、無線通信が成立するか否かを所定の時間間隔毎に確認可能な各種の方法を用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 トラクタ(作業車両)
18 車載電子制御ユニット(自動走行制御部)
200 緊急停止用リモコン(通信端末)
211,311 通信確認部
212,312 チャンネル設定部
300 リモコン受信機(車両側受信部)
303 受信機記憶部(通信状態記憶部)
314 チャンネル選択部
P 目標走行経路