(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】制御装置、熱源システム、ファン起動台数決定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
F28F27/00 501A
(21)【出願番号】P 2018170339
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 智
(72)【発明者】
【氏名】竹中 悠
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-155963(JP,A)
【文献】特開昭59-063497(JP,A)
【文献】特開昭54-067250(JP,A)
【文献】特開平08-219686(JP,A)
【文献】特開昭60-042597(JP,A)
【文献】特開2017-053597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のファンが接続された冷却塔の制御装置であって、
冷却水の温度制御に影響する前記冷却塔の動作環境のパラメータがとる値の範囲と、前記ファンの数と、前記冷却塔の運転開始時における前記パラメータの値と、に基づいて、
前記冷却塔の運転開始時における前記ファンの初期起動台数を決定する、
制御装置。
【請求項2】
前記パラメータがとる値の範囲を前記ファンの数で除算した値を運転点閾値とし、前記初期起動台数をPとした場合、
前記冷却塔の運転開始時における前記パラメータの値Qについて、
前記範囲の下限値+運転点閾値×(P-1)≦Q<前記範囲の下限値+運転点閾値×(P)、が成立する場合に前記初期起動台数をPと決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記冷却水の供給先の冷凍機の入口における前記冷却水の温度であって、前記パラメータがとる値の上限値には所定の定格冷却水入口温度が設定され、前記パラメータがとる値の下限値には前記冷凍機において定められた前記冷凍機の入口側における前記冷却水の下限値が設定される、
請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記パラメータは、外気湿球温度であって、前記パラメータがとる値の上限値には、所定の高温時の外気湿球温度が設定され、前記パラメータがとる値の下限値には前記冷却水の供給先の冷凍機において定められた前記冷凍機の前記冷却水の入口側における前記冷却水の下限値から所定のアプローチ温度を減算した値が設定される、
請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記ファンは、固定速のファンである、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記ファンを前記初期起動台数だけ起動して前記冷却塔の運転を開始した後は、
前記冷却水の目標温度と、前記冷却水の温度の計測値との偏差に基づくフィードバック制御により、前記ファンの起動台数を調整する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
複数のファンが接続された冷却塔と
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の制御装置と、
を含む熱源システム。
【請求項8】
複数のファンが接続された冷却塔の制御装置が、
冷却水の温度制御に影響する前記冷却塔の動作環境のパラメータがとる値の範囲と、前記ファンの数と、前記冷却塔の運転開始時における前記パラメータの値と、に基づいて、前記冷却塔の運転開始時における前記ファンの初期起動台数を決定するステップ、
を有するファン起動台数決定方法。
【請求項9】
複数のファンが接続された冷却塔を制御するコンピュータを、
冷却水の温度制御に影響する前記冷却塔の動作環境のパラメータがとる値の範囲と、前記ファンの数と、前記冷却塔の運転開始時における前記パラメータの値と、に基づいて、
前記冷却塔の運転開始時における前記ファンの初期起動台数を決定する手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔の制御装置、熱源システム、ファン起動台数決定方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍機に冷却水を供給する冷却塔には複数のファンが設けられているものがある。冷却水は、冷却塔のファンが送風した外気と熱交換して所望の温度に冷却され、冷凍機に供給される。冷却塔の運転を開始するときのファンの起動台数は、そのときの冷却水温度や外気条件等を考慮して適切に決定されることが望ましい。例えば、ファンの起動台数が少ない場合、冷却能力の不足により冷却水の温度が上昇する。反対にファンの起動台数が多い場合、余分なファンを駆動するための動力が必要になる。また、例えば、寒冷地での冬期には、冷却水温度の過度な低下により、冷凍機が起動できなくなる可能性がある。
【0003】
特許文献1、2にはファン等の起動台数を負荷に応じて決定する方法が開示されている。例えば、特許文献1には、負荷が低い場合は、冷却塔と冷凍機の間の配管における冷却水流路の往路と復路をつなぐバイパス管路のバイパス弁を全開とするとともにファンを停止させ、負荷が上昇するに伴い、バイパス弁を閉とするとともにファンの起動台数を増加する制御が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数の冷凍機に対して共通に接続された複数の冷却塔を備えた熱源システムにおける、適切な冷却塔の起動台数の制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3313934号公報
【文献】特許第5404132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載の制御方法は、冷却塔の運転中における負荷に応じたファン等の台数制御である。しかし、冷却塔の起動時には負荷の大きさが不明なため、これらの制御を適用することはできない。また、特許文献2に記載の制御方法は、複数の冷凍機全体に対して複数の冷却塔を割り当てた統合型の冷却塔設備についての制御であって、一つの冷却塔を一つの冷凍機に対して割り当てた一対型の冷却塔設備には用いることができない。これまでに、冷却塔の運転開始時におけるファンの適切な起動台数を決定する方法は提供されていない。
【0007】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる制御装置、熱源システム、ファン起動台数決定方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、複数のファンが接続された冷却塔の制御装置であって、前記制御装置は、冷却水の温度制御に影響する前記冷却塔の動作環境のパラメータがとる値の範囲と、前記ファンの数と、前記冷却塔の運転開始時における前記パラメータの値と、に基づいて、前記冷却塔の運転開始時における前記ファンの初期起動台数を決定する。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記制御装置は、前記パラメータがとる値の範囲を前記ファンの数で除算した値を運転点閾値とし、前記初期起動台数をPとした場合、前記冷却塔の運転開始時における前記パラメータの値Qについて、前記範囲の下限値+運転点閾値×(P-1)≦Q<前記範囲の下限値+運転点閾値×(P)が成立する場合に前記初期起動台数をPと決定する。
【0010】
本発明の一態様によれば、前記パラメータは、前記冷却水の供給先の冷凍機の入口における前記冷却水の温度であって、前記パラメータがとる値の上限値には所定の定格冷却水入口温度が設定され、前記パラメータがとる値の下限値には前記冷凍機において定められた前記冷凍機の入口側における前記冷却水の下限値が設定される。
【0011】
本発明の一態様によれば、前記パラメータは、外気湿球温度であって、前記パラメータがとる値の上限値には、所定の高温時の外気湿球温度が設定され、前記パラメータがとる値の下限値には前記冷却水の供給先の冷凍機において定められた前記冷凍機の入口側における前記冷却水の下限値から所定のアプローチ温度を減算した値が設定される。
【0012】
本発明の一態様によれば、前記ファンは、固定速のファンである。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記制御装置は、前記ファンを前記初期起動台数だけ起動して前記冷却塔の運転を開始した後は、前記冷却水の目標温度と、前記冷却水の温度の計測値との偏差に基づくフィードバック制御により、前記ファンの起動台数を調整する。
【0014】
本発明の一態様によれば、熱源システムは、複数のファンが接続された冷却塔と、上述の何れかに記載の制御装置と、を含む。
【0015】
本発明の一態様によれば、ファン起動台数決定方法は、複数のファンが接続された冷却塔の制御装置が冷却水の温度制御に影響する前記冷却塔の動作環境のパラメータがとる値の範囲と、前記ファンの数と、前記冷却塔の運転開始時における前記パラメータの値と、に基づいて、前記冷却塔の運転開始時における前記ファンの初期起動台数を決定するステップ、を有する。
【0016】
本発明の一態様によれば、プログラムは、複数のファンが接続された冷却塔を制御するコンピュータを、冷却水の温度制御に影響する前記冷却塔の動作環境のパラメータがとる値の範囲と、前記ファンの数と、前記冷却塔の運転開始時における前記パラメータの値と、に基づいて、前記冷却塔の運転開始時における前記ファンの初期起動台数を決定する手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
上記の制御装置、熱源システム、ファン起動台数決定方法及びプログラムによれば、適切な冷却塔ファンの初期起動台数を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一実施形態および第二実施形態に係る熱源システムの構成例を示す図である。
【
図2】第一実施形態におけるファンの初期起動台数を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第一実施形態におけるファンの初期起動台数を決定する処理を説明する図である。
【
図4】第一実施形態におけるファンの起動台数制御の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第二実施形態におけるファンの初期起動台数を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第一実施形態および第二実施形態に係る熱源システムの他の構成例を示す図である。
【
図7】第一実施形態および第二実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<熱源システムの構成>
以下、第一実施形態および第二実施形態に係る熱源システムについて説明する。
図1は、第一実施形態および第二実施形態に係る熱源システムの構成例を示す図である。
冷却システム1は、制御装置10、N台の冷却塔201~20N、N台の冷却水ポンプ301~30N、配管311a~31Na、配管311b~31Nb、N台の冷凍機401~40Nを備える。冷却塔201は4台のファン、ファン211a~ファン211dを備える。ファン211a~ファン211dは、冷却水の冷却に用いる外気を冷却塔内に導くためのファンである。
同様に冷却塔202は、ファン212a~ファン212dを備え、冷却塔20Nは、ファン21Na~ファン21Ndを備える。なお、ファン211a~ファン211d、ファン212a~ファン212d、ファン21Na~ファン21Ndは何れも固定速のファンである。
【0020】
冷却システム1では、1台の冷却塔が、1台の冷凍機に対して冷却水を供給するように構成されている。例えば、冷凍機401と、配管311aと、冷却塔201と、配管311b等によって1つの冷却サブシステムが構成される。冷却塔201と冷凍機401とは、配管311a,311bで接続され、配管311bには冷却水ポンプ301が設けられている。冷却水は、この冷却サブシステム内を循環する。例えば、冷却水ポンプ301が駆動することにより、冷却塔201にて冷却された冷却水は、311bを介して冷却水ポンプ301へ吸引され、冷凍機401へ送出される。冷却水は、冷凍機401で利用されて昇温する。利用後の冷却水は配管311aを介して冷却塔201へと戻される。制御装置10は、冷却水ポンプ301の回転数を負荷の大きさなどに応じて制御する。これにより、循環する冷却水の流量が調節される。
【0021】
配管311a,311bには、配管311aと配管311bを結ぶバイパス管路321が設けられる。バイパス管路321には、バイパス管路321を流れる冷却水の流量を調整するバイパス弁331が設けられている。制御装置10がバイパス弁331の開度を調節することにより、冷凍機401から送られた利用後の冷却水の一部は、冷却塔201へ戻ることなく、冷却水ポンプ301における冷却水流れ方向の上流側へと送られる。
【0022】
また、配管311aには、冷凍機401で利用した後の冷却水の温度を計測する温度センサ341が設けられる。温度センサ341が計測する温度を冷却水出口温度To1とよぶ。配管311bには、冷凍機401へ供給される冷却水の温度を計測する温度センサ351が設けられる。温度センサ351が計測する温度を冷却水入口温度Ti1とよぶ。温度センサ341,351は、計測した温度を制御装置10へ出力する。
また、冷却システム1には、外気湿球温度を計測できる温湿度センサ361が設けられている。温湿度センサ361は、計測した外気湿球温度を制御装置10へ出力する。
【0023】
図1に示すように冷凍機402に冷却水を供給する冷却塔202および冷凍機402を含む冷却サブシステムの構成、冷凍機40Nに冷却水を供給する冷却塔20Nおよび冷凍機40Nを含む冷却サブシステムの構成は、上記説明した冷却塔201が冷凍機401へ冷却水を供給する冷却サブシステムの構成と同様である。
【0024】
なお、冷却塔202と冷凍機402の間に設けられた配管312a,312bについてもバイパス管路322が設けられ、バイパス管路322にはバイパス弁332が設けられている。また、配管31Naと配管31Nbを接続するバイパス管路32Nが設けられ、バイパス管路32Nには、バイパス弁33Nが設けられている。また、配管312aには冷却水出口温度To2を計測する温度センサ342、配管312bには冷却水入口温度Ti2を計測する温度センサ352が設けられる。配管31Naには冷却水出口温度ToNを計測する温度センサ34N、配管31Nbには冷却水入口温度TiNを計測する温度センサ35Nが設けられる。これらの各温度センサ342等は、計測した温度を制御装置10へ出力する。
【0025】
以下、冷却塔201と冷凍機401を含む冷却サブシステムにおける制御を例に説明を行うが、他の冷却サブシステムについても同様である。なお、冷却塔201に接続されたファン211a~211dを総称してファン211と記載する場合がある。
【0026】
制御装置10は、冷却塔201や冷却水ポンプ301、バイパス弁331の動作を制御する。例えば、制御装置10は、冷却塔201~冷却塔20Nの各々の起動、停止を制御する。また、制御装置10は、冷却塔201が備えるファン211a~211dのうちの何台を起動するかを決定し、決定した台数のファン211を起動する。特に本実施形態では、制御装置10は、冷却塔201の運転開始時に何台のファン211を起動するかを決定する。
【0027】
制御装置10は、PLC(Programmable Logic Controller)やマイコン等のコンピュータで構成される。制御装置10は、センサ情報取得部11と、初期起動台数決定部12と、ファン制御部13と、記憶部14と、を備える。制御装置10は、この他にも種々の機能を有していてもよいが、ファン211の運転台数制御に関係のない機能についての説明は省略する。
【0028】
センサ情報取得部11は、温度センサ341,351、温湿度センサ361から、各センサが計測した計測値を取得する。
初期起動台数決定部12は、冷却塔201の運転開始時に起動するファン211の台数(以下、初期起動台数とよぶ。)を決定する。具体的には、初期起動台数決定部12は、冷却塔201の動作環境のパラメータのうち冷却水の温度制御に影響する所定のパラメータがとる値の範囲と、冷却塔201に接続されたファン211の数と、冷却塔201の起動時における当該パラメータの値に基づいて、ファン211の初期起動台数を決定する。後に説明するように冷却水の温度制御に影響するパラメータとは、例えば、冷却水の温度や、冷却システム1を運転する場所の外気湿球温度である。
【0029】
ファン211は固定速ファンであるから、ファン211の起動台数が多い程、冷却能力は高くなる。例えば、冷却水の温度が高ければ、目標温度の冷却水を供給するためには比較的多くのファン211の起動が必要であり、冷却水の温度が低ければ、比較的少ない起動台数でよい。外気湿球温度の場合、目標温度の冷却水を供給するためには、外気湿球温度が高ければ比較的多くのファン211の起動が必要であり、外気湿球温度が低ければ比較的少ない台数のファン211を起動するだけでよい。
【0030】
ファン制御部13は、ファン211の起動停止を制御する。例えば、ファン制御部13は、冷却塔201の運転開始時に初期起動台数決定部12が決定した初期起動台数だけファン211を起動する。
記憶部14は、各種閾値など種々の情報を記憶する。
【0031】
<第一実施形態>
次に第一実施形態におけるファン211の初期起動台数の決定方法について説明する。
図2は、第一実施形態におけるファンの初期起動台数を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
例えば、冷凍機401に冷却水の供給を開始するために冷却塔201の運転を開始する場面であるとする。
また、冷凍機401には、定格の冷却水入口温度T1が設定され、温度センサ341が計測する冷却水入口温度Ti1が所定の目標温度Tαとなるよう制御される。また、冷凍機401の冷凍サイクルを正常に運転するために冷却水入口温度Ti1には下限値TLが設定されている。これら定格の冷却水入口温度T1および冷却水入口温度下限値TLは記憶部14に予め登録されている。制御装置10は、冷却水入口温度Ti1が目標温度Tαとなるように冷却塔201のファン211a~211dの起動・停止制御を行う。
また、センサ情報取得部11は、温度センサ341、351から所定の時間間隔で各センサが計測した冷却水の温度を取得し、取得した時刻と共に記憶部14に記録する。
【0032】
まず、初期起動台数決定部12は、冷却水温度の範囲を算出する(ステップS11)。具体的には、初期起動台数決定部12は、冷却水温度の上限値Tmaxと下限値Tminの差を算出し、算出した差を冷却水温度の範囲とする。ここで、冷却水温度の上限値Tmaxを、冷凍機401の定格の冷却水入口温度T1とする。また、冷却水温度の下限値Tminを、冷凍機401の冷却水入口温度下限値TLとする。初期起動台数決定部12は、記憶部14から、定格の冷却水入口温度T1と冷却水入口温度下限値TLを読み出して、冷却水入口温度T1(上限値Tmax)から冷却水入口温度下限値TL(下限値Tmin)を減じて、冷却水温度の範囲を算出する。
【0033】
次に初期起動台数決定部12は、ファンの初期起動台数を決定するための閾値を算出する(ステップS12)。具体的には、(1)まず、初期起動台数決定部12は、ステップS11で算出した冷却水温度の範囲を冷却塔201に接続されているファン211の数で除算する(式A)。
ファン運転点閾値ΔT[℃/点] = (Tmax-Tmin)/運転開始する冷却塔201に接続されたファン211の数 ・・・・(A)
【0034】
(2)次に初期起動台数決定部12は、下限値Tminにファン運転点閾値ΔTを段階的に加算して、ファンの初期起動台数に対応する閾値を算出する。例えば、冷却塔201には、ファン211a~211dの4台であるから、各閾値は、起動すべきファンの数に応じて以下のようにして定められる。
閾値T0 = 下限値Tmin
閾値T1 = 下限値Tmin + ファン運転点閾値ΔT×(2-1)
閾値T2 = 下限値Tmin + ファン運転点閾値ΔT×(3-1)
閾値T3 = 下限値Tmin + ファン運転点閾値ΔT×(4-1)
閾値T4 = 上限値Tmax
初期起動台数決定部12は、閾値T0~T4を記憶部に記録する。
【0035】
ここで、
図3を用いて閾値T0~T3とファン211の初期起動台数との関係を説明する。
図3は、第一実施形態におけるファンの初期起動台数を決定する処理を説明する図である。
図3に示すグラフの縦軸はファン211の初期起動台数を示し、横軸は冷却水入口温度を示す。グラフL1は、冷却水入口温度Ti1と初期起動台数の関係を示す。具体的には、グラフL1にて、冷却水入口温度Ti1の範囲とファン211の初期起動台数とが対応付けられている。例えば、グラフL1に基づくと、冷却水入口温度Ti1の値がTa℃であればファン211の初期起動台数は1台、Tb℃であれば2台、Tc℃であれば3台、Td℃であれば4台のようになる。つまり、本例では、冷却水入口温度Tiとファン211の初期起動台数の関係は以下のようになる。
閾値T0≦ 冷却水入口温度Ti<閾値T1のとき、1台
閾値T1≦ 冷却水入口温度Ti<閾値T2のとき、2台
閾値T2≦ 冷却水入口温度Ti<閾値T3のとき、3台
閾値T3≦ 冷却水入口温度Ti≦閾値T4のとき、4台
【0036】
各初期起動台数に対応する閾値を算出すると、次に初期起動台数決定部12は、冷却塔201の運転開始時における冷却水入口温度Tiを取得する(ステップS13)。初期起動台数決定部12は、センサ情報取得部11から、温度センサ341が冷却塔201の運転開始時に計測した冷却水入口温度Ti1を取得する。
【0037】
次に初期起動台数決定部12は、ステップS13で取得した冷却塔201の運転開始時の冷却水入口温度Ti1と、ステップS12で算出した閾値に基づいて、ファン211の初期起動台数を決定する。初期起動台数決定部12は、
図3を用いて説明したように、冷却水入口温度Ti1と、閾値T0~T4に基づいて、ファン211の初期起動台数を決定する(ステップS14)。ファン制御部13は、初期起動台数決定部12が決定した台数のファン211を起動する。
このように本実施形態によれば、冷却水入口温度がとりうる値の範囲と冷却塔201に接続されたファン211の台数と、冷却塔運転開始時の冷却水入口温度とに基づいて、冷却塔ファンの初期起動台数を決定することができる。これにより、冷却塔の初期起動時から冷却能力に過不足が発生することを防ぐことができる。
【0038】
次に冷却塔201を例に運転中のファン211の起動停止制御について説明する。
図4は、第一実施形態におけるファンの起動台数制御の一例を示すフローチャートである。
前提として、
図2で説明した処理によって決定された初期起動台数のファン211を起動して、冷却塔201の運転が開始されたとする。
まず、ファン制御部13は、センサ情報取得部11から温度センサ341が計測した現在の冷却水入口温度Ti1を取得する(ステップS21)。
次にファン制御部13は、冷却水入口温度の目標温度TαとステップS21で取得した現在の冷却水入口温度Ti1の偏差を算出する(ステップS22)。次にファン制御部13は、ステップS22で算出した偏差に基づいて、ファン211の起動台数を制御する(ステップS23)。例えば、偏差が所定の許容範囲内であれば、ファン制御部13は、現在の起動台数を維持する。例えば、現在の冷却水入口温度Ti1が目標温度Tαよりも許容範囲を超えて高ければ、ファン制御部13は、ファン211の起動台数を1台増やす。反対に現在の冷却水入口温度Ti1が目標温度Tαに比べて許容範囲を超えて低ければ、ファン制御部13は、ファン211の起動台数を1台減らして運転する。
冷却塔201の運転中、ファン制御部13は、ステップS21~ステップS23の処理を所定の制御周期で繰り返す。ステップS22~ステップS23の処理には、例えば、PID制御などのフィードバック制御を用いることができる。
【0039】
このようなフィードバック制御により、冷却水入口温度Ti1の値を速やかに目標温度Tαとなるように制御し、最適なファン起動台数で運転を行うことができる。
図4に例示するファンの起動台数制御は、効率よくかつ速やかに冷却水入口温度Ti1を目標温度Tαにすることができる制御であるが、初期起動台数の精度が低いと、冷却水入口温度Ti1を目標温度Tαに制御するまでに時間が掛かり、ファン211の無駄な発停を招く可能性がある。
図2、
図3で説明した初期起動台数の決定処理によれば、適切な台数のファン211を起動することができるので、起動後のフィードバック制御と合わせて、効率よく冷却塔201およびファン211の運転を行うことができる。
【0040】
<第二実施形態>
第一実施形態では、冷却水入口温度に基づいて、ファン211の初期起動台数を決定した。第二実施形態では、外気湿球温度に基づいて、ファンの初期起動台数を決定する。
図5は、第二実施形態におけるファンの初期起動台数を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
図2の場合と同様に冷却塔201の運転を開始する場面であるとする。また、記憶部14には、外気湿球温度の上限値Wmaxおよび下限値Wminが登録されている。外気湿球温度の上限値Wmaxには、例えば、冷却システム1が運転する場所での夏期などの最も高い時期に計測された外気湿球温度、あるいは冷却塔201の設計時に設定された上限値を設定する。外気湿球温度の下限値Wminには、冷却水入口温度下限値TLから冷却塔アプローチ温度を引いた値を設定する。冷却塔アプローチ温度は、冷却水出口温度(例えば、所定の下限値)と外気湿球温度(例えば、上記の上限値)との差を示す。
センサ情報取得部11は、温湿度センサ361から所定の時間間隔で、温湿度センサ361が計測した外気湿球温度Wiを取得し、取得した時刻と共に記憶部14に記録する。
【0041】
まず、初期起動台数決定部12は、外気湿球温度の範囲を算出する(ステップS31)。具体的には、初期起動台数決定部12は、記憶部14から外気湿球温度の上限値Wmaxと下限値Wminを読み出してこれらの差(Wmax-Wmin)を算出し、算出した値を外気湿球温度の範囲とする。
【0042】
次に初期起動台数決定部12は、ファンの初期起動台数を決定するための閾値を算出する(ステップS32)。具体的には、(1)まず、初期起動台数決定部12は、ステップS31で算出した外気湿球温度がとる値の範囲を冷却塔201に接続されているファンの数で除算する(式B)。
ファン運転点閾値ΔW[℃WB/点] = (Wmax-Wmin)/運転開始する冷却塔201に接続されたファン211の数 ・・・・(B)
【0043】
(2)次に初期起動台数決定部12は、下限値Wminにファン運転点閾値ΔWを段階的に加算して、ファンの初期起動台数に対応する閾値を算出する。例えば、冷却塔201には、ファン211a~211dの4台であるから、各閾値は、起動すべきファンの数に応じて以下のようにして定められる。
閾値W0 = 下限値Wmin
閾値W1 = 下限値Wmin + ファン運転点閾値ΔW×(2-1)
閾値W2 = 下限値Wmin + ファン運転点閾値ΔW×(3-1)
閾値W3 = 下限値Wmin + ファン運転点閾値ΔW×(4-1)
閾値W4 = 上限値Wmax
初期起動台数決定部12は、閾値W0~W4を記憶部に記録する。
【0044】
第一実施形態と同様にして、温湿度センサ361が計測する外気湿球温度Wiとファン起動運転台数の関係は以下のようになる。
閾値W0≦ 外気湿球温度Wi <閾値W1のとき、1台
閾値W1≦ 外気湿球温度Wi <閾値W2のとき、2台
閾値W2≦ 外気湿球温度Wi <閾値W3のとき、3台
閾値W3≦ 外気湿球温度Wi ≦閾値W4のとき、4台
【0045】
各初期起動台数に対応する閾値を算出すると、次に初期起動台数決定部12は、冷却塔201の運転開始時における外気湿球温度Wiを取得する(ステップS33)。初期起動台数決定部12は、センサ情報取得部11から、温湿度センサ361が冷却塔201の運転開始時に計測した外気湿球温度Wiを取得する。
【0046】
次に初期起動台数決定部12は、ステップS33で取得した冷却塔201の運転開始時の外気湿球温度Wiと、ステップS32で算出した初期起動台数に対応する閾値に基づいて、第一実施形態の
図3を用いて説明した処理と同様にして、ファン211の初期起動台数を決定する(ステップS34)。ファン制御部13は、初期起動台数決定部12が決定した台数のファン211を起動する。
このように本実施形態によれば、冷却塔運転開始時に例えば冷却塔201や冷凍機401の付近で計測された外気湿球温度Wiに基づいて、ファン211の初期起動台数を決定することができる。
【0047】
また、第一実施形態および第二実施形態のファンの初期起動台数の決定方法は、
図1に例示するような一対型の冷却システム1だけではなく、
図6に例示する統合型の冷却システム2に適用することも可能である。
図6は、第一実施形態および第二実施形態に係る熱源システムの他の構成例を示す図である。
冷却システム2は、制御装置10a、冷却塔21~23、冷却水ポンプ31~3N、冷凍機41~4N、ヘッダ61、ヘッダ62を備える。冷却塔21は、ファン21a~ファン21dを備える。冷却塔22はファン22a~ファン22dを備え、冷却塔23はファン23a~ファン23dを備える。なお、ファン21a~21d、ファン22a~22d、ファン23a~ファン23dは何れも固定速のファンである。
【0048】
冷却システム2では、複数の冷却塔21~23が、複数の冷凍機41~4Nに対して冷却水を供給するように構成されている。例えば、冷却塔21~23から冷却水を供給する配管はヘッダ62に接続されていて、冷却塔21~23が冷却した冷却水は、ヘッダ62に集約される。冷却水ポンプ31~3Nは、ヘッダ62から冷却水を吸い込み、それぞれ冷凍機41~4Nへ吐出する。冷凍機41~4Nにて外部負荷へ提供する冷水と熱交換した冷却水は、冷凍機41~4Nから送り出され、ヘッダ61へと至る。ヘッダ61で集約された利用後の冷却水は、冷却塔21~23へと送られ、再び冷却される。なお、冷凍機41へ供給される冷却水が通る往き配管と還り配管には、往き配管と還り配管を結ぶバイパス管路が設けられ、バイパス管路にはバイパス弁51が設けられる。冷凍機42および冷凍機4Nの往き配管と還り配管についても同様にバイパス管路が設けられ、それぞれのバイパス管路にはバイパス弁52,5Nが設けられる。制御装置10aは、冷却塔21~23のうち、冷凍機41~4Nが要求する負荷に見合った台数の冷却塔を起動し運転する。制御装置10aは、第一実施形態又は第二実施形態で説明した制御装置10が有する機能を備えている。そして、例えば、冷却塔21を運転開始する場合、制御装置10aは、ファン21a~21dのうち必要な台数(第一実施形態又は第二実施形態の方法で算出した初期起動台数)だけ起動する。そして、その後は、例えば、
図4に例示するフィードバック制御により、ファン21a~21dの数を調整する。
【0049】
第一実施形態および第二実施形態によれば、
図1に例示する一対型の冷却システムおよび
図6に例示する統合型の冷却システムが備える冷却塔について、冷却塔の運転開始時における適切なファンの初期起動台数を決定することができる。時間をかければ所定の制御により、冷却塔の運転中に適切なファンの運転台数に整定することができる。しかし、冷却塔の運転開始時におけるファンの初期起動台数が不適切であれば、冷却能力に不足が生じ必要な冷却能力が得られなかったり、冷却能力が過多な場合には、無駄なエネルギーを必要としたり、冷却水温度が下がりすぎると冷凍機が起動できないなどの不具合が生じる可能性がある。第一実施形態および第二実施形態によれば、冷却塔の運転開始時から適切な台数のファンを起動することができるので、不具合の発生やエネルギーの浪費を防ぐことができる。
また、冷却塔201に接続にされたファンの数は様々であるが、式A、式Bに示すように冷却塔201に接続されたファン211の台数で除算した運転点閾値を用いるので、第一実施形態および第二実施形態のファン起動台数決定方法は、任意の台数のファンを備える冷却塔201に対して適用することができる。
【0050】
図7は、第一実施形態および第二実施形態における制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の制御装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0051】
なお、制御装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。なお、制御装置10は、複数のコンピュータ900によって構成されていても良い。
【0052】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0053】
例えば、第一実施形態と第二実施形態の両方の方法でファン211の初期起動台数を算出し、それぞれの初期起動台数の加重平均を、最終的な初期起動台数としてもよい。
また、1台の冷却塔に接続されたファンの数は4台に限らない。2~3台でも良いし、5台以上でもよい。また、ファン初期起動台数で運転を開始した後のファンの起動台数の制御は、
図4に示すフィードバック制御に限らない。他の制御方法の場合でも、本実施形態の初期起動台数の決定方法は有効である。
冷却システム1、2は熱源システムの一例である。
【符号の説明】
【0054】
1、2・・・冷却システム
10、10a・・・制御装置
11・・・センサ情報取得部
12・・・初期起動台数決定部
13・・・ファン制御部
14・・・記憶部
21、22、23、201、202、20N・・・冷却塔
31、32、3N、301、302、301N・・・冷却水ポンプ
311a~31Na、311b~31Nb・・・配管
41~4N、401~401N・・・冷凍機
21a~21d、22a~22d、23a~23d・・・ファン
211a~211d、212a~212d、21Na~21Nd・・・ファン
51、52、5N、331、332、33N・・・バイパス弁
321、322、32N・・・バイパス管路
341、351、342、352、34N、35N・・・温度センサ
361・・・温湿度センサ
61、62・・・ヘッダ
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース