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特許7108505機械加工性向上フィルム、積層体、及び機械加工性向上フィルムの使用方法
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  • 特許-機械加工性向上フィルム、積層体、及び機械加工性向上フィルムの使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】機械加工性向上フィルム、積層体、及び機械加工性向上フィルムの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220721BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220721BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20220721BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20220721BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220721BHJP
   G02B 5/30 20060101ALN20220721BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/16 101
B32B7/022
C09J201/00
G02B5/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018170970
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020041091
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(72)【発明者】
【氏名】小鯖 翔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6467551(JP,B1)
【文献】特開2013-203899(JP,A)
【文献】特開2010-044211(JP,A)
【文献】特開2008-031212(JP,A)
【文献】特開2006-235568(JP,A)
【文献】特開2015-174907(JP,A)
【文献】特開2017-200975(JP,A)
【文献】特開2001-235626(JP,A)
【文献】特開2013-176985(JP,A)
【文献】特開2018-131623(JP,A)
【文献】特開2010-117903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00、27/30
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さを200~10000μmの範囲内の値とする樹脂板に貼付する、所定基材としての機能性フィルム又は剥離フィルムに積層してなる活性エネルギー線硬化性の機械加工性向上層を備えた機械加工性向上フィルムであって、
前記樹脂板に対して貼付した状態の、前記機械加工性向上層につき、活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率が0.2MPa以上の値であり、
活性エネルギー線照射後の粘着力を10N/25mm以上の値とすることを特徴とする機械加工性向上フィルム。
【請求項2】
活性エネルギー線照射後の、前記機械加工性向上層のゲル分率を60%以上の値とすることを特徴とする請求項に記載の機械加工性向上フィルム。
【請求項3】
活性エネルギー線照射前における、前記機械加工性向上層の貯蔵弾性率を0.01~1MPaの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の機械加工性向上フィルム。
【請求項4】
活性エネルギー線照射後における、前記機械加工性向上層の貯蔵弾性率を0.2~5MPaの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の機械加工性向上フィルム。
【請求項5】
活性エネルギー線照射前における、前記機械加工性向上層の貯蔵弾性率をM1とし、活性エネルギー線照射後における、前記機械加工性向上層の貯蔵弾性率をM2としたときに、M2/M1×100で表された数値を320~30000%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の機械加工性向上フィルム。
【請求項6】
前記機械加工性向上層の厚さを3~40μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の機械加工性向上フィルム。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項の機械加工性向上フィルムが、樹脂板に貼付されてなることを特徴とする積層体。
【請求項8】
前記樹脂板が、光学用樹脂板であることを特徴とする請求項に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の機械加工性向上フィルムの使用方法であって、下記工程(1)~(4)を含むことを特徴とする機械加工性向上フィルムの使用方法。
(1)所定基材としての機能性フィルムの表面に、活性エネルギー線硬化性成分を含む組成物を塗布し、加熱処理することにより、活性エネルギー線硬化性の機械加工性向上層を備えた機械加工性向上フィルムとする工程
(2)前記機械加工性向上フィルムを、樹脂板に貼付する工程
(3)樹脂板又は所定基材側から活性エネルギー線を照射し、前記機械加工性向上層中における活性エネルギー線硬化性成分を硬化させ、硬化後の機械加工性向上層とする工程
(4)硬化後の機械加工性向上層及び樹脂板を含む積層体に対して、所定の機械加工処理を施す工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工性向上フィルム、積層体(機械加工性向上フィルムを貼付した樹脂板)、及び機械加工性向上フィルムの使用方法に関する。
特に、タッチパネルや液晶表示装置等を製造する際に用いる、切削性や耐久性等に優れた機械加工性向上フィルム、積層体、及びそのような機械加工性向上フィルムの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光の干渉による干渉縞の発生を抑制し、かつ、加飾フィルムが容易に交換できることを目的としたタッチパネルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、タッチ入力を受け付ける操作領域とタッチ入力を受け付けない非操作領域とを有するタッチパネルであって、前記操作領域に対応する前記加飾フィルムの下面に凹凸が形成されていることを特徴とするタッチパネル装置である。
【0003】
また、タッチパネルや液晶表示装置等において、凹凸を有する一対の光学部材同士を接着するのに適した粘着シートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、ベースポリマー(A)と、重合性不飽和基を少なくとも1つ有する単量体(B)と、熱架橋剤(C)と、重合開始剤(D)と、溶剤(E)と、を含有する粘着組成物を加熱により半硬化させた粘着剤を含む粘着剤層(X)を備える粘着シートである。
【0004】
更にまた、打ち抜き加工の際に、粘着剤がはみ出しにくく、切断面における粘着剤はみ出し付着が少なくて、取り扱い時に糊汚染や糊欠け生じにくい光学部材も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
より具体的には、打ち抜き加工した際に、その切断面において粘着剤以外の部分に付着する粘着剤の面積を、粘着層の面積の20%以下とした光学部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-5698号公報(特許請求の範囲等)
【文献】WO2013-61938号公報(特許請求の範囲等)
【文献】特開2001-235626号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているタッチパネル装置は、所定の外装ユニット(板金/接着層/加飾フィルム)を備え、このような外装ユニットは、板金及び接着層がそれぞれ所定の形状に加工された後で積層されて製造される。このため、当該外装ユニットを得るためには、製造工程が多いことが難点である。
その上、接着層は、加飾フィルムが容易に交換可能である設計としていること、及び粘着力について、何ら考慮していないことから、耐久条件(例えば、85℃、85%RH、500時間等)に供した場合、接着界面において浮きや剥がれの発生によって加飾フィルムから接着剤層が剥離して、耐久性が乏しくなるという問題も見られた。
【0007】
また、特許文献2に開示されている粘着シートは、凹凸を有する一対の光学部材同士の接着のみを考慮しており、粘着シートを光学部材同士の間に挟んで、所定形状に切削加工することまでは、何ら考慮していなかった。
したがって、粘着剤層の貯蔵弾性率の値を何ら考慮していないことから、粘着シートの切削性が乏しいという問題も見られた。
【0008】
更にまた、特許文献3に開示されている光学部材は、具体的に、打ち抜き加工した際に、その切断面において粘着剤以外の部分に付着する粘着剤の面積を、粘着層の面積の20%以下とする制御方法が記載されておらず、実用性に乏しいという問題が見られた。
【0009】
そこで、本発明者等は、以上のような事情に鑑みて鋭意努力したところ、樹脂板に貼付する、所定基材に積層してなる活性エネルギー線硬化性の機械加工性向上層を備えた機械加工性向上フィルムの、活性エネルギー線照射後の機械加工性向上層の貯蔵弾性率(M2)を所定値以上とすることにより、切削装置等を用いて、樹脂板を含んだ状態で、所定基材の一つである機能性フィルム等及び機械加工性向上層を切削した場合であっても、切削加工において機械加工性向上層の欠けや伸びの発生が抑制されて、加工後の切削面が良好となり、優れた機械加工処理性(切削性)が得られることを見出した。
更に、活性エネルギー線照射後の機械加工性向上層の粘着力(P2)を所定値以上とすることにより、樹脂板を含んだ状態で、所定基材の一つである機能性フィルム等及び機械加工性向上層を厳しい耐久条件(例えば、85℃、85%RH、500時間の湿熱環境条件)に供した場合であっても、浮きや剥がれ等の発生が抑制され、優れた耐久性を発揮することも見出した。
すなわち、本発明者等は、上述した切削性の問題とともに、耐久性の問題も解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
したがって、本発明は、タッチパネルや液晶表示装置等の樹脂板とともに、所定基材を同時に機械加工処理(切削処理)する際の、優れた機械加工処理性(切削性)、及び耐久条件に供した際に優れた耐久性が得られる機械加工性向上フィルム、そのような機械加工性向上フィルムを樹脂板に貼付してなる積層体、及びそのような機械加工性向上フィルムの効率的な使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、樹脂板に貼付する、所定基材に積層してなる活性エネルギー線硬化性の機械加工性向上層を備えた機械加工性向上フィルムであって、樹脂板に対して貼付した状態の、機械加工性向上層につき、活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率(M2)が0.2MPa以上の値であり、活性エネルギー線照射後の粘着力(P2)が10N/25mm以上の値であることを特徴とする機械加工性向上フィルムが提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、このように機械加工性向上フィルムを構成し、樹脂板に貼付した状態の、活性エネルギー線照射後の機械加工性向上層の貯蔵弾性率(M2)を所定値以上とすることにより、樹脂板を含んだ状態で、機械加工性向上フィルムを同時に切削した場合であっても、切削加工において機械加工性向上層の欠けや伸びの発生が抑制されて、加工後の切削面が良好となり、優れた切削性を得ることができる。
また、活性エネルギー線照射後の機械加工性向上層の粘着力(P2)を所定値以上とすることにより、樹脂板に対して、機械加工性向上層を貼付した状態で、耐久試験(例えば、85℃、85%RH、500時間等)を施した場合であっても、気泡や浮き剥がれが発生せず、優れた耐久性を発揮することができる。
【0011】
また、本発明の機械加工性向上フィルムを構成するにあたり、所定基材として、機能性フィルム又は剥離フィルムを含むことが好ましい。
このように機能性フィルム又は剥離フィルムを含むことによって、機械加工性向上フィルムの取り扱いが良好になり、樹脂板との貼合性が向上する。
これにより、貼合ミスによる積層体の外観不良発生の抑制や、積層界面に空気をかみこんでしまうことを起因とした耐久性の低下を防止することができる。
なお、所定基材として、機能性フィルム及び剥離フィルムを両方含むこともより好ましい。
【0012】
また、本発明の機械加工性向上フィルムを構成するにあたり、活性エネルギー線照射後における、機械加工性向上層のゲル分率(G2)を60%以上の値とすることが好ましい。
このように機械加工性向上層のゲル分率(G2)を制御することによって、更に良好な切削性等を得ることができる。
加えて、活性エネルギー線照射後における、機械加工性向上層の凝集力が適度なものとなるため、耐久性向上にも寄与する。
【0013】
また、本発明の機械加工性向上フィルムを構成するにあたり、活性エネルギー線照射前における、機械加工性向上層の貯蔵弾性率(M1)を0.01~1MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
このように活性エネルギー線照射前における、機械加工性向上層の貯蔵弾性率(M1)を制御することにより、樹脂板との貼合性が優れたものになり、貼合時に空気をかみこんでしまうことを起因とした耐久性の低下を防止することができる。
【0014】
また、本発明の機械加工性向上フィルムを構成するにあたり、活性エネルギー線照射後における、機械加工性向上層の貯蔵弾性率(M2)を0.2~3MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
このように活性エネルギー線照射後における、機械加工性向上層の貯蔵弾性率(M2)を制御することにより、機械加工性向上層は適度な凝集力を有するものとなり、良好な切削性を発揮することに加えて、更に耐久性を両立し易いものとなる。
【0015】
また、本発明の機械加工性向上フィルムを構成するにあたり、活性エネルギー線照射前における、機械加工性向上層の貯蔵弾性率をM1、活性エネルギー線照射後における、機械加工性向上層の貯蔵弾性率をM2としたときに、M2/M1×100で表された数値(貯蔵弾性率の増加率)を320~30000%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように貯蔵弾性率の増加率(%)を所定範囲内の値に制御することで、機械加工性向上層が硬化前の良好な貼合性と、硬化後の適度な凝集力を両立し易くなり、更に良好な切削性及び耐久性を得ることができる。
また、硬化前に良好に貼合されると、硬化後の貼合界面との密着性も高まるため、その効果も相まって、切削処理における機械加工性向上層の欠けや伸びを抑制し易い傾向にある。
【0016】
また、本発明の機械加工性向上フィルムを構成するにあたり、機械加工性向上層の厚さを3~40μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように機械加工性向上フィルムの機械加工性向上層の厚さを制御することにより、活性エネルギー線照射前後における、JIS Z 0237:2000に準拠して測定されるガラスに対する180°剥離粘着力(以下、単に粘着力と称する場合がある。)を所望範囲内の値に調整することが容易となり、良好な耐久性を発揮するものとなる。
また、比較的薄い厚みであることから、得られる積層体の軽量化にも寄与することができる。
【0017】
また、本発明の別の態様は、上述したいずれかの機械加工性向上フィルムが、樹脂板に貼付されてなることを特徴とする積層体である。
このような積層体であれば、樹脂板は従来の金属フレーム等に比べると加工性に優れるため、各種機器において使用される各種機能性フィルムを、機械加工性向上層を介して樹脂板に貼合した状態で、精度良く切削処理することができる。
また、樹脂板は従来の金属フレーム等よりも軽量であるため、当該積層体が適用される機器の軽量化も可能となる。
【0018】
また、本発明の積層体を構成するにあたり、樹脂板が、光学用樹脂板であることが好ましい。
このような光学用樹脂板を含む積層体であれば、光学分野における機器に適用し易くなり、例えば、タッチパネルや液晶表示装置等の光学部品において、光学特性を有しながらも軽量化も可能となる。
【0019】
また、本発明の更に別の態様は、上述したいずれかの機械加工性向上フィルムの使用方法であって、下記工程(1)~(4)を含むことを特徴とする機械加工性向上フィルムの使用方法である。
(1)所定基材としての機能性フィルムの表面に、活性エネルギー線硬化性成分を含む組成物を塗布し、加熱処理することにより、活性エネルギー線硬化性の機械加工性向上層を備えた機械加工性向上フィルムとする工程
(2)得られた機械加工性向上フィルムを、樹脂板に貼付する工程
(3)樹脂板又は所定基材側から活性エネルギー線を照射し、機械加工性向上層中における活性エネルギー線硬化性成分を硬化させ、硬化後の機械加工性向上層とする工程
(4)硬化後の機械加工性向上層及び樹脂板を含む積層体に対して、所定の機械加工処理を施す工程
このように機械加工性向上フィルムを使用することにより、タッチパネルや液晶表示装置等の光学部品等に適用可能な、機械加工性向上層を介した機能性フィルム付きの樹脂板を簡便に製造することができる。すなわち、一度の切削処理によって、所望の形状を有する積層体を容易に得ることができる。更に、切削処理において機械加工性向上層の欠けや伸びはないため、加工後の切削面は良好となり、得られる積層体は、優れた外観品質を有するものとなる。更に、得られる積層体は、耐久性に優れるため、厳しい環境下で使用される光学部品(例えば、車載用のタッチパネルや液晶表示装置等)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)~(b)は、機械加工性向上フィルムを用いてなる積層体の構成例をそれぞれ説明するために供する図である。
図2図2は、活性エネルギー線照射後の機械加工性向上層の、貯蔵弾性率(MPa)と切削性(相対値)との関係を説明するために供する図である。
図3図3(a)~(e)は、熱架橋工程を含む機械加工性向上フィルムの製造方法及び、当該機械加工性向上フィルムを用いた、積層体の製造方法を説明するために供する図である。
図4図4(a)~(f)は、所定基材として機能性フィルムを用いた、機械加工性向上フィルムを用いてなる積層体の作成工程及び使用工程を説明するために供する図である(その1)。
図5図5(a)~(f)は、所定基材として剥離フィルムを用いた、機械加工性向上フィルムを用いてなる、別の積層体の作成工程及び使用工程を説明するために供する図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態は、図1(a)~(b)に例示されるように、樹脂板12に貼付する、活性エネルギー線硬化性の機械加工性向上層14、及び、所定基材16(機能性フィルム等)を備えてなる機械加工性向上フィルム18や、そのような機械加工性向上フィルム18を用いてなる積層体10、更には、機械加工性向上フィルム18の使用方法である。
そして、本実施形態の機械加工性向上フィルム18は、樹脂板12に対して積層した状態の機械加工性向上層14の、活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率(M2)が0.2MPa以上の値であり、活性エネルギー線の照射後の粘着力(P2)が10N/25mm以上の値であることを特徴とする。
以下、適宜図面を参照しつつ、機械加工性向上フィルム18を、構成要件ごとに、具体的に説明する。
なお、図1(a)は、機械加工性向上フィルム18を積層してなる樹脂板12から構成されてなる積層体10の態様を例示しており、図1(b)は、別の積層体10の一態様であって、機械加工性向上層14の一部に、所定空間14aを有するタッチパネル(但し、電気配線等を省略)の一例を示している。
【0022】
1.樹脂板
(1)種類
図1(a)等に示される樹脂板12の種類としては、特に制限されるものではないが、機械加工性が良好なため、公知の透明又は半透明の樹脂板を用いることが好ましい。
【0023】
このような樹脂板として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂板、ポリエチレン樹脂板、ポリプロピレン樹脂板、ジアセチルセルロース樹脂板、トリアセチルセルロース樹脂板、アセチルセルロースブチレート樹脂板、ポリ塩化ビニル樹脂板、ポリ塩化ビニリデン樹脂板、ポリビニルアルコール樹脂板、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂板、ポリスチレン樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、ポリメチルペンテン樹脂板、ポリスルホン樹脂板、ポリエーテルエーテルケトン樹脂板、ポリエーテルスルホン樹脂板、ポリエーテルイミド樹脂板、ポリイミド樹脂板、フッ素樹脂板、ポリアミド樹脂板、アクリル樹脂板、ノルボルネン系樹脂板、シクロオレフィン樹脂板等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、光学特性や耐熱性が良好であって、寸法安定性にも優れていることから、ポリエステル樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、ポリメチルペンテン樹脂板、ポリスルホン樹脂板、アクリル樹脂板、ポリエーテルエーテルケトン樹脂板、ポリイミド樹脂板、ノルボルネン系樹脂板、シクロオレフィン樹脂板のうち少なくとも一つであることが好ましい。
また、透明性や、機械的強度、柔軟性、加工性、耐候性、更には経済性にも優れていることから、特に、アクリル樹脂板(MMA樹脂板等)やポリカーボネート樹脂板であることが更に好ましい。
【0025】
(2)厚さ
図1(a)等に示される樹脂板12の厚さを、通常、200~10000μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる樹脂板の厚さが200μm未満の値となると、樹脂板の強度が低下したり、樹脂板を含むタッチパネル等の配置固定性が低下したりする場合があるためである。
一方、樹脂板の厚さが10000μmを超えた値となると、機械加工性向上層を介して、樹脂板と、所定基材としての機能性フィルム等とともに同時に機械加工処理することが困難となる場合があるためである。
したがって、樹脂板の厚さを500~5000μmの範囲内の値とすることがより好ましく、700~2000μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0026】
(3)光学特性
樹脂板の光学特性に関し、タッチパネルや液晶表示装置等の用途に使用可能な程度に透明性を有することが好ましい。
具体的には、樹脂板の可視光透過率が過度に低くなると、歩留まりが著しく低下したり、使用可能な構成材料の種類が過度に制限されたりする場合がある。
したがって、樹脂板の可視光透過率の下限として、60%以上の値とすることが好ましく、75%以上の値とすることがより好ましく、85%以上の値とすることが更に好ましい。
一方、樹脂板の可視光透過率の上限は、通常、100%以下であり、99.9%以下の値とすることが好ましく、99%以下の値とすることがより好ましく、98%以下の値とすることが更に好ましい。
【0027】
(4)添加剤
樹脂板において、耐久性、物理特性、機械特性等を改良すべく、酸化防止剤、加水分解防止剤、紫外線吸収剤、無機フィラー、有機フィラー、無機繊維、有機繊維、導電性材料、電気絶縁性材料、金属イオン捕捉剤、軽量化剤、充填剤、研磨剤、着色剤、粘度調整剤等のうち少なくとも一つの公知の添加剤を、配合することも好ましい。
そして、これらの公知の添加剤を樹脂板中に配合する場合、その添加剤の種類にもよるが、通常、その配合量を、樹脂板の全体量(100重量%)に対して、0.1~30重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.5~20重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1~10重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0028】
2.機械加工性向上層
本実施形態における機械加工性向上層14は、主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、熱硬化性成分(B)と、活性エネルギー線硬化性成分(C)を必須成分とする、機械加工性向上層を形成するための組成物に由来した樹脂層13を加熱処理によって熱架橋することで得ることができる。
すなわち、かかる機械加工性向上層14は、主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、熱硬化性成分(B)とから構成される架橋構造と、未硬化の活性エネルギー線硬化性成分(C)によって構成される。この機械加工性向上層14に、活性エネルギー線照射により硬化させることにより、硬化後の機械加工性向上層14´を得ることができる。
【0029】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味するものとし、以下、他の類似用語も含めて同様である。
以下、機械加工性向上層14を構成する、各成分等について、具体的に説明する。
【0030】
(1)主剤(A)
機械加工性向上層14を構成する、主剤(A)の種類としては、特に制限されるものではない。
しかしながら、例えば、入手しやすく、後述する活性エネルギー線硬化性成分(C)と均一に混合し易いことから、所定の(メタ)アクリル酸エステルモノマー成分に由来した(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、主剤(A)であることが好ましい。
【0031】
かかる主剤が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の場合、当該共重合体を構成するモノマー単位として、熱硬化性成分(B)と反応する、反応性基を分子内に有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、を含有することが好ましい。
この理由は、反応性基含有モノマー由来の反応性基が熱硬化性成分(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成されることにより、被膜強度の比較的高い機械加工性向上層を得ることができるためである。
【0032】
(1)-1 モノマー1(反応性官能基含有モノマー)
主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル重合体の一部を構成する反応性基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(以下、水酸基含有モノマーと称する場合がある。)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(以下、カルボキシ基含有モノマーと称する場合がある。)、分子内にアミノ基を有するモノマー(以下、アミノ基含有モノマーと称する場合がある。)などが挙げられる。
これらの中でも、熱硬化性成分(B)との反応性に優れ、被着体への悪影響が少ない観点から水酸基含有モノマーが好ましく、また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量が比較的低くても、所望の凝集力が発揮される観点から、カルボキシ基含有モノマーが好ましい。
【0033】
水酸基含有モノマーの種類としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。
これらの中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体における水酸基と熱硬化性成分(B)との反応性及び他の単量体との共重合性の観点から、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましく、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル及びアクリル酸4-ヒドロキシブチルがより好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、モノマー単位としての水酸基含有モノマーの配合量を、モノマー全体量(100重量%、以下、同様である。)に対して、1重量%以上含有することが好ましく、10重量%以上含有することがより好ましく、15重量%以上含有することが更に好ましい。
更に、かかる水酸基含有モノマーの配合量を、モノマー全体量に対して、50重量%以下含有することが好ましく、40重量%以下含有することがより好ましく、30重量%以下含有することが更に好ましい。
すなわち、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、モノマー単位として水酸基含有モノマーを所定範囲で含有することにより、熱硬化性成分(B)と好適に反応し易くなり、良好な架橋構造が形成される。その結果、得られる機械加工性向上層は、被膜強度が比較的高く、機械加工性向上層の貯蔵弾性率が所望の値を満たしやすくなり、良好な切削性を有するものとなる。
【0035】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。
これらの中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体におけるカルボキシ基と熱硬化性成分(B)との反応性及び他の単量体との共重合性の観点から、アクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
そして、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを含む場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、当該カルボキシ基含有モノマーを、モノマー全体量に対して、1重量%以上含有することが好ましく、5重量%以上含有することが特に好ましく、8重量%以上含有することが更に好ましい。
更に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを、30重量%以下含有することが好ましく、20重量%以下含有することがより好ましく、15重量%以下含有することが更に好ましい。
すなわち、モノマー単位としてカルボキシ基含有モノマーを所定範囲で含有することにより、熱硬化性成分(B)と好適に反応し易くなり、良好な架橋構造が形成される。
その結果、得られる機械加工性向上層は、被膜強度が比較的高く、機械加工性向上層の貯蔵弾性率が所望の値を満たしやすくなり、良好な切削性を有するものとなる。
【0036】
また、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを微量含むか、又は、全く含まないことも好ましい。
この理由は、カルボキシ基は酸成分であるため、カルボキシ基含有モノマーを含有しないことにより、粘着剤の貼付対象に、酸により不具合が生じるもの、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明導電膜や金属膜などが存在する場合にも、酸によるそれらの不具合(腐食、抵抗値変化等)を抑制することができるためである。
ただし、このような不具合が生じない程度に、カルボキシ基含有モノマーを所定量含有することは許容される。
具体的には、(メタ)アクリル酸エステル共重合体中に、モノマー単位として、カルボキシ基含有モノマーを5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下の量で含有することが許容される。
【0037】
また、アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(1)-2 モノマー2((メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー)
主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。
これにより、機械加工性向上層が好ましい粘着性を発現することができる。
また、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、より好ましい粘着性を発現できる観点から、直鎖状又は分岐鎖状の構造であることが好ましい。
【0039】
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が0℃未満であることが好ましい(以下、低Tgアルキルアクリレートと称する場合がある。)。
この理由は、かかる低Tgアルキルアクリレートを構成モノマー単位として含有することにより、得られる機械加工性向上層の粘着性を、より向上させることができるためである。
【0040】
ここで、低Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸n-ブチル(Tg:-55℃)、アクリル酸n-オクチル(Tg:-65℃)、アクリル酸イソオクチル(Tg:-58℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg:-70℃)、アクリル酸イソノニル(Tg:-58℃)、アクリル酸イソデシル(Tg:-60℃)、メタクリル酸イソデシル(Tg:-41℃)、メタクリル酸n-ラウリル(Tg:-65℃)、アクリル酸トリデシル(Tg:-55℃)、メタクリル酸トリデシル(Tg:-40℃)等の少なくとも一つが好ましく挙げられる。
これらの中でも、より効果的に粘着性を向上させる観点から、低Tgアルキルアクリレートとして、ホモポリマーのTgが、-25℃以下であるものがより好ましく、-50℃以下であるものが更に好ましい。
具体的には、アクリル酸n-ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。
【0041】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、低Tgアルキルアクリレートを、下限値として30重量%以上含有することが好ましく、特に40重量%以上含有することがより好ましく、50重量%以上含有することが更に好ましい。
この理由は、このようにかかる低Tgアルキルアクリレートを配合すると、得られる機械加工性向上層の粘着性を良好に向上させることができ、樹脂板への貼合性をより優れたものとできるためである。
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、低Tgアルキルアクリレートを、上限値として、99重量%以下含有することが好ましく、特に90重量%以下含有することがより好ましく、80重量%以下含有することが更に好ましい。
この理由は、このようにかかる低Tgアルキルアクリレートを配合すると、(メタ)アクリル酸エステル重合体中に他のモノマー成分(特に反応性官能基含有モノマー)を好適な量導入することができるためである。
【0042】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、モノマー単位として、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が0℃を超えるモノマー(以下、高Tgアルキルアクリレートと称する場合がある。)を併用することも好ましい。
この理由は、得られる機械加工性向上層に適度な凝集力を付与し、機械加工性向上層の貯蔵弾性率が所望の値を満たし易くなり、切削性を向上させることができるためである。
【0043】
但し、ここで記載する高Tgアルキルアクリレートは、後述する脂環式構造含有モノマー及び窒素含有モノマーを除くものとする。
このような高Tgアルキルアクリレートとしては、例えば、アクリル酸メチル(Tg:10℃)、メタクリル酸メチル(Tg:105℃)、メタクリル酸エチル(Tg:65℃)、メタクリル酸n-ブチル(Tg:20℃)、メタクリル酸イソブチル(Tg:48℃)、メタクリル酸t-ブチル(Tg:107℃)、アクリル酸n-ステアリル(Tg:30℃)、メタクリル酸n-ステアリル(Tg:38℃)等のアクリル系モノマー、酢酸ビニル(Tg:32℃)、スチレン(Tg:30℃)等の少なくとも一つが挙げられる。
これらの中でも、機械加工性向上層に適度な凝集力を付与でき、所望の貯蔵弾性率を発現できることから、高Tgアルキルアクリレートとしては、特にメタクリル酸メチルであることが好ましい。
【0044】
すなわち、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として上記高Tgアルキルアクリレートを含有する場合、当該高Tgアルキルアクリレートを、モノマー成分の全体量に対して、1重量%以上含有することがより好ましく、3重量%以上含有することがより好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、当該高Tgアルキルアクリレートを20重量%以下含有することが好ましく、12重量%以下含有することがより好ましく、8重量%以下含有することが更に好ましい。
この理由は、高Tgアルキルアクリレートを、低Tgアルキルアクリレートとともに、上記の量となるように併用することにより、得られる機械加工性向上層は、好適な粘着性及び凝集力を発現し、粘着力及び貯蔵弾性率が所望の値を満たし易くなり、切削性及び耐久性が発揮し易くなるためである。
【0045】
(1)-3 モノマー3(脂環式構造含有モノマー)
主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することが好ましい。
この理由は、脂環式構造含有モノマーが分子構造上、嵩高いためで、これを共重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定される。その結果、得られる機械加工性向上層を柔軟性に優れたものとすることができるためである。
したがって、(メタ)アクリル酸エステル重合体がモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有することにより、組成物を架橋させて得られる機械加工性向上層は、樹脂板への貼合性に優れたものとなる。
【0046】
また、脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。
また、このような脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。
得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体において重合体同士の間隔を広げ、機械加工性向上層の柔軟性を効果的に発揮させる観点から、上記の脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。
更に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と他の成分との相溶性が良好であることから、上記の多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。
【0047】
また、上記と同様に粘着剤の柔軟性を効果的に発揮させる観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数を意味し、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数を意味する)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。
一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様に相溶性の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0048】
よって、脂環式構造含有モノマーに含まれる脂環式構造としては、例えば、シクロヘキシル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格、イソボルニル骨格、シクロアルカン骨格(シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、シクロノナン骨格、シクロデカン骨格、シクロウンデカン骨格、シクロドデカン骨格等)、シクロアルケン骨格(シクロヘプテン骨格、シクロオクテン骨格等)、ノルボルネン骨格、ノルボルナジエン骨格、キュバン骨格、バスケタン骨格、ハウサン骨格、スピロ骨格などの少なくとも一つが挙げられる。
【0049】
そして、これらの中でも、より優れた耐久性を得る観点から、ジシクロペンタジエン骨格(脂環式構造の炭素数:10)、アダマンタン骨格(脂環式構造の炭素数:10)又はイソボルニル骨格(脂環式構造の炭素数:7)を含むものが好ましく、イソボルニル骨格を含むものがより好ましい。
したがって、上記の脂環式構造含有モノマーとしては、上記の骨格を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等の少なくとも一つが挙げられる。
その上、これらの中でも、より優れた耐久性を得る観点から、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル又は(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、(メタ)アクリル酸イソボルニルがより好ましく、アクリル酸イソボルニルが特に好ましい。
【0050】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、当該共重合体を構成するモノマー単位として、モノマーの全体量に対して、脂環式構造含有モノマーを1重量%以上含有することが好ましく、4重量%以上含有することがより好ましく、8重量%以上含有することが更に好ましい。
同様に、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを40重量%以下含有することが好ましく、30重量%以下含有することがより好ましく、24重量%以下含有することが更に好ましく、耐久性をより優れたものにする観点においては、18重量%以下含有することが特に好ましい。
このように脂環式構造含有モノマーの含有量が上記の範囲内であることにより、得られる機械加工性向上層の柔軟性が良好となり、樹脂板への貼合性がより優れたものとなるため、所望の粘着力の値をより満たし易くなり、良好な耐久性を発揮し易くなるためである。
【0051】
(1)-4 モノマー4(窒素原子含有モノマー)
主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、分子内に窒素原子を有するモノマー(窒素原子含有モノマー)を含有することが好ましい。
なお、反応性基含有モノマーとして例示したアミノ基含有モノマーは、当該窒素原子含有モノマーから除かれる。窒素原子含有モノマーを構成単位として共重合体中に存在させることにより、アクリル酸エステル共重合体と熱硬化性成分(B)との反応を促進させることができ、機械加工性向上層に極性を付与し、機械加工性向上層の凝集力を高めることができる。
【0052】
上記の窒素原子含有モノマーとしては、第3級アミノ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、窒素含有複素環を有するモノマーなどが挙げられる。これらの中でも、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。
かかる窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、これらの中でも、より優れた粘着力を得る観点から、N-(メタ)アクリロイルモルフォリンが好ましく、N-アクリロイルモルフォリンがより好ましいと言える。
【0053】
また、上述の窒素含有複素環を有するモノマー以外の窒素原子含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の少なくとも一つが挙げられる。
【0054】
そして、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が、モノマー成分の全体量に対して、窒素原子含有モノマーを1重量%以上含有することが好ましく、2重量%以上含有することがより好ましく、4重量%以上含有することが更に好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを40重量%以下含有することが好ましく、30重量%以下含有することがより好ましく、20重量%以下含有することが更に好ましく、耐久性をより優れたものにすることから、10重量%以下の含有にすることが特に好ましい。
これは、このように窒素原子含有モノマーの含有量が上記の範囲内にあることで、得られる機械加工性向上層の凝集力が効果的に向上し、所望の貯蔵弾性率の値を満たし易くなり、耐久性が優れたものとなるためである。
【0055】
(1)-5 モノマー5(その他のモノマー)
主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、必要に応じて、当該共重合体を構成するモノマー単位として、上述したモノマー成分とは異なる他のモノマーを含有するのが好ましい。
このような他のモノマーとしては、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。
すなわち、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0056】
(1)-6 重量平均分子量
機械加工性向上層14を構成する主剤(A)が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体である場合、その重量平均分子量(Mw)を5万~250万の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量が5万未満の値になると、凝集力が低下して、樹脂板から剥離したり、接着性が著しく低下したりする場合があるためである。
一方、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量が250万を超えた値になると、取り扱いが困難になったり、樹脂板への貼合性が低下したりする場合があるためである。
したがって、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量を10万~180万の範囲の値とすることがより好ましく、20~120万の範囲の値とすることが特に好ましく、30~80万の範囲の値とすることが更に好ましい。
なお、機械加工性向上層の主剤の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によって、予め作成してある標準ポリスチレン粒子に対する検量線と対比して求めることができる。
【0057】
(1)-7 (メタ)アクリル酸エステル共重合体の重合
主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、当該重合体を構成するモノマーの混合物を、通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。
かかる(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。
重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体を重合する際の重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
より具体的に、アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0059】
また、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を所望の値に調節することができる。
【0060】
(2)熱硬化性成分(B)
熱硬化性成分(B)を含有する組成物を加熱すると、当該熱硬化性成分(B)は、主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体と架橋反応し、架橋構造(三次元網目構造)を形成する。これにより、被膜強度の比較的高い機械加工性向上層を得ることができる。
このような熱硬化性成分(B)の種類としては、主剤(A)(例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体等)と反応するものであればよく、好ましくは、組成物の主剤(A)に導入されてなる反応性基(例えば、水酸基やカルボキシ基等)と反応するものであればよい。
したがって、熱硬化性成分(B)として、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等の少なくとも一つが挙げられる。
これら熱硬化性成分(B)の種類は、主剤(A)が有する反応性基の反応性に応じて選択すればよい。
例えば、主剤(A)が有する反応性基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を配合することが好ましい。
また、主剤(A)が有する反応性基がカルボキシ基の場合、カルボキシ基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。
なお、熱硬化性成分(B)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
また、イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものが好適である。
ここで、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、更にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。これらの中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート及びトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートの少なくとも一つであることが好ましい。
【0062】
また、エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等の少なくとも一つが挙げられる。
これらの中でもカルボキシ基との反応性の観点から、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが特に好適である。
【0063】
また、熱硬化性成分(B)の配合量を、主剤(A)100重量部に対して、0.05~10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる熱硬化性成分(B)の配合量が0.05重量部未満の値になると、主剤に導入された水酸基やカルボキシ基との反応性が著しく低下して、得られる機械加工性向上層の所望の凝集力を得ることができず、所定の粘着性を発揮することができない場合があるためである。その結果、機械加工性向上層が樹脂板から剥離したり、接着性が著しく低下したりする場合がある。
一方、かかる熱硬化性成分(B)の配合量が10重量部を超えた値になると、主剤(A)に導入された水酸基やカルボキシ基と過度に反応して、得られる機械加工性向上層の凝集力が高くなりすぎて、粘着性が著しく低下したりする場合がある。
したがって、主剤(A)100重量部に対して、熱硬化性成分(B)の配合量を0.1~5重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.3~1重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0064】
(3)活性エネルギー線硬化性成分(C)
本実施形態における機械加工性向上層は、活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有していることが好ましい。
このような機械加工性向上層を、被着体(樹脂板)に貼付後に、活性エネルギー線が照射されると、後述する光重合開始剤(D)の開裂を契機として、活性エネルギー線硬化性成分(C)の重合が促進される。
その重合した活性エネルギー線硬化性成分(C)は、主剤(A)及び熱硬化性成分(B)の熱架橋により形成された架橋構造(三次元網目構造)に絡み付くものと推定される。
したがって、このような高次構造を有する機械加工性向上層は、所望の粘着力の値を満たし易くなり、高温高湿条件下での耐久性に優れたものとなるとともに、所望の貯蔵弾性率の値を満たし易くなり、切削性に優れたものとなる。
【0065】
ここで、活性エネルギー線硬化性成分(C)としては、活性エネルギー線照射によって硬化反応を生じさせ、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されるものではない。
また、活性エネルギー線硬化性成分(C)は、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。
これらの中でも、主剤(A)等との相溶性に優れる重量平均分子量が1,000未満の多官能アクリレート系モノマーが好ましい。
【0066】
より具体的には、重量平均分子量が1000未満の多官能アクリレート系モノマーとしては、反応性官能基を2~6個有するアクリレート系モノマーが好ましい。
ここで、反応性官能基を2個有するアクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の少なくとも一つが挙げられる。
【0067】
また、反応性官能基を3個有するアクリレート系モノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の少なくとも一つが挙げられる。
【0068】
更に、反応性官能基を4個有するアクリレート系モノマーとしては、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
反応性官能基を5個有するアクリレート系モノマーとしては、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の少なくとも一つが挙げられる。
反応性官能基を6個有するアクリレート系モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の少なくとも一つが挙げられる。
【0069】
これらの中でも、機械加工性向上層の耐久性の観点から、反応性官能基を3~6個有するアクリレート系モノマーが特に好ましい。
具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。
【0070】
また、活性エネルギー線硬化性成分(C)としては、活性エネルギー線硬化型のアクリレート系オリゴマーを用いることも好ましい。
このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、このようなアクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、50000以下であることが好ましく、500~50000であることがより好ましく、3000~40000であることが更に好ましい。
【0071】
また、活性エネルギー線硬化性成分(C)としては、(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマーを用いることも好ましい。
このようなアダクトアクリレート系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体との共重合体を用い、当該共重合体の架橋性官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基及び架橋性官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。
上記のアダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、5万~90万程度であることが好ましく、10万~50万程度であることがより好ましい。
【0072】
本実施形態において、活性エネルギー線硬化性成分(C)は、前述した多官能アクリレート系モノマーを用いることが好ましいが、多官能アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマー及びアダクトアクリレート系ポリマーから、1種を選んで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいし、これらの成分と他の活性エネルギー線硬化性成分とを組み合わせて用いてもよい。
【0073】
そして、活性エネルギー線硬化性成分(C)の配合量を、通常、主剤(A)100重量部に対して、1~50重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる活性エネルギー線硬化性成分(C)の配合量が、1重量部未満の値になると、反応性が乏しくなって、良好な機械加工処理性が得られない場合があるためである。
一方、かかる活性エネルギー線硬化性成分(C)の配合量が、50重量部を超えると、逆に反応性が制御できずに、主剤(A)と過度に反応し、架橋構造が密になり過ぎてしまい、粘着力が低下して良好な耐久性が得られない場合があるためである。
したがって、かかる活性エネルギー線硬化性成分(C)の配合量の下限を、主剤(A)100重量部に対して、3重量部以上とすることが好ましく、6重量部以上とすることが特に好ましく、10重量部以上とすることが更に好ましい。
一方、かかる活性エネルギー線硬化性成分(C)の配合量の上限を、30重量部以下とすることが好ましく、20重量部以下とすることが特に好ましく、13重量部以下とすることが更に好ましい。
【0074】
(4)光重合開始剤(D)
活性エネルギー線の照射によって、活性エネルギー線硬化性成分(C)を効率的に硬化できることから、所望により光重合開始剤(D)を含有することが好ましい。
【0075】
このような光重合開始剤(D)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミン安息香酸エステル、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等の少なくとも一つが挙げられる。
【0076】
これらの中でも、活性エネルギー線として紫外線を使用する場合、紫外線吸収波長領域外にも吸収波長を有する光重合開始剤(D)を含有することが好ましく、中でも紫外線領域よりも長波長側(380nm以上)に吸収波長を有する光重合開始剤(D)を含有することがより好ましく、特に380nm~410nmの波長領域に吸収波長を有する光重合開始剤(D)を含有することが好ましく、具体的には2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドやビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等を含有することが好ましい。
この理由は、以下のとおりである。
タッチパネル等を備えるモバイル電子機器等は屋外で多く使用されるため、その構成部材は紫外線の影響により劣化してしまう問題がある。
この問題を解決するため、紫外線吸収性能を有する部材(紫外線遮蔽部材)を電子機器内に組み込むことによって、紫外線の影響による劣化を抑制する手法がとられることがある。
このように紫外線遮蔽部材を電子機器内に組み込んで、紫外線遮蔽部材側から紫外線を照射する場合において、機械加工性向上層に紫外線吸収波長領域外に吸収波長を有さない光重合開始剤(D)を使用すると、紫外線が紫外線遮蔽部材に遮蔽されてしまい機械加工性向上層の硬化ができなくなる。
逆に言えば、このような場合において、機械加工性向上層に紫外線吸収波長領域外にも吸収波長を有する光重合開始剤(D)を使用すれば、紫外線吸収波長領域外の波長を利用して十分に硬化をすることができるためである。
【0077】
そして、光重合開始剤(D)の配合量としては、活性エネルギー線硬化性成分(C)100重量部に対して、0.5~25重量部の範囲内の値とすることが好ましく、2~20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、5~15重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0078】
(5)シランカップリング剤(E)
機械加工性向上層を形成するための組成物は、更にシランカップリング剤(E)を含有することも好ましい。
これにより、被着体にガラス部材や樹脂部材が含まれている場合、機械加工性向上層と、被着体との密着性が向上するためである。
したがって、シランカップリング剤(E)を含有する機械加工性向上層は、高温高湿条件下での耐久性により優れたものとなる。
【0079】
ここで、シランカップリング剤(E)の種類として、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、光透過性を有するものが好ましい。
このようなシランカップリング剤(E)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
また、シランカップリング剤(E)の配合量を、主剤(A)100重量部に対して、通常、0.01~5重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるシランカップリング剤(E)の配合量が0.01重量部未満の値になると、配合効果が得られにくい場合があるためである。
一方、かかるシランカップリング剤(E)の配合量が5重量部を超えた値になると、かかるシランカップリング剤(E)に起因して、主剤(A)に導入された水酸基やカルボキシ基と、熱硬化性成分(B)とが過度に反応して、粘着性が、著しく低下したりする場合があるためである。
したがって、シランカップリング剤(E)の配合量を、主剤(A)100重量部に対して、0.1~3重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.2~1重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0081】
(6)添加剤
機械加工性向上層の機械加工性向上性や機械特性等を更に改良すべく、上述したシランカップリング剤(E)以外に、無機フィラー、有機フィラー、無機繊維、有機繊維、導電性材料、電気絶縁性材料、金属イオン捕捉剤、軽量化剤、増粘剤、充填剤、研磨剤、着色剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、紫外線吸収剤等の少なくとも一つの公知の添加剤を、配合することも好ましい。
そして、これらの公知の添加剤を配合する場合、その配合量を、通常、主剤(A)の全体量(100重量%)に対して、0.1~50重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.5~30重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0082】
(7)厚さ
機械加工性向上層の厚さを、3~40μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる械加工性向上層の厚さが3μm未満の値となると、所望の粘着性を発現できず、樹脂板への貼合性や耐久性が悪化する傾向があるためである。
一方、かかる機械加工性向上層の厚さが40μmを超えた値になると、切削性が悪化する場合や、活性エネルギー線照射前後における、粘着力等を所望範囲内の値に調整することが困難になる場合があるためである。
したがって、機械加工性向上層の厚さを、8~30μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10~20μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0083】
3.所定基材
所定基材の種類は特に制限されるものでないが、通常、機能性フィルムや剥離フィルムが典型的である。
【0084】
所定基材が機能性フィルムである場合、その種類としては、タッチパネルにおける加飾フィルム、液晶表示装置における偏向フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、光制御フィルム、防眩性フィルム、光触媒性フィルム、紫外線遮蔽フィルム、遮熱性フィルム、帯電防止フィルム、導電性フィルム、ハーフミラーフィルム、ハードコートフィルム、装飾フィルム、ホログラフフィルム性等の少なくとも一つが挙げられる。
上述した各種機能性フィルムは、PETフィルム、PENフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、あるいはTACフィルム等の表面に、各種機能(加飾性、光偏光性、光位相性、光拡散性、光制御性、防眩性、紫外線遮蔽、遮熱性、帯電防止性、導電性、ハーフミラー性、ハードコート性、装飾性、ホログラフ性等)を付与するための機能層を表面又は内部に備えており、これらは目的に応じて適宜選択される。
【0085】
所定基材としての機能性フィルムの厚さは、用途や光透過率等を考慮して定められるが、通常、10~300μmの範囲の値とすることが好ましい。
この理由は、機能性フィルムの厚さが10μm未満の値になると、機械的強度や耐久性が著しく低下する場合があるためである。
一方、機能性フィルムの厚さが300μmを超えた値になると、タッチパネル等に用いた場合に、感度が低下したり、活性エネルギー線の透過性が著しく低下したりする場合があるためである。
したがって、機能性フィルムの厚さを20~250μmの範囲の値とすることがより好ましく、30~200μmの範囲の値とすることが更に好ましい。
【0086】
所定基材が剥離フィルムの場合、その種類としては、剥離面を有するポリエステルフィルム(PETフィルム等)、オレフィンフィルム、アクリルフィルム、ウレタンフィルム、ポリカーボネートフィルム、TACフィルム、フッ素フィルム、ポリイミドフィルム等の少なくとも一つが挙げられる。
なお、本明細書における剥離面とは、剥離処理を施した面及び剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0087】
所定基材としての剥離フィルムの厚さは、用途や光透過率等を考慮して定められるが、通常、10~300μmの範囲の値とすることが好ましい。
この理由は、剥離フィルムの厚さが10μm未満の値になると、機械的強度や耐久性が著しく低下する場合があるためである。
一方、剥離フィルムの厚さが300μmを超えた値になると、ロール状に席巻したり、取り扱いが困難となったりする場合があるためである。
したがって、剥離フィルムの厚さを20~250μmの範囲の値とすることがより好ましく、30~200μmの範囲の値とすることが更に好ましい。
【0088】
所定基材(機能性フィルムや剥離フィルム等)の光学特性としては、タッチパネルや液晶表示装置等の用途として好適な透明性を有することが好ましい。
すなわち、樹脂板の可視光透過率の下限として、60%以上の値とすることが好ましく、75%以上の値とすることがより好ましく、85%以上の値とすることが更に好ましい。
また、樹脂板の可視光透過率の上限は、通常、100%以下であり、99.9%以下の値とすることが好ましく、99%以下の値とすることがより好ましく、98%以下の値とすることが更に好ましい。
【0089】
4.機械加工性向上層の諸物性
(1)活性エネルギー線照射前の貯蔵弾性率(M1)
本実施形態にかかる機械加工性向上層は、活性エネルギー線照射前の貯蔵弾性率(M1)を0.01~1MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる貯蔵弾性率(M1)を所定範囲に制御することにより、活性エネルギー線照射前における機械加工性向上層の柔軟性が適度なものとなり、樹脂板への貼合性が良好なものとなるためである。
したがって、活性エネルギー線照射前の貯蔵弾性率(M1)を0.04~0.20MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、更には、活性エネルギー線照射後の耐久性と切削性を両立しやすいことから、0.07~0.08MPaの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、特に断りが無い場合、本明細書においては、温度25℃相当の貯蔵弾性率(M1、M2)を意味するものとする(以下、同様である。)。
【0090】
(2)活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率(M2)
本実施形態にかかる機械加工性向上層は、活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率(M2)を0.20MPa以上の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる貯蔵弾性率(M2)を0.20MPa以上の値に制御することにより、機械加工性向上フィルムを、樹脂板に貼付した状態で、切削装置を用いて切削した場合において、機械加工性向上層由来の欠けや、はみ出しの発生が抑制され、良好な切削性を得られるためである。
したがって、かかる貯蔵弾性率(M2)の下限を0.22MPa以上の値とすることが好ましく、0.25MPa以上の値とすることがより好ましく、0.30MPa以上の値とすることが更に好ましい。
一方、上述した貯蔵弾性率(M2)の値が過度に大きくなると、耐久性が低下する場合がある。
したがって、かかる貯蔵弾性率(M2)の上限を5MPa以下の値とすることが好ましく、2MPa以下の値とすることがより好ましく、1MPa以下の値とすることが特に好ましく、0.6MPa以下の値とすることが更に好ましい。
【0091】
ここで、図2を参照して、活性エネルギー線照射後の機械加工性向上層における貯蔵弾性率(M2)と、切削性との関係を説明する。
図2は、後述する実施例及び比較例に準拠した評価結果に基づいており、横軸に、活性エネルギー線照射後の機械加工性向上層における貯蔵弾性率(M2)(MPa)の値を採ってあり、縦軸に、切削性の評価(相対値)の値が採ってある。
なお、切削性の評価(相対値)の値は、後述する実施例及び比較例の切削性の評価において、◎を5点、○を3点、△を1点、×を0点として、算出した相対的数値である。
図2より、かかる貯蔵弾性率(M2)の値が0.2MPa未満では、切削性の評価(相対値)の値は0点であるが、0.20MPa以上になると、切削性の評価(相対値)の値が大きくなる傾向があることが分かる。
そして、かかる貯蔵弾性率(M2)の値が0.25~0.3MPa程度になると、切削性の評価(相対値)の値が更に大きくなって3~5点程度になり、更に0.3MPa以上においては、切削性の評価(相対値)の値は最高の5点となっていることが分かる。
したがって、図2より、活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率(M2)の値を少なくとも0.2MPa以上とすることによって、比較的良好な切削性が得られ、更に、その値が大きくなればなるほど、切削性が良好となることが理解できる。
【0092】
(3)貯蔵弾性率の増加率(M2/M1×100)
本実施形態にかかる機械加工性向上層は、活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率(M2)に対する、活性エネルギー線照射前の貯蔵弾性率(M1)の増加率(=M2/M1×100)を、通常、320~30000%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、前述した貯蔵弾性率の増加率(%)を所定範囲内の値に制御することにより、活性エネルギー線照射前における樹脂板への貼合性と、活性エネルギー線照射前後における耐久性及び切削性を両立し易いものにするためである。
したがって、貯蔵弾性率の増加率を350~10000%の範囲内の値とすることがより好ましく、380~1000%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0093】
(4)活性エネルギー線照射前のゲル分率(G1)
本実施形態にかかる機械加工性向上層は、活性エネルギー線照射前のゲル分率(G1)を、通常、40~78%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるゲル分率(G1)を所定範囲内の値に制御することにより、樹脂板に対する貼合性を良好なものにすることができるためである。
より具体的には、かかるゲル分率(G1)が、40%未満である場合、機械加工性向上層の凝集力不足により、機械加工性向上フィルムの取扱性が悪くなる場合がある。
一方、上述したゲル分率(G1)が、78%を超える値の場合、機械加工性向上層が硬くなり過ぎてしまい、樹脂板への貼合性が悪化し、それに伴って耐久性が悪化する場合がある。
したがって、かかるゲル分率(G1)を50~76%の範囲内の値とすることがより好ましく、60~72%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、かかるゲル分率(G1)の測定方法は、後述する実施例において、詳細に説明する。
【0094】
(5)活性エネルギー線照射後のゲル分率(G2)
本実施形態にかかる機械加工性向上層は、活性エネルギー線照射後のゲル分率(G2)を60%以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるゲル分率(G2)が60%未満の値の場合、切削性が著しく低下し、粘着剤残りが発生したりする場合があるためである。
したがって、かかるゲル分率(G2)の下限を70%以上の値とすることがより好ましく、75%以上の値とすることが特に好ましく、77%以上の値とすることが更に好ましい。
また、かかるゲル分率(G2)の上限値は、特に制限はないが、100%であってもよいが、切削性と耐久性の両立の観点から、95%以下が好ましく、90%以下が特に好ましい。
なお、かかるゲル分率(G2)の測定方法は、後述する実施例において、詳細に説明する。
【0095】
(6)ゲル分率の増加率(G2/G1×100)
本実施形態にかかる機械加工性向上層は、活性エネルギー線照射後のゲル分率(G2)に対する、活性エネルギー線照射前のゲル分率(G1)の増加率(=G2/G1×100)を、通常、110~250%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるゲル分率の増加率を所定範囲内の値に制御することにより、活性エネルギー線照射前における樹脂板への貼合性が好適なものとなるとともに、活性エネルギー線照射後における耐久性及び切削性が両立し易いものとなるためである。
より具体的には、かかるゲル分率の増加率が110%未満の値となると切削性が低下し、機械加工性向上層の欠け等が発生したり、耐久性が低下したりする場合がある。
一方、かかるゲル分率の増加率が250%を超えた値となると、機械加工性向上層が脆くなって割れたりする場合がある。
したがって、かかるゲル分率の増加率を114~200%の範囲内の値とすることがより好ましく、120~160%の範囲内の値とすることが更に好ましく、128~140%の範囲内の値とすることが特に好ましい。
【0096】
(7)活性エネルギー線照射前の粘着力(P1)
本実施形態にかかる機械加工性向上フィルムは、活性エネルギー線照射前の粘着力(P1)を1~60N/25mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる粘着力(P1)を所定範囲内の値に制御することにより、樹脂板に対する密着性が良好となるためである。
かかる粘着力(P1)が1N/25mm未満であると、そもそも樹脂板への貼合が困難となってしまったり、貼合できたとしても工程中に樹脂板から機械加工性向上層が剥がれたりする不具合が生じ易くなる場合がある。
一方、かかる粘着力(P1)が60N/25mmを超えた値の場合、取扱性が悪くなる場合がある。
したがって、かかる粘着力(P1)を8~40N/25mmの範囲内の値とすることがより好ましく、15~30N/25mmの値とすることが更に好ましい。
なお、かかる粘着力(P1)は、活性エネルギー線照射前において、JIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により測定することができるが、より具体的な測定方法は、後述する実施例に示す通りである。
【0097】
(8)活性エネルギー線照射後の粘着力(P2)
本実施形態にかかる機械加工性向上フィルムは、活性エネルギー線照射後の粘着力(P2)を10N/25mm以上の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる粘着力(P2)を10N/25mm以上の値に制御することにより、密着性が良好なものとなり、優れた耐久性を発揮するためである。
したがって、かかる粘着力(P2)の下限値を15N/25mm以上の値とすることが好ましく、20N/25mm以上の値とすることがより好ましく、24N/25mm以上の値とすることが更に好ましい。
一方、かかる粘着力(P2)の上限値を、200N/25mm以下の値とすることが好ましく、120N/25mm以下の値とすることがより好ましく、60N/25mm以下の値とすることが更に好ましく、40N/25mm以下の値とすることが特に好ましい。
なお、かかる粘着力(P2)についても、活性エネルギー線照射後において、JIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定することができるが、より具体的な測定方法は、後述する実施例に示す通りである。
【0098】
(9)粘着力の増加率(P2/P1×100)
本実施形態にかかる機械加工性向上フィルムは、活性エネルギー線照射後の粘着力(P2)に対する、活性エネルギー線照射前の粘着力(P1)の増加率(=P2/P1×100)を80~300%の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる粘着力の増加率を所定範囲内の値に制御することにより、活性エネルギー線照射前における樹脂板への貼合性と、活性エネルギー線照射後における耐久性との両立がより容易となるためである。
したがって、かかる粘着力の増加率を100~200%の範囲内の値とすることがより好ましく、120~140%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0099】
(10)最大応力(S2)
本実施形態にかかる機械加工性向上フィルムは、活性エネルギー線照射後の引張応力を測定した際の最大応力(S2)を、通常、1.5N/mm2以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる最大応力(S2)を1.5N/mm2以上の値とすることによって、機械加工時において機械加工性向上層の欠けが抑制される傾向にあり、切削性が良好となるためである。
したがって、かかる最大応力(S2)を2.0N/mm2以上の値とすることがより好ましく、耐久性との両立の観点からは2.5N/mm2以上の値とすることが更に好ましい。
一方、かかる最大応力(S2)の上限値は、特に限定されないが、耐久性と切削性を両立させる観点から、20N/mm2以下の値とすることが好ましく、10N/mm2以下の値とすることがより好ましく、4N/mm2以下の値とすることが特に好ましい。
【0100】
(11)100%伸長時応力(E2)
本実施形態にかかる機械加工性向上フィルムは、活性エネルギー線照射後の100%伸長時応力(E2)を、通常、10N/mm2以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる100%伸長時応力(E2)を10N/mm2以下の値とすることによって、機械加工時において機械加工性向上層が伸び難くなる傾向にあり、切削後に機械加工性向上層がはみ出すことのない切断面を得ることができ、ひいては、切削性が良好となるためである。
したがって、かかる100%伸長時応力(E2)の上限値を6N/mm2以下の値とすることがより好ましく、耐久性との両立の観点からは、1N/mm2以下の値とすることが更に好ましい。
一方、かかる100%伸長時応力(E2)の下限値は、特に限定されないが、耐久性と切削性を両立させる観点から、0.1N/mm2以上の値とすることが好ましく、0.4N/mm2以上の値とすることがより好ましく、0.7N/mm2以上の値とすることが特に好ましい。
【0101】
5.積層体
本実施形態にかかる機械加工性向上フィルムを使用した積層体は、図1(a)等に示される機械加工性向上フィルム18を積層してなる樹脂板12から構成されてなる積層体であれば、特に制限されるものではない。
したがって、各種機器において使用される各種機能性フィルムを、機械加工性向上層を介して、樹脂板とともに精度良く機械加工処理(切削処理)し、樹脂板付きの機能性フィルム等の積層体として容易に製造することができる。
以下、かかる積層体の態様を具体的に説明する。
【0102】
(1)活性エネルギー線硬化前の積層体
活性エネルギー線硬化前の積層体は、図1(a)、図3(c)、図4(d)、図5(d)等に示すように、所定基材16としての機能性フィルムと、機械加工性向上フィルム18と、樹脂板12とが順次積層された積層体10である。
なお、図3~5の内容については、後述する機械加工性向上フィルムの使用方法として具体的に説明する。
【0103】
(2)活性エネルギー線硬化後の積層体
活性エネルギー線硬化後の積層体は、前述した活性エネルギー線硬化前の積層体の所定基材16、又は、樹脂板12側より活性エネルギー線を照射することにより、機械加工性向上層14を、硬化後の機械加工性向上層14´とすることができる。
すなわち、図3(d)及び図3(e)、図4(e)及び図4(f)、図5(e)及び図5(f)に示すように、所定基材16としての機能性フィルムと、硬化後の機械加工性向上層14´と、樹脂板12とが順次積層された積層体10´である。
【0104】
硬化後の機械加工性向上層14´は、上述した機械加工性向上フィルム18が有する機械加工性向上層14を、活性エネルギー線照射により硬化させたものである。
本実施形態では、この硬化後の機械加工性向上層14´は、主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体と熱硬化性成分(B)とから構成される架橋構造を有するとともに、活性エネルギー線硬化性成分(C)が重合して硬化した構造(重合構造)を含有する粘着剤からなる。
当該重合構造は、主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体と熱硬化性成分(B)とから構成される架橋構造に絡み付いているものと推定される。
複数の三次元構造が絡み合う構造を有していることにより、硬化後の機械加工性向上層14´は高い凝集力を有するものとなり、所望の粘着力及び貯蔵弾性率の値を満たし易いものとなる。
したがって、硬化後の機械加工性向上層14´は優れた切削性を発揮しながら、耐久性も優れたものとなる。
【0105】
なお、本発明の効果が得られる限りにおいては、上記の硬化後の機械加工性向上層14´には、活性エネルギー線照射によっても開裂しなかった光重合開始剤(D)が含まれていてもよい。
本実施形態では、硬化後の機械加工性向上層14´中において、光重合開始剤の残量は0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。
【0106】
6.使用方法
機械加工性向上フィルム18の使用方法としては、図3(a)~(e)に例示するように、下記工程(1)~(4)を含むことが好ましい。
(1)所定基材16としての機能性フィルムの表面に、活性エネルギー線硬化性成分を含む組成物(機械加工性向上層を形成するための組成物を由来とした樹脂層13)を塗布し、加熱処理することにより、活性エネルギー線硬化性の機械加工性向上層14を備えた機械加工性向上フィルム18とする工程
(2)得られた機械加工性向上フィルム18を、樹脂板12に貼付する工程
(3)樹脂板12又は所定基材16側から活性エネルギー線を照射し、機械加工性向上層14中における活性エネルギー線硬化性成分を硬化させ、硬化後の機械加工性向上層14´とする工程
(4)硬化後の機械加工性向上層14´及び樹脂板12を含む積層体10´に対して、所定の機械加工処理を施す工程
以下、適宜図面を参照して、機械加工性向上フィルム18の使用方法を具体的に説明する。
【0107】
6-1:工程(1)-1
工程(1)-1は、機械加工性向上層を形成するための組成物の準備工程である。
したがって、図3(a)等に示される、機械加工性向上層を形成するための組成物を由来とした樹脂層13は、主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、熱硬化性成分(B)と、活性エネルギー線硬化性成分(C)とを主成分として含む組成物から構成される。
当該組成物は、必要に応じて光重合開始剤(D)、シランカップリング剤(E)及び有機溶剤等を含むことができ、これらを均一に混合することで、上述した樹脂層13とするため塗布液を得ることができる。
【0108】
6-2:工程(1)-2
工程(1)-2は、前述した所定組成物を含む塗布液の塗布工程である。
したがって、図3(a)に示されるように、所定基材16(機能性フィルム等)の表面に、前述した組成物の塗布液を塗布し、所定基材16と機械加工性向上層を形成するための組成物を由来とした樹脂層13とが積層された積層物を得る。
塗布液を塗布する方法としては、特に制限されず、公知の方法で行うことができる。
たとえば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が例示される。
そして、図3(b)に示されるように、所定の加熱処理(H)を施して、主剤(A)に含まれる官能基と、熱硬化性成分(B)とを熱架橋反応させ、活性エネルギー線硬化性の機械加工性向上層14とすることで、機械加工性向上フィルム18を得る。
当該加熱処理(H)は、前述した組成物の塗布液に含まれる溶剤等の飛散除去も兼ねることができる。
その際、具体的に、加熱処理(H)の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、70~120℃であることがより好ましい。
また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、50秒~2分であることがより好ましい。
更に、加熱処理後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けることが好ましい。
このような加熱処理(及び養生)により、熱硬化性成分(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル共重合体が良好に架橋され、架橋構造が形成される。
すなわち、このような工程を経て、機械加工性向上層を形成するための組成物を由来とした樹脂層13を熱架橋してなる、機械加工性向上層14が得られ、所定の機械加工性向上フィルム18となる。
なお、機械加工性向上層を形成するための組成物に含まれる他の成分(活性エネルギー線硬化性成分(C)、光重合開始剤(D)、カップリング剤(E)等)は、熱架橋前後で含有量及び性質等は変化しない。
【0109】
6-3:工程(2)
次いで、工程(2)は、機械加工性向上フィルムの樹脂板への積層工程である。
したがって、図3(c)に示されるように、樹脂板12と、機械加工性向上フィルム18の機械加工性向上層14とを貼合して積層する。
このような樹脂板12と機械加工性向上フィルム18の貼合は、ラミメーター等、公知の貼合方法を用いることができる。
これにより、活性エネルギー線硬化性の機械加工性向上層14が、所定基材(機能性フィルム等)16と樹脂板12に挟持された積層体10を得ることができる。
【0110】
6-4:工程(3)
次いで、工程(3)は、活性エネルギー線の照射工程である。
したがって、図3(d)に示されるように、紫外線等の活性エネルギー線(L)を所定基材16の背面側から照射する。
これにより、機械加工性向上層14中の活性エネルギー線硬化性成分(C)が硬化し、硬化後の機械加工性向上層14´が形成される。
すなわち、硬化後の機械加工性向上層14´が、所定基材16(機能性フィルム等)と、樹脂板12との間に挟持された積層体10´を得ることができる。
なお、図3(d)においては、樹脂板12の背面側から、活性エネルギー線(L)を照射しているが、所定基材16(機能性フィルム等)が設けられた側、すなわち、背面側とは反対側から活性エネルギー線(L)を照射しても良く、更には、樹脂板12の背面側と、所定基材16(機能性フィルム等)の側の両面から、活性エネルギー線(L)を照射しても良い。
【0111】
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線、電子線などが挙げられる。
本実施形態における活性エネルギー線としては、200~450nmの波長を有する光を含む活性エネルギー線であることが好ましい。
上記の条件を満足する活性エネルギー線を得るためには、例えば、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等の紫外線を照射可能な光源を用いればよい。
活性エネルギー線の照射量は、照度が50~1000mW/cm2の範囲内の値であることが好ましい。
光量は、50mJ/cm2以上であることが好ましく、80mJ/cm2以上であることがより好ましく、200mJ/cm2以上であることが更に好ましい。
また、光量は、10000mJ/cm2以下であることが好ましく、5000mJ/cm2以下であることがより好ましく、2000mJ/cm2以下であることが更に好ましい。
【0112】
6-5:工程(4)
工程(4)は機械加工処理工程である。
したがって、図3(e)に示されるように、所定基材16(機能性フィルム等)とともに、機械加工性向上層14´が積層された樹脂板12に対して、所定の機械加工処理(例えば、矢印Aで示す方向への切削処理)を行うことになる。
そして、本実施形態の機械加工性向上フィルムは、優れた切削性を有することから、一度の切削処理によって、所望の形状を有する積層体を容易に得ることができる。
更に、切削処理において機械加工性向上層の欠けや伸びはないため、加工後の切削面は良好となり、得られる積層体は、優れた外観品質を有するものとなる。
また、得られる積層体は、耐久性に優れるため、厳しい環境下で使用される光学部品(例えば、車載用のタッチパネルや液晶表示装置等)にも適用可能である。
よって、本実施形態の機械加工性向上フィルムを上述したように使用することにより、タッチパネルや液晶表示装置等の光学部品等に適用可能な、機械加工性向上層を介した機能性フィルム付きの樹脂板を簡便に製造することができる。
【0113】
7.その他の使用方法
7-1 変形例1
図4(a)~(f)に例示される工程は、前述した工程(1)において、所定基材16´(剥離フィルム等)を使用する場合の工程例である。
したがって、例えば、所定基材16´(剥離フィルム等)を使用する場合、図4(a)~(f)に例示されるように、下記工程(1´)~(4´)を含むことにより、機械加工性向上フィルム18を機械加工処理(切削処理)に好適に使用することができる。
【0114】
(1)工程(1´)
工程(1´)は、熱処理工程である。
したがって、図4(a)および図4(b)に示す通り、所定基材16´(剥離フィルム等)の表面に、機械加工性向上層を形成するための組成物を由来とした樹脂層13を塗布して、熱処理(H)を施すことにより、機械加工性向上層14を含む機械加工性向上フィルム18´とする工程である。
ここで、機械加工性向上層を形成するための組成物の準備工程及び塗布工程は、前述した工程(1)-1及び工程(1)-2に準ずる。
なお、図示しないものの、図4(b)において、機械加工性向上層14の一方の面に所定基材16´(剥離フィルム等)を設けても良い。
このような構成とすることで、使用するまでの間、機械加工性向上層14が汚染されるリスクが低減する。
【0115】
(2)工程(2´)
次いで、工程(2´)は、機械加工性向上フィルムの樹脂板への積層工程である。
すなわち、図4(c)および図4(d)に示すように、機械加工性向上フィルム18´の機械加工性向上層14の露出面と、所定基材16(機能性フィルム)とを貼合して、積層する。
そして、所定基材16´(剥離フィルム等)を剥がして、樹脂板12を積層する。
これにより、活性エネルギー線硬化性の機械加工性向上層14が、所定基材16(機能性フィルム等)と樹脂板12に挟持された積層体10を得ることができる。
【0116】
(3)工程(3´)
次いで、工程(3´)は、活性エネルギー線の照射工程である。
したがって、図4(e)に示すように、活性エネルギー線(L)を照射して、機械加工性向上層14に含まれる活性エネルギー線硬化性成分(C)を硬化させて、機械加工性向上層14´とする。すなわち、硬化後の機械加工性向上層14´が、所定基材16(機能性フィルム等)と、樹脂板12との間に挟持された積層体10´を得ることができる。
なお、活性エネルギー線の照射条件等は、前述した工程(3)に準ずる。
【0117】
(4)工程(4´)
工程(4´)は、機械加工処理工程である。
したがって、図4(f)に示すように、所定基材16(機能性フィルム等)とともに、機械加工性向上層14´が積層された樹脂板12に対して、所定の機械加工処理(例えば、矢印Aで示す方向への切削処理)を行う。
そして、上述した工程(1´)~(4´)においても、前述した工程(1)~(4)と同様に、本実施形態の機械加工性向上フィルムを好適に使用することができる。
よって、当該変形例1においても、タッチパネルや液晶表示装置等の光学部品等に適用可能な、機械加工性向上層を介した機能性フィルム付きの樹脂板を簡便に製造することができる。
【0118】
7-2 変形例2
図5(a)~(f)に例示される工程は、前述した変形例1の工程(2´)において、機械加工性向上フィルム18´の貼合の順番が異なる場合の工程例である。
すなわち、図5(c)に示すように、図5(b)に示す機械加工性向上フィルム18´の機械加工性向上層14の一方の面と、樹脂板12とを貼合して、積層する。
そして、図5(d)に示すように、所定基材16´(剥離フィルム等)を剥がして、所定基材16(機能性フィルム)を積層する工程である。なお、上述した工程(2´)以外については、前述した変形例1に準ずる。
したがって、当該変形例2においても、前述した工程(1)~(4)及び前述した工程(1´)~(4´)と同様に、本実施形態の機械加工性向上フィルムを好適に使用することができる。
よって、当該工程(1´)~(4´)においても、タッチパネルや液晶表示装置等の光学部品等に適用可能な、機械加工性向上層を介した機能性フィルム付きの樹脂板を簡便に製造することができる。
【実施例
【0119】
以下、実施例を参照して、本実施形態の機械加工性向上フィルム及び機械加工性向上フィルムの使用方法等を更に詳細に説明する。
但し、本実施形態は、特に理由なく、これらの実施例の記載に限定されるものではない。
【0120】
[実施例1]
1.機械加工性向上フィルムの作成及び使用
1-(1) 主剤(A)の調整
モノマー成分としての全体量を100重量部として、ブチルアクリレート30重量部と、2-エチルヘキシルアクリレート25重量部と、イソボロニルアクリレート10重量部と、メチルメタクリレート5重量部と、アクリロイルモルフォリン5重量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート25重量部とを溶液重合させて、主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体を調整した。
得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)を以下に示す方法で測定したところ、50万であった。
【0121】
また、かかる重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(測定条件)
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0122】
なお、表1に記載の、略号等の詳細は、以下の通りである。
(主剤(A):((メタ)アクリル酸エステル共重合体))
BA:ブチルアクリレート
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
MMA:メチルメタクリレート
ACMO:N-アクリロイルモルフォリン
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
AA:アクリル酸
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0123】
1-(2) 機械加工性向上層を形成するための組成物の調整
次いで、主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体(固形分)100重量部に対し、熱硬化性成分(B)として、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートを0.3重量部と、活性エネルギー線硬化性成分(C)として、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートを8重量部と、光重合開始剤(D)として、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドを0.8重量部と、シランカップリング剤(E)として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.3重量部の割合で配合し、均一になるまで攪拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度が30重量%である塗布溶液を得た。
【0124】
なお、表2中に記載の、略号等の詳細は、以下の通りである。
(熱硬化性成分(B))
B1:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート
B2:トリメチロールプロパン変性キシレンジイソシアネート
B3:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン
(活性エネルギー線硬化性成分(C))
C1:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート
C2:トリメチロールプロパントリアクリレート
C3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【0125】
1-(3)機械加工性向上層の形成工程
得られた塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが15μmとなるように、バーコーターを用いて塗布した。
そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して熱架橋反応を進行させ、主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体と熱硬化性成分(B)とから構成される架橋構造を有する機械加工性向上層を形成した。
【0126】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離フィルム上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離フィルムの剥離処理面が、機械加工性向上層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離フィルム/機械加工性向上層(厚さ:15μm)/軽剥離型剥離フィルムの構成からなる、評価用機械加工性向上フィルムを作成した。
なお、機械加工性向上層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0127】
2.機械加工性向上フィルムの評価
2-(1)活性エネルギー線照射前の粘着力(P1)の測定
評価用機械加工性向上フィルムのうち、機械加工性向上層から、軽剥離型剥離フィルムを剥離し、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、重剥離型剥離フィルム/機械加工性向上層(15μm)/PETフィルムの積層体を得た。
得られた積層体を25mm幅、150mm長に裁断し、これをサンプルとした。
23℃、50%RHの環境下にて、上記により得たサンプルから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した機械加工性向上層をガラス板に貼付したのち、2kgのローラーを1往復させることにより圧着した。
その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(P1、N/25mm)を測定した。
なお、ここに記載した以外の条件はJIS Z 0237:2000に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
【0128】
2-(2)活性エネルギー線照射後の粘着力(P2)の測定
23℃、50%RHの環境下にて、上記により得たサンプルから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した機械加工性向上層をガラス板に貼付したのち、2kgのローラーを1往復させることにより圧着し、PETフィルム側から活性エネルギー線として紫外線を下記条件で照射した。
その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で活性エネルギー線照射後の粘着力(P2、N/25mm)を測定した。
なお、ここに記載した以外の条件はJIS Z 0237:2000に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量2000mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0129】
2-(3)粘着力の増加率の算出
上記で測定した活性エネルギー線照射前の粘着力(P1)に対する、活性エネルギー線照射後の粘着力(P2)の増加率(=P2/P1×100、%)を算出した。結果を表2に示す。
【0130】
2-(4)活性エネルギー線照射前のゲル分率(G1)の測定
得られた評価用機械加工性向上フィルムのうち、機械加工性向上層のみをポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、機械加工性向上層のみの質量を算出した。このときの質量をm1とする。
次に、上記の手法で作成したポリエステル製メッシュに包まれた状態の機械加工性向上層を、室温下(23℃)で酢酸エチルに72時間浸漬させた。
その後、ポリエステル製メッシュに包まれた状態の機械加工性向上層を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、更に80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。
乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、機械加工性向上層のみの質量を算出した。このときの質量をm2とする。
上記にて算出した質量をもとに、活性エネルギー線照射前における機械加工性向上層のゲル分率(G1)(=(m2/m1)×100、%)を導出した。結果を表2に示す。
【0131】
2-(5)活性エネルギー線照射後のゲル分率(G2)の測定
得られた評価用機械加工性向上フィルムから軽剥離型剥離フィルムを剥離し、露出した機械加工性向上層に対して、上述した条件で活性エネルギー線を直接照射し、機械加工性向上層を硬化させた。
この硬化後の機械加工性向上層について、上記と同様にして活性エネルギー線照射後における機械加工性向上層のゲル分率(G2)を導出した。結果を表2に示す。
【0132】
2-(6)ゲル分率の増加率の算出
上記で導出した活性エネルギー線照射前のゲル分率(G1)に対する、活性エネルギー線照射後のゲル分率(G2)の増加率(=G2/G1×100、%)を算出した。結果を表2に示す。
【0133】
2-(7)最大応力(S2)及び100%伸長時応力(E2)の測定
得られた評価用機械加工性向上フィルムから軽剥離型剥離フィルムを剥離し、露出した機械加工性向上層に対して、上述した条件で活性エネルギー線を直接照射し、機械加工性向上層を硬化させた。
この硬化後の機械加工性向上層のみについて、最大応力(S2、N/mm2)及び100%伸長時応力(E2、N/mm2)を、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン、剥離速度200mm/min)を用いて、測定した。
なお、ここに記載した以外の条件はJIS K 7162-2:2014に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
【0134】
2-(8)活性エネルギー線照射前の貯蔵弾性率(M1)の測定
得られた評価用機械加工性向上フィルムのうち、機械加工性向上層のみにつき、JIS K7244-4:1999に準じて、粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製,ARES、周波数1Hz)を用いて、活性エネルギー線照射前における機械加工性向上層の貯蔵弾性率(M1、MPa(25℃))を測定した。結果を表2に示す。
【0135】
2-(9)活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率(M2)の測定
得られた評価用機械加工性向上フィルムから軽剥離型剥離フィルムを剥離し、露出した機械加工性向上層に対して、上述した条件で活性エネルギー線を直接照射し、機械加工性向上層を硬化させた。
この硬化後の機械加工性向上層のみについて、上記と同様の条件にて、活性エネルギー線照射後における機械加工性向上層の貯蔵弾性率(M2、MPa(25℃))を測定した。結果を表2に示す。
【0136】
2-(10)貯蔵弾性率の増加率の算出
上記で測定した活性エネルギー線照射前の貯蔵弾性率(M1)に対する、活性エネルギー線照射後の貯蔵弾性率(M2)の増加率(=M2/M1×100、%)を算出した。結果を表2に示す。
【0137】
2-(11)切削性の評価
得られた評価用機械加工性向上フィルムの軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した機械加工性向上層を、PETフィルム(100μm)に貼付した。
更に、重剥離型剥離シートを剥離して、露出した機械加工性向上層を、PETフィルム(100μm)に貼付することで、試験片を得た。
上述した条件で活性エネルギー線を照射して、機械加工性向上層を硬化させた後、カッターを用いて、試験片の一方のPETフィルム面に対して鉛直方向に切断した。
そして、切断面を顕微鏡観察し、下記基準に沿って切削性を評価した。
◎:機械加工性向上層の欠けや伸びは観察されず、良好な切削面であった。
○:機械加工性向上層の欠けや伸びがわずかに見られたが、実用上問題ない切削面であった。
△:機械加工性向上層の欠けや伸びが見られ、実用上好ましくない切削面であった。
×:機械加工性向上層の欠けや伸びが観察され、実用上使用できない切削面であった。
【0138】
2-(12)耐久性の評価
得られた評価用機械加工性向上フィルムの軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した機械加工性向上層を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)とポリカーボネート(PC)とが積層された樹脂板(厚さ:1mm、紫外線吸収剤含有)のポリカーボネート側の面に貼付した。
更に、評価用機械加工性向上フィルムから重剥離型剥離シートを剥離して、露出した機械加工性向上層を、機能性フィルムとしてのTACフィルム(厚み100μm)に貼付することで、試験片を得た。得られた試験片を、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
次いで、上述した条件で樹脂板側より活性エネルギー線を照射して、機械加工性向上層を硬化させた後、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて500時間保管した。
その後、機械加工性向上層と被着体との界面における浮き剥がれを目視で確認し、以下の基準により耐久性を評価した。結果を表2に示す。
◎:気泡も浮き剥がれも確認できない。
○:微小な気泡がわずかに発生するが、大きな気泡や剥がれは確認できない。
△:中程度の気泡が発生し、大きな気泡や剥がれが僅かに確認される。
×:大きな気泡又は浮き剥がれが顕著に確認できる。
【0139】
[実施例2~9、比較例1~4]
主剤(A)としての(メタ)アクリル酸エステル共重合体の組成および分子量、熱硬化性成分(B)の種類及び配合量、活性エネルギー線硬化性成分(C)の種類及び配合量、光重合開始剤(D)の配合量、シランカップリング剤(E)の配合量を、表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様に、機械加工性向上フィルムを得て、機械加工性向上フィルムの評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0142】
以上、詳述したように、本発明の機械加工性向上フィルムによれば、所定の樹脂板に貼付し、更に活性エネルギー線を照射した後の機械加工性向上層の貯蔵弾性率(M2)を所定値とすることにより、機械処理装置を用いて、樹脂板を含んだ状態で、機械加工性向上層を同時に切削等したような場合であっても、良好な切削性が得られるようになった。
また、本発明の機械加工性向上フィルムによれば、活性エネルギー線を照射した後の機械加工性向上層の粘着力(P2)を所定値とすることにより、良好な耐久性が得られるようになった。
【0143】
そして、そのような機械加工性向上層を備えた機械加工性向上フィルム、そのような機械加工性向上層を含む積層体(機械加工性向上フィルムが貼付された樹脂板)及び、そのような機械加工性向上フィルムの効率的な使用方法を提供できるようになった。
したがって、本発明の機械加工性向上フィルムは、タッチパネルや液晶表示装置等における生産効率化や高品質化等に寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0144】
10、10´:積層体
12:樹脂板
13:機械加工性向上層を形成するための組成物を由来とした樹脂層
14:機械加工性向上層
14´:硬化後の機械加工性向上層
16:所定基材(機能性フィルム等)
16´:所定基材(剥離フィルム等)
18、18´:機械加工性向上フィルム
図1
図2
図3
図4
図5