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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】電子ペンの電子回路及び電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20220721BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/046 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018176727
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2019139735
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018023619
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】山田 進
【審査官】三吉 翔子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-010844(JP,A)
【文献】特開2017-228050(JP,A)
【文献】特開2014-026553(JP,A)
【文献】特開2012-114651(JP,A)
【文献】特開2011-087229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICと、コイルと第1のキャパシタとの並列回路で構成された前記ICに外付けの共振回路とを備える電子ペンの電子回路であって、
前記ICは、前記共振回路の周波数調整用の容量可変回路を含むと共に、前記容量可変回路を外部と接続するための接続ピンを備え、
前記並列回路の一端側は接地されると共に、前記並列回路の他端側は、前記ICに外付けの第2のキャパシタの一端側に接続され、
前記第2のキャパシタの他端側は、前記ICの前記接続ピンに接続されていると共に、前記第2のキャパシタの他端側の電位を所定値にクランプするためのダイオードに接続されている
ことを特徴とする電子ペンの電子回路。
【請求項2】
前記ダイオードは、アノード側が接地されており、カソード側が前記第2のキャパシタの他端側に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペンの電子回路。
【請求項3】
前記ダイオードは、前記ICに外付けである
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペンの電子回路。
【請求項4】
前記ダイオードは、前記ICに内蔵されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペンの電子回路。
【請求項5】
外部からの電磁誘導により前記共振回路に生じる誘導電流を整流して前記IC用の電源電圧を生成する回路を備え、
前記ダイオードは、前記IC用の電源電圧を生成する回路の一部を構成する
ことを特徴とする請求項2に記載の電子ペンの電子回路。
【請求項6】
前記共振回路で受信した、位置検出センサから送られてくる電磁誘導信号からクロックを生成するクロック回路と、
前記共振回路の動作をオン、オフ制御して、前記位置検出センサに帰還する信号を変調するための変調回路と、
が、前記ICに内蔵されており、
前記クロック回路と、前記変調回路とは、前記接続ピンに接続されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電子ペンの電子回路。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電子回路を備えることを特徴とする電子ペン。
【請求項8】
コイルと第1のキャパシタとを含む共振回路と、
一端側が前記共振回路に接続された第2のキャパシタを含み構成される整流回路と、
前記共振回路の周波数調整用の容量可変回路を含むと共に、接続ピンを複数備え、第1の接続ピンが前記整流回路に接続され、第2の接続ピンが前記第2のキャパシタの他端側に接続されたICと、
を備える電子ペン。
【請求項9】
前記整流回路は、前記第2のキャパシタの他端側の電位を所定値にクランプするためのダイオードを含み構成される、
請求項8に記載の電子ペン。

【請求項10】
前記ダイオードと前記第2のキャパシタは、前記整流回路として半波倍電圧型の整流回路を構成する、
請求項9に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電磁誘導方式の電子ペンに用いて好適な電子回路に関する。また、この発明は、この電子回路を備える電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導方式の座標入力装置は、例えば特許文献1(特開2002-244806号公報)に開示されているように、多数のループコイルを座標軸のX軸方向及びY軸方向に配設してなる位置検出センサを備える位置検出装置と、磁性体コアに巻回されたコイルとキャパシタとからなる共振回路を有する電子ペンとで構成される。
【0003】
位置検出装置は、所定の周波数の送信信号を位置検出センサのループコイルに供給して、ループコイルは電磁エネルギーとして電子ペンに送信する。電子ペンの共振回路は、送信信号の周波数に応じた共振周波数f0を有するように構成されており、位置検出センサのループコイルとの間での電磁誘導作用に基づいて電磁エネルギーを蓄える。そして、電子ペンは、共振回路に蓄えた電磁エネルギーを位置検出装置の位置検出センサのループコイルに返す。
【0004】
位置検出センサのループコイルは、この電子ペンからの電磁エネルギーを検出する。位置検出装置は、送信信号を供給したループコイルの位置と、電子ペンの共振回路からの電磁エネルギーを検出したループコイルの位置により、電子ペンにより指示されたセンサ上でのX軸方向及びY軸方向の座標値を検出する。
【0005】
また、電子ペンは、ペン先に印加される圧力(筆圧)を検出するための筆圧検出部を備えており、この筆圧検出部で検出した筆圧の情報を、位置検出センサを介して位置検出装置に送信するようにしている。この筆圧の情報を位置検出装置に送信する方法の一つとして、デジタル信号の形式で送信する方法が知られており、電子ペンには、そのための回路として、IC(Integrated Circuit;集積回路)が搭載されるのが一般的である(例えば特許文献2(特許第6008393号公報)参照)。
【0006】
図6は、この種の電磁誘導方式の電子ペンが備える電子回路200の一例を示す図である。この例の電子ペンの電子回路200は、磁性体コアに巻回されたコイル201とキャパシタ202とが並列に接続されて構成されている共振回路203と、IC230とを備えている。IC230は制御回路の機能を有する。
【0007】
共振回路203は、この例では、コイル201及びキャパシタ202に並列に共振周波数f0の調整用の容量可変キャパシタ(トリマキャパシタ)204が接続されている。調整者が、この容量可変キャパシタ204の静電容量を調整することで、共振回路203の共振周波数f0が、最適となるように調整される。
【0008】
この例では、共振回路203で外部からの電磁誘導により流れる誘導電流を整流してIC230の電源電圧Vccを生成する整流回路205が設けられている。整流回路205は、キャパシタ206及び209とダイオード207及び208とを備える。
【0009】
共振回路203のコイル201、キャパシタ202及び容量可変キャパシタ204を備える並列回路の一端側は接地され、他端側はキャパシタ206の一端側に接続される。キャパシタ206の他端側は、ダイオード207のカソードとダイオード208のアノードとの接続点に接続される。ダイオード207のアノード側は接地されている。そして、ダイオード208のカソードは、キャパシタ209を介して接地される。このダイオード208のカソードとキャパシタ209との接続点は、整流回路205の出力端となり、電源電圧Vccが出力される。この整流回路205の出力端は、IC230の接続ピン230aに接続される。
【0010】
また、図6の電子回路200においては、共振回路203の他端側とキャパシタ206の一端との接続点P0は、キャパシタ210を通じて、IC230の内部に形成されるクロック生成回路に接続されている接続ピン230bに接続される。接続点P0は、また、キャパシタ211及びスイッチ回路212の直列回路を通じて接地されている。そして、スイッチ回路212は、切替制御信号SWが出力されるIC230の接続ピン230cに接続されている。スイッチ回路212は、IC230からの制御信号SWによりオン、オフ制御されることで、共振回路203に対するキャパシタ211の接続をオン、オフ制御する。共振回路203は、キャパシタ211が接続されないときには、上述した共振周波数f0及び所定の位相で共振し、キャパシタ211が接続されたときには、共振周波数がf0とは異なる周波数にされ、あるいは、前記所定の位相とは異なる位相とされる。
【0011】
また、この図6の例では、筆圧検出部は筆圧を静電容量の変化として検出するものを用いており、IC230の接続ピン230dが、この筆圧検出部で構成される容量可変キャパシタ220を通じて接地されている。そして、容量可変キャパシタ220に並列に抵抗器221が接続されている。
【0012】
IC230は、筆圧検出部で検出された筆圧値の検出の際には、容量可変キャパシタ220を満充電の状態とした後、充電を停止して、容量可変キャパシタ220を抵抗器221を介して放電する状態にする。そして、IC230は、その時の容量可変キャパシタ220の静電容量で所定の充電電位まで放電するのに必要な時間を計測し、その時間の長さから、容量可変キャパシタ220の静電容量を検出し、その検出した静電容量に応じた筆圧の情報を取得する。IC230は、筆圧の情報を、この例では、複数ビットのデジタル情報として取得し、位置検出装置に送信する。
【0013】
電子ペンの電子回路200では、共振回路203で、位置検出センサから送られてくる信号を、電磁誘導により受信し、整流回路205で整流してIC230を駆動する電源電圧Vccを生成する。これにより、IC230が駆動する。IC230では、受信した信号をキャパシタ210を通じて取り込んで、クロック信号を生成する。そして、IC230では、生成したクロック信号に基づいて、制御信号SWを生成し、生成した制御信号SWをスイッチ回路212に供給する。
【0014】
制御信号SWは、位置検出期間ではローレベルとされて、スイッチ回路212はオフとなって、共振回路203にはキャパシタ211が非接続の状態となる。これにより、位置検出期間においては、電子回路200においては、共振回路203は、位置検出センサから受信した信号をそのままの周波数及び位相で、位置検出センサに送信する。
【0015】
また、制御信号SWは、付加情報期間においては、検出された筆圧値のデジタル情報に対応したものとなり、筆圧値のデジタル情報の各ビットが、例えば「1」のときにはローレベルとなり、「0」のときにはハイレベルとなる。これにより、付加情報期間では、位置検出センサには、デジタル情報に応じて変調された信号が送信される。
【0016】
位置検出装置では、位置検出期間では、位置検出センサのいずれの位置のループコイルで電子ペンからの信号を受信したかにより、電子ペンにより指示位置を検出する。また、位置検出装置では、付加情報期間では、変調されている信号を復調することで、電子ペンにおける筆圧値が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2002-244806号公報
【文献】特許第6008393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、電磁誘導方式の電子ペンは共振回路203を備え、この共振回路203により位置検出装置の位置検出センサと電磁結合することで、信号の送受を行うが、この場合に、共振回路の共振周波数は位置検出センサから送信されてくる交流信号の周波数に合致する最適の状態にする必要がある。そこで、従来の電子ペンの電子回路においては、共振回路203に対してトリマキャパシタ204を接続しておき、このトリマキャパシタ204を調整することで、共振回路203の共振周波数を最適にするようにしていた。
【0019】
したがって、従来の電子ペンの電子回路200においては、トリマキャパシタ204の調整が厄介であるという問題があった。
【0020】
なお、共振回路を備える電子回路においては、電子ペンに限らず、同様の問題を抱えている。
【0021】
この発明は、以上の問題点に鑑み、トリマキャパシタ204を用いることなく、電子回路の共振回路の共振周波数を調整することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するために、
IC(Integrated Circuit;集積回路)と、コイルと第1のキャパシタとの並列回路からなり前記ICに外付けの共振回路とを備える電子回路であって、
前記ICは、前記共振回路の周波数調整用の容量可変キャパシタを含むと共に、前記容量可変キャパシタを外部と接続するための接続ピンを備え、
前記並列回路の一端側は接地されると共に、前記並列回路の他端側は、前記ICに外付けの第2のキャパシタの一端側に接続され、
前記第2のキャパシタの他端側は、前記ICの前記接続ピンに接続されていると共に、前記第2のキャパシタの他端側の電位を所定値にクランプするためのダイオードに接続されている
ことを特徴とする電子回路を提供する。
【0023】
上述の構成の電子回路においては、IC内に共振回路の周波数調整用の容量可変キャパシタを含むので、共振回路に対してトリマキャパシタを接続する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子回路の回路構成例を示す図である。
図2】この発明による電子ペンの第1の実施形態の構成例を説明するための縦断面図である。
図3】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子回路の説明のための図である。
図4】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子回路の一部の構成例を示す図である。
図5】この発明による電子ペンの第1の実施形態の電子回路の回路構成例を示す図である。
図6】従来の電子ペンの電子回路の回路例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明による電子回路の実施形態を、当該電子回路を搭載する電磁誘導方式の電子ペンの実施形態と共に、図を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、実施形態の電子ペン1に適用した場合の電子回路10の実施形態を構成例を説明するための回路図である。また、図2は、実施形態の電子ペン1のハードウェア構成例を説明するための縦断面図である。先ず、図2の電子ペン1の構成例について説明する。
【0027】
図2に示すように、この電子ペン1は、筒状の筐体(ケース)2内に、芯体3と、円柱形状のフェライトコア4に巻回されたコイル5と、プリント基板6と、このプリント基板6に配設されているキャパシタ7及びIC100と、筆圧検出部8とを備えて構成されている。
【0028】
筒状の筐体2は、軸方向の一端側に開口部2aを有し、軸方向の他端側が閉じられている。この筐体2の円筒型の中空部内の軸方向の他端側寄りに、電子部品が実装されたプリント基板6が固定されて配設されている。そして、筐体2の開口部2aが形成されている一端側寄りにフェライトコア4が収納されている。
【0029】
フェライトコア4は、図2に示すように、軸心方向に貫通孔4aを備え、その外周には、共振回路を構成するコイル5が巻回されて装着されている。コイル5の図示しない両端には、プリント基板6上に配設されているキャパシタ7が並列に接続されている。そして、フェライトコア4の貫通孔4aに芯体3が挿通されている。
【0030】
芯体3は、非導電性材料で構成されている。この芯体3の軸心方向の一端はペン先の役割を有する先端部3aとされ、芯体3を、フェライトコア4の貫通孔4aを挿通して筐体2内に収納した際に、開口部2aから外部に露呈するように突出する。また、芯体3の軸心方向の他端3bは、筆圧検出部8に結合されている。
【0031】
筆圧検出部8は、容量可変キャパシタの静電容量を、芯体3に印加される圧力(筆圧)に応じて変化させる機構を用いるもの(例えば特許文献(特開2011-186803号公報)参照)で構成される。なお、筆圧検出部8は、容量可変キャパシタをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子からなる半導体チップで構成したもの(例えば特許文献(特開2013-161307号公報)参照)を用いることもできる。なお、筆圧検出部8の構成は、これらの構成例に限られるものではなく、筆圧をインダクタンスの変化として検出するものであってもよい。
【0032】
この電子ペン1の電子回路10は、図1に示すように構成されている。すなわち、この例においては、フェライトコア4に巻回されているコイル5とプリント基板6に配設されているキャパシタ7との並列回路により共振回路11が形成されている。
【0033】
この例では、共振回路11で外部からの電磁誘導により流れる誘導電流を整流してIC100の電源電圧Vccを生成する整流回路12が設けられている。整流回路12は、キャパシタ13及び16とダイオード14及び15とを備え、この例では、半波倍電圧型の整流回路の構成である。
【0034】
共振回路11の一端側は接地され、他端側はキャパシタ13の一端側に接続される。キャパシタ13の他端側は、ダイオード14のカソードとダイオード15のアノードとの接続点に接続される。ダイオード14のアノード側は接地されている。そして、ダイオード15のカソードは、キャパシタ16を介して接地される。このダイオード15のカソードとキャパシタ16との接続点は、整流回路12の出力端となり、電源電圧Vccが出力される。この整流回路12の出力端は、IC100の接続ピン100aに接続される。ここで、電源電圧+Vccは、この例では、5ボルトとされている。
【0035】
そして、この実施形態の電子回路10においては、キャパシタ13の他端側とダイオード14のカソード及びダイオード15のアノードとの接続点P1が、IC100の接続ピン100bに接続されている。
【0036】
キャパシタ13の一端側と共振回路11との接続点P0には、電磁誘導により誘導電圧が発生する。この接続点P0に得られる誘導電圧は、図3(A)に示すように、ゼロ電位を中心にして、正側のピーク値をVcc/2+VF、負側のピーク値を-(Vcc/2+VF)として振動する交流電圧となる。VFは、ダイオード14の導通時の降下電圧である。
【0037】
接続点P0をIC100に接続した場合には、このように、負側のピーク値が-Vcc/2-VFとなる。IC100では、負側の電圧が-VFボルトよりも小さい場合に、IC100内のダイオード101が導通してしまい、IC100内に電圧を取り込めない。このため、接続点P0をIC100の接続ピン100bにそのまま接続して使用することは出来ない。
【0038】
これに対して、キャパシタ13の他端側とダイオード14のカソード及びダイオード15のアノードとの接続点P1においては、ダイオード14により共振回路11に得られる誘導電圧がクランプされるので、図3(B)に示すように、正側のピーク値は(Vcc+VF)ボルト、負側のピーク値は-VFボルトとして振動する交流電圧となる。
【0039】
そのため、接続点P1をIC100の接続ピン100bに接続しても、IC100が取り込み可能な電圧の範囲Vcc+VF~-VFに収まり、IC100内に電圧を取り込むことが出来る。すなわち、キャパシタ13の他端側とダイオード14との接続点P1を、IC100の接続ピン100bに接続することで、IC100は、共振回路11に生じる誘導電圧を支障なく扱うことが可能となる。そこで、この実施形態では、共振回路11の共振周波数の調整回路をIC100内に設けることができる。
【0040】
すなわち、IC100内には、接続ピン100bに対して、共振回路11の共振周波数の調整回路110が設けられている。この共振周波数の調整回路110は、この例では、図1に示すように、容量可変回路111と、容量設定信号発生回路112と、直流阻止用のキャパシタ113と、ピーク検出回路114とを含んで構成されている。
【0041】
ピーク検出回路114は、図4に示すように、ダイオード1141及び1142と、抵抗1143とを備える回路構成とされており、ピーク検出出力は、A/D変換回路1144によりデジタル信号に変換されて出力される。
【0042】
そして、この例では、IC100内に設けられている共振周波数の調整回路110は、IC100の外部に設けられる共振周波数設定装置120と協働することで、共振回路11の共振周波数が位置検出センサとの関係で最適となるように構成されている。共振周波数設定装置120は、専用の装置で構成されていてもよいし、コンピュータ等の汎用の装置で構成されていてもよい。
【0043】
容量可変回路111は、キャパシタ111Cとスイッチ回路111Sとの直列回路が複数個並列に接続されて構成されている。容量設定信号発生回路112は、この容量可変回路111の複数個のスイッチ回路111Sのそれぞれのオン、オフ状態を制御する切替制御信号を発生する。容量可変回路111の静電容量は、容量設定信号発生回路112からの複数の切替制御信号によりオンとされたスイッチ回路111Sに直列に接続されている1個または複数個のキャパシタ111Cの並列回路の合成容量となる。
【0044】
そして、接続ピン100bに印加される誘導電圧(図3(B)参照)は、キャパシタ113を通じてピーク検出回路114に供給されて、ピーク値が検出される。このピーク検出回路114で検出されたピーク値の検出出力は、接続ピン100dを通じてIC100の外部の共振周波数設定装置120に供給される。
【0045】
共振回路11の共振周波数の最適化処理を行う際には、電子ペン1を位置検出センサからの交流信号を受ける状態とした上で、共振周波数設定装置120は、先ず、容量設定信号発生回路112に、容量可変回路111の複数個のスイッチ回路111Sを、容量可変回路111が、現出できる複数の合成容量を順次に呈するようにサーチするサーチ制御信号を発生する。
【0046】
そして、共振周波数設定装置120は、そのサーチの間におけるピーク検出回路114のピーク値の検出出力を接続ピン100dを通じて受けて、最大のピーク値を検出する。共振周波数設定装置120は、最大のピーク値を検出することができた後、容量設定信号発生回路112へのサーチ制御信号を停止する。
【0047】
そして、共振周波数設定装置120は、容量設定信号発生回路112に対して、最大のピーク値を検出したときに容量可変回路111の複数のスイッチ回路111Sを制御していた状態を保持するように指示する制御信号を、接続ピン100eを通じて供給する。容量設定信号発生回路112は、この制御信号を受けて、容量可変回路111の複数のスイッチ回路111Sに対して、最大のピーク値が検出されたときの切替制御信号を供給する状態を維持する。この最適化処理が終了したら、共振周波数設定装置120と、IC100の接続ピン100d及び100eとの接続を解除する。
【0048】
これにより、電子ペン1の共振回路11は、位置検出センサに対して最適な共振周波数となるように制御される。
【0049】
ところで、図6に示したものと同様に、この実施形態の電子ペン1の電子回路10においても、位置検出センサから電磁誘導で取得した交流信号からクロック信号を生成する回路と、筆圧情報などの付加情報を位置検出センサ側に送信するための変調回路を備える。
【0050】
この場合に、上述したように、この第1の実施形態では、共振回路11に得られる位置検出センサからの誘導電圧を、IC100で取り扱うことができるので、IC100内に、クロック生成回路及び変調回路を構成して、それらの回路を、接続ピン100bに対して接続するように構成する。
【0051】
すなわち、この実施形態では、IC100内において、接続ピン100bは、直流阻止用のキャパシタ103を介してクロック生成回路104の入力端子に接続されている。クロック生成回路104は、接続ピン100bを通じて入力される交流信号(共振回路11で取得された誘導電圧)からクロック信号を生成し、制御回路107に供給する。
【0052】
制御回路107は、また、接続ピン100cを通じてIC100に外付けの筆圧検出部8で構成される容量可変キャパシタ8Cを介して接地されている。容量可変キャパシタ8Cは、抵抗器17が並列に接続されている。制御回路107は、図6の電子回路200で説明したのと同様にして、容量可変キャパシタ8Cの放電時間を検出することで、この容量可変キャパシタ8Cの静電容量を検出し、その検出した静電容量に基づいて、筆圧値のデジタル情報を生成する。
【0053】
また、接続ピン100bは、IC100内において、キャパシタ105とスイッチ回路106との直列回路を介して接地されている。スイッチ回路106は、制御回路107からの制御信号SWによりオン、オフ制御されて、図6において説明したのと同様にして、共振回路11に対してキャパシタ105を並列に接続するか否かにより共振周波数の周波数を変化あるいは位相を変化させる変調が行われる。これにより、図6において説明したのと同様にして、制御回路107からの制御信号により制御されて、付加情報期間においては、筆圧のデジタル情報が電子ペン1から送出される。
【0054】
なお、この例では、接続ピン100bは、保護用のダイオード101を介して接地されていると共に、ダイオード102を介して、電源電圧Vccが得られる接続ピン100aに接続されている。
【0055】
以上説明したように、第1の実施形態の電子ペン1の電子回路10によれば、共振回路11の共振周波数の調整用のトリマキャパシタは不要となり、その分、コストダウンとなる。また、共振回路11の共振周波数の調整は、共振周波数設定装置120により自動的に調整できるので、トリマキャパシタを調整する場合に比べて共振周波数の調整作業が簡単となる。
【0056】
そして、上述の第1の実施形態によれば、IC100内のクロック生成回路104に接続するためのキャパシタも、接続ピン100bに接続してIC100内に設けることができるので、図6に示したキャパシタ210は不要となると共に、接続用ピン230bも不要となる。
【0057】
また、付加情報を生成するための変調用回路を、接続ピン100bに接続してIC100内に設けることができるので、図6に示したキャパシタ211及びスイッチ回路212は不要となると共に、接続用ピン230cも不要となる。
【0058】
なお、上述の例では、共振周波数設定装置120をIC100に外付けとしたが、この共振周波数設定装置120の機能を、IC100内に、共振周波数設定回路として設け、この共振周波数設定回路を外部から起動及び停止の制御をすることができるように構成してもよい。
【0059】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態の電子ペン1の電子回路10では、筆圧検出部8で検出した筆圧の情報は、デジタル情報として、共振回路11の共振周波数の信号を変調することで位置検出装置に送信するようにした。しかし、筆圧検出部8で検出した筆圧の情報を、共振回路11の共振周波数信号の周波数変位あるいは位相変位として電子ペンから位置検出装置に送信することも知られているが、この発明は、このようにする場合にも適用することができる。第2の実施形態の電子回路は、このように構成する場合である。
【0060】
図5は、この第2の実施形態の電子ペン1Aの電子回路10Aの構成例を示す図であり、図1と同様の構成部分には、同一の参照符号を付してある。なお、この第2の実施形態のIC100Aは、第1の実施形態のIC100とは、その内部回路構成が異なると共に、電子ペンのハードウェア構成は、筆圧検出部8で構成される容量可変キャパシタ8Cが、共振回路11に並列に接続されて、共振回路11の一部として構成される点を除いて、図2に示したものと全く同様に構成されるものである。
【0061】
図5に示すように、共振回路11の一端と他端P0との間に筆圧検出部8で構成される容量可変キャパシタ8Cが並列にされると共に、共振回路11の他端P0は、キャパシタ13Aの一端に接続される。そして、キャパシタ13Aの他端P1Aは、IC100Aの接続ピン100Abに接続される。また、この例では、バッテリー19が設けられ、このバッテリー19から、IC100Aの接続ピン100Aaに電源電圧Vccを供給する。
【0062】
そして、この第2の実施形態の電子回路10AのIC100A内においては、接続ピン100Abは、ダイオード101を介して接地されていると共に、ダイオード102を介して電源電圧Vccが供給される接続ピン100Aaに接続されている。この第2の実施形態の電子回路10Aでは、ダイオード101は必須であり、これにより、この第2の実施形態においても、上述の第1の実施形態と同様に、キャパシタ13Aの他端P1A側に得られる誘導電圧はクランプされて、図3(B)に示すようなものとされている。
【0063】
そして、この第2の実施形態では、IC100Aの接続ピン100Abには、共振周波数の調整回路110Aが接続される。ただし、第1の実施形態とは異なり、この第2の実施形態の電子回路10AのIC100Aには、クロック生成回路及び変調回路は設けられない。
【0064】
IC100Aの共振周波数の調整回路110Aは、この例では、図5に示すように、容量可変回路111と、容量設定信号発生回路112と、直流阻止用のキャパシタ113と、ピーク検出回路114と、共振周波数設定回路120Aを含んで構成されている。共振周波数設定回路120Aは、第1の実施形態におけるIC100に外付けの共振周波数設定装置120と同様の機能を有する回路である。この共振周波数設定回路120Aは、IC100Aの接続ピン100fに接続されており、この接続ピン100fを通じて外部から供給される起動制御を受けて、その起動が制御されるように構成されている。
【0065】
この実施形態では、共振回路11の共振周波数の調整及び設定は、次のようにしてなされる。すなわち、電子ペン1Aは、筆圧が印加されていない状態で、位置検出装置の位置検出センサからの交流信号を受信する状態として、電子回路10AのIC100Aの接続ピン100fを通じて、共振周波数設定回路120Aを起動する制御信号を供給する。
【0066】
すると、共振周波数設定回路120Aは、上述の第1の実施形態の場合の共振周波数設定装置120と同様にして、サーチ制御信号を容量設定信号発生回路112に供給する。共振周波数設定装置120は、最大のピーク値を検出することができた後、容量設定信号発生回路112へのサーチ制御信号を停止する。
【0067】
そして、共振周波数設定回路120Aは、容量設定信号発生回路112に対して、最大のピーク値を検出したときに容量可変回路111の複数のスイッチ回路111Sを制御していた状態を保持するように指示する制御信号を供給する。容量設定信号発生回路112は、この制御信号を受けて、容量可変回路111の複数のスイッチ回路111Sに対して、最大のピーク値が検出されたときの切替制御信号を供給する状態を維持する。
【0068】
こうして、この第2の実施形態の電子ペン1Aの電子回路100Aにおいても、IC100Aにより、共振回路11の共振周波数を最適に設定することができる。この例の場合には、IC100A内に、共振周波数設定回路120Aを内蔵させるようにしたので、第1の実施形態のような外付けの共振周波数設定装置120は不要となり、便利である。
【0069】
なお、この第2の実施形態の電子回路100AのIC100Aにおいても、第1の実施形態のように、外付けの共振周波数設定装置120を用いる構成としてもよい。
【0070】
また、この第2の実施形態では、バッテリー19を設けるようにしたが、第1の実施形態と同様に、共振回路11に発生する誘導電圧を整流回路12で整流することで、電源電圧Vccを生成するようにしてもよい。
【0071】
[その他の実施形態または変形例]
以上は、電子ペンの電子回路の場合について説明したが、この発明は、共振回路とICとを含み、共振回路の共振周波数を調整する必要がある電子回路に適用可能である。
【0072】
また、共振回路の共振周波数を最適にする方法として、共振回路の誘導電圧のピーク値を検出して、そのピーク値が最大となるようにしたが、この方法に限られるものではないことは言うまでもない。
【0073】
なお、電子ペンの共振回路は、位置検出センサからの信号を受信するためにのみ用いるようにしてもよく、電子ペンから位置検出センサへの信号送信は、必ずしも共振回路を利用した電磁誘導方式に限るものではない。例えば、位置検出センサから共振回路により磁界エネルギーを受信して、当該受信した磁界エネルギーを電子ペンの駆動電圧として用いたり、位置検出センサからのトリガー信号として用いたりすると共に、電子ペンからの信号は、電界により位置検出センサに送信するようにする電子ペンにも、この発明は適用である。
【符号の説明】
【0074】
1,1A…電子ペン、5…コイル、7…キャパシタ、8…筆圧検出部、8C…筆圧検出部8で構成される容量可変キャパシタ、10,10A…電子回路、11…共振回路、12…整流回路、13…キャパシタ、14,15…ダイオード、100,100A…IC、101,102…ダイオード、110,110A…共振周波数の調整回路、111…容量可変回路、112…容量設定信号発生回路、114…ピーク検出回路、120…共振周波数設定装置、120A…共振周波数設定回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6