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特許7108511メントールの苦味抑制剤および苦味抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】メントールの苦味抑制剤および苦味抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/20 20160101AFI20220721BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220721BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20220721BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A23L27/20 D
A23L27/20 E
A23L27/20 G
A61K8/34
A61K8/42
A61Q11/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018196345
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020061982
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591011410
【氏名又は名称】小川香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】藤川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】鎮守 浩明
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 結希
(72)【発明者】
【氏名】大谷 明子
(72)【発明者】
【氏名】庄子 昌克
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-176856(JP,A)
【文献】米国特許第05372824(US,A)
【文献】国際公開第2003/074622(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/054737(WO,A1)
【文献】特表2009-519003(JP,A)
【文献】特開2019-216614(JP,A)
【文献】特開2014-205632(JP,A)
【文献】特開2012-080840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0317923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドと3-メントキシプロパン-1,2-ジオールから選ばれる1種以上を有効成分とするメントールの苦味抑制剤であって、メントール1質量部に対して、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドまたは3-メントキシプロパン-1,2-ジオールを0.01~0.2質量部の割合となるように使用する、前記苦味抑制剤
【請求項2】
2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドと3-メントキシプロパン-1,2-ジオールから選ばれる1種以上を有効成分とする、飲食品用のメントールの苦味抑制剤であって、メントール1質量部に対して、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドまたは3-メントキシプロパン-1,2-ジオールを0.01~0.2質量部の割合となるように使用する、前記飲食品用のメントールの苦味抑制剤。
【請求項3】
2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドと3-メントキシプロパン-1,2-ジオールから選ばれる1種以上を有効成分とする、口腔用組成物用のメントールの苦味抑制剤であって、メントール1質量部に対して、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドまたは3-メントキシプロパン-1,2-ジオールを0.01~0.2質量部の割合となるように使用する、前記口腔用組成物用のメントールの苦味抑制剤。
【請求項4】
メントールと、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドと3-メントキシプロパン-1,2-ジオールから選ばれる1種以上を含むメントールの苦味を抑制した香料組成物であって、メントール1質量部に対し、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドまたは3-メントキシプロパン-1,2-ジオールを0.01~0.2質量部含有してなるメントールの苦味を抑制した香料組成物。
【請求項5】
メントールと、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドと3-メントキシプロパン-1,2-ジオールから選ばれる1種以上を含む、飲食品に使用するメントールの苦味を抑制した飲食品用香料組成物であって、メントール1質量部に対し、2-イ
ソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドまたは3-メントキシプロパン-1,2-ジオールを0.01~0.2質量部含有してなるメントールの苦味を抑制した飲食品用香料組成物。
【請求項6】
メントールと、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドと3-メントキシプロパン-1,2-ジオールから選ばれる1種以上を含む、口腔用組成物に使用するメントールの苦味を抑制した口腔用組成物用香料組成物であって、メントール1質量部に対し、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドまたは3-メントキシプロパン-1,2-ジオールを0.01~0.2質量部含有してなるメントールの苦味を抑制した口腔用組成物用香料組成物。
【請求項7】
請求項1に記載する苦味抑制剤を添加することを特徴とするメントールの苦味抑制方法。
【請求項8】
請求項に記載する飲食品用のメントールの苦味抑制剤を添加することを特徴とする飲食品中のメントールの苦味抑制方法。
【請求項9】
請求項に記載する口腔用組成物用のメントールの苦味抑制剤を添加することを特徴とする口腔用組成物中のメントールの苦味抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品、口腔衛生剤、医薬品で使用するメントールの苦味抑制剤及びその抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
l-メントールは、ハッカ特有の冷涼な香味とコク味を有し、飲食品においてスッキリした清涼感の付与、リフレッシュ、眠気防止、気分転換を惹起することが知られている。一方、皮膚や口腔に冷たい感覚(冷涼感)を与える性質を生かし、歯磨き、洗口液、貼付剤、化粧料などの飲食品以外にも多く利用されている。
l-メントールを用いて冷涼感をより強く、より持続させるには、その配合量を増やすことが直接的かつ有効な方法である。しかし、l-メントールを多量に使用することにより冷涼感が増強される反面、メントール由来の苦味が強くなるという問題点があった。
【0003】
メントール、あるいは、メントールを主たる成分とするミント系香料などに由来する苦味を抑制する方法としては、例えば、ジテルペン骨格を有する甘味配糖体を添加する方法(特許文献1)、ジペプチド系甘味料を配合する方法(特許文献2)、メントールにシス-メンテノールを添加して苦味を抑え清涼感を増強する方法(特許文献3)、メントールに特定量のアネトールを配合したサッカリン無配合歯磨組成物(特許文献4)、メントールとα-アミノ酸を含有する口腔用洗浄剤(特許文献5)、ミント系香料にポリゴジアールを添加する香味の改善方法(特許文献6)、メントール等に重曹や食塩を配合した苦味の少ない口腔用組成物(特許文献7)、食用油脂を有効成分として含有することを特徴とするミント系香料の苦味抑制剤(特許文献8)、ダバナオイルを有効成分として含有することを特徴とする、メントールの風味改善方法(特許文献9)、グリシド酸エステルを有効成分とするメントールの苦味抑制剤(特許文献10)、キニーネ、ゲンチオピクロシド、イソアルファ酸、クワッシン、アブシンチン、ベルベリンおよびスウェルチアマリンからなる群から選ばれる1種または2種以上の苦味物質を有効成分とするメントールの苦味抑制剤(特許文献11)、苦味のあるミント系香料を増量しなくてもメントールとイソプレゴールや酢酸プロピルなどを併用することで、ミント感や清涼感を向上させる技術(特許文献12)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、上記の従来提案されている方法ではメントール由来の苦味を抑制する効果が不十分であったり、添加剤の香味が付与されたりするため好ましくないなど十分満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭61-6802号公報
【文献】特開平2-177870号公報
【文献】特公昭48-8819号公報
【文献】特公昭54-31046号公報
【文献】特開昭59-29613号公報
【文献】特開平7-145398号公報
【文献】特開2002-212041号公報
【文献】特開2004-18829号公報
【文献】国際公開第2010/10894号パンフレット
【文献】特開2012-80840号公報
【文献】特開2014-034517号公報
【文献】特開2007-176856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
l-メントールは冷涼感を得る目的で、歯磨き、洗口液などの口腔用組成物、シャンプー、入浴剤、化粧水などの化粧品、医薬部外品、チューインガム、キャンディー、タブレットなどの飲食品、目薬、貼付剤などの医薬品に広く活用されてきた。
【0007】
l-メントールの冷涼感の特徴は、冷涼効果の発現の立ち上がりが早い反面、冷涼効果の持続が短いことである。そのため、冷涼感の強度をあげたり冷涼感の持続時間をのばしたりするためには、l-メントールを増量する必要があった。
【0008】
しかし、単にl-メントールを増量しただけではl-メントールによる苦味も強くなってしまい、l-メントールの上限の添加量は自ずと制限されていた。過去にもl-メントール由来の苦味を抑制・緩和する抑制剤が検討されてきたが、抑制剤自体の香味により、l-メントールが本来持つ、軽く華やかな冷涼感とコクのあるミント感が損なわれてしまうという欠点があった。
【0009】
そこで、l-メントール特有の香気や冷涼感を損なわず、その苦味だけを抑制する抑制剤を提供することを課題とした。ミント様の香調を有する製品は、菓子や口腔用製品に多く、その香味のバリエーションも多岐にわたる。したがって、重合リン酸塩などのようにそれ自体に強い呈味を有する添加物や、他の香料成分などを複数併用しなくても、l-メントールの苦味だけをマスキングすることが重要となる。そのため、抑制剤として香気・香味がそもそも少ないか、それ自体に香気・香味があってもl-メントールよりも使用量が少ないためにl-メントールの特徴を損ねないか、それ自体がミント様の香調を有するなどのいずれかの特徴を持つ抑制剤の探索を行った。さらに、ミント様の香調を有し、少量でl-メントールの苦味を抑制できるような香料成分や使用方法(配合比)を見出すことが重要となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、発明者らは、l-メントールが配合されたチューインガム、タブレット、洗口液を作製し、香料成分の苦味抑制効果および冷涼感の変化を官能評価で確認したところ、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドと3-メントキシプロパン-1,2-ジオールに、期待している冷涼感およびその強度を減ずることなく、l-メントール由来の苦味を効果的に抑制することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミドと3-メントキシプロパン-1,2-ジオールから選ばれる1種以上を有効成分とするメントールの苦味抑制剤。
(2)メントール1質量部に対し、(1)に記載のメントールの苦味抑制剤の質量部の比が0.001~2に含有してなるメントール風味の香料組成物。
(3)(2)に記載のメントール風味の香料組成物を含有する飲食品。
(4)(2)に記載のメントール風味の香料組成物を含有する口腔用組成物。
【0012】
(5)(1)に記載するメントールの苦味抑制剤を添加することを特徴とするメントールの苦味抑制方法。
(6)メントール1質量部に対する(1)に記載のメントールの苦味抑制剤の質量部の比が0.001~2となるように添加することを特徴とするメントールの苦味抑制方法。
(7)(5)又は(6)のいずれかに記載のメントールの苦味抑制方法により、飲食品中のメントールの苦味を抑制する方法。
(8)(5)又は(6)のいずれかに記載のメントールの苦味抑制方法により、口腔用組成物中のメントールの苦味を抑制する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、l-メントールの特有の香気や冷涼感を損なわずに苦味だけを効果的に抑制することができるl-メントールの苦味抑制剤を提供することができる。また、本発明のl-メントールの苦味抑制剤を配合した飲食品、口腔用組成物及び香料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔1〕本発明の苦味抑制剤
本発明の苦味抑制剤は、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミド、3-メントキシプロパン-1,2-ジオールであることを特徴とする。
【0015】
〔2〕本発明の飲食品
本発明の飲食品は、清涼感を提供する飲食物であればよく、具体的には清涼飲料水、アイスクリーム、チューインガム、チューイングキャンディー、グミ、タブレット等があげられる。
【0016】
〔3〕本発明の口腔用組成物
本発明の口腔用組成物は、歯磨き、洗口液、口中清涼剤、シート状フィルムなどがあげられる。
【0017】
〔4〕本発明の香料組成物
さらに、本発明の苦味抑制剤は、上記の有効成分である香料成分の他に、必要に応じて、飲食品用や香粧品用の各種香料を付加的成分として適宜配合することができる。 例えば、「特許庁公報 周知慣用技術集(香料) 第II部 食品用香料」(平成12(2000)年1月14日発行、日本国特許庁)、「特許庁公報 周知慣用技術集(香料) 第III部 香粧品用香料」(平成13(2001)年6月15日発行、日本国特許庁)等に記載された香料原料(精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出精油、合成香料)、各種植物エキス、酸化防止剤等が例示され、それぞれ本発明の効果を損なわない量で配合することができる。
【0018】
〔5〕本発明の苦味抑制剤とl-メントールの配合比
本発明の苦味抑制効果は、苦味抑制剤とl-メントールが共存してさえいればよい。ただし、抑制剤の配合量が多くなると、l-メントール特有の冷涼なハッカ様の香味とコク味がもたらす清涼感やリフレッシュ感が相対的に弱くなったり、抑制剤自体の香味の影響が大きくなったりして、香味全体のバランスに変調をきたす。したがって、本発明の苦味抑制剤とl-メントールの配合量比は限定されることが望ましく、l-メントール1質量部に対して抑制剤は0.001~2質量部であり、好ましくは0.01~1質量部、特に好ましくは0.01~0.2質量部であることが望ましい。
【0019】
本発明を以下の試験例や試作例を用いてさらに詳細に説明するが、以下は例示の目的にのみ用いられ、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0020】
〔試作例1〕 (チューインガムの苦味抑制効果)
(1)ガム生地の作製
金属製のボールに紛体原料であるキシリトール、マルチトールおよび還元パラチノースを入れて均一化するまで混合した。次いでガムベースを電子レンジで45~55℃に加温後、前記紛体原料混合物と還元麦芽糖水飴を少量ずつ入れて均一化するまで手で練りこみ、表1のガム生地を作製した。
【0021】
【表1】
【0022】
(2)苦味抑制剤入りガムの作製
前記(1)により作製したガム生地に対して、l-メントールと本発明の苦味抑制剤を表2の処方に準じて添加し、常法に従って高剪断型ミキサーを用いて約50℃で混和し、冷却後ローラーにより圧展成形し、1個0.85gの粒ガムを調製した。なお、l-メントールと苦味抑制剤の配合比は表3および表4に記載している。
【0023】
【表2】
【0024】
(3)サンプルの評価
表2の処方例に従って試作されたチューインガムを、よく訓練されたパネラー5名により、チューインガム咀嚼中の冷涼感と苦味を下記評価基準に従って7段階評価で採点した。5名のパネラーの評価点数の平均値を表3及び表4に示す。なお、冷涼感及び苦味の評価基準は評価の事前に同一のl-メントールの評価サンプルを用いてすり合わせを行った。
冷涼感及び苦味の評価基準:
1点: 非常に弱く感じる
2点: 弱く感じる
3点: やや弱く感じる
4点: 強くも弱くもない
5点: やや強く感じる
6点: 強く感じる
7点: 非常に強く感じる
【0025】
各水準で、冷涼感と苦味の比を計算した。その値が比較例1の数値よりも高いほど、l-メントールの苦味を抑制しつつ、好ましい冷涼感を感じることができることを意味している。つまり、この比が高くなるように苦味抑制剤とメントールの濃度範囲を設定することが、好適なl-メントールの苦味抑制剤の使用方法になる。
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
いずれの水準でも、苦味抑制剤の添加による影響で、l-メントールが本来持つ、軽く華やかな冷涼感とコクのあるミント感が損なわれないことを確認した。
【0029】
〔試作例2〕 (タブレットの苦味抑制効果)
(1)タブレット用粉末の作製
金属製のボールにタブレット用原料であるソルビトール、アスパルテーム、ショ糖脂肪酸エステル、微粒二酸化ケイ素を入れて均一化するまで混合し、表5のタブレット生地を作製した。
【0030】
【表5】
【0031】
(2)苦味抑制剤入りタブレットの作製
前記(1)により作製したタブレット生地に対して、l-メントールと本発明の苦味抑制剤を表6の処方に準じて添加し、打錠圧1.3tにて打錠してタブレットを調製した。なお、l-メントールと苦味抑制剤の配合比は表7および表8に記載している。
【0032】
【表6】
【0033】
(3)サンプルの評価
表6の処方例に従って試作されたタブレットを、よく訓練されたパネラー5名により、タブレット喫食時の冷涼感と苦味を下記評価基準に従って7段階評価で採点した。5名のパネラーの評価点数の平均値を表7及び表8に示す。なお、冷涼感及び苦味の評価基準は評価の事前に同一のl-メントールの評価サンプルを用いてすり合わせを行った。
冷涼感及び苦味の評価基準:
1点: 非常に弱く感じる
2点: 弱く感じる
3点: やや弱く感じる
4点: 強くも弱くもない
5点: やや強く感じる
6点: 強く感じる
7点: 非常に強く感じる
【0034】
各水準で、冷涼感と苦味の比を計算した。その値が比較例2の数値よりも高いほど、l-メントールの苦味を抑制しつつ、好ましい冷涼感を感じることができることを意味している。つまり、この比が高くなるように苦味抑制剤とメントールの濃度範囲を設定することが、好適なl-メントールの苦味抑制剤の使用方法になる。
【0035】
【表7】
【0036】
【表8】
【0037】
いずれの水準でも、苦味抑制剤の添加による影響で、l-メントールが本来持つ、軽く華やかな冷涼感とコクのあるミント感が損なわれないことを確認した。
【0038】
〔試作例3〕 (洗口液の苦味抑制効果)
(1)洗口液の作製
油系ベースおよび水系ベースの原料を配合のうえ、60℃に加温して均一になるまで撹拌した。l-メントールと苦味抑制剤はエタノールで所定濃度の希釈品を作製し、それらと油系ベースを100mL透明ガラス瓶に合わせて均一になるまで撹拌した。その後、水系ベースを加えて透明になるまで撹拌して洗口液を調製した。
【0039】
表9に洗口液の処方を示す。この処方に従って、比較例3、実施例5および6を得た。なお、l-メントールと苦味抑制剤の配合比は表10及び表11に記載している。
【0040】
【表9】
【0041】
(2)サンプルの評価
表9の処方に従って試作された洗口液を、よく訓練されたパネラー5名により、20秒間口をゆすぎ、吐き出した直後の冷涼感と苦味を下記評価基準に従って7段階評価で採点した。5名のパネラーの評価点数の平均値を表10及び表11に示す。なお、冷涼感及び苦味の評価基準は評価の事前に同一のl-メントールの評価サンプルを用いてすり合わせを行った。
冷涼感及び苦味の評価基準:
1点: 非常に弱く感じる
2点: 弱く感じる
3点: やや弱く感じる
4点: 強くも弱くもない
5点: やや強く感じる
6点: 強く感じる
7点: 非常に強く感じる
【0042】
各水準で、冷涼感と苦味の比を計算した。その値が比較例3の数値よりも高いほど、l-メントールの苦味を抑制しつつ、好ましい冷涼感を感じることができることを意味している。つまり、この比が高くなるように苦味抑制剤とメントールの濃度範囲を設定することが、好適なl-メントールの苦味抑制剤の使用方法になる。
【0043】
【表10】
【0044】
【表11】
【0045】
いずれの水準でも、苦味抑制剤の添加による影響で、l-メントールが本来持つ、軽く華やかな冷涼感とコクのあるミント感が損なわれないことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
l-メントールによる苦味を抑え、好ましい冷涼感を従来よりも強く感じさせる製品を提供することができる。