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特許7108518負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/68 20060101AFI20220721BHJP
   F16K 31/122 20060101ALI20220721BHJP
   A62C 35/60 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A62C35/68
F16K31/122
A62C35/60
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018204801
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020069066
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】福岡 悠里
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-45557(JP,A)
【文献】特開2010-253002(JP,A)
【文献】実開平6-28442(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
F16K 31/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予作動式流水検知装置と該予作動式流水検知装置の一次側に設けられ、基端側に給水手段が接続される一次側配管と、
該予作動式流水検知装置の二次側に設けられ、スプリンクラーヘッドが接続された二次側配管と、該二次側配管を負圧とする真空ポンプと該二次側配管と真空ポンプを接続する吸気管と、
前記二次側配管と前記吸気管との接続部に設けられ、
前記二次側配管から前記吸気管に流入する空気と水が通過する本体部と、該本体に設けたシリンダ部内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部と、該ピストン部を後退移動方向に付勢するコイルバネとによって構成され、
前記ピストン部は、外径が前記シリンダ部の内径と等しく、流入口から流入する水を含んだ空気の一部が直接前記大径の開口に流入する位置に後退し、更に、外周部における前記大径の開口から後部側の端部にかけて、流入する水の圧力によって前記コイルバネの付勢力に抗して最前進位置まで移動することによりその大径の開口が前記シリンダ部の内側面によって閉塞されることにより、流入を閉止することを特徴とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項2】
前記大径の開口が前記シリンダ部の内側面によって閉塞された状態において、前記ピストン部と前記シリンダ部との密接部分の間に、前記ピストン部の後部側の端部と前記大径の開口との間に少量の流路を形成する溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項3】
更に、前記シリンダ部の端部の閉塞部分に、前部側の端部を前記ピストン部の閉塞部分に接続し、前記シリンダ部内において前記ピストン部をその最前進位置まで押し出す点検棒を備え、該点検棒の前記シリンダ部の閉塞部分から突出する後部側の端部に、該シリンダの閉塞部分から該点検棒を囲むように突設した筒状部に出没するフランジ部を形成すると共に、該フランジ部と前記シリンダ部の閉塞部分との間に、前記コイルバネを配設し、更に、前記点検棒のフランジ部の内側面に、前記ピストン部が最前進位置まで移動したときにおいて内端が前記シリンダ部の閉塞部分に当接する円筒状のストッパ部を形成する一方、前記シリンダ部の閉塞部分における前記円筒状のストッパ部が当接する部分に、弾性緩衝材を配設してなることを特徴とする請求項2記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項4】
前記シリンダ部を、軸方向の中央部から流出口側にかけて内径を小さくなすと共に、大径の部分と小径の部分の境界部をテーパ状となし、前記ピストン部を前記シリンダ部の小径の部分に移動可能に設けてなる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。
【請求項5】
前記ピストン部の流入口から流入する水を含んだ空気の一部が直接前記流入口から流入する位置に、流入する水を含んだ空気の流れを整流する隆起部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁。



































【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における消火設備として、スプリンクラーヘッドの破損等が生じた場合に漏水を防止し、且つ火災発生時に速やかに放水する機能を有する、二次側配管内に水が充填され且つ火災発生時以外においては負圧状態とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備がある。
【0003】
図9は斯かる負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。該図において100は負圧湿式予作動スプリンクラー設備である。
【0004】
101は消火水槽102から送水ポンプ103を介して立ち上がって配管された一次側配管である。104は前記一次側配管101に接続され、スプリンクラーヘッド105まで配管された二次側配管である。
【0005】
106は前記一次側配管101と二次側配管104との間に設置され、火災発生時以外では閉状態が維持される予作動式流水検知装置である。107は天井部に設置された、火災を感知して火災信号を送出する火災感知器である。
【0006】
108は前記二次側配管104に一端側108Aを接続すると共に、他端側108Bを、真空ポンプ109から立ち上がって配管された吸気管110と、下端が前記消火水槽102まで垂下した排水管111とに接続された吸引管である。
【0007】
112は前記吸引管108の途中部に設置された、前記二次側配管104内の負圧の状態の正常監視時には少量の、配管破損やスプリンクラーヘッド破損等の異常時には多量の流通量とし、放水時には閉止する流量制御弁である。また、該流量制御弁112は、図10及び図11に示すオリフィス付き自動弁であり、口径40Aの直動式電磁弁のものがある。そしてまた一例として、その定格はDC24ボルト、1,580mAのものがある。
【0008】
また、該流量制御弁112であるオリフィス付き自動弁は、図10に示す如く、二次側配管104内の負圧の状態の正常時(緩慢な圧力上昇)には、入口側の開口112aから本体内に流入した水を含んだ空気は、矢標で示すようにオリフィス(小孔)112Aを通過することによって少量が出口側の開口112bに流れるようにされている。そしてまた、二次側配管104内の負圧の状態の異常時(圧力の急上昇)には、図11に示す如く、通電によって電磁コイル112c及びプランジャ112dを介して弁体112eを上昇させ、開放された本来の流路112Bを通って多量が出口側の開口112bに流れるようにされているものである。
【0009】
また、図9において113は前記吸引管108の途中部における前記流量制御弁112より二次側配管104側の位置に設置された、二次側配管104内の圧力を検出する真空スイッチである。
【0010】
114は火災発生時に前記火災感知器107からの火災信号を受信し、後記制御盤に該信号を送信する信号受信盤である。
【0011】
115は前記信号受信盤114からの信号を受信し、前記予作動式流水検知装置106を開状態として前記一次側配管101と二次側配管104とを連通状態とすると共に、前記送水ポンプ103を作動させる制御盤である。尚、その他図中116は前記吸気管110の前記吸引管108への接続部分に設置した気水分離器、117は前記吸引管108の前記吸気管110と排水管111との接続部分に設置した逆止弁である。
【0012】
そして、火災発生時以外のときには一次側配管101と二次側配管104のいずれにも水が充填されており、且つ二次側配管104内を、吸引管108及び吸気管110を介して真空ポンプ109で負圧状態とするものである。
【0013】
また、火災発生時には、火災感知器107が火災を感知して火災信号を信号受信盤114に送信し、そして該信号受信盤114から該信号を制御盤115に送信する。該信号を受信した制御盤115は予作動式流水検知装置106を開状態とすると共に送水ポンプ103を作動させる。これによりスプリンクラーヘッド105から放水が連続して行われるものである。尚、斯かる際には、流量制御弁112であるオリフィス付き自動弁は、図10に示す状態であって、真空ポンプ109の作動は停止される。
【0014】
従来における負圧湿式予作動スプリンクラー設備は上記の通りである。しかし、斯かる設備には二次側配管内の負圧の状態を適正に保持する構成において問題がある。それは、吸引管108の途中部に設置された流量制御弁112としてオリフィス付き自動弁を用いていることによるものである。
【0015】
而して、斯かるオリフィス付き自動弁は電磁弁であり、そして、斯かる電磁弁は、無通電時には閉止し、通電時に開放するなど制御方法がシンプルであるというメリットがある一方、消費電流が大きく、且つ弁体の開放中は通電し続けなければならず、大きな電源が必要となる。そして、上記の如く、従来の設備に用いられていたオリフィス付き自動弁は、口径40Aの直動式電磁弁のものがあり、そしてまた一例として、その定格はDC24ボルト、1,580mAのものがあり、消費電流も大きく且つ弁体の開放に大きな電源が必要であった。
【0016】
また、従来用いられていた電磁弁は、上記の通り消費電流も大きく且つ弁体の開放に大きな電源が必要であることから、停電時における問題もある。即ち、停電時において、二次側配管の破損等で二次側配管内の圧力が急上昇する事態が起き、弁を開放させる必要が生じることがあるが、その場合に備えて容量の大きい蓄電池を設けるか、非常電源設備による給電を行うなどの対策が必要であった。しかし、容量の大きい蓄電池を設ける場合には、蓄電池自体の大きさだけでなく、それを収納する制御盤の大きさも大きくなり、コストも増えることになる。また、非常電源設備による給電を行う場合には、予め非常電源設備の設計の際に電源容量を見込む必要があり、設備のリニューアルに対応できない等の問題があった。
【0017】
そこで、本発明者は、上記負圧湿式予作動スプリンクラー設備において、それに用いる二次側配管内の圧力の適正保持用の流量制御弁として、電力消費の大きい従来のオリフィス付き自動弁に替わる電力不要の流量制御弁を、先に案出した。そして、これを用いることにより上記従来の問題点を悉く解消することができるようになった。
【0018】
而して、本発明者が先に案出した流量制御弁は、図7及び図8に示した通りである。該図において、1は流量制御弁である。2は両端部が閉塞2A、2Bされ、一方側の端部側面に設けた流入口3から流入する水を含んだ空気が他方側の端部の閉塞部分2Bに設けた流出口4及び該流出口4の内側に連成された該流出口4より小径の開口5から流出するシリンダ部である。尚、該シリンダ部2の一方側の端部側面に設ける流入口3は、シリンダ部2自体に設ける場合と、図示はしないがシリンダ部2の一方側の端部の閉塞部分2Aを大きくしてこれに設ける場合とがある。6は前記シリンダ部2内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部であり、流入する水の圧力によって後記コイルバネの付勢力に抗して最前進位置まで移動することによりその閉塞部分が前記シリンダ部2の閉塞部分2Bの内側面に密接するようになされたものである。また、該ピストン部6は、前部側の端部が閉塞6′された円筒状をなし、他端部に外径が前記シリンダ部2の内径と等しいフランジ部6Aを形成し、閉塞部分6′の、シリンダ部2における他方側の端部の閉塞部分2Bとの対向面に、ピストン部6における閉塞部分6′がシリンダ部2における他方側の端部の閉塞部分2Bに密接した状態において、両閉塞部分6′、2Bの間に、ピストン部6の外周とシリンダ部2における閉塞部分2Bの開口5との間に少量の流通量の流路を形成する溝7を設けると共に、円筒状部分に大径の開口8を設けてなるものである。
【0019】
9は前記シリンダ部2の一方側の端部の閉塞部分2Aに摺動自在に貫挿した点検棒であり、前記シリンダ部2内において後記コイルバネの付勢力に抗して前記ピストン部6をその最前進位置まで押し出すものである。また、該点検棒9は前部側の端部を前記ピストン部6の閉塞部分6′に接続している。また、該点検棒9の軸方向の略中央部には後退位置を規制するストッパ9Bが形成されると共に、シリンダ部2の一方側の端部の閉塞部分2Aから突出する後部側の端部には、該シリンダ部2の閉塞部分2Aから該点検棒9を囲むように突設した筒状部10に出没するフランジ部9Aを形成している。
【0020】
11は前記点検棒のフランジ部9Aと前記シリンダ部2の閉塞部分2Aとの間に縮設したコイルバネであり、前記点検棒9を介して前記ピストン部6を後退位置に向けて押圧付勢するものである。
【0021】
そして、該コイルバネ11の弾発力(バネ定数)は、火災発生時において二次側配管104内に一次側配管101から水が供給され、該水の一部が吸引管108内に流入したときの圧力によってのみ縮小する程度であることを要する。したがって、流入口3から水が流入し、その圧力が該コイルバネ11の付勢力を超えている状態でピストン部6は前進移動が行われることになるものである。
【0022】
また、前記筒状部10と前記点検棒9のフランジ部9Aとをもって点検棒の変位量の測定手段12が構成されており、筒状部10の突出端面10aと点検棒9のフランジ部9Aの外端面9A′との間隔L1を、ピストン部6が後退位置にあるときにおける該ピストン部6の閉塞部分6′とシリンダ部2の他方側の端部の閉塞部分2Bとの相互間隔L2に対応する間隔とするようになしている。これにより点検棒10の動きを通してシリンダ部2内のピストン部6の動きや位置を外部から確認することができることになるものである。
【0023】
また、上記流量制御弁1の作用は、次の通りである。
火災発生時以外のときにおける二次側配管の温度変化による体積膨張や流量制御管等からの微少な空気流入等による緩慢な圧力上昇があるときは、図7に示す如く、ピストン部6は後退位置にあり、シリンダ部2の流入口3から流入した水を含んだ空気は、ピストン部6の大径の開口8を通ってシリンダ部2の開口5と流出口4から流出する。
【0024】
また、スプリンクラーヘッド等が破損して二次側配管内の圧力が急速に上昇したときには、ピストン部6は図7と同じ後退位置にあって、真空ポンプ109が作動する。そして、この吸引によって漏水が防止される。尚、その際において真空ポンプ109の吸引力はコイルバネ11の弾発力より低いためピストン部6は移動しない。
【0025】
また、火災発生時において一次側配管101から二次側配管104に水が供給され、その水の一部が吸引管108内に流入すると、図8に示す如く、その水の圧力によってコイルバネ11の付勢力に抗してピストン部6が最前進位置まで移動し、その閉塞部分6′がシリンダ部2の閉塞部分2Bの内側面に密接する。また、このときにおいては真空ポンプ109は作動しない。そして、これにより水はピストン部6の溝7を通じて少量しか流れず、スプリンクラーヘッド105からの充分な放水が確保される。尚、ピストン部6の溝7から引き続き水が流出するが、該溝7からの流通量は少ないことから流出の影響は少ない。
【0026】
そして、消火完了後、予作動式流水検知装置106が閉止すると、ピストン部6の溝7から水が流出することで二次側配管104内の圧力が減少し、ピストン部6はコイルバネ11によって再び後退位置に戻される。
【0027】
以上の如く、上記流量制御弁1は、電力を要することなく作動するものである。
【0028】
また、上記流量制御弁1は、定期的に点検し、加圧水を流入させることなくピストン部6の動作を確認することができるようにした構成も備えている。
【0029】
斯かる構成は、ピストン部6が後退位置にあって、流入口3から水を含んだ空気が流入し、これらが該ピストン部6の大径の開口8を通ってシリンダ部2の開口5と流出口4から流出する状態が長期間にわたって継続すると、ピストン部6の周囲やシリンダ部2の内面において水に含まれるカルシウムや不純物が析出したり、ゴミが付着し、実際の火災発生時においてピストン部6が正常に動作しない事態が起こる虞があることから、これを防ぐためのものである。
【0030】
而して、該構成は、前記の通り、シリンダ部2の一方側の端部の閉塞部分2Aに、前記シリンダ部2内において前記コイルバネ11の付勢力に抗して前記ピストン部6をその最前進位置まで押し出す点検棒9を備えた構成である。
【0031】
そして更に、前記の通り、筒状部10と点検棒9のフランジ部9Aとをもって点検棒の変位量の測定手段12が構成されており、筒状部10の突出端面10aと点検棒9のフランジ部9Aの外端面9A′との間隔L1を、ピストン部6が後退位置にあるときにおける該ピストン部6の閉塞部分6′とシリンダ部2の他方側の端部の閉塞部分2Bとの相互間隔L2に対応する間隔とするようになしているから、点検棒9の動きを通してシリンダ部2内のピストン部6の動きや位置を外部から確認することができることになるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明者が先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁1は、上記の如き構成、作用であり、そして上記の通りの効果を奏するものではあるが、本発明者は更にピストン動作時における、それの閉塞部分とシリンダ部の閉塞部分との最初の衝突により発生する衝撃音とバウンド現象によるピストン部とシリンダ部とのその後に繰り返される衝突による衝撃音による騒音と、ウォーターハンマーの発生による部品の毀損等の面から検討し、これらを改善すべく鋭意研究した結果、本発明の完成をみるに至ったものである。
【0033】
即ち、本発明者が先に案出した流量制御弁1においては、ピストン部6の動作時においてその閉塞部分6′とシリンダ部2の閉塞部分2Bとの間で最初の衝突が起こり、そしてその閉塞部分6′がシリンダ部2の閉塞部分2Bと一旦接触した後で、大径の開口8からピストン部6とシリンダ部2の間の空間部に流入する水や衝突による跳ね返りによりピストン部6が後退方向に押し出されることによってバウンド現象が起き、ピストン部6の閉塞部分6′とシリンダ部2の他方側の端部の閉塞部分2Bとの間で何回も衝突が繰り返される。そして、ピストン部6とシリンダ部2はいずれも金属製であることから、これらの衝突によって発生する衝撃音が騒音となる虞があった。
【0034】
また、ピストン部6は流入する水の圧力によって急速に移動し、その閉塞部分6′がシリンダ部2の他方側の端部の閉塞部分2Bの開口5を急激に締め切ることになるから、内部にウォーターハンマーが発生することがある。そして、この場合においては、その衝撃で配管に設置した表記しない圧力計等の部品が毀損することがあった。
【0035】
そこで、本発明者はこれらの問題点を改善すべく更に鋭意研究した結果、ピストン部が前進したときにおいて、その前端部とシリンダ部との間で衝突が起こらないと共にピストン部のバウンド現象も起こらず、且つピストン部の動作時における前進移動速度を抑制することができるように構成することにより、上記の問題点を悉く改善することができるようになることを知見し、本発明の完成をみるに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
而して、本発明の要旨とするところは、
予作動式流水検知装置と該予作動式流水検知装置の一次側に設けられ、基端側に給水手段が接続される一次側配管と、
該予作動式流水検知装置の二次側に設けられ、スプリンクラーヘッドが接続された二次側配管と、該二次側配管を負圧とする真空ポンプと該二次側配管と真空ポンプを接続する吸気管と、
前記二次側配管と前記吸気管との接続部に設けられ、
前記二次側配管から前記吸気管に流入する空気と水が通過する本体部と、該本体に設けたシリンダ部内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部と、該ピストン部を後退移動方向に付勢するコイルバネとによって構成され、
前記ピストン部は、外径が前記シリンダ部の内径と等しく、流入口から流入する水を含んだ空気の一部が直接前記大径の開口に流入する位置に後退し、更に、外周部における前記大径の開口から後部側の端部にかけて、流入する水の圧力によって前記コイルバネの付勢力に抗して最前進位置まで移動することによりその大径の開口が前記シリンダ部の内側面によって閉塞されることにより、流入を閉止することを特徴とする負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁
にある。
【0037】
また、上記構成において、前記大径の開口が前記シリンダ部の内側面によって閉塞された状態において、前記ピストン部と前記シリンダ部との密接部分の間に、前記ピストン部の後部側の端部と前記大径の開口との間に少量の流路を形成する溝を設けるようにしてもよい。
【0038】
また、上記構成において、更に、前記シリンダ部の端部の閉塞部分に、前部側の端部を前記ピストン部の閉塞部分に接続し、前記シリンダ部内において前記ピストン部をその最前進位置まで押し出す点検棒を備え、該点検棒の前記シリンダ部の閉塞部分から突出する後部側の端部に、該シリンダの閉塞部分から該点検棒を囲むように突設した筒状部に出没するフランジ部を形成すると共に、該フランジ部と前記シリンダ部の閉塞部分との間に、前記コイルバネを配設し、更に、前記点検棒のフランジ部の内側面に、前記ピストン部が最前進位置まで移動したときにおいて内端が前記シリンダ部の閉塞部分に当接する円筒状のストッパ部を形成する一方、前記シリンダ部の閉塞部分における前記円筒状のストッパ部が当接する部分に、弾性緩衝材を配設するようにしてもよい。
【0039】
また、上記構成において、前記シリンダ部を、軸方向の中央部から流出口側にかけて内径を小さくなすと共に、大径の部分と小径の部分の境界部をテーパ状となし、前記ピストン部を前記シリンダ部の小径の部分に移動可能に設けるようになしてもよい。
【0040】
また、上記構成において、前記ピストン部の流入口から流入する水を含んだ空気の一部が直接前記流入口から流入する位置に、流入する水を含んだ空気の流れを整流するための隆起部を設けるようになしてもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明は上記の如き構成であり、ピストン部の閉塞部分は後部側にあり、且つピストン部にフランジ部が存在せず、更にシリンダ部の流出口側には閉塞部分が存在しないことから、ピストン部の前進移動時においてピストン部とシリンダ部との衝突が起こらず、且つまた、ピストン部の前部外周とシリンダ部の内側面との間に、ピストン部が最前進位置まで移動したときにおいて、本発明者が先に案出した流量制御弁の如き水が流入する空間部が出来ないことから、ピストン部のバウンド現象も起こらないものである。したがって、ピストン部の動作時において発生する、金属製部品同士の衝突による衝撃音が発生せず、もってこれの騒音問題を解消することができるものである。また、ピストン部はストレートの円筒状であり、本発明者が先に案出した流量制御弁の如きフランジ部が存在しないことから、構造が簡略化されて製造が容易になると共に、小型軽量化することもできるものである。
【0042】
また、火災発生時において流入口から水が流入したときには、その水の一部がピストン部の大径の開口からピストン部内に流入することにより、ピストン部の急速な前進移動速度が抑制され、もって水流の急激な締め切り動作に伴うウォーターハンマーの発生を防止することができるものである。
【0043】
また、斯かる作用は、流入口から流入する水の一部がピストン部の大径の開口からピストン部内に抜けることから、ピストン部の後部側の閉塞部分にかかる水圧をその分だけ減ずることができると共に、ピストン部内に流入した水がピストン部の前進移動への抵抗となることによるものである。
【0044】
また、ピストン部が最前進位置まで移動したときにおいて、点検棒の後端側のフランジ部に形成した円筒状のストッパ部が、シリンダ部の閉塞部分に衝突するが、ピストン部の移動速度の抑制に加えて、シリンダ部の閉塞部分に配設した弾性緩衝材の作用によって衝突の衝撃は大幅に緩和され、もって大きな衝撃音が生ずることはなく、また配管に設置した表記しない圧力計等の部品が毀損することもないものである。
【0045】
また、ピストン部は後部側、即ち、流入口側の端部を閉塞し、そして点検棒はこのピストン部の閉塞部分に接続していることから、点検棒を、本発明者が先に案出した流量制御弁におけるが如く、ピストン部の内部を通ってその先端側の閉塞部分に接続する場合に比してはるかに短くすることができるものである。もって、その分小型軽量化することができると共に、コストを下げることもできるものである。また、点検棒のピストン部への組立作業も行い易くなるものである。
【0046】
また、上記の如く、ピストン部は後部側の端部を閉塞し、そして点検棒はこのピストン部の閉塞部分に接続していることから、本発明者が先に案出した流量制御弁におけるが如く、ピストン部内に点検棒が存在しないことから、損失軽減や小型化が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施形態に係る負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の縦断側面図であり、平常時及びヘッド破損時の状態を示すものである。
図2】同火災発生時及び点検時の状態を示すものである。
図3】同ピストン部の半分を断面で示した拡大側面図である。
図4】同ピストン部の後部側から看た拡大図である。
図5】同火災発生時における作用を示す拡大縦断側面図である。
図6】同ピストン部が最前進位置まで移動したときにおける作用を示す部分拡大縦断側面図である。
図7】本発明者が先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁の縦断側面図であり、平常時及びヘッド破損時の状態を示すものである。
図8】同火災発生時の状態を示すものである。
図9】従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備の概略構成図である。
図10】従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備におけるオリフィス付き自動弁の作用説明図であり、二次側配管内の圧力の緩慢な上昇時の状態を示すものである。
図11】従来の負圧湿式予作動スプリンクラー設備におけるオリフィス付き自動弁の作用説明図であり、二次側配管内の圧力の急速な上昇時の状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0049】
図中、1′は流量制御弁である。また、該流量制御弁1′は、以下a~fの点において、上記本発明者が先に案出した負圧湿式予作動スプリンクラー設備における流量制御弁1と相違している。
【0050】
a.シリンダ部2の構成において、先に案出した流量制御弁1においては、両端部を閉塞しているのに対して、本発明に係る流量制御弁1′においては、流入口3側の端部だけ閉塞2Aし、流出口4側は開放している点。また、本実施形態においては、軸方向の中央部から流出口4側にかけて内径を小さくなすと共に、大径の部分2aと小径の部分2bの境界部をテーパ状2cとなし、前記ピストン部6を前記シリンダ部2の小径の部分2bに移動可能に設けてなる点。
b.ピストン部6の構成において、先に案出した流量制御弁1においては、前部側の端部を閉塞しているのに対して、本発明に係る流量制御弁1′においては、後部側、即ち、流入口側の端部を閉塞6′している点。
c.ピストン部6の構成において、先に案出した流量制御弁1においては、後部側の端部に外径がシリンダ部2の内径と等しいフランジ部を形成しているのに対して、本発明に係る流量制御弁1′においては、外径がシリンダ部2の内径と等しいストレートの円筒状をなしている点。また、本実施形態においては、該ピストン部6はシリンダ部2の小径の部分2bに移動可能に設けている点。
d.ピストン部6の構成において、先に案出した流量制御弁1においては、大径の開口8をシリンダ部2の内径より小径のピストン部6本体に設けているのに対して、本発明に係る流量制御弁1′においては、外径がシリンダ部2の内径と等しいピストン部6の閉塞部分6′寄りの位置に設けている点。
e.ピストン部6の構成において、先に案出した流量制御弁1においては、ピストン部6が最前進位置まで移動したときにおいて少量の水を流通させる溝7を、前端部の閉塞部分の外側に設けているのに対して、本発明に係る流量制御弁1′においては、ピストン部6の外周部における大径の開口8から後部側の端部にかけて設けている点。
f.点検棒9の構成において、先に案出した流量制御弁1においては、ピストン部6は、その前端の閉塞部分がシリンダ部2の閉塞部分に接触することによって前進が停止し、そしてこの位置を最前進位置としているのに対して、本発明に係る流量制御弁1′においては、点検棒9の後部側の端部に形成したフランジ部9Aの内側面に円筒状のストッパ部13を形成し、該ストッパ部13をもってピストン部6の最前進位置を規制している点。並びに、該円筒状のストッパ部13が接触するシリンダ部2の閉塞部分2Aに弾性緩衝材14を配設している点。
【0051】
また、その他の構成においては、前記本発明者が先に案出した流量制御弁1と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
而して、本実施形態に係る流量制御弁1′は、一端部が閉塞され、閉塞された側の端部側面の流入口3から流入する水を含んだ空気が他方側の端部の流出口4から流出するシリンダ部2と、該シリンダ部2内で水の圧力により前進移動可能に設けられたピストン部6と、該ピストン部6を後退移動方向に付勢するコイルバネ11とによって構成され、前記ピストン部6は、外径が前記シリンダ部2の内径と等しく、後部側の端部が閉塞6′された円筒状をなすと共に、閉塞部分6′寄りの位置に大径の開口8を設け、流入口3から流入する水を含んだ空気の一部が直接前記大径の開口8に流入する位置に後退し、更に、外周部における前記大径の開口8から後部側の端部にかけて、流入する水の圧力によって前記コイルバネ11の付勢力に抗して最前進位置まで移動することによりその大径の開口8が前記シリンダ部2の内側面によって閉塞された状態において、これらピストン部6とシリンダ部2との密接部分の間に、ピストン部6の後部側の端部と大径の開口8との間に少量の流通量の流路を形成する溝7を設けてなり、
更に、前記シリンダ部2の端部の閉塞部分2Aに、前部側の端部を前記ピストン部6の閉塞部分6′に接続し、前記シリンダ部2内において前記ピストン部6をその最前進位置まで押し出す点検棒9を備え、該点検棒9の前記シリンダ部2の閉塞部分2Aから突出する後部側の端部に、該シリンダ部2の閉塞部分2Aから該点検棒9を囲むように突設した筒状部10に出没するフランジ部9Aを形成すると共に、該フランジ部9Aと前記シリンダ部2の閉塞部分2Aとの間に、前記コイルバネ11を配設し、
更に、前記点検棒9のフランジ部9Aの内側面に、前記ピストン部6が最前進位置まで移動したときにおいて内端が前記シリンダ部2の閉塞部分2Aに当接する円筒状のストッパ部13を形成する一方、前記シリンダ部2の閉塞部分2Aにおける前記円筒状のストッパ部13が当接する部分に、弾性緩衝材14を配設してなるものである。尚、前記点検棒9の前端側の端部のピストン部6の閉塞部分6′への接続は、本実施形態においては、ピストン部6の閉塞部分6′に穿設した孔6aへの点検棒9の前端部の嵌合によって行っている。
【0053】
本実施形態においては、更にまた、上記構成において、前記シリンダ部2を、軸方向の中央部から流出口4側にかけて内径を小さくなすと共に、大径の部分2aと小径の部分2bの境界部をテーパ状2cとなし、前記ピストン部6を前記シリンダ部2の小径の部分2bに移動可能に設けてなるものである。
【0054】
尚、前記弾性緩衝材14はゴムや合成樹脂材からなるものであり、弾性に富み、衝撃吸収力が高いものであればどのようなものでもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、シリンダ部2を、大径の部分2aと小径の部分2bとなし、これらの境界部をテーパ状2cとなしているが、図示はしないが、本発明者が先に案出した流量制御弁1と同様にストレートな円筒状としてもよい。
【0056】
また、前記点検棒9のフランジ部9Aの外端面9A′と前記筒状部10の突出端面10aとの間隔L1は、前記ピストン部6の後退位置から最前進位置までの距離L2と一致しており、そしてまた、最前進位置におけるピストン部6と前記シリンダ部2の流出口4との間には若干の間隔Sがある。
【0057】
尚、図中15は、ピストン部6の流入口8から流入する水を含んだ空気の一部が直接前記流入口8から流入する位置に、流入する水を含んだ空気の流れを整流するために設けた切頭円錐形の隆起部であり、16は前記隆起部15と点検棒9を一体化するためのビスである。
【0058】
次に、本実施形態の作用について説明する。
平常時及びスプリンクラーヘッド破損時における状態は、図1に示す通りであり、ピストン部6は後退位置にある。そして、シリンダ部2の流入口3から流入した水を含んだ空気は、大径の開口8からピストン部6内に流入し、更にシリンダ部2の流出口から流出するものである。
【0059】
また、火災発生時及び点検時における状態は、図2に示す通りであり、ピストン部6は最前進位置にある。そしてまた、火災発生時においては、図5に示す如く、水がシリンダ部2の流入口3から流入すると、その一部はピストン部6の大径の開口8を通って該ピストン部6内に抜け、またその他の水はピストン部6の閉塞部分6′に当たってこれを前方に押し出す。そして、水の圧力によってコイルバネ11の付勢力に抗してピストン部6が最前進位置まで移動し、その大径の開口8がシリンダ部2の内側面によって閉塞されたときにおいては、図6に示す如く、ピストン部6の外周部における大径の開口8から後部側の端部にかけて設けた溝7から少量の水が大径の開口8を経て流出するものである。そして、消火完了後、予作動式流水検知装置106が閉止し、真空ポンプが作動すると、ピストン部6の溝7から水が流出することで二次側配管104内の圧力が減少し、ピストン部6はコイルバネ11によって再び後退位置に戻されるものである。
【0060】
以上の通り、本実施形態においては、ピストン部6の閉塞部分6′は後部側にあり、且つピストン部6にフランジ部が存在せず、更にシリンダ部2の流出口4側には閉塞部分が存在しないことから、ピストン部6の前進移動時においてピストン部6とシリンダ部2との衝突が起こらず、且つまた、ピストン部6の前部外周とシリンダ部2の内側面との間に、ピストン部6が最前進位置まで移動したときにおいて、本発明者が先に案出した流量制御弁1の如き水が流入する空間部ができないことから、ピストン部6のバウンド現象も起こらないものである。したがって、ピストン部6の動作時において発生する、金属製部品同士の衝突による衝撃音が発生せず、もってこれの騒音問題を解消することができるものである。また、ピストン部6はストレートの円筒状であり、本発明者が先に案出した流量制御弁1の如きフランジ部が存在しないことから、構造が簡略化されて製造が容易になると共に、小型軽量化することもできるものである
【0061】
また、火災発生時において流入口3から水が流入したときには、その水の一部がピストン部6の大径の開口8からピストン部6内に流入することにより、ピストン部6の急速な前進移動速度が抑制され、もって水流の急激な締め切り動作に伴うウォーターハンマーの発生を防止することができるものである。
【0062】
また、斯かる作用は、流入口3から流入する水の一部がピストン6の大径の開口8からピストン部6内に抜けることから、ピストン部6の後部側の閉塞部分6′にかかる水圧をその分だけ減ずることができると共に、ピストン部6内に流入した水がピストン部6の前進移動への抵抗となることによるものである。
【0063】
また、ピストン部6が最前進位置まで移動したときにおいて、点検棒9の後端側のフランジ部9Aに形成した円筒状のストッパ部13が、シリンダ部2の閉塞部分2Aに衝突するが、ピストン部6の移動速度の抑制に加えて、シリンダ部2の閉塞部分2Aに配設した弾性緩衝材14の作用によって衝突の衝撃は大幅に緩和され、もって大きな衝撃音が生ずることはなく、また配管に設置した表記しない圧力計等の部品が毀損することもないものである。
【0064】
また、ピストン部6は後部側、即ち、流入口3側の端部を閉塞6′し、そして点検棒9はこのピストン部6の閉塞部分6′に接続していることから、点検棒9を、本発明者が先に案出した流量制御弁1におけるが如く、ピストン部6の内部を通ってその先端側の閉塞部分に接続する場合に比してはるかに短くすることができるものである。もって、その分小型軽量化することができると共に、コストを下げることもできるものである。また、点検棒のピストン部への接続作業も行い易くなるものである。
【0065】
また、ピストン部6は後部側の端部を閉塞6′し、そして点検棒9はこのピストン部6の閉塞部分6′に接続していることから、本発明者が先に案出した流量制御弁1におけるが如く、ピストン部6内に点検棒9が存在しないことから、その分ピストン部の内部空間を大きくすることができるものである。
【符号の説明】
【0066】
1′ 流量制御弁
2 シリンダ部
2A 閉塞部分
3 流入口
4 流出口
6 ピストン部
6′ 閉塞部分
7 溝
8 大径の開口
9 点検棒
9A フランジ部
10 筒状部
11 コイルバネ
12 点検棒の変位量の測定手段
13 円筒状のストッパ部
14 弾性緩衝材
15 隆起





















図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11