(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】マイナーアクチノイドの分離方法
(51)【国際特許分類】
G21C 19/46 20060101AFI20220721BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20220721BHJP
B01D 11/04 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G21C19/46 624
G21F9/06 581H
B01D11/04 B
(21)【出願番号】P 2018205118
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】可児 祐子
(72)【発明者】
【氏名】星野 国義
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-63198(JP,A)
【文献】特開2016-205820(JP,A)
【文献】特開平11-23784(JP,A)
【文献】特開昭58-19453(JP,A)
【文献】特開2011-169888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/46
G21F 9/06
B01D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイナーアクチノイド及び核分裂生成物を含む溶液から、有機相を構成する抽出剤を用いて、前記マイナーアクチノイドを回収する方法であって、
主として前記マイナーアクチノイドを抽出して回収する最初の抽出工程と、
前記マイナーアクチノイドを更に抽出して回収する後段の抽出工程と、を有し、
前記抽出剤には、前記核分裂生成物よりも前記マイナーアクチノイドが分配されやすく、
前記最初の抽出工程における前記マイナーアクチノイドの分配比は、前記後段の抽出工程における前記マイナーアクチノイドの前記分配比と異なる、マイナーアクチノイドの分離方法。
【請求項2】
前記最初の抽出工程における前記マイナーアクチノイドの前記分配比は、前記後段の抽出工程における前記マイナーアクチノイドの前記分配比よりも高い、請求項1記載のマイナーアクチノイドの分離方法。
【請求項3】
前記後段の抽出工程における前記核分裂生成物の前記分配比は、前記最初の抽出工程における前記核分裂生成物の前記分配比よりも低い、請求項2記載のマイナーアクチノイドの分離方法。
【請求項4】
前記最初の抽出工程における前記マイナーアクチノイドの前記分配比は、前記後段の抽出工程における前記マイナーアクチノイドの前記分配比よりも高い、請求項3記載のマイナーアクチノイドの分離方法。
【請求項5】
前記最初の抽出工程及び前記後段の抽出工程における前記マイナーアクチノイドの前記分配比は、1以上である、請求項2記載のマイナーアクチノイドの分離方法。
【請求項6】
前記後段の抽出工程における前記核分裂生成物の前記分配比は、1以下である、請求項5記載のマイナーアクチノイドの分離方法。
【請求項7】
前記マイナーアクチノイドの前記分配比は、前記核分裂生成物の前記分配比の5倍以上である、請求項6記載のマイナーアクチノイドの分離方法。
【請求項8】
前記最初の抽出工程及び前記後段の抽出工程で用いる抽出剤は、同種の錯化剤を含み、
この錯化剤の濃度は、前記最初の抽出工程の方が前記後段の抽出工程よりも高い、請求項2記載のマイナーアクチノイドの分離方法。
【請求項9】
前記最初の抽出工程で用いる前記抽出剤の前記錯化剤の濃度は、前記溶液に含まれる前記マイナーアクチノイドの濃度の2倍以上であり、
前記後段の抽出工程で用いる前記抽出剤の前記錯化剤の濃度は、前記最初の抽出工程で得られる水相を構成する水溶液に含まれる前記マイナーアクチノイドの濃度の2倍以上である、請求項8記載のマイナーアクチノイドの分離方法。
【請求項10】
前記錯化剤は、その化学構造中にピリジン又はフェナントロリンを含む、請求項8記載のマイナーアクチノイドの分離方法。
【請求項11】
前記錯化剤は、6,6’-bis(5,5,8,8-tetramethyl-5,6,7,8-tetrahydro-benzo-1,2,4-triazin-3-yl)-2,2’-bipyridine、4-tert-butyl-6,6’-bis(5,5,8,8-tetramethyl-5,6,7,8-tetrahydro-benzo-1,2,4-triazin-3-yl)-2,2’-bipyridine、2,9-bis(5,5,8,8-tetramethyl-5,6,7,8-tetrahydro-benzo-1,2,4-triazin-3-yl)-1,10-phenanthroline、又は2,9-bis(5,5,8,8-tetramethyl-5,6,7,8-tetrahydro-benzo-1,2,4-triazin-3-yl)-5-tert-butyl-1,10-phenanthrolineである、請求項10記載のマイナーアクチノイドの分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイナーアクチノイドの分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所から排出される使用済燃料は、再処理によって核燃料物質が回収された後、ガラス固化体へ加工され、地層処分される計画となっている。現行のPUREX法で再処理する場合、ガラス固化体には半減期が非常に長い放射性核種であるマイナーアクチノイド(以下「MA」という。)が含まれるため、ガラス固化体については地層処分することにより数十万年の期間に及び安定に閉じ込めておく必要があると言われている。ここで、アクチノイドとは、原子番号89から103までの元素のことをいい、核燃料として使用されるウラン(U)やプルトニウム(Pu)、MAと称される元素群が該当する。また、MAとは、アクチノイド元素のうち、超ウラン元素からPuを除いた元素のことをいい、ネプツニウム(Np)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)などが該当する。
【0003】
現在、ガラス固化体の閉じ込め期間を短縮することを目的として、使用済燃料の再処理において発生する高レベル放射性廃液からMAを分離し、MAに中性子を照射して半減期の短い放射性核種へ変換するという技術が研究されている。ここで、高レベル放射性廃液とは、使用済燃料を硝酸に溶解した溶液からU及びPuを分離した後の廃液をいう。高レベル放射性廃液には、主に核分裂生成物及びMAが溶解している。
【0004】
整理すると、使用済燃料の再処理によりウラン及びプルトニウムを分離し、高レベル放射性廃液からのMA分離工程によりMAを分離することで、使用済燃料の成分をU及びPu、MA、核分裂生成物(FP)にそれぞれ分離するということになる。
【0005】
高レベル放射性廃液からのMAの分離方法については、様々な方法が研究されており、例えば、高レベル放射性廃液から錯化剤を用いてMAを選択的に分離する方法などが研究されてきている。
【0006】
特許文献1には、高レベル放射性廃液から錯化剤を用いてMAを回収する方法の一例が開示されている。
【0007】
上記をまとめると、使用済燃料から核燃料物質を回収する従来の方法(以下「従来法」という。)は、以下のように説明される。
【0008】
まず、使用済燃料が硝酸に溶解される。その溶解液より、ピューレックス法に代表される湿式再処理法によりU及びPuがそれぞれ回収される。つぎに、U及びPuが除かれた残液(高レベル廃液)からMAが溶媒抽出法により回収される。
【0009】
従来法では、U、Pu、MAをそれぞれ回収する特徴があるといえる。このため、核燃料物質を任意の割合で混合することによって、使用を想定する原子炉や加速器で求められる組成の燃料を作製することができる。すなわち、従来法には、任意の組成の燃料を作製可能であるというメリットがある。
【0010】
溶媒抽出法では、MAを溶解した水溶液に対して、有機溶媒に錯化剤を溶解した溶液(以下「抽出剤」という。)を接触させ、MAと錯化剤を錯形成させることにより、有機相側にMAを移行させる。MAの回収に使用される錯化剤として窒素ドナー錯化剤である6,6’-bis(5,5,8,8-tetramethyl-5,6,7,8-tetrahydro-benzo-1,2,4-triazin-3-yl)-2,2’-bipyridine(以下「BTBP」という。)が開発されている。錯化剤としてBTBPを用いた場合、MAと錯化剤との反応は、次の化学式(1)で表される。
【0011】
MA3+ + 3NO3
- + 2BTBP → MA(NO3)3(BTBP)2 …化学式(1)
BTBPは、選択的に3価のMAと錯体を形成する性質を持つため、使用済燃料の再処理で発生する高レベル廃液のようなMAと他の元素が溶解した溶液から溶媒抽出でMAを回収する際、BTBPを用いれば選択的にMAを回収することができる。ランタノイド元素(Ln)は、溶液中で3価のカチオンになることが多い。また、MAのうちAmやCmは、同じ3価のカチオンで溶解する。このように溶存形態が似ているため、MAとLnの分離は難しいとされている。このような事情があるため、BTBPは、MAとLnの高い分離性を持っている点で注目されている。
【0012】
非特許文献1には、BTBPの抽出性能が記載されている。
【0013】
特許文献2には、高レベル放射性廃液に含まれるマイナーアクチノイドを抽出液に移動させ、マイナーアクチノイドを含む抽出液に含まれる核分裂生成物を洗浄液に移動させるマイナーアクチノイドの分離方法であって、抽出液は、マイナーアクチノイドと錯体を形成する錯化剤を含み、錯化剤及びマイナーアクチノイドの供給速度を調整する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平9-80194号公報
【文献】特開2018-63198号公報
【非特許文献】
【0015】
【文献】Panak P. J., Geist A.: Complexation and Extraction of Trivalent Actinides and Lanthanides by Triazinylpyridine N-Donor Ligands. Chem. Rev. 2013 Jan; 113: 1199-1236
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
非特許文献1に記載のBTBPの抽出性能等から、核分裂生成物(FP)及びマイナーアクチノイド(MA)の分配比を算出すると、MAを抽出して回収すべく用いている抽出剤にFPが混入し濃縮してしまうという問題があることがわかった。
【0017】
特許文献1及び2においては、FPの濃縮の問題は考慮されていない。
【0018】
本発明は、マイナーアクチノイド及び核分裂生成物を含む溶液から溶媒抽出によりマイナーアクチノイドを回収する場合に、抽出工程における核分裂生成物の濃縮を抑制するとともに、マイナーアクチノイドの回収率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のマイナーアクチノイドの分離方法は、マイナーアクチノイド及び核分裂生成物を含む溶液から、有機相を構成する抽出剤を用いて、マイナーアクチノイドを回収する方法であって、主としてマイナーアクチノイドを抽出して回収する最初の抽出工程と、マイナーアクチノイドを更に抽出して回収する後段の抽出工程と、を有し、抽出剤には、核分裂生成物よりもマイナーアクチノイドが分配されやすく、最初の抽出工程におけるマイナーアクチノイドの分配比は、後段の抽出工程におけるマイナーアクチノイドの分配比と異なる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マイナーアクチノイド及び核分裂生成物を含む溶液から溶媒抽出によりマイナーアクチノイドを回収する場合に、抽出工程における核分裂生成物の濃縮を抑制するとともに、マイナーアクチノイドの回収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のマイナーアクチノイドの分離方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】本発明のマイナーアクチノイドの分離装置の一例を示す模式構成図である。
【
図3】マイナーアクチノイドの分離に用いる抽出剤濃度と分配比との関係の一例を示す表である。
【
図4】多段向流抽出の概要を示す模式構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、使用済燃料の成分をウラン及びプルトニウム、マイナーアクチノイド、核分裂生成物に分別する方法、すなわち、マイナーアクチノイドを分離する方法に関する。
【0023】
はじめに、本発明の課題について図面を用いて説明する。
【0024】
図3は、非特許文献1に記載のBTBPの抽出性能、上記化学式(1)等に基づいて算出した分配比の例を示したものである。ここで、分配比とは、溶媒抽出が平衡した状態における有機相と水相との元素濃度の比をいい、抽出性能の指標として用いられる値である。
【0025】
MA濃度の高い使用済燃料からのMA回収を想定する。再処理工程の高い硝酸濃度として、4Mを想定する。これに対応する抽出剤濃度は、50mMに設定する。ここで、抽出剤濃度とは、抽出剤に含まれる錯化剤の濃度をいう。
【0026】
本図に示すように、抽出剤濃度50mMの場合、Amの分配比(DAm)は300、ランタノイドの代表としてユーロピウム(Eu)の分配比(DEu)は3である。なお、ここでは、FPの代表として、ランタノイドであるEuの分配比を示している。このように、Amは、ランタノイドよりもかなり抽出されやすい。DAmが300の場合、1回のバッチ抽出により99.7%のAmを回収できる計算となる。一方、DEuが3の場合、1回のバッチ抽出により75%のランタノイドが抽出されてしまう計算となる。
【0027】
本図においては、抽出剤濃度を10mMとした場合についても記載している。この場合、DAmは10、DEuは1である。
【0028】
図4は、溶媒抽出で一般に用いられる多段向流抽出の概要を示したものである。通常、抽出工程は、回収率を高めるために多段化する。
【0029】
本図においては、抽出段が3段の構成となっている。図中右側から抽出剤(有機相)を流し、図中左側からMA・FP溶液(水相)を流す。そして、有機相と水相とが接触し、水相に含まれていたMAが有機相に移動し、回収MA溶液として回収される。一方、分配比が相対的に低いFPは、水相に残りやすく、廃液となる。
【0030】
図5は、抽出工程を多段化した場合におけるFPの濃縮倍率について示したものである。縦軸にMAの回収率、すなわちMA・FP溶液に含まれるMAのうち回収MA溶液に回収されたMAの比率をとり、横軸にFP濃縮倍率をとっている。FP濃縮倍率は、MA・FP溶液の初期FP濃度に対する平衡状態の有機相における最大FP濃度の割合を倍率で示したものである。なお、ここではFPはランタノイドとして評価している。初期のMA濃度およびFP濃度はともに20mMと想定して評価した。
【0031】
本図においては、抽出剤濃度が50mMの場合の評価結果を●印で示している。△印は、後述の抽出剤濃度10mMの場合の評価結果を示している。
【0032】
本図から、●印で示す50mMの場合、多段化することでMAの回収率は向上する一方、FPの濃縮倍率も上昇することがわかる。FPの濃縮倍率は、2段目で約2倍、3段目で約3.5倍となっている。抽出プロセスにおいて濃縮によりFP濃度が上昇することは、FPを含む沈殿の生成や、MAへのFPの混入量の増加の観点から好ましくない。
【0033】
以下、本発明の実施形態の概要について説明する。
【0034】
図3に示すように、MA濃度が高い場合は、MAの回収率を高くする観点からは、抽出剤濃度を50mM程度と高く設定することが望ましい。
【0035】
一方、
図3に示すとおり、抽出剤濃度が10mMの場合は、D
Amは10、D
Euは1であり、1回のバッチ抽出当たりのAm及びEuの回収率はそれぞれ、90%、10%である。このように、溶媒抽出における分配比の値は、抽出剤濃度とともに変化する。
【0036】
抽出剤濃度が10mMの場合、DEuは1であり、FPの濃縮の問題は生じない。
【0037】
しかし、抽出剤濃度が10mMの場合、MAの回収率は、抽出剤濃度が50mMの場合に比べて低くなる。BTBPは、Amと2:1で錯体を形成すると報告されている。このため、抽出剤濃度が10mMの場合、抽出時の有機相と水相の体積比を標準的な1:1の条件にする場合は、最大で5mMのMAしか回収することができない。
【0038】
このように、抽出剤濃度を低下させると、選択的にMAを回収できる抽出条件が見出せる一方、適用可能なMA濃度の範囲が狭まる。
【0039】
本発明者は、この観点に基づき、抽出剤濃度が異なる2つの抽出工程を用いたMAの回収方法を案出した。
【0040】
具体的には、MAおよびFPを含む溶液に対して、まず、抽出剤濃度が相対的に高い第一抽出工程(最初の抽出工程)においてMAを荒取りし、次いで、第一抽出工程から排出されるMA濃度の低下した溶液に対して抽出剤濃度が相対的に低い第二抽出工程(後段の抽出工程)でMAを更に回収する。第一抽出工程では、抽出されやすいMAが主に抽出され、有機相がMAで飽和するため、FPは抽出されにくくなる。第二抽出工程では、抽出剤濃度が低いため、そもそもFPが抽出されにくい。ただし、MAの回収率の観点から、MAの分配比は、FPの分配比の5倍以上であることが望ましい。
【0041】
図5の△印は、第一抽出工程でMAを荒取りし、第二抽出工程を多段化する場合を示している。FPの濃縮倍率は、第二抽出工程1段で約1.1倍、第二抽出工程2段で約1.2倍となっている。このような方法により、MAの回収率を向上しつつ、従来に比べてFPの濃縮倍率を低く抑えることができる。
【0042】
上記の例は、抽出剤濃度の異なる2つの抽出工程を用いる場合を示したものである。さらに、抽出剤濃度の異なる3つ以上の抽出工程を用いてもよい。上述のように、抽出工程ごとに抽出段を多段化してもよい。
【0043】
まとめると、望ましい実施形態は、次のようになる。
【0044】
最初の抽出工程におけるマイナーアクチノイドの分配比は、後段の抽出工程におけるマイナーアクチノイドの分配比よりも高いことが望ましい。
【0045】
後段の抽出工程における核分裂生成物の分配比は、最初の抽出工程における核分裂生成物の分配比よりも低いことが望ましい。
【0046】
最初の抽出工程におけるマイナーアクチノイドの分配比は、後段の抽出工程におけるマイナーアクチノイドの分配比よりも高いことが望ましい。
【0047】
最初の抽出工程及び後段の抽出工程におけるマイナーアクチノイドの分配比は、1以上であることが望ましい。
【0048】
後段の抽出工程における核分裂生成物の分配比は、1以下であることが望ましい。
【0049】
マイナーアクチノイドの分配比は、マイナーアクチノイドの回収率の観点から、核分裂生成物の分配比の5倍以上であることが望ましい。
【0050】
最初の抽出工程及び後段の抽出工程で用いる抽出剤が同種の錯化剤を含む場合、この錯化剤の濃度は、最初の抽出工程の方が後段の抽出工程よりも高いことが望ましい。
【0051】
最初の抽出工程及び後段の抽出工程で用いる抽出剤が同種の錯化剤を含む場合、最初の抽出工程で用いる抽出剤の錯化剤の濃度は、マイナーアクチノイド及び核分裂生成物を含む溶液のマイナーアクチノイドの濃度の2倍以上であり、後段の抽出工程で用いる抽出剤の錯化剤の濃度は、最初の抽出工程で得られる水相を構成する水溶液に含まれるマイナーアクチノイドの濃度の2倍以上であることが望ましい。
【0052】
図1は、一実施形態のマイナーアクチノイドの分離方法を示すフローチャートである。
【0053】
本図に示すように、本実施形態のマイナーアクチノイドの分離方法は、溶解工程S101、U・Pu回収工程S102、第一MA回収工程S103及び第二MA回収工程S104を含むものである。なお、第一MA回収工程S103は「最初の抽出工程」、第二MA回収工程S104は「後段の抽出工程」ともいう。後段の抽出工程は、複数の抽出工程を含むものであってもよい。
【0054】
原子力発電所から排出された使用済燃料10は、被覆管の中に収納されているため、せん断および脱被覆がなされる。本発明では、このようにして被覆材と分けられた使用済燃料10を回収し、溶解工程S101において数mol/Lの濃度の硝酸に溶解させる。
【0055】
次に、U・Pu回収工程S102では、この硝酸溶液からピューレックス法によりU及びPuが回収される。この結果、MAおよびFPを溶解したMA・FP溶液11が残液として残る。
【0056】
第一MA回収工程S103では、このMA・FP溶液11から第一抽出剤12および第一洗浄液13を用いて溶媒抽出法で選択的にMAを荒取りする。これにより、第一MA回収工程S103においては、MAの抽出液である第一回収MA溶液14が回収される。
【0057】
一方、MAが荒取りされたMA・FP残液15は、第二MA回収工程S104に送られる。第二MA回収工程S104では、このMA・FP残液15から第二抽出剤16および第二洗浄液17を用いて溶媒抽出法で選択的にMAを回収する。これにより、第二MA回収工程S104においては、MAの抽出液である第二回収MA溶液18が回収され、MAが除かれた廃液19が排出される。廃液19にはFPが含まれるため、例えばガラス固化体にされて処分される。
【0058】
次に、第一MA回収工程S103及び第二MA回収工程S104に対応する2つの抽出段について説明する。
【0059】
図2は、本実施形態の多段向流抽出方式の抽出装置を示したものである。
【0060】
本図に示すように、抽出装置は、第一抽出剤12を用いる第一抽出段5及び第一洗浄段6、並びに第二抽出剤16を用いる第二抽出段7及び第二洗浄段8で構成されている。
【0061】
本図においては、第一抽出段5の左から第一抽出剤12を、第一抽出段5の右からMA・FP溶液11を、第一洗浄段6の右から第一洗浄液13を供給する。これにより、有機相と水相とが互いに逆方向に流通していく。
【0062】
MA・FP溶液11に含まれるMAの大半は、第一抽出段5において有機相に移行し、第一洗浄段6で第一洗浄液13と接触しながら通過して、第一回収MA溶液14として第一洗浄段6から排出される。MA・FP溶液11に含まれるMA以外の不純物元素は、第一抽出段5では有機相にほとんど移行しない。MA以外の不純物元素は、水相にわずかに残存するMAとともにMA・FP残液15として第一抽出段5から排出される。
【0063】
そして、MA・FP残液15は、第二抽出段7に送られ、第一抽出段5と同様に処理される。すなわち、MA・FP残液15に含まれるMAは、第二抽出段7において有機相に移行し、第二洗浄段8で第二洗浄液17と接触しながら通過して、第二回収MA溶液18として第二洗浄段8から排出される。MA・FP残液15に含まれるMA以外の不純物元素は、第二抽出段7では有機相にほとんど移行しない。MA以外の不純物元素は、水相にわずかに残存するMAとともに廃液19として第二抽出段7から排出される。
【0064】
本実施形態においては、第一抽出剤12の濃度は、第二抽出剤16の濃度よりも高くする。
【0065】
具体的には、第一抽出段5で用いる第一抽出剤12の濃度は、モル基準(以下同じ。)で、マイナーアクチノイド及び核分裂生成物を含む水溶液(MA・FP溶液11)のマイナーアクチノイド濃度の2倍以上の濃度であり、第二抽出段7で用いる第二抽出剤16の濃度は、第一抽出段5から排出されるマイナーアクチノイド及び核分裂生成物を含む水溶液(MA・FP残液15)のマイナーアクチノイド濃度の2倍以上の濃度とする。例えば、MA・FP溶液11中のMA濃度が20mMの場合は、第一抽出剤12の濃度を50mM、第二抽出剤16の濃度を10mMとすることが望ましい。
【0066】
図5の△印は、
図1の第一MA回収工程S103の抽出段を1段とし、第二MA回収工程S104の抽出段を1段若しくは2段とした場合を示している。ここで、第二MA回収工程S104の抽出段の2段目は、1段目から排出された水相について再度第二MA回収工程S104と同様の処理をするものである。
【0067】
●印の場合と比較すると、△印の場合、有機相におけるFP濃縮倍率の増加を抑制しつつ、MAの回収率を向上することができることがわかる。
【0068】
なお、第一抽出剤12及び第二抽出剤16は、有機溶媒に錯化剤を溶解させた溶液である。有機溶媒としては、オクタノール、ドデカン、シクロヘキサノン、リン酸トリブチル、及びこれらの有機溶媒を1種以上含む混合溶液が使用できる。錯化剤としては、窒素を配位子とする錯化剤を使用する。具体的には、ピリジンもしくはフェナントロリン等を構造中に含む錯化剤であり、上述のBTBPや、2,9-bis(5,5,8,8-tetramethyl-5,6,7,8-tetrahydro-benzo-1,2,4-triazin-3-yl)-1,10-phenanthroline、4-tert-butyl-6,6’-bis(5,5,8,8-tetramethyl-5,6,7,8-tetrahydro-benzo-1,2,4-triazin-3-yl)-2,2’-bipyridine、2,9-bis(5,5,8,8-tetramethyl-5,6,7,8-tetrahydro-benzo-1,2,4-triazin-3-yl)-5-tert-butyl-1,10-phenanthrolineなどが望ましい。
【0069】
第一洗浄液13及び第二洗浄液17は、低濃度の硝酸である。
【0070】
本発明によれば、抽出剤濃度が相対的に高い第一抽出工程においてMAを荒取りし、次いで第一抽出工程から排出されるMA濃度の低下した溶液に対して抽出剤濃度が相対的に低い第二抽出工程でMAを更に回収することで、抽出プロセス中のFPの濃縮を抑制しつつ、かつ高い回収率で、MA及びFPを含む溶液からMAを回収することができる。
【符号の説明】
【0071】
S101:溶解工程、S102:U・Pu回収工程、S103:第一MA回収工程、S104:第二MA回収工程、5:第一抽出段、6:第一洗浄段、7:第二抽出段、8:第二洗浄段、10:使用済燃料、11:MA・FP溶液、12:第一抽出剤、13:第一洗浄液、14:第一回収MA溶液、15:MA・FP残液、16:第二抽出剤、17:第二洗浄液、18:第二回収MA溶液、19:廃液。