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  • 特許-熱変色性筆記具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 3/00 20060101AFI20220721BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
B43K3/00 K
B43K29/02 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018225887
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020082702
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】柳原 集
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-23272(JP,A)
【文献】特開2007-144991(JP,A)
【文献】実開平4-86776(JP,U)
【文献】特開2000-85291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00- 8/24
B43K 29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変色性インキの筆跡を摩擦してその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な熱変色性筆記具であって、
端部に開口を備えた軸体と、筒状で前記軸体の開口に挿着される冠体と、前記冠体に挿着される摩擦体とを備え、
前記冠体の側壁に、前記軸体への挿着時において該軸体の内面に形成された突部を乗り越えて該突部に係止される複数の突起が形成され、該突起の間に前記軸体の軸心に沿った方向へ延びる複数の窓部が設けられ、
前記冠体の内端に止め栓が挿着され、且つ該冠体の外端に摩擦体が挿着されることにより、該冠体の側壁が当該冠体の中心方向へ向かって撓むことが防止されることを特徴とした熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記窓部が長孔状であり、前記止め栓の外面が前記長孔状の窓部の内端側における半円の最大径部より内側で前記冠体の内面に接し、
前記摩擦体の外面が前記長孔状の窓部の外端側における半円の最大径部より内側で前記冠体の内面に接することを特徴とした請求項1に記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性インキの筆跡を摩擦してその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱変色性筆記具は、例えば、特許文献1(特開2003-206432号公報
)に記載されているように、筆記具を構成する軸筒本体あるいはキャップ本体など軸体の端部に摩擦体を装着して利便性を向上させたものが多く存在している。
前記熱変色性筆記具の摩擦体は、弾性材料(ゴム、エラストマー)で構成され、紙面に押し付けながら往復動をさせることから、軸体の後端にしっかりと固定させる必要がある。また、軸筒本体の後端に尾冠を配したものや、キャップ本体の前端に頭冠を配したものなど、軸体に装着した冠体に摩擦体を固定する場合には、その冠体に対して摩擦体をしっかり固定させると共に、軸体に対して冠体をしっかり固定させる必要がある。
【0003】
軸体に対して冠体を固定する方法としては、一般的に、螺合や嵌合あるいは接着等により固定が行われている。軸体に対して冠体を嵌合で固定する構造は、容易な組み立てが可能であることから、広く利用されているが、その反面、嵌合させる部材間の嵌合状態によっては、嵌合力が弱まったり、部材間にガタつきが生じてしまうことから、予め嵌合時における部材間のラップ代を大きくとることで嵌合力を強くし、その対応を図ることが多い。しかしながら、単に嵌合力を強くするために嵌合部分のラップ代を大きくした場合には、組み立てがし難くなるという、嵌合による組み立てのメリットを消してしまうことになり、また、軸体や冠体を、金属や硬質樹脂で形成した場合には、嵌合時において部材の変形がし難くなることから、組立性が悪くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-206432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、軸体の端部に冠体が取り付けられ、その冠体に対して摩擦体が取り付けられる熱変色性筆記具において、組み立てが容易であり、冠体が脱落し難い構造の熱変色性筆記具を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
「1.熱変色性インキの筆跡を摩擦してその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な熱変色性筆記具であって、
端部に開口を備えた軸体と、筒状で前記軸体の開口に挿着される冠体と、前記冠体に挿着される摩擦体とを備え、
前記冠体の側壁に、前記軸体への挿着時において該軸体の内面に形成された突部を乗り越えて該突部に係止される複数の突起が形成され、該突起の間に前記軸体の軸心に沿った方向へ延びる複数の窓部が設けられ、
前記冠体の内端に止め栓が挿着され、且つ該冠体の外端に摩擦体が挿着されることにより、該冠体の側壁が当該冠体の中心方向へ向かって撓むことが防止されることを特徴とした熱変色性筆記具。
2.前記窓部が長孔状であり、前記止め栓の外面が前記長孔状の窓部の内端側における半円の最大径部より内側で前記冠体の内面に接し、
前記摩擦体の外面が前記長孔状の窓部の外端側における半円の最大径部より内側で前記冠体の内面に接することを特徴とした前記1項に記載の熱変色性筆記具。」である。
【0007】
本発明では、軸体が軸筒本体の場合には、ペン先がある方(前方)を内側と表現し、その反対側を外側と表現する。つまり尾冠がある方向が外側となる。
また、軸体がキャップの場合には、軸筒本体のペン先を挿着する開口がある方(後方)を内側と表現し、その反対側を外側と表現する。つまり頭冠がある方向が外側となる。
本発明によれば、組立時において、軸筒本体あるいはキャップ本体などの軸体に対し、尾冠あるいは頭冠などの冠体を挿着する際、冠体に形成された軸心に沿った方向へ延びる複数の窓部の存在により側壁が撓み易くなり、結果、側壁に設けた複数の突起が軸体の内面に形成された突部を乗り越える際に、冠体の側壁が軸径方向における内方へ撓むことで軸体への挿着が行い易くなる。
【0008】
また、冠体の内端に止め栓を挿着し、冠体の外端に摩擦体を挿着することにより、冠体の側壁が内方へ撓むことが防止され、軸体に対して冠体がしっかりと固定された状態となる。したがって、熱変色性筆記具が組み立てられた状態で、摩擦体で摩擦を行う際に、冠体が脱落してしまうことが防止される。
尚、冠体の端部のいずれか一方だけに止め栓あるいは摩擦体を挿着しただけでは、冠体の側壁が該冠体の中心方向へ向かって撓むことができるようにした場合には、軸体の奥の方に位置される冠体の内端に止め栓を挿着した状態で該冠体を軸体に挿着し、その後で軸体に挿着された冠体に摩擦体を挿着することにより、組み立てがし易いものとなる。
【0009】
軸体の材質は、真鍮、アルミ、ポリカーボネート樹脂、PMMA樹脂(ポリメタクリル酸メチル)、アクリロニトリルスチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、ポロプロピレン樹脂など、筆記具の軸筒本体やキャップ本体で、従来より使用されている材質が挙げられるが、特に制限されるものではない。
冠体及び止め栓の材質も前述の軸体同様の材質を使用できる。
冠体の側壁に形成する窓部は、長孔状や楕円状など、軸心に沿った方向へ孔が延びる形状とすることで、複数の窓部の間に形成される側壁が冠体の中心方向に向かって撓み易いものとなる。
摩擦体の材質は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)など、低摩耗性の弾性材料で成形することが好適である。
摩擦体の硬度は、ショアA硬度40以上、100以下とすることが好ましく、冠体への挿着のし易さや、冠体に挿着した状態で該冠体の側壁が当該冠体の中心方向へ向かって撓むことがより防止されるよう、ショアA硬度60以上、80以下とすることがより好ましい。尚、摩擦体の肉厚は、冠体に挿着した状態で、該冠体の側壁が当該冠体の中心方向へ向かって撓むことが防止できる厚みとする。
【0010】
さらに、冠体の側壁の窓部を長孔状とし、止め栓の外面が長孔状の窓部の内端側における半円の最大外径部より内側で冠体の内面に接するようにし、摩擦体の外面が長孔状の貫通孔の外端側における半円の最大外径部より内側で冠体の内面に接する構成とすることにより、止め栓が冠体の側壁における窓部に重なる面積が少ない、つまり複数の窓部間の側壁を中から支持する面積が小さい状態になることから、冠体の内端に止め栓が挿着された状態において側壁が当該冠体の中心方向へ向かって撓む変形が制限され難くなり、軸体への冠体の挿着が行い易く、摩擦体が冠体の側壁における貫通孔に重なる面積が多い、つまり複数の窓部間の側壁を中から支持する面積が大きい状態になることから、冠体の外端部に摩擦体が挿着された状態において側壁が当該冠体の中心方向へ向かって撓む変形が制限され、軸体から冠体が脱落し難くなる。
【0011】
本発明の熱変色性筆記具によれば、軸体に挿着された冠体の内端に挿着された止め栓に対し、軸体に収容したボールペンレフィルなどの筆記体を当接させた場合でも、筆圧による反力で冠体が脱落することはなく、摩擦体で摩擦を行う場合でも摩擦体が冠体ごと脱落してしまうことが防止される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、軸体の端部に冠体が取り付けられ、その冠体に対して摩擦体が取り付けられる熱変色性筆記具において、組み立てが容易であり、冠体が脱落し難い構造の熱変色性筆記具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の熱変色性ボールペンの縦断面図である。
図2図1の筆記具の要部を拡大した要部拡大縦断面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】本実施形態の熱変色性ボールペンの組立工程を示す図であり、図4Aは、組立前の状態を示す図で、図4Bは、尾冠に止め栓を挿着した状態の図で、図4Cは、軸筒に尾冠を挿着した状態の図で、図4Dは、尾冠に摩擦体を挿着した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照しながら説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるもので
はない。本実施形態では、軸筒内にボールペンレフィルを収容した熱変色性ボールペンについて説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図の説明においては、ペン先がある方(前方)を内側と表現し、その反対側(後方)を外側と表現する。また、説明を分かりやすくするために、図面中の同様の部材、同様の部分については同じ符号を付してある。
【0015】
図1は、本実施形態の熱変色性ボールペンの縦断面図である。図2は、図1の筆記具の要部を拡大した要部拡大縦断面図である。図3は、図2のA-A線断面図である。図4は、本実施形態の熱変色性ボールペンの組立工程を示す図である。
【0016】
図1に示す熱変色性ボールペン1は、軸筒2の内部にボールペンレフィル3を収容しており、軸筒2の前端開口2aよりボールペンレフィル3のペン先3aを突出させている。軸筒2は、前軸21と後軸22とを螺合して構成してある。
軸筒2の後端開口2bには、筒状で両端が開口する尾冠4が挿着され、尾冠4に形成された貫通孔40の外端40aには筒状で両端が開口する摩擦体5が挿着され、内端40bには止め栓6が挿着されている。
本実施形態の尾冠4はABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)で成形され、摩擦体5はSEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)で成形され、止め栓6はポリエチレン樹脂で成形されている。摩擦体5の硬度はショアA硬度70である。
【0017】
尾冠4は、軸筒2の後端開口2bに挿着される小径の挿着部4aと当該軸筒2から露出する大径の鍔部4bとを備える。摩擦体5は、尾冠4の貫通孔40に挿着される小径の挿着部5aと当該尾冠4から露出する大径の鍔部5bとを備える。止め栓6は、尾冠4の貫通孔40に挿着される小径の挿着部6aと当該尾冠4から露出する大径の露出部6bとを備える。
尾冠4の挿着部4aにおける側壁41には、軸心に沿った方向に延びる二つの長孔状の窓部41aが互いに対向する位置に設けられている。また側壁41には、二つの突部41bが互いに対向する位置に設けられている。二つの突部41bは、軸筒2の後端開口2bの内面に形成された内鍔状の突部2cに係合され、尾冠4が軸筒2に固定される。
摩擦体5の前方には、円環状の凹部5cが設けられており、尾冠4の貫通孔40の内面に形成された内段4cと嵌合され、摩擦体5は尾冠4に固定される。また、摩擦体5には、貫通孔5dが設けられている。
【0018】
次に、図4を用いて、熱変色性ボールペン1の組立について説明を行う。
図4Aは、組立前の状態を示す図であり、図に示す通り、側壁41に設けた二つの長孔状の窓部41aの存在により、側壁41が内方に撓み易くなっている。
図4Bは、尾冠4に止め栓6を挿着した状態の図であり、挿着部6aが尾冠4に挿着され、挿着部6aの外端の一部が尾冠4の窓部41aより露出している。この状態でも尾冠4は、貫通孔40の外端40a側が開放されており、また、止め栓6の外面が長孔状の窓部41aの内端側における半円の最大径部411aより内側で尾冠4の内面に接することで、当該窓部41aと重なる面積が少ない、つまり複数の窓部41a間の側壁41を中から支持する面積が小さい状態になることから、尾冠4の側壁41が該尾冠4の中心方向へ向かって撓む変形が制限され難くなり、軸筒2に尾冠4を挿着する際に、側壁41に設けた突部41bが軸筒2の突部2cを乗り越え易いものとなる。
図4Cは、軸筒2に尾冠4を挿着した状態の図である。この状態では、前述の通り、尾冠4の側壁41が該尾冠4の中心方向へ向かって撓む変形が制限され難くなっている。
図4Dは、尾冠4に摩擦体5を挿着した状態の図であり、挿着部5aが尾冠4に挿着され、挿着部5aの内端の一部が尾冠4の窓部41aより露出している。この状態で尾冠4は、貫通孔40の両端が閉塞されており、また、摩擦体5の外面が長孔状の窓部41aの半円の外端側における最大径部412aより内側で冠体4の内面に接することで該窓部41aと重なる面積が多い、つまり複数の窓部41a間の側壁41を中から支持する面積が大きい状態になることから、尾冠4の外端部に摩擦体5が挿着された状態における側壁41が該尾冠4の中心方向へ向かって撓む変形が制限され、軸体2から尾冠4が脱落し難くなる。
尚、図2に示すように、尾冠4の貫通孔40の内面に形成された内段4cには、外端側から内端側へ向かって中心方向に漸次縮径する傾斜面4dが形成されており、摩擦体5の挿着がし易くなる。また、内段4cの内端には鋭角な角部4eが設けられており、尾冠4に挿着した状態では角部4eが摩擦体5の凹部5cに食い込み摩擦体5が外れ難くなる。
【0019】
本実施形態の熱変色性ボールペン1は、図1及び図2に示すように、ボールペンレフィル3がコイルスプリング7で後方へ弾発され、ボールペンレフィル3の後端部3bが止め栓6に当接されるが、尾冠4が軸筒2から脱落することはなく、筆記時においてペン先3aに筆圧が掛かり、ボールペンレフィル3が後方へ付勢された状態でも、摩擦体5の挿着部5aが尾冠4の側壁41を中から支持していることから、当該側壁41が尾冠4の中心方向へ向かって撓むことがなく、尾冠4の突部41bと軸筒2の内鍔2cとの係合状態が維持され、軸体2から冠体4が脱落することが防止される。
【0020】
また、本実施形態の熱変色性ボールペン1は、筆記した熱変色性インキの筆跡を摩擦体5で摩擦する際、紙面に対して摩擦体5を押し付けながら往復動させた場合でも、前述の通り摩擦体5が尾冠4から脱落し難く、尾冠4も軸筒2から脱落し難い構造である。
【符号の説明】
【0021】
1…熱変色性ボールペン、
2…軸筒、2a…前端開口、2b…後端開口、2c…突部、
21…前軸、22…後軸、
3…ボールペンレフィル、3a…ペン先、3b…後端部、
4…尾冠、4a…挿着部、4b…鍔部、4c…内段、4d…傾斜面、4e…鋭角な角部、
40…貫通孔、40a…外端部、40b…内端部、
41…側壁、41a…窓部、411a…半円の最大径部、412a…半円の最大径部、
41b…突起、
5…摩擦体、5a…挿着部、5b…鍔部、5c…凹部、5d…貫通孔、
6…止め栓、6a…挿着部、6b…露出部、
7…コイルスプリング。
図1
図2
図3
図4