(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】マルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器及び離散波長可変レーザ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/14 20060101AFI20220721BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20220721BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20220721BHJP
H01S 5/062 20060101ALI20220721BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20220721BHJP
G02B 6/124 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/022
H01S5/0239
H01S5/062
G02B6/12 301
G02B6/12 361
G02B6/124
(21)【出願番号】P 2018522135
(86)(22)【出願日】2016-10-28
(86)【国際出願番号】 GB2016053350
(87)【国際公開番号】W WO2017072522
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-03
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517112498
【氏名又は名称】ロックリー フォトニクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Rockley Photonics Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】特許業務法人藤央特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツィルキー アーロン
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0039420(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300953(US,A1)
【文献】国際公開第2014/115330(WO,A1)
【文献】特表2004-537863(JP,A)
【文献】特開2009-043840(JP,A)
【文献】特開平07-263817(JP,A)
【文献】米国特許第05838714(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
G02B 6/12 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)であって、
導波路に沿って配置された複数のデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(DS-DBR)格子部
と、複数の共通負電極を備え、
前記各DS-DBR格子部は、所定のスペクトル領域にわたって光を透過又は反射するように構成され、前記所定のスペクトル領域は、他のDS-DBR格子部のスペクトル領域とは異なっており、
前記各DS-DBR格子部は、複数の格子サブ領域を含み、各格子サブ領域は、DS-DBR格子部のスペクトル領域内のスペクトルサブバンドに対応しており、
前記各格子サブ領域は、正の電気接点と負の電気接点とを含み、
前記正及び負の電気接点間に電気的バイアスが印加されると、前記各格子サブ領域は、スペクトルサブバンドの光
を透過又は反射するように構成されて
おり、
前記複数の共通負電極の各々は、選択が望まれるDS-DBR格子部に対応する共通負電極に負のバイアスを印加することによってMSDS-DBRの大まかな選択を達成するように、かつ、選択が望まれる格子サブ領域へ電気的に接続される共通の正の電極に正のバイアスを印加することによって、MSDS-DBRの精密な選択を達成するように、複数のDS-DBR格子部の各々一つの中の格子サブ領域の全てに負のバイアスを印加するように構成されることを特徴とするマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項2】
前記複数のDS-DBR格子部の2以上の間で共有される共通電極構造を備え、
前記共通電極構造は、共通電極を含み、
前記共通電極は、2以上のDS-DBR格子部上の電気接点に接続され、前記2以上のDS-DBR格子部のそれぞれの格子サブ領域のそれぞれに電気的バイアスを同時に印加可能であることを特徴とする請求項1に記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項3】
前記共通電極構造は、各DS-DBR格子部上の格子サブ領域の数に対応する数の共通電極を含み、
前記共通電極の各々は、各DS-DBR格子部上のそれぞれの電気接点に接続され、
各DS-DBR格子部のそれぞれの格子サブ領域に電気的バイアスを同時に提供するように、
前記共通電極のいずれか一つに印加される電気的バイアスは、DS-DBR格子部のそれぞれの格子サブ領域に、そのスペクトルサブバンドの光を透過又は反射させることを特徴とする請求項2に記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項4】
前記共通電極は正電極であることを特徴とする請求項2に記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項5】
一つの共通負電極が、全てのDS-DBR格子部の各格子サブ領域に接続するように配置されていることを特徴とする請求項4に記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項6】
半導体光増幅器(SOA)と、
請求項1に記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)とを有することを特徴とする離散波長可変レーザ。
【請求項7】
前記DS-DBR格子部の各々が透過型DS-DBRであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項8】
前記DS-DBR格子部の各々が反射型DS-DBRであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項9】
前記DS-DBR格子部の各々が四つの格子サブ領域を備える請求項7又は8に記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項10】
四つのDS-DBR格子部を備える請求項7又は8に記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項11】
前記各格子サブ領域はPINダイオード接合を含み、
各スペクトルサブバンドの透過率又は反射率を制御するためにPIN接合部に電気的バイアスを印加するために、前記正の電気接点及び前記負の電気接点は、前記PINダイオード接合のp型及びn型ドープ領域の各々に位置していることを特徴とする請求項1から5又は7から10のいずれか一つに記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項12】
前記PINダイオード接合が水平PIN接合であることを特徴とする請求項11に記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【請求項13】
半導体光増幅器(SOA)と、
マルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)と、
複数であるP個のスペクトル通過帯域を有する粗スペクトルフィルタとを備え、
前記粗スペクトルフィルタのP個のスペクトル通過帯域のそれぞれは、MSDS-DBRのDS-DBR格子部の一つのスペクトル領域に対応し、
前記マルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器は、
導波路に沿って配置された複数のデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(DS-DBR)格子部を有し、
前記各DS-DBR格子部は、所定のスペクトル領域にわたって光を透過又は反射するように構成され、前記所定のスペクトル領域は、他のDS-DBR格子部のスペクトル領域とは異なっており、
前記各DS-DBR格子部は、複数の格子サブ領域を含み、各格子サブ領域は、DS-DBR格子部のスペクトル領域内のスペクトルサブバンドに対応しており、
前記各格子サブ領域は、正の電気接点と負の電気接点とを含み、
前記正及び負の電気接点間に電気的バイアスが印加されると、前記各格子サブ領域は、スペクトルサブバンドの光を透過又は反射するように構成されることを特徴とする離散波長可変レーザ。
【請求項14】
前記MSDS-DBRは、前記複数のDS-DBR格子部の2以上の間で共有される共通電極構造を備え、
前記共通電極構造は、複数の共通電極を含み、
前記複数の共通電極の数は、各DS-DBR格子部上の格子サブ領域の数に対応し、
前記各共通電極は、各DS-DBR格子部上の電気接点のそれぞれに接続されると共に、各DS-DBR格子部の格子サブ領域の一つに電気的バイアスをそれぞれ与え、
前記共通電極のいずれか一つに印加された電気的バイアスは、各DS-DBR格子部内の格子サブ領域のそれぞれにおいてスペクトルサブバンドの光を透過又は反射させることを特徴とする請求項13に記載の離散波長可変レーザ。
【請求項15】
前記半導体光増幅器(SOA)は、反射半導体光増幅器(RSOA)であることを特徴とする請求項13又は14に記載の離散波長可変レーザ。
【請求項16】
前記導波路がシリコンフォトニックス導波路であることを特徴とする請求項13から15のいずれか一つに記載の離散波長可変レーザ。
【請求項17】
前記粗スペクトルフィルタは、透過型DS-DBR(TDS-DBR)であり、
前記透過型DS-DBRは、複数の透過帯域を有し、
前記各透過帯域は、MSDS-DBRのDS-DBR格子部のそれぞれのスペクトル領域であることを特徴とする請求項13から16のいずれか一つに記載の離散波長可変レーザ。
【請求項18】
前記導波路は、シリコンフォトニックス導波路であることを特徴と請求項1から5又は7から10のいずれか一つに記載のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分布ブラッグ反射器(DBR)に関し、特に、マルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)及びMSDS-DBRを含む離散波長可変レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
連続的に同調可能なレーザは十分に確立されており、電気通信の用途においては一般的である。通信用レーザは固定グリッド(例えば、ITUグリッド)に対して動作するが、可変レーザは様々な用途に合わせて設定することができ、波長調整可能性は、レーザの経年変化による波長ドリフトの補正を可能にする点で望ましい。残念なことに、完全な範囲で連続的な同調可能とするために、特にデジタル・アナログ変換(DAC)チップが必要であることから、高価で電力を消費する電子回路をもたらす。
【0003】
利得媒体に格子が組み込まれた分布帰還型(DFB)レーザは、特に可変性が必要とされる場合には、分布ブラッグ反射器(DBR)レーザに置き換えられている。広範囲で同調可能とするために、複数の導波路回折格子が周期的なブランク領域と連続的に接続され、これらの回折格子はくし型回折格子として知られているサンプリングされた回折格子(SG)DBRレーザが典型的に使用される。こうして、必要な発振波長に同調できる反射率ピークが生成される。
【0004】
同調可能レーザの別の設計では、デジタルスーパーモードDBR(DS-DBR)を利用できる。DS-DBRの設計は、DACが不要な点でSG-DBRより優れている。しかし、全てが半導体チップ上に作られた従来の同調可能レーザは、制御用のDACと共に格子を含むことができる。従って、DS-DBR設計原理に基づくが、より安価で消費電力が低い制御エレクトロニクス、特にDACを必要としない同調可能レーザが必要とされている。
【0005】
例えば、チップのヒータに電極を組み込むことによって、格子を熱的に調整できる。しかし、動作速度のために、例えばpin又はpnダイオード接合にバイアスを加えることによって、電流注入による調整を使用できる。
【0006】
従来技術のIII-V半導体材料システムにおける可変レーザの格子は、共通の接地又は負電極を有する垂直pinダイオード接合を有するとよい。これらのレーザでは、DS-DBRのような複数の格子サブ領域は、別々の駆動接点を必要とするが、共通の接地を共有しなければならない。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明は、第1の態様によれば、導波路に沿って設けられた、複数であるP個のデジタルスーパーモードブラッグ分布反射器(DS-DBR)の格子部を備えるマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)であって、各DS-DBR格子部は、他のDS-DBR格子部のスペクトル領域と異なる所定のスペクトル領域において光を透過又は反射するように構成され、各DS-DBR格子部は、DS-DBRのスペクトル領域内のスペクトルサブバンドに対応する複数であるM個の格子サブ領域を含み、各格子サブ領域は、正の電気接点と負の電気接点とを含み、前記格子サブ領域は、正の電気接点と負の電気接点との間に電気的バイアスが供給されたときに、スペクトルサブバンドの光を透過又は反射するように構成される。ここで、「複数であるP」は、P個の要素を意味し、Pは正の整数である。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、各DS-DBR格子部は、ダイオード領域のような光電子領域を含む。例えば、各DS-DBRサブ領域がpinダイオード接合を含む場合、DS-DBRサブ領域の電気的接続は、pin接合に電気的バイアスを供給し、光電子特性、すなわちM個のスペクトルサブバンドの各々の透過率または反射率を制御するための仕組みを提供する。
【0009】
pinダイオード接合は水平pin接合でもよい。接合部は水平だと考えられ、導波路の一方の側壁の(及び/又は、その中に延在する)第1のドープ領域と、導波路の他方の側壁の(及び/又は、その中に延在する)第2のドープ領域によって形成される。それゆえ、全て又は少なくとも大部分の半導体接合のドープ領域は、水平面に沿っている。
【0010】
水平接合は、多重接合領域の駆動及び接続、駆動スキームの複雑さ、接続の容易さ、大きさ及び形状に関して、導波路の上又は下ではなく、導波路のいずれかの側のドープ領域の位置で、より大きな自由度を生じさせるので、設計及び製造の両方の柔軟性を高めることができる。本発明に特に関連して、正及び負の電極の両方が複数の接点に分かれ、駆動回路を簡素化し、格子の数を減らし、より短いレーザキャビティを可能にする水平pinダイオード接合を提供できる。これは、垂直設計レーザの正の接点のみが複数のセクションに分かれるので、共通のグランドを共有する典型的な垂直pinレーザでは不可能であろう。
【0011】
いくつかの実施形態では、マルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器は、MSDS-DBRの2以上の複数のDS-DBR格子部の間で共有される共通電極構造を含む。共通電極構造は、2以上のDS-DBR格子部の電気接点に接続し、2以上のDS-DBR格子部の一つの格子サブ領域に電気的バイアスを同時に供給する。
【0012】
このように、共通電極からバイアスが印加されると、2以上のDS-DBR格子部の格子サブ領域のそれぞれに同時にバイアスが印加される。正の電気接点に接触する共通電極は、各DS-DBR格子部内の一つのサブ領域の電気接点にのみ接続するように配置されてもよい。しかし、このようなシステムでは、単一の共通電極が、負の電気接点の全てを共通の帰還として接続してもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、共通電極構造は、複数であるM個の共通電極を含み、M個の共通電極の各々は、DS-DBR格子部の各電気接点に接続して、各DS-DBR格子部のM個の格子サブ領域のそれぞれに同時に電気的バイアスを供給する。
【0014】
このように、M個の共通電極のうちの所定の一つにバイアスが印加されると、この電極は、複数であるP個のDSR格子部の中から対応するサブ領域を選択する。
【0015】
共通電極は、各DBR内の特定の格子サブ領域にバイアスを印加するように構成してもよい。例えば、第1の共通電極は、P個のDS-DBR格子部のそれぞれの第1の格子サブ領域(すなわち、導波路への入口に最も近い)にバイアスを印加するように構成してもよい。第2の共通電極は、複数であるP個のDSR格子部のそれぞれの第2の格子サブ領域(すなわち、導波路の入口に2番目に近い)にバイアスを印加するように構成してもよい。第3の共通電極は、複数であるP個のDSRのそれぞれの第3の格子サブ領域にバイアスを印加するように構成できる。複数であるP個のDSRの一つであるM番(すなわち、最後の)格子サブ領域にバイアスを印加するように構成されるM番の共通電極まで続いて同じパターンで接続されてもよい。
【0016】
各格子サブ領域は、二つの物理的な電気接点、例えば接触パッド、正の電極に接続するための正の接点(共有されても、されなくても)、及び負の電極に接続するための負の接点(共有されても、されなくても)からなる1対の電気接点を有する。
【0017】
格子部は、極性が交互になるように配置されてもよい。このように、各格子サブ領域は、二つの最も近い近傍の格子サブ領域と逆方向である。
【0018】
任意ではあるが、M個の共通電極の全てが正電極でもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、正の共通電極の数にかかわらず、単一の共通の負電極が、すべてのDS-DBRの各格子サブ領域の電気接点に接続してもよい。このように、正の電極のそれぞれに印加されるバイアスによって、所望の格子サブ領域を選択できる。
【0020】
他の実施形態では、マルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器は、複数であるP個の共通の負電極を含んでもよく、P個の共通の負電極の各々は、複数のP個のDS-DBRの中の所定の一つの格子サブ領域の全てに負のバイアスを印加するように構成される。このように、選択が望まれるDS-DBRに対応する共通の負電極に負のバイアスを印加することによって、MSDS-DBRを大まかに選択できる。そして、所望の格子サブ領域に電気的に接触する共通の正の電極に正のバイアスを供給することによって、MSDS-DBRを詳細に選択できる。
【0021】
任意ではあるが、各DS-DBRは、透過型DS-DBRでもよい。
【0022】
あるいは、各DS-DBRは、反射DS-DBRでもよい。
【0023】
M及びPは少なくとも2であり、実際の製造と電気的接触と駆動の制約によって制限される最大値を有する。任意ではあるが、MSDS-DBR内のDS-DBRの数であるPは4以上でもよい。各DS-DBR内の格子サブ領域の数であるMも、また4以上でもよい。P=4かつM=4である場合、MSDS-DBRは、(16個の格子サブ領域に対応する)16個の異なるスペクトルサブバンドの一つを選択するためのメカニズムを提供する。別の実施形態では、P及び/又はMは7以上でもよい。
【0024】
本発明の実施形態の第2の態様によれば、半導体光増幅器(SOA)と、第1の態様のマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)とを備える離散波長可変レーザが提供される。
【0025】
MSDS-DBRが複数の正の共通電極と、一つだけの負電極を含む場合、波長可変レーザは、複数であるP個のスペクトル通過帯域を有する粗スペクトルフィルタを備える。このように、粗スペクトルフィルタは、P個の異なるスペクトル通過帯域の一つの選択を可能にし、その各々はレーザのSOAの全帯域幅内に入る。多重セクションのデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)は、P個の通過帯域内のスペクトルサブ領域を選択するための微調整を行う。大まかな選択によって選択されたスペクトル領域と、細かい選択によって選択されたスペクトル領域とのスペクトルの重なりは、レーザのレーザ発振モードを提供する。したがって、本発明によって提供される波長可変レーザは、一次制御用のDACに依存しない点で有利である。
【0026】
任意ではあるが、粗スペクトルフィルタは、複数であるP個の透過帯域を有する透過DS-DBR(TDS-DBR)でもよく、P個の透過帯域の各々は、マルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)のDS-DBRの一つの所定のスペクトル領域にそれぞれ対応する。
【0027】
本発明の実施形態の第3の態様によれば、離散波長可変レーザが提供され、SOAと、SOAの利得帯域幅内でP個の異なるスペクトル通過帯域を通過させるように構成された粗スペクトル用の粗スペクトルフィルタと、実施形態の第1の態様又は第2の態様のいずれか一つによる微調整のためのマルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)を備え、粗スペクトルフィルタのP個の通過帯域の各々は、マルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)のDS-DBRのうちの一つの所定のスペクトル領域に対応する。
【0028】
任意ではあるが、粗スペクトルフィルタは、透過型DS-DBR(TDS-DBR)であり、TDS-DBRは、複数であるP個の透過帯域を有し、P個の透過帯域のそれぞれは、マルチセクションデジタルスーパーモード分散ブラッグ反射器(MSDS-DBR)のDS-DBRの一つの所定のスペクトル領域に対応する。
【0029】
このように、TDS-DBRは、SOAの利得帯域幅内にあるバイアス電流の印加時に、P個のスペクトル透過帯域のいずれか一つを透過させるように構成される。各DS-DBR格子部は、TDS-DBRのP個の通過帯域の透過帯域内のスペクトルのM個のサブ領域を透過又は反射するように構成される。
【0030】
MSDS-DBR格子内のP個のDS-DBR格子の各々における一つのスペクトルサブ領域Mの電気接点は、共通の制御電極に接続されてもよい。
【0031】
任意ではあるが、SOAは反射半導体光増幅器(RSOA)でもよい。このように、利得媒質の後端面は完全な反射面となる。レーザキャビティの出力は、RSOAに対するキャビティの反対側の端部に位置する。MSDS-DBRが透過性である場合、広帯域ミラーがレーザキャビティの出力ミラーを形成する。MSDS-DBRが反射性である場合、MSDS-DBR自体がレーザキャビティの出力ミラーを形成する。
【0032】
本発明の実施形態の第3の態様によれば、離散波長可変レーザが提供され、SOAと、各サブ領域がDS-DBRのスペクトル領域内のスペクトルサブバンドに対応するN個の格子サブ領域を有する単一の反射型DS-DBR格子とを備え、各格子サブ領域は正の電気接点と負の電気接点とを有し、単一の制御回路が、N個の格子サブ領域のそれぞれの正及び負の電気接点間に電気的バイアスを印加して、前記格子サブ領域の各々がそれぞれのスペクトルサブバンドで光を透過又は反射するかを制御する。
【0033】
1又は複数の接点に離散的な所定の電流を同時に加えることによって、ある固定のサブバンドの反射率を向上する。一つの実施形態では、単一のDS-DBRは、N=16セクション(すなわち、16個の格子サブ領域)を有する。また、一実施形態では、単一のDS-DBRは、N=49セクション(すなわち、49個の格子サブ領域)を有する。
【0034】
本明細書に開示された反射性MSDS-DBRのいずれも、SOAのスペクトル出力の不均一性を形成するように、反射率を調整できる。例えば、出力パワーが低いSOAの利得帯域幅の部分の波長に対応する格子サブ領域は、MSDS-DBR内の他の格子サブ領域に比べて反射率が高くなる。
【0035】
同様に、透過型MSDS-DBRの場合、SOAからの波長依存性利得変動を補償するために、格子サブ領域の相対透過率の値を変更してもよい。
【0036】
1又は複数のDS-DBRの各々は、好ましくは位相調整領域を含む位相調整可能な分散ブラッグ反射器でもよく、そのキャリア密度はバイアス電流又はバイアス電圧の印加によって操作できる。バイアスは、順バイアス又は逆バイアスでよく、選択された位相調整領域の特性に応じて選択するとよい。バイアスの調整によって、DS-DBRの当該領域の反射率スペクトル又は透過率スペクトルの周波数空間における位相及び位置が調整される。位相調整領域は、DS-DBRの一部又は全部でもよい。
【0037】
任意ではあるが、位相同調領域は、pn接合デバイスを含む。このように、pn接合デバイスは、電気的に同調可能な位相調整領域を提供し、それによって逆バイアスを変化させて印加することによるキャリア空乏を通じて、DBRの反射スペクトルの位相を調整できる。pn接合は、p+-p-n-n+又はp++-p+-p-n-n+-n++構造でもよい。
【0038】
MSDS-DBRは、反射性でもよい。この場合、出力ミラーは必要ない。
【0039】
あるいは、MSDS-DBRは、透過性を有してもよい。この場合、出力ミラーは光広帯域ミラーでもよい。このようなミラーは、5~50%、典型的には10%より大きい、さらに20%より大きい反射率を有するとよい。
【0040】
任意ではあるが、上記態様のいずれか一つの場合、離散波長可変レーザは、レーザの波長を微調整するための一つ又は複数の位相調整部をさらに備えてもよい。
【0041】
この位相調整部は、DS-DBRの一部を形成する任意の位相調整部から分離される。微同調位相調整部は、温度又は他の環境要因によるドリフトを補償するために使用されてもよい。
【0042】
シリコン光学導波路では、例えば、導波路の全幅に沿って、導波路の頂部に一定の深さ(通常は200~500nm)を有する歯をエッチングすることによって格子が生成される。本発明のいずれか一つの実施形態では、レーザ及び/又はMSDS-DBRを含む導波路プラットフォームのシリコン上層の厚さは、1μm以上でかつ4μm以下でもよい。さらにより好ましくは、導波路プラットフォームのシリコン上層の厚さは、2.5μm以上でかつ3.2μm以下である。好ましくは、導波路プラットフォームの一つ以上の導波路のリッジの幅は、1μm以上、好ましくは4μm以下である。さらにより好ましくは、導波路のプラットフォームの一つ以上の導波路のリッジの幅は、2.5μm以上でかつ3.2μm以下である。
【0043】
本出願を通じて、「光」への言及は、赤外波長及び紫外波長及び可視スペクトルの電磁放射を含むと理解すべきである。レーザの出力波長における範囲は、使用される半導体利得媒体に依存し、この範囲は0.4~20μmの範囲内に入る。シリコン・オン・インシュレータ(SOI)プラットフォームを考慮すると、調整可能なSOIレーザの波長範囲は、1.1~1.7μmでもよい。
【0044】
以下に本発明の実施形態のさらなる任意の特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の特徴及び利点は、明細書、特許請求の範囲及び添付の図面を参照して理解されるであろう。
【0046】
【
図1A】透過型MSDS-DBRを含む離散波長可変レーザの概略図を示す。
【
図1B】反射型MSDS-DBRを含む別の波長可変レーザの概略図を示す。
【
図2】
図1A又は
図1Bの離散波長可変レーザのモード選択を説明する概略図を示す。
【
図4】さらに別の離散波長可変レーザの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
添付の図面に関連して以下に述べる詳細な説明は、本発明に従って提供される離散波長可変レーザの例示的な実施形態の説明として意図されており、本発明を構成又は利用できる唯一の形態を表すことを意図するものではない。以下の説明では、図示された実施形態に関連して本発明の特徴を説明する。しかし、本発明の思想及び範疇内に包含されることが意図された異なる実施形態によって、同じ又は同等の機能及び構造が達成され得ることが理解されるべきである。本明細書の別の場所に示す同様の要素の符号は同様の要素又は特徴を示すことを意図している。
【0048】
図1Aは、本発明による離散波長可変レーザ100を示す。
【0049】
この態様では、光キャビティは、RSOA601と、P個のセクションとを有し、対応するP個のスペクトル領域又はバイアス電流の印加時のRSOAの利得帯域幅内の幅Wの「粗スペクトル領域」の一つを透過するように構成された透過型デジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(TDS-DBR)605と、マルチセクションデジタルスーパーモード分布ブラッグ反射器(MSDS-DBR)606とから構成され、MSDS-DBRは、複数であるP個のDS-DBR格子部又は「DS-DBR」を有し、各DS-DBRは、他のDS-DBRのスペクトル領域とは異なる所定のスペクトル領域の光を通過(透過)又は反射する。
【0050】
各DS-DBRは、複数であるM個の格子サブ領域と、格子サブ領域に対する複数であるM個の電気接点の対を備える。各対の電気接点は、正極構造への接続のための「正の電気接点」と、負の電極構造への接続のための「負の電気接点」とを備え、DS-DBRは、M個の電気接点の対のそれぞれに電気的バイアスが印加されると、所定のスペクトル領域内のM個の異なるスペクトルサブバンドのいずれかを透過又は反射するように構成される。
【0051】
MSDS-DBR格子は、チャープ型ブラッグ反射器でもよい。MSDS-DBRにバイアスが加えられていない場合、MSDS-DBRの各格子部の各サブ領域は、スペクトルサブバンド内の波長を反射してもよく、その結果、MSDS-DBRは、スペクトルサブバンドの結合である全てのスペクトル範囲で反射性がある。MSDS-DBRの第1のサブ領域(バイアスされていない場合、第1のスペクトルサブバンドの光を反射するように構成されている)にバイアスが印加されると、サブ領域の屈折率が変化し、それ故、第2の(例えば、隣接する)スペクトルサブバンドに重なるように、サブ領域が反射的である波長の範囲をシフトできる。これは、第1のスペクトルサブバンドにおける反射率を減少(すなわち、透過率を増加)させ、第2のスペクトルサブバンドにおける反射率を増加させることがある。例えば、MSDS-DBRは、各々が6.4nm幅の七つのスペクトル領域から構成された1527.6~1572.4nmの全スペクトル範囲を有してもよく、それぞれは0.8nm幅の八つのスペクトルサブバンドから構成される。
【0052】
TDS-DBRは、同様の全スペクトル範囲を有してもよく、同様の方法で動作してもよい。それは、さらにサブ領域に分割されないP個のセクションから構成されてもよく、その結果、TDS-DBRの反射率及び透過率は、MSDS-DBRのスペクトルサブバンドよりも広い比較的粗いスペクトル領域にわたって制御されてもよい。例えば、TDS-DBRは、それぞれ6.4nm幅の七つのスペクトル領域を有し、それぞれがMSDS-DBRの対応するスペクトル領域と重複する。
【0053】
MSDS-DBR606は、複数であるM個の共通正電極606-1、606-2、…、606-7と、一つの共通負電極とから構成される共通電極構造を含む。
【0054】
M個の共通正電極の各々は、各DS-DBR上の電気接点に接続しており、各DS-DBRのM個の格子サブ領域の各々に電気的バイアスを同時に供給する。例えば、
図1Aから分かるように、第1の共通電極606-1は、第1のDS-DBRの第1の格子サブ領域及び第2のDS-DBRの第1の格子サブ領域に接続し、P番目のDS-DBRまで続いて同じパターンで接続される。
【0055】
このように、M個の共通電極のうちの所定の一つ、例えば第1の共通正電極606-1にバイアスが印加されると、共通電極は、MSDS-DBRの各DS-DBRの第1の格子サブ領域に同時にバイアスを印加する。このため、複数であるP個のDS-DBRのそれぞれの中の対応するスペクトルサブバンドを選択する。
【0056】
これは、
図2の下部に示すように、DS-DBR内のP個の選択されたスペクトルサブバンドのくし歯を生じさせてもよい。選択されたスペクトルサブバンドの各々は、対応するDS-DBRのM個のスペクトルサブバンドs1、s2、…、sMの一つである。
【0057】
TDS-DBR605及びMSDS-DBR606のスペクトルプロファイルは、MSDS-DBRによって生成されるくし歯の周期がTDS-DBRのP領域のそれぞれのスペクトル幅に等くなるように選択される。離散波長可変レーザのレーザモードは、透過型DS-DBRの選択されたスペクトル透過帯域とMSDS-DBRの選択されたくし歯のスペクトル帯域の一つとの重なり合いによって選択される。
【0058】
このように、
図2に示すように、第1のTDS-DBRの制御電極605-1、605-2、…、605-Pの一方に選択バイアスを印加し、MSDS-DBRの共通制御電極の一つに選択バイアスを印加することによって、RSOAの利得スペクトルにおけるMxPモードがデジタル的に選択される。従って、MxP制御電極の一つに対して、M+P制御電極の二つを制御することで十分であり、それによってデジタル制御の数を単純化し、デジタル駆動回路への接続数を減らし、従来のSG-DBR及び/又はDS-DBRのみを使用するデジタル方式に必要とされるデジタル駆動回路を単純化する。
【0059】
さらに、AWG(Arrayed Waveguide Grating)などの受動光部品ではなく、大まかな選択用のTDS-DBRを用いることによって、レーザ共振器の全体サイズを大幅に縮小できる。組み合わされたTDS-DBR及びMSDS-DBR格子の長さは、AWGの長さよりも短くできる。
【0060】
図2の実施形態では、第1の制御パッドにバイアスが印加されたときのTDS-DBRのP個のセクションのうちの特定の一つに対応する透過スペクトルが示される。ここで、制御パッドは、電極とドープされたシリコンとの間の電気的接触を形成するためのシリコンのp又はnがドープされた領域に接触する金属領域として定義される。MSDS-DBRの反射率(又は透過率)スペクトルは、TDS-DBRの透過スペクトルの下に示される。見て分かるように、5番目の共通制御パッドに印加された電気的バイアスは、結果として透過又は反射スペクトルをP回繰り返す。TDSとMSDS-DBRとの透過スペクトルの並び方は、(MxPモードからの)第5のモードの発振をもたらす。
【0061】
図1Aに示す実施形態では、MSDS-DBRを構成するDS-DBRは、すべて透過型DS-DBRであり、格子サブ領域にバイアスを印加して格子サブ領域を「選択」すると、DS-DBRが特定のスペクトルサブバンドを透過する。従って、レーザは、レーザキャビティを完成するための広帯域ミラー格子のような広帯域出力ミラー610を有してもよい。透過型MSDS-DBRでは、N個以上の可能な共振器モードがレーザの全スペクトル領域内に存在するように、また、N個以上の可能な共振器モードの少なくとも一つがP個の粗いスペクトル領域のそれぞれのスペクトルサブバンドMの各々とオーバーラップするように、共振器の長さが広帯域ミラー格子610によって設定される。広帯域ミラーは、スペクトルのすべての領域内で透過型MSDS-DBRより高い反射率を有する。
【0062】
スペクトラムサブバンドにおける最適位置へのキャビティモードの正確な整列は、付加的な別の位相同調部(603)によって、又はDS-DBRの電極上のバイアスの付加的な微調整によって達成できる。
【0063】
MSDS-DBR構造の設計において、高反射率ブロードバンドミラー(HR-BBM)に起因する定在波モードの波長を考慮に入れることができる。
【0064】
BBM反射率は、所望のレーザスロープ効率、及び出力のパワーと安定性を生じるように調整でき、より小さいFP(ファブリ・ペロー)ピークを有し、大きな光出力パワーを得るように、小さく、例えば5~10%程度に調整できる。又は、安定性を向上するが、出力スロープの効率及び出力を低下するため、50~70%に高くしてもよい。SOAは、TDS-DBR及びMSDS-DBRの全スペクトル範囲外の波長の一つより小さい波長で、往復利得が十分に低くなるように設計されてもよい。同様に、TDS-DBRの全スペクトル範囲は、MSDS-DBRのスペクトル領域に対応していない格子領域(受動的でもよく、例えば、電気的に制御されなくてもよい)を一方又は両方の端部に含むように、MSDS-DBRの全スペクトル範囲よりも大きくなるように選択してもよくMSDS-DBRの全スペクトル範囲内ではない波長でのレーザ発振を防止できる。
【0065】
そして、レーザは、透過帯域が選択されたTDS-DBRとサブバンドが選択されたMSDS-DBRとが結合した透過窓内のモードで発振できる。TDS-DBR格子の位置及び特性とMSDS-DBR格子とBBMとを選択することによって、この透過窓外の波長でのレーザ発振を回避でき、この透過窓外の波長では、TDS-DBR格子とMSDS-DBR格子とBBMとによって形成された複合ミラーから反射された電界の大きさは、透過窓内で反射された場の大きさより小さくできる。例えば、この波長では、TDS-DBR格子とMSDS-DBR格子とBBMからの反射は同相でなくてもよく、部分的にキャンセルしてもよい。
【0066】
全ての格子(MSDS-DBR、TDS-DBR、及び広帯域反射器)の格子長さ(格子長さは、第1のノッチの前端から最終のノッチの終端までの長さである)は、重要な役割を果たす。格子の全長は、可能な限り短くてもよく、例えば全長は500μmより小さいが、長さは100μm以下から2mmまでの範囲でもよい。
【0067】
格子は、SOI導波路の上部、側壁、及び/又はスラブ内にエッチングによって形成されてもよい。
【0068】
MSDS-DBR606の格子は、一つの導波路内に製作され、電極は、導波路の長さをできるだけ短くして、必要な数のDS-DBR格子を与えて、適切に導波路に沿って互いにかみ合わせる。
【0069】
図1Aには、三つのDS-DBR格子だけを示すが、当業者であれば、複数のDS-DBR格子を導波路内に製作して、レーザキャビティ用の波長選択可能前方反射器(a wavelength selectable front reflector)を製造できる。例えば、それぞれが七つの状態を有する七つのDBR格子を用いて49個の反射サブバンドが可能である。DS-DBR605は、
図2に示すように透過波長を選択する。
【0070】
図1Aに示すように、M個のサブ領域は、各サブ領域がその両側の二つの領域と逆の極性を有するように、極性を交互に並べる。しかし、代替の実施形態(図示せず)では、すべてのサブ領域が同じ極性を有してもよい。サブ領域の全てが同じ極性を有する場合、全ての正の電極は格子の一方の側にあり、全ての共通に接続された負の電極は格子の反対側で結合する。
【0071】
各DS-DBRは、格子長が増加する格子ピッチを有するチャープ型の格子サブ領域から構成される。
【0072】
各DS-DBR格子部は、連続したサブ領域から形成してもよい。各サブ領域は、p及びnドープ領域と、ダイオードを形成するためにp及びnドープ領域に電気的に接続された関連する正及び負の電極(コンタクトパッドのような電気的接触を介して)を含んでもよい。各ダイオードと隣接するダイオードとの間の電気的分離は、格子における伝搬方向に沿って隣接する電極を物理的に分離することによって達成される。セパレーション(すなわち、隣接する電極間のギャップ)は、その反射率又は透過率を変化させるために、その電極から一つのダイオードに印加されるバイアスが、隣接するダイオードにバイアスを生じさせないほど十分に大きい。隣接する電極の物理的分離と同様に、隣接するダイオードのp及びnドープ領域は物理的に互いに分離して、あるダイオードとその近傍とを格子伝搬方向に沿ってさらに電気的に絶縁できる。
【0073】
各DS-DBRは、各格子サブ領域はわずかに異なる格子周期を有し、異なる格子周期は各格子サブ領域に対応する異なるスペクトルサブバンドに対応する。より長い波長のスペクトル領域をカバーするDS-DBRは、より長い周期の格子で構成できる。
【0074】
任意の二つのDS-DBRの間のギャップを最小にするために、隣接するDS-DBR間の間隔は、小さくし、ほぼゼロでもよい。ギャップは、電気的な分離のために十分に大きくしてもよい。
【0075】
一つの電極に印加された電流は、隣接する領域には広がらない。電極は接点分離によって分離される。他の実施形態では、分離ギャップにp+ドーピングをせず、金属膜を形成(metallization)しない。
【0076】
図1Bに、別の離散波長可変レーザ200を示す。
図1Bのレーザは、透過型MSDS-DBRの代わりに反射型MSDS-DBRを含む点で、
図1Aのものと異なる。反射MSDS-DBR自体がレーザキャビティの出力ミラーを形成するので、さらなる広帯域ミラーがレーザに存在しなくてもよい。反射型MSDS-DBR構造において、キャビティの長さはより短くてもよい。さらに、TDS-DBR605は、
図2に示すように、送信波長を選択する。TDS-DBRは、バイアスが印加されたときの最大反射率がMSDS-DBRの最大反射率より小さくなるように設計され、TDS-DBRから反射する光の往復利得が1未満である。
【0077】
図1A及び
図1Bに示す実施形態は、DS-DBR格子だけを含んでもよく、物理的サイズが比較的小さくてもよい。そして、スイッチング用のDACを使用しなくてもよい。他の実施形態では、経時又は環境によるドリフトに応答して波長全体を調整するために、位相同調部603の制御用の遅いDACが含まれる。
【0078】
波長可変レーザ300の別の実施形態を
図3に示す。
図3のレーザは、
図1Bのものと異なり、TDS-DBRが除去され、負電極を分離して選択可能に構成することによって、
図1A及び
図1BのTDS-DBRによる大まかな選択機能がMSDS-DBRに組み込まれる。そして、複数であるP個のDS-DSRの各々に共通の負電極が設けられる。
【0079】
この場合、共通制御電極f1、f2、…、fM(
図3ではM=7)の選択された一つに正の電圧を印加することによって、レーザ発振のためにチャネルが選択され、選択された制御電極は、先の実施形態と同様に、選択されるべきチャネルに対応するサブバンドに関連付けられる。そして、十分な負の電圧が負電極の一つのみに印加され、選択されているチャネルを含むスペクトルの粗領域に対応するDS-DBRのダイオードのみがオンになる。
【0080】
他のP-1負電極に印加される負電圧は、共通制御電極への正電圧の印加に起因する他のDS-DBR格子上の同じサブバンドのダイオードの電圧降下が、それらのターンオン電圧より低い。
【0081】
他の実施形態では、
図3のものと異なり、MSDS-DBRは、粗な負電極を有する反射型MSDS-DBRの形態をとる。
【0082】
図4に示すように、一実施形態では、N個の対応する正電極e1、e2、…、eNを有する一つの反射型NセクションDS-DBR格子が、同調可能レーザの同数の離散波長状態を生成するために使用される。一実施形態では、N=49であり、他の実施形態では、Nは49より大きくても小さくてもよい。
【0083】
本実施形態では、MxP制御電極の一つを制御する一つの制御回路を用いてもよい。格子設計は単純であり、制御回路はより簡単であり、レーザキャビティの長さを短くできる。しかし、制御電極の数は、
図1A、
図1B及び
図3の実施形態のM+Pと比較して、例えばMxPのように大きくてもよい。特に、必要とされるレーザモードの数Nが、49個の格子サブ領域を含む図示された実施形態よりはるかに高い数に調整される場合、多くの電極は、制御回路を接続して管理することがより困難になる。
【0084】
離散波長可変レーザの例示的な実施形態を本明細書で具体的に図示し説明したが、当業者には多くの変更及び変形が明らかであろう。したがって、本発明の原理に従って構成された離散波長可変レーザは、本明細書に具体的に記載されたもの以外に具体化され得ることが理解されるべきである。本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物も含むものである。