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特許7108548核酸分子を分析するための方法およびデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】核酸分子を分析するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20220721BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220721BHJP
   C12M 1/40 20060101ALI20220721BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20220721BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20220721BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
C12M1/34 Z
C12M1/40 B
C12Q1/6869 Z
C12M1/00 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018562305
(86)(22)【出願日】2017-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2017063125
(87)【国際公開番号】W WO2017207613
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】62/343,715
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】アスティエ,ヤン
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-230614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0193231(US,A1)
【文献】特開2013-044604(JP,A)
【文献】国際公開第2016/059375(WO,A1)
【文献】特開2013-036865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
G01N 33/48-33/96
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子を分析する方法であって、
核酸分子を1つのタンパク質および第1の直径を有する粒子に付着させるステップであって、前記1つのタンパク質が、ポリメラーゼリボソーム、およびエキソヌクレアーゼからなる群から選択される分子モータータンパク質である、前記ステップ、
第1の電極、第1の絶縁体、および第2の電極によって画定される穴であって、前記第1の直径未満の第2の直径を有する前記穴に、前記核酸分子の第1の部分を移動させるように電場を印加するステップ、
前記核酸分子の第1の部分を、前記第1の電極と前記第2の電極の両方に接触させるステップであって、ここで前記第1の部分は第1のヌクレオチドを含むものである、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加するステップ、
前記第1の電極、前記核酸分子の第1の部分、および前記第2の電極を通る電流を測定するステップ、ならびに、
前記電流に基づいて前記核酸分子の第1の部分の第1のヌクレオチドを同定するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記穴が側壁によって画定され、
前記側壁は、第2の絶縁体、前記第1の電極、前記第1の絶縁体、前記第2の電極、および第3の絶縁体を備え、
前記第2の絶縁体は、前記第1の電極に接触しており、
前記第1の電極は、前記第1の絶縁体に接触しており、
前記第1の絶縁体は、前記第2の電極に接触しており、
前記第2の電極は、前記第3の絶縁体に接触しているものである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸分子が前記穴で振動する間に、前記電流の振幅および周波数を測定するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸分子が前記穴で振動する間に、前記電流のパルス幅を測定するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の電極および前記第2の電極は、アダプター分子でそれぞれコーティングされ、前記アダプター分子は、前記核酸分子と弱い力の化学的相互作用をする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1の直径を有する粒子に付着された1つのタンパク質であって、ここで、前記1つのタンパク質が、ポリメラーゼリボソーム、およびエキソヌクレアーゼからなる群から選択される分子モータータンパク質である、
第1の電極、第1の絶縁体、および第2の電極によって画定された穴であって、前記第1の直径未満の第2の直径を有する前記穴、
前記第1の電極および前記第2の電極と電気的に通じている第1の電源、
前記粒子に付着された前記タンパク質を前記穴に移動させるように前記穴を通じて電場を印加するように構成された第2の電源、ならびに、
前記タンパク質に付着された核酸分子の第1の部分が前記第1の電極および前記第2の電極に接触するときに、前記第1の電極および前記第2の電極を通る電流を測定するように構成された計器デバイス、
を備える、核酸分子分析デバイス。
【請求項7】
前記タンパク質に付着された前記核酸分子をさらに含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の絶縁体がフォトレジストで構成される、請求項6または7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記穴は側壁によってさらに画定され、
前記側壁は、第2の絶縁体、前記第1の電極、前記第1の絶縁体、前記第2の電極、および第3の絶縁体を備える、
請求項6~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の電極および前記第2の電極のうちの少なくとも1つは、パラジウムで構成される、請求項6~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
核酸分子を分析する方法であって、
前記核酸分子を1つのタンパク質および第1の直径を有する粒子に付着させるステップであって、前記1つのタンパク質が、ポリメラーゼリボソーム、およびエキソヌクレアーゼからなる群から選択される分子モータータンパク質である、前記ステップ、
前記核酸分子の一部であって、ヌクレオチドを含む前記一部を、第1の絶縁体によって画定される穴であって、前記第1の直径未満の第2の直径を有する前記穴の中に移動させるステップ、
前記核酸分子の前記一部を、第1の電極と第2の電極との間の間隙であって、前記第1の電極と前記第2の電極との間の最短距離を表す線を含む間隙に移動させるステップ、
前記核酸分子の一部を前記第1の電極と前記第2の電極の両方に接触させるステップ、
前記第1の電極、前記核酸分子、および前記第2の電極を通る電流を測定するステップ、ならびに、
前記電流に基づいて前記核酸分子のヌクレオチドを同定するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項12】
前記穴は、前記第2の直径に直交する長手方向軸を有し、
前記第1の電極の一部が前記穴の中に延び、
前記第2の電極の一部は、前記穴の中に延び、
前記第1の電極の前記一部および前記第2の電極の前記一部を含む平面は、前記長手方向軸に垂直である、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記穴は、側壁によって画定され、
前記側壁は、第2の絶縁体、前記第1の電極、前記第1の絶縁体、前記第2の電極、および第3の絶縁体を備え、
前記第2の絶縁体は、前記第1の電極に接触しており、
前記第1の電極は、前記第1の絶縁体に接触しており、
前記第1の絶縁体は、前記第2の電極に接触しており、
前記第2の電極は、前記第3の絶縁体に接触しているものである、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
第1の直径を有する粒子に付着された1つのタンパク質であって、ここで、前記1つのタンパク質が、ポリメラーゼリボソーム、およびエキソヌクレアーゼからなる群から選択される分子モータータンパク質である、
第1の絶縁体によって画定された穴であって、前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有するとともに前記第2の直径に直交する長手方向軸を有する穴、
第1の電極であって、前記第1の電極の一部が前記穴の中に延びる第1の電極、
第2の電極であって、前記第2の電極の一部が前記穴の中に延び、前記第1の電極の一部および前記第2の電極の一部を含む平面は、前記長手方向軸に垂直である第2の電極、
前記第1の電極および前記第2の電極と電気的に通じている第1の電源、ならびに、
前記タンパク質に付着された核酸分子の第1の一部が前記第1の電極および前記第2の電極に接触するときに、前記第1の電極および前記第2の電極を通る電流を測定するように構成された計器デバイス、
を備える核酸分析デバイス。
【請求項15】
前記タンパク質に付着された前記核酸分子をさらに備える、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記穴を通じて電場を印加するように構成された第2の電源をさらに備える、請求項14または15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1の電極は、前記第1の絶縁体と第2の絶縁体との間に配設される、請求項14~16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第2の電極は、前記第1の絶縁体と第2の絶縁体との間に配設される、請求項14~17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第1の電極および前記第2の電極は、間隙を画定し、
前記間隙は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の最短距離を含み、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の前記最短距離は、2nm以下である、
請求項14~18のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ナノポアを含むデバイスは、新しい分析方法の開発を目標としている。ナノポアは、単一分子を検出する能力を有しており、これは化学的および生物学的検出の分野における将来有望な技術であり得る。例えば、ナノポアは、診断および核酸シークエンシングに使用することができる。固体ナノポアバイオセンシングは、高速の単一分子センシング技法である。場合によっては、固体ナノポアは、2つの電極間のイオン液体中にチャネルを形成する。2つの電極は、ナノポア自体の一部ではないが、イオン液体内に配置することができる。分子がナノポアチャネルを通過するとき、チャネルによって電流および他の電気特性が変化する。これらの電気特性は、分子に関する情報をもたらすが、製造面の問題が核酸分子中の個々のヌクレオチドの同定を難しいものにさせる。複数のヌクレオチドは、穴の中に同時に存在することがあり、または迅速に穴を通過することがあり、このため、ヌクレオチドを識別するための十分強い信号を提供しないことがある。
【0002】
ナノポアデバイスは、トンネル認識とともに使用することができる。トンネル認識は、ナノポアデバイス自体内にあり得る電極間に化学物質を配置することに基づく。化学物質の軌道は、電子が一方の電極から他方の電極に移り、トンネル電流を生成することを可能にする。固体ナノポアのサイズおよび他の特性は、大量生産プロセスに適合するのは難しい可能性がある。イオン電流を用いて核酸分子を配列決定するために、ナノポアのサイズは、2nm未満であり得るナノメートルの程度であることが必要である。このサイズのチャネルを生成するには、精密で高価な技法を必要とする。しかしながら、ナノポアのサイズを減少させることは、センシングデバイスとして機能するためにナノポアに必要な浸潤性が不完全または乏しいという結果になる。デバイスを要する化学的および生物学的な検出およびプロセスに使用されるナノポアを含むデバイスの設計および製造性の改良が依然として必要とされている。設計および製造性の改良は、正確および精密な分析を犠牲にするべきではない。これらおよび他の問題は、本文献に記載された技術によって対処される。
【発明の概要】
【0003】
本技術の実施形態は、トンネル認識による核酸分子の配列決定を可能にすることができる。核酸分子は、電場または圧力勾配によってチャネルの中に駆動することができる。このチャネルの中で、核酸分子の一部は、2つの電極の間の間隙に入ることができる。電極間に小さい間隙を有する電極は、トンネル認識を可能にすることができるが、核酸分子は、しばしば小さい間隙の中で十分なトンネル信号を得るのに十分広がることができない。電場または圧力勾配は、より容易かつ頻繁に電極間隙に核酸分子を駆動することができる。幅1~2nmである小さい間隙は、製造するのが難しいまたは製造するのに費用がかかるものである。いくつかの例では、間隙は、互いに平行に並べられているが同一平面内にない2つの電極の間にあることができ、これは、同一平面上の2つの電極の端の間の間隙よりも製造が容易である。核酸分子は、粒子またはビーズに付着され得るモータータンパク質につながれ得る。粒子はチャネルよりも大きいものであり得る。粒子は、電場または流れがチャネルを通じて核酸分子を引っ張る間に、核酸分子の一端を固定することができる。このようにして、核酸分子は、チャネルに沿って伸ばされ得るとともに、ブラウン運動の結果としてチャネル内で振動し得る。核酸分子は、トンネル電極と確率的に相互作用してトンネル信号を発生させることができる。
【0004】
電圧が、電極に印加され得る。核酸分子の一部が電極間の間隙内にあるとともに、核酸分子が2つの電極を橋渡しするとき、電子は、核酸分子を通じて一方の電極から他方の電極に通り抜け、電流を生成することができる。電流は、測定することができる。核酸分子
は間隙内で振動することができ、測定される電流は振幅および周波数を有することができる。振幅および周波数は変数であり得る。電流の特性は、核酸分子中に存在する特定のヌクレオチドまたは塩基を同定するのを助けることができる。電気特性は、核酸分子のヌクレオチドを同定する際に指紋としてほぼ機能することができる。モータータンパク質は、異なるヌクレオチドが電極間隙内にあるとともに異なる電流信号が測定できるように、核酸分子を貫通させるまたは引き込むことができる。結果として、さらなるヌクレオチドが、同定可能である。より多くのヌクレオチドが電極間隙の中に移動することができるので、核酸の複数のヌクレオチドについて同定可能であり、核酸について配列決定することができる。
【0005】
実施形態は、核酸分子を分析する方法を含むことができる。この方法は、核酸分子をタンパク質に付着するステップを含むことができる。タンパク質は、第1の直径を有する粒子に付着することができる。この方法は、核酸分子の第1の部分を穴の中に移動させるように電場を印加するステップも含むことができる。穴は、第1の電極、第1の絶縁体、および第2の電極によって画定することができる。この穴は、第1の直径未満の第2の直径を有することができる。この方法は、核酸分子の第1の部分を第1の電極と第2の電極の両方に接触させるステップをさらに含むことができる。加えて、この方法は、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加するステップを含むことができる。第1の電極、核酸分子、および第2の電極を通る電流は、測定することができる。電流に基づいて核酸分子のヌクレオチドを同定することができる。
【0006】
いくつかの実施形態は、核酸分子分析システムを含むことができる。このシステムは、タンパク質に付着される核酸分子を含むことができる。タンパク質は、ある直径を有する粒子に付着することができる。このシステムは、第1の電極、第1の絶縁体、および第2の電極によって画定される穴を含むこともできる。この穴は、粒子の直径未満の直径を有することができる。このシステムは、第1の電極および第2の電極と電気的に通じている第1の電源をさらに含むことができる。加えて、このシステムは、穴を通じて電場を印加するように構成された第2の電源を含むことができる。
【0007】
さらなる実施形態は、核酸分子を分析する方法を含むことができる。この方法は、核酸分子をタンパク質に付着するステップを含むことができる。タンパク質は、第1の直径を有する粒子に付着することができる。この方法は、核酸分子の第1の部分を絶縁体によって画定された穴の中に移動させるステップを含むこともできる。この穴は、第1の直径未満の第2の直径を有することができる。この方法は、核酸分子の第2の部分を第1の電極と第2の電極との間の間隙の中に移動させるステップをさらに含む。間隙は、電極間の最短距離を表す線を含むことができる。加えて、この方法は、核酸分子を第1の電極と第2の電極の両方に接触させるステップを含むことができる。加えて、第1の電極、核酸分子、および第2の電極を通る電流は測定することができる。電流に基づいて核酸分子のヌクレオチドを同定することができる。
【0008】
実施形態は、核酸分析システムを含むことができる。このシステムは、タンパク質に付着される核酸分子を含むことができる。タンパク質は、第1の直径を有する粒子に付着することができる。このシステムは、第1の絶縁体によって画定された穴を備えることもできる。この穴は、第1の直径未満の第2の直径を有することができる。この穴は、直径に直交する長手方向軸を有することができる。このシステムは、第1の電極をさらに含むことができる。第1の電極の一部は、穴の中に延びることができる。このシステムは、第2の電極を備えることもでき、第2の電極の一部は穴の中に延びる。第1の電極の一部および第2の電極の一部を含む平面は、長手方向軸に垂直であり得る。加えて、このシステムは、第1の電極および第2の電極と電気的に通じている第1の電源を含むことができる。
【0009】
第1の態様では、本発明は、核酸分子を分析する方法であって、(i)核酸分子をタンパク質および第1の直径を有するビーズのような粒子に付着させるステップと、(ii)核酸分子の第1の部分を第1の電極、第1の絶縁体、および第2の電極によって画定されるとともに第1の直径未満の第2の直径を有する穴に移動させるように電場を印加するステップと、(iii)第1の部分は第1のヌクレオチドを含み、核酸分子の第1の部分を第1の電極と第2の電極の両方に接触させるステップと、(iv)第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加するステップと、(v)第1の電極、核酸分子の第1の部分、および第2の電極を通る電流を測定するステップと、(vi)電流に基づいて核酸分子の第1の部分の第1のヌクレオチドを同定するステップとを含む方法を提供する。
【0010】
第1の直径は、10nm以上であってもよい。第2の直径は、10nmから15nmの範囲内であってもよい。第1の絶縁体は、2nm以下の厚さを有する、かつ/またはフォトレジストで構成することができる。穴は、側壁によって画定され、そして、側壁は、第2の絶縁体、第1の電極、第1の絶縁体、第2の電極、および第3の絶縁体を備えてもよく、第2の絶縁体は、第1の電極に接触しており、第1の電極は、第1の絶縁体に接触しており、第1の絶縁体は、第2の電極に接触しており、第2の電極は、第3の絶縁体に接触している。
【0011】
この方法は、タンパク質を用いて、核酸分子の第2の部分が第1の電極と第2の電極の両方に接触するように核酸分子を移動させるステップであって、核酸分子の第2の部分は、核酸分子の第1の部分とは異なる位置にあり、核酸分子の第2の部分は、第2のヌクレオチドで構成される、核酸分子を移動させるステップをさらに含んでもよい。核酸分子の第2の部分は、第1の部分がタンパク質に配置されるよりもタンパク質の近くまたは遠くに配置することができる。
【0012】
タンパク質は、ポリメラーゼ、ヘリカーゼ、リボソーム、およびエキソヌクレアーゼからなる群から選択される分子モータータンパク質とすることができる。核酸分子は、一本鎖DNA、RNA、または一本鎖もしくは二本鎖の環状DNAとすることができる。第1のヌクレオチドは、標識が付けられていないヌクレオチドに比べてトンネル電流の増加をもたらす化合物で標識が付けられたヌクレオチドで構成することができる。
【0013】
さらに、核酸分子が穴内で振動する間に、電流の振幅および周波数を測定することが可能である。核酸分子が穴内で振動する間に、電流のパルス幅を測定することも可能である。電流は、知られているヌクレオチドから測定される較正電流と比較することができる。第1の電極および第2の電極は、アダプター分子でそれぞれコーティングされ、アダプター分子は、核酸分子との弱い力の化学相互作用を有することができる。
【0014】
第2の態様では、本発明は、核酸分子分析システムまたはデバイスであって、(i)第1の直径を有する粒子に付着されたタンパク質と、(ii)第1の電極、第1の絶縁体、および第2の電極によって画定されるとともに第1の直径未満の第2の直径を有する穴と、(iii)第1の電極および第2の電極と電気的に通じている第1の電源と、(iv)粒子に付着されたタンパク質を穴に移動させるように穴を通じて電場を印加するように構成された第2の電源と、(v)タンパク質に付着された核酸分子の第1の部分が第1の電極および第2の電極に接触するときに、第1の電極および第2の電極を通る電流を測定するように構成された計器デバイスとを備える核酸分子分析システムまたはデバイスを提供する。
【0015】
第1の絶縁体は、フォトレジストで構成することができる。穴は、側壁によってさらに画定することができ、そして、側壁は、第2の絶縁体、第1の電極、第1の絶縁体、第2の電極、および第3の絶縁体を備える。一実施形態では、第2の絶縁体および第3の絶縁
体は、フォトレジストで構成される。別の実施形態では、第1の電極は、第2の絶縁体と第1の絶縁体との間に配設され、第2の電極は、第1の絶縁体と第3の絶縁体との間に配設される。
【0016】
第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも1つは、アダプター分子でコーティングされてもよく、アダプター分子は、核酸分子との弱い力の化学相互作用を受ける。また、第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも1つは、パラジウムで構成される。
【0017】
第3の態様では、本発明は、核酸分子を分析する方法であって、(i)核酸分子をタンパク質および第1の直径を有する粒子に付着するステップと、(ii)核酸分子の一部であって、ヌクレオチドを含む一部を、第1の絶縁体によって画定されるとともに第1の直径未満の第2の直径を有する穴の中に移動させるステップと、(iii)核酸分子の一部を、第1の電極と第2の電極との間の間隙であって、第1の電極と第2の電極との間の最短距離を表す線を含む間隙に移動させるステップと、(iv)核酸分子の一部を第1の電極と第2の電極の両方に接触させるステップと、(v)第1の電極、核酸分子、および第2の電極を通る電流を測定するステップと、(vi)電流に基づいて核酸分子のヌクレオチドを同定するステップとを含む方法を提供する。
【0018】
核酸分子の一部を穴の中に移動させるステップは、印加された電場で核酸分子の一部を移動させるステップを含むことができる。核酸分子の一部を穴の中に移動させるステップは、圧力駆動された液体の流れで核酸分子の一部を移動させるステップを含んでもよい。第1の電極と第2の電極との間の最短距離は、2nm以下とすることができる。穴は、第1の電極の一部が穴の中に延び、第2の電極の一部が穴の中に延び、第1の電極の一部および第2の電極の一部を含む平面が長手方向軸に垂直であるように、第2の直径に直交する長手方向軸を有することができる。
【0019】
穴は、第2の絶縁体、第1の電極、第1の絶縁体、第2の電極、および第3の絶縁体を備える側壁によって画定することができ、第2の絶縁体は、第1の電極に接触しており、第1の電極は、第1の絶縁体に接触しており、第1の絶縁体は、第2の電極に接触しており、第2の電極は、第3の絶縁体に接触しているようになっている。
【0020】
第4の態様では、本発明は、核酸分析デバイスまたはシステムであって、(i)第1の直径を有する粒子に付着されたタンパク質と、(ii)第1の絶縁体によって画定された穴であって、第1の直径よりも小さい第2の直径を有するとともに第2の直径に直交する長手方向軸を有する穴と、(iii)第1の電極であって、第1の電極の一部が穴の中に延びる第1の電極と、(iv)第2の電極であって、第2の電極の一部が穴の中に延び、第1の電極の一部および第2の電極の一部を含む平面は、長手方向軸に垂直である第2の電極と、(v)第1の電極および第2の電極と電気的に通じている第1の電源と、(vi)タンパク質に付着された核酸分子の第1の部分が第1の電極および第2の電極に接触するときに、第1の電極および第2の電極を通る電流を測定するように構成された計器デバイスとを備える核酸分析デバイスまたはシステムを提供する。
【0021】
デバイスまたはシステムは、穴を通じて電場を印加するように構成された第2の電源をさらに備えることができる。第1の電極は、第1の絶縁体と第2の絶縁体との間に配設することができる。第2の電極は、第1の絶縁体と第2の絶縁体との間に配設されてもよい。第1の電極および第2の電極は、第1の電極と第2の電極との間に2nm以下の最短距離を含む間隙を画定することができる。間隙は、ナノワイヤを第1の電極および第2の電極に割り込ませることによって形成することができる。システムまたはデバイス全体が、マイクロ流体シリコンチップに取り付けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】[0001]本発明の実施形態による、核酸分子分析システム100の側面図である。
図1B】[0002]本発明の実施形態による、核酸分子分析システム100の上面図である。
図2】[0003]本発明の実施形態による、核酸分子を分析する方法200の流れ図である。
図3A】[0004]本発明の実施形態による、核酸分子分析システムにおけるトンネル認識を可能にするために電極に接触する核酸分子を示す図である。
図3B】[0005]本発明の実施形態による、核酸分子分析システムにおける電極に接触していない核酸分子を示す図である。
図4A】[0006]本発明の実施形態による、分子モータータンパク質によって移動される前の2つの電極に接触する核酸分子を示す図である。
図4B】[0007]本発明の実施形態による、分子モータータンパク質によって移動された後の2つの電極に接触する核酸分子を示す図である。
図5A】[0008]本発明の実施形態による、自由な流れの中の異なる核酸分子の電流特性を示す図である。
図5B】[0009]本発明の実施形態による、ビーズに束縛されたときの異なる核酸分子の電流特性を示す図である。
図6A】[0010]本発明の実施形態による、核酸分子分析システム600の上面図である。
図6B】[0011]本発明の実施形態による、核酸分子分析システム600の側面図である。
図7】[0012]本発明の実施形態による、核酸分子を分析する方法700の流れ図である。
図8A】[0013]本発明の実施形態による、核酸分子分析システムにおける2つの電極に接触する核酸分子を示す図である。
図8B】[0014]本発明の実施形態による、核酸分子分析システムにおける2つの電極に接触していない核酸分子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
用語「接触」は、電子が一の物体から別の物体を通じて通り抜けることができるように一の物体を別の物体に近接させることを指し得る。物体同士の電子雲からの斥力がより近くに近接するのを防ぎ得るので、原子よりも小さいレベルで、2つの物体は、互いに物理的に触れることは決してあり得ない。
【0024】
用語「モータータンパク質」は、核酸分子をある分子に相対的に移動させることができる分子であり得る。例えば、モータータンパク質は、静止したままであることができるとともに核酸分子は移動することができ、あるいは核酸分子は静止したままであることができるとともにモータータンパク質は移動することができる。モータータンパク質には、ポリメラーゼ、ヘリカーゼ、リボソーム、エキソヌクレアーゼ、および他の酵素を挙げることができる。
【0025】
「核酸」は、一本鎖または二本鎖の形態のどちらかにおけるデオキシリボヌクレオチド、またはリボヌクレオチド、およびその高分子を指し得る。この用語は、知られているヌクレオチド類似物または修飾されたバックボーン残基または結合を含有する核酸を包含することができ、これらは合成、自然発生、および非自然発生であり、これらは参照核酸と同様の結合特性を有し、これらは参照ヌクレオチドと同様のやり方で代謝させられる。そのような類似物の例としては、限定するものではない、ホスホロチオアート、ホスホロア
ミダイト、メチルホスホン酸、キラルメチルホスホン酸、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)を挙げることができる。
【0026】
特に断りがない限り、特定の核酸配列は、保守的に修正されたその変形例(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列、ならびに明確に示された配列も暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または全部の)コドンの第3の位置が混合基および/またはデオキシイノシン残留物で置換される配列を生成することによって実現することができる(Batzerら、Nucleic Acid Res.(核酸研究)19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー)260:2605~2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes(分子細胞プローブ)8:91~98(1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと交換可能に使用される。
【0027】
用語「ヌクレオチド」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、天然発生のリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドモノマーを指すことに加えて、ヌクレオチドが使用されている特定の内容に関して機能的に均等である誘導体および類似物を含むその関連構造の変形例(例えば、相補的塩基のハイブリッド化)を指すと理解され得る。
【0028】
用語「振動する」は、ブラウン運動または他の力の結果としての流体中の物体の運動を指し得る。物体は、人または機械による能動的な介入がなくても振動することができる。場合によっては、物体は、印加された電場または圧力で駆動された流れの結果として振動し得る。
【0029】
用語「弱い力」は、物理学の基本的な力の1つを指し得る。
詳細な説明
現在市販されている従来のナノポアベースのデバイスは、準安定の脂質二重層に挿入されたタンパク質のナノポアを含み得る。脂質二重層は、もろいものであり得るとともに、デバイスの安定性を弱める可能性がある。固体状態の原子スケールのナノポア層は、タンパク質のナノポアほどもろくなく、改善された製造性のポテンシャルを有し得る。これらのデバイスを必要とする可能な方法は、核酸分子を電極間の2nm以下の間隙に閉じ込めるステップと、電極および核酸分子を通り抜ける電子を用いてヌクレオチドおよびヌクレオチド配列を識別するステップとを含む。このサイズに近い固体状態のナノポアは、電子またはイオンのビームを薄い材料に集束することによって形成することができる。この方法は、ナノポア、ナノポアを含むデバイス、および分析機器の大量生産に適合させるのは難しい。さらに、核酸分子は、そのような小さい電極間の間隙の中に力ではまるのは難しいものであり得る。より幅広いチャネルは、核酸分子がナノポアチャネルの中により容易に広がることを可能にすることができる。しかしながら、核酸分子は、ずっと迅速に、または核酸分子がトンネル電極に接触することなく、より幅広いチャネルを通過することができる。結果として、トンネル電流はほとんどまたは全く測定され得ず、核酸分子は、デバイスによって容易に配列決定され得ない。
【0030】
トンネル認識は、必ずしもナノポアを含まない幾何学的形状においてなされてもよい。例えば、トンネル電子は、個々の原子を撮像するために使用されてきた走査型トンネル顕微鏡(STM)に使用することができる。理論的には、STMは、DNA配列を読むためにも使用することができるが、STMは、可動電極プローブに頼り得るものであり、このプローブ電極を移動させることは、DNA試料を移動させ得るものであり、品質のよいトンネル信号を得るのを難しくさせる。DNA試料を固定し、DNAが移動するのを防ぐことによって、トンネル認識を改善することができる。
【0031】
本明細書中に記載したデバイスおよび方法は、2nm以下の直径を有するナノポアチャネルの中に核酸分子を力で入れることなく、核酸分子が配列決定されることを可能にすることができる。代わりに、ナノポアチャネルは、直径が10nm以上であってもよい。核酸分子は、ナノポアチャネルにより容易に入ることができる。電極間隙は、2nm以下であり得る一方、ナノポアチャネルは大きい直径であり得る。例えば、電極は、2つの電極の中間に抵抗層を備えた層として相互の上に積み重ねられ得る。抵抗層は、2nm程度の厚さを有することができる。電極および抵抗層は、ナノポアチャネル内で露出することができ、電極間の距離は、ナノポアチャネルの直径に関係がない。いくつかの他の実施形態では、ナノワイヤは、10nm以上の直径を有するナノポアチャネル内に滞留し得る。ナノワイヤは、2nm以下の間隙を形成するように分けることができ、ナノワイヤの2つの分離部分は、電極として働くことができる。このようにして、電極間の間隙は、ナノポアチャネルの直径に関連しなくてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ビーズおよび分子モータータンパク質のうちの少なくとも1つに付着され得る。ビーズは、少なくとも1つのサイズにおいて、ナノポアチャネルのサイズよりも大きいものであり得、それによってビーズは、ナノポアチャネルをあまり容易にまたは迅速に通過することができない。ビーズは、ナノポアチャネル内に核酸分子の一端を固定することができ、これによって核酸分子が振動し、ランダムに電極に接触して、トンネル信号を生じさせることを可能にすることができる。核酸分子は、電場または圧力で駆動された流れによって駆動することができ、ビーズは、核酸分子が渋滞する可能性を減少させることができる。分子モータータンパク質は、核酸分子をチャネルへ送り込む(または引き出す)ことができ、核酸分子のさらなる一部がトンネル信号を生じさせ、したがって、配列決定されることを可能にする。
【0033】
いくつかの実施形態では、ナノポアデバイスおよび方法は、核酸分子のみならず生物学的高分子が分析されることを可能にすることができる。例えば、タンパク質は、タンパク質中のアミノ酸を決定するために分析を受けることができる。ナノポアの長さおよび直径は、核酸分子のサイズの代わりに、アミノ酸のサイズに対して調整することができる。例えば、電極間の距離は、1~2nm程度であり得る。トンネル認識のナノポアデバイスおよび方法は、以下にさらに説明される。
【0034】
I.電極スタックトンネル認識
トンネル認識は、電極スタックまたはサンドイッチ内で実行することができる。2つの電極は、複数の層の中にあることができ、絶縁体をサンドイッチする。電極間の距離は、絶縁体の厚さでもあり得、核酸内のヌクレオチドのサイズ程度、または約2nmであり得る。電極間の距離は、任意の穴の直径から独立であることができ、これによってより容易な製造を可能にすることができる。本明細書に記載された実施形態は、タンパク質などの核酸分子以外の生物学的高分子を分析するように改良することもできる。
【0035】
A.システム
図1Aおよび図1Bに示すように、いくつかの実施形態は、核酸分子分析システム100を含むことができる。図1Aは、システム100の側面図を示すとともに、図1Bは、システム100の上面図を示す。「側面」および「上面」は、図中のシステム100を説明するために使用されるが、システム100は、システム100の任意の部分が任意の方向に向いていることができるように回転されてもよい。システム100は、ある直径を有する粒子106に付着されたタンパク質104を備えることができる。粒子106が球状でない場合、粒子106は、特徴サイズを有し得る。各実施形態において、粒子106は、10nmから15nm、15nmから20nm、20nmから30nm、30nmから40nm、40nmから50nm、または50nm以上の範囲内の直径または特徴サイズを有することができる。粒子は、ビーズであってもよい。タンパク質104は、分子モー
タータンパク質であってもよい。分子モータータンパク質としては、ポリメラーゼ、ヘリカーゼ、リボソーム、およびエキソヌクレアーゼを挙げることができる。
【0036】
タンパク質104は、粒子106に共有結合で付着され得る。例えば、粒子106の表面は、ストレプトアビジンで修飾することができ、タンパク質104は、ビオチンで修飾することができる。いくつかの実施形態では、粒子106の表面は、ビオチンで修飾することができ、タンパク質104は、ビオチンで修飾することができる。ストレプトアビジンは、ビオチンに結合することができ、次いで、これは、タンパク質104を粒子106に結合することができる。同様に、他の例では、粒子106の表面は、SpyTagペプチドで修飾することができ、タンパク質104は、SpyCatcherタンパク質で修飾することができる。代替として、粒子106の表面は、SpyCatcherで修飾することができ、タンパク質104は、SpyTagで修飾することができる。SpyTagおよびSpyCatcherの間の共有結合は、タンパク質104を粒子106に結合することができる(B.Zakeriらによる「Peptide tag forming a rapid covalent bond to a protein, through engineering a bacterial adhesin(細菌性アドヘシンを工学技術で作成することによってタンパク質との迅速な共有結合を形成するペプチドタグ)」、Proc.Natl.Acad.Sci.、109(2012)、E690~97頁を参照されたい。その内容は、全ての目的について参照により本明細書に組み込まれる)。
【0037】
核酸分子102は、粒子106に付着されたタンパク質104とともにシステムに導入することができる。核酸分子102は、一本鎖DNAまたはRNAを含み得る。核酸分子102は、タンパク質104に付着することができる。
【0038】
システム100は、第1の電極110、第1の絶縁体112、および第2の電極114によって画定される穴108を備えることもできる。第1の電極および第2の電極は、パラジウム、プラチナ、金、または別の貴金属で構成することができる。第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも1つは、アダプター分子でコーティングされてもよい。アダプター分子は、核酸分子との弱い力の化学相互作用を受けることができる。結果として、アダプター分子は、2つの電極を橋渡しするまたはこれらに接触する核酸分子を助けることができる。アダプター分子は、有機または有機金属であり得る。
【0039】
第1の絶縁体112は、フォトレジストで構成することができる。各実施形態において、第1の絶縁体112の厚さ(すなわち、第1の電極110と第2の電極114を隔てる距離)は、1nm以下、2nm以下、3nm以下、4nm以下、または5nm以下とすることもできる。穴108は、側壁によって画定され得る。側壁は、第2の絶縁体118と、第1の電極110と、第1の絶縁体112と、第2の電極114と、第3の絶縁体120とを含むことができる。第2の絶縁体118および第3の絶縁体120は、フォトレジスト、ガラス、および/または窒化ケイ素で構成することができる。図1Aに示すように、第1の電極110は、第2の絶縁体118と第1の絶縁体112との間にあることができる。第2の電極114は、第1の絶縁体112と第3の絶縁体120との間にあることができる。システム100は、第2の絶縁体118、第1の電極110、第1の絶縁体112、第2の電極114、および第3の絶縁体120という順序で層のサンドイッチを含むことができる。サンドイッチにおけるこれらの層は、隣接した層に接触していることができる。
【0040】
穴108は、粒子106の直径未満の直径を有することができる。穴108が円または円筒形でない場合、穴108は、粒子106の特徴サイズ未満の特徴サイズを有することができる。穴は、傾斜した開口を備えるとともに、円錐形と同様の幾何学的形状を含むこ
とができる。粒子106が円でない場合、粒子106は、特徴サイズによって説明することができる。特徴サイズは、長さ、幅、長軸の長さ、または短軸の長さを説明することができる。各実施形態において、穴の直径または特徴サイズは、10nmから15nm、15nmから20nm、20nmから30nm、30nmから40nm、または40nmから50nmの範囲内であってもよい。穴108の直径または特徴サイズは、粒子106の直径または特徴サイズよりも1nmを超える、5nmを超える、または10nmを超える短いものであり得る。粒子106の直径または特徴サイズは、粒子106が直径または特徴サイズを有する穴108を通ってあまりに迅速に横切るのを防ぐのに十分大きい値であり得る。
【0041】
システム100は、第1の電極110および第2の電極114と電気的に通じている第1の電源116をさらに備えることができる。両電極を通過する電流は、計器デバイス122によって測定することができる。両電極を通過する電流は、核酸分子102を通り抜ける電流を含むことができる。計器デバイス122は、電流計、オシロスコープ、または他の電流測定計で構成され得る。加えて、システム100は、穴108を通じて電場を印加するように構成された第2の電源124を含むことができる。この電場は、穴108を通じて核酸分子102を駆動することができる。液体は、穴108内に配設することができる。この液体は、電導性溶液とすることができ、核酸分子102が穴108を通り抜けることを可能にする。第2の電源124は、第3の電極126および第4の電極128と電気的に通じていることができる。第3の電極126および第4の電極128は、液体内に配設され得るとともに、穴108の向かい合う両端に配設され得る。
【0042】
システム100は、数千から数百万の核酸分子の分析を可能にする複数の分析システムのうちの1つであり得る。複数の分析システムは、穴を通じて核酸分子を駆動するために使用される同じ第2の電源を共有することができる。複数の分析システムの場合には、直径および特徴サイズは、複数のものの平均または中央の直径または特徴サイズであり得る。複数の分析システムを用いることで、マルチプレクシングを可能にすることができ、これは、他のトンネル認識システムを超える利点であり得る。
【0043】
核酸分子の代わりに、生物学的高分子が分析される場合、システムは、生体高分子分析システムも備えることができる。例えば、システム100と同様のシステムは、タンパク質、およびタンパク質のアミノ酸を分析するために使用され得る。
【0044】
B.方法
図2に示すように、実施形態は、核酸分子を分析する方法200を含むことができる。
ブロック202において、方法200は、核酸分子をタンパク質に付着するステップを含むことができる。典型的には、タンパク質は、基板のための酵素の結合箇所と同様に、核酸のための結合箇所を有することができる。タンパク質および核酸は、含まれるタンパク質または酵素に応じた強さを有する非共有結合を形成することができる。タンパク質は、第1の直径を有する粒子に付着することができる。核酸分子、タンパク質、および粒子は、本明細書に記載されたいずれかであり得る。
【0045】
ブロック204において、方法200は、核酸分子の第1の部分を穴の中に移動させるように電場を印加すること含むこともできる。核酸分子の第1の部分は、ヌクレオチドを含むことができる。穴は、第1の電極、第1の絶縁体、および第2の電極によって画定することができる。穴は、第1の直径未満の第2の直径を有することができる。核酸分子は流体中にあることができ、電極が穴の向かい合う両端に位置することができる場合に、電場は流体中の電極を通じて印加することができる。
【0046】
ブロック206において、方法200は、核酸分子の第1の部分を第1の電極と第2の
電極の両方に接触させることをさらに含むことができる(ブロック206)。
図3Aは、絶縁体308の両端の第1の電極304および第2の電極306に接触する核酸分子302の一部を示す。核酸分子302の一部が両電極に接触するときに、分子は、両電極を橋渡しすると考えることもできる。核酸分子302の一部が両電極に接触するときに、電子は、一方の電極から他方の電極へ通り抜けることができる。トンネル電極によって発生する電流は、測定することができる。図3Bに示すように、核酸分子302が第1の電極304または第2の電極306に接触しない場合、電子は電極を通じて通り抜けることができず、電流は、測定することができない。
【0047】
ブロック208において、方法200は、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加することを含むことができる。電極は、トンネル電極と考えることができるとともに、本明細書に記載された任意の電極とすることができる。電圧は、直流または交流の電圧であり得る。電圧は、パルスで印加することができる。方法200は、第1の電極および第2の電極を介して電流を印加することを含むこともできる。
【0048】
ブロック210において、方法200は、核酸分子の第2の部分が第1の電極と第2の電極の両方に接触するように核酸分子を移動させることを含むことができる。核酸分子の第2の部分は、核酸分子の第1の部分とは異なる位置にあることができる。核酸分子の第2の部分は、ヌクレオチドを含むことができる。核酸分子は、タンパク質を用いて移動させられることができる。場合によっては、核酸分子の第2の部分は、核酸分子の第1の部分がタンパク質に配置されるよりもタンパク質の近くに配置することができる。他の場合には、核酸分子の第2の部分は、第1の部分がタンパク質から配置するよりもタンパク質から遠くに配置され得る。
【0049】
図4Aおよび図4Bは、核酸分子402がタンパク質404によってどのように移動することができるかの図を示す。図4Aにおいて、核酸分子402は、絶縁体410の両端の第1の電極406および第2の電極408に接触する。核酸分子402は、電子がヌクレオチド412を通り抜けるように電極に接触し得る。ヌクレオチド412は、A、C,G、T、およびUを含むヌクレオチド塩基のいずれかであることができ、標識が付けられたヌクレオチド、人工的なヌクレオチド、またはメチル基を含むヌクレオチドであり得る。ヌクレオチド414は、ヌクレオチド412がタンパク質404の近くにあるよりも、タンパク質404のより近くにあることができ、一方、ヌクレオチド416は、より遠くに離れていることができる。ヌクレオチド414または416は電極間に配置されていないので、電子は、これらのヌクレオチドを通り抜けることはできない。タンパク質404は、粒子420から離れるようにまたは粒子420に向けて核酸分子402を移動させることができる。図4Bは、粒子420から離れるように移動する図4Aの核酸分子402の一例を示す。タンパク質404は、電子がヌクレオチド412を通り抜けることができるようにヌクレオチド412がもはや並べられないように核酸分子402を移動させることができる。代わりに、ヌクレオチド414は、電子がヌクレオチド414を通り抜けるように並べられてもよい。異なるヌクレオチドを通り抜ける電子は、異なる電流特性を発生させ得る。
【0050】
核酸分子は、穴内で振動し得る。核酸分子は、ブラウン運動の結果として振動し得る。いくつかの実施形態では、振動は、印加された電場、圧力で駆動された流れ、または電場もしくは流れの変化の一部結果であり得る。核酸分子の振動は、電極に接触または橋渡しする核酸分子の一部を変化させ得る。いくつかの例では、核酸分子は、核酸分子の一部が両電極に接触する図3Aと同様の構成と核酸分子が両電極に接触しない図3Bと同様の構成との間で振動し得る。いくつかの構成では、核酸分子の一部は、両電極との接触を行い得るが、電子がより容易にまたはよりやや容易に通り抜けることを可能にするやり方で両電極との接触を行い得る。例えば、核酸分子は、電極の一方と完全な接触を行わなくても
よい。結果として、振動は、電極および核酸を通過する電流に影響を及ぼし得る。
【0051】
ブロック212において、第1の電極、核酸分子の第1の部分、および第2の電極を通る電流は、核酸分子が穴内で振動する間に、測定することができる。振動する核酸は、電流の振幅、パルス幅、および周波数のうちの少なくとも1つに影響を及ぼし得る。パルス幅は、滞留時間とみなすこともでき、これは、両電極に接触したままである核酸分子のある部分の継続期間に関連し得る。いくつかの実施形態では、電流の代わりにまたは電流に加えて、電圧または抵抗が測定されてもよい。いくつかの実施形態では、電気特性は、フーリエ変換などの数学演算によって変換されてもよく、この変換は、分析することができる。
【0052】
ブロック214において、電流に基づいて核酸分子の第1の部分のヌクレオチドは、同定され得る。電流は、知られているヌクレオチドまたは知られている配列から測定される較正電流と比較することができる。ヌクレオチドまたは配列は、ヌクレオチドまたは配列を同定するための指紋として機能する電流パターンを有することができる。測定された電流の振幅、周波数、および/またはパルス幅は、知られているヌクレオチドまたは配列に基づいて知られていないヌクレオチドまたは配列を同定するために使用することができる。振幅は、個々のヌクレオチドおよびこのヌクレオチドの抵抗に依存し得る。周波数は、ヌクレオチドおよび/または隣接するヌクレオチドが穴内でどのように振動するのかに依存し得る。例えば、パターンは、知られているヌクレオチドまたは配列に識別および整合され得る。正確な整合は、必要とされなくてもよい。代わりに、知られていないヌクレオチドまたは配列から測定された電流が、振幅、周波数、および/またはパルス幅に関するある閾値レベルを有する場合、ヌクレオチドまたは配列が、同定され得る。電流特性の分析は、共鳴トンネルダイオードの電気特性の分析に類似し得る。ヌクレオチドのトンネル認識は、Zhaoら、「Single-molecule spectroscopy of amino acids and peptides by recognition tunneling(トンネル電流信号によるアミノ酸およびペプチドの単分子分光)」、Nature Nanotech.9、(2014)466~73によって説明されるアミノ酸のトンネル認識と同様であり得、その内容は、全ての目的について参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、標識が付けられ得る。ヌクレオチドは、化合物のないヌクレオチドよりも強いトンネル電流をもたらす化合物で標識が付けられてもよい。標識は、それが付着されるヌクレオチドのタイプに特有であり得る。標識は、共役有機分子、有機金属化合物、または金属クラスターを含むことができる。標識が付けられヌクレオチドは、分析システム内で標識が付けられたヌクレオチド三リン酸として含まれ得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、環状DNAまたは反復配列で形成されたDNAであり得る。環状DNAに関する実施形態では、タンパク質104は、ポリメラーゼであり得る。ポリメラーゼは、環状DNAをコピーすることができ、ポリメラーゼが完全な円を達成するとき、ちょうど合成された一本鎖DNAは、穴の中に移動させられ得る。一本鎖DNAによる穴の「ねじ込み」は、ポリメラーゼの動力学およびヌクレオチド三リン酸の可用性によって制御することができる。環状DNA鋳型の結果として、一本鎖DNAは、反復配列を含むことができる。反復配列は、電極を通いて回転することができ、これによりヌクレオチドを同定するためのより良い信号を可能にすることができる。
【0055】
他の実施形態では、方法は、核酸分子以外の生体高分子を分析するために使用することができる。例えば、核酸分子以外のタンパク質のヌクレオチド以外のアミノ酸は、方法200と同様の方法によって分析することができる。
【0056】
C.実施例
図5Aおよび図5Bは、ビーズ506に束縛された核酸分子504と比較して自由に流れることができる核酸分子502の電流特性の様子を示す。核酸分子502は、ガラス、パラジウム電極、絶縁層、および窒化ケイ素によって画定されるチャネルにはまることができるが、核酸分子502は、とても迅速にチャネルを通って流れることができる。場合によっては、核酸分子502は、いくらかの時間の間、チャネル内に滞留することができるが、直線の鎖またはほぼ直線の鎖よりも渋滞する可能性がある。渋滞は、一部の領域内で核酸分子がそれ自体に対して倍になることを意味し得るものであり、これは核酸分子に電極を橋渡しさせない可能性がある。対照的に、ビーズ506がチャネル開口の最小サイズよりも大きい直径を有するので、ビーズ506に束縛された核酸分子504は、チャネルを通じて流れることができない。加えて、ビーズ506は、電場がチャネルを通じて核酸分子を引っ張っている間、核酸分子504をチャネル内に固定することができる。結果として、核酸分子504は、直線またはほぼ直線であり得るとともに、渋滞し得ない。核酸分子504が渋滞し得ないとしても、ブラウン運動は、核酸分子504を移動させ得るため、電子が核酸分子504を通り抜ける場合がある。
【0057】
図5A図5Bの両方は、ガラス絶縁体に斜面を有する穴を示す。この斜面は、ナノ製造プロセスの結果であり得る。多くの場合には、穴の側壁は、完全に直線であることはできず、エッチングなどの製造技法の制御および精度から予期されるように傾斜し得るまたは斜めになり得る。分子モータータンパク質は、実験構成を単純にするために、図5Bの実施形態とともに使用されなかった。
【0058】
グラフ508、510、512、514は、電子が核酸分子を通り抜ける結果として得られる電流測定値を示す。グラフ508は、ビーズに束縛されない核酸分子、「オリゴA」からの電流測定値を示し、一方、グラフ510は、同じタイプの核酸分子であるがビーズに束縛される核酸分子からの電流測定値を示す。グラフ512は、ビーズに束縛されない異なる核酸分子、「オリゴC」からの電流測定値を示し、一方、グラフ514は、ビーズに束縛されたオリゴCからの電流測定値を示す。グラフ508および512は、概して、比較対象のグラフ510および514と比較してゼロでない電流を有する時間が少ないことを示す。グラフ510では、大部分の時間について電流はゼロでないが、一方、グラフ508では、電流は、大部分の時間についてゼロまたはゼロの近くである。さらに、グラフ510は、グラフ508と比較してよりずっと反復的または周期的な電流変動パターンを示す。これらの理由がトンネル効果の質に影響を及ぼし得るので、最小電流と最大電流の間の電流は、乏しい接触、より大きい抵抗性のヌクレオチド、または電極との接触を形成または解除するプロセスにおけるヌクレオチドを示し得る。
【0059】
束縛された核酸分子と束縛されない核酸分子との間の電流特性のさらなる差は、グラフ512および514に見ることができる。グラフ512では、電流は、いくつかの電流のスパイクを除いて、ほとんど全ての時間でゼロである。このパターンは、核酸分子がしばしば電極に接触していないことを示す。対照的に、グラフ514は、周期的またはまずまず周期的なパターンが生じている多くの電流のスパイクを示す。グラフ514のパターンは、核酸分子がしばしば電極に接触していることを示す。
【0060】
グラフ508、510、512、および514は、ビーズに束縛された核酸分子がチャネルを通じて自由に流れることができる核酸分子よりも強い電流信号を提供することを示す。信号は、束縛された核酸分子を用いるとより明らかであり得るとともに、ヌクレオチドのより容易でより正確な同定を可能にし得る。
【0061】
II.トンネル分断接合内の同一平面上の電極
いくつかの実施形態では、トンネル認識は、ほぼ同一平面上である2つの電極間で実施することができる。電極同士は、2nm程度の距離だけ分離することができ、これによってヌクレオチドのトンネル認識を可能にすることができる。各電極は、2nmよりも大きい直径を有する穴の中に延びることができる。そのとき、電極間の距離は、穴の直径から独立しており得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、ナノポアデバイスおよび方法は、核酸分子のみならず生物学的高分子が分析されることを可能にすることができる。例えば、タンパク質は、タンパク質中のアミノ酸を決定するために分析を受けることができる。ナノポアの長さおよび直径は、核酸分子のサイズの代わりに、アミノ酸のサイズに対して調整することができる。例えば、電極間の距離は、1~2nm程度であり得る。トンネル認識のナノポアデバイスおよび方法は、以下にさらに説明される。
【0063】
A.システム
図6Aおよび図6Bに示すように、実施形態は、核酸分析システム600を含むことができる。図6Aは上面図であり、図6Bは側面図である。上面図は、シリコンウェハまたはマイクロ流体チップの表面に関し得る。システム600は、第1の直径を有する粒子606に付着されたタンパク質604を含むことができる。タンパク質604は、本明細書に記載された任意のタンパク質であり得るとともに、粒子606は、本明細書に記載された任意の粒子であり得る。
【0064】
核酸分子602は、粒子606にすでに付着されたタンパク質104とともにシステムに導入することができる。核酸分子602は、本明細書に記載された任意の核酸分子を含み得る。核酸分子602は、タンパク質604に付着することができる。
【0065】
システム600は、第1の絶縁体610によって画定される穴608を含むこともできる。第1の絶縁体は、Si3N、酸化物絶縁体(例えば、SiO、Al、ケイ酸酸化物)、ガラス、石英、または本明細書に記載された任意の絶縁体材料を含むことができる。穴608は、第1の直径よりも小さい第2の直径を有することができる。穴608の第2の直径は、図1Aおよび図1Bの穴108の直径よりも大きいものであり得る。第2の直径は、50nmまでであり得る。穴608は、直径に直交する長手方向軸612を有することができる。
【0066】
システム600は、第1の電極614をさらに含むことができる。第1の電極614の一部は、穴608の中に延びることができる。第1の電極は、金、パラジウム、プラチナ、または本明細書に記載された任意の電極材料で構成される。
【0067】
システム600は、第2の電極616を備えることもでき、第2の電極616の一部は穴の中に延びる。第1の電極614の一部および第2の電極616の一部を含む平面は、長手方向軸に垂直であり得る。第1の電極614および第2の電極616は、間隙を画定することができ、この間隙は、2つの電極間の最短距離を含む。各実施形態において、第1の電極614と第2の電極616の間の最短距離は、1nm未満、1nmから2nm、2nmから3nm、3nmから5nm、または5nmから10nmであり得る。
【0068】
第1の電極614および第2の電極616は、単一のナノワイヤを2つの電極に分断することによって形成することができる。分断は、他方の断片に接触しない2つの断片にナノワイヤを分けるための種々の技法を伴い得る。単一のナノワイヤの分断は、半導体チップをその上のナノワイヤともに物理的に曲げることによるものであり得る。そして、このチップの曲げによってワイヤを分断することができ、分断されたナノワイヤの2つの部分の間に間隙を作り出すことができる。穴608の第2の直径は、チップの機械的な曲げに
対応するのに十分大きいものであり得る。電極は、ビームで切断されることによって、または高電位を印加することによって分断することもできる。第2の電極は、本明細書に記載された任意の電極材料とすることができる。
【0069】
図6Aおよび図6Bは、穴が三角形または円錐形の形状を有する第1の電極614および第2の電極616を示す。電極の形状は、電極同士が触れるまでチップの前後の曲げが繰り返されることによって形成することができる。次いで、印加される電位は、電極の先端を成形するのに役立ち得る。他の実施形態では、第2の電極616に最も近い第1の電極614の一部は、点にならなくてもよい。代わりに、電極の端部は、平坦または半球形であってもよい。
【0070】
加えて、システム600は、第1の電極614および第2の電極616と電気的に通じている第1の電源618を備えることができる。電極を通過する電流は、計器デバイス622によって測定することができる。計器デバイス622は、電極を橋渡しする核酸分子の一部に沿った電極を通じるとともに電極を橋渡しする核酸分子の一部を通じた電流を測定するように構成することができる。計器デバイス622は、本明細書に記載された任意の計器デバイスであり得る。
【0071】
第1の電極614は、第1の絶縁体610と第2の絶縁体620との間にあることができる。同様に、第2の電極616は、第1の絶縁体610と第2の絶縁体620との間にあることができる。第1の絶縁体610および第2の絶縁体620は、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、ガラス、石英、および本明細書に記載された他の絶縁材料で構成することができる。フォトレジストは、トンネル分断接合における第1の絶縁体に必要なスケールで成形するのが難しい場合がある。絶縁体材料は、図6Aおよび図6Bに示すものよりも遠くに延びることができるが、これは、絶縁体材料がマイクロ流体チップの大部分の材料であり得るからである。
【0072】
いくつかの実施形態では、システム600は、第2の電源(図示せず)を含むことができる。第2の電源は、穴608を通じて核酸分子を移動させる電場を印加するように構成され得る。電場は、穴を構成する層間で印加され得る。図1のシステム100と同様に、システム600は、穴608内に配設された液体を有することができる。電源は、第3の電極および第4の電極と電気的に通じていることができる。第3の電極および第4の電極は、液体内に配設されるとともに、穴608の向かい合う両端に配設されることができる。
【0073】
第1の絶縁体610および第2の絶縁体620は、シリコンチップなどのマイクロ流体チップに取り付けられ得る。絶縁体は、半導体材料の上に堆積または形成されてもよく、あるいは半導体材料からパターン形成されてもよい。半導体材料は、シリコンウェハを含み得る。
【0074】
システムは、核酸分子の代わりに生物学的高分子が分析される生体高分子分析システムを備えることもできる。例えば、システム600に類似するシステムが、タンパク質、およびタンパク質のアミノ酸を分析するために使用されてもよい。
【0075】
B.方法
図7に示すように、さらなる実施形態は、核酸分子を分析する方法700を含むことができる。
【0076】
ブロック702において、方法700は、核酸分子をタンパク質に付着するステップを含むことができる。タンパク質は、第1の直径を有する粒子に付着することができる。
ブロック704において、方法700は、核酸分子の一部を絶縁体によって画定された穴の中に移動させることを含むこともできる。核酸分子の一部は、ヌクレオチドを含むことができる。穴は、第1の直径未満の第2の直径を有することができる。核酸分子の一部を移動させることは、電場を印加して穴を通じて核酸分子を駆動することを含むことができる。これらおよび他の実施形態では、上記一部を移動させることは、圧力駆動された液体の流れを用いて核酸分子を移動させることを含むことができる。対流的な液体の流れが、核酸分子を、穴を通じて押すために使用されてもよい。核酸分子を移動させるための流れる液体は、図1Aおよび図1Bのシステム100と比較して図6Aおよび図6Bのシステム600と同様のシステムでより有効であり得る。システム100は、厚さわずか約10から20nmとすることができ、液体の流れは、様々な層からなるサンドイッチを分断することができる。他方で、システム600は、システム100よりも厚くなるように製造することができる。さらに、絶縁体を含むシステム600の部分は、ウェハまたは他の材料に強く取り付けることができ、これにより流れている液体中でより大きい安定性をもたらすことができる。
【0077】
ブロック706において、方法700は、核酸分子の一部を第1の電極と第2の電極との間の間隙の中に移動させることをさらに含む。間隙は、電極間の最短距離を表す線を含むことができる。核酸分子の一部を移動させることは、上記一部を穴の中に移動させた同じ力を使用することを含むことができる。
【0078】
ブロック708において、方法700は、核酸分子の一部を第1の電極と第2の電極の両方に接触させることを含むことができる。
図8Aは、第1の電極804および第2の電極806に接触する核酸分子802を示しており、両電極は、絶縁体808および810において電気的に絶縁されている。核酸分子802が両電極に接触するときに、分子は、両電極を橋渡しすると考えることもできる。この接触中、電子は、一方の電極から他方の電極へ通り抜けることができる。トンネル電極によって発生する電流は、測定することができる。図8Bに示すように、核酸分子が第1の電極804または第2の電極806に接触しない場合、電子は電極を通じて通り抜けることができず、電流は、測定することができない。図8Bに示すように、核酸分子802は、第1の電極804にのみ接触することができ、第2の電極806には接触することができない。
【0079】
ブロック710において、第1の電極、核酸分子、および第2の電極を通る電流は、核酸分子が穴内で振動する間に、測定することができる。
ブロック712において、電流に基づいて、核酸分子の一部のヌクレオチドは、本明細書中に記載した方法と同様に、同定することができる。
【0080】
他の実施形態では、方法は、核酸分子以外の生体高分子を分析するために使用することができる。例えば、核酸分子以外のタンパク質のヌクレオチド以外のアミノ酸は、方法700と同様の方法によって分析することができる。
【0081】
前述の説明では、本技術の様々な実施形態の理解を可能にするため、説明のために、多数の詳細が記載されている。しかしながら、いくつかの実施形態は、これらの詳細の一部がなくても、またはさらなる詳細とともに実施することができることが当業者には明らかであろう。
【0082】
いくつかの実施形態を説明してきたが、様々な修正例、代替構成、および均等物が本発明の趣旨から逸脱することなく使用され得ることが、当業者によって認識されよう。さらに、いくつかのよく知られているプロセスおよび要素は、不必要に本発明をあいまいにするのを防ぐために、記載されてない。さらに、任意の特定の実施形態の詳細は、この実施
形態の変形例の中に常に存在しなくてもよく、または他の実施形態に加えられてもよい。
【0083】
[0015]値の範囲が与えられる場合、介在する各値は、文脈において明確に別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限との間で下限値の単位の10分の1までやはり具体的に開示されていると理解される。一定の範囲内の任意の一定の値または介在する値と一定の範囲内の任意の他の一定のまたは介在する値との間のそれぞれのより小さい範囲は、包含される。これらのより小さい範囲の上限と下限は、この範囲内に独立して含まれてもよくまたは除外されてもよく、このより小さい範囲に限界のいずれかが含まれる場合の範囲、このより小さい範囲に限界のどちらも含まれない場合の範囲、またはこのより小さい範囲に限界の両方が含まれる場合の範囲は、本発明の範囲内にやはり包含され、示された範囲内でいずれかの特に除外された限界に従う。一定の範囲が限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれた限界のいずれかまたは両方を除外した範囲も含まれる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B