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  • 特許-リレー装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】リレー装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 45/12 20060101AFI20220721BHJP
   H01H 50/54 20060101ALI20220721BHJP
   H01H 1/62 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H01H45/12
H01H50/54 A
H01H1/62
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019021786
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020129489
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 陽介
(72)【発明者】
【氏名】坂井 大樹
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-162841(JP,U)
【文献】特開2015-115295(JP,A)
【文献】特開2014-120380(JP,A)
【文献】特開平4-282524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/12
H01H 50/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点と、前記固定接点に接触することで通電させる可動接点とを有するリレー装置であって、
前記固定接点は、
前記可動接点と接触する面に貫通孔を有する不動部と、
前記不動部に対し前記可動接点の逆側から前記貫通孔に挿通可能な突出部を有する変位部と、
前記変位部に対し前記不動部の逆側から前記変位部を支持する高吸水性部材と、
を備えるリレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な接続を切り換えるリレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、インバータなどの車載機器がリレー装置を介して高電圧のバッテリと接続される。かかるリレー装置は、通電すべき電流が大きいので、電磁誘導により駆動する機械式のものが用いられることが多い。
【0003】
しかし、このような機械式のリレー装置は、低温環境下で氷結し易いという欠点がある。そこで、リレーの可動接点を固定接点に対して近接離間する方向に繰り返し移動(振動)させ、氷結を解除する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-165406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、振動等によって氷結を解除する場合、その間、リレー装置として機能させることができないので、結果、氷結の解除タイミングが制限されることとなる。また、振動等の制御ロジックを追加することでシステムが複雑化するとともに処理負荷が増加してしまう。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑み、簡易な構成で氷結を解除することが可能なリレー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、固定接点と、固定接点に接触することで通電させる可動接点とを有する本発明のリレー装置では、固定接点は、可動接点と接触する面に貫通孔を有する不動部と、不動部に対し可動接点の逆側から貫通孔に挿通可能な突出部を有する変位部と、変位部に対し不動部の逆側から変位部を支持する高吸水性部材と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
簡易な構成で氷結を解除することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両におけるリレー装置の配置例を示した説明図である。
図2】リレー装置の固定接点の概略的な構成を示した図である。
図3】高吸水性部材の作用を説明するための説明図である。
図4】高吸水性部材の作用を説明するための断面図である。
図5】リレー装置の他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、車両1におけるリレー装置16の配置例を示した説明図である。車両1は、例えば、モータを駆動源とした電気自動車である。なお、車両1は、モータと並行してエンジンが設けられたハイブリッド電気自動車であってもよい。以下では、本実施形態に関係する構成や処理について詳細に説明し、本実施形態と無関係の構成や処理については説明を省略する。
【0012】
車両1には、バッテリ10、車載機器12、コンデンサ14、リレー装置16(16a、16b、16c)、抵抗器18が含まれる。バッテリ10は、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池である。バッテリ10は、充電器から供給された電力を充電(蓄電)する。また、バッテリ10は、車両1の加速時などにおいてモータに電力を供給する。
【0013】
車載機器12は、バッテリ10に接続され、バッテリ10との間で電力の授受を行う。車載機器12は、例えば、バッテリ10の直流電力を所望の周波数の交流電力に変換してモータに供給する駆動用のインバータである。なお、車載機器12は、駆動用のインバータに限らず、例えば、12Vのスタータや、車室内に冷風または暖風を送出するための圧縮媒体を生成するエアコンプレッサなどであってもよい。コンデンサ14は、車載機器12に並列に接続され、バッテリ10の電圧と車載機器12の電圧を平滑化する。
【0014】
リレー装置16は、バッテリ10と車載機器12との電気的な接続を切り換える。具体的に、車両1の始動時において、リレー装置16a、16bが通電状態となり、抵抗器18を介して電流量が制限された電荷をコンデンサ14に蓄積する(プリチャージ)。こうして車載機器12への突入電流を回避する。そして、プリチャージが終了すると、リレー装置16aが電断(非通電)状態となり、リレー装置16cが通電状態となり、バッテリ10から車載機器12に電力を供給させる。
【0015】
ここで、リレー装置16の構成を詳述する。リレー装置16は、筐体30、固定接点32、可動接点34、電磁コイル36を含んで構成される。筐体30は、中空の箱状に形成され、固定接点32、可動接点34、電磁コイル36を収容する。
【0016】
固定接点32は、金属で構成され、固定接点32を構成する2つの接点32a、32bが互いに離隔した状態で筐体30に固定される。可動接点34は、例えば、固定接点32を構成する2つの接点32a、32bに亘って延在する平板状の金属で形成される。可動接点34は、2つの接点32a、32bに対向配置され、対向方向に移動自在である。
【0017】
電磁コイル36は、電圧が印加されて電流が流れると電磁石として機能する。固定接点32と可動接点34は、電磁コイル36に電流が流れていない間離隔し電断状態となっている。電磁コイル36に電流が流れると、電磁コイル36は可動接点34を吸引し、可動接点34と固定接点32とが接触する。そうすると、固定接点32を構成する2つの接点32a、32b間に電流が流れる通電状態となる。こうして、リレー装置16は、バッテリ10と車載機器12との電気的な接続を切り換えることが可能となる。
【0018】
このようなリレー装置16は、通電すべき電流が大きいので、上記のような電磁誘導により駆動する機械式のものが用いられることが多い。
【0019】
しかし、このようなリレー装置16は、低温環境下で氷結し易い。これは、固定接点32の発熱と冷却によるリレー装置16内の水分の蒸発と凝固に起因する。特に、高湿度な環境下に曝されたリレー装置16は耐氷結性能が著しく低下し、氷結による接点不良が生じ易い。ここで、振動等によって氷結を解除することが考えられるが、そのような制御を行う間、リレー装置として機能させることができなくなる。また、振動等の制御ロジックを追加することでシステムが複雑化するとともに処理負荷が増加してしまう。そこで、本実施形態では、電気的な制御を伴わない簡易な構成で氷結を解除する。
【0020】
図2は、リレー装置16の固定接点32の概略的な構成を示した図である。ここでは、特に、筐体30に固定された固定接点32の構成を説明する。なお、可動接点34は、破線で示すように、固定接点32に対し、図中上方に位置し、電磁コイル36に電流が流れることで、下方に移動して固定接点32と接触する。
【0021】
固定接点32は、不動部50と、変位部52と、高吸水性部材54とを含んで構成される。
【0022】
不動部50は、筐体30と離隔した(空隙を有した)状態で筐体30に固定される。不動部50は、例えば、平板状の金属で形成される。不動部50における可動接点34と接触する面には、規則的に離間した複数(ここでは9)の貫通孔50aが設けられている。かかる貫通孔50aの数は1以上で任意に決定することができる。
【0023】
変位部52は、不動部50に対し可動接点34の逆側に位置する。変位部52は、例えば、平板状に形成され、不動部50側の面には、不動部50に向けて突出する突出部52aが複数(ここでは9)設けられる。突出部52aの先端は、例えば、鋭利な形状により接触面積が小さく形成される。突出部52aは、不動部50の貫通孔50aに対向配置され、変位部52が上方に移動することで、貫通孔50aに挿通する。変位部52は、例えば、フレキシブルな金属部材52bやバネを通じて不動部50と電気的に接続される。
【0024】
高吸水性部材54は、変位部52に対し不動部50の逆側に位置する。高吸水性部材54は、図中下部が筐体30に固定され、図中上部が変位部52に固定されている。したがって、高吸水性部材54は、変位部52を不動部50の方向に支持することとなる。
【0025】
図3は、高吸水性部材54の作用を説明するための説明図である。高吸水性部材54は、自重の数百倍から約千倍の水を保持可能な高吸水性高分子(SAP)を含み、吸水により膨張する高吸水性樹脂等で構成される。
【0026】
高吸水性部材54が吸水する前は、図2に示したように、高吸水性部材54が収縮し、不動部50と変位部52とも離隔している。しかし、高吸水性部材54が吸水すると、図3のように、高吸水性部材54が少なくとも図3中上方向に膨張し、変位部52が上方に押し上げられ、不動部50と変位部52との距離が縮まる。そうすると、変位部52の突出部52aは、不動部50の貫通孔50aを挿通し、不動部50の上面より上方に突出する。なお、ここでは、説明の便宜上、高吸水性部材54の膨張前後の差分(ストローク)を誇大して示しているが、実際は、例えば、1~2mmといったように短く、突出部52aの高さは、膨張前後の差分および貫通孔50aの長さの和より大きい。
【0027】
なお、このとき、高吸水性部材54が自力で変位部52を上方に押し上げるとしてもよいし、レール等の摺動機構を通じて変位部52を上方に押し上げるとしてもよい。
【0028】
図4は、高吸水性部材54の作用を説明するための断面図である。車両1が曝されている環境が低湿度であれば、高吸水性部材54は収縮している。したがって、図4(a)のように、突出部52aが不動部50の上面から突出せず、電磁コイル36が通電状態となると、可動接点34は不動部50の上面と面接触する。
【0029】
一方、車両1が曝されている環境が高湿度であれば、高吸水性部材54は、図4(b)に黒丸で示すように吸水し、これにより膨張する。したがって突出部52aが不動部50の上面から突出し、電磁コイル36が通電状態となると、可動接点34は突出部52aの先端と低面積で接触する。
【0030】
このような高湿度の環境下で、周囲が低温になると、図4(c)のように、水が凝固して、固定接点32の周囲で氷結が生じる。しかし、突出部52aの先端の面積は極めて小さいので、突出部52aの先端では、水分が凝固すること自体が回避される。
【0031】
また、上記のように可動接点34と固定接点32とは、突出部52aの先端において低面積で接触するので、その部位の抵抗値が増大する。そうすると、図4(c)のように、高抵抗の部位にジュール熱が生じ、氷結が解除される。
【0032】
このとき、高吸水性部材54では、変位部52を通じて伝わった熱により、高吸水性部材54が吸収した凝固水分が昇華される。そうすると、図4(d)のように、高吸水性部材54が収縮し、突出部52aが不動部50の上面より降下して、可動接点34は不動部50の上面と再度、面接触する。こうして、可動接点34と不動部50との低抵抗の接続が復活し、通常の通電が為される。
【0033】
ここでは、高湿度かつ低温時に、高吸水性部材54を膨張させ、可動接点34に突出部52aを低面積で接触させるといった簡易な構成で氷結を解除することが可能となる。また、電気的な制御ではなく、定性的な構造として氷結の解除機能を構成することで、システムの複雑化や処理負荷の増加を回避することができる。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0035】
例えば、上述した実施形態においては、突出部52aの先端が鋭利な形状で形成される例を挙げて説明した。しかし、形状は、かかる場合に限らず、接触面積が小さくなれば足り、例えば、球形状として点接触させたり、接触点を面一で複数配置し、複数で点接触させることもできる。
【0036】
また、図5(a)のように、突出部52aを円錐で形成し、貫通孔50aの内周をその円錐形状と嵌合するように傾斜して形成してもよい。そうすると、高吸水性部材54が膨張しても、図5(b)のように、不動部50で突出部52aの突出量を制限することができる。かかる構成により、突出部52aの不動部50上面からの突出距離を所定の値に制限することが可能となる。
【0037】
また、上述した実施形態では、当該リレー装置16を車両1に適用する例を挙げて説明したが、かかる場合に限らず、電気的な接続を切り換えることを要するあらゆる電気機器や装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、電気的な接続を切り換えるリレー装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 車両
16 リレー装置
32 固定接点
34 可動接点
50 不動部
50a 貫通孔
52 変位部
52a 突出部
54 高吸水性部材
図1
図2
図3
図4
図5