(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】二次電池、二次電池スタック、及びバスバーモジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/193 20210101AFI20220721BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20220721BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20220721BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20220721BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20220721BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20220721BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20220721BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20220721BHJP
【FI】
H01M50/193
H01M50/188
H01M50/184 A
H01M50/176
H01M50/507
H01M50/569
H01M50/298
H01M50/204 101
(21)【出願番号】P 2019125888
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】羽田 恭章
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 嵩哲
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-157133(JP,A)
【文献】特開2010-257686(JP,A)
【文献】特開平11-029762(JP,A)
【文献】実公昭33-002130(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/00-50/198
H01M50/50-50/598
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と電解液とが筐体内に収容されており、前記電極体が備える集電体と電気的に接続された外部端子を備える二次電池であって、
前記外部端子は、前記筐体の外部から内部に貫通している貫通孔に設けられており、
前記外部端子と前記筐体とで形成された空隙のうち前記筐体の内部側に位置している空隙に第1のシール部材が設けられており、
前記外部端子と前記筐体とで形成された空隙のうち前記筐体の外部側に位置している空隙に第2のシール部材が設けられており、
前記筐体の内部と外部とは前記第1及び第2のシール部材を用いてシールされており、
前記筐体の内部から外部に向かう前記電解液の漏液経路の、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の位置に吸水部材が設けられて
おり、
前記吸水部材は、吸水性ポリマーとポリブテンとの混合物で構成されている、
二次電池。
【請求項2】
前記吸水性ポリマーの粒径が1μm以上150μm以下である、請求項
1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記ポリブテンの数平均分子量が300~1000である、請求項
1または
2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記吸水性ポリマー(A)と前記ポリブテン(B)との混合比(A:B)が、1:0.5~1:2である、請求項
1~
3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
電極体と電解液とが筐体内に収容されており、前記電極体が備える集電体と電気的に接続された外部端子を備える二次電池であって、
前記外部端子は、前記筐体の外部から内部に貫通している貫通孔に設けられており、
前記外部端子と前記筐体とで形成された空隙のうち前記筐体の内部側に位置している空隙に第1のシール部材が設けられており、
前記外部端子と前記筐体とで形成された空隙のうち前記筐体の外部側に位置している空隙に第2のシール部材が設けられており、
前記筐体の内部と外部とは前記第1及び第2のシール部材を用いてシールされており、
前記筐体の内部から外部に向かう前記電解液の漏液経路の、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の位置に吸水部材が設けられており、
前記第1及び第2のシール部材は、前記外部端子の外周面と前記貫通孔の側面とで形成される空隙に設けられるとともに、前記外部端子の外周面と前記貫通孔の側面とで押圧されており、
前記吸水部材は、前記外部端子の外周面と前記貫通孔の側面とで形成される空隙において、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間に設けられている、
二次電池。
【請求項6】
電極体と電解液とが筐体内に収容されており、前記電極体が備える集電体と電気的に接続された外部端子を備える二次電池であって、
前記外部端子は、前記筐体の外部から内部に貫通している貫通孔に設けられており、
前記外部端子と前記筐体とで形成された空隙のうち前記筐体の内部側に位置している空隙に第1のシール部材が設けられており、
前記外部端子と前記筐体とで形成された空隙のうち前記筐体の外部側に位置している空隙に第2のシール部材が設けられており、
前記筐体の内部と外部とは前記第1及び第2のシール部材を用いてシールされており、
前記筐体の内部から外部に向かう前記電解液の漏液経路の、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の位置に吸水部材が設けられており、
前記外部端子は、当該外部端子の外周面において前記貫通孔と交差する方向に伸びるフランジ部を有し、
前記第2のシール部材は、前記フランジ部と前記筐体の外側の面とで形成される空隙に設けられるとともに、前記フランジ部と前記筐体の外側の面とで押圧されており、
前記第1のシール部材は、前記外部端子の外周面と前記貫通孔の側面とで形成される空隙に設けられるとともに、前記外部端子の外周面と前記貫通孔の側面とで押圧されており、
前記吸水部材は、前記外部端子の外周面と前記貫通孔の側面とで形成される空隙に設けられている、
二次電池。
【請求項7】
電極体と電解液とが筐体内に収容されており、前記電極体が備える集電体と電気的に接続された外部端子を備える二次電池であって、
前記外部端子は、前記筐体の外部から内部に貫通している貫通孔に設けられており、
前記外部端子と前記筐体とで形成された空隙のうち前記筐体の内部側に位置している空隙に第1のシール部材が設けられており、
前記外部端子と前記筐体とで形成された空隙のうち前記筐体の外部側に位置している空隙に第2のシール部材が設けられており、
前記筐体の内部と外部とは前記第1及び第2のシール部材を用いてシールされており、
前記筐体の内部から外部に向かう前記電解液の漏液経路の、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の位置に吸水部材が設けられている二次電池を複数備え、当該複数の二次電池がバスバーモジュールを用いて互いに接続された二次電池スタックであって、
前記バスバーモジュールは、
前記複数の二次電池の外部端子を接続するバスバーと、
前記二次電池の電圧を検出するための電線と、
前記外部端子と前記電線とを接続する電圧検出端子と、を備え、
前記電圧検出端子は、接続部において前記電線と接続されており、
前記接続部を覆うように吸水部材が設けられている、
二次電池スタック。
【請求項8】
被覆された前記電線に前記電圧検出端子が備える突起部を押し込み、当該突起部を前記電線内部の導線に電気的に接続することで、前記電圧検出端子と前記電線とが接続されている、請求項
7に記載の二次電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池、二次電池スタック、及びバスバーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の二次電池が、電気自動車やハイブリッド自動車等の電源として広く用いられている。このような二次電池は、複数の単電池を直列に接続して二次電池モジュールを構成し、この二次電池モジュールを複数組み合わせて二次電池スタック(組電池)として使用することもある。
【0003】
特許文献1には、二次電池で用いられる外部端子に関する技術が開示されている。特許文献2には、バスバーモジュールに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-138207号公報
【文献】特開2010-257686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池は、電極体と電解液とが筐体内に収容されている構造を備える。筐体内の電極体は、一部が外部に露出している外部端子と電気的に接続されている。このような構成を備える二次電池では、筐体内の電解液が外部端子の周囲から漏出することがある。特に、アルカリ性の電解液を用いた二次電池では、電気化学的な要因により、電解液が電極体や外部端子を辿って外部に漏出するクリープ現象が発生する場合がある。
【0006】
上記課題に鑑み本発明の目的は、電解液の漏出を抑制することが可能な二次電池、二次電池スタック、及びバスバーモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる二次電池は、電極体と電解液とが筐体内に収容されており、前記電極体が備える集電体と電気的に接続された外部端子を備える二次電池であって、前記外部端子は、前記筐体の外部から内部に貫通している貫通孔に設けられており、前記外部端子と前記筐体とで形成された空隙のうち前記筐体の内部側に位置している空隙に第1のシール部材が設けられており、前記外部端子と前記筐体とで形成された空隙のうち前記筐体の外部側に位置している空隙に第2のシール部材が設けられており、前記筐体の内部と外部とは前記第1及び第2のシール部材を用いてシールされており、前記筐体の内部から外部に向かう前記電解液の漏液経路の、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間の位置に吸水部材が設けられている。
【0008】
本発明の一態様にかかる二次電池スタックは、上述の二次電池を複数備え、当該複数の二次電池がバスバーモジュールを用いて互いに接続された二次電池スタックである。前記バスバーモジュールは、前記複数の二次電池の外部端子を接続するバスバーと、前記二次電池の電圧を検出するための電線と、前記外部端子と前記電線とを接続する電圧検出端子と、を備える。前記電圧検出端子は、接続部において前記電線と接続されており、前記接続部を覆うように吸水部材が設けられている。
【0009】
本発明の一態様にかかるバスバーモジュールは、複数の二次電池が各々備える外部端子を互いに接続するバスバーモジュールである。前記バスバーモジュールは、前記複数の二次電池の外部端子を接続するバスバーと、前記二次電池の電圧を検出するための電線と、前記外部端子と前記電線とを接続する電圧検出端子と、を備える。前記電圧検出端子は、接続部において前記電線と接続されており、前記接続部を覆うように吸水部材が設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、電解液の漏出を抑制することが可能な二次電池、二次電池スタック、及びバスバーモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態にかかる二次電池を示す正面図である。
【
図2】実施の形態にかかる二次電池の外部端子付近の構成例を示す拡大断面図である。
【
図3】実施の形態にかかる二次電池の外部端子付近の他の構成例を示す拡大断面図である。
【
図4】実施の形態にかかる二次電池スタックの構成を示す上面図である。
【
図5】実施の形態にかかるバスバーモジュールの構成を示す図である(吸水部材の図示を省略している図)。
【
図6】実施の形態にかかるバスバーモジュールの構成を示す図である(吸水部材を図示している図)。
【
図7】
図6の切断線VII-VIIにおける断面図である。
【
図8】吸水性ポリマーの粒径と吸水率との関係を示すグラフである。
【
図9】吸水性ポリマーの粒径と粘度との関係を示すグラフである。
【
図10】吸水性ポリマーの粒径と封止期間との関係を示すグラフである。
【
図11】吸水性ポリマーの粒径と漏れ速度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる二次電池を示す正面図である。
図1に示すように、二次電池1は、筐体10の外部に露出している外部端子11a、11bを備える。例えば、外部端子11aは負極端子であり、外部端子11bは正極端子である。なお、
図1に示す例では、外部端子11a、11bを筐体10の側面(x軸方向プラス側およびx軸方向マイナス側の各々の側面)に設けた構成例を示した。しかし、外部端子11a、11bを設ける場所は、筐体10の外面であればこれらの位置に限定されることはない。
【0013】
筐体10は内部に空間を備える構造体であり、筐体10の内部には、電極体(不図示)と電解液(不図示)とが収容(密封)されている。外部端子11a、11bの各々は、筐体10の内部において、電極体が備える集電体とそれぞれ電気的に接続されている。具体的には、負極端子である外部端子11aは、電極体の負極集電体に電気的に接続されている。正極端子である外部端子11bは、電極体の正極集電体に電気的に接続されている。なお、以下では外部端子11aと外部端子11bを総称して「外部端子11」と記載する場合もある。
【0014】
二次電池1は、例えば、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池などの電解液を用いた二次電池である。本実施の形態において二次電池1は、二次電池1の内部に1つの電極体を配置して構成した単電池であってもよく、また、二次電池1の内部に複数の電極体を配置し、これらを互いに直列に接続して構成した二次電池モジュール(単位電池)であってもよい。
【0015】
なお、本実施の形態にかかる発明は、電解液を用いた二次電池であれば、これらの二次電池に限定されることなく広く適用することができる。特に本実施の形態にかかる発明は、アルカリ性の電解液を用いた二次電池、つまり、クリープ現象によって電解液が外部に漏出するような二次電池に好適に用いることができる。更に、本実施の形態にかかる発明は、このようなクリープ現象が起こりやすい二次電池の負極に特に好適に用いることができる。
【0016】
次に、外部端子の取り付け構造について詳細に説明する。
図2は外部端子の取り付け構造を示す図であり、二次電池の外部端子付近の構成例を示す拡大断面図である。
図2に示すように、外部端子11は、筐体10の外部から内部に貫通している貫通孔に設けられている。具体的には、二次電池1の筐体10の側壁に、x軸方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に外部端子11が挿通されている。外部端子11は、x軸方向プラス側の端部において集電体12と接合されている。例えば、外部端子11および集電体12は金属材料を用いて構成されている。例えば、外部端子11のx軸方向プラス側の端部は、溶接を用いて集電体12に接合されている。これにより、集電体12と外部端子11とを電気的に接続することができる。
【0017】
外部端子11と筐体10とで形成された空隙のうち、筐体10の内部側(x軸方向プラス側)に位置している空隙には、シール部材13が設けられている。また、外部端子11と筐体10とで形成された空隙のうち、筐体10の外部側(x軸方向マイナス側)に位置している空隙には、シール部材14が設けられている。シール部材13、14は、ゴムや樹脂材料等の弾性変形する材料を用いて構成することができる。また、モールドによるシールやカシメによるシールによって、シール部材13、14を構成してもよい。
【0018】
シール部材13、14は、外部端子11の外周面と貫通孔の側面とで形成される空隙に設けられるとともに、外部端子11の外周面と貫通孔の側面とで押圧されている。したがって、筐体10の内部と外部とがシール部材13、14を用いてシールされる。
【0019】
例えば、外部端子11のyz面における断面形状が円状である場合、x軸方向からみたシール部材13、14の形状は円状である。また、外部端子11のyz面における断面形状が矩形状である場合、x軸方向からみたシール部材13、14の形状は矩形状である。
【0020】
また、外部端子11の外周面には、貫通孔と交差する方向に伸びるフランジ部17が形成されている。フランジ部17のx軸方向プラス側の面は、筐体10の外側の側面に当接している。これにより筐体10に対する外部端子11のx軸方向の位置が固定される。
【0021】
更に本実施の形態にかかる二次電池1では、シール部材13とシール部材14との間に吸水部材15が設けられている。つまり、筐体10の内部から外部に向かう電解液の漏液経路であって、シール部材13とシール部材14との間の位置に吸水部材15が設けられている。換言すると、吸水部材15は、外部端子11の外周面と貫通孔の側面とで形成される空隙において、シール部材13とシール部材14との間に設けられている。なお、吸水部材15を構成している具体的な材料については後述する。
【0022】
本実施の形態にかかる二次電池1では、このようにシール部材13とシール部材14との間に吸水部材15を設けているので、筐体10の内部から外部に電解液が漏出することを抑制することができる。
【0023】
すなわち、電解液は筐体10の内部から外部に向かう漏液経路に沿って徐々に移動して外部に漏出しようとする。筐体10の内部から外部に向かう漏液経路にシール部材13、14を設けることで、電解液の移動を止めることができる。しかしながら、2つのシール部材13、14を設けた場合であっても、時間の経過とともに電解液が筐体10の内部から外部に向かって徐々に移動して、電解液が筐体10の外部に漏出する場合もある。特に、アルカリ性の電解液を用いた二次電池では、クリープ現象により電解液が漏液経路に沿って徐々に移動し、電解液が外部に漏出しやすい。
【0024】
そこで本実施の形態にかかる二次電池1では、シール部材13とシール部材14との間に吸水部材15を設けている。つまり、漏液経路の上流側に位置するシール部材13と漏液経路の下流側に位置するシール部材14との間に、吸水部材15を設けている。このように吸水部材15を設けた場合は、筐体10の内部から移動してきた電解液がシール部材13を通過したとしても、この通過してきた電解液を吸水部材15を用いて吸収することができる。したがって、筐体10の内部から外部に電解液が漏出することを抑制することができる。
【0025】
また、仮に吸水部材15の吸収量が最大に達し、電解液が吸水部材15を通過したとしても、漏液経路の下流側に配置されているシール部材14を用いて、電解液が筐体10の外部に漏出することを抑制することができる。特に、本実施の形態では、吸水部材15を用いて電解液を所定の量、吸収することができるので、漏液経路の下流側のシール部材14に到達する電解液の量を少なくすることができる。よって、電解液の漏出を効果的に抑制することができる。
【0026】
また、本実施の形態にかかる二次電池1では、シール部材13とシール部材14との間に吸水部材15を設けているので、吸水部材15が外気に触れることを抑制することができる。したがって、外気に含まれている水分を吸水部材15が吸収することを抑制することができる。つまり、吸水部材15の役割を、シール部材13を通過してきた電解液を吸収することに特化することができる。
【0027】
次に、外部端子の取り付け構造の他の構成例について説明する。
図3は、二次電池の外部端子付近の他の構成例を示す拡大断面図である。
図3に示すように、外部端子11は、筐体10の外部から内部に貫通している貫通孔に設けられている。具体的には、二次電池1の筐体10の側壁に、x軸方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に外部端子11が挿通されている。外部端子11は、x軸方向プラス側の端部において集電体12と接合されている。例えば、外部端子11および集電体12は金属材料を用いて構成されている。例えば、外部端子11のx軸方向プラス側の端部は、溶接を用いて集電体12に接合されている。これにより、集電体12と外部端子11とを電気的に接続することができる。
【0028】
外部端子11の外周面には、貫通孔と交差する方向に伸びるフランジ部17が形成されている。フランジ部17と筐体10の外側の面とで形成される空隙には、シール部材24が設けられている。また、外部端子11の外周面と貫通孔の側面とで形成される空隙には、シール部材23が設けられている。シール部材23、24は、ゴムや樹脂材料等の弾性変形する材料を用いて構成されている。また、モールドによるシールやカシメによるシールによって、シール部材23、24を構成してもよい。
【0029】
シール部材23は、外部端子11の外周面と貫通孔の側面とで押圧されている。また、シール部材24は、フランジ部17と筐体10の外側の面とで押圧されている。したがって、筐体10の内部と外部とがシール部材23、24を用いてシールされる。
【0030】
例えば、外部端子11のyz面における断面形状が円状である場合、x軸方向からみたシール部材23、24の形状は円状である。また、外部端子11のyz面における断面形状が矩形状である場合、x軸方向からみたシール部材23、24の形状は矩形状である。
【0031】
更に本実施の形態にかかる二次電池1では、シール部材23とシール部材24との間、具体的には外部端子11の外周面と貫通孔の側面とで形成される空隙に吸水部材25を設けている。本実施の形態にかかる二次電池1では、このようにシール部材23とシール部材24との間に吸水部材25を設けているので、上述した理由と同様の理由により、筐体10の内部から外部に電解液が漏出することを抑制することができる。
【0032】
次に、本実施の形態にかかる二次電池スタックについて説明する。
図4は、本実施の形態にかかる二次電池スタックの構成を示す上面図である。
図4に示すように、本実施の形態にかかる二次電池スタック2は、複数の二次電池1の外部端子11a、11bをバスバーモジュール30を用いて互いに電気的に接続することで構成されている。
図4では、複数の二次電池1が各々直列に接続されている例を示している。つまり、
図4に示す二次電池スタック2では、隣接する二次電池において、一方の二次電池の正極端子と他方の二次電池の負極端子をバスバーモジュール30を用いて接続している。
【0033】
次に、
図5~
図7を用いて、バスバーモジュール30の構成について詳細に説明する。
図5、
図6は、本実施の形態にかかるバスバーモジュールの構成を示す図である。
図7は、
図6の切断線VII-VIIにおける断面図である。
図5~
図7に示すように、本実施の形態にかかるバスバーモジュール30は、バスバー31、電線32、カバー33、ガイド部34、電圧検出端子37、及び吸水部材38(
図6、
図7参照)を備える。なお、
図5では、バスバーモジュール30の接続部35付近の構成を明示するために、吸水部材38を省略した図を示している。
【0034】
図5に示すように、二次電池が備える外部端子11a、11bは、バスバー31を用いて電気的に接続されている。例えば、バスバー31は、金属材料を用いて構成することができる。各々の外部端子11a、11bは、溶接、ねじ止め等の方法を用いて、バスバー31に接続(接合)されている。
【0035】
また、バスバーモジュール30には、電線32が設けられている。電線32は、二次電池1の電圧、つまり、各々の外部端子11a、11bが接続されているノードの電圧を検出するための電線である。電線32は、電圧検出端子37を用いて外部端子11aと接続されている。なお、
図5、
図6に示す例では、電圧検出端子37を外部端子11aに接続した構成例を示したが、電圧検出端子37は外部端子11bに接続されていてもよい。電線32は、二次電池スタックの制御回路に設けられた電圧検出手段(不図示)に接続されており、これにより二次電池の各ノードにおける電圧を検出することができる。バスバー31および電線32は、カバー33に固定されている。
なお、電圧検出端子37とバスバー31は一体に構成されていてもよい。
【0036】
図5に示すように、バスバーモジュール30には、電線32をガイドするガイド部34が形成されている。ガイド部34は、複数の二次電池が配列されている方向(y軸方向)に伸びるように形成されている。例えば、
図5、
図7に示すように、カバー33のz軸方向プラス側には、x軸方向に突出し(
図7参照)、y軸方向に伸びる(
図5参照)壁面41、42が形成されており、この壁面41、42で挟まれた凹部をガイド部34とすることができる。
【0037】
また、
図5に示すように、電圧検出端子37は、ガイド部34側に伸びている接続部35において電線32に接続されている。例えば、電圧検出端子37には複数の突起部36が形成されており、この突起部36が、被覆された電線32に押し込まれることで、突起部36が電線32内部の導線に電気的に接続される。これにより、電圧検出端子37と電線32とが電気的に接続される。
【0038】
また、本実施の形態では、
図6、
図7に示すように、電圧検出端子37が電線32に接続されている接続部35に吸水部材38を設けている。具体的には、吸水部材38は、ガイド部34において接続部35を覆うように設けられている。このように、電圧検出端子37が電線32に接続されている部分に吸水部材38を設けることで、電線32を介して電解液が漏出することを抑制することができる。
【0039】
すなわち、仮に二次電池から電解液が漏出したとした場合、漏出した電解液は、外部端子11aから電圧検出端子37を介して電線32へと移動する。ここで、電圧検出端子37は、突起部36が電線32に圧接されることで接続されている。したがって、電圧検出端子37を介して電線32へと移動した電解液は、突起部36を介して電線32の内部へと侵入する。そして電線32の内部に侵入した電解液は、電線32内部の導線における毛細管現象により電線32内部を移動し、最終的には電線32が接続されている制御回路に到達することも想定される。
【0040】
そこで本実施の形態では、電線32を介して電解液が漏出することを抑制するために、電圧検出端子37が電線32に接続されている部分に吸水部材38を設けている(
図6、
図7参照)。このように、吸水部材38を設けることで、電圧検出端子37を介して電線32へと移動してきた電解液が、電線32の内部に侵入することを抑制することができる。したがって、電線32を介して電解液が漏出することを抑制することができる。
【0041】
なお、上記説明ではバスバーモジュール30がガイド部34を備える構成について説明したが、ガイド部34(つまり壁面41、42)は適宜省略してもよい。例えば、吸水部材38の粘度が高い場合には、ガイド部34を設けなくても吸水部材38が接続部35に留まるので、ガイド部34を省略することができる。
【0042】
次に、本実施の形態で用いられる吸水部材15、25、38について詳細に説明する。
本実施の形態では、吸水部材15、25、38として、吸水性ポリマーを用いることができる。吸水性ポリマーとしては、例えば、アクリル酸またはアクリル酸アルカリ金属塩の重合物または共重合物を用いることができる。具体的には、ポリアクリル酸及びその塩(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム)、並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられる。特に本実施の形態では、吸水性ポリマーとして、架橋部にエーテル結合を含む材料を用いることが好ましい。架橋部にエーテル結合を含む材料を用いることで、吸水性ポリマーのアルカリ耐性を向上させることができる。
【0043】
ところで、吸水性ポリマーが粉体である場合は、吸水性ポリマーの粘着性が低いため、上述のような位置、つまり、シール部材13とシール部材14との間(
図2、
図3参照)や電圧検出端子37が電線32に接続されている位置(
図6、
図7参照)に吸水部材(吸水性ポリマー)を設けることが困難となる場合もある。
【0044】
このような場合は、吸水性ポリマーとポリブテンとの混合物を用いて吸水部材を構成してもよい。ポリブテンとは、イソブテンを主体とし、一部ノルマルブテンが反応した共重合物質である。つまり、吸水性ポリマーにポリブテンを加えることで、吸水性ポリマーの粘着性を高めることができる。したがって、上述した位置に吸水部材を安定的に設けることができる。またポリブテンは水成分を含まないため、吸水性ポリマーに吸収されることがなく、したがって、吸水性ポリマーの水分吸収量を低下させることもない。
【0045】
本実施の形態では、例えば、粒径が1μm以上150μm以下の吸水性ポリマーを用いることができる。吸水性ポリマーの粒径の範囲をこの範囲とすることで、吸水率や粘度等においてバランスのとれた特性を得ることができる。また、吸水性ポリマーの粒径は、5μm~15μm、好ましくは8μm~12μm、より好ましくは10μmとしてもよい。なお、粒径はメジアン径D50であり、自動静的画像解析を用いて測定した値である。
【0046】
また、本実施の形態では、ポリブテンの数平均分子量を300~1000とすることが好ましい。ポリブテンの数平均分子量をこの範囲とすることで、吸水性ポリマーに適度な粘度を付与することができる。
【0047】
また、本実施の形態では、吸水性ポリマー(A)とポリブテン(B)との混合比(A:B)を1:0.5~1:2とすることが好ましい。混合比をこの範囲とすることで、吸水性ポリマーに適度な粘度を付与することができる。
【0048】
以上で説明した本実施の形態にかかる発明により、電解液の漏出を抑制することが可能な二次電池、二次電池スタック、及びバスバーモジュールを提供することができる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の実施例について説明する。
本発明で用いられる吸水性ポリマーの最適な粒径を調べるために、以下の実験を行った。
【0050】
サンプルとして、粒径(平均粒径D50)が5μm、10μm、110μmの吸水性ポリマーを準備した。吸水性ポリマーには、ポリアクリル酸ナトリウムを用いた。粒径は自動静的画像解析を用いて測定した。そして、各々の粒径を有する吸水性ポリマーの吸水率および粘度を以下の方法を用いて測定した。
【0051】
<吸水率>
吸水前の吸水性ポリマーの質量(M0)を測定した後、吸水性ポリマーに電解液を加えた。その後、電解液を吸水した状態の吸水性ポリマーの質量(M1)を測定し、下記の式を用いて吸水率を求めた。
吸水率=(M1-M0)/M0
【0052】
図8に吸水性ポリマーの粒径と吸水率との関係を示す。
図8に示すように、吸水性ポリマーの粒径が大きくなるほど、吸水率が高くなる傾向がみられた。特に、5μmの吸水性ポリマーの吸水率と、10μmの吸水性ポリマーの吸水率に着目すると、5μmの吸水性ポリマーの吸水率に比べて10μmの吸水性ポリマーの吸水率が急激に増加した。
【0053】
<粘度>
吸水性ポリマーに電解液を加え、その後、電解液を吸水した状態(吸水率100%の状態)の吸水性ポリマーの粘度を測定した。粘度の測定には、Anton Paar社製レオメータMCR302を用いた。
図9に吸水性ポリマーの粒径と粘度との関係を示す。
図9に示すように、吸水性ポリマーの粒径が大きくなるほど、吸水性ポリマーの粘度が低くなる傾向がみられた。
【0054】
上述のように、吸水性ポリマーの吸水率は、吸水性ポリマーの粒径が大きいほど向上する。一方、吸水性ポリマーの粘度は、吸水性ポリマーの粒径が小さくなるほど向上する。つまり、吸水性ポリマーの吸水率と、粘度との間には、トレードオフの関係がある。したがって、これらの関係を考慮すると、吸水性ポリマーの粒径は、5μm~15μm、好ましくは8μm~12μm、より好ましくは10μmとすることができる。
【0055】
なお、
図9に示したように、粒径が大きい領域ではポリブテンと混合した場合に高粘度なゼリー状になる。このように粒径が大きい領域の吸水性ポリマーを用いて吸収部材を構成する場合は、例えば吸収部材に混合するポリブテンの数平均分子量を調整したり、吸水性ポリマーとポリブテンとの混合比を調整したりすることで、吸水部材の粘度を塗布可能な状態に調整することができる。例えば、数平均分子量が高いポリブテンを用いたり、吸水性ポリマーに対するポリブテンの割合を増やしたりすることで、吸収部材の粘度を塗布可能な状態に調整することができる。
【0056】
<シール性能>
各々の粒径を有する吸水性ポリマーのシール性能を確かめるために、吸水性ポリマーの粒径と封止期間との関係、及び吸水性ポリマーの粒径と漏液速度との関係を調べた。
【0057】
図10に、吸水性ポリマーの粒径と封止期間との関係を示す。吸水性ポリマーの粒径と封止期間との関係は、次の方法を用いて調べた。つまり、60℃×75%RHの状態で、定期的に補充電を行いながら長期間放置し、外部端子に付着したカリウム量を4週間おきに確認し、カリウムが検出されるまでの期間を封止期間とした。
【0058】
図10に示すように、吸水性ポリマーの粒径が5μm~10μmでは、吸水性ポリマーの粒径が大きくなるほど封止期間が長くなった。一方、吸水性ポリマーの粒径が10μmよりも大きくなると、封止期間が徐々に短くなった。
【0059】
図11に、吸水性ポリマーの粒径と漏れ速度との関係を示す。吸水性ポリマーの粒径と漏れ速度との関係は、次の方法を用いて調べた。つまり、60℃×75%RHの状態で、定期的に補充電を行いながら長期間放置し、外部端子にカリウムが検出された後(漏れが確認された後)、4週間放置し、以下の式で漏れ速度を計算した。
漏れ速度=外部端子に付着したカリウム量から換算した電解液量/期間(4W)
【0060】
図11に示すように、吸水性ポリマーの粒径が5μm~10μmでは、吸水性ポリマーの粒径が大きくなるほど漏れ速度が低下した。一方、吸水性ポリマーの粒径が10μmよりも大きくなると、漏れ速度が徐々に上昇した。
【0061】
図10に示した結果から、吸水性ポリマーの粒径が10μmのときに、封止期間が最も長くなった。また、
図11に示した結果から、吸水性ポリマーの粒径が10μmのときに、漏れ速度が最も低くなった。したがって、
図10、
図11に示した結果から、吸水性ポリマーの粒径が10μmのときに、吸水性ポリマーのシール性能が最もよくなった。よって、この結果からも、吸水性ポリマーの粒径は、5μm~15μm、好ましくは8μm~12μm、より好ましくは10μmとすることが好ましいといえる。
【0062】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
1 二次電池
2 二次電池スタック
10 筐体
11、11a、11b 外部端子
12 集電体
13、14、23、24 シール部材
15、25 吸水部材
17 フランジ部
30 バスバーモジュール
31 バスバー
32 電線
33 カバー
34 ガイド部
35 接続部
37 電圧検出端子
38 吸水部材