(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】水溶性塗布液及びPET合成紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20220721BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220721BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220721BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220721BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20220721BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220721BHJP
C09D 161/28 20060101ALI20220721BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220721BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220721BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220721BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/40
B32B27/30 A
B32B27/18 Z
C09D133/06
C09D175/04
C09D161/28
C09D5/02
C09D7/61
C09D7/63
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2019159722
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2019-09-02
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】廖▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】楊文政
(72)【発明者】
【氏名】袁敬堯
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼陳安
(72)【発明者】
【氏名】謝育淇
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-315021(JP,A)
【文献】特開2001-150804(JP,A)
【文献】特開2003-276321(JP,A)
【文献】特表2005-529771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0321084(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102909982(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
B05D 1/00- 7/26
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PET合成紙を製造するための水溶性塗布液であって、
(1)ポリウレタン樹脂2~40wt%、
(2)アクリル樹脂単量体2~40wt%、
(3)架橋剤0.5~30wt%、
(4)表面変性充填粒子0.05~30wt%、
(5)発泡剤0.5~30wt%、
(6)添加剤0.05~10wt%、及び
(7)水である溶媒50~85wt%、
を各成分の合計が100wt%になるように含み、
前記ポリウレタン樹脂は水溶性又は水分散性のポリウレタン樹脂であり、かつ、前記ポリウレタン樹脂は、エラストマーであると共にその主鎖がポリイソシアネート及びポリオールにより形成されたポリマーであり、
前記発泡剤は、N-ニトロソ化合物、アゾ化合物又はヒドラジド類化合物から選ばれることを特徴とする、水溶性塗布液。
【請求項2】
前記アクリル樹脂単量体は、(メタ)アクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸エチル(EA)、(メタ)アクリル酸プロピル(PA)、アクリル酸-n-ブチル(BA)、(メタ)アクリル酸イソブチル(IBA)、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル(2-HEA)、(メタ)アクリル酸-n-オクチル(OA)、(メタ)アクリル酸イソオクチル(IOA)、(メタ)アクリル酸ノニル(NA)、(メタ)アクリル酸デカニル、(メタ)アクリル酸ラウリル(LA)、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル(MOEA)、n-ブチルアクリル酸メチル(n-BMA)、アクリル酸2-エチルへキシル(2-EHA)又は(メタ)アクリル酸エトキシメチル(EOMAA)から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の水溶性塗布液。
【請求項3】
前記架橋剤は、メラミン、又はメラミンとホルムアルデヒドを縮合させて得たヒドロキシメチル変性されたメラミン誘導体から選ばれるものであることを特徴とする、請求項1に記載の水溶性塗布液。
【請求項4】
前記架橋剤は、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤又はカルボジイミド系架橋剤から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の水溶性塗布液。
【請求項5】
前記充填粒子は、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミ、水酸化アルミ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又は硫酸バリウムから選ばれる1種以上であると共に、その粒子径が0.005~10μmにあることを特徴とする、請求項1に記載の水溶性塗布液。
【請求項6】
前記添加剤は、助剤、触媒又は共溶媒から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の水溶性塗布液。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水溶性塗布液を、フレキシブルインク吸収塗布層としてPET基材に厚さ4~24μmで塗布するステップと、
乾燥によって前記フレキシブルインク吸収塗布層の水分を除去するステップと、
アクリル塗布層と、前記アクリル塗布層から突出して島形状に形成されたポリウレタン塗布層とを、乾燥された前記フレキシブルインク吸収塗布層に持たせるために、前記フレキシブルインク吸収塗布層の前記ポリウレタン樹脂を発泡させて細孔を生成して凸形状のポリウレタン塗布層を形成するステップと、
を含む、ことを特徴とするPET合成紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に柔らかな手触り感を有し、伝統的なオフセット印刷、デジタル印刷及びインクジェット(Inkjet)印刷に適用され得るPET合成紙を製造するための水溶性塗布液及びPET合成紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における天然木材パルプによる紙又はポリオレフィン合成紙は、いずれも伝統的なオフセット印刷、デジタル印刷及びインクジェット(Inkjet)印刷に適用され得る。然しながら、手触り感が粗くて柔らかくないということに欠点がある。
【0003】
ポリオレフィン合成紙の受容度と利用率を向上させるために、柔らかさを有し手触りによる弾性感が良好で、プリント効果、インク密着性及び防水性が良い合成紙は、業界において絶えず努力している実現目標である。
【発明の概要】
【0004】
これに鑑みて、本発明の主な目的は、柔らかくて細かいファー(毛皮)のような手触り感、低光沢度及び優れたプリント性を有し、PET基材と、上記PET基材に塗布された厚さ4~24μmのフレキシブルインク吸収塗布層とからなるPET合成紙において、上記フレキシブルインク吸収塗布層がアクリル塗布層と、アクリル塗布層から突出して島形状を構成するポリウレタン塗布層とを含み、上記フレキシブルインク吸収塗布層はその全重量を基にして、各成分の合計が100wt%になるように以下の各成分を含む、水溶性塗布液及びPET合成紙の製造方法を提供することにある。
【0005】
(1)エラストマーであってその主鎖がポリイソシアネートとポリオールから形成されたポリマーを有するポリウレタン樹脂2~40wt%
(2)アクリル樹脂単量体2~40wt%
(3)イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤又はカルボジイミド系架橋剤から選ばれる1種以上の架橋剤0.5~30wt%
(4)表面変性充填粒子0.05~30wt%
(5)N-ニトロソ化合物、アゾ化合物又はヒドラジド類化合物から選ばれる発泡剤0.5~30wt%
(6)助剤、触媒又は共溶媒から選ばれる1種以上を含む添加剤0.05~10wt%
(7)水である溶媒50~85wt%
【0006】
本発明に係る水溶性塗布液をフレキシブルインク吸収塗布層にして製造したPET合成紙によれば、柔らかくて細かいファーのような手触り感、低光沢度及び優れたプリント性を有し、PET合成紙の受容度と利用率を向上できるという有利な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るPET合成紙の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るPET合成紙10は、
図1に示すように、柔らかくて細かい手触り感、低光沢を有し、オフセット印刷やデジタル印刷に適用され得るPET合成紙であり、PET基材11とフレキシブルインク吸収塗布層15とからなり、その中、上記フレキシブルインク吸収塗布層15がポリウレタンとアクリルによる島形の塗布層であり、アクリル樹脂成分で島形のアクリル塗布層16を形成し、ポリウレタン成分でアクリル塗布層16から突出して島形状のポリウレタン塗布層18を形成するようになる。そして、上記PET基材11の表面に上記フレキシブルインク吸収塗布層15を塗布し、上記PET基材11の表面における塗布層を形成するようになる。
【0009】
本発明に係るPET合成紙10においては、上記フレキシブルインク吸収塗布層15のポリウレタン塗布層18によって柔らかくて細かい手触り感及び低光沢などの特性を有し、上記フレキシブルインク吸収塗布層15のアクリル塗布層16によって、伝統的なオフセット印刷、デジタル印刷及びインクジェット(Inkjet)印刷に適用され得るようになる。
【0010】
上記フレキシブルインク吸収塗布層15の組成としては、水溶性塗布液であり、その全重量を基にして、各成分の合計が100wt%になるように以下の各成分を含む。
(1)ポリウレタン樹脂2~40wt%
(2)アクリル樹脂単量体2~40wt%
(3)架橋剤0.5~30wt%
(4)表面変性充填粒子0.05~30wt%
(5)発泡剤0.5~30wt%
(6)添加剤0.05~10wt%
(7)水である溶媒50~85wt%
【0011】
本発明のポリウレタン樹脂はエラストマーであり、ポリイソシアネート(polyisocyanate)とポリオール(polyol)から形成されたリニアポリマーである主鎖を、エチレンジアミンで鎖延長することによって、ポリエーテル又はポリエステルを「ソフトセグメント」とするノニオン基を得、その側鎖がスルホン酸基を有するアニオン基及びノニオン基になるようなものである。
【0012】
上記ポリイソシアネートは、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジメチルビフェニルジイソシアネート(TODI)、シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、及び1,3-ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)から選ばれるものである。
【0013】
上記ポリオール(polyol)は、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールであってもよい。ポリエステルポリオールは、低分子グリコールとジカルボン酸から縮合されたものであり、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの低分子ポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸(suberic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、セバシン酸(sebacic acid)、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸から縮合された縮合系のポリエステルポリオールである。それ以外、ε-カプロラクトンなどの環状エステル、グリコールの一部を反応させてヘキサメチレンジアミン又はイソホロンジアミン(isophorone diamine)などのアミン類になったポリエステルアミドポリオールなどを使用してもよい。上記の各ポリオールはいずれも単独に使用してもよいし、複数を混合して使用してもよく、上記したもののコポリマーを使用してもよい。
【0014】
ポリエーテルポリオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、主鎖と側鎖のポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選ばれる1種以上である。
【0015】
本発明のアクリル樹脂単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸エチル(EA)、(メタ)アクリル酸プロピル(PA)、アクリル酸-n-ブチル(BA)、(メタ)アクリル酸イソブチル(IBA)、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル(2-HEA)、(メタ)アクリル酸-n-オクチル(OA)、(メタ)アクリル酸イソオクチル(IOA)、(メタ)アクリル酸ノニル(NA)、(メタ)アクリル酸デカニル、(メタ)アクリル酸ラウリル(LA)、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル(MOEA)、n-ブチルアクリル酸メチル(n-BMA)、アクリル酸2-エチルへキシル(2-EHA)又は(メタ)アクリル酸エトキシメチル(EOMAA)から選ばれるものであり、島形の塗布樹脂としてその中の1種を単独に使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。
【0016】
上記架橋剤は、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合させて得たヒドロキシメチル変性されたメラミン誘導体、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤の中の少なくとも1種の架橋剤であってもよい。本発明において、架橋樹脂を主成分とする好ましい使用量は0.5~30wt%、より好ましくは1~20wt%である。
【0017】
本発明の充填粒子は、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミ、水酸化アルミ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又は硫酸バリウムから選ばれる1種以上であり、その粒子径が0.005~10μmにあり、透明度、ヘイズ度、滑り性、アンチブロック性などの異なる物性要求に基づいて、大きさや粒子径の異なる充填粒子を選択してもよい。充填粒子の粒子径が大きければ、高温でのアンチブロック効果が良好になる。充填粒子の分散性が良ければ、充填粒子が凝集しにくいようになり、本発明に係るPET合成紙のヘイズ度が低くなる。
【0018】
本発明の充填粒子は、表面変性処理剤によって表面変性されたものである。上記表面変性処理剤は、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、スチリルシランカップリング剤、メタアクリロイルオキシランカップリング剤、アクリロイルオキシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、イソシアヌラトシランカップリング剤、ウレイドシランカップリング剤又はイソシアネートシランカップリング剤から選ばれる1種以上である。表面処理剤で無機粒子を変性することによって、粒子の凝集、良くない分散性、低い相溶性、低い接着性などの欠点を改良できる。本発明において、表面変性処理剤の好ましい使用量は0.5~30wt%、より好ましくは5~20wt%である。
【0019】
本発明に用いられる添加剤は、助剤、触媒又は共溶媒の中の1種以上を含む。助剤を添加することによって、水溶性塗布液の表面張力を調整し、水溶性塗布液から形成された塗布層と基材の湿潤性、及び塗布層の平坦度を向上することができる。触媒を添加することによって、塗布層の架橋反応のレートを制御できる。溶媒を添加することによって、液体成分の揮発レートを制御できる。
【0020】
上記助剤は、ケイ素成分、フッ素成分、又はケイ素/フッ素混合成分を含有する助剤を含む。上記ケイ素含有助剤は、BYK社のBYK307、BYK325、BYK331、BYK380N又はBYK381から選ばれる1種以上であってもよい。上記フッ素助剤は、3M社のFC-4430及びFC-4432、アメリカデュポン社のZonyl FSN-100、又は日本ダイキン社のDSXから選ばれる1種以上であってもよい。上記ケイ素/フッ素混合成分含有助剤は、BYK346、BYK347又はBYK348から選ばれる1種以上であってもよい。
【0021】
上記触媒は、無機物、塩類、有機物、アルカリ性物又は酸性物などである。上記共溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ジメチルスルホキシド、アセトン又はテトラヒドロフランなどの溶媒である。
【0022】
本発明に係るPET合成紙10は、
図1に示すように、伝統的なオフライン(off-line)のグラビア塗布によって、上記
水溶性塗布液で構成されるフレキシブルインク吸収塗布層15を、塗布層の厚さが4~24μmにあり、好ましくは5~20μmであるように、PET基材11の表面に塗布したものであり、両面塗布してもよい。
【0023】
塗布後、上記フレキシブルインク吸収塗布層15を120℃で塗布液を乾燥し、120℃の雰囲気で、発泡剤によって上記フレキシブルインク吸収塗布層15におけるポリウレタン樹脂を発泡させて細孔を生成し、凸形状のポリウレタン塗布層18を形成することによって、本発明に係るPET合成紙10の表面は柔らかい感触を有して塗布外観が良好になる。
【0024】
120℃の雰囲気で、発泡剤によって上記フレキシブルインク吸収塗布層15におけるアクリル樹脂に細孔を生成し、平坦なアクリル塗布層16を形成することによって、印刷際のインク吸収性を向上でき、本発明に係るPET合成紙10は伝統的なオフセット印刷、デジタル印刷、インクジェット(Inkjet)印刷に適用され得るようになる。
【0025】
表面変性された充填粒子を上記フレキシブルインク吸収塗布層15に添加することによって、本発明に係るPET合成紙10のインク吸収能を向上すると共に、PET合成紙10の表面摩擦力を増加し、連続供紙のプリント過程において、PET合成紙10の引っ掛かり又は表面損傷を防止することができる。
【0026】
他の添加剤によって、上記フレキシブルインク吸収塗布層15の塗布状況を改良し、塗布層を均一に塗布してその外観を良好とすることができる。
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明の内容及びその達成できる効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されない。実施例の各物性評価は、以下の方法によって行われた。
【0028】
(1)塗布外観:人の視覚によって強光環境で塗布外観を観察した。
(2)手触り感:人の指で触って感触を評価した。
(3)防水性:フレキシブルインク吸収塗布層を有するPET合成紙とプリントされたPET合成紙を水に24浸漬し、インクが滲むかどうかを観察した。水で濡れたティッシュによってプリント面を10回拭き、インクが脱落かどうかを観察し、まったくに脱落しない場合、「良」と評価した。
(4)プリント効果:プリントのための機器として、伝統的なオフセット印刷機、デジタルインクジェット機器HP 5800、デジタル電子インク機器HP Indigoシリーズ、乾燥パワー用のレーザービームプリンター:HP CP1000シリーズを含む。
(5)インク密着性:プリントされたPET合成紙に、3M Scotchテープを貼り付け、指でテープの貼り付けた処を5回プレスし、テープを強力に膜表面に貼り付け、そして速やかにテープを剥がし、プリントされたインクが脱落するかどうかを観察した。インクがまったくに脱落しない場合、「良」と評価し、インクが脱落した場合、「不良」と評価した。
【実施例1】
【0030】
表1の配合に基づいて、ポリウレタン樹脂20g、アクリル樹脂8g、メラミン系架橋剤1.0g、オキサゾリン系架橋剤0.5g、アニオン界面活性剤A 0.1g、ノニオン界面活性剤B 0.25g、処理剤としてのケイ素含有化合物0.1g、発泡剤1.2g、粒子径2μmの酸化ケイ素粒子A 1.6g、粒子径0.1μmの酸化ケイ素粒子B 3.6g、水62.32g、触媒0.1g、ブチルセルロース1.2g、ケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.03gなどを含み、フレキシブルインク吸収塗布層を形成するための水溶性塗布液を調製した。均一に攪拌した後、水溶性塗布液をPET基材に約10μmになるように均一に塗布し、そして塗布されたPET基材を120℃の加熱ゾーンに導入し、乾燥によって水溶性塗布液(又は塗布層)の水分を除去し、塗布層のポリウレタン樹脂を発泡させて細孔を生成して凸形状のポリウレタン塗布層を形成し、PET合成紙を製造した。PET合成紙の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【実施例2】
【0031】
表1の配合に基づいて、フレキシブルインク吸収塗布層を形成するための水溶性塗布液を調製し、実施例1の配合に比べると、ケイ素含有化合物の使用量を0.1gから0.05gに低減し、酸化ケイ素粒子Aの使用量を1.6gから2.1gに増加し、酸化ケイ素粒子Bの使用量を3.6gから2.5gに低減した。製造されたPET合成紙の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0032】
表1の配合に基づいて、フレキシブルインク吸収塗布層を形成するための水溶性塗布液を調製し、実施例1の配合に比べると、樹脂、表面処理剤、充填粒子及び添加剤の使用量を倍増し、即ち、ポリウレタン樹脂40g、アクリル樹脂16g、メラミン系架橋剤1.5g、オキサゾリン系架橋剤1.2g、アニオン界面活性剤A 0.2g、ノニオン界面活性剤B 0.5g、処理剤であるケイ素含有化合物0.2g、発泡剤2.5g、粒子径2μmの酸化ケイ素粒子A 3.2g、粒子径0.1μmの酸化ケイ素粒子B 7.2g、水25.24g、触媒0.2g、ブチルセルロース2.4g、ケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.06gなどを含むようになった。均一に攪拌した後、水溶性塗布液をPET基材に約10μmになるように均一に塗布し、そして塗布されたPET基材を120℃の加熱ゾーンに導入し、乾燥によって水溶性塗布液(又は塗布層)の水分を除去し、塗布層のポリウレタン樹脂を発泡させて細孔を生成して凸形状のポリウレタン塗布層を形成し、PET合成紙を製造した。PET合成紙の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【実施例4】
【0033】
表1の配合に基づいて、フレキシブルインク吸収塗布層を形成するための水溶性塗布液を調製し、実施例1の配合に比べると、樹脂、架橋剤及び発泡剤の使用量を半減し、即ち、ポリウレタン樹脂10g、アクリル樹脂4g、メラミン系架橋剤0.5g、オキサゾリン系架橋剤0.25g、アニオン界面活性剤A 0.05g、ノニオン界面活性剤B 0.1g、処理剤であるケイ素含有化合物0.1g、発泡剤0.6g、粒子径2μmの酸化ケイ素粒子A 0.8g、粒子径0.1μmの酸化ケイ素粒子B 2.0g、水80.89g、触媒0.1g、ブチルセルロース0.6g、ケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.01gなどを含むようになった。均一に攪拌した後、水溶性塗布液をPET基材に約10μmになるように均一に塗布し、そして塗布されたPET基材を120℃の加熱ゾーンに導入し、乾燥によって水溶性塗布液(又は塗布層)の水分を除去し、塗布層のポリウレタン樹脂を発泡させて細孔を生成して凸形状のポリウレタン塗布層を形成し、PET合成紙を製造した。PET合成紙の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0034】
[比較例1]
表1の配合に基づいて、フレキシブルインク吸収塗布層を形成するための水溶性塗布液を調製し、実施例1の配合に比べると、架橋剤を使用しなく、水の使用量が62.17gである。製造されたPET合成紙の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0035】
[比較例2]
表1の配合に基づいて、フレキシブルインク吸収塗布層を形成するための水溶性塗布液を調製し、実施例1の配合に比べると、発泡剤を使用しなく、架橋剤の使用量を増加し、即ち、ポリウレタン樹脂20g、アクリル樹脂8g、メラミン系架橋剤5.0g、オキサゾリン系架橋剤3.0g、アニオン界面活性剤A 0.1g、ノニオン界面活性剤B 0.25g、処理剤であるケイ素含有化合物0.1g、粒子径2μmの酸化ケイ素粒子A 1.6g、粒子径0.1μmの酸化ケイ素粒子B 3.6g、水62.32g、触媒0.1g、ブチルセルロース1.2g、ケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.03gなどを含むようになった。均一に攪拌した後、水溶性塗布液をPET基材に約10μmになるように均一に塗布し、そして塗布されたPET基材を120℃の加熱ゾーンに導入し、乾燥によって水溶性塗布液(又は塗布層)の水分を除去し、塗布層のポリウレタン樹脂を発泡させて細孔を生成して凸形状のポリウレタン塗布層を形成し、PET合成紙を製造した。PET合成紙の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0036】
[比較例3]
表1の配合に基づいて、フレキシブルインク吸収塗布層を形成するための水溶性塗布液を調製し、実施例1の配合に比べると、表面処理剤を使用しなかった。製造されたPET合成紙の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0037】
[比較例4]
表1の配合に基づいて、フレキシブルインク吸収塗布層を形成するための水溶性塗布液を調製し、実施例1の配合に比べると、充填粒子を使用しなかった。製造されたPET合成紙の物性を測定し、その結果を表1に示す。
【0038】
【0039】
結果検討
1.本発明の水溶性塗布液の配合としては、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、架橋剤、表面変性された充填粒子及び他の添加剤などからなり、PET基材に塗布してフレキシブルインク吸収塗布層を形成すると、PET合成紙の透明度、手触り感と塗布層の外観が著しく改良され、伝統的なオフセット印刷、デジタル印刷、インクジェット印刷に適用され得るだけでなく、プリント効果、インク密着性及び防水性のいずれも良好である。
2.実施例1~4の水溶性塗布液は、配合におけるポリウレタン樹脂、アクリル樹脂と架橋剤が反応してPET合成紙のフレキシブルインク吸収塗布層を形成するため、その結果、製造されたPET合成紙の塗布面が柔らかくて細かい手触り感及び低光沢などの特性を有し、また、PET合成紙が優れたインク密着性を有するようになった。そして、表面変性された充填粒子を上記フレキシブルインク吸収塗布層に添加することによって、塗布層に均一に分散してPET合成紙のインク吸収性及びプリント効果を高めるだけでなく、プリントの色がもっと鮮明になった。そして、異なる粒子径の充填粒子をブレンドして上記フレキシブルインク吸収塗布層に混合することによって、PET合成紙の滑り性を改良すると共に、連続供紙において引っ掛からないという効果を向上することができる。
3.実施例2の水溶性塗布液は、実施例1の水溶性塗布液に比べると、異なる粒子径と使用量の充填粒子が添加され、異なるプリント要求に基づいて充填粒子の粒子径及び使用割合を調整できるということが示された。例えば、デジタルインクジェット印刷には、比較的大きなインク吸収量が必要とされるため、粒子径が比較的小さい充填粒子の割合を増加することによって良好なプリント効果を得ることができる。例えば、伝統的なオフセット転写印刷には、比較的小さなインク吸収量が必要とされるため、粒子径が比較的大きな充填粒子の割合を増加することによって良好なプリント効果及び転写効果を得ることができる。
4.実施例3及び4の水溶性塗布液は、実施例1の水溶性塗布液に比べると、配合における樹脂、架橋剤、表面処理剤、充填粒子、発泡剤又は添加剤の使用量が倍増又は半減され、その結果、製造されたPET合成紙の物性はそのまま正常であり、本発明の水溶性塗布液の配合条件範囲が広いということが示された。
6.比較例2の水溶性塗布液は、配合において発泡剤が使用されなくて架橋剤の使用量が増加され、その結果、製造されたPET合成紙の塗布面の柔らかくて細かい手触り感は消えて硬くなるが、PET合成紙のインク密着度は変化しない。
7.比較例3の水溶性塗布液は、配合において表面処理剤が使用されなく、その結果、製造されたPET合成紙の塗布層の表面が平坦でなく、塗布スジ、三日月形のスジ、気泡ムラなどの現象が現れた。
8.比較例4の水溶性塗布液は、配合において充填粒子が添加されなく、その結果、製造されたPET合成紙のインク吸収効果は不良であり、プリント品位とプリント効果が悪くて連続供紙の性能も悪くなった。
【符号の説明】
【0040】
10 PET合成紙
11 PET基材
15 フレキシブルインク吸収塗布層
16 アクリル塗布層
18 ポリウレタン塗布層