(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/617 20140101AFI20220721BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220721BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20220721BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20220721BHJP
H01M 10/6566 20140101ALI20220721BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220721BHJP
H01M 10/652 20140101ALI20220721BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220721BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20220721BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20220721BHJP
【FI】
H01M10/617
H01M10/613
H01M10/6557
H01M10/6563
H01M10/6566
H01M10/625
H01M10/652
H01M50/20
B60K11/06
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2019231314
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】坂井 寛
(72)【発明者】
【氏名】花岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆太郎
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-032545(JP,A)
【文献】特開平07-101297(JP,A)
【文献】特開2009-129730(JP,A)
【文献】特開2007-250515(JP,A)
【文献】特開2016-122543(JP,A)
【文献】特開2013-214481(JP,A)
【文献】特開2019-033055(JP,A)
【文献】特開2018-107087(JP,A)
【文献】特開2017-183240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/617
H01M 10/613
H01M 10/6557
H01M 10/6563
H01M 10/6566
H01M 10/625
H01M 10/652
H01M 50/20
B60K 11/06
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池と、
前記複数の電池を各電池間に空間を開けて配列した状態で収容し、冷却媒体の吸気口及び、前記吸気口から吸気され各電池間の空間を通った冷却媒体を排気する排気口を有する筐体と、
を備え、
前記吸気口は、前記筐体における一面の一端側の位置に設けられており、
前記筐体は、前記筐体における吸気口から前記一面に対向する対向面に向かうまでの吸気流路を形成する内壁の一部に、前記吸気流路の断面形状を狭くする絞り部を有し、
前記絞り部は、前記内壁の高さを部分的に異ならせるように設けられて
おり、
前記吸気口の一端側から吸気される冷却媒体が前記吸気口の他端側から吸気される冷却媒体より多いように冷却媒体の吸気がなされ、
前記絞り部は、前記吸気口の一端側から吸気される冷却媒体と前記吸気口の他端側から吸気される冷却媒体とが干渉する領域に配設されている、
電池パック。
【請求項2】
前記絞り部は、前記内壁の全体が高くなるように且つその高さが複数個所で異なるように設けられている、
請求項
1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記絞り部は、前記内壁の高さの違いが前記複数個所で均等に分布するように設けられている、
請求項
2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記絞り部は、前記内壁の高さが1個所高くなるように設けられている、
請求項
1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記絞り部は、前記複数の電池の配列方向に垂直な方向において、前記内壁の高さを部分的に異ならせるように設けられている、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記絞り部における前記吸気流路の断面形状を変更する絞り変更機構をさらに備える、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等には、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池を内蔵する電池パックが搭載されている。このような電池パック(バッテリパック)は、複数の二次電池(電池モジュール)が吸気口及び排気口を有する筐体内に配列されて構成することができる。
【0003】
特許文献1には、第1バッテリセルと、第2バッテリセルと、第1端部に入口を有し、第1端部の反対側である第2端部に斜面を有する第1ダクトと、主本体と、を備えたバッテリパックが記載されている。この主本体は、第1バッテリセルと第2バッテリセルとを囲み、第1ダクトに連結されている。ここで、斜面は、第1枠と、第1枠の反対側である第2枠とを有し、斜面の第1枠は、バッテリセルに近接し、斜面は、斜面の第2枠が当該第1枠より入口により近くなるように傾いている。また、第1バッテリセルと第2バッテリセルとの間の第1ダクトから熱伝達媒体が流れるように通路を提供する、第1バッテリセルと第2バッテリセルとの間に形成されたギャップを含んで形成されている。さらに、第1バッテリセルと第2バッテリセルとは第1方向にスタックされている。また、第1ダクトは斜め側面を含む。そして、斜め側面それぞれは、第1方向に延長される第1枠と、第1方向に延長される第2枠とを有し、斜め側面の当該第1枠はバッテリセルに隣接している。さらに、斜め側面は、斜め側面の第2枠が当該第1枠の間よりさらに近くなるように互いに傾いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池パックにおける内蔵電池(電池モジュール)間の流路に流れる冷却風温度のバラツキは、電池モジュール間の温度のバラツキの一つの大きな原因となる。冷却風温度のバラツキは、筐体が外部から受熱する、受熱しない風がそれぞれ違う電池モジュール間の流路に流れることが一因となって生じる。特に、筐体の吸気流路側の壁に接して流れる風が、常に外気等の外部(外部環境)から受熱を集めるために温度が高くなり、その風は一か所の電池モジュール間流路に流れ、近接の電池モジュール温度が高くなる。
【0006】
また、外部からの受熱の対策として筐体を断熱することが考えられるが、筐体における受熱面が広いため、コストが嵩んでしまう。
【0007】
特許文献1に記載のバッテリパックは、スタックされたバッテリセル間の温度偏差を減少させることを目的とするものであるが、上述したような外部からの受熱を考慮したものではない。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、断熱材を使用しなくても複数の電池を収容した電池パック内の温度を均等化することが可能な電池パックを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る電池パックは、複数の電池と、前記複数の電池を各電池間に空間を開けて配列した状態で収容し、冷却媒体の吸気口及び、前記吸気口から吸気され各電池間の空間を通った冷却媒体を排気する排気口を有する筐体と、を備え、前記吸気口は、前記筐体における一面の一端側の位置に設けられており、前記筐体は、前記筐体における吸気口から前記一面に対向する対向面に向かうまでの吸気流路を形成する内壁の一部に、前記吸気流路の断面形状を狭くする絞り部を有し、前記絞り部は、前記内壁の高さを部分的に異ならせるように設けられている、ものである。
【0010】
また、前記絞り部は、前記吸気口の一端側から吸気される冷却媒体と前記吸気口の他端側から吸気される冷却媒体とが干渉する領域に配設されていることが好ましい。ここで、前記吸気口の一端側から吸気される冷却媒体が前記吸気口の他端側から吸気される冷却媒体より多いように冷却媒体の吸気がなされるものとする。
【0011】
また、前記絞り部は、前記内壁の全体が高くなるように且つその高さが複数個所で異なるように設けられていることが好ましい。
さらに、前記絞り部は、前記内壁の高さの違いが前記複数個所で均等に分布するように設けられていることが好ましい。
【0012】
また、前記絞り部は、前記内壁の高さが1個所高くなるように設けられている、ものとすることもできる。
【0013】
また、前記絞り部は、前記複数の電池の配列方向に垂直な方向において、前記内壁の高さを部分的に異ならせるように設けられていることが好ましい。
また、前記電池パックは、前記絞り部における前記吸気流路の断面形状を変更する絞り変更機構をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、断熱材を使用しなくても複数の電池を収容した電池パック内の温度を均等化することが可能な電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係る電池パックの一構成例を示す垂直断面図である。
【
図2】
図1の電池パックの一部を拡大した図である。
【
図4】比較例に係る電池パックを示す垂直断面図である。
【
図5】
図4の電池パックの一部を拡大した図である。
【
図7】
図1~
図3の電池パックにおける各列の吸気チャンバーの温度の例を示す図である。
【
図8】
図4~
図6の電池パックにおける各列の吸気チャンバーの温度の例を示す図である。
【
図9】実施形態2に係る電池パックの一構成例を示す垂直断面図である。
【
図10】
図9の電池パックの一部をX-X方向から見た図である。
【
図12】実施形態3に係る電池パックの一構成例を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。また、実施形態において、同一又は同等の要素には、同一の符号を付すことがあり、重複する説明は適宜省略される。
【0017】
(実施形態1)
実施形態1について、
図1~
図8を参照しながら説明する。
図1は、実施形態1に係る電池パックの一構成例を示す垂直断面図である。
図2は、
図1の電池パックの一部を拡大した図で、
図3は、
図1の電池パックの水平断面図である。なお、
図1~
図3及び後述する各図において、冷却媒体の流れを示す実線矢印は、太く表現しているほど熱い風であることを示している。また、
図3のII-II断面が
図2となる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る電池パック1は、複数の電池11と筐体12とを備える。電池11は、二次電池である。
図1において、複数の電池11は、筐体12における一面12c側から対向面12fに向かって配列されている。
【0019】
ここでは、電池パック1内に9つ収容されている例(9つの電池11冷却媒体タックされている例)を挙げるが、電池11の数は複数であればよい。また、電池11の内部には
図1の紙面垂直方向に複数のセルを配列しておくことができる。各セルには、正極シートと負極シートとセパレータとを含むセット(電極群)を1又は複数内蔵しておくことができる。なお、セルの数や幅の違い等は問わない。
【0020】
筐体12は、複数の電池11を各電池11間に空間を開けて配列した状態で収容し、冷却媒体の吸気口13及び排気口14を有する。上記空間が電池11間の冷却媒体流路となる。
【0021】
吸気口13は、筐体12における一面12cの一端側の位置(筐体12の下端部12bの付近に対応する位置)に設けられており、その対向面12eに向かって吸気流路(吸気チャンバー)が形成されている。また、排気口14は、吸気口13から吸気され各電池11間の空間を通った冷却媒体を排気する。排気口14は、図示したように、一面12cにおける上記一端側の位置以外の位置(筐体12の上端部12aの付近に対応する位置)に設けることができる。この例における排気口14は、その対向面12dから排気流路(排気チャンバー)が形成されている。但し、排気口は、一面12cに対向する対向面12fにおける吸気口13と対向する位置(つまり対向面12eの位置)以外の位置などに設けられることもできる。例えば、排気口は、
図1における対向面12dとして示す位置に設けておくこともできる。
【0022】
吸気チャンバーには、外気や他の部品などの外部環境より冷たい風が送風され、吸気チャンバーは冷却チャンバーとして機能させることができる。外部環境の温度は吸気チャンバーに吸気される冷却媒体より高いため、
図1において点線矢印で示すように、吸気チャンバー内の冷却媒体は外部環境から受熱することになる。それにより、
図1において実線矢印の太さで表現するように、筐体12の外部に近い程、温度が高くなる。また、吸気口13から対向面12eに向かう程、受熱量が増えるため、温度が高くなると言える。
【0023】
このような温度のバラツキを解消するために、筐体12は、筐体12における吸気口13から対向面12eに向かうまでの吸気流路を形成する内壁の一部に、その吸気流路の断面形状を狭くする絞り部(断面絞り部)15を有する。この絞り部15はオリフィスと称することもできる。
【0024】
そして、絞り部15は、複数の電池11の配列方向に垂直な方向(吸気流路に垂直な方向)において、つまり
図1の紙面垂直方向において、上記内壁の高さを部分的に異ならせるように設けられている。これは、絞り部15が、複数の電池11の配列方向に垂直な方向で且つ内壁面に沿った方向において、上記内壁の高さを部分的に異ならせるように設けられることを意味する。なお、
図1では、絞り部15を設けるに際して、筐体12の下端部12bの外側に凹部を成形した例を挙げているが、絞り部15は筐体12の下端部12bの外側が平面状になるように設けることもできる。
【0025】
特に、
図1の例では、
図3に電池パック1における水平方向の断面(高さ方向が吸気口13付近の断面)を示すように、絞り部15が設けられている。即ち、絞り部15は、
図1の紙面垂直方向(
図3における紙面上の電池配列方向に垂直な方向)において、内壁の高さが1個所高くなるように設けられている。
【0026】
また、
図1では、絞り部15の垂直断面形状が台形であり、領域Pにおいて吸気流路が狭まり攪拌される例を挙げている。但し、絞り部15の垂直断面形状はこれに限ったものではなく、吸気口13からの冷却媒体が剥離して渦を形成するなどして冷却媒体を攪拌させて付近の流れが乱流となるような形状であればよい。
【0027】
電池パック1は、図示しないブロア等の送風機構により、吸気口13の一端13a側から吸気される冷却媒体が吸気口13の他端13b側から吸気される冷却媒体より多いように冷却媒体の吸気がなされるように構成されることがある。つまり、吸気チャンバー内の流れが電池配列方向に垂直な方向について不均等となるように、電池パック1に対する送風機構が設置されることがある。送風機構の送風口は、吸気口13より小さくされることが多く、また送風機構の配置制限などのため、いずれかに向けて冷却媒体を送風することがあるためである。なお、送風機構で送風される冷却媒体は、一般的に空気であるがこれに限ったものではない。
【0028】
上述のような流れの不均等を補填するために、絞り部15は、
図3に示すように、吸気口13の一端13a側から吸気される冷却媒体と吸気口13の他端13b側から吸気される冷却媒体とが干渉する領域Qに配設されていることが好ましい。この領域Qは、特に温度を均等化にしておくことが望ましい箇所(範囲)であり、この領域に絞り部15を配設しておくことで、より温度差のある冷却媒体同士が撹拌され、温度を均等化して電池11間の流路に流すことができる。なお、この領域は、電池パック1における設計要件(例えば電池数、電池間のスペースの大きさなど)によって、その位置やサイズが変わる。
【0029】
また、絞り部15は、
図1及び
図2で示す順逆風が干渉する領域Qより吸気口13側に、例えば1~3つの電池11の幅程度ずらしておくことで、丁度、領域Q辺りで最も攪拌させることができる。
【0030】
本実施形態による効果を説明するために、
図4~
図6で示す比較例に係る電池パックの構成について説明する。
図4は、比較例に係る電池パックを示す垂直断面図で、
図5は、
図4の電池パックの一部を拡大した図、
図6は、
図4の電池パックの水平断面図である。ここで、
図3のV-V断面が
図5となる。
【0031】
比較例に係る電池パック100は、
図1の電池パック1において、絞り部15を除いたものであり、電池パック100の構成要素は、その説明を省略するが、
図1の電池パック1における各構成要素の符号に100を可算した符号を用いて図示している。
【0032】
電池パック100では、
図5において
図3の一点鎖線に対応する位置に一点鎖線を示しているように、
図5の一点鎖線の右側において温度が高くなる。そして、その冷却媒体が流れ込む電池111間の流路でも温度が他の電池111間の流路に比べて高くなり、温度が均一化されないことになる。
【0033】
これは次の理由による。即ち、電池パック100では、送風機構の送風口に対する吸気口113の角度等の関係から、
図6に示すように領域Rで最も高温となる。具体的には、吸気口113の一端側113aから流入する冷却媒体の流速が、他端側113bから流入する冷却媒体の流速に比べて強く、前者の冷却媒体が対向面112eを経て回り込んでくる。また、回り込んできた冷却媒体はより長い経路を経ているため、発熱する電池111からの受熱量が多くなり高い温度となっている。従って、
図6の領域R(特に対向面112e側)では最も高温となる。
【0034】
図7は、
図1~
図3の電池パックにおける各列の吸気チャンバーの温度の例を示す図で、
図8は、
図4~
図6の電池パックにおける各列の吸気チャンバーの温度の例を示す図である。また、
図7と
図8では、絞り部15を設ける付近の流路であって各セルに対応する流路の温度値を示しており、絞り部の有無以外について同条件での温度値の例を示している。ここで、電池内部に同じ幅の6つのセルが配列されている例を挙げる。なお、
図7、
図8で示す横軸のモジュールNoは、それぞれ電池11、電池111の番号に対応しており、図示するように、それぞれ
図1~
図3、
図4~
図6に比べて多くの電池を配した場合の温度値を示している。
【0035】
図7に示す第1列(
図3における最も下側のセル)は、
図8に示す第1列(
図6における最も下側のセル)に比べて、次のようになっている。即ち、
図7の第1列は
図8の第1列に比べ、吸気チャンバー(ここでは電池間の流路)の温度が下がり、例1~第6列を全体的に見て、
図7の温度分布の方が
図8の温度分布より均等化されていることが分かる。
【0036】
本実施形態では、電池パック1の筐体12に絞り部15を設け、その部位で受熱した風及び受熱しない風(絞り部15の手前の冷却風)の流れが交差することで攪拌される。また、本実施形態では、例えば送風機構に対する吸気口13の配置などにより、吸気口13から見て絞り部15の後ろの領域(
図3における領域Q)において、下端部12bに沿って逆流する風を発生させている。そして、本実施形態では、絞り部15の右端側で受熱エネルギーを上側にもっていくとともに、この受熱エネルギーを上側にもっていく風と吸気口13から絞り部15に入っている風とを攪拌することができる。これらにより、本実施形態では、
図7の例で示したように、温度を均等化させることができている。
【0037】
また、本実施形態では、断熱材を使わなくても受熱による温度バラツキを抑えることができるため、低コストに抑えることができる。但し、本実施形態においても断熱材を用いることができるが、その場合でも、比較例に断熱材を用いる場合に比べその断熱材の量や質を低減させることができる。
【0038】
このように、本実施形態に係る電池パック1によれば、比較例に比して、断熱材を使用しなくても複数の電池を収容した電池パック内の温度を均等化することが可能になる。また、寒冷地等においては冷却媒体の温度より外部温度の方が低くなることもあるが、その場合でも、冷却媒体から放熱して温度が均一化されないことがあるため、本実施形態による効果を奏すると言える。
【0039】
また、本実施形態では、
図1のように複数の電池11が筐体12における一面12c側から対向面12fに向かって配列されていることを前提とした。これにより、絞り部15で攪拌された直後の風を電池11間の空間に流すことができる。但し、複数の電池は例示したような方向に配列されていなくても、絞り部による攪拌された風が電池間の空間に流れることになるため、本実施形態による効果を奏する。
【0040】
(実施形態2)
実施形態2について、
図9~
図11を併せて参照しながら説明するが、実施形態1で説明した様々な例が適宜利用できる。
図9は、実施形態2に係る電池パックの一構成例を示す垂直断面図である。
図10は、
図9の電池パックの一部をX-X方向から見た図で、
図11は、
図9の電池パックの水平断面図である。
【0041】
図9~
図11に示すように、本実施形態に係る電池パック2は、
図1等の電池パック1において、絞り部15の代わりに絞り部25を設けたものである。絞り部25は、複数の電池11の配列方向に垂直な方向において、
図9の紙面垂直方向(
図11における紙面上の電池配列方向に垂直な方向)において、内壁の全体が高くなるように且つその高さが複数個所で異なるように設けられている。
【0042】
なお、
図9では、絞り部25を設けるに際して、筐体12の下端部12bの外側に凹部を成形した例を挙げているが、絞り部25は筐体12の下端部12bの外側が平面状になるように設けることもできる。また、電池パック2の他の構成要素は、電池パック1について説明した通りである。
【0043】
複数箇所で高さが異なるように設ける例としては、
図10及び
図11に示すように、絞り部25は、内壁から第1の高さの第1絞り面25aと、第1の高さより低い第2の高さの第2絞り面25bと、を有するように形成されることができる。第2絞り面25bは絞り部25における切欠き部に相当する。
【0044】
特にこの例における絞り部25は、複数の電池の配列方向に垂直な方向において、内壁の高さの違いが上記複数個所で均等に分布するように設けられている。なお、均等に分布とは、高くする内壁の全体の中央を基準として対称に高さが設定されていることを意味することができる。なお、ここでは2段階の高さを採用した例を示したが、3段階以上であってもよいし、また、曲線状に高さを変えるように構成することもできる。
【0045】
このような流路の断面積変化により風量分布は、第2絞り面25bの部分で多く、第1絞り面25aの部分で少なくなる。そして、第2絞り面25bを通過した風量の多い風が絞り部の位置から奥突き当り(
図9,
図11における対向面12e)で旋回し、受熱エネルギーを、第1絞り面25aの部分(攪拌部分)へと運ばれることになる。この攪拌部分で冷却媒体が攪拌され、同じ温度になるように攪拌された風が電池11間の流路に流れ、電池11を冷やし、各電池11の温度を均等にすることができる。
【0046】
このように高さの低い第2絞り面25bは、風量分布を調整するように風を整流する整流部として機能させることができ、これにより
図11に矢印で示すような冷却媒体の流れを形成することができる。そして、電池パック2は、主に第2絞り面25bが担う整流機能と主に第1絞り面25aが担う攪拌機能(温度均等化機能)とにより、絞り部25を整流兼温度均等化の機能をもつように構成することができる。
【0047】
よって、本実施形態は、絞り部による攪拌が必要な範囲が広い場合(温度を大きく下げたい場合)や、絞り部の位置から奥突き当り(
図9,
図11における対向面12e)までの距離が遠く、絞り部まで受熱した冷却媒体を集めることができない場合などに有益となる。換言すれば、第2絞り面25bの位置は絞り部25に入る前の風量分布に合わせて設定しておけば、つまり風量が多い部に設定しておけばよい。また、絞り部25の位置が奥突き当たりに近かったり、幅方向の風量分布が均等だったりする場合には、第2絞り面25bのような切り欠き部を設けず、一定高さの絞り部としておけばよい。その他、本実施形態では、電池11に複数のセルが内蔵される場合、各セルに対応して絞りの高さを異ならせるようにしておくこともできる。
【0048】
このように、本実施形態に係る電池パック2によれば、整流機能をもたせることで、実施形態1による効果に加え、より効率良く冷却媒体を攪拌させることができる。よって、本実施形態に係る電池パック2によれば、温度のバラツキをさらに解消すること、或いは攪拌し難いような設計であっても温度のバラツキを解消することができるようになる。特に、実施形態2に係る電池パック2は、絞り部25から対向面12eまでの距離が長く冷却媒体が絞り部25まで跳ね返ってこない場合に有効である。なお、内壁の全体が高くなる例とは異なるが、第2絞り面25bの内壁に対する高さをゼロとするような変形例も採用することができる。
【0049】
(実施形態3)
実施形態3について、
図12を併せて参照しながら説明するが、実施形態1,2で説明した様々な例が適宜利用できる。
図12は、実施形態3に係る電池パックの一構成例を示す垂直断面図である。
【0050】
図12に示すように、本実施形態に係る電池パック3は、
図1等の電池パック1又は
図9等の電池パック2において、絞り部15又は絞り部25の代わりに、絞り部35を設けたものである。絞り部35は、複数の電池11の配列方向に垂直な方向において、
図9の紙面垂直方向(
図11における紙面上の電池配列方向に垂直な方向)において、内壁の高さが変更可能になっている。つまり、電池パック3は、絞り部35における吸気流路の断面形状を変更する絞り変更機構を備える。
【0051】
図12で例示する絞り部35は、それ自体に絞り変更機構を設けた例であり、絞り機能を果たす絞り板35aと、絞り板35aの設置角度を変更するための支持部35bと、を有する。支持部35bは、絞り板35aを支持し、筐体12の下端部12bの内壁に沿って且つ吸気流路に平行に移動させることで、上記設置角度を変更することができるように配設されている。但し、絞り変更機構の構成は問わない。
【0052】
このような絞り変更機構は、手動で調整されることもできるが、別途設けた制御部から入力情報に応じて自動的に制御されるように構成することもできる。上記入力情報としては、例えば、送風機構による冷却の総風量、送風温度、送風口に対する吸気口13の角度、筐体12の下端部12bの内壁に設けた温度センサの計測値、筐体12の外側に設けた温度センサの計測値(外気温)などが挙げられる。無論、制御の元となる入力情報はこれらの複数の組み合わせであっても、或いは1つだけであってもよいし、電池パック3を搭載する自動車等の装置における制御情報であってもよい。このように、上記入力情報は、絞り部での必要な高さが変わるような情報とすることができる。
【0053】
手動調整又は制御の一例を挙げると、風量が多い場合には絞り板35aの角度を小さくすることで高さを下げるように、手動調整又は制御を行えばよい。また、外気温が大きい場合には絞り板35aの角度を大きくすることで高さを上げるように、手動調整又は制御を行えばよい。
【0054】
なお、
図12の電池パック3の絞り部35付近の流れは、
図2と同様とすることができ、
図12の電池パック3の水平断面図は
図3と同様とすることができる。或いは、
図12の電池パック3の水平断面図は
図11と同様とすることができ、その一部をX-X方向から見た図は
図10と同様とすることができる。この場合、実施形態2の例で説明すると、第1絞り面25a及び第2絞り面25bの双方で高さを手動調整又は制御可能としておいてもよいし、いずれか一方だけ手動調整又は制御可能としておいてもよい。
【0055】
このように、本実施形態に係る電池パック3によれば、高さ変更機能をもたせることで、実施形態1又は2による効果に加え、電池パック3の周囲環境、制御環境、設計、冷却風量、冷却温度など様々な要因に対応して、温度のバラツキを抑制することができる。
【0056】
(他の実施形態等)
なお、本発明は上記の各実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施形態に係る電池パックの形状は例示したものに限らない。また、電池パック内において各電池を保持する保持機構も問わない。
【符号の説明】
【0057】
1、2、3 電池パック
11 電池
12 筐体
12a 上端部
12b 下端部
12c 一面
12d、12e、12f 対向面
13 吸気口
13a 一端
13b 他端
14 排気口
15、25、35 絞り部
25a 第1絞り面
25b 第2絞り面
35a 絞り板
35b 支持部